流
布
本
﹃
徒
然
草
﹄
の
係
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結
び
分布
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展
開1
流 布 本 『徒 然 草 』 の係 り結 び一 分 布 の 型 と用 法 の 展 開 一 序 ﹁ つ れ ぐ な る ま ・に ﹂ と 起 筆 さ れ 、 ﹁ あ や し う こ そ も のぐ る ほ し け れ ﹂ と 、 ﹁ こそ ﹂の係 り を 使 って、 己 然 形 で詠 嘆 的 に 結 ば れ る序 段 が 示 す よう に 、 王 朝 女 流 文 学 の文 章 に お い て発 達 を み た 係 り 結 び の形 式 を 、 中 世 の僧 侶 の手 に な る 随 筆 文 学 が 踏 襲 し て いる こ と は、 不 思 議 と い え ば 不 思 議 であ る 。 ﹁ ぞ ﹂ ﹁ な ん ﹂ ﹁ や ﹂ ﹁ か ﹂ ﹁ こそ ﹂ の五 種 類 の係 助 詞 の う ち でも こ の ﹁ こそ ﹂は 、 ﹃ 徒 然 草 ﹄諸 本 中 、 最 も 祖 本 に 近 い と言 わ れ て いる常 縁 本 に お いて 、 三 三 ・ 九 バ ー セ ント と い う 、 他 の係 助 詞 に比 べ て最 も 高 い使 用率 なヱ ロ で 用 い ら れ て い る 。 そ う し た 、 ﹁ こ そ ﹂ の優 位 と い う よ う な 大 局 的 な 事 実 は 、 流 布 本 で も 動 か な い で あ ろ う が 、 山 口 雄 輔 か え っ て 箇 々 の 用 法 に 見 ら れ る 一 見 些 細 な 相 違 の 中 に は 、 成 立 に も か か わ る よ う な 重 要 な 問 題 を か か え 込 ん で い る こ と が あ る 。 た と え ば 、 常 縁 本 に お け る 、 花 橘 は 名 に こ そ お へれ 、 梅 の に ほ ひ に こ そ 、 古 の こ と も 立 ち か へり 、恋 し う 思 ひ い で ら る る 。 ( 一 九 段 ) の よ う な 文 章 で 、 二 回 目 の ﹁ こ そ ﹂ の 結 び は い わ ゆ る 破 格 で あ る が 、 流 布 本 の こ の 箇 所 は 、 花 橘 は 名 に こ そ お へれ 、 な ほ 、 梅 の に ほ ひ に ぞ 、 い に し へ の 事 も 立 ち か へり 恋 し う 思 ひ い で ら る ・ 。 二 九 段 ) と 、 ﹁ こ そ ﹂ が ﹁ ぞ ﹂ に な っ て い て 、 結 び は 連 体 形 で 文 (19) -210一山 口 雄 輔 法 的 に 正 し く 応 じ て いる 。 ﹁ こそ ﹂を 含 む 文 と ﹁ ぞ﹂を 含 む 文 の中 間 に、 ﹁ な ほ﹂ が介 入 し てき ち ん と 分 か れ て いる のも 興 味 深 い 。 これ に つ いて 村 井 順 氏 は 、 平 安 朝 の文 法 を 正 し く 書 け な い の が む し ろ 本 当 で あ って、 こ う し た破 格 用 法 こ そ 、 常 縁 本 が ﹃ 徒 然 草 ﹄ の原 形 に近 い証 拠 で あ る と さ え 論 じ て お ら れ る 。 本 稿 で は 、そ う し た 論 議 に 立 ち 入 る 以 前 の 段 階 と し て 、 流 布 本 ( テ キ ス ト に は 、 烏 丸 光 広 本 を 底 本 と し た 日 本 古 典 文 学 大 系 を 使 用 ) に お け る 、 基 本 的 な 、 数 量 的 な 調 査 に よ る 各 係 助 詞 の 分 布 の 型 と 、 用 法 の 展 開 を 見 て お く こ と に す る 。 ︹注 1 ︺ 拙稿 常 縁本 ﹃徒然草﹄ の 係り結 び ﹁ 文教大学国文﹂第2 0号 ︹注 2 ︺村 井順著 ﹃常縁本徒然草﹄ ︿解釈と研究V九六頁 一 流 布 本 ﹃徒 然 草 ﹄ の 全 文 (和 歌 も 含 む ) に お け る 係 助 詞 ﹁ ぞ ﹂ ﹁ な ん ﹂ ﹁ や ﹂ ﹁ か ﹂ ﹁ こ そ ﹂ の 総 数 は 五 入 四 例 で 、 各 係 助 詞 の 比 率 は 次 の表 1 の と お り で あ る 。﹁ な む ﹂ ﹁ な ん ﹂ は ﹁ な ん ﹂ に 統 一 。 ﹁ や ﹂ は 疑 問 ・ 反 語 の 場 合 に 限 り 係 助 詞 と 認 め 、 い わ ゆ る 間 投 助 詞 の ﹁ や ﹂ は 除 外 し た。 百 分 率 の数 値 は 小 数 点 以 下 二 位 を 四 捨 五 入 し てあ る ので 、 合 計 の 一 〇 〇 パー セ ント の値 に多 少 の誤 差 が生 じ る こと があ る。 表 1 流 布 本 徒 然 草 (全 文 ) 百 分 率 用 例 数 28.6 0 167 (2) ぞ 1.7 a 10 な ん 15.8 0 92 や 20.2 0 118 (1) か 33.7 0 197 こ そ 100 0 584 計 注1 0 内 は 和 歌 に含 ま れ る 用例 数 。 表 1 の⇔ 内 は、 注 の示 す よ う に 和 歌 に含 ま れ た 数 で あ る が、 物 語 と 違 って 、 そ の数 は 極 め て少 な く 、 僅 か 三 首 し か な い。 次 に そ の三 首 を 掲 げ て、 和 歌 の方 を 先 にす ま せ て お き た いと 思 う 。 ○ 殿 守 のと も のみ や つこ よ そ に し て は ら は ぬ 庭 に花 ぞ 散 り し く 甌 (二 七 段 ) 注1 よ み 人 は 、 新 院 と 呼 ば れ た花 園 天 皇 ○ ふ た つ 文 字 牛 の 角 文 字 直 ぐ な 文 字 歪 み 文 字 と そ 君 ;20)
流 布 本 『徒 然草 』 の係 り結 び一 分 布 の 型 と用 法 の 展 開 一 は覚 ゆ る 甌 ( 六 二 段 ) 注1 よ み 人 は 延 政 門 院 ( 後 嵯 峨 天皇 第 二 女 、 悦 子 内 親 王 。 幼 少 の頃 父 上 皇 を 慕 った歌 。 ○ 秋 の野 の草 の た も と か花 ず ・ き ほ に いで て ま ね く 袖 と 見 ゆ ら ん 甌 (二 三 入 段 ) む ねや な 注-古 今 集 ・ 秋 上 の在 原 棟 梁 の歌 。 袖 と 袂 と い う 語 が 一 首 の中 に あ っても よ い か と い う 問 いに 定 家 が こ の歌 を 引 いて 答 え る。 ﹁ ぞ ﹂の結 び に動 詞 を と るも のが 二 首 、 疑 問 の係 助 詞 ﹁ か﹂ に 、 推 量 の助 動 詞 ﹁ ら ん ﹂ で応 じ た も の が 一 首 。 注 に 示 し た よ う に 、 いず れも ﹃ 徒 然 草 ﹄ の作 者 自 身 が 詠 ん だ 歌 で はな い。 本 稿 で は 、 和 歌 の係 り 結 び に つ い て は これ 以 上 論 述 し な い。 次 に 、 そ の三 首 を 除 い た散 文 の み の表 を 掲 げ 、 表 2 とす る 。 こ の表 か ら 更 に細 か く 引 き 出 さ れ てゆ く 事 実 が 特 徴 を 語 る こと にな る。 表 2 流 布 本 徒 然 草 ( 散 文 ) ぞ な ん や か こ そ 計 百 分 率 用 例 数 28.4 0 165 1.7 0 10 15.8 0 92 20.1 0 117 33.9 0 197 100 0 581 ﹁ こそ ﹂ が 三 四 % で最 も 多 く 、 二位 は 近 い 数 値 の二 入 % で ﹁ ぞ ﹂が続 き 、 ﹁ や ﹂ ﹁ か ﹂ は 共 に 一 〇 % 台 (﹁ か ﹂ が ﹁ や ﹂ を や や 上 回 る 程 度 ) 、 古 い 歌 物 語 な ど に 好 ん で 用 いら れ た ﹁ な ん﹂ は僅 か 一 % で最 下 位 であ る 。 な お、 こ のよ う に 表 の説 明 の際 に は 小 数 点 以 下 を 更 に 四 捨 五 入 し た数 値 で報 告 さ せ て い た だく 。 表 3 流布本徒 然草係助詞出 現順位 一 位 二 位 三 位 四 位 五 位 全 巻 こ そ ぞ か や な ん 表 3 は 、 出 現 の多 い順 に上 か ら 数 値 抜 き に 並 べ たも の であ る 。 こう す る と 順 序 が 一 目 瞭 然 な の で 他 作 品 と 北 較 す る の にも 都 合 が よ い 。 ﹁ こそ ー ぞ 上 位 型 ﹂ と でも 言 え よう か 。
鋤
跚
山 口 雄 輔 ﹃徒 然 草 ﹄ は ふ つ う 上 ・ 下 二 巻 に分 け ら れ て いる 。 百 三 十 七 段 か ら を 下巻 と す る分 け 方 に従 って、 上 ・ 下 券 別 の表 4 を 作 って お く こ と にす る 。 表 4 流 布 本 徒 然 草 巻 別 一 覧 (和 歌 を 除 く ) 下 巻 上 巻 25.5 0 51 29.9 0 114 ぞ 3 % 6 1.0 0 4 な ん 22 % 44 12.6 0 48 や 19 % 38 20.7 0 79 か 30.5 0 61 35.7 0 136 こ そ 100 0 200 100 0 381 計 例 に よ って、 百 分 率 な ど を 一 応 算 出 す る が 、 そ れ ら の 数 値 を 取 り 払 って順 位 の み の表 5を 作 っ て み る。 表 5 流布本徒然草 巻別係助 詞出現順位 一 位 二 位 三 位 四 位 五 位 上 巻 こ そ ぞ か や な ん 下 巻 こ そ ぞ や か な ん 表 2 と 表 5 を 比 べ て み る と 、 上 巻 は 、 表 5 の 全 散 文 順 位 ﹁ こ そ ー ぞ ー かー や ー な ん ﹂ と 全 く 同 じ で あ る が 、 下 巻 の 方 は 、 ﹁ か ﹂ と ﹁ や ﹂ の 転 位 が 見 ら れ る 。 上 巻 で は ﹁ か ﹂ が 六 五 例 一 七 % で 、 ﹁ や ﹂ の 三 八 例 一 〇 % を 上 回 っ て い た の に 、 下 巻 で は 、 ﹁ や ﹂ が 四 四 例 二 二 % で 、 ﹁ か ﹂ の 三 入 例 一 九 % よ り 上 位 に 来 て し ま う 。 以 下 、 本 稿 で は 、 上 巻 と 下 巻 の 差 異 を 無 視 し て 、 全 体 で 調 査 を 進 め る 。 表 6 は 、 地 の 文 ・心 話 文 ・ 会 話 文 な ど の 言 語 場 面 の 違 い に よ る 係 助 詞 の 分 布 の 状 態 を 見 よ う と し た も の で あ る 。 ﹁ 序 ﹂ で も 述 べ た よ う に 、 ﹃ 徒 然 草 ﹄ で は 、 ﹁ こ そ ﹂ が 最 も 好 ま れ て い る が 、 ﹁ ぞ ﹂ も 地 の 文 に は 多 い。 表 6 流 布 本 徒 然 草 (散 文) 124 ぞ 7 な ん 49 や 79 か 146 こ そ 405 合 計 (22)
流 布 本 『徒 然 草』 の係 り結 び一 分 布 の 型 と用 法 の展 開一 合 計 会 話 文 心 話 文 地 の 文 ., 0 165 (1) 16.4 a 37 (1) 11.1 0 4 30.6 0 1.7 0 10 2.1 0 3 1.7 0 15.8 0 92 20.7 0 29 ., 0 14 12.1 0 20.1 0 117 (1) 22.1 a 31 (1) 19.4 0 7 19.5 a 33.9 0 197 :. a 40 30.6 0 11 36.O a 100 0 581 (2) 100 0 140 (2) 100 0 36 100 0 注1 0 内 は消息文 の 数 で 会話文 に 含 めた 。 表 6 の注 O 内 は消 息 文 の数 で、 会 話 文 に含 め てあ る の だ が、 そ のう ち の 一 例 は 実 は引 用 さ れ た 和 歌 の部 分 であ る。 例 文 の下 の 鬮 は 会 話 文 で あ る こ とを 示す 。 ね ﹁ 折 な ら ぬ音 を な ほ ぞ かけ つる ﹂ と 弁 の 乳 母 の い へ る 返 し に鬮 ( = 二 八 段 ) ﹃ 千 載 集 ﹄ 哀 傷 の 部 に 弁 の乳 母 の歌 とし て 、 あ や め 草 涙 の玉 に ぬ き か へてを り な ら ぬね を な ほ ぞ か け つ る に拠 って いる こ と は 明 ら か で 、 下 の句 を そ っ く り と っ て いる 。 常 縁 本 では こ こ が ﹁ を り な ら ぬ ね を ぞ か け ら 剳 ﹂ とな って い て、 係 り結 び に破 綻 を 生 じ 、 ま た ﹁ な ほ ﹂ の語 も 落 と し て 引 か れ て いる。 こう し た 比 較 は 係 り 結 び の種 々相 に わ た って改 め て 行 う つ も り で あ る。 例 に よ って、 数 値 を 取 り 除 いて 出 現 順 位 の み によ り、 三 つ の言 語 場 面 別 に表 71 ω ② ㈹ を 作 る。 な お 、 ﹁ 誰 ﹂ のあ と の係 助 詞 ﹁ そ ﹂ は、 係 助 詞 ﹁ ぞ﹂ の濁 ら な いも のと 考 え て 、 ﹁ ぞ ﹂ の数 の中 に入 れ た。 僅 か 二 例 な の で次 に掲 げ る 。 いず れ も 会 話 文 中 の断 止 法 であ る。 た ○ ﹁ いろ を し 、 こ ・ に 候 ふ。 かく のた ま ふ は、 誰 そ ﹂ と 答 ふ れ ば 鬮 ( 一 一 五 段 ) ○ ﹁ 誰引 ﹂ と 見 向 き た れ ば 、 狐 、 人 のや う に つ いゐ て 鬮 (二 三 〇 段 ) 表 7 1 ω 流布本 徒然草 地 の 文中 の 出 現順位 (23) -206
山 口 雄 輔 一 位 二 位 三 位 四 位 五 位 地 の 文 こ そ ぞ か や な ん 地 の 文 の出 現 順 位 の上 二 位 に着 目 し て、 ﹁ こ そー ぞ 上 位 型 ﹂ と呼 ぶ。 表 71 ② 流 布 本 徒 然 草 心 話 文 中 の出 現 順位 一 位 二 位 三 位 四 位 心 話 文 こ そ や か ぞ 心 話 文 で は ﹁ やー こそ 上 位 型 ﹂ と な る。 表 7i ㈹ 流 布 本 徒 然 草 会 話 文 中 の出 現 順 位 一 位 二 位 三 位 四 位 五 位 会 話 文 こ そ ぞ か や な ん 会 話 文 で は 、 地 の 文 と 同 じ ﹁ こ そ ー ぞ 上 位 型 ﹂ で あ る 。 表 8 流布本徒 然草 (散文) 百 分 率 計 会 話 文 心 話 文 地 の 文 100 0 165 22.4 0 37 2.4 0 4 75.2 % 124 ぞ 100 0 10 30 0 3 70 0 7 な ん 100 0 92 31.5 0 29 15.2 0 14 53.3 0 49 や 100 0 11 26.5 % 31 6.0 0 7 67.5 % 79 か 100 0 197 20.3 0 40 5.6 0 11 74.1 0 146 こ そ 100 0 581 24.1 0 140 6.2 0 36 69.7 0 405 計 表 8 は 、 こ れ ま で縦 に見 て き た 比 率 を 、 横 に見 よ う と い う も の であ る。 表 9 流 布 本 徒 然 草 (散 文 ) (24)
流 布 本 『徒 然 草 』 の係 り結 び一 分 布 の 型 と用 法 の 展 開 一 一 位 二 位 三 位 ぞ 地 の 文 会話文 心話 文 な ん 地 の 文 会 話文 ナ シ や 地の 文 会話文 心 話文 か 地の 文 会話文 心 話 文 こ そ 地 の 文 会 話 文 心話文 全 体 地の 文 会 話文 心話文 例 に よ って 数 値 を 省 いて 表 9を 作 る 。 ど の位 も 横 一 例 に同 じ 言 語 場 面 が 整 然 と 並 ん で いる 。 つ ま り 、 ど の 係 助 詞 も 判 で押 し た よう に地 の 文 に 最 も 多 く 、 次 に会 話 文、 最 も 少 な い のが 心 話 文 と い う 使 わ れ方 を し て い る こ と が わ か る。 これ は 一 見 、 当 り 前 の よう に 見 え て 実 は 作 品 ご と に 異 な り 、 ま た 同 一 作 品 でも 、 係 助 詞 の 違 いや 異 本 に よ って表 中 に 揺 れ を 生 じ る も のな の であ る が 、 ﹃徒 然 草 ﹄ の場 合 は 流 布 本 も 常 縁本 も 全 く 同 一 で あ る 。 次 に、 各 係 助 詞 に対 応 す る 結 び の 語 が ど う な って い る か を 調 べ た 結 果 を 次 に 示 す 。 表 10 に よ れ ば 、 結 び が 助 動 詞 の も のが 四 一 % で 、 全 用 例 の半 数 に 近 い 割 合 を 占 め て いる こと が わ か る が 、 これ は、 助 動 詞 の種 類 も 多 い の で 、 ど の作 品 で も 共 通 の こ と で あ り 、 要 は ど ん な 助 動 詞 が 結 び に き て いる か が問 題 で あ る が、 そ れ に つ いて は 本 稿 後 半 で 改 め て触 狗 れ る こ と にす る。 動 詞 ・ 形 容 詞 が 一 〇 弱 で 比 較 的 多 用 ー さ れ て い る。 省 略 用 法 と断 止 法 も 動 詞 ・ 形 容 詞 を 上 回 る割 合 で かな り多 く 用 い ら れ て い る。 名 詞 で結 ぶ特 殊 な 用 法 も あ る。 表 10 流布本徒然草 係助詞 の 全 用法 係 り 用 法 動 詞 補助動詞 形 容 詞 形容動詞 助 動 詞 名 詞 省略用法 消去用法 法 止 断 計 合 一204一
山 口 雄 輔 百 分 率 総 数 こ そ か や な ん ぞ 9.5% 55 31 5 11 1 7 0.7% 4 4 9.3% 54 34 1 1 18 1.5% 9 6 3 41.7% 242(4) 93(2) 54 19(1) 4 72(1) 0.2% 1 1 15.8% 92 16 16 35 4 21 6.0% 35 16 13 1 5 15.3% 89 28 26 35 100% 581(4) 197(2) 117 92(1) 10 165(1) 注1 0 内 は破 格 用 法 の 数 。 そ れ で は こ れ か ら 、 係 り 結 び の用 法 の 展 開 を 、 実 例 に 即 し て見 て 行 く こと にす る 。 代 表 的 な 用 例 を 最 小 限 一 例 ず つは掲 げ て 行 く 。 各 係 助 詞 ご と に、 三 つ の言 語 場 面 では どう な って い る か、 横 に 百 分 率 を算 出 し た表 を 各 係 助 詞 ご と に 示す 。 結 び の 助 動 詞 の用 例 は 、 後 に ま と め て 掲 げ る 。 表 11 流布本徒然草 言語場 面別用法 会 話 文 心 話 文 地 の 文 ぞ 28.6% 2 71.4% \5 動 詞 係 り 用 法 50.0% 2 50.0% 2 補助動詞 11ユ% 2 88.9% 16 形 容 詞 100% 3 形容動詞 6.9% 5 4.2% 3(1) ..,. 64 助 動 詞 名 詞 5.0% 1 95.2% 20 省略用法 100% 5 消去用法 71.4% 25 2.9% 1 25.7% 9 断 止 法 22.4% 37 2.4% 4(1) 75.2% 124 合 計 (26)
流 布 本 『徒 然 草 』 の 係 り結 び一 分 布 の 型 と用 法 の 展 開 一 百 分 率 合 計 100 7 100 4 100 18 100 3 100 72(1) 100 21 100 5 100 35 100 165(1) 注ー O 内 は破 格 用法 の 数 。 1 ﹁ ぞ﹂ の係 り 用 法 1 結 び の品 詞 に よ る 分 類 ω 動 詞 そう が み やう もん ○ 増 賀 ひ じ り の い ひ け ん や う に 、 名 聞 ぐ る し く 、 仏 の 御 を し へに 違 ふ ら ん と そ お ぼ ゆ る 。 困 ( 一段 ) 注 -例 文 の 下 の囲 は 地 の 文 。 ○ 青 葉 に な り 行 く ま で 、 よ う つ に た .・心 を の み ぞ 悩 ま す 。 困 ( 一 九 段 ) 注 i 常 縁 本 の ﹁ 丈 六 の 仏 九 体 、 い と た ふ と く そ な ら び お は し ま す ﹂ の例 は ﹁ ぞ ﹂ が ﹁ て ﹂ に な っ て 係 り 結 び で は な く な っ た の で 代 り に こ の 例 を 掲 げ た 。 ○ 門 よ く さ し て よ 。 雨 も ぞ ふ る 。 鬮 ( 一 〇 四 段 ) ② 補 助 動 詞 ○ さ れ ば 、 ﹁女 の髪 す ぢ を よ れ る 綱 に は 、 大象 も よ く つな が れ 、 女 のは け る足 駄 に て つ く れ る 笛 に は秋 の鹿 必 ず 寄 る﹂ と そ 言 ひ つた へ 侍 る。 囲 (九 段 ) 注1 ﹁ 侍 り ﹂ が地 の 文 に 見 え る例 。 常 縁 本 の ﹁ 入 重 桜 は奈 良 の都 の み にあ り け る を 、 今 の世 にぞ いつ く に も 多 く 侍 る ﹂ は 、 流 布 本 そ のあ と更 に ﹁ な る﹂ が続 く の で助 動 詞 の扱 い に な る の で、 こ の例 に 代 え た。 ○ 染 殿 大 臣 も 、﹁ 子 孫 お は せ ぬ そ よ く 侍 る 。 末 の おく れ 給 へる は わ ろ き 事 な り﹂ と そ 、 世 継 の物 語 に は い へ る 。 鬮 ( 六 段 ) 注1 ﹃ 大 鏡 ﹄ の中 で 言 って い る と いう の で会 話 文 と し て扱 う 。 ○ これ ぞ も と め得 て候 ふ。 鬮 (二 一 五 段 ) 注1 ﹁ 候 ふ﹂ の貴 重 な 例 であ る。 ㈹ 形 容 詞 お ぶ つ み や う の さ き ○ 御 仏 名 ・ 荷 前 の使 立 つな ど ぞ 、 哀 に や ん ご と な 瀏 。鬮]( 一 九 段 ) 注 -形 容 詞 の結 び の連 体 形 のあ と に 更 に間 投 助 詞 ﹁ や ﹂ のく る 用 法 が 二 例 あ った。 (27) 202
山 口 雄 輔 ω 形 容 動 詞 ○年 の暮 れ は て て、 人 ご と に急 ぎ あ へる比 ぞ 、 ま た な く あ は れ な る。 鬮 = 一 九 段 ) か うぜいの か ねゆき ○ 行 成 大 納 言 の額 、 兼 行 が書 け る扉 、 あ ざ や か に 見 ゆ る ぞ あ はれ な る 。囲 ( 二五 段 ) ○ 今 の世 の こ と繁 き に ま ぎ れ て、 院 に はま ゐ る 人 も な き ぞ さ びし げ な る 。困 ( 二 七 段 ) 注-結 び に 形 容 動 詞 のく る 例 は 、 地 の文 に お け る こ の三 例 です べ て であ る。 2 結 び のな い用 法 ω 結 び の省 略 用 法 ① ︿ 言 ふ﹀ 系 の語 の省 略 が うだ う ○ た び く 強 盗 にあ ひ た る ゆ ゑ に 、 こ の名 を つけ た る と そ 。鬮 ] ( 四 六 段 ) 注i ︿ 言 ふ﹀ 系 の語 の省 略 用 法 が、 省 略 用 法 の大 部 分 で 、 地 の 文 で は 二 〇 例 中 一 九 例 であ る。 ② ︿ 在 り ﹀ 系 の語 の省 略 ごろ ○ こ の 比 の 歌 は 、 一 ふ し を か し く 言 ひ か な へた り と 見 ゆ る は あ れ ど 、 古 き 歌 ど も の や う に 、 い か に ぞ や 、 こ と ば の 外 に 、 あ は れ に 、 け し き 覚 ゆ る は な し 。 國 ( 一四 段 ) 注 1 ︿ 在 り ﹀ 系 の 語 の 省 略 用 法 は 、 こ の 例 一 つ だ け で あ る 。 な お 、 常 縁 本 に 、 ﹁ さ て は い み じ く そ ﹂ と いう 心 話 文 の 例 が あ る が 、 流 布 本 で は ﹁ ぞ ﹂ が ﹁ こ そ ﹂ に な っ て い る 。 ③ ︿ 為 ﹀ 系 の 語 の 省 略 げ す ○ 犬 の こ とく し く と が む れ ば 、 下 衆 女 の出 で て、 ﹁ いつ く よ り ぞ ﹂ と 言 ふ に 、鬮 ( 一 〇 四 段 ) ② 結 び の 消 去 用 法 ( いわ ゆ る ﹁ 結 び の流 れ ﹂ ) ① 接 続 助 詞 によ る消 去 用 法 あ や の こ う ち の みや ○ 綾 小 路 宮 の お は し ま す 小 坂 殿 の棟 に、 い つ ぞ や 縄 た めし を ひか れ た り し か ば 、か の例 思 ひ出 で ら れ 侍 り し に 、困 ( 一 〇 段 ) ② 係 助 詞 に よ る 消 去 用 法 ○新 古 今 に は、 ﹁ の こる 松 さ へ 峰 に さ び し き ﹂ と い へ る 歌 を ぞ いふ な る は、 ま こと に、 少 し く だ け た る す が た にも や 見 ゆ ら ん。 困 ( 一 四 段 ) ③ 中 止 法 に よ る 消 去 用法 (28) 201
流 布 本 『徒 然 草』 の係 り結 び乱 分 布 の 型 と用 法 の展 開一 ○ 人 の 気 色 も 、 夜 の 火 影 ぞ 、 よ き は よ く 、 物 言 ひ た る 声 も 、 暗 く て 聞 き た る 、 用 意 あ る 、 心 に く し 。 甌 (一 九 一 段 ) H ﹁ ぞ ﹂ の 断 止 法 (文 末 用 法 ) 1 単 独 係 助 詞 ○ か く 人 に 恥 ぢ ら る ・ 女 、 ﹃ 如 何 ば か り い み じ き も の し ゃう 剃 ﹄ と 思 ふ に、 女 の性 は皆 ひ が め り 。 囹 ( 一 〇 七 段 ) 注-心 話 文 を 示 す ﹃ ﹄ は 特 に施 す 。 2 複 合 係 助 詞 実 は 流 布 本 に は 断 止 法 に お け る 複 合 係 助 詞 の例 は皆 無 であ る。 常 縁 本 に次 のよ う な 例 があ る 。 ○ ﹁ し か じ か の こ と は 、 あ な かし こ、 跡 の た め、 い ヘ ヘ へ むな る こと そ な む﹂ と い ひあ へ る こそ 、 鬮 ( 三 〇 段 ) 傍 線 を 施 し た 部 分 は 流 布 本 で は ﹁ な ど 言 へる こ そ ﹂ と な って 更 に文 は続 き ﹁ こそ ﹂ の結 び は 己 然 形 で き ち ん と結 ば れ て い る。 な お 、 ﹁ ぞ﹂ に は破 格 用 法 は 見 当 ら な い。 表 12 流 布 本 徒 然 草 合 計 会 話 文 心 話 文 地 の 文 な ん 1 100 1 動 詞 係 り 用 法 補助動詞 1 100 1 形 容 詞 形容動詞 4 25 1 75 3 助 動 詞 名 詞 4 25 1 75 3 省略用法 消去用法 断 止 法 10 30 3 70 7 合 計
嚠
跏
山 口 雄 輔 百 分 率 100 100 100 100 100 注 -破 格 用法 は な い 。 1 ﹁ な ん﹂ の係 り 用法 1 結 び の品 詞 によ る 分 類 ω 動 詞 いだ ○情 な し と恨 み奉 る 人 な ん あ る L と の た ま ひ出 し た る に 、圜 ( 二 三 入 段 ) 注ー 常 縁 本 で は ﹁ な む あ り ﹂ とあ っ て 、 結 び に 終止 形 がく る破 格 用 法 の 一つに な って いる。 ② 形 容 詞 ○ そ のほ ど 過 ぎ ぬ れ ば 、 か た ち を 恥 つ る心 も な く 、 (中 略 ) ひ たす ら 世 を む さ ぼ る 心 の み ふ か く 、 も の の あ は れ も 知 ら ず な り ゆく な ん 、 浅 ま し き 。困 ( 七 段 ) 注 -結 び の形 容 動 詞 は見 当 ら な い。 助 動 詞 の 場 合 は後 に触 れ る。 2 結 び のな い用 法 ω 結 び の省 略 用 法 ○ あ へて 凶事 な か り け る と な ん 。困 ( 二 〇 六 段 ) 注ー こ れ は ︿ 言 ふ﹀ 系 の語 の省 略 。 ○ 御 覧 じ か な し ま せ 給 ひ てな ん 。翻 = 一 〇 段 ) 注ー 右 は ︿ 為 ﹀ 系 の語 の省 略 。 ② 結 び の消 去 用 法 ナ シ H ﹁ な ん ﹂ の断 止 法 ナ シ 常 縁 本 に 見 ら れ た紛 ら わ し い例 は な い。 表 13 流 布 本 徒 然 草 言 語 場 面 別 用 法 地 の 文 や 2 27.3% 3 動 詞 係 り 用 法 補助動詞 形 容 詞 形容動詞 3(1) 42.1% 8 助 動 詞 名 詞 6 57.1% 20 省略用法 100 1 消去用法 3 65.4% 17 断 止 法 14(1) 53.3% 49 合 計 (30) 199
流 布 本 『徒 然 草 』 の 係 り結 び一 分 布 の 型 と用 法 の展 開一 百 分 率 合 計 会 話 文 心 話 文 100 11 54.5% 6 18.2% 100 19(1) 42.1% 8 15.8% 100 35 25.7% 9 17.1% 100 1 100 26 23.1% 6 11.5% 100 92(1) 31.5% 29 15.2% 注1 0 内 は 破 格 用 法 の数 。 1 ﹁ や ﹂ の 係 り 用 法 1 結 び の品 詞 によ る 分 類 ﹁ や ﹂ の係 り 用 法 は、 表 13 で わ か る よう に 、 品 詞別 で は 動 詞 と助 動 詞 の項 に し か な い。 助 動 詞 は 後 にま と め て 触 れ る の で 、 こ こ で は 動 詞 の例 だけ を各 言 語 場 面 か ら 一 例 ず つ 掲 げ てお く 。 ○ そ も ま た ほ どな くう せ て、 聞 き つた ふ る ば か り の 末 々は、 哀 れ と や は 思 ふ。 囲 ( 三 〇 段 ) く つわ ○ 次 に轡 ・鞍 の具 に 、 ﹃ 危 き 事 や あ る ﹄ と 見 て、 心 に か ・ る事 あ ら ば、 そ の馬 を 馳 す べか ら ず 。 囹 ( 一 八 六 段 ) 注 -心 話 文 を 示す ﹃ ﹄ は特 に 施 す 。 ○ ﹁ 我 は さ や 思 ふ﹂ な ど 争 ひ憎 み、 鬮 ( 一 二 段 ) 2 結 び のな い 用法 ω 結 び の省 略 用法 ① ︿ 在 り ﹀ 系 の語 の省 略 ○ 徳 の至 れ り け る に や 。囲 (六 〇 段 ) 注 1 ﹁ や ﹂ の省 略 用 法 は ﹁ ぞ﹂ の場 合 と 対 照 的 で、 ほ と ん ど こ の ︿ 在 り ﹀ 系 の語 の省 略 用 法 で占 め ら れ 、 ︿ 言 ふ﹀ 系 の語 の省 略 は 、 僅 か 二 例 し か な い 。 ② ︿ 言 ふ﹀ 系 の語 の省 略 ナ シ ③ ︿ 為 ﹀ 系 の語 の省 略 ○ ﹁ 橋 本 や 、 な ほ水 の近 け れ ば﹂ と 覚 え 侍 る。 圏 ( 六 七 段 ) 注 -心 話 文 のあ と に 、 ﹁ そ れ (実 方 ) な ら む﹂ 31) 198一
山 口 雄 輔 な ど が 省 略 さ れ て い る。 ② 結 び の 消 去 用 法 ○綾 小 路 の宮 のお は し ま す 小 坂 殿 の棟 に 、 い つぞ や 縄 を ひ か れ た り し か ば、 囲 ( 一 〇 段 ) 注1 こ の例 は 、 既 に ﹁ ぞ ﹂ の 項 で も 出 し て あ る。 ﹁ や﹂ の消 去 用法 は こ の 一 例 の み。 H ﹁ や ﹂ の断 止 法 1 単 独係 助 詞 ○ 況 ん や 一 刹 那 のう ち に お い て、 懈 怠 の心 あ る 事 を 知 ら ん や 。囮 (九 二 段 ) 2 複 合 係 助 詞 し やうげ う ○ ﹃ こ の 聖 、 声 う ち ゆ が み 、 あ ら く し く て 、 聖 教 こ と わ り わ き ま の 細 や か な る 理 、 い と 弁 へず も や ﹄ と 思 ひ し に 、 圏 (一 四 一 段 ) 表 14 流布本徒然 草 言語 場面別用法 か 係 り 用 法 詞 動 補助動詞 形 容 詞 形容動詞 助 動 詞 名 詞 省略用法 消去用法 断 止 法 計 合 百 分 率 合 計 会 話 文 心 話 文 地 の 文 100 5 20% 1 50% 4 100 1 100% 1 100 54 33.3% 18 1.9% 1 64.8% 35 100 16 6.3% 1 6.3% 1 87.5% 14 100 13 7.7% 1 92.3% 12 100 28 35.7% 10 14.3% 4 50% 14 100 117 26.5% 31 6.0% 7 67.5% 79 1 ﹁ か ﹂ の係 り 用 法 1 結 び の品 詞 に よ る 分 類 注 -破 格 用 法 は な い。 (32) 197
流 布本 『徒 然 草 』 の 係 り結 び一 分 布 の 型 と用 法 の展 開一 ω 動 詞 ○ い かな る を か 善 と いふ 。 囲 (三 八 段 ) ○ 身 を 養 ひ て 何 事 を か待 つ。 囲 ( 七 四 段 ) げ ん け ○ 物 皆 幻 化 な り 。 何 事 か 暫 く も 住 す る 。圃 (九 一 段 ) 注 -右 の三 例 が 、 流 布 本 に お け る 地 の 文 の ﹁ か ﹂ のす べ て であ る。 常 縁 本 に は こ の ほ か に 二例 見 ら れ た が、 流 布 本 で は係 動 詞 がな か った り 、 助 動 詞 で 応 ず るも のと な って、 こ こ で扱 え な い。 三 例 を こと さ ら 全 部 掲 げ た の は、 文 体 に 特 色 があ る と 思 わ れ た か ら であ る。 いず れ も 漢 文 脈 的 な 短 文 に 集 中 し て いる 。 ○ さ れ ば 、 一 生 の う ち 、 む ね と あ ら ま ほし か ら ん 事 の 中 に ﹃ い つ れ か ま さ る﹄ と よ く 思 ひく ら べ て、 第 一 の こ とを 案 じ 定 め て、 そ の外 は 思 ひす て て、 いち じ 一 事 を はげ む べ し 。圏 ( 一 八 入 段 ) 注-右 の引 用 文 全 体 は 一つの長 い文 であ る が、 ﹃ ﹄ 内 の心 話 文 (特 に施 し た) 、 す な わ ち ﹁ か ﹂ の出 現す る 部 分 は完 結 し た極 め て 短 い文 であ る こと に留 意 し た い。 ② 補 助 動 詞 ナ シ ㈹ 形 容 詞 ま う じ ゃ ○ ﹁ 亡者 の迫 善 に は 、 何 事 か勝 利 お ほ き ﹂ と尋 ね さ せ 給 ひけ れ ば、 ㎝圃 (二 二 二 段 ) 2 結 び の な い用 法 ω 結 び の省 略 用 法 ① ︿言 ふ﹀ 系 の語 の省 略 ○新 院 の おり ゐ さ せ 給 ひ て の春 、 詠 ま せ給 ひけ る と か や 、鬮 ] ( 二 七 段 ) 注1 ﹁ か ﹂ の結 び の く 言 ふV 系 の 語 の省 略 用 法 は 、 地 の文 に六 例 だ が 、 す べ て こ の﹁ と か や ﹂ と いう 連 語 であ る。 ② ︿在 り ﹀ 系 の語 の 省 略 す か う も ん す ほ ○ 数 行 も 如 何 な る べき に か 、 若 数 歩 の心 か 、 覚 束 な し 。囲 (二 三 入 段 ) ○ ﹁ 如 何 な る こと のあ る に か ﹂ と 、 お し 返 し と ひ に や る こ そ、 心 づ き な け れ 。鬮 ( 二三 四 段 ) 注 ー ︿ 在 り ﹀ 系 の語 の省 略 は ﹁ に か ﹂ とな る こと が 多 い 。 ③ ︿為 ﹀ 系 の語 の省 略 ;33) 196一
山 口 雄 輔 ○ ﹁ ⋮ ⋮ ﹂ な ど 言 へる こそ 、 ﹃ か ば かり のな か に何 か 因 ﹄ と 、 人 の心 は な ほう た て お ぼ ゆ れ。 圏 (三 〇 段) ② 結 び の消 去 用 法 ① 接 続 助 詞 に よ る消 去 用 法 こ と わ り ○ か ほ ど の 理 、 誰 か は 思 ひ よ ら ざ ら ん な れ ど も 、 折 か ら の 、 思 ひ か け ぬ 心 地 し て 、 胸 に あ た り け る に や 。 囲 (四 一段 ) ○ ﹁ ひ さ く の 柄 は ひ も の 木 と か や い ひ て 、 よ か ら ぬ 物 に ﹂ と そ 、 あ る 人 仰 せ ら れ し 。 鬮 ( 二 三 二 段 ) 注 -消 去 用 法 に も 連 語 ﹁ と か や ﹂ が 数 例 見 え る 。 ② 体 言 に よ る 消 去 用 法 い な ば の く に ○ 因 幡 国 に 、 何 の 入 道 と か や い ふ 者 の 娘 、 囲 (四 〇 段 ) 注 -体 言 に 続 く 消 去 用 法 は す べ て 連 語 ﹁ と か なに がし や ﹂ で あ り 、 ﹁ 某 と か や い ひ し 世 捨 人 ﹂ ( 二 〇 段 ) ﹁ な に が し の 律 師 と か や い ふ も すけ すゑ の﹂ ( = 二 四 段 ) ﹁ 資 季 大 納 言 入 道 と か や 聞 こ え け る 人 ﹂ ( = 二 五 段 ) ﹁ 一 言 芳 談 と か や 名 づけ た る 草 子 L (九 八 段 ) な ど の例 が あ る。 会 話 文 を 受 け て、 ﹁ と い ふ こ と﹂ に 続 く 次 の よう な 例 も 見 え る 。 か う り よ う ○ ﹁ 亢 竜 の悔 あ り ﹂ と か や い ふ こ と侍 る な り 。 囲 (八 三 段 ) ③ 中 止 法 によ る 消 去 用 法 ○ 誰 を か 恥 ぢ 、 誰 に か知 ら れ ん事 を願 は ん。 困 (三 八 段 ) ○ 誰 か知 り 、 誰 か伝 へ ん 。囮 (三 八 段 ) ○ 今 日 の暮 る ・ 間 、 何 事 を か 頼 み、 何 事 を か営 ま ん 。 囲 ( 一 〇 入 段 ) 注 1 いず れ も 漢 文 脈 の対 偶 表 現 に現 れ る。 当 然 の こ とな が ら 対 にな って 現 れ る 下句 の ﹁ か ﹂ に は結 び が あ る が、 上 句 の ﹁ か ﹂ の結 び は中 止 法 に よ って 流 れ てし まう 。 対 偶 消 去 法 と で も いう べ き か 。 11 ﹁ か﹂ の断 止 法 1 単 独係 助 詞 ○ 寸 陰 惜 し む 人 な し 。 こ れ よ く 知 れ る か 、 お ろ か な る か。 囲 ( 一 〇 入 段 )
鋤
柵
. 流布 本 『徒 然草』の係 り結 び吩 布の型 と用法 の展 開一 注-右 の例 も 対 偶 表 現 であ る が、 消 去 用 法 で な く 断 止 法 であ る 。 上 の ﹁ か ﹂ は 断 止 法 で あ って同 時 に中 断 用 法 で あ る と 言 え よ ・つ 。 ○ 忍 び て寄 す る 事 ど も の床 し き を 、 そ れ か 、 か れ か な ど 思 ひ寄 す れ ば 、 囮 ( = 二 七 段 ) 注-慣 用 的 な 並 立 用 法 と 言 え る 。 2 複 合 係 助 詞 さ つき さ な へ くひ な 〇 五 月 、 あ や め ふ く 比 、 早 苗 と る こ ろ 、 水 鶏 の た ・ く な ど 、 心 ぼ そ か ら ぬ か は 。 困 (一 九 段 ) な お 、 ﹁ か ﹂ に も 破 格 の 用 例 に 見 当 ら な い。 表 15 流布本 従然草 言語 場面別 用法 こ そ 24 動 詞 係 り 用 法 補助動詞 30 形 容 詞 5 形容動詞 70(2) 助 動 詞 名 詞 6 省略用法 11 消去用法 断 止 法 146(2) 合 計 百 分 率 合 計 会 話 文 心 話 文 地 の 文 100 31 13.0% 4 9.7% 3 77.4% 100 34 11.7% 4 88.2% 100 6 16.7% 1 83.3% 100 93(2) 20.7% 19 4.3% 4 75.3% 100 1 100 1 100 16 37.6% 6 2.5% 4 37.5% 100 16 31.3% 5 68.3% 100 197(2) 20.3% 40 5.6% 11 74.1% 1 ﹁ こ そ ﹂ の係 り 用 法 1 結 び の品 詞 に よ る 分 類 注 1 0 内 は破 格 用 法 の数 。 (35) 194一
山 口 雄 輔 ② 動 詞 ○ よ き 人 の物 語 す る は 、 人 あ ま た あ れ ど 、 一人 に 向 き て い ふ を 、 お の つ か ら 人 も 聞 く に こ そ あ れ 囲 ( 五 六 段 ) 注 1 ﹁ こ そ ﹂ の 結 び に 動 詞 が く る 場 合 、 ラ 変 が 最 も 多 く 、 動 詞 の 全 用 例 の 三 分 の 一 強 、 一 二 例 を 数 え る 。 ﹁ あ れ ﹂ の他 、 ﹁ 侍 れ ﹂ な ど が 見 え る た く み ○ か の木 の 道 の 匠 の造 れ る う つ は 物 も 、 古 代 の 姿 こ そ を か し と 見 ゆ れ 。 囲 ( 二 二 段 ) 注 ー ラ 変 の 次 に 多 い の が ﹁ 見 ゆ れ ﹂ で 、 五 例 あ る 。 ○ 走 り 出 で て 行 き つ ・ 、 習 ひ 侍 り に け り と 申 し 伝 へ た る こ そ 、 ゆ ・し く あ り が た う 覚 ゆ れ 。 困 ( 一 入 八 段 ) 注 1 ﹁ 見 ゆ れ ﹂ に 近 く 、 四 例 あ る 。 ○ い つ く に も あ れ 、 し ば し 旅 だ ち た る こ そ 、 め さ む る 心 ち す れ 。 囮 ( 一 五 段 ) 注 -厳 密 に は ﹁ め さ む る ﹂ が ﹁ 心 地 ﹂ を 修 飾 し て い る の で 、 ﹁ 心 地 ﹂ 名 詞 、 ﹁ す れ ﹂ サ 変 己 然 形 と 分 れ る が、 ﹁ 心 地す れ ﹂ し て 数 え る と 三 例 あ る。 ○ ﹁ も の のあ は れ は 秋 こそ ま さ れ ﹂ と 人 ご と に い ふ め れ ど 、鬮 ( 一 九 段 ) 注-1有名 な 文 。 会 話 文 で あ る。 ﹁ ま さ る﹂ は 二 例 ○ 片 田 舎 の 人 こ そ 、 色 こく 万 は も て 興ず れ 。 注-一 見 当 代 の新 し い言 葉 の よう に 見 え る漢 語 のサ 変 動 詞 ﹁ 興 ず ﹂ は、 す で に ﹃ 枕 草 子 ﹄ に四 ・ 五 例 見 え る。 た だし ﹃ 枕 草 子 ﹄ で は 接 頭 語 ﹁ も て﹂ の つ いた ﹁ も て 興 ず ﹂ と いう 例 は 見 ら れ な い 。 ㈹ 形 容 詞 ひと りね ○ あ ふ さ き る さ に思 ひ みだ れ 、 さ る は 独 寝 が ち に 、 ま ど ろ む 夜 な き こ そ を か し け れ 。囲 (三 段 ) 注 1 ﹁ こそ ﹂ の結 び に形 容 詞 が く る の は 他 の 作 品 で は 決 し て多 いと は 言 え な い のに 、 ﹃ 徒 然 草 ﹄ で は と り わ け 地 の文 に多 彩 に 登 場 す る 。 表 15 に 示す よ う に地 の文 に 三 〇 例 、 話 の文 に 四例 で あ る が、 こ の作 品 (36) -193
流 布 本 『徒 然 草 』 の係 り結 びよ 分 布 の 型 と用 法 の展 開一 の 一 つ の 特 色 と 思 わ れ る の で 形 容 詞 す べ て の語 と 用 例 数 を 多 い 順 に 並 べ て お く 。 終 止 形 で 掲 げ る が 、 文 中 で は 己 然 形 で あ る こ と は 断 わ る ま で も な い。 ﹁ を か し ﹂ (九 例 )﹁ い み じ ﹂ (四 例 ) ﹁ よ し ﹂ ( 三 例 ) ﹁ お も し ろ し ﹂ ( 二 例 ) ﹁ 心 ぼ そ し ﹂ ( 二 例 ) ﹁ な し ﹂ ( 二 例 )以 下 一 例 ず つ の も の ⋮ ﹁ あ い な し ﹂ ﹁ う れ し ﹂ ﹁ お ほ し ﹂ ﹁ 心 づ き な し ﹂ ﹁ 心 に く し ﹂ ﹁ な ま め か し ﹂ ﹁ 本 意 な し ﹂ ﹁ 見 苦 し ﹂ ﹁ も の ぐ る ほ し ﹂ 以 上 で あ る が 、 有 名 な 序 段 の ﹁ も の ぐ る ほ し け れ ﹂ で 結 ば れ る 例 を 改 め て 掲 げ る 。 く すず り ○ つ れ ぐ な る ま ・に 、 日 暮 ら し 、 硯 に む か ひ て 、 心 に う つ り ゆ く よ し な し 事 を 、 そ こ は か と な く書 き つ く れ ば、 あ や し う こ そ も のぐ る ほ し け れ。 困 (序 段 ) ω 形 容 動 詞 しつ いと ま ○ 名 利 に 使 は れ て 、 閑 か な る 暇 な く 、 一 生 を 苦 し む る こ そ 、 愚 か な れ 。 困 ( 三 入 段 ) 注 1 ﹁ こ そ ﹂ の 結 び に 用 い ら れ た 六 例 の 形 容 動 詞 の う ち 、 右 の ﹁ 愚 か な り ﹂ 一 例 を 除 き 、 他 は み な ﹁ あ は れ な り ﹂ で あ る 。 短 い 文 と 長 い 文 の 例 を 一 例 ず つ。 を りふし あ ド ○ 折 節 の移 り か は る こ そ 、 も の ご と に 哀 な れ 。 鬮 ≡ 九 段 ) な ○ 暮 る ・ほ ど に は 、 立 て 並 べ つ る 事 ど も 、 所 な く 並 み ゐ つ る 人 も 、 い つ か た へ か 行 き つら ん 、 ほ ど な く 稀 に 成 り て 、 車 ど も の ら う が は し さ も す み ぬ れ たた み ば 、 ﹃ 簾 、畳 も 取 り 払 ひ 、目 の前 に さ び し げ に な り ため し あは れ ゆ く こそ 、 世 の例 も 思 ひ知 ら れ て、 哀 な れ 。 大 路 見 た る こそ 、 祭 見 た る に て は あ れ 。 困 ( = 二 七 段 ) 注-二 つの 文 を 引 いた のは 、 こ の部 分 が 常 縁 本 で は か な り 異 な っ て い る か ら で あ る。 ﹁ ⋮目 の前 に淋 し げ にな り ゆ く こそ 、 世 へ の た め し も 思 ひ知 ら れ て、 あ は れ な れ と お ぼ え た る こそ 、 祭 見 る に て は あ れ ﹂ と い う よ う に、 常 縁 本 で は 引 用 の格 助 詞 ﹁ と ﹂ で 引 かれ た 心 話 文 中 に ﹁ こそ ﹂ が 入 って し ま う 。 こ の箇 所 は ま た 、 非 常 に 長 文 で あ って、 例 の対 偶 消 去 法 の短 文 と 比 べ て 対 照 的 であ る 。 (37) -192一
山 口 雄 輔 ○ 里 人 お こ り て で 出 で あ へば 、 ﹁ 我 こ そ 山 だ ち よ ﹂ と ま は 言 ひ て、 走 り か ・ り つ ・ 斬 り 廻 り け る を 、 鬮 ( 八 七 段 ) 注 i 結 び を 名 詞 と し な い わ け に は い か な い特 殊 な 例 。 更 に 間 投 助 詞 ﹁ よ ﹂ が付 着 し て いる 。 通 常 は ﹁ 我 こ そ 山 だ ち な れ﹂ と あ り た い と こ ろ 。 2 結 び のな い用 法 ω 結 び の省 略 用 法 ① ︿ 在 り ﹀ 系 の語 の省 略 ○ 深 く 信 を 致 し ぬ れ ば 、 か ・ る徳 も あ り け る に こそ 。 囲 (六 入 段 ) 注1 ﹁ こ そ ﹂ の結 び の 省 略 用 法 一 六 例 中 、 一 四 例 を 占 め る 。 ② ︿ 為 ﹀ 系 の語 の省 略 ○ ﹁ あ ま り に物 さ わ が し 。 雨 や み て こ そ ﹂ と 人 の い ひ け れ ば 、 鬮 ( 一 入 八 段 ) 注ー 渡 辺 の地 に住 ん で い た上 人 に 、 人 々 が言 う 場 面 。 ﹁ 雨 が止 ん で から いら っし ゃ って は﹂ の意 で ﹁ 行 き 給 へ ﹂ な ど が 略 さ れ て い る。 ② 結 び の消 去 用法 ○ 人 に ま さ れ り と思 へ る 人 は、 た と ひ言 葉 に 出 で て d 刻 言 は ね ど も 、 円 心 に そ こば く の と が あ り 。 囲 (一 六 七 段 ) 注 1 ﹁ こ そ ﹂ の 結 び の 消 去 用 法 は す べ て が 接 続 助 詞 に よ る ﹁ 結 び の 流 れ ﹂ で あ る 。 た だ し 、 そ の 接 続 助 詞 の 箇 所 を 格 助 詞 と 解 す る 考 え 方 も 成 り 立 ち 得 る 。 ○ い に し へは 、 ﹁ 車 も た げ よ ﹂ 、 ﹁ 火 か ・ げ よ ﹂ と こ そ い ひ し を 、 今 様 の 人 は 、 ﹁ も て あ げ よ ﹂ 、 ﹁ か き あ げ よ ﹂ と い ふ 。 困 ( 二 二 段 ) 注 -格 助 詞 と み な せ ば 、﹁ 古 い 時 代 に は 、⋮ ⋮ と 言 っ た の を ﹂ と な る が 、 こ こ で は 逆 接 の 接 続 助 詞 と み て 消 去 用 法 の 数 に 加 え て お く 。 結 び の中 で 最 優 勢 の助 動 詞 を 取 り 上 げ る。
謝
期
流布本 『徒然 草』 の係 り結び吩 布の型 と用法 の展 開一 表 16 流 布 本 徒 然 草 (結 び の 助 動 詞 一 覧 ) な ん ぞ 地 の 文 会話 文 心 話 文 地
旻
会 話 文 心 話 文 地叟
1 る 自発可能 1 ら れ 2 つ 完 了 1 ぬ 1 た り 4 り 1 1 1(1) 7 き 過 去 3 1 23 け り 1 な り 断 定 2 な り 伝 聞 1 け ん 推 量 2 1 1 ら ん 4 1 ん 2 9 べ し 1 ま し 1 5 め り 4 ず 打 消 ま じ 打消推量 2 ま ほ し 希 望 8 1 3 5 3(1) 64 合 計 百 分 率 合 計 こ そ か や龕
文龕
文勢
文龕
文龕
文勢
文藷
文龕
文 2.1% 5 2 2 0.8% 2 1 o.g% 2 0.4% 1 1.7% 4 1 1 1 2.5% 6 1 1 10.3% 25(3) 2 11(1) 1 1(1) 14.9% 36 5 2 1 1 7.0% 17(1) 1 1 14(1) 2.1% 5 3 4.5% 11 2 3 3 2 2.8% 7 1 2 25.6% 62 5 3 12 7 26 2 2 10.7% 26 8 4 1 2 1.3% 3 2 5.0% 12 6 4.1% 10 2 2 2 o.s/ 2 2 2.5% 6 1 3 100% 242(4) 19 4 70(2) 18 1 35 8 3(1) 注 1 0 内 は破 格 用 法 の数 。㈹
㎜
山 口 雄 輔 こ の 場 合 も 表 が 多 く を 語 って い る の で 、 細 か な 説 明 は 省 く が 、 ま ず 全 体 か ら 見 て 、 ﹁ ぞ ﹂ と ﹁ こ そ ﹂ の 地 の 文 に べ っ た り と 集 中 し て 現 わ れ て い る 。 次 に 会 話 文 に 目 立 つ の は 、 ﹁ か ﹂ と ﹁ こ そ ﹂ の 行 で あ る 。 心 話 文 に は ど の係 助 詞 の 行 も 少 な い が 、 ﹁ な ん ﹂ に い た っ て は 皆 無 で あ る 。 ﹁ な ん ﹂ は 過 去 の 助 動 詞 ﹁ き ﹂ ﹁ け り ﹂ に 四 例 あ る に 過 ぎ な い。 ﹁ つ ﹂ ﹁ ぬ ﹂ ﹁ た り ﹂ ﹁ り ﹂な ど の 完 了 の 助 動 詞 に ﹁ ぞ ﹂ は 応 じ て い る が 、 ﹁ こ そ ﹂ は ﹁ た り ﹂ と ﹁ り ﹂ に 一 例 ず つ応 じ て い る だ け で あ る 。 数 か ら 言 う と 、 推 量 の ﹁ ん ﹂ が 六 二 例 ・二 六 パ ー セ ン ト で 最 も 多 い 。 過 去 の ﹁ け り ﹂ ﹁ き ﹂ 、 推 量 の ﹁ べ し ﹂ 、 断 定 の ﹁ な り ﹂ 、 推 量 の ﹁ め り ﹂ な ど (多 い 順 ) に は 、 言 語 場 面 を 限 定 せ ず か な り 散 在 し て い る 。 打 消 お よ び 打 消 推 量 の ﹁ ず ﹂ ﹁ ま じ ﹂ と 、 希 望 の ﹁ ま ほ し ﹂ に は 、 ﹁ ぞ ﹂ と ﹁ こ そ ﹂ が 専 有 し て い る ( ﹁ か ﹂ の 二 例 が 例 外 的 に あ る に は あ る が ) 。 そ れ で は 実 例 に 即 し て 見 て 行 く の と に す る 。 表 16 で 示 し た 助 動 詞 の 種 類 別 ( 種 類 別 (種 類 別 と 言 っ て も 代 表 的 な 意 味 を 出 し た だ け で 、 文 脈 に よ って異 な る意 味 を 全 部 出 し た わ け で は な い。 ﹁ な り ﹂ に 限 って、 断定 と 、 伝 聞 推 定 と き ち ん と 分 け てあ る) 。 横 の段 で最 も 数 値 の多 いも の の中 か ら 代 表 例 を 一 例 選 び 、 簡 単 な 注 を つけ て行 く と いう 原 則 に 従 っ て 掲 げ て行 く 。 た だし 、 横 の段 に 一 例 し かな いも のは む ろ ん そ の 一 例 を 掲 げ る 。 [ る ] ︿自 発 ・ 可 能 ﹀ 五 例 ○ 大 方 は家 居 に こそ 、 こ と ざ ま は お し は から る れ 。 圃 二 〇 段 ) 注 1 ﹁ る ﹂ は ﹁ こそ ﹂ に 四 例 、 ﹁ ぞ ﹂ に 一 例 応 鋤 じ て い て、 五例 中 四 例 が 自 発 であ る。 次 ー に 可能 の例 を 挙 げ てお く 。 ○ 吾 妻 人 こ そ 、 言 ひ つる事 は 頼 ま る れ。 鬮 ( 一 四 一 段 ) 注1 ﹁ 頼 ま る れ ﹂ は ﹁ 頼 み に で き る ﹂ の意 で 可 能 。 可 能 は こ の例 だ け 。 [鬮 凵 ︿自 発﹀ 二例 たち ばな ○ 花 橘 は 名 に こ そ お へれ 、 な ほ 、梅 の 匂 ひ に ぞ 、 い に し へ の 事 も 立 ち か へり 恋 し う 思 ひ い で ら る ・ 囮 (一 九 段 )
流 布 本 『徒 然 草 』 の 係 り結 び晶 分 布 の 型 と用 法 の 展 開一 注-地 の文 の ﹁ ぞ ﹂ と ﹁ こそ ﹂ に 一 例 ず つだ け 。 ﹁ ぞ﹂ の例 を 引 く 。 [ つ ] ︿ 完 了 ﹀ 二 例 ○ 折 な ら ぬ音 を な ほ ぞ かけ つる鬮 ( = 二 入 段 ) 注1 ﹃ 千 載 集 ﹄ の歌 の下 の句 に よ って い る 消 息 文 。 [ ぬ ] ︿ 完 了 ﹀ 一 例 ○ た てあ け 所 せ げ な る遣 戸 よ り ぞ 入 り 給 ひ ぬ る。 困 ( 一 〇 四 段 ) 注 1 ﹁ ぞ ﹂ に応 じ た 貴 重 な 唯 一 例 。 [ たり ] ︿ 完 了 ﹀ 四 例 ○ 無 量 寿 院 ば かり ぞ、そ の形 と し て残 り た る。 囲ス ニ 五 段 ) 注ー 地 の文 の ﹁ ぞ ﹂ に 一 例 。 他 に、 会 話 文 の ﹁ か﹂ に 一 例 、 ﹁ こそ ﹂ に は 地 の文 ・ 会 話 文 に 一 例ず つ 。 [ り ] ︿ 完 了﹀ 六 例 ○ 源 氏 物 語 に は ﹁ 物 と はな し に﹂ と そ書 け る 。囲 ( 一 四 段 ) 注 1 ﹁ ぞ﹂ の地 の文 に 四 例 の他 、 ﹁ や﹂ の会 話 文 に 一 例 、 ﹁ こ そ ﹂ の 地 の 文 に 一 例 。 見 出 し に ﹁ 完 了 ﹂ と し た が 、 厳 密 に は 、 掲 げ た 例 文 の 訳 は ﹁ 書 い て あ る ﹂ の 意 で 完 了 と いう よ り 存 続 。 [ ーき ー ] ︿ 過 去 ﹀ 二 五 例 の の み や ○ 斎 王 の 野 宮 に お は し ま す あ り さ ま こ そ 、 や さ し く 、 面 白 き 事 の か ぎ り と は 覚 え し か 。 困 ( 二 四 段 ) 注 1 ﹁ ん ﹂ (二 六 % ) ﹁ け り ﹂ ( 一五 % ) に 次 ぐ 出 現 率 ( 一 〇 % ) の 高 い 助 動 詞 。 ﹁ べ し ﹂ が ほ ぼ 等 し い 出 現 率 ( = % ) を 持 つ。 破 格 用 法 が 集 中 し て い る の で 、 三 例 す べ て を 次 に 掲 げ て お く 。 心 話 文 の ﹁ き ﹂ と ﹁ や ﹂ 、 地 の 文 の ﹁ こ そ ﹂ に 一 例 ず つ で あ る 。 ○ 月 に 見 ゆ る 物 も 、 わ が 心 の う ち も 、 か ・る 事 の い つぞ や あ り し か と 覚 え て 、 圏 ( 七 一 段 ) 注 -常 縁 本 ・正 徹 本 は 、 こ の 部 分 が ﹁ あ り し 幡 ﹂ と な っ て い る 。 ○ 目 に 見 ゆ る 物 も 、 わ が 心 の う ち も 、 か ・る 事 の い つ ぞ や あ り し か と 覚 え て 、 圏 (七 一 段 ) 41) ..
山 口 雄 輔 注 -例 文 は 直 前 の 文 と 全 く 同 じ も の 。 ﹁ そ や ﹂ を ﹁ ぞ ﹂ と ﹁ や ﹂ に 分 け て カ ー ド を と っ て い る こ と を 示 し た も の。 ○ と こ と わ ら れ 侍 り し こ そ 、 こ の 聖 、 声 う ち ゆ が み 、 しや うげ う こ とわ り わ きま あ ら く し く て、聖 教 の細 や か な る 理 、 い と弁 へ ひと この ず も や と 思 ひ し に 、 こ の 一 言 の 後 、 心 に く ・ 成 り て 、 多 か る 中 に 寺 を も 住 持 せ ら る ・は 、 か く や は やく ら ぎ た る 所 あ り て 、 そ の益 も あ る に こ そ と 覚 え 侍 り し 。 囲 (一 四 一 段 ) 注 ー ﹁ 覚 え 侍 り し か ﹂ と あ り た い と こ ろ 。 常 ヘ へ 縁 本 で は ﹁ お ぼ え 侍 り し な り ﹂ と な って い る が 、 これ も 破 格 であ る。 [ ナ り ] ︿ 過 去 ﹀ 三 六 例 かた わ ら え え の き ○ 坊 の 傍 に 、 大 き な る 榎 の 木 の あ り け れ ば 、 人 ﹁ 榎 の 木 僧 正 ﹂ と そ 言 ひ け る 。 囲 ( 四 五 段 ) 注 1 ﹁ け り ﹂ も ﹁ き ﹂ も 多 用 さ れ て い る が 、 二 つ の 違 い は 、 ﹁ き ﹂ が ﹁ こ そ ﹂ に 、 ﹁ ぞ ﹂ が ﹁ け り ﹂ に 多 く 応 じ て い て 対 照 的 で あ る 。 [ な り ] ︿ 断 定 ﹀ 一 七 例 や し じ ロ ○す べ て神 の社 こそ 、 す て が た く 、 な ま め か し き も のな れ や 。 囲 (二 四 段 ) 注-係 り結 び で完 結 し た 文 末 に、 更 に 間 投 助 詞 ﹁ や﹂ の付 いた例 。 一 七 例 中 、 ﹁ こそ ﹂ に = 二 例 が 集 中 し て いる 。 中 に破 格 が 一 例 あ る ので 次 に掲 げ て お く 。 ○ 鯉 ば か り こそ 、 御 前 に ても 切 ら る ・ も のな れ ば 、 や ん事 な き 魚 な り。 困 ( 一 一 八 段 ) 注i ﹁ 切 ら る ・ も のな れ ば ﹂ の接 続 助 詞 で結 び が流 れ て いる と も 考 え れ ば 破 格 で は な く な る。 とも しび ぶ ん ○ ひ と り 灯 のも と に 文 を ひろ げ て、 見 ぬ世 の 人 を 友 と す る ぞ 、 こよ な う な ぐ さ む る わ ざ な る。 國 ( 一 三 段 ) 注 1 ﹁ ぞ ﹂ から の貴 重 な 一 例 。 [ な り ] ︿ 伝 聞 推 定 ﹀ 五 例 ○ た " いふ 言 葉 も 、 口を しう こそ な り も てゆ く な れ 。 困 ( 二 二 段 ) 注1 ﹁ な ってゆ く よう だ ﹂ の意 の伝 聞 推 定 。 従 って 、 そ の 上 の複 合 動 詞 ﹁ な り も て ゆ (42)
流 布 本 『徒 然 草 』 の 係 り結 び三 分布 の 型 と用 法 の 展 開 一 く L は 、 四 段 活 用 の 終 止 形 と み な す 。 ご ひ やく しよう ○ ﹁ 酒 を と り て 人 に 飲 ま せ た る 人 、 五 百 生 が間 、 手 な き 者 に 生 る ﹂ と こそ 、 仏 は 説 き 給 ふ な れ 。囲 ( 一 七 五 段 ) 注 ー ﹁ 仏 が お説 き に な る の で あ る ﹂ と断 定 に と る よ り も 、 ﹁ お説 き な さ る そう だ ﹂ と 伝 聞 推 定 に解 す る べき と こ ろ 。 補 助 動 詞 ﹁ 給 ふ ﹂ は こ こ で は 終 止 形 と み な す 。 [ け ん ] ︿ 過 去 推 量 ﹀ 二 例 ○ 花 に鳥 付 け ず と は、 いか な る故 に か あ り け ん、 長 月 ば かり に 、鬮 = 六 六 段 ) 注 i ﹁ け ん﹂ は数 は 多 く はな いが 、 ﹁ な ん ﹂を 除 く 四 つの係 助 詞 に応 じ て いる 。 右 の例 は 、 係 り 結 び は 成 立 し て いる も の の、 完 結 し な い で中 断 し て続 いて 行 く 用 法 、 中 断 あ る い は中 止 用 法 と い う べき か。 [ ら ん ] ︿ 現 在 推 量 ﹀ 七 例 ○ 知 り た る事 も 、 な ほ さ だ か に と思 ひ て や 問 ふら ん 。 囲 ( 二三 四 段 ) 注 -過 去 推 量 ﹁ け ん ﹂ に比 べ る と 数 が半 減 し て いる 。 [ ん ] ︿推 量 ﹀ 六 二例 ○ 折 に ふれ ば、 何 か はあ は れ な ら ざ ら ん 。困 ( 二 一 段 ) 注-助 動 詞 中 、 数 の上 で最 も 優 勢 な の が こ の ﹁ ん ﹂ であ る。 六 二 例 中 二 六 例 が 、 ﹁ か ﹂ に応 じ て い る。 文 脈 によ って 推 量 以 外 の 意 味 に も な る こ と は 言 う ま で も な い 。 ○ 桃 李 も の言 は ね ば 、 誰 と と も に か昔 を 語 ら ん。 困 ( 二 五 段 ) 注1 ﹁ 誰 と と も に昔 を 語 ろ う か﹂ の意 で、 こ れ は意 志 の例 。 [ に ] ︿ 推 量 ・ 当 然 ﹀ 二 六 例 おのれ お ご たから ○ 人 は 己 を つ .・ま や か に し 、 奢 り を 退 け て 、 財 を も た ず 、 世 を む さ ぼ ら ざ ら ん ぞ 、 い み じ か る べ き 。 圃 (一 八 段 ) 注 -見 出 し を ﹁ 推 量 ﹂ と し た が 、 文 脈 に よ っ て 種 々 の 意 味 に な る 。 こ こ は 当 然 の 意 。 ﹁ き ﹂ と ほ ぼ 等 し い 率 ( 一〇 % 強 ) で 比 較 的 多 用 さ れ る 。 ﹁ ぞ ﹂ と ﹁ こ そ ﹂ の 地 の 43) :・
山 ロ 雄 輔 文 によ く 使 わ れ て い る。 説 教 め い た言 い 方 が ﹃ 徒 然 草 ﹄ の作 者 の好 み に合 う のか も し れ な い。 [ ま し ] ︿ 推 量 ﹀ 三 例 ○ ﹃ し剣 せ ま し 、 せず や あ ら ま し ﹄ と 思 ふ事 は、 お ほ やう は 、 せ ぬ は よ き な り 。 圏 (九 入 段 ) 注1 ﹁ ま し﹂ が 続 い て出 て く る が、 上 の ﹁ ま し ﹂ は 中 止 用 法 であ る 。 [ め り ] ︿ 推 量 ・ 婉 曲 ﹀ ○ こと に、 か た ほ と り な る ひ じ り 法 師 な ど ぞ 、 世 の 人 の上 は、 わ が こと と尋 ね聞 き 、 いか で か ば かり は 知 り け ん と 覚 ゆ るま で ぞ 、 言 ひ散 らす め る 。 囲 (七 七 段 ) 注-初 め の ﹁ ぞ ﹂ が 、 後 の ﹁ ぞ﹂ を 包 合 し て いる 特 殊 な 例 。 推 量 と い う よ り 婉 曲 。 [ ず ] ︿ 打 消 ﹀ 一 〇 例 ロ し つ か ○ 老 い ぬ と 知 ら ば な ん ぞ 閑 に身 を やす く せざ る。 囲 ( = 二 四 段 ) 注-単 な る打 消 表 現 でな く 、 何 とな く 教 訓 臭 が つ き ま とう 。 [ ま じ ] ︿ 打 消 推 量 ﹀ 二例 ○ さ て 冬 枯 のけ し き こそ 、 秋 に は を さ く お と るま じ け れ 。 囲 (一 九 段 ) 注 1 ﹁ ま じ ﹂ の 二 例 は ﹁ こ そ ﹂ に し か 応 じ て い な い 。 二 例 と も 掲 げ て お く 。 ○ 女 と な げ し に 尻 か け て 、 物 語 す る さ ま こ そ 、 何 事 に か あ ら ん 、 尽 き す ま じ け れ 。 囲 (一 〇 五 段 ) 注 i ﹁ 尽 き す ﹂は 自 動 詞 サ 変 の 終 止 形 。 ﹁ つ き す ま じ け れ ﹂ で 、 (男 と 女 の 話 が )尽 き る こ と が な い よ う だ L の 意 。 [ ま ほ し ] ︿ 希 望 ﹀ 六 例 ほ ま れ ○ 智 恵 と 心 と こそ 、 世 に す ぐ れ た る誉 も 残 さ ま ほ し き を 、 つら く 思 へ ば 、囲 (三 入 段 ) 注ー こ の例 は 、 接 続 助 詞 で結 び が流 れ て いる が、 常 縁 本 で は、 ﹁ 残 さ ま ほ し き ﹂ で 完 全 に 切 れ て 、 ﹁ つら く 思 へ ば ﹂ は 別 文 と な って いる 。 以 上 で 、 流 布 本 ﹃ 徒 然 草 ﹄ の 係 助 詞 の結 び と し て表 れ た 助 動 詞 のす べ て の種 類 に つ い て、 少 な く と も 代 表 例 一 例 と 、 問 題 を 持 つ 例 を ほ と ん ど 掲 げ る こと が で き (44)
流 布 本 『徒 然 草 』 の係 り結 び一 分 布 の 型 と用 法 の 展 開 一 た。 常 縁 本 ﹃ 徒 然 草 ﹄ の報 告 の表 や 説 明 文 と 重 複 す る と ころ が多 々 あ る こ とを お許 し い た だ き た い。 微 妙 な 違 いは 至 る所 に あ り 、 そ れ が 成 立 時 代 の 語 法 の変 遷 に よ る も の か、 異 本 作 り の 過 程 で起 き た作 者 な ら ぬ 異 本 製 作 者 の好 み に よ る も の で あ る か は、 今 後 の検 討 に ま た な け れ ば な ら な い。 と り あ え ず 、 あ る が ま ま の 実 体 を 報 告 し て お き た い と思 う 。 結 び こ こま で 調 査 検 討 し て き た こ と か ら 、 流 布 本 ﹃ 徒 然 草 ﹄ の係 り結 び (係 助 詞 の係 り 用 法 と 断 止 法 を 認 め た 広 い意 味 に お い て) の特 色 と も い う べき も の の大 要 を 列 挙 し て お く 。 1 流 布 本 ﹃ 徒 然 草 ﹄ に お いて 、 係 り 結 び を 含 む 和 歌 は わ ず か三 首 し か な い 。 確 定 の係 助 詞 ﹁ ぞ ﹂ の 結 び に動 詞 を と る も の (散 り し く L と ﹁ 覚 ゆ ﹂ ) が 二 首 、 疑 問 の係 助 詞 ﹁ か﹂ に 、 推 量 の助 動 詞 ﹁ ら ん ﹂ で応 じ た も の が 一 首 で あ る。 2 和 歌 を 除 く 全 散 文 に お い て は、 ﹁ こそ ﹂ が 一 九 七 例 ・ 三 四 % で 最 も 多 く 、 ﹁ ぞ ﹂ の 一 六 五 例 ・ 二八 % が そ の次 にく る。 常 縁 本 で調 査 し た結 果 を 、 今 回 は いち いち 比 較 す る つ も り は な い が、 用 例 数 に は 少 々相 違 があ る に も か か わ らず 、 百 分 率 の数 値 は 全 く 同 じ であ る。 そ のよ う な こと が随 処 で見 ら れ る のは 、 同 一 作 品 な の だ か ら 当 然 と言 え ば 当 然 だ が、 そ れ だけ に 相 違 にも 留 意 し な け れ ば な ら な い 。 ﹁ か ﹂ は 一 一 七 例 ・ 二 〇 % 、 ﹁ や ﹂ が そ れ に 近 く 九 二 例 ・ 一 六% で 中 位 であ り 、 古 い物 語 な ど に好 ん で 用 いら れ た ﹁ な ん﹂ は わず か 一 〇例 ・ 二 % で最 下 位 にく る。 こ の順 位 を 分 布 の型 と 称 し 、 上 位 二 位 に着 目 し て 、 ﹁ こ そー ぞ 上 位 型 ﹂ 、 最 上 位 と最 下 位 に着 目 し て 、 ﹁ こそー な ん遠 隔 型 ﹂ な ど と 呼 ん で お く こ と に す る 。 3 百 三 十 六 段 と 百 三 十 七 段 で前 後 に 分 か れ る上 下 二 巻 に つ いて 、 係 助 詞 の数 を 別 々に か ぞ え た 限 り で は、 巻 別 の片 寄 り は ほ と ん ど 見 ら れ な い 。 ま た 、 上 巻 と 下 巻 に分 け て も 、 型 の呼 称 に 変 更 を 要 し な い。 し か し 、 型 の 呼 称 に使 って いな い中 位 の﹁ や ﹂ ﹁ か﹂ に 転 位 が見 ら れ る。 す な わ ち 、 上 巻 は ﹁ か ー や ﹂ の順 序 であ る の に対 し て 、 下 巻 で は ﹁ や ー (45) .,
山 口 雄 輔 か L と な る の であ る。 ( た だ し 、 用 例 数 の差 は僅 差 で あ る の で、 巻 別 の詳 細 な 調 査 はし て いな い。 ) 4 言 語 場 面 別 の出 現 順 位 で は 、 地 の文 に お いて ﹁ こ ー ぞ 上 位 型 ﹂ ﹁ こそ ー な ん 遠 隔 型 ﹂ であ る が 、 心 話 文 で は ﹁ こそー やー かー ぞ ﹂ の順 で、 ﹁ や ﹂が 上 位 に き て 、 ﹁ こそー や 上 位 型 ﹂ ﹁ こそ ー ぞ遠 隔 型 ﹂ に 変 わ る 。 常 縁 本 では こ こ の所 が 違 って いて ﹁ や ー こ そ 上 位 型 ﹂ ﹁ や ー ぞ 遠 隔 型 ﹂ で あ っ た 。 ﹁ な ん﹂ は 心 話 文 に は姿 を 見 せな い。 これ は常 縁 本 も 同 様 。 会 話 文 で は、 型 と し て は 地 の文 と 同 じ く ﹁ こそー ぞ 上 位 型 ﹂ ﹁ こそー な ん 遠 隔 型 ﹂ で あ る 。 5 係 助 詞 別 に、 言 語 場 面 の順 位 を 見 る と 、 比 率 こ そ違 え 一 様 に 地 の文 に最 も多 く 、 二位 が 会 話 文 、 そ し て 三 位 が心 話 文 と い う 現 れ 方 を し て いる 。 係 助 詞 に よ って は も っと異 な る 使 い方 が出 て き ても よ さ そう な の に、 表 があ ま り に も 整 然 と と と のう の が 不 思 議 な く ら い であ る。 6 結 び に 助 動 詞 が く る 用 法 が 断 然 優 勢 ( 二 四 二 例 ・ 四 二例 ・ 四 二% ) であ る が 、 と り わ け 、 ﹁ こ そ ﹂ ( 九 三 例 ) と ﹁ ぞ﹂ (七 二 例 ) でそ の 過 半 数 (助 動 詞 全 体 の六 入 % )を 占 め る 。 た だ し 、 ﹁ や ﹂ だ け は 省 略 用 法 ( 二 〇例 ) の方 が、 助 動 詞 (入 例 ) を 上 回 って いる 。 7 結 び の省 略 用 法 が 九 二 例 ・ 一 六 % で助 動 詞 に 次 ぐ 。 従 って そ の用 法 も 多 彩 で、 係 助 詞 に よ って ︿ 言 ふ﹀ 系 、 ︿ 在 り V 系 、 ︿ 為 ﹀ 系 の 語 のそ れ ぞ れ の省 略 に省 略 に 片 寄 り が 見 ら れ る。 数 の少 な い﹁ な ん﹂ は とも か く と し て、 ﹁ ぞ﹂ の場 合 の省 略 用 法 は 大 部 分 が ︿ 言 ふ﹀ 系 の語 の省 略 であ る の に対 し て、 他 の三 つ の 係 助 詞 ﹁ や ﹂ ﹁ か﹂ ﹁ こ そ ﹂ は ︿ 在 り﹀ 系 の語 の省 略 であ る こ と が 多 く 、 ﹁ か﹂ は 特 に ﹁ に か﹂ と い う 形 で、 そ のあ と が 省 略 さ れ る。︿ 言 ふ﹀・ ︿ 在 り V 系 以 外 の動 詞 を 、 ひと ま と め に ︿ 為 ﹀ 系 の語 と す る が、 動 詞 の 種 類 も 数 も 無 制 限 に多 いはず な の に、 用例 は き わ め て 稀 で、 む し ろ 例 外 的 で さ え あ る。 8 断 止 法 も 入 九 例 ・ 一 五 % と、 比 較 的 多 用 さ れ て い る にも か か わ ら ず 、 ﹁ こ そ﹂ に は 断 止 法 が全 く 見 ら れ な い 。 9 結 び に敬 語 の補 助 動 詞 が く る こ と は 極 め て 少 な (46)
流 布 本 『徒 然 草 』 の 係 り結 び三 分布 の 型 と用 法 の 展 開 一 く 、 ﹁ ぞ﹂ の四 例 以 外 は、 こ れ ま た むし ろ 例 外 的 で さ え あ る 。 ﹁ ぞ ﹂ の 四例 と は ﹁ 侍 る ﹂ が 三 例 、 ﹁ 候 ふ﹂ が 一 例 であ る 。 10 各 係 助 詞 の使 わ れ 方 に は 文 体 的 にも いろ いろ 特 色 が あ り 、 接 続 助 詞 な ど で結 び が 流 れ て (消 去 用 法 ) 王 朝 ふう の 極 め て長 文 のも の があ る か と 思 え ば、 き び き びし た 短 文 にも 用 いら れ る。 と り わ け ﹁ か ﹂ は 漢 文 脈 の短 文 に集 中 し て お り 、 中 でも そ う し た 漢 文 脈 に お け る 結 び の消 去 法 に は、 対 偶 表 現 に 現 れ る も の も 少 な く な く 、 対 偶 消 去 法 と 呼 ん でも さ し つかえ な いグ ルー プ を 形 成 し て いる 。 11 結 び の助 動 詞 の種 類 は、 ① ﹁ る ﹂ ② ﹁ ら る ﹂ ③ ﹁ つ﹂④ ﹁ ぬ﹂ ⑤ ﹁ た り ﹂⑥ ﹁ り﹂ ⑦ ﹁ き﹂⑧ ﹁ け り﹂ ⑨ ﹁ な り ﹂ (断 定 ) ⑩ ﹁ な り ﹂ (伝 聞 推 定 ) ⑪ ﹁ け ん ﹂⑫ ﹁ ら ん ﹂⑬ ﹁ ん﹂ ⑭ ﹁ べし ﹂⑮ ﹁ ま し﹂ ⑯ ﹁ め り ﹂ ⑰ ﹁ ず ﹂ ⑱ ﹁ ま じ ﹂ ⑲ ﹁ ま ほ し ﹂ の 一 九 種 であ る。 これ は 常 縁 本 と 全 く 同 じ で あ る 。 こ の種 類 分 け は ﹁ な り ﹂ だけ が 意 味 によ り 断 定 と伝 聞 推 定 に分 け て あ る が、 表 に 記 さ れ た意 味 は あ く ま で 代 表 的 な 意 味 で、 文 脈 に よ って細 分 化 す るも の であ る。 一 〇 例 以 上 出 現 す る 助 動 詞 を 多 い順 に 挙 げ る と 、 ﹁ ん﹂ ( 六 二 例 ・ 二 六 % ) ﹁ け り ﹂ ( 三 六 例 ・ 一 五% ) ﹁ べ し ﹂ ( 二 六 例 ・ = % ) ﹁ き ﹂ ( 二 五 例 ・ 一 〇 % ) ﹁ な り﹂ (断 定 ) ( 一 七 例 ・ 七% ) ﹁ め り ﹂ ( 一 二 例 ・ 五 % ) ﹁ ず ﹂ ( 一 〇 例 ・ 四 % ) の 順 に な る 。 ﹁ ん ﹂ が抜 き ん 出 て多 用 さ れ て いる。 12 破 格 用法 に つい て 言う と 、 常 縁 本 に 二 例 見 ら れ た 用 言 ( 動 詞 と 形 容 詞 に 一 例 ず つ ) の 破 格 は、 破 格 でな く な って い て ( も し 成 立 年 代 が 、 常 縁 本 の 方 が古 いとす れ ば 、であ る が ) 、 助 動 詞 だ け に 四 例 (過 去 の ﹁ き ﹂ に お け る ﹁ ぞ ﹂ と ﹁ こ そ ﹂ 。 お よ び 、 断 定 の ﹁ な り ﹂ に お け る ﹁ こ そ﹂ に 一 例 ) 見 ら れ る だけ であ る。 そ の中 に は構 文 の見 方 に よ っ て は 必 ず し も破 格 と扱 え な いも の、 あ る いは 、 ﹁ そ や ﹂ のよ う な も のを ﹁ ぞ ﹂ と ﹁ や ﹂ の二 つに数 え て あ る が、 複 合 係 助 詞 と し て 一つに 数 え れ ば、 破 格 の数 は わず か に 二例 と な り 、 散 文 に お け る全 用 例 五 入 一 例 に 対 し て は、 わ ず か〇 二 二 % と いう 値 でし かな い こと にな る。 流 布 本 の係 り 結 び は 文法 的 に完 璧 に 近 い と言 え る であ ろ う 。 初 め に別 扱 い (47) 182
にし た和 歌 にお け る 三 例 の係 り 結 び にも 破 格 は 全 然 見 ら れ な い。 山 口 雄 輔 (48)