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4-1  山口 TLO の概要

山口TLOは平成11 年12月9 日に承 認を受けた TLO で、地方国立大学とし ては始めて設立されたこと、有限会社方 式をとっていること、また、平成 12 年 12月には、北九州テクノセンター(現在 の北九州産業学術推進機構)と承認TLO では初めての、を広域連携をするなど、

いくつかの特徴を有する技術移転機関で ある。

また、山口大学は 2001 年度より、工 学部の学生に卒業論文のテーマを地場の 企業から募集することを行っており、県 内のメーカーから寄せられたテーマの内、

40 件を採用し、2002 年度は理学部の学 科においても採用されている。このよう に地域産業との産学連携を重視し、その ために様々な方策を実施してきており、

国立大学としては異質な大学であるとい えるのではないだろうか。

山口TLOは平成9年5月より大学の教

員等50人の出資により設立されている。同TLOの基本的位置づけとしては「知 的所有権尊重の新時代の中で大学の研究成果の社会還元の仕組みとして位置づ け将来の大学へ向けて大学の基本整備の1つとして小さく生み大きく育てたい」

というものであった。

図 4-1  [山口TLOのしごと]

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4-2 共同出願戦略と実施許諾率

4-2-1  山口 TLO の特徴

山口TLOの特徴として共有特許率が高い点と、実施許諾率が高い点があげられ る。 共有特許率は19.5%と全27承認TLO38中8番目、国立大学の一体型TLO の中では2番目と、その共有特許率共有特許率は高い。また、平成14年3月末、

現在における、実施許諾件数を国内特許出願数で割った、実施許諾率において も26%で全27承認TLO中3番目と実施許諾率においても高い水準である。

山口大学の高い共有特許率、実施許諾率の背景には、企業と共同で、教官の発 明を出願することを推奨している点があげられる。

本研究では、山口大学地域共同研究開発センター長であり、山口TLOの取締 役の一人である三木俊克氏へのインタビュー調査を通じて、国立大学及び、TLO が企業と共同出願をする際に、どのようなメリット、デメリットがあるか、問 題点はどこにあるのかについて調査を行った。

4-2-2  山口 TLO の「共同出願戦略」

注目すべき山口TLOのポリシーとして

①「共同出願戦略」

②エージェントを用いた共同研究案件、発明の掘り起こし があげられる。

①「共同出願戦略」

山口TLOは平成12年2月から出願前に共同研究になっているもの、そうで ないものも出願前に共同出願に承諾可能な相手企業を探す「共同出願戦略」を とる。この戦略は、「企業との共同出願にすることで特許出願料や弁理士費用等

38 200211月末日現在、第3章、表3-1[各承認TLOの共有特許率]p31を参照のこと

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表 4-1 [各承認TLOの実施許諾率]

承認TLO 国内特許出願数 実施許諾件数 実施許諾率

㈱先端科学技術インキュベーショ 298 45 15%

関西ティー・エル・オー㈱ 206 33 16%

㈱東北テクノアーチ 82 58 71%

日本大学国際産業技術・ビジネス育 229 29 13%

㈱筑波リエゾン研究所 25 4 16%

早稲田大学知的財産センター 124 20 16%

(財)理工学振興会 212 34 16%

慶應義塾大学知的資産センター 232 34 15%

(有)山口ティー・エル・オー 78 20 26%

北海道ティー・エル・オー㈱ 60 11 18%

(財)新産業創造研究機構 62 14 23%

(財)名古屋産業科学研究所 76 11 14%

㈱産学連携機構九州 86 7 8%

東京電機大学産官学交流センター 29 2 7%

㈱山梨ティー・エル・オー 11 2 18%

タマティーエルオー㈱ 48 5 10%

明治大学知的資産センター 28 3 11%

よこはまティー・エル・オー㈱ 23 0 0%

㈱テクノネットワーク四国 24 3 13%

(財)生産技術研究奨励会 35 10 29%

(財)大阪産業振興機構 29 1 3%

(財)くまもとテクノ産業財団 8 0 0%

農工大ティー・エル・オー㈱ 1 4 25%

㈱新潟ティー・エル・オー 0 0 0%

(財)浜松科学技術研究振興会 0 0 0%

(財)北九州産業学術推進機構 37 6 16%

合計 2043 356

  経済産業省のHPより作成

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の諸経費は企業側に負担してもらいとし、代わりに一時金や実施料収入等の中 からその負担分を差し引く形で出願をする」である。また、権利を総て譲渡し てしまうのではなく、留保しておくことで、第三者への移転可能性を残し、大 学の研究成果を、「社会貢献として」実施化するために保険をかけておくことが 重要となる。

企業との共同出願であるために、TLOにとっては出願費用等のコストを削減 できる。また、TLOの単独出願をライセンスする形に比べ、相手方企業の戦略 に見合った出願が可能な点が特徴である。三木氏の言葉を借りると「既製品で はなく顧客にカスタマイズした特許出願」といえる。この戦略では、オーダー メイド的な要素が含まれるとともに、出願する特許を活用するためのノウハウ を込みで技術移転できることも特徴である。

②エージェントを用いた共同研究案件、発明の掘り起こし

平成14年秋からは外部エージェントを用いた共同研究案件、発明の掘り起 こしを行っている。マーケティングを優先させる国立大学のTLOとしてCASTI が知られているが、CASTI では外部エージェント(リクルート TMD)をもち いてマーケティング機能を強化している。一方で、山口TLOではマーケティン グにエージェントを用いるのではなく、大学内の新規案件の発掘に力を入れて いる。

このように山口TLOでは、エージェントを用いて新規案件を発掘し、共同研 究の斡旋を計り、その成果を企業と共同出願することで、技術移転、特許流通 を促進している。大学内部の共同研究案件の掘り起こしから共有特許出願まで 一貫した技術移転ポリシーを持ち技術移転に取り組む山口TLOであるが、この ようなポリシーを設定した背景には

・ 中規模総合大学である点

・ 巨大マーケットから遠い点

・ 財政基盤の脆弱さ

・ ビジネスプロデューサーの存在

といった、大きく分けて4つの要因がある。山口TLOが「共同出願戦略」をと

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り始めた背景には、法人化後の大学にとっても課題となるであろう点が、多く 含まれている。次節では、4つの要因について考察を加える。

4-3  山口 TLO のポリシー設定の背景

4-3-1  中規模総合大学である点

山口大学は、社会科学系、自然科学系の両方を持ち合わせる中規模総合大学 である。特許流通に主に関わる自然科学系では、理学部、農学部、工学部、医 学部が存在しており、一大学でTLOを持つメリットを有しているといえる。一 大学でTLOを持っていることで、大学、共同研究センターの一体化が容易な点 が共有特許を取得するのに有利な点であった。インタビューを行った三木俊克 氏は、山口TLOの取締役の一人であり、地域共同研究開発センターのセンター 長でもある。これを見ても明らかな通り、大学・TLO・地域共同研究開発セン ターが統一的なポリシーを設定することができ、TLOとして、また、大学の顔 として共同出願交渉ができる点において「共同出願戦略」可能となっているの である。

 

4-3-2  巨大マーケットから地理的に離れている点

 首都圏等のような巨大マーケットから離れていることが、山口TLOの特許マ ーケティングを困難なものとしている。地域産業の活性化に力を入れている山 口TLOであるが、一方で技術移転実績の半数は県外企業との実施許諾契約であ る。地域の企業のみにライセンスするだけでは、その実施許諾率はあがらない。

このような背景の下に、地域企業との連携を強める「共同出願戦略」を取って いる。特許マーケティングにおいても、マーケットから地理的に離れている点 はTLOにとって不利となる。巨大マーケットから地理的に遠い点、これが「共 同出願戦略」を立てる背景につながっている。

4-3-3 財政基盤の脆弱さ

 現在105件の特許出願、29件の技術移転をおこなっており、実施許諾率が他 のTLOと比べ比較的高い山口TLOであるが、山口TLOの財政基盤も、多くの 承認TLOと同様に財政基盤は脆弱である。メインのしごとである昨年度のロイ

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ヤリティ収入は 770 万円で、このロイヤリティ収入のみでは成り立たず、政府 の補助金や、副業等により今年度からは黒字に転換している。

副業として山口TLOが行っている事業は、委託事業・シンクタンク機能・管 理法人業務等などである。財政的基盤が弱いと出願できる特許数が限られてし まう。その反面でヒットやホームランといった多額の収入が見込める、特許の 確率は低く、多数の特許出願を行わなくてはならない。そういった財政的基盤 の弱さが企業との共同出願を推進する背景にある。共同出願をすることで、企 業側にサポートしてもらい、より多くの出願が出来るように資金を捻出する。

有限会社形態をとっており、営利企業であるために収益上げなくてはならない。

そのために、山口TLOでは、一般企業よりも徹底したコスト意識を持ち活動し ている。

4-3-4  ビジネスプロデューサーの存在

人材面として、技術畑から企業経営に参加し、子会社の経営赤字を実際に立 て直したという実践的な人材の存在が大きな影響を与えているとい。このよう な特許・ビジネス・技術がわかる人材を三木氏は「ビジネスプロデューサー」

と呼んでいるが、このような人材を確保することができた。山口TLOでは、人 材はその人の経歴で選び、企業の中にいた人材の知恵を用いる。有能な人材を TLOやその周辺に巻き込んでいくことが重要となる。

これらの4つの背景から、山口TLOでは共同出願を推奨するに至った。この 背景の中には、山口TLOにとって有利な点及び不利な点が含まれている。承認 TLOや、法人化後の大学では同様の境遇にあるところも少なくない。このよう な出願戦略を取る場合の問題点を聞くことでそのような大学に、何らかの知見 が得られると考える。

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