JAIST Repository: 産学連携における効果的な特許流通システムに関する考察
63
0
0
全文
(2) 修. 士. 論. 文. 産学連携における効果的な特許流通システムに関する考察. 指導教官. 亀岡秋男. 教授. 北陸先端科学技術大学院大学 知識科学研究科知識社会システム学専攻. 150012 大谷. 審査委員:. 健治. 亀岡. 秋男. 教授(主査). 永田. 晃也. 助教授. 梅本. 勝博. 助教授. 遠山. 亮子. 助教授. 2003 年2月 Copyright © 2003 by Kenji Otan.
(3) 目次. 第1章. 1. 研究の目的・方法. 1-1 背景・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 1-2 研究の目的と方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 1-3 論文構成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3. 第2章. 産学における特許流通システムの概要. 4. 2-1 承認 TLO とは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 2-2 産学連携における特許化の意義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 2-3 複合型技術移転システムと特許分類・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7 2-4 特許流通における 2 つのステージ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11 2-5 国立大学における権利の帰属・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12 2-5-1. 発明委員会と国有特許・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12. 2-5-2. 教官個人有の特許・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15. 2-5-3. 権利の帰属の定量的調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17. 2-5-4. 従来型の特許流通・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22. 2-5-5. 共同研究の成果の問題点・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24. 2-7 国立大学の行政法人化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27 2-8 従来型の特許流通と法人化後の課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28. 第3章. 出願人別に見た承認 TLO の特許出願状況とその特徴. 31. 3-1 調査対象・調査方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31 3-2 承認 TLO 毎の共有特許率・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31 3-3 出願形態・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33 3-4 出願日の動向・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34 3-5 共有特許の第三者への移転可能状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35 3-6 IPC 分類による特許出願動向・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35 3-6-1 IPC 分類一桁の動向・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35 3-6-2 IPC 分類上位 30 分類・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・37 i.
(4) 3-7 承認 TLO の組織形態と共有特許・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・38 3-8 承認 TLO の出願特許の特徴と、 国立大学法人化後への示唆・・・・・・・・・・・・42 第 4 章 事例研究 ∼山口 TLO∼. 44. 4-1 山口 TLO の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・44 4-2 共同出願戦略と実施許諾率・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・45 4-2-1 山口 TLO の特徴・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・45 4-2-2 山口 TLO の「共同出願戦略」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 45 4-3 山口 TLO のポリシー設定の背景・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・48 4-3-1 中規模総合大学である点・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・48 4-3-2 巨大マーケットから地理的に離れている点・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・48 4-3-3 財政基盤の脆弱さ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・48 4-3-4 ビジネスプロデューサーの存在・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・49 4-4 共同出願戦略の問題点・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・50 4-4-1 企業側から見た問題点・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・50 4-4-2 大学研究者から見た問題点・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・50 4-4-3 その他の問題点・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・50 4-5 承認 TLO の新しい特許流通プロセス・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・51. 第5章. 53. 結論. 5-1 理論的含意・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・53 5-2 実践的含意・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・54 5-3 今後の研究への示唆・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・54 55. 謝辞. 参考文献一覧・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・56 参考 URL 一覧・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・58. ii.
(5) 図表目次. 図 2-1 承認 TLO モデル図・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・. 5. 図 2-2 特許分類・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 図 2-3 国立大学教官の権利の帰属・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13 図 2-4 国立大学の権利の帰属・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14 図 2-5 国立大学における特許流通システム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17 図 2-6 東京農工大学のシーズ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 図 2-7 北陸先端科学技術大学院大学のシーズ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20 図 2-8 JAIST 企業規模・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21 図 2-9 2 章のまとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28 図 3-1 承認 TLO の特許出願形態・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33 図 3-2 出願日の動向・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34 図 3-3 第三者への移転可能状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35 図 3-4 IPC 分類出願割合(一桁)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・36 図 3-5 C 分野の出願状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・36 図 3-6 IPC 分類上位 30 分類・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・38 図 3-7 組織分類別の割合・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40 図 3-8 各承認 TLO の出願形態内訳・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・41 図 4-1 山口 TLO のしごと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・44 表 2-1 複合型技術移転システムのメリットデメリット・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9 表 2-2 発明者と出願人の関係. 東北通商産業局(2002)より・・・・・・・・・・・・・・19. 表 2-3 北陸先端科学技術大学院大学. 発明者と出願人の関係・・・・・・・・・・・・・20. 表 3-1 承認 TLO の共有特許率・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・32 表 3-2 IPC 分類上位 30 分類・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・37 表 3-3 承認 TLO の割合・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40 表 3-4 国立大学における各特許流通のメリット、デメリット・・・・・・・・・・・・・・43 表 4-1 各承認 TLO の実施許諾率・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・46 表 4-2 山口 TLO の特許出願戦略・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・51 iii.
(6) 第1章. 研究の目的・方法. 1-1 背景 大学の主要なミッションとして「学術的研究」と「教育」があげられるが、 現在、もう一つの大学のミッションとして「社会貢献」が重要視されている。 大学はこれまでも様々な方法・形態により社会的な貢献を果たしてきた。特 に「学術的研究」、 「教育」による社会的な貢献があったことは疑う余地もない。 しかし、長引く日本経済の不況の下、新産業創出による経済の発展・国際競 争力強化の手段としての「技術移転」が、 「社会貢献」の直接的手段として大学 に求められている。このような考え方は、70 年代に製造業の競争力低下に直面 した米国が、80 年代以降の「プロパテント(特許重視)」政策の推進、特にバイ・ ドール法の効果により 90 年代に競争力を回復させたという認識がある。 日本が具体的に「日本版プロパテント政策」へ動きはじめたのは、1996年12 月に設置された「21世紀の知的財産権を考える懇談会」1報告書が発表されてか らあるといわれている。同懇談会では、米国の国家戦略としてのプロパテント 政策の推進等、近年の急激な環境変化に対応してわが国の今後の知的財産権の あり方を明らかにするために設置されたものである。大学、産業界、知的財産 権に関する専門家等の12名が特許庁長官の私的懇談会として集まり、5回に及ぶ 会合を重ね、1997年4月に「21世紀の知的財産権の目指す方向」が発表されてい る。本報告書は、日本の知的財産権の現状を分析し、課題をあげて今後の目指 すべき方向を具体的に示したものとして高い評価が与えられている。1985 年に 提出され米国の第二次プロパテント政策の流れを作った「ヤングレポート」に なぞらえて「有馬レポート」とも称されている2。報告書では知的財産の「広い 保護」、「強い保護」、大学・研究所の「知的財産権振興」、「特許市場」の創設、 「電子パテント」の実現、 「発展途上国協力」の推進、 「世界共通特許」への道、 「知的財産権政策」の国家的取り組みの8項目が提言されている。この「有馬レ. 1. 特許庁報告書(1997) 小林征男「我が国の特許政策」 http://www.inter-lab.gr.jp/magazine/pdf_31/tokkyo0105.pdf. 2. 1.
(7) ポート」以来、大学から生まれた知識を積極的に産業界に流通するための施策 が足早に行われている。その代表としていえるのが1998年「大学等技術移転促 進法」により設立された技術移転機関(TLO)である。 また、この経済の発展としての「技術移転」を期待しているのは日本全体ば かりではなく、各地方においても同じことがいえる。地域にある大学を核とし た産業集積を行い、地域経済の発展を目標とした「知的クラスター計画」と「産 業クラスター計画」もまた、大学の「知」に注目をしている。 さらに、時を同じくして、大学の国際的水準の研究、教育の質的向上、独立 採算制等、大学の経営改革といった観点から、国立大学の独立行政法人化が議 論されている。研究活性化、科学技術の振興のための「技術移転」を通した研 究費の獲得もまた、大学のミッションの1つであるといえる。 このように「新産業創出=日本経済の発展」、「地域経済の発展」、「大学の研 究資金の獲得」といった様々な観点から、大学の「知識」が注目を集めている。 しかし一方で、その効果は必ずしも期待通りにすすんでいない状況であると いえる。その1つの例として、中心的な役割を果たしている TLO の財務状況が 厳しいことは良く聞かれる話である。TLO の本来の役割である「特許の流通」 を核とした技術移転について、改めて現状を見直し、効果的な特許流通システ ムとは何かについての検証が必要である。. 1-2 研究の目的と方法 本研究の目的及び調査方法としては、①日本における現状の特許流通システ ムの現状を定量的・体系的に把握するために、先行研究の調査をおこなう。ま た、②特許庁 HP の電子特許図書館により、承認 TLO 全 27 機関により出願さ れた特許を収集し、分析をおこなうことで承認 TLO による特許流通の現状、特 徴、課題等を抽出する。さらに、③特徴的な出願戦略を行っている山口 TLO に ついて事例分析を行うことで新しい特許流通プロセスを明らかにする。 以上の 3 点を目的にあげ、調査を進めていく。. 2.
(8) 1-3 論文構成 本研究の論文構成としては以下の通りである。. 2章 産学における特許流通システムの概要 本研究に関する先行研究の検討を行うとともに、現状の大学と産業界の特 許流通の現状を体系的に把握する。特許流通システムの中でも、特に国立 大学の権利の帰属に注目し、その形態を分類するとともにその問題点を把 握する。. 3章 承認 TLO の公開特許調査 特許庁 HP 上の特許電子図書館(IPDL)を用いて、承認 TLO の特許取得状 況を把握することで、特徴や問題点を明らかにする。. 4章 事例研究. ∼山口 TLO∼. 特徴的な特許出願戦略をとる承認 TLO である、山口 TLO についてイン タビュー調査をおこない、新しい特許流通システムについての考察をする。 本研究で明らかになった点をまとめ、今後の研究への示唆を行う。. 5章 結論 本研究で明らかになった点をまとめ、今後の研究への示唆を行う。. 3.
(9) 第2章. 産学における特許流通システム の概要. 2-1 承認 TLO とは “有馬レポート”を受け、1998 年 8 月 1 日に「大学等における技術に関する 研究成果の民間事業者への移転の促進に関する法律」(以下、「大学等技術移転 促進法」)が施行された。この法律の目的は、第 1 条で定めるとおり、 「この法律は、大学、高等専門学校、大学共同利用機関及び国の試験研究機 関における技術に関する研究成果の民間事業者への移転の促進を図るための措 置を講ずることにより、新たな事業分野の開拓及び産業の技術の向上並びに大 学、高等専門学校、大学共同利用機関及び国の試験研究機関における研究活動 の活性化を図り、もって我が国産業構造の転換の円滑化、国民経済の健全な発 展及び学術の進展に寄与することを目的とする。」でありその内容は特定大学技 術移転事業計画が実施指針に照らされて適切で確実に実施される見込みのある 場合には文部科学大臣及び経済産業大臣はその事業計画を承認し、その事業を 行う技術移転機関:TLO(Technology Licensing Organization)に対し支援を行 うものである。特定大学技術移転事業とは ① 大学における企業化しうる研究成果の発掘・評価・選別 ② 研究成果に関する特許権の取得・維持・保全 ③ 研究成果に関する技術情報の提供 ④ 特許権等に関する企業への移転等 ⑤ 企業への移転等によって得た収入の配分 を行う事業である。また、大学等技術移転促進法による承認 TLO への支援措置 として産業基盤整備基金による助成金の交付や債務保証を受けるとことができ るとともに、特許庁の特許流通アドバイザー事業による特許流通アドバイザー の派遣を受けることができる。 「大学等技術移転促進法」により設立された。ま. 4.
(10) た、TLO には承認 TLO、認定 TLO の 2 種類がある。承認 TLO3とは大学等の 教官個人又は、公立、私立大学等の特許権当等を扱う TLO である。また、認定 TLO4とは文部科学省の認定を受けて活動する機関であり、大学・国研等の国有 の特許権等を扱う TLO であり、助成金の交付が受けられるのみならず、全ての 特許関係費用(公の費用)が免除される 大学における研究成果の権利化を促進し、企業等にライセンスし、対価として の実施料収入を得て、大学や研究者に還元し、新たな研究に役立てる、いわゆ る「知的創造サイクル」の中核を担っているのが、TLO であるといえる。. 図 2-1. [承認 TLO モデル図. 産業基盤整備基金 web ページより]. 平成 15 年 1 月末現在、28 機関が承認されている。通常、技術移転機関(TLO)は特に 承認を受ける必要はなく、承認を受けると国からの支援を受けることができる反面、その 行動範囲が規定されている。日経産業新聞(2003 年2月 3 日付け)によると技術移転機関 を設立した大学(国公私立大学をあわせる)は全国で 45 校と前年度より 12 校増加したこ とが報じられている。 3. 5.
(11) 2-2 産学連携における研究成果の特許化の意 義 産学連携における「技術移転」といった場合、 「技術移転」には様々な形のも が考えられる。本研究で扱う特許を含む無形資産である知的財産権をはじめ、 論文や学生の就職、研究協力等によるもの、最近では研究試料等のマテリアル・ トランスファーといった有形資産の移転などの形で、大学の知識・技術は産業 界に移転されてきた。 現在の「技術移転」の中心的な話題となっているのは大学の教官等が行う研 究成果を特許として権利化し、ライセンスし、民間企業が実用化を行うという 形での「技術移転」である。このリニアモデル的な技術移転での特許化の意義 を、多くの議論では、 「米国方式の技術移転の仕組みの中で、研究成果の法的保 護は、本質的な要素5」とされている。それは、 「大学の研究成果を実用化するた めの開発には投資が必要であるが、産業界からリスクを伴う投資を呼び込むに は知的財産を全般的に保護する必要があり、特に特許権が重要である6」や「技 術移転を進めようとする大学等の研究機関が研究成果をパブリックドメインに おくのではなく、特許化し、知識の私有化を推進する理由の一つは、研究成果 を実用化する追加投資に誘引を与えるためには排他的なライセンスが必要とな る点にある」7とされるように、企業側への「追加投資への誘引」という意味で の意義をもつ。大学の研究成果は一般的に基礎的なものが多く、その研究成果 が即座に製品なりに結びつくことは少ないといわれている。製品となり市場に 出回るためにはさらに製品化開発が必要で追加投資が必要となる。特に商業化 開発のリスクが高い場合、独占供与という保護によって商業化後の投資回収の 確立を高めリスクを減らすことが特許化の意義であるとされている。 平成 15 年 1 月 20 日現在、認定 TLO は産総研イノベーションズと関西 TLO の 2 機関で あり、そのうち関西 TLO は承認 TLO でもある。 5 須藤・工藤 2000p78 6 Niles Reimers 1999 p1 7 中山一郎 2002 p17 4. 6.
(12) 一方で、真に排他的なライセンスが必要とされるのは、バイオ分野等の一部 の実用化に限られているのではないか、また、排他的ライセンスが必要な場合 においても技術開発の不確実性を踏まえれば事前に適切なライセンシーを選ぶ のは容易ではなく、非排他的ライセンスに関しても、産業界は様々な手段で大 学の研究内容を知りえており、利用可能な発明は特許取得前から利用し始めて おり、このような場合に非排他的ライセンスすることは大学の大学の収益増加 には貢献しても技術移転には貢献しないと指摘する議論もある8。 このように、大学の研究成果の特許化、技術移転といったリニアモデル的な産 学連携に関する研究成果の特許化の必要性については様々な議論がなされてい る。 一方で、大学からの生まれた研究成果である特許が民間企業に実用化される プロセスには、このようなライセンスによる技術移転の他にも、研究協力の中 で生まれた研究成果が挙げられる。民間企業等と大学が研究協力を行い、研究 成果が生まれ、権利化され、当該民間企業が実用化を行う、又はその特許を第 3 者にライセンスされ、実用化が行われる場合もまた、産学連携における特許流 通であるといえるのではないか。本研究では、特許という権利化された大学の 「知識」がどのようなルートを経て産業界に移転されているのかというプロセ スに注目する. 2-3 複合型技術移転システムと特許分類 大学からの直接的な「社会貢献」としての技術移転を考えた場合、大学から の技術シーズを発信する場合と企業側のニーズから技術移転が行われる場合が ある。筑波大学学際領域研究センター(2000 及び 2001)9では技術移転を 2 つ. 同上 p18 及び jeannete Colyvas, Michael Crow, Annetine Gelijins, Robert Mazzoleni, Richard R.Nelson, Nathan Rosenberg, and Bhaven N.Sampot(2002) 9 筑波大学学際領域センター(2000)では大学教員 2500 人、大学事務局 276 大学、民間企 業 4000 社に対してアンケート調査を行い、従来から言われている産学連携研究や技術移転 の問題等について仮説を実証していくことを目的としている。また、企業ニーズ出発型の 事例として「いばらぎ未来企業おうえんプロジェクト」実験的に実施している。 8. 7.
(13) のルートに分類し実証的研究を行っている。2 つのルートとは、1 つは大学発の 技術シーズをライセンシングすることであり、もう 1 つは、企業のニーズから 共同研究等を斡旋することによる技術移転である。それぞれの問題点として、. 技術シーズ移転型 ・ 日本の研究活動の実態として大部分の教員は研究テーマの設定にあたり 社会経済上の必要性をあまり考慮しておらず、応用を意識せずに研究を 行った場合の技術移転の実現可能性は低い. 企業ニーズ出発型 ・ 企業ニーズは、当該企業の経営戦略とも関わっており、企業秘密に属す る部類もあるので、中小企業は外部に出したがらず、リエゾン活動とし て企業ニーズを把握するのは極めて困難 ・ 企業ニーズ、特に中小企業のニーズに応じた研究は一般に短中期的なテ ーマであることが多くの大学の研究者がこのような研究に多くの時間を とられることになると、大学の研究全体が衰退するのではないかという 懸念がある といった点を上げている。また、工学系のように、常に企業と共同研究等が実 施されるような場合は、研究テーマの設定の段階から、応用を意識したテーマ 設定が行われていると見ることが出来るので、技術シーズ移転型であっても、 比較的容易に技術移転を行うことができ、また、本来研究者の自由な発想にも 基づいて研究が行われる場合も同様に、この方式によることが望ましいと考え られる。他方、大学が地域との関係を深め、社会的貢献をより目に見える形で 果たしたいと考える場合や、地元の中小企業が研究開発の明確な目標を持って いる場合、中短期的な研究開発計画である場合などには、企業ニーズ出発型の 方式によることが考えられるとされる。 また、筑波大学学際領域センター(2001)では筑波大学における研究・技術シーズ集を作 成し、その技術評価とそれを基にした企業への技術移転を試みているが、移転には成功し ておらず、技術シーズ移転型の困難さを示している。また、企業ニーズ出発型で成功して いるドイツのシュタインバイス財団の事例を参考に「関東エリア産学連携大学連合」2000 年 12 月に立ち上げている。. 8.
(14) 上記調査では、このように技術移転を 2 つに分類し、メリット、デメリット に関して調査をおこない、どちらか一方ではなく、場合に応じて使い分ける「複 合型技術移転システム」の必要性を指摘している。また、同調査によると、各 移転のメリットおよびデメリットは次の表 2-1 のようになる。 表 2-1「複合型技術移転のメリット・デメリット」新谷・菊本(2002) メリット. デメリット. 大学技術シーズ ・ 大学研究者の研究の自 ・ 移転できる技術 が大学に少ない 移転型 由が確保できる ため移転を実現 ・ 研究者の自由な発想に できる確率が低 もとづくために独創性 い の高い研究である。 ・ インパクトの強い研究 ・ 移転に必要な技 術評価を大学で になる可能性がある 実施するのは困 難 企業ニーズ出発 ・ 技術移転すべき相手が ・ 大学の研究者が 中小企業の目先 型 最初から決まっている の研究に終われ ので移転しやすい ることとなる ・ 製品化に向けた企業の ・ 大学研究者の自 意欲が高い 由に影響を受け る. 当 該 方式 が有 効 な場 合 ・ 工学系など、日ご ろから企業と接触 があり、常に共同 研究等が行われて いる場合 ・ 基本特許が取れる 場合に類するなど 中長期的テーマの 研究成果 ・ 中小企業で中、短 期的な研究が行わ れる場合 ・ 中小企業で研究開 発の目的が明確な 場合. また、新谷・菊本(2002)では上記調査を進め、技術シーズ移転型、企業ニ ーズ出発型を実際に実施にした結果、現実に技術移転を起こしやすい方法は企 業の技術ニーズを出発点として、それに見合う大学の研究者を見つけ出し、共 同研究を組織する方式の企業ニーズ出発型であると結論付けている10。 共同研究等の成果から、当該企業においてどのような技術・知識が移転され、 それが成果に結びついているのか、または技術シーズ型でライセンスされた特 許から企業が実施化をおこなっているのかを判断するのは困難であるため「技 術移転」の成功を定義するのは困難である。しかし、その成立件数のみに注目 するのであれば、共同研究数の推移と TLO による実施許諾数を考えた場合、共 前掲注 9 において実施された技術シーズ型技術移転実施調査の 70 件の事例の内、技術移 転の可能性を秘めているものは 2 件に減少した、また、企業ニーズ型の技術移転を 2 例上 げ、それぞれ 1999 年、2001 年に企業と大学の共同研究者が共同出願されていることをあ げている。 10. 9.
(15) 同研究数が多いことは確かである11。これには共同研究制度と技術移転制度の成 立時期の違いによる経験、実績、慣習といったものが大きな影響を与えている と考えられる。日本における技術移転制度の始まりは 1998 年、共同研究制度の 始まりは 1982 年であるので、共同研究制度ほどに技術移転制度は民間企業、及 び大学の研究者の間にも未だに十分な認識が行われていないことも原因の 1 つ として挙げられる。 この調査結果から、本研究では大学から生まれる特許の移転は大きく分けて 2 種類あると考える。技術シーズ移転型における特許の流通と企業ニーズ出発型 である共同研究等の成果から生まれた特許である。大学の研究者の技術シーズ を特許化し技術移転を行う移転を「技術シーズ型」の特許、企業との共同研究 等の成果12として共同で発明されたものを「企業ニーズ出発型」特許と定義する。 上記調査結果の通り、企業ニーズ型の技術移転の方が効果的であるのならば、 現状では「企業ニーズ出発型」の特許の方が効果的に企業に移転されているの ではないかという仮説が生じる。. 図 2-2. [特許分類]. 現状の産学連携における特許流通システムおいて、実際に大学の研究者が発明 した特許は、現状の産学連携の中でどれだけ企業にわたっているのだろうか、 また、「技術シーズ型」と「企業ニーズ出発型」の特許の割合を後の節(2-5) で見ることとする。. 平成 13 年度共同研件数は 5264 件で(経済産業省調べ)、平成 13 年度実施許諾件数は 238 件(文部科学省調べ)である。 12 厳密には、特許を取得する発明がどこから発生しているのかを決定するのは難しい。ま た、受託研究により大学等教官が単独で発明したものの取り扱い等が考えられるが、この 分類が行えていない。 11. 10.
(16) 2-4 権利の移転における2つのステージ 特許流通とは、特許庁によれば、「特許をライセンス(実施許諾)・売買等す ることにより技術移転を行うこと」であり、産学連携における特許流通では、 どの時点で大学の研究者の研究成果が移転されるのかが重要となる。 現在、産学連携において特許13が移転されたといわれているものの多くは、権 利の成立前の状態であり、 「特許を受ける権利(特 33 条)」と呼ばれているもの である。この「特許を受ける権利」の移転は特許出願前に行われる場合と、特 許出願後に行われる場合とがある。 発明者は、自分で出願することも出来るし、出願前の「特許を受ける権利」 を他人(法人を含む)に譲渡することも出来る。発明者が自分で出願すれば発 明者兼出願人であり、特許されれば特許権者となる。これに対して、 「特許を受 ける権利」を他人に譲渡した場合は、発明者と出願人は別人となる14。一般的に 企業での発明の場合は、発明者が従業員、出願人が勤務先の会社名となる。 一方、特許出願後の権利の移転とは、 「特許を受ける権利」を個人または実施 斡旋をしてくれる機関で出願したものを、事業者に対し譲渡、もしくは実施許 諾するプロセスにあたる。 教官が権利を保有するということは発明者と同時に出願人となり権利を守り たい場合であり、出願前に譲渡する場合とは、出願人としての権利を様々なレ ベルでの契約の下に、特許を出願する機関に譲り渡し、出願人とならないケー スである。出願人は特許権者であり、強い法的な権利を持っているが、発明者 は出願人との間の契約に基づく権利が主張できるだけで法律上の権限はない。 教官にとって、 「特許を受ける権利」を出願前に承継させる場合のメリットは、 出願の手続きや、出願費用、弁理士費用等のコストの負担が減少する点にある。 また、その場合に実施斡旋を行う機関に移転した場合には、更にその権利を実 施してくれる企業を選別し、ライセンスしてもらえるというのが最も大きなメ. 13 14. 本研究ではたんに特許といった場合この「特許を受ける権利」を含まれることとする。 竹田(1999)p203∼P204. 11.
(17) リットであり、TLO の最も重要な業務であるといえる。しかし一方で、TLO の 機能がマーケティングのみであるとすると、教官個人が企業にコネクションを 持っており、実施先企業が予測できる場合、または、企業と共同で発明したも ので実施先企業が明白であるときには教官等は TLO を用いるメリットは少ない。 現状の産学連携における特許流通は、どのステージで、どのようなルートで行 われているのだろうか。. 2-5 国立大学における権利の帰属 承認 TLO が設立され、大学からの特許流通に新しい枠組みが出来た15。しか し、それ以前にも大学の研究成果は企業へ渡り、実施化されており、現在にお いてもそのルートは様々なものである。TLO のスキームを用いた特許流通は増 加しつつあるものの、実際はその一部であるといえる。本節では大学、特に国 立大学の研究の成果が、いかにして民間の企業の手に渡り、活用がなされてい るかといった現状とその問題点についての考察を行う。. 2-5-1 発明委員会と国有特許 国立大学の権利の帰属については昭和 53 年 3 月 25 日 文学術第 117 号の通 達以来、平成 11 年 3 月 24 日文学助第 163 号までに 3 回の改正が行われている 16。. これによると、国立大学の教官等が発明を行った場合、教員が大学長に届出 をおこない、大学に設置された「発明委員会」に審議結果に基づき、大学長が 決定するとされ、その権利が国に帰属する(ただし特許等の出願人及び権利者 は大学長になっている)か、個人に帰属するかが決定される。この発明委員会. 教官個人有の発明を譲渡する TLO は、別段承認を受ける必要はないが、国からの支援を 受けることは出来ない。. 15. 16. 昭和 62 年 5 月 20 日第 138 号、平成 9 年 3 月 27 日同第 163 号. 12.
(18) で国有となるのは次のような場合である。 ・ 応用開発目的とする特定の研究課題の下に、当該発明に係わる研究を行うた めのものとして特別に国が措置した研究経費(民間等との共同研究及び受託 研究等経費のほか、科学研究費補助金を含み、教官当積算校費、奨学寄附金 等のような一般的研究経費は除く。)を受けて行った研究の結果生じた発明 ・ 応用開発を目的とする特定の研究課題の下に、原子炉、核融合設備、加速器 等のように国より特別の研究目的のために設置された特殊な大型研究設備 を使用して行った研究の結果生じた発明 上記の場合を除くと、国立大学等の教官等の発明に係わる特許を受ける権利 は、発明者に帰属することとなる。. 図 2-3. [国立大学教官の権利の帰属]. また、図 2-3 は国立大学等で発明委員会において審議された状況を表すもの である。原則発明者帰属といわれている通り、80%以上は発明者個人に特許を 受ける権利が帰属している。平成 9 年以来、発明委員会における審議件数は右 肩上がりに上昇している。この増加に関しては、国を挙げての特許重視政策も さることながら、承認 TLO の扱える発明が、発明委員会に届出があったものに 13.
(19) 限られるため、従来、発明委員会で審議されることのなかった研究成果につい ても正当に審議されるようになったのではないかという見解もある17。 発明委員会により国有特許となったものは、科学技術振興事業団(JST)の大 学等国有特許の管理支援または、認定 TLO(現時点では産総研イノベーション ズと承認 TLO でもある関西 TLO の 2 機関)により権利取得、実施の斡旋がさ れることになる。また、国有の特許等を第三者に譲渡または、専用実施権を設 定するためには原則として一般競争入札の手続きが必要とされるが、随意契約 (一般競争入札の特例方式)18により、共同研究企業や TLO に譲渡が可能であ る19がその手続き等が煩雑である。国有となった特許等に関しては、確実な組織 的管理がなされている反面、国が絡んでくる上での特許権の取り扱いの困難さ がある。. 図 2- 4. [国立大学の権利の帰属]. (文部科学省 HP より作成). 平成 12 年 12 月 27 日文学助第 203 号により発明委員会を徹底するよう通知が行われて いる。 18 随意契約による特許の譲渡について(平成 12 年 12 月 27 日文部省通知) 19 文部科学省「産学連携事務入門」 (2002) 17. 14.
(20) 2-5-2. 教官個人有の特許. 発明委員会の審議で、発明者個人に権利が帰属した場合には、 ・ 国に譲渡される場合 ・ 科学技術振興事業団(JST)の有用特許取得制度による権利化、実施斡旋が なされる場合 ・ TLO に譲渡され、出願、実施斡旋がなされる場合 ・ 企業に譲渡される場合 ・ 企業と教官の共同で出願される場合 ・ 教官が個人で出願する場合 ・ 放置される場合 の 7 つのルートで権利化されることとなる。. ①国に譲渡される場合 この場合は上述の国有特許となった場合と同様のプロセスを経て、権利化、 実施斡旋がなされる。 ②科学技術振興事業団の「有用特許制度」による権利化、実施斡旋がなされる 場合 昭和 54 年度より行われているが、平成 10 年度4月から、特許化支援事業 の一つとして本格的に開始された初期的なアイデアの段階より先願特許、先 行技術の調査や、特許性の相談等の包括的なサービスも行っている。 ③TLO に譲渡、権利化、実施斡旋がなされる場合 平成 10 年の「技術移転促進法」により権利化、実施斡旋を行うプロセスであ る。(TLO を用いた特許流通の詳細なプロセスについては後述) ④企業へ譲渡 これまでに最も多用されていたルートであり、大学教官と企業との間に、 卒業生の就職、研究情報の交換、奨学寄附金の授受といった包括的な関係で 成立していることが多く、それらの一環として企業への発明の開示・譲渡が 行われている。このルートによる特許出願では、企業の特許戦略に乗っ取っ 15.
(21) て行われるため、大学教官の負担はほとんどない。一方で企業に譲渡された 後は大学組織としてはもちろん発明者である教官にも追跡不可能である。ま た、企業の特許戦略にそぐわない場合は死蔵されるケースもある20。 ⑤企業と教官の共同出願 特許出願で企業との接触経験の多い大学教官の中には、出願人としての権利 を保有し、企業と共同出願すべきであるとの主張もある。出願人になってお くことで、特許流通の不透明性は回避できるが、権利なりの負担が伴う ⑥教官が出願 教官が個人で出願する場合は、出願経費、作業、等に相当な負担が生じる。 しかし、一部教官は個人で出願しているケースも存在する。 ⑦放置 発明者に権利が帰属すると判断されながらも特許出願されることもなく放 置されるケースもある。. 発明者が権利を譲渡する場合(①∼④)と保有する場合(⑤、⑥)がある。 各ルートの権利の移転であるが、①∼④のおける「特許を受ける権利」は、出 願前に実施を行う機関や実施斡旋を行う機関へと承継が行われている。⑤のル ートでは、教官個人と企業の共同発明がそのまま権利を保有する場合と、教官 個人の発明を自分でも権利を保有しつつ、企業にも譲渡する場合の 2 種類が考 えられる。⑥のルートでは、教官個人が権利を保有しているので、各自研究者 が実施先を選択しライセンスするか、TLO や他の実施斡旋をしてくれる機関に 移転させ、マーケティングを代行してもらうこととなる。. 20. 今田(1998)http://cast.aist-nara.ac.jp/magazine/1998/tlo/より引用. 16.
(22) 図 2- 5. 2-5-3. [国立大学における特許流通システム]. 権利の帰属の定量的調査. 発明委員会で国有となった発明、もしくは個人有になった発明の中で国や科 学技術振興事業団、承認 TLO に譲渡された発明は、組織的に管理されている。 これらの発明は、定量的調査が一般に公開されている。一方、それ以外の特許 を受ける権利の帰属についての定量的調査は、個別では多数なされていると推 測されるが、公開されている調査研究数は少ない。 公開されているものとしては、 「東京農工大学共同研究センター」21のものと、 「東北通商産業局(1999)、(2000)」22によるものがあり、また、本研究でも、 北陸先端科学技術大学院大学においても調査を行った。. 21東京農工大共同研究センター 22. 東北通商産業局. 17.
(23) (1)東京農工大学の共同研究センターの調査 東京農工大学の共同研究センターでは、H5~H12 年の間に発明人が大学の研 究者である特許の出願人形態についての調査を行っている。出願人が企業とな っている特許流通が過半数の 61%を占めており、主流となっている。企業と企 業、企業と個人、国との共有を 含めると 82%と出願の時点で企 業の何らかの関与がある場合が 大半を占めている。 また、教官個人が出願人とし. 6% 1% 3%. て権利を保有している場合でも、 個人有である場合が 6%、企業. 18%. 6%. 5%. 61%. 企業 個人/企業 企業/企業 国と共有 国有 個人 その他. と教官の共同出願人の場合が 18%と企業と教官の共同出願の 割合が多い。. 図 2-6. [東京農工大学のシーズ]. 東京農工大学共同研究センター調べより作成. (2)東北通商産業局の調査 東北通商産業局(1999)では、東北大学の教官等が出願人となっている特許 について調査を行っている。その件数は H5∼H9 年の合計で 966 件であり、割 合は教官単独(98 件)、個人との共同(45 件)、企業との共同出願(892 件)と なっており、東京農工大学の調査と同様に、教官が権利を保有する場合は、教 官単独で出願するよりも企業との共同出願の割合の方が高いといえる。尚、東 工大では 80%が企業名、10%が大学長名(国有)、10%が発明者自身と公表し ており23、東京農工大学と同様に、多くのものは出願前に企業側の関与を受けて いる。 また、東北通商産業局(2000)24では、教官等の発明が出願される場合に、 単独発明の場合は全体の 14%弱であり、多くは共同発明者が存在していること. http://www.fcrc.titech.ac.jp/publish/chronicle/vol3.htm TLO の株主となっている教官及び特許出願人となっている教官 102 名についてアンケー ト調査を行ったものであるため、特許化、技術移転に興味を持っている教官のみに対する ものであることに注意が必要である. 23 24. 18.
(24) を明らかにしている。また、このアンケート調査では、大学の研究者が単独で 発明したものは研究者が出願する件数も多いこと、また、共同発明者の内に企 業の研究者が含まれている場合は、企業側が当然権利を主張してくること等を 考えると、共同発明で企業が出願した特許(10+95=105)の中には、多くの企 業側の研究者が含まれているのではないかと推測される。. 表 2-2. [発明者と出願人の関係. 東北通商産業局(2000)より]. 大学の研究 企業が出願. 大学の研究者と企 合計. 者が出願. 業が共同で出願. 単独発明者. 20. 1. 4. 25. 共同発明者. 47. 10. 95. 152. 合計. 67. 11. 99. (総計)177. また、大学と企業が共同出願人になっている相手先企業に、出願手続きや特 許維持に関わる費用を全額負担している特許の割合を調査したところ、回答企 業の 68%(73 社)の企業が「全部」の共同出願特許について全額負担しており、 全額費用負担している特許が全共有特許件数の「3 割以下」とする企業は6%(7 社)であった。また、教官が企業と共同出願する際に、権利の持分の明確化や、 特許維持費用等の取り扱い方法を共同研究契約書や共同出願契約書の条文に盛 り込んでいるかという質問に対し、常に作成(教官 13%、企業 63%)、場合に より作成(教官 23%、企業 28%) 、相手に委ねる(教官 22%、企業 4%)、作成 していない(22%、企業 2%)という結果であった。このように、企業に比べ、 適切な契約締結を行っている教官の割合は低いという結果となっている。大学 側が確実に資金還元を確保するには適切な契約締結、ライセンス後の管理等が 必要となるが、契約締結時においては、教官の側に関心が薄いと考えられる。. (3)北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)の調査 本調査は、2002 年 8 月に北陸先端科学技術大学院大学における、特許取得調 査を独自に行ったものである。調査範囲は 2002 年 8 月末現在、北陸先端科学技 19.
(25) 術大学院大学に在籍している教授、助教授、助手が公開特許広報に発明者もし くは出願人として名前を連ねているものであり。調査手法としては、特許庁 HP の IPDL により、各教官の名前をキーワードとし検索を行った。 総数は 132 件であり、内訳は図 2-7 のようになった。東京農工大学や東北大 学の調査と比べ、企業が単独で出 願人となっているものが少なく、 企業側が何らかの関与を行ってい. 個人 TLO6% 1%. る場合が 59%と他の 2 大学と比べ 少ないが過半数を占めている。ま. その他 7% 企業 28%. JST 17%. た、国有特許もしくは科学技術振 興事業団が権利に関わっているも. JAIST 10%. のが 41%と多いことが特徴的で. 国/企業 14%. ある。同大学院大学の共同研究セ. 個/企業 17%. ンターの調べによると、同大学で は 100%発明委員会が開かれてお り、そのことが国有特許数の割合. 図 2-7 [北陸先端科学技術大学院大学のシーズ]. の増加につながっているのではな いかと考えられる。また、この調査では、企業が出願に関わっているものが、 教官と企業が共同で発明したものなのか、教官個人で発明したものを教官が譲 渡したものかを特定するために、出願人と発明者についての調査を行った。具 体的には、企業のみ(複数企業も含む) 、企業と個人、企業と国、企業とその他 が出願人となっているもので、発明者の欄に企業の発明者25が含まれているもの、 県外の発明者が含まれているもの26、その他27に分類し集計を行った。調査結果 は次のようになった。. 25. 発明者の住所欄に「∼企業内」と表記のあるもの (注 24)のように表記のない企業の研究者も含まれるため、県外発明者についても調査 を行った 27 その他には教官が単独で発明したもの、同大学院の教官や学生が複数で発明したもの等 が含まれているものと考えられる。 26. 20.
(26) 表 2-3 [北陸先端科学技術大学院大学. 発明者と出願人の関係]. 企業の発明者. 県外発明者. その他. 企業. 21. 4. 17. 企業、個人. 10. 3. 9. 企業、国. 3. 0. 0. 企業、その他. 2. 6. 0. 合計. 36. 13. 26. 大学の研究者が発明者となっている特許の多くは、大学関係者以外の発明者含 まれている場合が多く、企業等が出願人として権利を保有しているものの半数 以上は、企業側の発明者も研究に参加しているということである。つまり、こ の調査事例においては、直接企業に流通している特許の半分が「技術シーズ型」 であり、残り半分は「企業ニーズ出発型」であるといえる。 また、この調査では、出願人となっている企業の規模28を調査した。同一出願 特許に複数企業ある場合はそれぞれを1とし、同一企業が複数出願している場 合もそれぞれを 1 とした。その結果が図 2-8 である。 結果としては 90%近い企業は大企業であっ た。同大学の共同研究の相手先29の大企業の割 合は 44%であるので、中小企業との共同研究 では特許は生まれにくい点及び、教官とコネ クションを持っているのは大企業が多い点が 指摘される。 また、出願企業 92 社の内、同一企業を排除 すると 36 社、また、最も多く出願している企 業で 11 件と同一の企業により多くの特許が出. 28. 図 2-8. [JAIST. 企業規模]. 中小企業白書の企業分類を使用した。 北陸先端科学技術大学院大学 HP 参照、平成 12,13 年度、共同研究(大企業 36 社、中小 企業 45 社)で. 29. 21.
(27) 願されている結果となっている30。. これらの3つの調査結果から、 ・ 多くの特許は、特許出願前に企業への流通が行われており、企業が単独で出 願している特許が最も多く、教官個人が出願する特許の割合は 10%未満しか ない。 ・ 大学の研究者が権利を保有する場合、企業と共同で出願する場合が多い ・ 企業と教官の共有特許について、出願手続きに関わる費用や維持費用は全額 企業側が負担している場合が多い ・ 教官側に特許管理事項に対しての関心が薄い ・ 企業が出願に関わっているものの半数は企業の共同発明者が存在する ・ 教官とコネクションを持っている企業は大企業が多い 点が示唆される。. 2-5-4. 従来型の特許流通. 従来言われてきたのは、日本の大学では企業が関係して行われた研究により 発明が生じた場合には、特許を受ける権利は企業に譲渡され、当該企業が特許 を出願し、発明を行った大学教員は発明者としての名誉を受けるだけで何ら権 利を保持しない事例が多く、この場合の企業と大学の関係は、企業と大学の包 括的な関係が成立していることが多く、大学教員から企業への特許を受ける権 利の譲渡は、ほとんどの場合無償で行われているといわれている。このような、 長期的な企業と教官の特許流通の関係を「お付き合い型」や「阿吽の呼吸をベ ース」とした特許流通と呼ばれている。このような「お付き合い型」の特許流 通は、外部から見て極めて不透明であり、企業に譲渡される特許の中には学内 発明委員会に届出がなされていないことも多く、手続き上の正当性を欠いてい るものもあり、大企業が多く、中小企業が産学連携事業に参入するのを妨げる. 特許出願件数 11 件(1 社)、7 件(3 社)、6 件(2 社)、5 件(1 社)、4 件(1 社)、3 件 (5 社)、2 件(2 社)、1 件(19 社)となっている。. 30. 22.
(28) 要因になっているとの問題点が指摘されている31。これらの問題点を検証してい くためには各個別の契約内容について見ていかなければならないので、困難で ある。承認 TLO のスキームにより特許出願又は技術移転の代行をすることで、 従来の「お付き合い的な特許流通」に代わる新しい透明な技術移転システムを 作ることも、大学等技術移転促進法の法律提案理由の1つでもあり副次的効果 として期待されていることでもある。また、このような「お付き合い型」のル ートで譲渡されたものについては十分な活用がなされていないと意見もある32。 前節で行った調査により、出願に関わる企業は大企業が多く、また、大企業ほ ど高い売り上げが期待できるものしか商品開発を行えないといえるので、防衛 のために保有しており、実施化されない可能性が高いためではないかと考えら れる。 しかし、一方でうまく活用されれば出願費用や弁理士費用の費用の面や出願 作業の面のみならず、実施可能性の面でも有効な特許流通の手段であるともい える33。 従来型の特許流通プロセスでは、大学等の研究者が、研究者ごとの独自のチ ャンネルを利用し、または、共同発明を行った企業に対し、出願前に「特許を 受ける権利」の譲渡をおこない特許出願を行っている。また、このような流通 プロセスでは正当な対価を確実に回収するためには、適切な契約が必要となる が、特に研究者側に特許管理事項の契約に対する意識が薄いために、資金の還 流が行われているか疑問が残る。また、大企業が中心であるため、特許出願後 に実施されているのかを教官が個人で管理しているかどうかについても疑問で ある。 このような現状の中で、国立大学の成果を扱う技術移転機関の実施許諾が進 まない理由は、 ・ 多様なプロセスの中のどれを選択するかは教官個人であり、有益な特許と見 られる「技術シーズ型」のものは大学教官の個人的な繋がりの強い企業へま ずコンタクトがとられ、その後で TLO 等の技術移転機関に譲渡されると考. 31 32 33. 新谷・菊本(2002) 清水、井出、苗村、馬場、田村、君島(2000)p144 今田(1998)http://cast.aist-nara.ac.jp/magazine/1998/tlo/. 23.
(29) えられる。 ・ 「企業ニーズ出発型」の特許は移転先が明確であるために、TLO に譲渡する 必要性がない。 ・ JST の有用特許制度と TLO の活動が重なっているため、その扱える特許は 半減している。 このように現在の国立大学の特許を扱う TLO では、実施許諾の可能性の低い 案件のみを扱っていることとなり、その扱える特許はわずかなものであるとい える。このことは、実施許諾が思うように進んでいない大きな理由の1つであ る。. 2-5-5. 共同研究の成果の問題点. ①発明委員会と共同出願 本研究のキーワードとして、共同研究による「企業ニーズ出発型」の技術移 転から発生した特許があげられる。現状の制度では、共同研究費等を用いた応 用開発目的とする特定の研究課題での研究成果は国に帰属するとされており (2-4-1 参照)、この判断も発明委員会によってなされることとなる。また、企業 との共同発明か、教官の独自の発明かの判断も発明委員会により審議がなされ る。 通常、企業と大学との共同研究においては応用開発目的である研究の場合が 多く、共同研究費を用いてなされた研究の成果としての発明は原則的には国と 企業との共有になるはずである。しかし、平成 13 年度では共同研究数が 5264 件もあるのにも係わらず、国と企業の共同出願は 88 件と、その多くは国ではな く、発明者に「特許を受ける権利」が帰属していると予想される。 これには、 「特許を受ける権利」が国に帰属した場合には、企業側にとって不 利益であることが多いため、国有特許とならないように、共同研究テーマの本 道で生まれた特許ではなく、派生で生まれた特許とすることや、応用研究では なく基礎的研究の成果であるということにすることなどにより、国に帰属する ことを回避している場合も少なくないという。基礎的研究課題、応用的研究課 題といった判断基準が明確となっていないために、共同研究においても国有と 24.
(30) はならずに教官に帰属する割合が増えているということであり、国有特許とな った場合の取り扱いの困難さが現れているといえる。. ②産学連携推進機関と権利の帰属 共同研究における権利帰属の一側面として、関連産学連携機関への資金の還 流が困難になることが挙げられる。共同研究は基本的には共同研究契約は大学 と企業との契約の元で成り立つ、産学連携の推進によって、共同研究の斡旋を リエゾン機関(TLO や共同研究センター等)が精力的に活動しており、また、 共同研究による事務手続き等も増加している。これらの産学連携機関への資金 を投入することにより、より効率的な産学連携が推進されることとなるが、研 究成果が教官個人に帰属した場合にこれらの機関へのインセンティブとなりづ らい。. ③特許法. 第 73 条:共有に係わる特許権. また、企業との共有となる特許の場合、特許流通にはそぐわない様々な法律 的な制約が課せられる。 特許法第 73 条(共有に関わる特許権)によると ・ 特許権が共有に係わるときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、 その持分を譲渡し、又はその持分を目的として質権を設定することができな い。 ・ 特許権が共有に係るときは、各共有者は、契約で別段の定をした場合を除き、 他の共有者の同意を得ないでその特許発明の実施をすることができる。 ・ 特許権が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、 その特許権について専用実施権を設定し、又は他人に通常実施権を許諾する ことができない。 特許法第 73 条 2 項より、契約で特別に定めない限り他の共有者の同意を必要 とせずに特許発明を実施することが出来る。共有の特許はメーカーが各自で自 己実施し、独自に収益を上げるのが通常であるが、大学や製造販売を行わず研 究開発型の企業は自己実施をしないため、他者に譲渡するか、もしくはライセ ンスし実施料収入を得るかしかないのだが、特許法第 73 条第 1 項より共有者の 25.
(31) 同意を得る必要があり、このために共有者がライセンスに同意しない場合は自 己実施を行わない企業は収益を上げることが困難となる。そのために契約交渉 を行い、実施料率等を定めた実施契約をし、共同で発明した企業等によりライ センス収入を得るということが契約上の通例となっている。これは不実施の補 償金とよばれ、ライセンス収入の 1 つとなっている。 しかし、この不実施の補償金は、共有者である企業がその特許を実施しない 場合、つまり防衛特許として保有している場合等、実施化がなされない場合に は実施料収入を得ることはできないという問題点を含んでいる。また、企業に とっても他企業とクロスライセンス契約を結ぶ場合等に第三者へライセンスす るとき等の場合に TLO に承諾を得なくてはならない点など不利益な場合も多い。 さらに、この特許法 73 条第 1 項企業は、企業と共同で発明した場合に、特許 を受ける権利を大学等の発明者が TLO に譲渡したいと考える場合においても適 用されるために、契約の段階で TLO と企業との交渉が必要となる。 共有特許に関するこのような問題に対して、「産業競争力と知的財産を考え る研究会」34や「今後の産学連携の在り方に関する調査研究協力者会議」で検討 がなされており、委員から、現行規定を改正することなく、契約において、正 当な理由がない場合には実施許諾等に同意し、その代償として実施料等の一部 を他の共有者に支払う旨規定する共同研究契約の雛形が紹介された。また、現 行規定の改廃に関しては、特許流通を促進する観点から、特許法第 73 条の規定 を削除し、原則共有特許の実施許諾等を自由とした上で、これを制限する場合 には契約で対応するべきであるという意見があった。これに対して、現行規定 を削除し、共有特許の実施許諾等を自由とする場合、企業側は大学との共同研 究を敬遠する懸念があるため、かえって産学連携を阻害することになるとの意 見も強かった。この特許法第 73 条は日本特許法固有のものであり、法改正も視 野に入れた検討が進んでいる。 このような流れを受け、平成 14 年 3 月に文部科学省通達による「共同研究契 約書・受託研究契約書(様式参考例)」を通知している本契約書では ・ 優先的実施と第三者に対する実施の許諾. 34. 産業競争力と知的財産を考える研究会(2001・10). 26.
(32) (契約により指定した期間(通常 10 年以内、更新あり)、自己実施せず、第 三者にも移転しない。しかし、一定期間を過ぎても正当な理由なく実施し ないときは第三者へ実施許諾できる) ・ 持分の譲渡 (共同研究の企業又は企業との協議の上指定した者に限り譲渡または専用実 施が可能) ・ 実施料 (不実施の補償金を大学に払わなければならない) 等を契約書に盛り込む契約書の参考例を示している。この契約書は共同研究の 前段階で結ばれる契約である。しかし、あくまで参考例で、企業等のニーズに 応じた契約が出来るよう企業との協議の行うことが必要との旨がこの参考例に 加えられている。単独出願の特許の実施許諾とは異なり、マーケティングの必 要は少ないが、共同出願には特有の問題点が生じることとなる。単独出願の場 合は出願後で企業との交渉となるが、共有の特許の場合には研究開発の前段階 での企業との交渉が必要となる点で、共有特許を組織的に管理する場合には大 学の内部にこのような交渉を行う機関が必要であり、大学と TLO 等の密接な関 わりが必要であることが示唆される。. 2-7. 国立大学の行政法人化. 特許の権利の帰属と出願状況について見てきた。現状の国立大学の特許帰属 には多くの選択肢があり、特に個人帰属となった場合に、どのプロセスで権利 化を行うかの選択は、原則個人帰属の現状では発明者である教官に委ねられて いる。これが現状の TLO にとっての問題点の1つであった。 しかし、2004 年度より、国立大学は法人化され、教官等は非公務員型になり、 その特許を受ける権利の帰属は原則大学等の機関に帰属する35。これにより、大 学等により特許の組織的な管理・運営が可能となる。また、特許を受ける権利. 35. 知的財産ワーキング・グループ報告書より. 27.
(33) の帰属において、各大学が発明規則等を改正し、大学で定めた知的財産ポリシ ーを明らかにするとともに、大学が権利を承継する発明の範囲を変更すること が可能となる。法人化された場合は、大学等が権利を保有できる。つまり、大 学名で出願ができるということである。しかし、大学においてなされた発明す べてにおいて、特許出願を行うことは難しく、出願すべき発明の選別が今後の 国立大学にとって大きな問題となる。. 2-8 従来型の特許流通と法人化後の課題. 図 2-9. [2 章のまとめ]36. 本章では、効率的な技術移転を行うためには複合型技術移転システムが重要 となり、現状の産学連携においては、 「企業ニーズ出発型」の技術移転が効果的. 36上記図は、様々な統計データより、参考にしたものであり、必ずしも実際の数字と同一と. は限らない。また、TLO に渡る特許を受ける権利の移転数は、全承認 TLO(調査時では 27 社)が 13 年度に出願したものを合計し、私立大学の保有するものを差し引いたものであ るので、広域型(後述 3-7 参照)の TLO に含まれる私立大学の値は差し引いてないことに 注意が必要である。. 28.
(34) であるという先行研究を踏まえて、現状の特許流通システムにおける、 「技術シ ーズ型」の特許と「企業ニーズ出発型」の特許についてその現状を見てきた。 上記図 2-9 は平成 13 年度の国立大学の発明の流れを示したものである。これを 見る限り、国や TLO 等により組織的に管理される割合も大きな物となってきて いる。従来型の特許流通においては、「技術シーズ型」と「企業ニーズ出発型」 の同程度の割合であると予測される。また、 「企業ニーズ型」の特許流通と教官 等のコネクションで流通可能な特許の 2 つのプロセスは、実施先が明確で、企 業側のサポートの元で出願されており、組織的な関与が行われずに流通してい ると予想される。しかし、その不透明さや、正当な対価の問題、そして実施許 諾した後の実施化への監視などは、教官個人の責任においてなされているため、 実施許諾の後までサポートする機関が必要であると考えられる。また、このよ うな現状においては、TLO のスキームで出願されるものは「残り物」である可 能性が高く、TLO が期待されるほどの成果を挙げることは難しい。 「企業ニーズ出発型」の特許が半数近く出願されており、その移転先は自明 である。一方で、技術シーズ型の特許は、出願後の移転であり、マーケティン グが必要となり、その実施率は現状の TLO を見ている限りでは高くない。この ことより、現状で効果的な特許流通システムは、企業との共同出願をとること である。つまり、共同研究等を組織することにより、発生した特許を組織的に 管理する方策が、米国ほど、特許マーケットが発達していない日本では有効で はないかと考える。また、TLO にとっても、企業と共同で出願することにより、 出願にかかる手数料、弁理士費用などのコストや、出願手続き等の業務も企業 側でなされるので、様々な制度上の問題もあるが、技術移転機関にとって「共 有特許」を扱うことのメリットは大きいと考えられる。 平成 15 年度より、国立大学は法人化され、原則個人帰属から、原則機関帰属 へとその制度を変革が行われようとしている。法人化されることにより国立大 学の権利の帰属等の学内の規定は、各大学のポリシーにより設定することがで きるようになり、柔軟な企業との対応が可能となる。 国立大学法人で総ての特許出願を行うのは予算上難しい。そこで、どのよう な特許を組織的に管理し、大学が出願しなければならないか、また、どのよう な特許は教官に帰属させればいいのか、といった「特許出願の選択」が大学ご 29.
(35) とに設定できるようになるのである。その際に、企業との共有特許をいかに扱 うが重要となり、この意味で、本格的な特許流通は法人化後に始まるといえる。. 30.
(36) 第3章. 承認 TLO による特許の組織的 管理の現状とその特徴. 3-1. 調査対象・調査方法. 現状の産学連携における特許流通システムにおいて、発明者の個人帰属とな った場合に組織的な管理を行っているのは TLO である。TLO の保有している 特許について調査することにより、組織的な管理の状況を知ることを目的とし ている。. 調査対象:2002 年 11 月末日までに承認を得ている 27 機関の承認 TLO 調査内容:2002 年 11 月末日までに公開されている特許の中で、承認 TLO によ り出願されたものを抽出し、その特徴を調査する 調査手法:特許庁の特許電子図書館(IPDL)の公開特許公報で、承認 TLO の 名前37でキーワード検索を行う. 3-2. 承認 TLO 毎の共有特許率. 公開特許公報により公開されるのは出願後、一年半経過した特許であるため、 調査実施日である 2002 年 11 月の半年前、つまり 2001 年 5 月までに出願され たもの(例外あり)であるので、設立間もない承認 TLO は出願件数が少ない結 果となっている。各承認 TLO の特許公開広報件数は及び共有特許数は以下の通 りである。. 私立大学内の TLO においてはその大学名、財団法人の内部の TLO の場合はその財団法 人名で検索を行った。 37. 31.
図
+2
関連したドキュメント
る、関与していることに伴う、または関与することとなる重大なリスクがある、と合理的に 判断される者を特定したリストを指します 51 。Entity
The category “Food with Health Claim” contains “Food with Nutrient Function Claim” and “Food for Specified Health Use (FOSHU)”. The definition of “Food with Nutrient
通常は、中型免許(中型免許( 8t 限定)を除く)、大型免許及び第 二種免許の適性はないとの見解を有しているので、これに該当す
したがって,一般的に請求項に係る発明の進歩性を 論じる際には,
国際仲裁に類似する制度を取り入れている点に特徴があるといえる(例えば、 SICC
有利な公判と正式起訴状通りの有罪評決率の低さという一見して矛盾する特徴はどのように関連するのだろうか︒公
(1)
様々な国の子供の死亡原因とそれに対する介入・サービスの効果を分析すると、ミレニ アム開発目標 4