3-1 調査対象・調査方法
現状の産学連携における特許流通システムにおいて、発明者の個人帰属とな った場合に組織的な管理を行っているのは TLO である。TLO の保有している 特許について調査することにより、組織的な管理の状況を知ることを目的とし ている。
調査対象:2002年11月末日までに承認を得ている27機関の承認TLO
調査内容:2002年11月末日までに公開されている特許の中で、承認TLOによ り出願されたものを抽出し、その特徴を調査する
調査手法:特許庁の特許電子図書館(IPDL)の公開特許公報で、承認 TLO の 名前37でキーワード検索を行う
3-2 承認 TLO 毎の共有特許率
公開特許公報により公開されるのは出願後、一年半経過した特許であるため、
調査実施日である2002年 11月の半年前、つまり2001 年5月までに出願され たもの(例外あり)であるので、設立間もない承認TLOは出願件数が少ない結 果となっている。各承認TLOの特許公開広報件数は及び共有特許数は以下の通 りである。
37 私立大学内のTLOにおいてはその大学名、財団法人の内部のTLOの場合はその財団法 人名で検索を行った。
31
表3-1 [各承認TLOの共有特許率]
承認TLO名 承認年月日 公開特許公報件 内共有特許件数 共有特許率
㈱先端科学技術インキュベーション 1998/12/4 41 1 2.4 関西ティー・エル・オー㈱ 1998/12/4 127 9 7.1
㈱東北テクノアーチ 1998/12/4 48 4 8.3 日本大学国際産業技術・ビジネス育成 1998/12/4 106 22 20.8
㈱筑波リエゾン研究所 1999/4/16 14 1 7.1 早稲田大学知的財産センター 1999/4/16 119 66 55.5
(財)理工学振興会 1999/8/26 120 20 16.7 慶應義塾大学知的資産センター 1999/8/26 110 21 19.1
(有)山口ティー・エル・オー 1999/12/9 41 8 19.5 北海道ティー・エル・オー㈱ 1999/12/24 24 5 20.8
(財)新産業創造研究機構 2000/4/19 56 24 42.9
(財)名古屋産業科学研究所 2000/4/19 45 17 37.8
㈱産学連携機構九州 2000/4/19 34 2 5.9 東京電機大学産官学交流センター 2000/6/14 14 1 7.1
㈱山梨ティー・エル・オー 2000/9/21 0 0 −
タマティーエルオー㈱ 2000/12/4 7 0 0 明治大学知的資産センター 2001/4/25 6 0 0 よこはまティー・エル・オー㈱ 2001/4/25 0 0 −
㈱テクノネットワーク四国 2001/4/25 4 0 0
(財)生産技術研究奨励会 2001/8/30 10 2 20
(財)大阪産業振興機構 2001/8/30 0 0 −
(財)くまもとテクノ産業財団 2001/8/30 1 0 0 農工大ティー・エル・オー㈱ 2001/12/10 0 0 −
㈱新潟ティー・エル・オー 2001/12/25 0 0 −
(財)浜松科学技術研究振興会 2002/1/17 2 0 0
(財)北九州産業学術推進機構 2002/4/1 20 4 20 三重ティー・エル・オー 2002/4/16 0 0 −
合計 949 207 21.5
32
3-3 出願形態
出願人の形態としては、TLOの単独出願が72.8%最も多く、企業との共有特 許は 21.8%となっている。共有特許の中では一企業との共同出願の割合が高い のが特徴的である。
前章で見たように、大学の研究者が発明者に含まれている割合は、半数近く あることが予想されるので、共同出願の特許が承認TLOにより出願される割合 が実際よりも少ないことが予想される。
なお、これから先のデータはTLOの単独出願と、他者に企業を含むもののみ を扱うこととし、財団法人等を含むものや、他者が個人の場合の特許は扱わな いこととする。
図3-1 [承認TLOの特許出願形態]
33
3-4 出願日の動向
上記調査で取得した公開特許情報の内、単独出願と企業との共同出願の動向 を探るために、単独出願と共同出願毎の出願日を調査した。その結果が次の(図
3-2)である。平成 11 年3月以前では単独出願と共同出願が逆転しているが、
主な理由は、そのほとんどが早稲田大学の保有する出願特許であり、企業との 共同出願であるものが大多数を占めていたからである。また、平成13年4月以 降の特許出願数が減少傾向のように見られるが、これは調査日と特許公開日の 関係上のものであり、引き続き増加傾向にある。
承認TLO数が増加するにつれて総出願数も増加しているが、共同出願の特 許の出願件数は単独出願の特許に比べ、一定の出願数を保っており、増加はし ていない。承認TLO数は増加していることを考えると、共同出願の特許がTLO により出願される割合は相対的に減少傾向にあるといえる。
0 20 40 60 80 100 120 140
それ以前H11/4〜
6 H11
/7〜
9
H11 /10
〜12 H12
/1〜
3 H12
/4〜
6 H12
/7〜
9
H12 /10
〜12 H13
/1〜
3 その後
0 5 10 15 20 25 30
単独 共有 承認TLO数 図3-2 [出願日の動向]
34
3-5 共有特許の第 3 者への移転可能状況
各承認TLOはマーケティング戦略と して、その HP 上に移転可能な特許を 公開している。その公開内容は様ざま である。承認TLOが出願した共同出願 の特許が、HP上で公開され、移転可能 であるかの調査を行った。
その結果は(図3-3)のように多くの 共有特許は公開されておらず、第三者 への移転を行っていない。
共同研究契約により、各企業により 優先的実施が行われていることが予想 され、第三者へのマーケティングが行 われる可能性は低いということである。
一方で13%の特許は第三者へのライ
センスが可能なものであり、積極的に公開し、他者へライセンスする企業も少 なからず存在することが明らかとなった。
非公開 87%
公開 13%
非公開 公開
図3-3 [第三者への移転可能状況]
3-6 IPC 分類による特許出願動向
3-6-1 IPC 分類一桁の動向
国際特許分類(IPC)により、承認TLOの出願分野について調査を行った。
特許の中には様々な分類に属しているものがあり、それぞれを 1 として集計を 行った。次のグラフは、国際特許分類の一桁の値の全体に占める割合を示した ものである。一桁の値に注目すると、C 分野(化学、冶金)の分野では違いが 見られるが他の分野で、出願の割合に大きな違いは見られない。
35
0 5 10 15 20 25 30 35 40
A(生活必需品) B(処理操作、運輸) C(化学、冶金) D(繊維、紙) E(固定構造物) F(機械工学、照明、加熱、 武器、爆破) G(物理学) H(電機)
単独 共有
図3-4 [IPC分類出願割合(一桁)]
C分野の3桁までの値をあらわしたものが(図3-5)である。特にC12(生 化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝 子工学)、C07(有機化学)C01(無機化学)、C08(有機高分子化合物;その製 造または科学的加工;それに基づく組成物)、C09(染料;ペイント;つや出し 剤;天然樹脂;接着剤;種々の組成物;材料の種々の応用)の分野において単 独出願と共同出願での乖離が大きい。
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
C01 C02 C03 C04 C05 C07 C08 C09 C10 C11 C12 C21 C22 C23 C25 C30
単独 共有
図 3-5 [C分野の出願状況]
36
3-6-2 IPC 分類の上位 30 分類
TLOの保有した特許のIPC分類の上位30分類を調査したものが表3-2である
表 3-2 [IPC分類上位30分類]
G01 214 測定(計数G06M);試験 A61 141 医学または獣医学;衛生学 G06 140 計算;計数
H01 130 基本的電気素子 C12 107
生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝 子工
H04 67 電気通信技術 C07 65 有機化学 G02 52 光学
G11 51 発声または聴覚機構の模擬に基づく技術⑦ B01 42 物理的または化学的方法または装置一般 A01 36 農業;林業;畜産;狩猟;捕獲;漁業
C08 33 有機高分子化合物;その製造または科学的加工;それに基づく組成物 H02 32 電力の発電,変換,配電
C01 29 無機化学 C23 29
金属質への被覆;金属材料による材料への被覆;表面への拡散,化学的変換 または置
C09 22
染料;ペイント;つや出し剤;天然樹脂;接着剤;種々の組成物;材料の種々の 応用
E04 22 建築物
F16 22 構造部材または機械部品同志の締め付けまたは固定のための装置 G09 21 教育;暗号方法;表示;広告;シール
B25 20 手工具;可搬形動力工具 H03 19 基本電子回路
B23 18 工作機械;他に分類されない金属加工 H05 18 他に分類されない電気技術
G05 15 制御;調整
C22 14 冶金;鉄または非鉄金属;合金の処理または非鉄金属の処理
G03 14 写真;映画;光波以外の波を使用する類似技術;電子写真;ホログラフイ G10 14 楽器;音響
A23 13 食品または食料品
B65 12 宇宙航行に関するもので他に該当分類のないもの G08 12 信号
上位30分類を表したもの
また、その出願数を表したものが次のグラフである。
37
0 20 40 60 80 100 120 140 160
A01 A23 A61 B01 B23 B25 B65 C01 C07 C08 C09 C12 C22 C23 E04 F16 G01 G02 G03 G05 G06 G08 G09 G10 G11 H01 H02 H03 H04 H05 単独出願 共同出願
図3-6 [IPC分類上位30分類]
先程のC分野以外では、企業と共同出願の特許が多い所ほどTLOの単独出願 の件数が増加している。このことから、C 分野以外では、大学の教官等が特許 出願しやすい分野であり、企業側がその技術シーズを求め共同研究をしている か、もしくは、教官が企業側との共同研究を行い、その後で教官が企業側のニ ーズを得て、単独で出願をしているかのどちらかが考えられる。
一方、C 分野においては、基礎的分野で共同研究等が実施しにくい分野であ る、もしくは大学の研究者の自由な発想で出願がなされている分野である。
このように、IPC 分類別により、単独出願と企業と共同出願に違いが見られ る。この調査結果から、C12、C01、C08の分野は、単独出願の特許流通が効果 的であると考えられる。
3‑7 承認 TLO の組織形態と共有特許
各TLOにより、企業との共有での出願形態には差異があった。この差異が発 生している要因として、研究者と共同研究センターそしてTLOが密接に係わっ
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ているTLO程その出願数が多いのではないかという過程のもと、組織形態ごと の分析を行った。現在、承認TLOは多様な形態をとっている。国立大学は現状 では法人格を持たないため、特許を受ける権利を保有することが出来ない。そ のために承認TLOは外部機関として存在することとなっている。外部組織とし てのTLOの場合、組織形態としては、株式会社、有限会社、財団法人の形をと っている。また、主として一大学の発明を扱うものと、その地域の大学をまと めて扱う広域型のTLOがある。また、私立大学の場合は学内 TLO部門を設置 できるために学内組織となっている場合がある。前述の調査の中から、調査対 象を、国内特許出願数が20件を超えている承認 TLOに絞り、組織形態ごとに 集計し直したものが次の表である。
各組織形態は次のように分類をした。
分類Ⅰ:国立大学/一体型TLO
国立大学の一大学を主として扱う承認TLOである。これに含まれる
承認TLOはCASTI、理工学振興会、山口TLO、産学連携機構九州
でありこれには株式会社、有限会社、財団法人等の様々な組織形態 が含まれる。
分類Ⅱ:広域型TLO
国立、私立に関係なく承認TLOがある特定地域の複数大学の特許を 扱う承認TLOである。これに含まれる承認TLOは関西TLO、東北 テクノアーチ、北海道TLOがある。
分類Ⅲ:財団法人/内部組織型TLO
既に存在している財団法人の、一部門として承認TLOが存在してい る場合である。これに含まれる承認 TLO は新産業創造研究機構
(TLOひょうご)、名古屋産業科学研究所(中部TLO)、北九州テク ノセンター(現在北九州産業学術推進機構に移行)がある。
分類Ⅳ:私立大学/学内組織型承認TLO
私立大学に学内TLOを含む場合である。早稲田大学、慶應義塾大学、
日本大学がこれにあたる。
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