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多孔質ジルコニアの安定性と機械的性質

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Academic year: 2021

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(1)

key words:人工歯根,ジルコニア,機械的性質

多孔質ジルコニアの安定性と機械的性質

藤森 一樹

1

,河瀬 雄治

2

,吉田 貴光

3

,永沢 栄

2,4

,伊藤 充雄

5 1総合インプラント研究センター 2松本歯科大学 歯科理工学講座 3インディアナ大学 歯学部 歯科補綴学講座・歯科材料学 4松本歯科大学 大学院 硬組織疾患制御再建学講座 5株式会社バイオマテリアル研究所

Mechanical properties and stability of the porous zirconia

K

AZUKI

FUJIMORI

1

, Y

UUJI

KAWASE

2

, T

AKAMITSU

YOSHIDA

3

,

S

AKAE

NAGASAWA

2,4

, M

ICHIO

ITO

5

1General Implant Research Center

2Department of Dental Materials, School of Dentistry, Matsumoto Dental University 3Division of Dental Materials, Department of Restorative Dentistry,

Indiana University, School of Dentistry

4Department of Hard Tissue Research, Graduate School of Oral Medicine,

Matsumoto Dental University

5Institute for Biomaterials Co., LTD

The thesis submitted to the Graduate School of Oral Medicine, Matsumoto Dental University, for the degree Ph.D. (in Dentistry)

Summary

  It has been reported that osseointegration between bone and a titanium implant ma-terial is affected by the titanium surface condition. The same theory is applied to a ceramic implant material. It is considered that dispersing pores on the ceramic surface facilitates osseointegration with bone. A double–layered implant material consisting of pores on the surface and a dense core was designed. The purpose of the present research was released

(2)

緒   言  近年,チタン製インプラント体をヒヒの口腔内 に稙立し,上部構造物として金合金製のクラウン を装着した場合,インプラントの周囲組織にチタ ンが溶出し,分布していることが報告されてい る1).また,チタン製インプラントにチタン製の クラウンを装着した場合,両者の材料の結晶粒の 大きさに差があると,チタンが溶出することが報 告されている2).また,チタンの溶出はアレルギー を誘発することも報告されている3).したがって, 口腔内で金属イオンの溶出が少なく,審美的にも 優れているセラミック製のインプラントが注目さ れている.  セラミックスの中でも強度が大きいジルコニア 製のインプラントが,現在海外においては臨床応 用されている.しかし,下顎の生存率が98.4%, 上顎に使用した場合の生存率は84.4%と,チタン 製インプラントの同9₇.2%,98.4%と比較して必 ずしも満足のゆくものではない4).この原因は初 期固定が遅いことにあると報告されている4,5).し たがって,インプラントが骨に早期に固定される ためにジルコニアの改良が必要であると考えられ た.その改良策として,インプラントの中心部分 は緻密で剛性の大きい材質にし,表面は骨の侵入 が得られやすい気孔を有するジルコニア製インプ ラントとすることが考えられる.また,ジルコニ アは単体では,正方晶から単斜晶に変態し結晶構 造が変化するのに伴って膨張して材質が変化する ことが報告されている6–8) .この変態を防止する ためにCaOやY2O3が安定化材として使用されて いる.  本研究では多孔質のジルコニアにおいて,どち らの安定化材を使用したほうがインプラント材と しての機械的性質と溶出に優れているのかを見極 めるため,気孔が存在し,CaOあるいはY2O3で安 定化したジルコニアを用い, 1 %乳酸溶液に浸漬 後の曲げ強さの変化と構成成分の溶出量の測定を 行ったので報告する. 材料及び方法 1 .材料  実験は表 1 に示すCaOで部分安定化したジル コニア(レプトン83₇PSC,菊水化学工業,岐阜, 日本,以下ZRCと表示する.)とY2O3で部分安定 化 したジルコニア(レプトン82₇PSZ,菊 水 化 学 工業,岐阜,日本,以下ZRYと表示)を用いて 行った.気孔率についてはJISR1634:1998(ファ インセラミックスの焼結体密度・開気孔率の測定 方法)9)に従って製造者が各 5 回測定した平均値 を表示した. 2 .曲げ強さの測定  測定はZRC,ZRYともに幅 4 mm,長さ25mm, 厚 さ1.2mm(ISO68₇2–2010,Dentistry–Ceram-ic materials.International Standard)10)の寸法 を有する試験片を用いて行った.曲げ強さの測定 は3₇℃の 1 %乳酸溶液(純正化学,東京,日本) and the mechanical strength of zirconia with 30% porosity. The bending strength before and after immersion in 1 % lactic acid solution, released component measurement. The re-sults were as follows:

  Y2O3 partiall stabilized Zirconia showed a higher bending strength before and after

im-mersion in lactic acid solution than CaO partiall stabilized Zirconia. The bending strength of CaO partiall stabilized Zirconia decreased greatly after immersion. The strain was larg-er in Y2O3 partiall stabilized Zirconia than CaO partiall stabilized Zirconia. The amounts of

dissolved component were higher in CaO partiall stabilized Zirconia than with Y2O3. It was

preferable to use Y2O3 partiall stabilized Zirconia for the implant material.

表 1 :ジルコニアの成分と気孔率

種類 ZrO(%)2 CaO(%) Y2O(%)3 その他(%) 気孔率(%)

ZRC 93.7 4.4 – 1.9 27.2±0.1

(3)

100mLに 5 ヶ月間浸漬した後の試験片と浸漬前 の 試 験 片 を 万 能 試 験 機(5882,Instron,Can-ton,USA)を用いて 3 点曲げを行った.測定は クロスヘッド速度1.0mm/分,支台間距離15mm の条件で各 ₇ 個の試験片について行った.測定に は支点径 2 mm,ポンチ径 2 mmの治具を用いた. 3 .溶出量の測定  3₇℃の 1 %乳酸溶液100mLに曲げ試験に用い る試験片(幅 4 mm,長さ25mm,厚さ1.2mm) 各 ₇ 個をエタノールで洗浄乾燥し,各試験片が瓶 に接触しないよう,浸漬瓶に懸架して浸漬を行っ た. 5 ヶ月間,静的浸漬後,溶液についてプラズ マ発光分析装置(ICPS₇510,島津製作所,京都, 日本)を用い,Zr,Ca,Yについて分析を行った. 溶液の分析は ₇ 個の浸漬瓶の内,任意の各 3 個に ついて行った. 4 .表面観察  表面観察はレーザ顕微鏡(OLS3000,島津製 作所,京都,日本)にてZRCとZRYの試験片を 用いて行った. 5 .統計処理  データの有意差検定には統計ソフト(エクセル 統計2006,社会情報サービス,東京,日本)を用 い,分散分析を行った.検定の結果,99%の信頼 限界についてはp<0.01と文中に表示した. 結   果 1 .曲げ強さ  図 1 に示すようにZRCの浸漬前の曲げ強さは 42.8±3.1MPa,浸漬後は5.3±0.5MPaであり,浸 漬後の曲げ強さは小さくなった(p<0.01).ZRY の浸漬前の曲げ強さは149.2±11.4MPa,浸漬後 は146.0±9.1MPaであり,ZRYについては差が認 められなかった.ZRYの 曲 げ 強 さはZRCより 大 きい結果であった(p<0.01). 2 .破壊時ひずみ  図 2 に 示 すようにZRCの破壊時のひずみは浸 漬 前 が0.12±0.01%,浸 漬 後 は0.16±0.01%であ り,ZRCの破壊時のひずみは浸漬後が大きくな る結果であった(p<0.01).ZRYの破壊時のひず みは0.30 ±0.01%,浸 漬 後 は0.29 ±0.01%であっ た.ZRYは浸漬前後の破壊時のひずみに差が認め られなかった.また,ZRCよりZRYの 破 壊 時 の ひずみが大きくなった(p<0.01). 3 .溶出量  図 3 はZRCからのCaとZrの溶出量を示す.Ca の 溶 出 量 は2.32 ±0.02µ/cm2,Zrは0.99 ±0.23µ/ cm2であった.  図 4 はZRYからのY溶 出 量 は0.095 ±0.003μ/ cm2,Zrは0.009±0.001μ/cm2であった.ZRCから の 構 成 成 分 の 溶 出 量 はZRYよりも 多 い 結 果 で 図 1 : 1 %乳酸溶液中に浸漬前後のジルコニアの曲げ強さ

(4)

あった(p<0.01). 4 .表面観察  レーザ顕微鏡でZRCとZRYの表面を観察した 結果を図 5 に示す.気孔の形態は両者ともに不定 形であり,孔径は50μm以下の大きさであった. 考   察  骨とチタン製インプラントとのオッセオインテ グーレションはチタンの表面状態によって左右さ れることが報告されている11).セラミック製イン プラントにおいても同様に表面状態が重要な因子 であることが 考 えられる.Lambrichら4)による とジルコニア製インプラントの生存率が下顎より 上顎で14%低いことを報告している.上顎での生 存率を向上させるためにはセラミック表面に気孔 を分散することにより骨との結合が得られやすく なると考え,ジルコニア製の気孔を有する試験片 を製作した.しかしながら,インプラント全体に 気孔が存在すると強度の低下が懸念される.した がって,表層は気孔が存在し,芯部は緻密体の 2 重構造を有するインプランの構築が望ましいと考 えられた.  そこで本研究は, 2 重構造にする前段階とし 図 2 : 1 %乳酸溶液中に浸漬前後のジルコニアの破壊時ひずみ量 図 3 :ZRCを 1 %乳酸溶液中に 5 ヶ月間浸漬時のCa,Zrの溶出量

(5)

図 4 :ZRYを 1 %乳酸溶液中に 5 ヶ月間浸漬時のY,Zrの溶出量 て,気孔を有するジルコニアについて,用いる結 晶安定化材と生体環境との関連を機械的強度から 検討することを目的に行った.  ZRCの浸漬前の曲げ強さは42.8MPaであり, 1 %乳酸溶液中に 5 ヶ月間浸漬した後の曲げ強さ は5.3MPaであった.ZRCは,浸漬前より浸漬後 において約88%も曲げ強さが減少した.一方, ZRYについては浸漬前の曲げ強さは149.2MPaで あり,浸漬後は146.₇MPaであった.ZRYでは浸 漬前と浸漬後の強度に差は認められなかった.成 分 元 素 の 溶 出 でもZRCのCaはZRYのYの24倍, ZRCのZrはZRYのZrの110倍も溶出しいていたこ とから,ZRCの浸漬による強度減少の原因はCa とZrの溶出によるものと考えられた.ZRYのYと Zrの溶出はZRCと比較して少量であったために 浸漬前後の曲げ強さは差が認められなかったと考 えられた.しかしながら,ZRYの曲げ強さは出口 の報告による緻密体の曲げ強さ1138.1MPa12)と比 ZRC ZRY 図 5 :表面観察の結果 較してきわめて低い測定結果であった.したがっ て、多孔質ジルコニアのみによるインプラント体 の作製は不可能と考えられた.  ZRCの 破 壊 時 のひずみについては 浸 漬 前 が 0.12%,浸 漬 後 が0.16%であった.浸 漬 後 が 約 33%の増加率であった.一方,ZRYの破壊時のひ ずみは 浸 漬 前 が0.3%であり,浸 漬 後 は0.29%で あった.ZRYでは浸漬前後の破壊時のひずみに差 は認められなかった.ZRCの浸漬前後で破壊時 のひずみが変化する現象は曲げ強さと同様に溶出 量に影響されたものと考えられた.  新生骨とインプラントの気孔の関係において Lu13)らは骨芽細胞がセラミクスの中に侵入する ためには20µm以上の孔径が必要であることと骨 成長には50μm以上の孔径が必要であるとし,辻 は,新生骨が気孔中に侵入し成長するためには 150から200μmの孔径が必要としている14).本研 究の孔径は50μm以下であり,骨の侵入は望めな

(6)

いため改良を加える必要があると考えられた.今 後,Y2O3で部分安定化したジルコニアを製作し, 表層は孔径50μmから200μmの気孔が存在し,中 心部は緻密体の 2 層構造のインプラントの強度試 験と埋植試験を行う必要があることが示唆された. 結   論  本研究はジルコニアの安定化材であるCaOと Y2O3をそれぞれに使用し,気孔を有するジルコニ アを製作した.そして 1 %乳酸溶液に浸漬前後に よる曲げ強さの変化,および構成成分の溶出につ いて検討を行った.その結果、次の結論が得られ た. 1 . 1 %乳酸溶液浸漬前後の曲げ強さはZRYのほ うがZRCより 大 きかった.また,ZRCの 曲 げ 強さは浸漬後に大きく減少した. 2 .浸漬前後の破壊までのひずみはZRYのほうが ZRCより大きかった. 3 .構成成分の溶出量はZRYより,ZRCが多かっ た. 4 .インプラント材料としてはZRYを使用するの が望ましいと考えられた. 文   献

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14) 辻 栄 治(1990) 生 体 用 金 属 材 料. 生 体 材 料 3 :159–6₇.

表 1 :ジルコニアの成分と気孔率
図 4 :ZRYを 1 %乳酸溶液中に 5 ヶ月間浸漬時のY,Zrの溶出量 て,気孔を有するジルコニアについて,用いる結 晶安定化材と生体環境との関連を機械的強度から 検討することを目的に行った.  ZRCの浸漬前の曲げ強さは42.8MPaであり, 1 %乳酸溶液中に 5 ヶ月間浸漬した後の曲げ強さ は5.3MPaであった.ZRCは,浸漬前より浸漬後 において約88%も曲げ強さが減少した.一方, ZRYについては浸漬前の曲げ強さは149.2MPaで あり,浸漬後は146.₇MPaであった.ZRYでは浸 漬前

参照

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