5-1 理論的含意
従来、産学連携の技術移転といえば、リニアモデル的な特許の流通を意味す ることが多かった。また、一方で共同研究等の研究協力の制度も効果的な技術 移転の方策であるという認識の元で、様々な施策が行われてきた。しかし、そ の横断的なミッションである共同研究からの研究成果である特許の流通に関し ては、それ程、活発に議論がなされていないという現状があった。それは、企 業と大学の研究者が共同研究の成果に関する議論の中心は、その権利の帰属に あり、制度的な確立が優先課題として議論されていたからである。しかし、大 学法人化後の権利の帰属に関して、原則機関帰属、非公務員とガイドラインが 発表され、大学の側に自主的で柔軟性のある対応が求められることとなった。
そのような背景の下で、大学側に求められるのは、研究成果の特許出願の選 別である。この意味で、今後は企業と大学との共有特許の流通に関する議論に 移ると考えられ、本研究はその点について考察を加えていることに意義がある と考える。
従来型の移転は、特許出願前に大学の研究者のコネクションにより流通して り、また、共同研究の特許も特許出願前に共同研究企業に流通している。出願 後に TLO 等の技術移転機関を用いた特許流通の2つの形態があるが、現状では、
まだ、前者の流通形態が主流であるといえる。現状の特許流通では、「企業ニー ズ出発型」の特許が半数近く出願されており、その移転先は自明である。一方 で、技術シーズ型の特許は、出願後の移転であり、マーケティングが必要とな る。また、その実施率は現状の TLO を見ている限りでは高くない。このことよ り、現状で効果的な特許流通システムは、「企業と共同出願」をうまく活用する ことである。つまり、共同研究等を組織することにより発生した特許を組織的 に管理する、または、「技術シーズ型」の特許でも、共同出願先を探す方策が、
米国ほど、特許マーケットが発達していない日本では有効ではないかと考える。
一方で、現状の特許流通を見る限り、特に「企業ニーズ出発型」の管理がすす
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んでいない状況がある。その多くは法人化により解消されることが予想される が、山口 TLO の事例に見られるように、企業との長期的な交渉が必要となる。
効果的な特許流通システムは、画一的な制度ではなく、今までの「お付き合い 型」の特許流通も損ねないように、産学双方に有効な慣行が、このような交渉 の中で柔軟に定着していくことが必要である。
5-2 実務的含意
今後、TLOを持っていない大学法人が効率的に特許流通を行うためには、下 記の3点が重要である。
①共同研究の成果である「企業ニーズ型」の特許は大学法人が組織的に管理 する。
②「技術シーズ型」であっても教官等とのコネクションにより、出願前に移 転できるものがあれば、大学という組織が対応し、移転させる。その場合に は企業への譲渡、共同出願が考えられるが、山口TLOのように共同出願によ る方式を用いて、第三者への移転可能性を留保しておくことが効果的である。
③特許マーケティングに力のないと思われる大学法人は、JSTや既存のTLO のスキームを使い、出願の前段階で譲渡し、特許出願に関わるコストを削減 する。
米国ほど確立していない日本の現状の特許流通システムについて、特に特許流 通市場が軌道に乗るまでの間は、以上の方法が効果的な特許流通の方策と考え られる。
5-2 今後の研究への示唆
大学教官のコネクションや、共有特許の組織的管理が行われた場合、従来型 の特許流通の低下、共同研究数に悪影響を及ぼすことも考えられる。これらの 影響を定量的に評価していかなければならない。また、大学側がどこまでのの 権利を保有し、または、企業側に譲渡した方がよいのかという点を、大学の研 究成果の実施化という観点から定量的に調査しなくてはならないと考える。
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謝辞
本研究におこなうにあたり、多くの方々よりご支援賜りましたことを深く感 謝を申し上げたいと思います。
特に、本研究において指導教官である亀岡先生には、研究に対する姿勢から、
考え方、コンセプトメイキングの大切さなど、様々なもの教わりました。本当 に至らない生徒ではありましたが、深く感謝いたします。
また、複指導教官の永田先生、審査をしてくださった、梅本先生、遠山先生 本当にありがとうございました。
お忙しい中、インタビュー調査を受けていただいき、様々なお話を聞かせて くださった、山口TLOの三木先生のお力添えなしには、完成することは不可能 でした。また、山口大学経済学部の坂手先生と中田先生には、わざわざお時間 を割いていただき誠にありがとうございました。
最後に、この石川の地で、2年間という短い間でしたが、楽しく研究に打ち込 めたのは、亀岡研究室の皆さんのみならず、多くの友人のおかげです。また、、
お金の面のみならず、様々な面でサポートしてくれた両親や、兄に深く感謝し たいと思います。
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参考文献一覧
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