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短大生が考える「幸せ」について : 清泉女学院短期大学幼児教育科1年生を対象とした調査をもとに

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67

短大生が考える「幸せ」について

-清泉女学院短期大学幼児教育科

1

年生を対象とした調査をもとに-市 沢

正 則

What Is Happiness?

Views from Early Childhood Education Freshmen

at Seisen Jogakuin College

Masanori Ichizawa

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短大生が考 える 「幸せ」 とは何か。本学 の必修科 目であ る 「人間学」第2回 目の授業

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月中旬) でこの内容 を取 り扱 い、入学 したばか りの学生が 「幸せ」につ いて どの ように考 えてい るか を調査 (女子130名分 回収)した。本稿 は社会学的統計 としての研 究 ではな く、哲学 的 な問題 であ る 「幸せ」 について本学の学生 (幼 児教育科1年生)が どう考 えるか を紹介す る ものであ る。彼女 たちの考 えをまとめ、必要 な部分 に適宜考察 を加 えた。 Ⅰ. は じめ に 1.学生の記述 に関 して

1

9

9

6

年度の 「人間学」の授業 では、教科書 に星野富弘著の詩画集 『風の旅』1を使用 した。 この本は人生の課題 (生死、幸、不幸、健康、 病気、醜 さ、美 しさ、 もが き、 あが き、あ き らめ、希望 、ユー モア、親子、友人、恋 人、 結婚 な ど)を多 く提供す る。「は じめに」の章 で星野氏は次の ように書 いている。 私 は少年の頃、 この山 をち ょっぴ り憎 んでいました。父母の よ うに土 に まみれ 狭 い畑 をか きまわ しなが ら送 る山の生活 が、堪 え られなか ったのです。 お金や地 位 な ど、一見 しあわせ そ うに見 える もの が、 山の向こ うにあ るように思 っていた のか もしれ ませ ん。 「いつか - ・ きっ といつか ・・・」 なんて思いなが ら、 山を見上 げていた の をおぼ えています。 その 「いつか」が、 とんで もない方法でや って来 たのは、大

(2)

68 清泉女学院短期大学研 究紀要 (第15号) 学 を卒 業 した年 の六 月で した。2 この文 章 を学生 に読 ませ た後 に、「みん なに とっての 『しあわせ 』 は何 ですか。定義 で も い い し、 幸せ に感 じる時 の具体 的 な例 で もい い し、 自由 に書 いて くだ さい」 と説 明 し、B

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版 の用紙 に約

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0

分 間 で書 かせ た。 学 生 の記述 に関 しては、 「食べ るこ と」と1 つ だけ あげ た学 生 もあれ ば、 20個 ほ どの例 を 書 い た学生 もい た。また、「普 通 の平 凡 な生 活

とだけの記述 もあれ ば、 その こ とにつ いて説 明 を加 え、 「散 歩、 お茶 を飲 む こ と」な ど具体 例 を記 した学 生 もい る。 表1・2が調査 した 分析 の結 果 で あ る。 カ ッコ内の数字 は各項 目 に 「幸せ に感 じる」 と記述 した学生 の数 で、 一 人の学 生 が複数 の項 目に入 って い る場合 が あ る。 表1 「幸せに感 じるとき/幸せ とは」の項 El別分頬 具体例 として : 1 生理的な欲求 : 食べ る (41) 2 健康 (25) 3 趣味的な生活 : 散 歩 (6) 読書 (3) テ レ ビ (2) ぼーっとす る 4 自然環境/気候 : 自然 (8) 5 学 校 : ある (3) 6 人 との交わ りⅠ : 友人 (46) 飲 む (2) 寝 る (35) 敬/音楽 (6) 入浴 (5) 買 い物 (4) 旅行 (3) 赤 ちゃんを見る/抱 く(3) (8) ゆっ くり考 える (2) 天気 (8) ない (2) 家族 (41) 好 きな人 (ll) 周 りの人 (6) 7 人 との交わ りⅠⅠ: 愛す る/愛 され る (7) 人の為に何か をす る (4) 信 じる (1) 8 目標 : 目標の実現 (19) 目標 をもつ (ll) 9 笑いのある生活 (7)/明るい生活 (3)

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平凡な普通の生活

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)

11 生 きていること (9)/今 (5) 12 その他 (10) 定義 として :

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自分が楽 しい と感 じた とき

(

3)

2 自分 でつかむ もの (3) 3 な くしたときに気付 くもの (3) 4 自分 に充実感 をもた らす もの (1) 5 自分のためになっているもの (1) 6 比べ られることのない世界 (1) 7 自分の居場所がある (1)

(3)

市沢 .短大生か考える 「幸せ」について 表2 「幸せに感 じるとき/幸せ とは」の項 目別順位 (上位10) 順位 項 目 学生数 1 友人 46 2 家族 41 3 食べ る 41 4 寝る 35 5 健康 25 6 平凡な普通の生活 23 7 目標の実現 19 8 目標 を持つ ll 9 好 きな人 ll 2.考察 にあた って われ われ 日本 人は幸福 とい う言葉 はあ ま り 使 い慣 れ て い な い よ うだ。 『現 代 哲 学 辞典

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で も

、「

『わが子 の幸せ を祈 る』 とか 『ど うぞ お しあわせ に』 とい う言葉 は頻繁 に使 われて も、 『自分 の幸福 』を、正面 か ら語 るのは少 し 面映ゆい感 じがす る」と記 されてい る。 『大辞 林』4には 「しあわせ 」は 「め ぐりあわせ が よ い こ と。 ま た、 そ の さ ま。幸 運。幸 福。運 命。」、「幸福 」は 「不 自由や不満 もな く、心 が 満 ち足 りてい るこ と。 また、 その さま。 しあ わせ。」とあ る。 この こ とか ら、二つの言葉 は 意味の違 いはほ とん どな く、 その時の状況 に あわせ て使 われ る と考 え られ る。確 かに、学 生 に

『幸福 』って何 だ と思 い ます か」と聞 く よ りも

、「

『しあわせ 』 って何 ですか」 と聞 く 方が、 口語的 で、柔 らか いひび さが ある。 堅 苦 しさを与 えず、学生 に 自分 が思 ってい るこ とを書かせ るため に も、 また、星野氏の 冒頭 69 での語が 「しあわせ 」とい う理 由で、 「しあわ せ 」 を使 用 した。 しか し、本稿 で参考 に した 文献 が 「幸福 」 とい う言葉 を使用 して い る と きは、 その まま 「幸福」 を用 いた。 「幸福 につ いて人々が抱 いて い るか ぎ りの 意見 を残 らず検討す るのは、 よけ い な仕事 で あ る。 とい うのは、小 さな子供 に も、病 人に も、 また正気 でない者 に も、幸福 につ いての い ろい ろな考 えが浮かぶ ・・ ・、 さ らに、一 般大衆 の意見 も ・・・検討す るこ とは よけ い な仕事 であ る。 なぜ な ら彼等 は、 いわば なに ご とにつ いて も、 口か ら出 まかせ に語 るの だ が、幸福 につ いては特 に そ うだか らで あ る

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とア リス トテ レスは述べ てい る。確 か に、 こ の調査 では さまざまな意見が でた。個 人が考 え る幸せ を書かせ たわけであ るか ら当然 であ ろ う。 しか し、突然与 え られ た課題 につ いて、 10分 の短 い時 間で考 えなければ な らない点、 か えって、各学生が 日常、意識 的 ・無意識的 に もって い る価値観 をか い ま見 るこ とが で き

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70 清泉女学院短期 大学研 究紀要 (第15号) た よ うに思 う。 以下、調査 した学生 の考 え を 古今 東西 の識者の考 え と適宜対比 しなが ら考 察 してい く。 ⅠⅠ.

考察

一 具体例 として-1.生理的な欲求 飲食 幸せ と感 じる ときの順位 では生理 的欲求 で あ る 「食べ るこ と」が 「友 人」 に次 いで2位 であ った。 「太 った豚 よ りもやせ た ソ クラテ ス」 とは言 うけれ ど、生 き物 としての人間、 もの を食べ なければ生 存 で きない。単 に 「食 べ るこ と」 と書 いた学生が

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名 、パ フェ ・抹 茶 ア イスな ど、好 きな もの、お い しもの を食 べ てい る ときに幸せ を感 じる ものが17名、 お 腹一杯 食べ た時 に感 じる満足感 が幸せ の要素 であ る と答 えたのが3名 いた。ユ ニー クな も の として 「回 って いないお寿司 をお腹 い っぱ い食べ た とき」、「川原 で100人でおにぎ り食べ た ら」 とい うのが あ った。 では、学生 は どの よ うな気持 ちで食べ てい るのだ ろ う。 その気 持 ち を表 わ してい るのが次の2名の学生 であ る。 「世 の中、食べ た くて も食べ られな い人 が いる と思 う。 だか ら、 お腹 い っぱいに 食 べ た時は幸せ だ。」 「私 はす ぐお腹がす いて しまうので、 た くさん食べ る と、 ものす ご く気持 ちが い いです。 そ して、食 べ物 をつ くって くれ た人 たちに感謝 す るこ とで幸せ に感 じま す。 そ して、満腹感 のあ とに くる眠気 も また幸せ に感 じる。生 きて いるなあ って 感 じが します。病気 にな った りす る と、 好 きな物 もた くさん食 べ られな いので、 今 の うちにた くさん食 べ たいです。」 1996年世 界食糧 サ ミッ トでの発表 に よる と、 世 界では八億 もの人々が栄養不 良の状態 にお かれてい る とい う。6現在 の 日本 では、ほ とん どの人が 食べ た い とき、 食べ たいだけ、食べ たい ものが 食べ られ る飽 食の時代 、 グル メ指 向の時代 であ る。 この よ うな状 況 で、上述 の 学生 の よ うに、飢餓 に苦 しんでい る人の こ と を思 い、 また、つ くって くれ た人に感謝 して 食べ る とい う気持 ちは特筆 すべ きだろ う。 ま た、感謝 の気持 ちを持 とうと努 力 してい る学 生 もい る。 「私 は不幸せの時 に しか、…ぁの時 は幸せ だ ったなあ" と考 えない気 が します。ふ だんの生活の時 に も、 いつ も幸せなんだ と感 じられ る、感謝 の気 持 ちを忘れ ない 心の豊 かな人 にな りた い と思 い ます。」 人間が幸福 に な るため には、 多少の不幸が 必要 だ とパ スカルはい う。 ア レ クサ ンダー大 王は朝 食 をお い し く食べ るために夜 に散 歩 を し、夕食 をお い し く食べ るためには軽 い朝 食 を とって、常 に三度 の 食事 を楽 しんだ とい うO 学生 も 「空腹の時 ご飯 が食 べ られ る」 こ とが 幸せ だ と書 いてい る。質素 な食事 、腹八分 目 に食べ るこ とは幸せ に感 じる最大 の方法 なの だろ う。 「飲 む」 こ とにつ いては2名の学生だけが 触れ た。 「暑 い時の一杯 の水」 と、 「真夏の暑 い 日に電車 に乗 り遅 れ て 目的地 まで走 って着 いた後の ウー ロン茶」 で、 アル コー ルでは な か った。

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市沢 短大生 か考 え る 「幸せ 」 につ いて 睡眠 寝 るこ とが幸せ と感 じる学生 は

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名。幸せ に感 じる順位 では、「友 人」、「家族」、「食べ る こ と」につ いで 4位 であ る。特 に、 「晴れ た 日 に外-布 団 を干 して夕方 それ を と りこみ、太 陽の においが しみつ いたふかふか にな った布 団 に、洗 いたての、の り付 け したシーツ を し て寝 る とき」とい うよ うに、「干 したばか りの ふ とん」 に寝 るこ と (4名 )が幸せ な感 じを 助長す るよ うだ。 また、寝 る瞬間 (8名) に 幸せ に感 じた り、「朝、目覚 ま しがな って、『あ と十

」と言 って また寝 るこ と」な ど、 「もう 少 し寝 られ る とわか った瞬間」 (2名)に も幸 せ に感 じる。 生理 的必然性 以外 に睡眠す るこ とに幸せ を 感 じる理 由が あ るのだろ うか。あ る学生 は「何 も考 えな いで眠 って いる とき」 とその理 由 を 示 し、また別 の学生 は、「人 は考 え深 く、悩 む 生 き物 だ と思 う。山田か まちは子供 の頃、「一 番難 しいの は考 えないこ とだ』 と言 ったそ う です。 なの で、眠 っている間 は、疲 れ もとれ て、何 も考 えた り、悩 んだ りしな くていいか ら幸せなの だ ろ うか」 と問 う。 「寝 る子 は よ く育つ」と言われ るが、「しば ら く眠 り、 しば ら くまどろみ、手 をこまねい て、 また しば ら く休 む。 それゆ え、 まず しさ は盗 び との よ うに、 あなたに来、乏 しきは、 つ わ ものの よ うに、 あなたに来 る」 とい う警 告 も聖書7に あ る。結局、食べ るに して も、渡 るに して も、「蜂蜜 は体 にいいが、た くさん食 べ る と体 には よ くない」 よ うに、程 度の問題 か。 2.健康 シ ョウペ ン- ウ7- は、 われわれの幸福 の 71 9割 までは健康 に もとづ いてい る とい う。 多 くの学生 は、 自分 ばか りでは な く、家族 、友 人、周 りの人 た ちが健康 であ るこ と (25名) が一番 の幸せ だ と感 じ、 「幸せ に感 じる」順位 では

5

位 であ る。次 の学生 の記述 が健康 の あ りが た さ、大切 さをよ く伝 えてい る。 「高校 の友達 で、 (あ る)手術 を して4カ 月 ぐらい入院 している人 が いた。 その間、 ず っ と学校 を休 んでいて、 ち ょっ とうら や ま しいなあ、 なんて思 っていた とき も あ りま した。 だ け ど、実際病 院 へ お見舞 にい った ときの こ とです。 その時初 めて 入院す る辛 さ、悲 しみ、孤独感 とい うも のが伝 わ って きたよ うな きが した。走 り た くて も走れな い。立 ちた くて も立 てな い。 こんなに辛 く、厳 しい試練 はな いな あ と感 じま した。私 た ちは普段 、 いつ も の よ うに歩 いた り しているけれ ど、世 の 中にはそれがで きない人 だ って い る とい うこ とを、改めて実感 しま した。今、 こ う して健康 でい られ るこ と、 それが一番 の幸 せ だ と私 は思 い ます。」 「私 に とっての幸せ は家族全 員 が健康 で 普通 の 日々 を暮 らせ るこ とです。 長 い間、 家族 の一人 が入退院 を繰 り返 して きたた め、 小 さな頃か ら家族全 員 が元気 な らそ れが一番 だ と思 って きま した。 ですか ら、 一 日一 回で も家族 がそろ って笑 って い ら れれば、 当 り前の ことだ け ど、 うれ し く 思 い ます。」 3.趣 味的 な生活 入浴 5名 の学生 が 「お風 呂に入 ってい る とき」

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72 清泉女学院短期大学研究紀要 (第15号) に幸せ を感 じる とい う。 お風 呂に浸 ってい る ときの快感 は どこか ら くるのだ ろ うか。木村 武一 氏は ドイツの思想家ベ ンヤ ミンの こ とば、 「幸福 であ る とは、何 の恐れ もな しに 自己 を 眺め るこ と」 を引用 して、 その理 由 を説明 し てい る。「一枚 の皮 膚に よって私 の体 は外部 を 遮 断 され てはい る ものの、ほ どよい湯か げん の なか で まるで私 と体 と湯 のあいだには何 の 境 目もな く、私 自身 も世 界のすべ て もこころ よい湯 に融け あってい る。ふ だんは必ず どこ かの上 に置いた り、何 か支 えた りしなければ な らない手や 足や胴体や 背 中な どは、 ただ湯 の なかに投 げ出せ ば何 の抵抗 もな く湯が支 え て くれ る。感 じられ るの は、心地 よい湯 の温 も りと平和 な心 だけであ る。 こ うしてぼんや りと全 身 を湯 に委 ねてい る と、不思議 な こ と に、世 のわず らわ しい こ とが頭 か ら消 えて し ま う。風 呂のなか で考 え るこ ととい った ら、 湯かげん ぐらいの もの であ る。 ・・・風 呂に はい ってい る ときは、 た しか に恐れや不安 な どか ら解放 された時 間であ る。 ・・・ふ だん の心 配 ご とを忘 れ るよ うに努め てい るわけで はな く、風 呂にはい る と自然に そ うい うこ と が霞 ん で しま う

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肉体 的 な心 地 よ さが、精 神 的 な心 の平和 をか もしだす例 だろ う。 ただ、 ぼんや りしてい るだけ ではな く、「明 るい うち にお風 呂に入 って、本 を読 む」学生 もい る。 読雷 ア リス トテ レスは、人間は さまざまな 目標 を求め るが、究極 の 目標 は幸福 であ り、 その 他 の 目標 はすべ て幸福 を達 成す るための手段 にす ぎない と述べ 、人間が もつ三つ の本性 を 説明す る。第

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に、食養摂取 とか成育 の意味 におけ る植物的 な本性 ;第2に感覚、情動 を 持 つ とい う意味 での動物 的 な本性 :そ して第 3に、理性 を持 ちあわせ てい る とい う意味 で の人間的本性 (知性、 お よび、徳 ) であ る。 人間が幸福 に な るか どうか は、 自分 の能 力 と 才能 を十分 に発揮す るか ど うか、 あ るべ き自 分 の姿 、 自己 を実現 で きるか に よる。次 に、 それ ぞれの本性 が発揮 され、実現 されてい く 程度 に応 じて、段 階的 に幸福 になってい くと い う。「すべ ての人が では ないに しろ、少 な く とも語 るに値 す るは どの人はすべ て、徳 と知 性 を幸福 にむす びつけ てい る」9と述べ、幸福 は人間の最 高の本性 であ る理性 的 な部分 の常 なる活動 であ る とす る。 それは生涯 にお いて なされ なければ な らず、「-羽 の燕が、また或 る一朝 夕が春 を もち きたすの では な く、 それ と同 じよ うに、至福 なひ と ・幸福 なひ とをつ くる ものは一朝 夕や短時 日で ない

10とい う。 では、 この知性 を得 るため には どうすれば よいのであろ うか。11西欧 中世 の諺 に 「自分 は 巨人の肩 の上 に立 ってい る小 人 であ る」 とい うのが あ る。 もの を知 る手段 の一つ は心 を開 いて辛抱づ よ く、歴 史上偉大 な人物が書 いた ものか ら学ぶ とい うこ とであ る。 た しか に、 どの よ うな内容 の本 を読 むか は重要 なこ とで あ る。 しか し、少 な くとも読書 の習慣が あ る こ とに よ り、 その 人の知 識 の量 は増 え、幸福 度 も増す のは確 かだ ろ う。 たん な る一方通行 の過程 では な く、常 に、著者 との 内的会話 が なされ、頭 が刺激 され る。 テ レビ とは違 い、 能動 的 に もの を考 え るこ とが で きる。調査 の 中では、 3名の学生 が幸せ な時 として読書 を してい る時 をあげてい るが

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名 の短期 大学 生の うちの3名 だけ とい うのは寂 しい気がす る。 た とえ 「お風 呂に入 って、本 を読 む」 こ とであろ うとも、読書す るこ とがせ め て幸せ の一つ にで もな って もらい たい。 ア リス トテ レスのい う人間の最 高 の本性 を発揮す るため

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市沢 :短大生が考 える 「幸せ」につ いて に も。 ぼんや りしてい るとき 人間の幸福 は知性 を発揮す るこ とによって 得 られ るとい うのであれば、暇のある生活は 非常 に重要 な こ とでは ないだ ろ うか。「忙 し い」の 「忙」 とい う漢字 のつ くりは 「心」が 「亡 び る」であ る。 ボー つ とす る時間 を持つ とい うこ とは、 まだ 「心」が存在 している状 態が続 き、理性的 な思索に入 る前段階、知性 を活動 させ る準備段階 とも言えるのでは ない か。 8名の学生が この段 階にいるようだ。 「いろいろ気 に した り、考 えた りしな く ていいとき」 「な に も しな い でボ ー つ と して い る と き」 (3名) 「ボケ ッとしているとき」 「いえに帰 って、 くつろいでいる時間」 「た まにはボー つとで きる何 も考 えない とき

「晴れた 日 (太陽がでていて、風 は少 し 吹 いていて、寒 くもな く、暑 くもない 日) に、外- 出て、ボー つとしていることで す。 いやなことで も天気のせいで忘れて しまうか ら」 ただ、 この段階だけ で終 わって しまわない で、実 際に次の思考 の段階 までた ど りつ いて ほ しい。 ゆっ くり考 えられ るとき ボー つ とした段階 をす ぎて、ゆ っ くりと考 えれ られ る ときが来 た。 この境地にある学生 は

2

名 いた。 73 「忙 しい生活が続 いている中でで きた 自 由な時間。家の中での空 いている空間。 ゆ っ くり、あれ もしたい、 これ もしたい と考 えて、 これか らの計画 を立 てている とき」「時間 を気 にせず物思 いにふ けって いるとき」 その他 趣味的生活のその他 の部類 では次 の6個 を この分類に加 えた。 散 歩 (6名):「春 めいた 日に散 歩す る と 『生 きているって幸せ」 と感 じる

歌/音楽 (6名):好 きな曲 を聞 く(2名) /歌 う/ カラオケ をしてい る とき(3名) 買 い物 (4名):衝動買 い

/

「安売 りを し ている時 に快感 を感 じる」 旅行 (3名):旅行 に行 く計画 をたて る時 /旅行 の前夜 (2名) 赤 ちゃん (3名):赤 ちゃん を見 る/ だ っ こす る/ 「赤 ちゃん を生 んだ瞬 間は感 動 と幸せ を実感 じる と思 う。(まだ生 んだ こ とはないけ ど)」 テ レビを見 る (2名):「SMAP」の出て い る番組 (1名) 体 を動かす こ と (1名) 4. 自然環境/気候 「自然があ り」、「庭先か らの花の香 りをか ぎ」、 「見 たこともない花 を見 て」、 「奇麗 な夜 景や風景 を見 る」 こ とに幸せ を感 じる学生が、 それ ぞれ1名ずつ。 また、東京 と比べ 田舎 だ が、のんび りとした長野に生 まれて幸せ と感 じる学生 もいた。 春 には「春 だなあって感 じ」、春か ら夏に な るときには 「毎 日が うきうき、何 だか分か ら

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74 清泉女学院短期大学研究紀要 (第15号) な いけ ど、頑 張 ろ う とうい う気 力 が あふ れ て」、夏には「扇風機の前 で暑 いの を忘れ ると き」に幸せ を感 じる。 また、 「天気が いい」日 に、「日向ぼっこを し」、「気 もちいい風 が吹 い た とき」 に も幸せ。 5.学校 この短大に入れたこ と(2名)、今、学校 が 楽 しいこ と (1名)が幸せ であ る。 また、 「小 学校の 6年間毎 日学校 に行 くのが楽 しみだっ た」 (1名)とい う。 この学生 は 日本の どの学 校 で、 どの ような教育 を、 どの教師に受けた のだ ろ うか。 学校 が ない 日 (2名)、す なわ ち、土 曜 日 や、学校 が休みの前の 日の夜 には幸せ を感 じ る。 6.人 との交わ り Ⅰ カール ・マル クスは、過度の資本主義社会 では強い られた労働 によって人間は人間 らし さを失 ってい くと説いた。 自分 が作 り出 した ものは他 人に渡 り、 自分 の労働 その ものに興 味 を失 う。忙 しす ぎて、 自分 と一緒に働 いて い る仲 間、家族 との関係 も疎遠になる。最後 には、 自分 自身 をも見失 う自己疎外の状態に 陥 る。労働者の幸福 とは、適度に働 き、夜は ワ インを飲み なが ら人生 を語 り、家族 ・友人 ・隣人 との関係 を大事 に し、教養 に豊んだ、 内的に豊かな人間 として生 きるこ とであ る。 この ように、マル クスは 自己疎外の要素 とし て、人間関係 の疎遠 をあげてい る。 カール ・ ヤ スパー ス も人間関係の大切 さを強調す る。 人間は相互に要求 されあい、 それに よって、 自分 を確 立 し、生活 を充実 させ る。 人間同士 の交わ りにおいて実現 され ない ものは今だ存 在せ ず、「真理 は二人か ら始 まる

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と考 える。 この人間関係 のなかにわれわれが幸せ を感 じる とい うのは当然であろ う。調査 で も、友 人をあげた学生が46名、幸福 に感 じるときの 順位 では第1位 であ る。 この項 目では次に家 族

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名、好 きな人11名、不特定 な周 りにいる 人6名 と続 く。 友人 古代 ギ リシャでは、すべ ての愛の なかで も っ とも幸運 なのが友愛 と考 え られていた。友 愛は徳の修練所 であ r上 これ を持つ こ とは人 生の栄冠 を持つ こ とで もあった。一人の友人 を持つ こ とは、 自分 とは違 うもう一つの世界 を知 ることにな り、 その人間の見方が広が る。 逆 にその友人 を失 うこ とは、 自分 の一部がな くなるような ものである。 しか し、

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S

.

ルイ スは 『四つの愛』13のなかで、現代 の世 界では この友愛が無視 されてい るのではないか と懸 念す る。友情 を経験す るものがほ とん どいな い故 に、それ を尊重す るものが いないのだ、 とい う。清泉短大の学生 は友人 とどの ような 関係 にあ るとき、幸せ に感 じるのか。 まず、 「友人 と一緒 にいる/過 ごす」 こと

(

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名) 自体 が幸せ だ と感 じる。 さらには 「友人 と話 をす る

」(

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名)、遊 んだ り (

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名)/肋けて もらった r)、 あげた り (

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名)/ 食べ た り (

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名)/ふ ざけ あった り/笑 った r)、 などであ る。 「挨拶す るとき、あー、私 には友達がい るんだ、 と幸せ にな る」 「食べ ることがで きて、友達 といっぱい お しゃべ りで きるよ うな生活。 これ以上 の幸せはない くらいだ。」

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市沢 .短大生 が考 え る 「幸せ 」 につ いて 結局、「大好 きな友達 と過 ご し」、「悪 口な ど 決 して言わず、仲 良 しでい られ る」のが幸せ であ り、一 日の大半 を学校 で過 ごす生活の な か で、彼女 た ちに とって友 人は大切 な栄冠 な のだ ろ う。次の3名 の学生 は徳 の修 練の場 と ヽ して経験 した よ うだ。 「共 に悲 しんだ り、喜 んだ りして くれ る 人 が いるこ と (友人で も、恋人 で も)」 「私 が今 までに幸せだ と思 った ことは、 た くさんの友達 に出会 えた こ とです。 友 達 か らた くさんの ことを学べ た ことを幸 せ に思 って い ます (駄 目にな りそ うな と きに、助 けて もらえ、一緒 に喜ぶ こ とが で きる)。 これか らも幸せ に思 うことは、 た くさん お友達 を作 り、刺激 を与 え合 え るこ とだ と思 い ます。」 「チ ー ム メ イ トが励 ま して くれ た と き (クラブ活動で、 いい結果 が でな くて、 苦 しか った り、泣 いた りした とき)、夜 、 遅 くな った ときに も一緒 に練 習 で きた こ と。」 「けんか を した り、 た まには憎 みあ った りす ること もあ るけれ ど、友達 に支 え ら れてが んば って これた よ うな気 がす る。 親 には相談 で きないこ とで も友達 には話 せ ることが あ る

C.

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ル イスが い う真 の友人 は、共通の関心 事 に心 を奪 われ 、同 じ真理 、興 味 に 目を向け る。 しか し、単 に、「友人 を欲 す る」感傷 的 な 人は友人 を作 りえない、 どこへ も行 こうとし ない人は道連 れ を得 るこ とが で きない、 とい う。友人 を持 つ とい うこ とは、友 人以外 に何 か ほかの もの を欲 していなけれ ば な らない。 清泉短大 の学生 は どんな ものに共通 の興味 を 75 持 ち、一緒 にい る時 どん な話 しをす るのであ ろ うか。学生 の記述 には なか った。 ここで問 題 とな るのは、学生 は友 人に何 を求め て い る のか であ ろ う。 ル イスが い う 「感傷 的」 なゆ え なのか、 それ とも、 自分 の孤独 さを紛 らわ す ための手段 としてか。 ラ ッセ ルは警告 す る。 道楽や趣味は、 多 くの場合 、根 本 的 な幸福 の 源 ではな く、現実 か らの逃避 、直視 す るには 大 きす ぎる苦痛 を一 時的 に忘 れ るため の手段 に なってい る。根 本 的 な幸福 は人や 物 に対す る友好的 な関心 、す なわ ち、 人々 を観察 す る こ とを好み、 それ ぞれの特徴 に喜 び を兄 い出 して、相手の興 味や 楽 しみが十分 に生 か され る機会 を与 えたい と願 う。 この よ うな態度 を とれ る人 こそ幸福 を得 るの だ とラ ッセルはい う。14 好 きな人 相 手が ひそか に同 じ道 を進 ん でい るこ とを 発見 した二 人が異性 であれ ば、友情 は

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分 で 恋 愛 に変 わ る と

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ル イスはい う。恋愛 につ いて学生 は どう思 ってい るのか。18歳の高校 卒 業前後 までには異性 を好 きに なって幸せ を 感 じた学生、現在 、感 じてい る学生 は少 なか らず い るだ ろ う。学生か らの記述 を寄せ 集め て彼女 たちの気持 ち を書 くと下記 の よ うにな る。 彼 氏 が いれ ば/ で きれ ば最 高

」!

(2 名) た とえば、「や さ し くて、楽 しい人

なんか ! そ うした ら 「好 きな人 を思 い 出す とき」とか、「TELがかか って くる とき」とか、「好 きな人 と一 緒 にいる とき」 (3名) に

(その)人 を見 て いる」 (2 名) と、幸せ に感 じる と思 うわ。 もっ と カ ッコよ く言 えば、「大好 きな人 が隣 にい

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76 清泉女学院短期大学研 究紀要 (第15号) て、ず っと一緒 にい られて、 お互 いを信 頼 しあっている とき」ではないか しら。

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ル イスに言わせ れば、友人 と恋 人の違 いは、友人はその友情 をほ とん ど語 らず、お 互 い同 じものに関心 を持 ち、前方 をみつめ、 裸 の人間 を求め る。恋人は二人の愛 を語 り、 相手 に夢 中にな り、通常 向かいあい、裸の肉 体 を求め る。時 には、相手全体へ の漠然たる 没頭 で、セ ックスの こ とを考 える余裕 もな く、 恋 人 と不幸 をもともに したい、恋 人な しで幸 福 であ るよ りも、その恋 人 と不幸 であるほ う が幸福 であると思 う。何 人かの清泉の学生 は 恋愛の入 り口に足 を踏み入れているのかO 家族 現在 の 日本 では親子の会話 の断絶があ ると よ く言われ る。確か に、子供 も親 も忙 しい。 両親がそろって子供 とゆっ くり食事 をしなが ら、談話 を楽 しむ 日が 月に何 回あ るだろ う。 父親 は 自分 の したいことを我慢 して、 自分 自 身 と家族の生存の為 に夜遅 くまで仕事 をす る。 それ を会社が要求 している。会社 も会社 自体 の生存がかか ってい る。 その ような社会の シ ステムのなかで、 どれだけ一個 人が対応で き るか、疑問ではあ る。 しか し、 その代償 とし て支払わなければ な らないのが、子供 の全 人 格 的 な成長、健全 な家庭生活の営みであろ うo あ る教育研究所主催 の国際 シンポ ジウムの発 表15で、中国、韓 国、英国、米国、日本の小学 校5年生約 5千人 を対象に調べ た 「家族の中 の子 どもたち」調査 があった。 その中で 「友 達か らい じめ られた時に親は」 どう反応す る と思 うか とい う問いにたい して、「とて も心配 す る」とい う答 えは、 日本が最低。逆 に、「あ ま り/全然心配 しない」 は 日本が最高だった。 また、「親が年 とって歩けな くなった らどうす るか」とい う質問にたい して、「老人ホームに 入れ る」は 日本が最高。「自分が よい父母 にな る」 では 日本が最低 だった。 では、学生 は どの ように家族の こ とを考 え てい るのだろ う

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名の学生が家族がいるこ とに幸せ を感 じてい る。「幸せ に感 じる」とき の順位 では 「友人」に次 ぐ第2位 、「食べ るこ と」と同位 であ る。 「家族がい る」こ とだけで 幸せ であ るが12名。具体的には、「仲良 く、 穏やかに暮 らす

」(

7名)、「笑 う」(3名)、「話 す」 (2名)、「食べ なが ら話す/ お茶 を飲む」 (3名)、「テレビを見 る」 (2名)、「食べ る」 (2名)、「旅行 す る」 (2名) な どであった。 多 くの清泉の学生 は、家族が健康 で一緒にお 茶 を飲んだ り、食事 をす るこ とが幸せ である と感 じている。 あ る学生 はい う。 「私が幸せだ と思 う時は、数 え切 れない ほ どあるけ ど、唯一 つ選ぶ とすれば父や 母の仕事がな くなった ときです。地区や pTAの役員の仕事 な どで、本 当に毎 日 忙 しそ うに しています。休 みの 日も家族 だん らん とい うものが少な くなっていて、 た まに寂 し くなる時があ ります。だか ら、 父や母 が仕事 を終 えて、家族 とその 日の 出来事 を話す時が一番幸せ に感 じます

「自分 を支 えて くれ、支 えてあげる家族 を土台 に、友人 とは互 いに理解 しあって 生活 してい くことが、 …幸せ"な事だ と思 い ます。今、家族 を離 れ、下宿 を して、 両親のあ りがた さ、家族の大切 さを しみ じみ実感す る毎 日です。 だか ら、今の私 には、家庭 が幸せの原点です。」 次の学生 はある出来事 を通 して 「家族が さ

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市沢 ▲短大生が考 える 「幸せ」 につ いて さえ となる」 と考 えるようになった。 「私 は、今 まで家族なんているのがあた りまえで、本 当に空気 の ように思 ってい たけど、 この短大の入試 を受けるとき、 弟 とお母 さんが 『おまえが努力 していた ことは家族みんなが知 っているか ら夢 に 向か ってがんばれ」 と書 いて くれた手紙 をもらった時、私 にはこんなに陰か ら私 の ことを見守 って くれて いる温かい家族 がいるのだ とい うことにハ ツと気づ き、 心か ら幸せだ と思 い ました。 いつ も陰か ら応援 して くれている人の存在があるの で毎 日精一杯がんばることがで きます

この学生 は、家族 を 「空気の ように思 って いた」 こ とに気付 くすば らい しい学 びを した。 われわれの身の回 りにあ るものが、あま りに も自然に、静かに存在 してい るので、その大 切 さ、いや、 その存在 に も気がつか ないこ と が よ くあ る。家族の思 いや りi)その一つか も しれない。優秀 の優 の字 を二分 す ると、『「人」 を 「憂」 う』 になる。優秀 とは記憶力 ・理解 力に秀 でてい るのではな く、人 を憂 う (心配 す る)こ とに秀 でていることになる。「家族が 幸せ の原点」 と記 した学生が いたが、マザー ・テレサ も 「愛 は家族か らは じまるのです よ。 聖書にそ うは っき り書かれてい ます」 とイン タヴューに答 えていた。16マザー ・テレサに と って、家族 とは一緒に住んでい るシスター た ちであ り、介護 をす る人で もあ るのだ。確か に、 自分 の家族 を愛せ な くて、 どうして他 人 を愛す るこ とがで きるのか。すべ ての人間関 係 は家族か ら始 ま り、その土台はお互いを「思 いや る」、「憂 う」、「心配す る」、 「愛す る」 こ となのだろ う。「家族が空気」であ ることを別

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の角度か ら梅 香彰 氏は次の ように述べ てい る。 「わた したちは家族 とい う深 い人間関係 に よ って 自分 が生 か されてい るのだ と認識す る必 要が あ る ・・・。地球 とい う環境 が大切 だ と お もうな ら、命の源 である水や 空気 に感謝 し なければな らない。 わた したちは社会 の なか でい きるが、家族 とは社会の なかの水や空気 なのか もしれ ない。水や空気 は地球上 に生命 を生む。 だか らこそ、水や空気 が大切 なのだ。 同 じよ うに、家族 は社会 を構成す る人間 を生 み出す。地球 に とって水や空気が大切 なよ う に、 この社会 に とっては家族は もっ とも大切 な ものなのだ。水や空気が きれいでない と地 球 の環境が壊 れて しま うよ うに、家族が壊 れ れば、社会 に も大 きな亀裂が入 るのは当然の こ とであ る。」17 7.人 との交わ り

人のため に何 か をす るとき 5名の学生が、「人のために何 か をす る」と き幸せ に感 じる と記述 した。 これ を職業 とし て、 または 日常 の生活の中で実践す る二はな か なかむずか しいことだろ う。 『幸福 の探究』 の なか で木 原武一氏は 自分 の経験 を通 して、 人に必要 とされ、役立つ ことで幸福 な体験が 与 え られた と書いてい る。氏は5年 間、奥 さ んの病気 の看病 を した。 その間、 しだいに何 か新 しい感覚 の よ うな ものが芽生 えて くるの を感 じ、「や さ しい気持 ち」が泉 の よ うに心 の 底 か ら湧 いて くるの を 自覚 した とい う。18そ の こ とに気がつ いた とき、看病や 多忙 な家事 労働 は彼 に とって新 しい意味 を持つ よ うにな った。「それは耐 え忍ぶばか りの 『負担』では な く、人間の なかにひそむ貴重 な もの を引 き 出 して くれ るかけが えのない体験 にお もわれ

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78 清泉女学院短期大学研 究紀要 (第15号) て きたのであ る。 しか し、 それ を人間の幸福 とい った もの と結 びつ けて考 え る ところ まで はいた っていなか った。死 に行 く人間 を前 に して、不幸 とか幸福 とか い った こ とを考 え る ゆ と りもなか った。」その よ うな状 況 の 中で氏 はナ イチ ンゲー ルの次 の言葉 に出会 った。「も っ とも幸福 な人々、 自分 の職 業 を最 も愛す る 人々、 自分 の人生 に もっ とも感謝 の念 を抱 い てい る人び と、 それ は私 の考 えでは病 人の看 護 に携 わ ってい る人々 であ る

「看護 は犠 牲 行為 であ っては な りませ ん。 人生 の最 高の喜 びの ひ とつ であ るべ きです。」氏 は後 に 「あれ ほ どの熱意 と集 中力 を もって生 きた時 間はほ か に なか った」、それが幸福 とい うものだ った のか もしれ ない と思 うよ うにな った。 英語 の

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は職 業、 また は天職 と も訳 され る

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llの動詞 の意味が 「呼ぶ」であ るか ら、 だれかか ら 「呼 ばれ るこ と、召 され るこ と」 であ る。 自分 に与 え られ た こ とをす るこ とが使 命 であ り、職 業 であ る。犠牲 に な る と は考 えず、 それ を続 け るこ とに幸せ を感 じる。 誰か のために何 か を したい と思 う学生 は こ の こ とにつ いて どう考 えてい るのだ ろ う。 「幸せ とはだれか大切 な人の為 に何 か を して、 それ をその人が喜 んで くれ るこ と だ と思 う」 「誰 かが悲 しか った り、つ らい思 い を し ている ときは 自分 も悲 しか った り、 つ ら か った りして しまう。 だか ら、苦 しんで い る人がいれば、みんなで助 けあ う必要 があ ると思 う

「昔 は、かな りガキで、「自分 さえよけれ ば』的 な ところがあ った。極度 な寂 しが り屋 で、今 で も一人 になる事が イヤだな あ と思 って しまう。 その くせ に大声 で笑 った りす るか ら、 よ く人 に 『悩 みな さそ うで いいね」 と言わ れた。 高校 の先生 に 「オマ工は悲 し くて もそれ を消 して、笑 って ご まかすか ら時 には本 質 をだせ よ」 と卒業式の時 に言われた。私 はその言葉 を聞 いて内心 ドキ ッと しなが らも、 また 笑 って しまった。 なんか、 うれ しか った。 そ して、人 には言 えなか った こととか、 すべて この先生 は見 えてたんだなあ、 と す ご く恥 ずか し くな って しまった。私 は その先生の一 言 で心 が軽 くな って、幸せ な気分 になれた。 ちゃん と私 を見抜 いて いたんだなあ と思 う。私 も、 そ うい うふ うになにげない一言 で相手 を ドキ ッとさ せ て、幸せ に してあ げたい と思 う。人の 為 に。 それが私 の幸せ。」 「私 は長野県 に生 まれて良か った と思 っ てい ます。東京 と比べ て、す ごい田舎 だ け ど、 ここの、 のん び りと した暮 ら しが 好 きです。将来、 この田舎 で保母 にな り たい と思 ってい ます。子供 時代 をの びの び過 ご して、長野 県 に生 まれて良か った と思 って くれ る子供 が いた ら、 それは私 に とっての幸せ です

∫.S.ミルは、 自分 の幸福 を直接の 目的に し ない場合 に、か えってその 目的が達成 され る と考 える。 自分 の幸福 で ない何 か他 の 目的の ため に、 た とえば他 人の幸福 のため に働 き、 その過程 で、 または、結果 として幸福 が得 れ るのだ とい う。 愛 す ること/愛 され るこ と

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ル イスは愛 の種 類 を次 の4つ に区別 した :愛着 (親 しんだ家具 、古着、 人に愛着 を もつ、お互 いの ため に作 られていない よ う

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市沢 :短大生が考 える 「幸せ」 につ い て な愛)、友愛、恋愛、絶対愛 (母親が子に対 し て持つ よ うな献身的、犠牲的愛)。清泉の学生 は この 4つの なかの どの愛 を経験 しているの だろ う。 愛着 : 「人、植物、動物、何か を愛 してい れば幸せ」 友愛 : (前述、「友人」の項 目を参照) 恋愛

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「自分 を思 って くれ る人がいること」 「愛 を感 じるとき :大好 きな人 と、 一緒 に 日向ぼ っこ していて、ふ と、 耳 もとで F好 きだ』 なんていわれた ら

「人 に愛 して もらうことかな、 そ し て私 も愛 したい (くさい言葉だが、 今 はそんな気分)」 「自分が人 を好 きになれること、 自 分 が好 きな人達 に愛 され ること

絶対愛

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「家族の愛 をず っと受けいれている こ と (もちろん、寝 ることだって、 おい しい もの を食べ ることだって し あわせだなあ と感 じるけれ ど、 それ は一瞬の幸せ にす ぎない と思 う。 家 族 とい う存在の中に私がいるとい う ことが、私 に とって、永遠の幸せ で あ り、仲 間がいる とい うことが、一 生涯の幸せだ と思 っている)

「だれ も憎 まず、 だれに も憎 まれないこと

と書 いた学生がい るが、 これは消極的な愛 と してこの項 目にいれた。 信 じること 「信頼で きる人がい ること」、「信 じること」 が幸せ であ る と考 えた学生が それぞれ

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名づ つ いる。 79 「人生のわずか しか生 きていな いけれ ど、 今 まで誰 か を犠牲 に して まで大切 な人達 を信 じることがでかなか った。 その ため、 自分 自身 を追 い込み、「傷 つけた くない』 とい う相手 に対す る思 いが裏 目に出て、 か えって、傷 つけて しまったこ とが よ く あ った。「信 じること」は不安 もあ り、難 しいこ とだけれ ど、今 まで私が生 きて き たなかで、幸せ になれるには F周 りの人 達 を信 じること」だ と思 う。」 8. 日構 目標 を持つ 「人間は意欲 し、創造す るこ とに よっての み幸福 であ る」19とア ランは 『幸福論』で述べ てい る。 どんな職業 も、 自分 が コン トロー ル で きるときは愉快 であろ うし、 もし、だれか に服従 しなければ ならない ときは不愉快 であ ろ う。 人間は もらった楽 しみには退屈 し、 自 分 で獲得 した快楽のほ うをは るかに好む もの だ、 と彼はい う。 自分が したいこ と見つけ、 次 にそれに向か って突 き進んだ とき、実際に それが実現 で きな くとも、 自分 で決め た とい う満足感が得 られ る。調査の中で も 「目標 を 持 って一生懸命や る」 こ とに幸せ を感 じてい る学生が11名 いた。 ドス トェ フスキー は、強 制 させ られ る無意味な仕事 ほ ど耐 え られ ない ものはない、 と監獄 の囚人の仕事 を例 にあげ る。 もっ とも凶悪 な囚人で も、水 を一つの桶 か ら別 の桶-移 し、 またそれ をもとの桶 に戻 す、土の山 をひ とつの場所か ら他 の場所へ移 し、 またそれ をもとへ戻す とい う作業 をさせ た ら、 四、五 日もしたら首 を くくって、 自殺 で もす るだろ うと推測す る。 清泉 の学生 では11名が 目標 を持つ こ とに幸

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80 せ を感 じてい る。 清泉女学 院短期 大学研 究紀要 (第15号) 「目標があ るこ と。 それがな い ときほ ど み じめな もの はな い。 目標 とい って もそ んなだいそれ た もの でな くて身近 な こと で、 ひ とまず それ に向か って生 きて い く よ うな ことが あれば幸せ だ と思 う

「将来 め ざす分野 につ いて勉 強 で きるこ と (世の中には、病気 と闘 って、 自分 の 好 きな ことが満足 にで きない人が大勢 い るの で、 その よ うな人の こ とを思 うと私 は賢 沢なほ ど幸 せ です。」 ドフ トェ フスキー は 目標 に向か って行 く過 程 が幸福 であ る と考 えた。 コロンブ スが幸福 であ ったのは、彼が ア メ リカ を発 見 した時 で ●は な く、発見 しつつ あ った時 で、発見 した と きでは ない と断言 してい る

。「

∼ しつつ」時の 幸福 として学生が あげた具体 的 な例 は、「旅 に 行 く前 夜」、 「旅 に行 く計 画 を た て て い る と き」、 「コンサー トに行 く前」が あった。 また、 何 か を努 力 して獲得 す る目標 とは次 元が違 う が、 「寝 る前が幸せ 」であ る と考 えた学生 は6 名 いた。 目標 の実現 「目標が実現 され る」 こ とに よ り幸せ を感 じる学生 は5名、「好 きな事 が で きる とき」(5 名) 「ほ しい ものが手 に入 った とき」 (3名) であ る。 どの学生 も、 目標 ・好 きなこ と ・ほ しい ものが何 であ るのか を具体 的 に書か なか った。 そこが一番 聞 きたい ところであ るのだ

が。

自分 の 目標 を実現す るため には当然 それ相 応の努 力が必要 であ るが、清泉 の学生 は どの 程 度努 力 を してい るのだろ う。 マ- トマ ・ガ ンジー は 「一 人に可能 なこ とは万 人に可能 で あ る」と言い、英語 の諺 に も"W herethereis awill,thereisaway,"(意志 のあ る ところ、 道 あ り)が あ る。 日本 の学校教育、社会 では これ を実践 してい るよ うだ。 ラ ッセルは、大 きな富のおかげ で人間が努 力 しないで 自分 の きま ぐれ を満 足 させ られ る場合 は、生活 に努 力が不要 になった とい うだけで、幸福 は奪 わ れて しま う、 と言及 してい る。す なわ ち、簡 単 に 目標 が実現 で き、好 きなこ とがす ぐで き、 ほ しい ものがす ぐ手 に入 る場合 は、幸福 感 は 減少す る。逆 に、努 力 して得 るこ とに よ り、 初 め て人間は よ り一 層幸福 を感 じる。 しか し、 自分 の限界 も知 らなければ な らな い。 カン トは 多少考 え るこ とが で きる鳩 を例 に使 う。 もっ と速 く飛 びたい と思 う鳩 は上 空 に行 けば行 くほ ど、空気 の抵抗が少 な くな る はず だか らと、上へ、上へ と舞 い上が る。 し か し、鳩 は空気不 足 で死 ん で しま う。 これ は 科学 の進歩に人間の経験 が対応 で きない とう 人間が直面 してい るパ ラ ドックス、 人間の限 界 を説明 してい る。聖 ア ウグスチ ヌスの 「賢 者は 自分 の限界 を知 る」 とい う教 えは 日常忙 しい人に とって考 えなければ な らないこ とだ ろ う。 ラ ッセル も過 度 に な らない程 度 に 自己 の能力 を高 く評価 す るこ とが幸福 のひ とつ の 源 であ る とも述べ てい る。孔子 いわ く、「心の 欲す る所 に従 え ども、矩 をこえず」。限界 を意 識 しなが ら も、 目標実現 の ため に進んでい る 二人の学生 の例 をあげ る。 「何かを一生懸命やって、もう自分の限 界というくらいまでや って、やり遂げた と

き」

「将来、ま

、今現在 、こうして健康 で 自分のやりたい事、夢 に向かって進むこ

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市沢 :短大生が考 える 「幸せ」 につ いて とだ。誰 に何 を言われようとも、大 きな 困難 にぶつか ることも、打 ち砕 き、乗 り 越 えて行 くことも幸せだ と感 じる。過去 を振 り返 ることも、未来 を夢見 るの も幸 せである

9.明 るい/笑 いのあ る生活 「一度 きりの人生、一 日一 日大切 に、明 る く生 きられることが 自分の幸せだ と思 う」 「明 る く過 ごせ ること

「毎 日を大切 に、明 る く生 きられること」 3名の学生が 「明 るさ」 を幸せ の要 因 とす るO 「明 るいこ と」とい う意味か ら由来 してい る ドイツ語Heiterkeit(朗 らか さ)を例 にあ げ て、 シ ョウペ ン- ウアー は幸せ を説 明 す る。20彼 いわ く、種々の財宝の うちわれわれ を 幸福 に して くれのは、心の朗 らか さである。 なぜ な ら、 この性格 その ものに よって人は報 われ るO若 くて、美男で、金持 ちで、世 の尊 敬 を集めた人間 で も、 この人が幸福か どうか は、朗 らか な人間か どうか とい うことだ。逆 に、朗 らか な人間だ とすれば、年齢、貧富に 関係 な く、幸福 なのだ。朗 らか さが今来 ては 困る とい う時はない。朗 らか さはそれが その まま利益 になる幸福 の正貨だ とい う。 ちなみ に、漢字の 「朗」も「良い月」、す なわち、「満 月」、明 るいこ とを意味 してい る。 この明 るさ と関連 して、笑いがあるだ ろ う。 「笑 う門には福 来 る」 ともい うが、 7名 の学 生 は笑 いが幸せ を導 くもの と考 える。 「家族や友達が嫌 なこともな く、みんな 笑 ってい られて、 自分 も笑 っていられ る 81 ときに幸せ を感 じる」 「一 日一 回で も、家族が そろって、笑 っ てい られれば、 当 り前の ことだけ ど、 う れ しく思 い ます

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平凡 な生活 ベ ンサムは人間は快楽 と苦痛 とい う二人の 支配者の下 で生活 してい ると考 え、 われわれ の行動 を指示 し決定す るのは、快楽 と苦痛 だ けだ、 と結論づ けた。 シ ョウペ ン- ウア- ち 「苦痛 のあるな しが、人生の幸福 をはか る も の さ しである」 と述べ ている。す なわち、苦 痛 を減少 させ 、快楽 を増進すれば、幸福 に感 ず る度合 も増す とい う見方 であ る。 では、苦 痛 を減 らす方法 はあ るのか。 7■ッダの教 えで は、苦痛 を感 じるのは、我々が もの を望 むか らであ る。 ゆえに、望 む もの を少 な くすれば、 苦 しみ も少 な くなる。 しか し、何 か を欲 す る とい うこ とは、われわれ、人間に組み込 まれ たプ ログラムの一つであ り、 この欲望 が なけ れば生存で きない。欲望 のあ る ところには必 ず、 その欲す る対象があ ると考 え られ る。喉 が乾 いた ときには、喉 を潤す水 が ある。 空腹 を感 じる時には、お腹 を満 たす 食べ物が あ る。 愛 したい と思 うときは、か な らず まわ りに愛 す るべ きものが あるようだ。結局、何 を望 む か で 自分 の幸福度が違 って くるのだろ う。 偉 人の生涯 は、二、三、の偉大 な瞬間 を除 けば、興奮 にみ ちた ものではなか った とラッ セルはい う。 ソクラテスは生涯 の大部分 を、 妻 とともに静かに暮 らしたo カン トは、一生 涯、 自分が住 んでいた町か ら

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キロ以上離れ たこ とは一度 もな く、毎 日、規 則正 し く、散 歩 と読書、著作 に専念 した。 ダー ウィンは、 世 界一周 をしてか ら、 その後の生涯 をず っ と

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82 清泉女学院短期大学研究紀要 (第15号) わが家 で過 ご した。 マル クスはい くつかの革 命 をお こ したあ と、残 りの 日々 を大 英博物館 図書室 で過 ご した。静か な生 活が偉 大 な人々 の特徴 であ r上 彼 らの快楽 はそ と目には刺激 的 な もの では なか った とい うこ とだ った。孔 子 は諸 国 を遍歴 したあ と、次 の言葉 を残 した。 「粗 食 を食 らい、水 を飲み、肱 を曲げて これ を枕 とす。楽 しみ またその 中にあ り。不義 に して富み、かつ貴 さは、 われ において浮雲 の ご とし。」と簡素 な生活 を して余生 を送 った と

いっ。

20名 の清泉 の学生が質素 な平 凡な生活 をす るこ とに幸せ を感 じてい る。 ただ、彼女 た ち は まだ18歳 でいわゆ る偉大 な何 か を成 し遂 げ た とい う段 階 ではない。ここに、「平 凡」、「普 過/普段 」 とい う言葉 を使 用 して、 自分 の幸 せ な生 活 を描 いた もの をい くつか引用す る。 平 凡 : 「平 凡な毎 日を送 れ るこ と。平 凡だ と、 生 きてい くにはつ まらな いか も しれな い け ど、毎 日いいことばか りあるわ けで は な い し、逆 に悲 しいこ とが おこるか も し れ ない。 だか ら、普通 である平 凡な一 日 の方 が私 に とっては幸せ なの だ と思 い ま す。」 「私 が幸せ に思 える事 は 『平 凡」 ってい う言葉 がす ご く大事 に思 えた時 です。家 に 帰 れ ば、必 ず 誰 か が い る。 『お か え り』、FL、って らっ しゃい」 って い う言葉 が あた りまえだ とお もっていた頃 は きっ と今 が幸せ だ って事 に気 づ いてない時 だ と思 い ま した。 自分 に とっての幸せ は、 家族 が いて、 みんなが健康 で、友達が い る、 た ったそれだけ と思 う人 もい る と思 うけ ど、 た ったそれだけが、本 当の幸せ だ と思 ってい ます。一 日一 日、何 もおこ らず に過 ぎていって しま う日をつ まらな い と思 うか、幸 せ だ って お もえるかの違 いだ と思 い ます。」 「朝起 きて、顔 を洗 って、 ごほん を食べ る。学校 に きて、友達 に会 って、話 をす る。家 に帰 ってテ レ ビを見 る。 そ して、 眠 って、朝 が来 る。 そんななんで もない よ うな こ との繰 り返 しが、 ・・・何 もな い、つ まらないよ うな平 凡な毎 日が幸せ なんだ と思 う。最近、ず っ と毎 日がつ ま らな くて、「何 を しているん だろ う私 は・

・・

』 といつ も考 えていた。周 りの人達 がみんな楽 しそ うに見 えた。『どうすれば 楽 し くな るんだろ う」 といつ も考 えてい た。 で もそんな ことをず っ と考 えている うちに、何 もない、 日常の生活が実は一 番幸せ な こ とじゃないんだろ うか と思 え るよ うにな った。心 を穏 やか に、や さ し くのんび り、何 もない生活 をゆ った りと 送 るこ とが幸せ なの だ

普通 : 「普通 に暮 ら し、普通 に人生 を終 える。 これ もその人が幸せ だ った と思 えば、幸 せ だ と思 う。人か らもの を もらえば嬉 し いけれ ど、幸せ は 目に見 えな い ものだ と 思 う。 お風 呂に入 った り、手 を動か した り、食事 した り、話 した り、今、私 たち が 当 り前 に して いるこ とが あ る 日、突然 で きな くな った らと思 うと、 その とき、 初 めて、 その こ とを していた時 に戻 りた い、 と思 うと同時 に、 その価値 に気付 く と思 う。現在、私 に足 りな い ことは沢 山 あ る し、欲 しい もの も沢 山あ る。 けれ ど、 私 は、今 、幸せ だ と思 う

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市沢 :短大生が考 える 「幸せ」につ いて 「体 もどこ も不 自由な ところはない し、 毎 日の生活 に も困 って いない し。 こ う し て、毎 日元気 です ごせ るこ とが、幸せ な んだ と思 う。 そ して、精神 的 に も満 た さ れていれば もっと幸 せ なんだ と思 う。」 「この地球 の どこか には、 その 日の食 べ 物 さえ もろ くにない とい う人が いる。今 まで18年間生 きて きて、私 はそ うい うこ とは一度 もない。好 きな時 に好 きな もの が食 べ られて、好 きな事 がで きて、好 き な時 に寝 られ る。 そんな普通 の生活が幸 せ だ と思 う。」 「ひ とは上 ばか りみて しまうか ら、 お金 持 ちの人 はぜ いた くで きて よさそ うだけ ど、 だいたい 自分 自身普通 であ るこ とが 一番幸せ なんだ とい う事 を忘 れた くな い と思 ってい ます。 そ う思 って いる と毎 日 が幸せ で いっぱいです。」 「平 凡」、 「普通」 とうい う言葉 以外 に学生 は 「平 和 に暮 らす」、 「あ た り まえ に あ る 日 常」、 「あ た りまえの よ うに過 ご して い る こ と」、 「何 もな い 日常の生 活」、 「毎 日何事 もな く無事 に暮 らしているこ と」 を使 用 した。 そ の他 、次 の よ うな こ とを書 いて いた。 「何不 自由 もな く生活 してい る。 それ だ けで幸せ だ。(耳 や 目が悪 い とテ レビも見 れない し、何 も始 まらな い。運動 もで き な い し、人の言 うこ とも聞 こえな い。 で も私 たちは何 の不 自由 もな く生活 してい る。」 エ ピキュ リア ン (快楽 主義者)の元祖 とし て知 られてい るエ ピクロスは、快楽 は官能 的 満 足では な く精神 的満 足に よってのみ与 え ら 83 れ る もの、す なわ ち、心 の平静 が あれば よい、 とい って い る。 「快 (栄)が 目的 であ る とわれ われが言 うとき、 ・・・道楽者 の快 で もなけ れば、性 的 な享楽 の うちに存す る快 で もな く、 肉体 にお いて苦 しみの ない こ とと霊魂 にお い て乱 され ない (平静 であ る) こ とにほか な ら ない。 ・・・快 の生 活 を生み 出す ものは、つ づ け ざまの飲 食や宴会騒 ぎで もなければ、 ま た、美少年や婦女 子 と遊 びたわむれ た り、魚 肉その他 、ぜ いた くな食事 が差 し出すか ぎ r) の美味美食 を楽 しむ た ぐいの享楽 で もない ・

・」21 多 くの清泉 の学生 に とって平 凡で普通 の生 活 ではあ るが、健 康 で、何 不 自由の ない生活 が心 の平和 を与 えて くれ る もの として理解 し てい るよ うだ。 ll.今 /生 きて い ること 「nowhere」、この単語 の音節 の切 れ 目はno -where,副 詞 の 意 味 は 「ど こ に も - ・な い、 どこへ も ・- ない」、名詞 は 「名 もない 場所 、 どこ とい って と りえの ない ところ」 と あ り、22否定 的 な意味 に な る。そ こで、次の文 を訳す とどうな るか。Thereisnowhereto befunandimportantinlifeforme.私 に と

って人生 で楽 し く、重要 な ところなんか どこ に もない。 随分 ニ ヒル な人生観 にな って しま う。 しか し、 ち ょっ と見方 を変 えて、 この単 語 の音節 の切 れ 目を無理 や り変 えて 、now-hereとして、文 を作 り替 えてみ よ う。There isnowheretobefunandimportantinlife formeexcept`now'and`here.'私 の人生 に

とって、 「今 」 そ して、 「この場所」以外 に楽 し く、重要 な ところはない。ど うだ ろ う ? こ の よ うに考 え る と、 人生観 もが ら りと変 わ り、

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84 清泉女学院短期大学研究紀要 (第15号) 昨 日で もない、明 日で もない、 この瞬間 を生 きよ う、大切 に しよ うと、新鮮 な毎 日が送れ るのではないか。 この考 えは、茶道の一期一 会 とも共通 してい るところがあ る。部屋 の中 には生 け花があ り、壁にはその季節にあった 絵が掛けてあ る。料理 も季節の野菜 と新鮮 な 魚。今、あなた と私 は こ うしてお茶 を飲んで い るが、明 日の こ とは分 か らない。 さあ、 こ の時、 この場所 を大切 に し、今 を楽 しみ まし

ょう。

「今」 の大切 さを感 じている学生は5名、 「生 きているこ と」が8名 いた。 「自分が生 きていると実感 した とき

「以前、友達 を事故でな くした。 その時 に私 は友達がで きなか った事や生 きられ なか った分 も頑 張 ろ うと,い こ決め ました。 今、私の周 りには、何 で も相談で きる友 達や大好 きなひ とがい ます。本 当に特別 な事 じゃないけ ど、生 きていることを幸 せ に思 ってい ます。」 I 「自分が不幸だ と思 っていて も、他の人 か らは幸せ に見 えているか もしれ ませ ん。 それは、その人の価値観の問題 だ と思 う。 病気 を もっている人 は健康 でいるだけで、 お金 なんかな くて も幸せに思 うで しょう。 だか ら、今の私 は幸せか もしれ ません。 勉強で きることも、歩 いていることも、 生 きていることすべ て、幸せな ことだ と 思 い ます

1

2

.

その他 学生が書 いた もの をその まま列記す る。 「本 当の幸せ って良 くわか らない」 (5) 「手紙やハ ガキが きた とき」 (2) 「お小遣 い入 った時」 「ぬい ぐるみ を抱 き しめた りす るとき」 「遊 んでいるとき」 「みんなが幸せな とき」 「バ イ ト料入 るとき」 「私の誕生 日」 「車の免許 が とれたこと」 「家か らスーパーが近 い」 一 定義 として -「幸福 は何か」 を説明す るとき具体的な も の を書 いた学生 と、「幸せ」の定義 を書 いて く れ た学生がいた。後者 をここで取 り上 げ、学 生 の文 を引用す る。 1. 自分 が楽 しい/幸せ と感 じた とき (3) 「自分 が心か ら楽 しい と感 じた とき (衣 人 と話 しているとき、遊 んでいるとき、 家族 といるとき、 どんな ときで も)

「ほんの小 さな ことで も幸せ を感 じる : 寒 い時、 おこたつでみかんを食べる日常 生活 を してい くなかで、一 日に きっと自 分 では気付 いていないけ ど、幸せ を感 じ ていることがあると思 う。 その幸せ を感 じる こ とが 自分 に とっての幸 せ なの か な ?っと思 う」

2.

自分 でつかむ もの

(3)

「一瞬 か もしれない し、長 い ものであ る か もしれない。何が一番幸せなのかは言 い切 る ことは難 しい。決 して逃げること ではない。か といって、突 き進 むことだ けが幸せ で もない。

(19)

市沢 ■短大生か考 え る 「幸せ 」 につ いて 「むやみ に幸せ と口にだす こ とは本 当の 幸せ ではな い気 がす る。幸せ は 自分 で探 して、つかんで おか ない といけない もの。 まだ、本 当の意味 での幸せ とい うこ とを 理解 していないだけか もしれない。」 3. な くした時 に気づ くもの (3) 「自分 を見失 った時初 めてわか る ものか も しれな い」

4.

自分 に充実感 を もた らす もの (1) 「日々の生 活がその人 に とって充実感 を もた らす もの であれ ば、 それが しあわせ。 最近 『しあわせ』 を感 じた こ とがあ った か な。 ただ毎 日が過 ぎて行 く感 じ

5. 自分 のためになっている もの (1) 「あ とにな って辛 い事 も自分 の ため にな って いれば幸せ と思 う」 6. 比べ られ るこ との ない世 界 (1) 「今 の 日本 って、学歴

×2

ってぽ っか り で、学歴 だ け じゃ、表わす こ とので きな い才能 もあ る と思 うか ら、学歴社会 じゃ な くな ったな ら、 きっ と幸せだろ うな。」 7. 自分 の居場所が あ る (1) 「自分 が 自分 でい られ る場所 があるこ と

.

まとめ

学生 は「人 との交 わ り」、 その 中で も「友 人」 に幸せ を求め てい る。幸せ を感 じるときの第

1

位 であった。 一 日の大部分 は学校 での生活 であ り、 そ こでの人間関係 が 自分 の位 置付 け を きめ るわけだか ら、順位 の結果 は当然 だ ろ 85 う。 ただ、 ここで問題 としたいの は、彼女 た ちが、今 まで どの よ うな友 人関係 を持 って き たか で あ るO保育 EElか幼稚 園に入 園後、 同 じ よ うな服装 で同 じよ うな もの を持 って登 園 し、 同 じ場所 で、 同 じよ うな遊 び を して過 ごす。 以後高校卒 業時 まで、画一 的 に教育 され るな か、数 人の同 じ仲 間 と過 ご し、一 日が終 わ る。 少 しで も違 うもの を持 ち、行 動 をす る と、 異 様 に見 られ る。 この よ うな同質文化 では、常 に他 人 を気 に しなければ、生 きて いけ ない。 そ うしなければ、 い じめ られ、 爪弾 きに な る。 - イデ ガー は 『お まえは死 に行 く存在 なんだ よ。気 を使 わなければ な らないの は他 人では な く自分 なん だ よ』 と自分 の良心 の呼 びか け が聞 こえないか とわれわれ に警告 す るo ひ と りの学 生が幸せ の定義 として あげ た 「自分 が 自分 でい られ る場所 が あ る とき」 とい う記述 では、 自分 自身 を周 りの人間か ら切 り離 し、 自分 を見つめ てみ たい、 自分 自身 であ りたい と切 に語 って い るよ うに思 え る。集 団生 活 で お互 い助 け あい、連帯責任制 でお互 い を見張 るこ とは 日本 の社 会が伝統 的 に要求 して きた こ とであ る。 しか し、 人間 であ る以上 、一個 人 としてのユ ニー クなア イデ ンテ ィテ ィー を 意識 し、確 立 しよ うとす るの は当然 であ る。 だが、 この社会 の なか ではそのア イデ ンテ ィ テ ィは 自分 が存在す る物理 的 な場所 (職 場 、 近所 、学校 ) とのかか わ りにお いて確 立 しな ければ、生 きてい くこ とが難 しい。 さ もなけ れば、村 八分 にあ う。 た とえ本 来のユ ニー ク な 自分 を失 った として も、友 と関係 を もつ こ とに よって、動物 としての生 存本能 を優 先 す るのか もしれ ない。 またあ る ときは、 自分 の 孤独 さを紛 らわす ため の手段、 または

、C.

S.

ル イスが い う感傷的 な関係 を もつ こ とに もな る。 本 来の 自分 を維持 しつづ け、 同時 に相 手

参照

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