献
辞
松尾 博先生は,本年7月に満65歳に達せられましたので,本学教員定年規 定の定めるところにより,明年3月31日をもって退官され,34年間にわたって 勤務されました滋賀大学経済学部を去られることとなりました。止むを得ない こととはいえ,わたくしたち経済学会会員一同にとりまして,まことに残念な ことでございます。 先生は1942(昭和17)年京都大学経済学部をご卒業とともに応召されました が,戦後あらためて:京大大学院に進まれ,本学にもゆかりの深い白杉庄一郎博 士のご指導のもとに,研究生活にはいられました。 その後,先生は大学院に在籍されるかたわら,大谷大学その他で教鞭をとら れましたが,1952(昭和27)年4月,31歳のときに,本学経済学部専任講師に 迎えられ,当初は世界経済論の講義を担当されました。以来今日に至るまでの 30有余年の間に,経済学史講座および理論経済学第二講座の担当者として,学 問研究の面ではもちろんのこと,学生の教育,後進の指導,大学の管理運営, 学会活動などの諸方面におきましても,先生のご業績とご功労は多大でありま す。 研究の面では,先生は,経済学史と経済理論の両分野にまたがって止れた業 績を発表してこられました。例えば前者の側面を代表する先生のヴェブレソ研 究は,ヴェブレンをもって制度学派の先駆者とみなす通説にとらわれることな く,良心的な急進的社会思想家という独自のヴェブレン像を世に示して,わが 国における本格的なヴェブレン研究の開拓期の一翼を担われた貴重な業績であ ります。また先生が近年においてもたゆみなく研究を継続され,敬愛される白 杉博士の独占理論の再評価を基軸に,1960年代以降のわが国の独占理論を振り 返るという意欲的なお仕事をまとめられたことも,逸することができません。 また先生は,みずから秀れた研究者であられたばかりでなく,本論文集に稿を寄せられた四氏をはじめとする多くの研究者を育成された有能な教育者であ られました。 さらに学会活動の面でも,先生は経済学史学会幹事を二期務められるなど, 積極的に活躍してこられました。 大学の管理運営の面では,先生は,1969年12月から1年聞,いわゆる大学紛 争たけなわの困難な時期に,引き受け手の少なかった経済学部長にあえて就任 され,事態の好転に大きく貢献されましたほか,日本経済文化研究所(現経済 経営研究所)所長,附属図書館長,評議員,大学院経済学研究科長などを歴任 されました。それゆえ先生は大学運営上の諸問題に精通されており,学部教授 会その他の学内各種会議において,常に有力な発言老のひとりであられまし た。 今先生が退官されますことは,わが経済学部にとりまして,かけがえのない ほどの大きい損失を意味しておりますが,しかし先生は近来ますますご壮健で あり,本学融こ比較的近い場所にお住まいでもありますので,今後とも折にふ れてわれわれ後進をご指導賜わりますよう,お願い申し上げます。 わたくしたちは今ここに,先生のこ退官を記念して,先生にゆかりのある学 内外の研究者22名の労作から成る論文集を編み,深い感謝と敬愛の心をこめ て,先生に献げます。 どうか先生が,これからもますますお元気で研究と教育に従事され,お幸せ な毎日を過されますように,わたくしたち会員一同,心から願っております。