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リコンビナントトロンボモジュリン製剤投与が著効した 左大腿血管腫による成人発症Kasabach-Merritt症候群

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Academic year: 2021

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リコンビナントトロンボモジュリン製剤投与が著効した

左大腿血管腫による成人発症 Kasabach-

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小川 孔幸�

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柳澤 邦雄�

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内海 英貴�

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石埼 卓馬�

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三井 健揮�

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滝沢 牧子�

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小磯 博美�

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横濱 章彦�

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斉藤 貴之�

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半田 寛�

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塚本 憲史�

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村上 博和�

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野島 美久�

1 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学大学院医学系研究科生体統御内科学 2 群馬県前橋市昭和町3-39-15 群馬大学医学部附属病院腫瘍センター 3 群馬県前橋市昭和町3-39-15 群馬大学医学部附属病院輸血部 4 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学大学院保健学研究科生体情報検査科学 要 旨 症例は 77歳,女性.当科受診の 45年前から左大腿腫瘤を自覚し,23年前に血管腫の診断で 30 Gyの放射線治療を施行さ れている.今回,体幹と四肢に広範な皮下出血斑を認め当科入院となった.検査データで Hb 5.7 g/dlと高度の貧血と著明な 凝固系検査異常 (Fib 25 mg/dl,PT 10%,APTT 67.9秒,FDP 181.1μg/ml,TAT 326.8 ng/ml,PIC 11.0μg/ml),腎機能障害 (Cr 3.82 mg/dl)を認めた.左大腿血管腫による Kasabach-Merritt症候群 (KMS),線溶亢進型の播種性血管内凝固 (DIC)と 診断し,リコンビナントトロンボモジュリン (rTM)とトラネキサム酸の投与及び新鮮凍結血漿 (FFP)補充療法を施行した. 治療開始後,凝固障害は速やかに改善し,出血症状も消失した.その後,左大腿血管腫に 30 Gyの放射線照射を施行し,以後 トラネキサム酸内服のみで経過を見ているが,1年以上に渡り凝固障害の再燃なく,良好な経過を辿っている.線溶亢進型 DICの急性期治療として rTMが安全かつ有用であったので報告する. 緒言 Kasabach-Merritt症候群 (KMS)は,巨大血管腫に血小板 減少を伴った疾患として 1940年に Kasabachと Merrittに よって報告され,�今日では血管腫内の異常血管腔に血小板 が捕捉,破壊されて起こる播種性血管内凝固 (disseminated intravascular coagulation;DIC)様の消費性凝固障害と考 えられている.コントロール不能な出血を生じることがあ り,その死亡率は 10-30%と報告されている.好発年齢は主 に新生児期であり,成人発症例は非常に稀である.成人例 の大半は肝血管腫に伴うものであり,本症例のように長期 間にわたり存在していた大腿血管腫が原因となり KMSを 発症した報告はない.また,本症例はリコンビナントトロ ンボモジュリン (rTM)投与により DIC様凝固障害が劇的 に改善した症例であり,若干の文献的考察を加えてその詳 細を報告する. 症例報告 症 例:77歳,女性 主 訴:四肢紫斑 家族歴:特記事項なし 既往歴:45歳~46歳 :気管支喘息,54歳 :左大腿部血管腫 文献情報 キーワード: リコンビナントトロンボモジュリン製剤, DIC, Kasabach-Merritt症候群, 血管腫 投稿履歴: 受付 平成27年3月10日 修正 平成27年5月20日 採択 平成27年6月4日 論文別刷請求先: 小川孔幸 〒371-8511 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学大学院医学系研究科生体統御内科学 電話:027-220-8166 E-mail:yo-ogawa@gunma-u.ac.jp

症例報告

(2)

(照射),74歳 :左大腿部骨折,74歳 :左乳癌 (浸潤性小葉癌 ; 当院外科で手術) 現病歴:X-45年から左大腿腫瘤を自覚.X-23年に左大腿 骨血管腫の診断で同部位に 30 Gyの放射線治療を施行さ れた.X-3年に左大腿血管腫に伴う左大腿遠位の病的骨折 と急性腎不全のため当院整形外科に入院し,急性腎不全の ため一時血液透析を受けた.骨折は血管腫からの出血のリ スクが高く保存的加療となった.X-1年前から高血圧性腎 硬化症で通院加療.X年 9月上旬より四肢出血斑が出現し たため,前医受診.高度貧血と著明な凝固系検査値異常を 認めたため,精査加療目的に当科紹介入院となった. 入院時現症:身長 150 cm,体重 62 kg,体温 36.4℃,血圧 155/98 mmHg,脈拍 82/分・整.顔面蒼白で眼瞼結膜は高度 貧血を認めた.胸部は肺雑音を聴取せず,心尖部を最強点 とする全収縮期雑音を聴取した.腹部は平坦,軟で圧痛な く,肝臓・脾臓を触知せず.四肢は左膝窩に 15cm大の拍動 性の硬い腫瘤を認めた.両側前腕から手背や右下肢等に多 数の皮下出血斑・紫斑を認めた (図 1). 入院時検査所見:血液検査では高度の貧血と血小板減少, 腎機能障害を認め,プロトロンビン時間 (PT)・活性化プロ トロンビン時間 (APTT)の延長,フィブリノゲンの低下を 認め,FDP・TATおよび PICも著増していた (表 1). 臨床経過 :左膝窩から大腿に腫瘤を触知し,既知の血管腫 と考えられたため,下肢 MRI検査を行ったところ,左大腿 の筋内,筋層間に T2WIで高信号と低信号の混在した腫瘤 を認め,皮下静脈の拡張と蛇行も認めた (図 2).入院時に認 めた出血症状と,凝固学検査結果より DIC score 11点と線 溶亢進型 DICを呈していた. 原因検索のため骨シンチ・ PET・全身 CT施行したが明らかな感染巣を認めず,乳癌の 再発所見もなく,感染症・悪性腫瘍による DICは否定的で あった.そのため,左大腿血管腫による KMSと診断した. 出血リスクを勘案し,抗 DIC療法として線溶抑制作用も有 する rTM 130 IU/kg(腎機能障害のため減量)と抗線溶剤 (トラネキサム酸 750 mg/日)投与及び新鮮凍結血漿 (FFP) の補充療法を行った.7日間の rTM投与が奏功し,治療開 始後 2日で DIC score 3点,7日で 2点と凝固障害は速やか に改善し,出血症状も消失した (図 3).原疾患である左大腿 血管腫の治療として外科的切除は困難かつ本人の拒否が あったため,放射線照射 (2 Gy/回)を開始した.退院時に は凝固検査は Fib 271 mg/dl,PT 94%,APTT 29.2 sec, FDP 8.6μg/ml,TAT 10.1 ng/ml,PIC 2.7μg/mlと改善し ていた.その後,外来で計 30 Gyの放射線照射を行い,以降 トラネキサム酸の内服のみで経過観察しているが,1年以 上に渡り凝固異常の再燃なく良好な経過を辿っている. rTMが著効した成人発症 Kasabach-Merritt症候群 図1 入院時身体所見 両側前腕に多発の皮下出血斑あり,左膝窩腫瘤あり. 表1 入院時検査所見

Complete Blood Count Coagulation Biochemistry

WBC 5,600/�l APTT 67.9 sec TP 6.3 g/dl RBC 191×10�/�l PT not be measured Alb 3.4 g/dl Hb 5.7 g/dl Fib 25 mg/dl T-bil 0.6 mg/dl Ht 18.30% FDP 181.1�g/ml AST 12 IU/L Plt 9.9×10�/�l D-dimer 72.0�g/ml ALT 6 IU/L AT 86.70% LDH 432 IU/L α2-PI 32.00% ALP 159 IU/L Plasminogen 64.70% BUN 44 mg/dl TAT 326.8 ng/ml Cr 3.82 mg/dl PIC 12.8�g/m Na 141 mEq/L K 5.1 mEq/L Cl 111 mEq/L CRP 0.83 mg/dl

(3)

考察 KMSは血管腫内における内皮下組織や異常内皮細胞へ の血小板の暴露・接着と血管腫内での血流の乱れが血小板 を活性化し,血小板・凝固因子の消耗とそれに伴う二次線 溶亢進を生じ,腫瘍内で出血・塞栓が繰り返される凝固機 能障害ととらえることができる.進行すると全身の出血傾 向を呈するようになると考えられている.出生直後または 新生児期の発症が多く,血管腫を有する小児の 0.3%に合 併するといわれる稀な疾患である.�KMSは,一般的な cap-illary hemangiomaや cavernous hemangiomaよ り も Kaposiform hemangioendotheriomaや tufted angiomaなど の特殊なタイプの血管腫に多いことが報告されているが,� 実際には組織学的診断が確定する症例は少ないと考えられ ている. KMSの根治には,①消費性凝固障害に対する治療 (出血 のコントロール)と②血管腫に対する治療が必要である. 消費性凝固障害に対する治療としては,血小板減少・低 フィブリノゲン血症による出血傾向に対し FFPや濃厚血 小板の輸血療法などが行われている.また,抗血小板療法, 抗凝固療法,抗線溶療法等が施行されことがあり,本邦で も抗凝固療法としてヘパリン,ダナパロイドナトリウム, ワーファリン等,また合成蛋白分解酵素阻害薬 (FOY)の 使用や抗血小板剤としてのアスピリン,抗線溶療法として のトラネキサム酸を使用した症例の報告���が散見される. しかし,その有用性は明らかでなく,いずれにせよ出血の コントロールは血管腫の縮小までの補助療法に過ぎない. 朝倉ら�は DICの病型分類として,凝固活性化に見合う 左大腿の筋内あるいは筋層間に rimを伴う腫瘤を複数認め,T2WIで高信号と低信 号が混在している.(矢印) 左大腿部の皮下静脈の拡張と蛇行を認める.(矢印) 図3 臨床経過

(4)

以上の著しい線溶活性化を伴う DICを線溶亢進型 DICと 提唱している (表 2).本症例は入院時に著明な出血症状を 呈し,検査所見で線溶亢進型 DICの病態を呈していた.こ の凝固障害に対し我々は線溶抑制作用も有する rTM製剤 と抗線溶剤による治療を行った.rTM製剤は,トロンビン -TM 複合体によりプロテイン Cの活性化を促進,活性化 プロテイン C (APC)は, プロテイン Sを補酵素として FVa,FVIIIaを限定分解することにより抗凝固作用を発揮 する.一方,トロンビン-TM 複合体は線溶阻止因子である thrombin activatable fibrinolytic inhibitor(TAFI)を活性 化することにより過剰な線溶亢進状態を制御する方向にも 作用することが知られている.本症例では rTM投与の 2 日後には DIC score 3点と DIC離脱し,出血性有害事象も 生じず,良好な治療効果を得られた. 血管腫に対する治療としては,成人の KMS症例の多く が肝血管腫によるものであり,外科的切除にて加療される ことが大半である.放射線治療に関しては,これまでにい くつかの報告がなされている.����Schildら��は 13例中 10 例で症状の完全な消失が認められたとしている.放射線治 療により血管腫の内部隔壁の狭小化,瘢痕化が生じ,血小 板破壊が減少するため,比較的早期 (約 10日前後)に血小 板数の上昇が認められる場合があり,放射線治療直後に血 管腫が存在していても追加照射を行わずに経過観察をする ことが重要である.�� 本症例は血管腫の外科的切除が困難であったため,30 Gy の局所照射を行った.照射後の血管腫サイズに著変はな かったが,トラネキサム酸の内服加療継続のみで,長期間 病勢は安定しており,良好な治療効果を得ている. 結語 今回我々は,長期間に渡り存在していた下肢の巨大血管 腫に起因した成人発症の KMSという稀な症例を経験し た.また,線溶亢進型 DICの急性期治療として rTM製剤の 投与を行い良好な治療効果を得られた.rTM製剤は線溶の 亢進した DICに対しても安全かつ有用であると考えられ た. 謝辞 患者様には本論文でのデータ使用の同意をいただいた. 引用文献

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1 Department of Medicine and Clinical Science,Gunma University Graduate School of Medicine,3-39-22 Showa-machi,Maebashi,Gunma 371-8511,Japan

2 Oncology Center,Gunma University Hospital,3-39-15 Showa-machi,Maebashi,Gunma 371-8511,Japan 3 Blood Supply Center,Gunma University Hospital,3-39-15 Showa-machi,Maebashi,Gunma 371-8511,Japan

4 Department of Laboratory Science,Gunma University Graduate School of Health Sciences,3-39-22 Showa-machi,Maebashi,Gunma 371-8514,Japan

Abstract

Herein,we report a 77-year-old female with Kasabach-Merritt syndrome(KMS).At admission,extensive subcutaneous hemorrhages were seen in the body trunk and extremities.A fist-sized hemangioma was palpated in the left thigh.The laboratory data showed anemia,coagulopathy and renal dysfunction.She was diagnosed as having KMS caused by left thigh hemangioma and hyperfibrinolytic type disseminated intravascular coagulation (DIC).After the treatment with recombinant thrombomodulin(rTM)and tranexamic acid(TA),coagulation disorders and bleeding tendency was improved immediately.The hemangioma was irradiatied 30 Gy and observed only with the oral administration of TA,without relapse of DIC.rTM administration was useful and safe on disease control in acute phase of hyperfibrinolytic type DIC.

Key words:

recombinant thrombomodulin(rTM), DIC,

Kasabach-Merritt syndrome(KMS), hemangioma

参照

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