民族から見た中国労働市場 : 吉林省における就業行動と労働力移動を中心に
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(2) 目. 序 章. 次. 研究の背景と研究の課題. 1. 1. 研究背景. 2. 問題意識 3. 分析の枠組み、研究課題とアプローチ. 4. 論文の構成 第一章中国の経済格差と労働力移動. 11. はじめに. 11. 1−1.中国経済格差の実態. 12. 1−1−1. 所得格差の国際比較. 12. 1−1−2. 都市・農村間所得格差. 13. 1−1−3. 地域間所得格差. 15. 1−1−4. 民族間所得格差. 18. 1−1−5. 都市内、農村内、民族内の所得格差. 22. 1−2. 経済格差と労働力移動. 23. 1−3. 吉林省の経済発展と労働市場状況. 25. 1−4.吉林省の主要少数民族の人口分布と民族教育. 27. おわりに. 29. 第二章. 人口・労働力移動に関する理論的枠組み. 31. はじめに. 31. 2−1. 国内・国外の人口・労働力移動に関する先行研究. 31. 2−1−1. ルイスの二重経済モデル. 31. 2−1−2. 人的資本理論. 32. 2−1−3. トグロの人口移動モデル. 33. i.
(3) 2−1−4. プッシュープル理論. 34. 2−1−5. 中国人口・労働力移動に関する実証研究. 35. 2−2. 失業および就業行動に関する先行研究. 37. 2−2−1. トグロの高学歴者の失業問題理論. 37. 2−2−2. 樋口の就業決定モデル. 37. 2−2−3. 実証研究. 38. 2−3. 民族別人口・労働力移動に関する実証研究. 38. おわりに. 40. 第三章. 中国大学牛の就業行動の決定要因一地方大学生のアンケート. 調査による分析. 42. はじめに. 42. 3−1. 問題意識と中国労働市場状況. 43. 3−1−1.トグロの高学歴者の失業問題理論. 43. 3−1−2.樋口美雄の就業決定モデル. 45. 3−2. 地方大学生の他地域への就業(国外への就業も含む). 46. 3−3. 仮説、変数とモデル. 49. 3−4. 地方大学牛の就業行動の決定要因. 51. 3−4−1. ミクロデータによる就業行動の決定要因. 51. 3−4−2. 決定要因間の相関性分析. 54. 3−4−3. 大学牛の個人選択の変化. 57. 3−5.就職内定者の実際賃金(初任給)の決定要因. 59. おわりに. 61. 第四章. 大学新卒者の就業行動および省間移動の規定要因に 66. 関する実証分析. はじめに. 66. 4一. 大学新卒者の就業行動. 67 ii.
(4) 4−2. 仮説とモデル. 73. 4−3. データの説明. 75. 4−4. 大学新卒者の省問移動に関する規定要因. 76. おわりに. 81. 第五章. 中国農村労働力の民族別労働力移動に関する一考察 85. 一吉林省の場合一. はじめに. 85. 5−1.農村労働力の民族別移動パターン. 85. 5−2.仮説、モデルと変数. 89. 5−2■.仮説. 89. 5−2−2. モデルと変数. 91. 5−3. データの説明. 92. 5−4. 推計結果. 96. 5−4−1. 農村部世帯主移動の決定要因. 5−4−2. 農家1人当たりの所得の決定要因. 100. 104. おわりに. 第六章. 96. 中国都市部労働力の地域間移動とその決定要因 一吉林省の漢族と少数民族の場合一. 112. はじめに. 112. 6−1. 問題意識と今までの先行研究. 113. 6−2.仮説と実証モデル. 115. 6−3. ミクロデータによる漢族と朝鮮族、満州族の移動パターン. 117. 6−3−1. データの説明. 117. 6−3−2.漢族と朝鮮族、満州族の移動パターン. 118. 6−4. 労働力移動の民族別決定要因. 120. おわりに. 127 iii.
(5) 第七章. 中国における国際労働力移動と送金に関する一考察 132. 一吉林省の事例から. はじめに. 132. 7−1.中国の国際労働力移動と労働者送金. 133. 7−2.主要な国における外国人労働者受け入れ制度と実態. 136. 7−2−1.韓国. 136. 7−2−2.日本. 137. 7−2−3.アメリカ. 139. 7−3.仮説と実証モデル. 140. 7−4.データと推計結果. 142. 7−4−1. データの説明. 142. 7−4−2. 国際・国内労働力移動の決定要因. 143. 7−4−3. 送金または送金額の決定. 148 151. おわりに. 要約と政策的含意. 160. 1.. 要約. 160. 2.. 結論. 163. 3.. 政策的含意. 165. 4.. 今後の課題. 167. 終 章. 参考文献. 168. あとがき. 175. 付録. 176. iV.
(6) 図 表 目 次. 4. 回序一1. 分析の枠組みと研究課題. 図1−1. 都市・農村問所得格差(時系列データ). 14. 図1−2. 四大地域の都市部1人当たり可処分所得格差の推移. 16. 図1−3. 四大地域の農村部1人当たり純所得格差の推移. 17. 図3−1. 就業行動の決定モデル. 54. 図3−2. 要求希望賃金と就業率. 54. 図3−3. 要求希望賃金と実際平均賃金. 55. 図3−4. 希望勤務年数と実際賃金、要求希望賃金関係. 56. 図3−5. 企業選択基準の人材育成と勤務年数関係. 56. 図3−6. 2002年と2007年要求希望賃金の選択. 57. 図3−7. 2002年と2007年企業選択基準(多項目選択可能). 58. 図4−1. 延辺大学と北京市大学の新卒の希望賃金. 67. 図4−2. 延辺大学と北京市大学の新卒の勤務地選択. 69. 図4−3. 中国朝鮮族の地域別人口増加率. 70. 図4−4. 延辺大学と北京市大学の新卒の企業選択基準. 71. 図5−1. 民族別全世帯の移動パターン. 86. 図5−2. 民族別世帯主の移動パターン. 86. 図5−3. 民族別全世帯の移動構成. 88. 図5−4. 農村労働力の業種別、民族別移動構成. 89. 図6−1. 都市から都市への民族別移動パターン. 118. 図7−1. 2003∼2009年の中国朝鮮族の韓国への移動. 134. 図7−2. 中国労働者送金の時系列データ. 135. 表1−1. 経済発展と所得格差の国際比較. 13. 表1−2. 都市・農村間所得格差(ミクロデータ). 15. 表1−3. 東部沿海地域と西部少数民族地域の所得格差. 19.
(7) 表1−4吉林省の民族白治地区(地紙市)と非民族自治地区の所得格差 20. 表1−5吉林省の民族間経済格差(ミクロデータ). 21. 表1−6吉林省の民族内・農村内・都市内の経済格差(ミクロデータ) 23. 表3−12006年度学歴別の求人と求職状況. 44. 表3−22006年度全国技術労働者の求人と求職状況. 45. 表3−3勤務地選択と民族、性別、専攻の関係(多項目選択可能) 表3−4 回帰分析に用いられる諸変数の定義. 48. 50. 表3−5地方大学生の就業行動の決定要因(二項ロジスティックモデル) 52. 表3−6地方大学生の実際賃金の決定要因(OLS回帰). 59. 附表3−1地方大学生の就業行動の説明変数間の相関係数. 64. 附表3−2地方大学生の初任給の説明変数間の相関係数. 65. 表4−1延辺大学新卒の省内、省問移動の割合. 75. 表4−2回帰分析に用いられる諸変数の定義. 77. 表4−3延辺大学新卒の省間移動の決定要因(二項ロジスティックモアル)77. 表4−4延辺大学新卒の地域別、民族別省問移動の割合. 79. 表4−52006年東部沿海地区8市専攻別需要ランキング. 80. 附表4−1延辺大学新卒者の省問移動の説明変数間の相関係数. 表5−1回帰分析で用いる諸変数. 93. 表5−2民族別移動者数と移動率. 94. 表5−3 民族別、年齢階層別世帯主移動率. 84. 95. 表5−4 民族別1世帯当たり平均所得と平均支出. 96. 表5−5農村世帯主の移動の決定要因(二項ロジスティックモデル). 表5−6農家1人当たりの所得の決定要因(0LS回帰). 1O1. 附表5−1農村部の世帯主移動の説明変数間の相関係数. 108. 附表5−2農家1人当たりの所得の説明変数間の相関係数. 110. 表6−1民族別の賃金状況. 97. 120. 表6−2省内各地域、各省の賃金と各国1人当たりGDP(2007年) 表6−3 回帰分析で用いる諸変数. 122. 表6−4都市部の労働力移動の決定要因の推計結果 (二項ロジスティックモデル). 123 Vi. 121.
(8) 都市部の労働力移動の説明変数間の相関係数. 130. 表7−1. 国際・国内労働力移動の回帰分析で用いる諸変数. 143. 表7−2. 国際・国内労働力移動の決定要因の推計結果. 附表6−1. 146. (二項ロジスティックモデル). 表7−3. 送金または送金額の回帰分析で用いる諸変数. 148. 表7−4. 送金または送金額の決定要因の推計結果. 149. 附表7−1 国際・国内労働力移動の説明変数間の相関係数. 156. 附表7−2 送金決定の説明変数間の相関係数. 158. 附表7−3 送金額決定の説明変数間の相関係数. 159. Vii.
(9) 序 章. 研究の背景と研究の課題. 1.研究背景. 改革開放以来、中国の急速な経済成長は、巨大な労働市場を生み出し、中国国内の労働 者に多くの就業機会を与える」方、多くの経済・社会的矛盾を露呈させてきた。たとえば、. 地域間の開発水準の違いによる経済格差の拡大によって、大学新卒の就業行動や労働力移 動に大きな影響を与えてきた。地域間格差については、部市住民一人当たり収人差は東部 地域を100として、中部地域、西部地域、東北地域の指数は2005年でそれぞれ64,65,64で あったが、2008年にはそれぞれ67,66,68である。農民一人当たり実質収入差は東部地域 を100として、中部地域、西部地域、東北地域の指数は2005年でそれぞれ62,50,71であっ たが、2008年にはそれぞれ68,53,77である1。よく知られるように、打ち出された1999年 の「西部大開発」戦略、2003年の「東北振興」戦略、2005年の「中部台頭」 (中国語では. 「中部掘起」)戦略によって、東部地域と中部、西部、東北地域の格差は多少の改善が見 られるが、依然として格差は大きい。. 」方、経済格差は、地域間だけではなく、民族間、民族内部の問でも拡大している。人 種構成と民族は、開発の成否に大きな影響を与える可能性が高い。民族や宗教の多様性が 広がるほど、国内での争いや政情不安が生じる可能性も高くなる。しかし、それが必ずし も不平等、不安定性につながるとは限らない。重要な点は、途上国の民族および宗教構成 とその多様性が対立の引き金になるか、あるいは協調につながるがが開発の成否の重要な. 決定要素になる(トグロ、1997:第2章)。そのため、中国は、今後経済の持続的な成長を 保っていくためには、地域間、民族間の発展の不均衡を解決しなければならない。. 中国では、労働市場に大きな影響を与える労働力の供給形態として大学などの新卒者の 就業と農村労働力の都市への移動(出稼ぎ)がある2。失業問題として、国有企業のリスト ラに伴う「F崩」(解雇)問題が1990代後半から2000年代初までに深刻な社会問題であった. が、1999年から高等教育の拡大政策が採られ、大学新卒者が急増しているため、2000年代 以後、大学新卒者の失業問題がもっとも深刻である。大学新卒者の数は、2001年の115万人 から2009年の610万人まで増え、8年間で5倍以上になった。大学新卒者が年々増えるととも に、大学新卒者の就職卒は政府発表でも7割前後といわれ、就職難が続いている。その一… 1.
(10) 方、1995年から大学新卒の雇用制度の改革が行われ、それ以前の国による大学生の行政配 属方式から企業側と大学生側が互いに相手を選、sく、いわゆる「双方向選択方式」に代わっ. た。この制度を契機に、大学新卒の就業行動による省問移動が制度的に可能になった。そ して、1980年代後半以降の中国改革開放による地域間人口移動に対する規制の緩和、非国. 有経済の成長に伴う雇用機会の増加、地域格差の拡大などが原因で、中国では、農村から 都市へ、内陸部から沿海部への大規模な労働力移動が繰り広げられてきた。たとえば、2005. 年には、総人口130628万人の中、移動人口が14735万人、省間移動が4779万人で、その規模 が1億を超えた3。なかでも、吉林省の場合、1990∼2000年の間、海外移動人口の割合が全国 の1.2%から10.7%に大幅に増加し、全国順位も1990年の10位から2000年の2位まで.ヒ昇し、. 福建省に次いで海外移動が活発である地域となった4。. 2.問題意識. 多くの開発途上国は、農村から都市への大量の人口移動、農業生産の停滞、都市と農村 の失業または不完全雇用の増人という歴史的にも特異な複合現象に悩まされている。失業 発生率は若年層の、しかも教育を受けた15歳から24歳の層で高くなっている。さらに、急 速な都市化の結果は主として都市経済の近代的な公式部門やインフォーマルセクターの双 方に求職者が殺到し、労働者の供給が需要を大きく超え、その結果、都市では非常に高い 失業率と不完全雇用が発生した(トグロ、1997)。したがって、多くの開発途上国では、. なぜ教育水準が高くなると失業が増加するのか、なぜ都市部に高い失業率が存在するにも 関わらず、人々が農村から都市へ移動するのかという点に関してよりよく理解する必要が ある。たとえば、開発途上国として中国では、大学新卒者の「就職難」問題と農村から都 市への移動による「農民工」問題が重要な課題である。. 中国の労働市場では、近年、大学新卒者の失業問題と「農民工」問題が大きな社会不安 の要因の一つとして、経済学者あるいは社会学者の重要な研究課題となった。それらの問 題を解決するには、彼らの就業行動と農村から都市へ、経済的後進地域から先進地域への 労働力移動の実証研究が最も重要である。しかし、その研究の多くは、制度的要因や中国 全体の労働市場を研究対象として扱っており、地域別、民族別の労働市場の理論的・実証 的分析は少ない。中国の労働市場における就業行動と労働力移動を考える際には、他の国 には見られない特殊条作を考慮する心理がある。その特殊条件の1つは、中国は多くの地.
(11) 域からなっており、地域によって状況は大きく異なる。したがって、中国の就業行動と労 働力移動の研究を行う場合、単に中国全体をみることだけではなく、地域に焦点を当てる 研究が重要である。もう1つは、多民族国家であるため、民族の経済と社会状況によって、. 就業行動、移動パターン、移動の決定要因も異なる可能性がある。したがって、地域労働 市場に焦点を当てるだけではなく、多民族から構成されている中国の民族別労働市場に関 して焦点を当てる研究も重要である。たとえば、中国の人学新卒者の就業行動を研究する. 際、地方の大学生と大都市の大学生の地域的な差異、漢族と少数民族の民族的な差異を考 える必要がある。もちろん、労働力移動についても地域別、民族別にその違いを分析する 必要がある。. 3.分析の枠組み、課題とアプローチ. これまで、大学新卒者の就業行動の研究について、北京市など大都市の大学新卒者が研 究対象であり、失業問題が最も深刻である地方大学生の就業行動に関する研究は少ない。. 例えば、北京市14人学の人学生に対する就業調査(曾編、2004)や、上海市大学生に対す る就業調査(上海大学生発展研究課題組編、2000)など大都市の大学新卒者の就業行動に. ついては詳しい分析があるが、地方大学新卒者の就業行動に関する研究あるいは地方と大 都市の大学新卒者の就業行動に関する比較研究は少ない。労働力移動にあたっては、多く. の研究が受け入れ地域の角度からの研究で、送り出し地域の角度からの研究はいまだに十 分ではない。また、ある特定の地域を対象に民族別にその就業行動と労働力移動を考察す る実証研究はほとんど見られない。したがって、これまで行われた研究は、中国労働市場 全体についての分析、あるいはある地域に限った調査や、ある少数民族を対象にする単純 な調査がほとんどであり、地域による漢族と少数民族の就業行動と労働力移動の相違につ いての調査分析、特に、地方における大学新卒者の就業行動を民族別に分析する研究まで 及んでいない。本論文の目的は、地方の大学新卒者の就業行動と労働力送り出し地域の移 動に焦点を当たって、アンケート調査から得られた個票データに基づき、就業行動及び労 働力移動を決定するメカニズムを計量的に分析することである。. 高学歴者の失業問題と農村から都市への大量の移動による都市の失業または不完全雇用 問題を如何に解決するのかは、多くの開発途上国にとって重要な課題であり、今の中国も. 同じ固題に直面している。図序一1が示すように、その問題の解決には、大学新卒者の就 3.
(12) 業行動と労働力移動の決定要因を分析する必要がある。具体的に言えば、就業行動を考え るとき、就業選択による就職と初任給の決定要因から、大学新卒者の就職と賃金構造状況 を把握し、彼らの就業行動による省問移動の決定票囚から、大都市への大量の移動による 「就職難」の問題を解明する。また、中国の労働力移動を研究する場合、移動パターンか らみると、農村から都市へ、都市から都市への移動が最も重要である。2007年の中国社会. 科学院の「全世界政治と安全」報告によると、中国は今世界最大の移民輸出国となってい る。その中でも、急激に増え続けている吉林省から海外への移動が本論文の研究課題の」 つである。海外移動とともに農村から都市へ、都市から都下付への移動から、移動者. 団序一. 分析の枠組みと研究課題. 片片一]土. 片片. 昂_早. 二比. 二弔一早. 先行所充. 経済格差. 民族からみた中国労働市場. 就業行動. 労働力移動. 地方. 大学新. 大学. 卒の就. 生の. 業行動. 就業. 及び省. 行動. 問移動. 第三章. 農村. 都市. 国際. から. から. 労働. 都市. 都市. 力移. への. への. 動と. 移動. 移動. 送金. 第六章. 第四章. 咄所)筆者が作成。. 4. 第七草.
(13) の全体像がより明らかになり、移動の主要な動機と決定要因から、なぜ人々’は移動するの かを理解するのに役に立つ。. 上述の分析の枠組みに従い、本論文では、以下の5つの研究課題を設定して中国におけ る就業行動および労働力移動の問題を分析する。(1)2002年と2007年のアンケート調査 によるパネルデータを用いて、地方大学新卒者の就業行動の決定要因を解明し、彼らの失 業問題をもたらしている要因を明らかにする。 (2)2004年の北京市大学生の就業調査と. 2007年の地方大学生の就業調査を通じて、彼らの就業行動を比較分析し、地方大学新卒者 の就業行動による地域間移動のメカニズムを明らかにする。 (3)2008年の吉林省農村部 世帯主の出稼ぎに関するアンケート調査を通じて、農村労働力の民族別移動パターンまた は農村世帯主の移動の決定要因と農家1人当たり所得の決定要因について考察する。 (4). 2009年の吉林省都市部住民の地域間移動に関するアンケート調査を通じて、漢族と少数民 族5の移動パターンを比較し、彼らの労働力移動の決定要因を民族別に分析することで、. 年齢などの個人属性以外に、希望賃金格差、送金と友人・親族ネットワークが民族別移動 にどのような影響を与えるかを考察する。 (5)2009年の都市部住民の国際労働力移動と. 送金に関する調査データに基づいて、中国吉林省の国際労働力移動とそれに伴う送金を中 心に、彼らの国際労働力移動と送金の決定要因を計量的に分析することで、地方である吉 林省、少数民族である朝鮮族、満州族の国際移動と送金の状況を明らかにする。. アンケート調査とそれらから得られたミクロデータによる実証分析は、本論文の最も主 要な研究アプローチである。中国では、人口移動を分析するマクロデータとして全国人口 センサス資料がよく使われている。しかし、民族別人口増加率、民族別人口分仲1青況など. の全体的なデータは公表しているが、民族・年齢別、民族・学歴別など人口・労働力移動 に関する具体的なミクロデータの入手が難しいため、アンケート調査から得られた個票デ ータが民族別就業行動と労働力移動を研究する重要な方法の一つである。実証分析につい ては、大きく分けて二つの方法を採ることができる。その1つは、目の前に存在する現象 をどのように説明するか、なるべく多くの仮説にあたってそれぞれの妥当性を吟味し、そ. れに適した説明を取捨選択していく方法である。もう1つは目前に迫った問題に直接接近 するかわりに、むしろ一歩下がって検討すべき仮説を先に設定し、統御実験あるいは広い 範囲の統計資料にあたって、その仮説の検証に、s、さわしい事象を探し出し、仮説の妥当性. を吟味する方法である(樋口美雄、1991)。筆者は、4回にわたって、吉林省で延辺大学大. 学4年生、延辺大学新卒者、農村の世相生、都市部住民を対象に就業行動と労働力移動に 5.
(14) 関するアンケート調査を行った。具体的には、 (1)2007年5月に、延辺大学の大学4年 生700人を対象に就職内定と初任給に関する調査を、 (2)2007年7月に、延辺大学の新 卒者800人を対象に就業行動による地域問移動調査を、 (3)2008年2月に、中国吉林省 の9地区の中、5地区の農家200世帯の世帯主を対象に移動決定と移動先の調査を、 (4). 2009年2月に、吉林省の8地域20県市(少数民族集住地である延辺朝鮮族自治州と伊通 満族白治県を含む)の都市部住民1300人を対象に地域間移動と国際労働力移動に伴う送金 に関する調査を行った。研究方法は、アンケート調査に基づいて、目前に迫った問題に直. 接接近するかわりに、むしろ一歩下がって検討すべき仮説を先に設定し、統御実験あるい は広い範囲の統計資料にあたって、その仮説の検証に、s、さわしい事象を探し出し、仮説の. 妥当性を吟味する実証分析方法を用いる。本論文では、マクロデータも利用するが、主に アンケート調査によるミクロデータに基づいて計量分析を行う。本論文の特色としては、. 大学生、農家、会社員、公務員、自営業など様々な労働市場参加者に対するアンケート調 査を通じて、民族別に分けて、送り出し地域の視点から就業行動、労働力移動と送金の決 定要因を計量的に分析することである。本論文の主な目的は、中国の地域と民族の労働市 場に焦点を当て、経済格差の存在の下で、労働経済学の視点から中国労働市場における民 族別就業行動と労働力移動のメカニズムを解明しようとすることである。. 4.論文の構成. ここで本論文の構成と各章の主な論点を示しておこう。図序一1が示すように、本論文 は序章と終章を除いて、以下の7章から構成されている。. 第1章中国の経済格差と労働力移動 第2章人口・労働力移動に関する理論的枠組み 第3章中国大学牛の就業行動の決定要因一地方大学生のアンケート調査による分析 第4章大学新卒者の就業行動及び省間移動の規定要因に関する実証分析 第5章中国農村部労働力の民族別移動に関する一考察一吉林省の場合 第6章中国都市部労働力の地域問移動とその決定要因一吉林省の漢族と少数民族の場合 第7章中国における国際労働力移動と送金に関する一考察一吉林省の事例から. 6.
(15) 第1章と第2章は、中国労働市場における就業行動と労働力移動を分析するための予備 的考察である。第3章と第4章は、大学生及び大学新卒者の就業行動による就職決定と地. 域間移動の決定票囚に関する実証研究である。第5章、第6章と第7章は、農村から都市 へ、都市から都市へ、国内から国外への労働力移動に関する実証研究である。各章の分析 方法と主な論点は、以下の通りである。. 第1章では、2008年と2009年に実施したアンケート調査によるミクロデータと中国統 計年鑑(各年版)などのマクロデータに基づいて、就業行動と労働力移動の要因となる所得. 格差、労働力送り出し地域である吉林省を含む東北地域が「東北振興」戦略実施前後の経 済発展の状況を明らかにすることで、東北地域または吉林省の少数民族集住地の経済発展 の新たな要因を提起する。本章の主な結論は以下のとおりである。第1に、中国では、都 市・農村格差とともに、地域間格差、民族問格差と都市内部、農村内部、民族内部の所得 格差も深刻である。改革・開放当初における都市問所得格差は驚くほど小さかったが、80 年代後半から次第に開き始め、90年代にそれが加速化した。特に、ここ数年における実質 所得の上昇は東部地域の都市部、なかでも北京、上海といった主要都市に集中している。. 第2に、 「東北振興」戦略実施以後、吉林省に対して政府投資が行われ、吉林省のGDP成 長率と一人当たりGDPが上昇し、農村と都市の住民の所得と生活条件が改善された。しか し、吉林省の多くの農家は農産物の年産に依存する所得構造のため、農家の所得増加には. 限界がある。また、都市の賃金水準も上昇したが、東部沿海地域との賃金格差はいまだに 大きい。 「東北振興」戦略実施以後、GDP成長卒と一人当たりGDPは上昇したが、その一 方、所得格差は拡大した。第3に、少数民族自治地域の経済発展が遅れ、民族問、特に漢 族と少数民族間の経済格差は大きい。また、農家の一人当たり所得には、民族間より民族 内部の格差が依然として大きい。. 第2章では、就業行動と労働力移動に関連する実証研究の文献を中心に、今までの先行 研究を展望する。この章の目的は、就業行動と人口・労働力移動に関する国外・国内文献 のアプローチ、問題点を整理することによって、中国民族労働市場における就業行動と労 働力移動の状況を概観することである。. 第3章では、中国の大学新卒者が日々に増えるとともに、大卒の就職問題はますます人々. の注目となっていることを背景に、中国地方大学の大学牛の2002年と2007年の就職意識 のアンケート調査に基づいて、地方大学生の就職内定卒と内定者の初任給の決定要因を個. 人属性と就業行動から分析する。本章の主な結論は以下のとおりである。第1に、就業行 7.
(16) 動の決定要因として、専攻、希望勤務年数、就職するための使用金額は就職に重要な影響 を与える。しかし、民族、性別、要求希望賃金、出身地、戸籍などは、地方大学生の就業 行動に重要な影響を与えない。第2に、就職内定者の実際賃金(初任給)の決定要因とし て、専攻、民族、性別、希望勤務年数は、重要な影響を与えるが、就職するための使用金 額と要求希望賃金はあまり重要な影響を与えない。第3に、地方大学生の他地域への就業 (国外への就業も含む)の傾向が明らかである。全体として、北京、上海など東部沿海地. 域を選んだ者の割合が高い。第4に、2002年と2007年のパネルデータから、地方大学生 の就職に対する希望はより現実的になっていることがわかった。もちろん、地方大学新卒 者の要求希望賃金が若干高い傾向があるが、2002年に比べて、2007年の希望賃金はより現 実的になっている。. 第4章では、高学歴者に対する戸籍制度と大学新卒に対する雇用制度の改革が行われ、 高学歴者の省間移動が制度的に可能になった背景の下で、2007年の大学新卒者の就職先に 関するアンケート調査のデータに基づいて、地方大学新卒者の省問移動の決定要因を分析 する。本章の主な結論は以下のとおりである。民族、専攻、出身地、性別は、大学新卒者 の省間移動に重要な影響を与える。特に、中国は多民族国であるため、民族によって人学 新卒者の移動パターンが異なり、省問移動の決定要因として民族の影響が重要である。本 章の主な目的は、中国における地方大学新卒者の省間移動の決定要因を分析することで、 地方大学新卒者の民族別省問移動のメカニズムを明らかにする。. 第5章では、中国改革開放と戸籍制度の緩和による農村から都市への大規模な労働力移 動を背景に、2008年の中国吉林省の労働力移動に関する民族別アンケート調査によるミク. ロデータに基づいて、世帯主の労働力移動と農家の1人当たり所得の決定要因に関する計 量分析を行った。本章の主な結論は以下のとおりである。第1に、民族別の移動パターン. の大きな相違性が現れている。第2に、民族、所得格差6、地域、年齢階層は、世帯主の 農村から都市への移動の決定要因であるが、性別、婚姻状況、教育水準、労働力数、子供 数、妻の移動の有無は、世帯主の移動に重要な影響を与えない。第3に、民族、婚姻状況、. ネットワークの有無は、農家の1人当たり所得の決定要因として重要な影響を与える。本 章の主な目的は、労働力の送り出し地域の視点から農村労働力の民族別移動パターン、農 村世帯主の移動と農家の1人当たり所得のメカニズムを明らかにすることである。. 第6章では、所得格差および地域問格差の拡大による内陸地域から経済発展の沿海地域 への大規模な労働力移動を背景に、2009年の中国吉林省の都市部労働力の地域固移動に関 8.
(17) するアンケート調査に基づいたミクロデータから、その決定要因を計量的に分析する。本 章の主な結論は以下のとおりである。第1に、農村と同じように、都市部の民族別移動パ ターンにも大きな相違性が現れている。漢族と満州族は、国内移動を中心とする短距離移 動、朝鮮族は、海外移動を中心とする長距離移動を行う。第2に、労働力移動の決定要因 として、民族ダミー、年齢、婚姻状況ダミー、家族の送金、友人・親族のネットワークが. 重要な影響を与える。希望賃金格差、家族の送金と友人・親族のネットワークは、移動に 重要な影響を与える一方、民族によってその影響が異なる。3)少数民族は、移動する確率. が高く、その分布も特定の地域に集中している。しかし、少数民族の中でも、その移動の 特徴が異なる。朝鮮族にとって、希望賃金格差など経済的要因よりネットワークなど社会 的要因が重要な役割を果たす。本章の主な目的は、労働力の送り出し地域の視点から漢族 と少数民族の移動パターンを比較し、彼らの労働力移動の決定要因を計量的に分析するこ とである。. 第7章では、国と国の所得格差あるいは賃金格差による国際労働力移動を背景に、中国 人口センサス資料などマクロデータから、国際労働力移動と労働者による送金の規模と実 態を明らかにした上で、2009年の都市部のアンケート調査に基づいたミクロデータから、. 国際労働力移動と送金または送金額のメカニズムを計量的に分析する。本章の主な結論は 以下のとおりである。第1に、国内移動と比べて、国際移動は国内の政治・政策状況に強 く規定されるが、受け入れ国の制度・政策との関連性がより強いと考えられる。第2に、. 希望賃金格差も含めて、個人属性、人的資本、移動経験、友人・親族ネットワーク、移動 元の保険加入状況と仕事状況が国際・国内移動の決定に重要な影響を与える。たとえば、 異なる民族によって移動パターンが異なるし、移動先である国と地域も異なる。第3に、 国際送金または送金額の決定要因として、移動費用だけではなく、個人属性である性別、. 婚姻状況、戸籍、人的資本である教育年数と出稼ぎ年数、移動先の社会保険への加入が重 要である。本章の主な目的は、労働力の送り出し地域の視点から、吉林省の国際労働力移 動と送金または送金額の決定要因を分析することで、彼らの国際労働力移動と送金または 送金額のメカニズムを明らかにすることである。.
(18) (注). 1)中国統計年鑑2006、すなわち2005年のデータから東北地域を中部地域から抜いて統計しているため、 2005年を最初に、2008年と比較して地域格差をみる。. 2)2008年2月に日本銀行国際局が実施する外部への委託調査・研究に関する報告書「中国労働市場にお ける労働力移動と需給ミスマッチの現状と展望」を参照せよ。 3)2005年の全国1%人口センサス資料を参照せよ。. 4)1990年と2000年の全国人口センサス資料を参照せよ。 5)2000年の全国人口センサスによると、吉林省の約245万人の少数民族人口の中、朝鮮族が約114万人、. 満州族が約99万人で、合計約213万人で、吉林省の少数民族人口の約87%を占める。本論文では、少数 民族として朝鮮族と満州族を調査対象とする。. 6)所得格差は、出稼ぎ所得と農業所得の差で、回帰分析では、出稼ぎ所得>農業所得の場合・「1」,出稼 ぎ所得<農業所得の場合・「0」のダミー変数である。. 10.
(19) 第一章. 中国の経済格差と労働力移動. はじめに. 中国統計年鑑によると、改革開放以後、1979∼2008年の間、中国経済は年平均9.8%の成. 長率で、農村と都市部ではともに、一人当たり所得が増加した。農村部1人当たり純所得. は、1978年の133.6元から2008年の4761元に増え、都市1人当たり可処分所得は、1978 年の343元から2008年の15781元に増加した。インフレを考えると、それぞれ年平均7.1% と7.2%の増加率である。その」方、都市・農村問、地域間、民族問における経済格差は拡. 大し、インフレや失業も目立つようになるなど中国社会に大きな矛盾が生じた。さらに、. 貧富の格差も大きく、2001の統計では、中国の50名の富豪がもつ財産の総和は100億米 ドルで、平均2億米ドルという。それは、中国の5000万人農民の年間純所得の総和に相当 する。「富める者はさらに富み、貸する者は永遠に貧しい」状況は、今の中国の社会現象で. もある。したがって、中国では、高い経済成長の下、急激に拡大する所得格差が最も顕著 な社会問題の一つとなっている。. これまで多くの研究は、都市・農村格差、地域間格差について中国統計年鑑などマクロ データのみの分析が中心になっている。また、民族間の所得格差については、中国政府が 公表していないため、マクロデータの分析も非常に難しい。さらに、都市内、農村内、民 族内の所得格差は、個票データの入手が困難であるため、マクロ及びミクロ分析がともに 十分ではない。この現状を踏まえ、本章では、政府公表のマクロデータに加え、アンケー ト調査に基づいたミクロデータを利用することで、中国における経済格差の全体像を解明 する。本章の主な目的は,中国の就業行動と労働力移動の重要な経済的要因となる都市・. 農村間、地域間、民族間と都市内、農村内、民族内の所得格差問題を取り上げて,中国の 経済格差から人口・労働力移動の実態を論じ,労働力送り出し地域としての地域経済発展 および労働市場の主要問題を考察するものである。. 本章の構成は次の通りである。第1節では、所得格差の国際比較、中国における都市・ 農村間、地域間、民族間あるいは都市内、農村内、民族内の所得格差から中国経済格差の 全体像を明らかにする。第2節では、中国における地域間経済格差から人口・労働力移動 の実態を分析する。第3節では、吉林省の経済発展状況および労働力構造の変化や失業問 題などを考察する。第4節では、吉林省の主要少数民族の人口分布と歴史、教育、社会文 11.
(20) 化などの状況を分析する。. 1−1. 中国経済格差の実態. 1一一1. 所得格差の国際比較. 中国では、この数年、各地で暴動・騒乱などが頻発しており、深刻な社会不安を引き起 こしている。その背景にあるのは、拡大する所得格差である。ジニ係数は、不平等の程度. を示すためにもっとも頻繁に用いられる指標である。しかし、中国では、統計・所得中告 制度の不備などが原因で、令国的に家計調査が実施されておらず、家計調査に基づく令国. のジニ係数は推計できなかった。中国統計年鑑のデータによるジニ係数の推計には、 Rava11ion and Chen(2004)が推計した全国ジニ係数と国家発展改革委員会が推計した都. 市・農村別のジニ係数などがある。しかし、政府による推計は、所得の定義や調査方法が 必ずしも国際基準と一一致していないことから、信頼できるかどうか言いにくい。また、高. 所得者の所得隠しや政府官僚の腐敗などの問題が存在するため、所得分配の不平等を正確 に測ることが難しい(辞他2008)。Rava11i㎝and Chen(2004)によると、中国全体のジニ. 係数は、1978年の0.25から2002年の0.46まで大幅に上昇している。世界銀行が公表し たデータでも、2009年のジニ係数はO.47で、所得格差の拡大傾向は明らかである。UNの 規定によると、ジニ係数がO.2より小さい場合、所得が絶対平均で、O.2∼0.3の問は、比 較的平均で、O.3∼0.4の間は相対的に合理的である。しかし、ジニ係数が0.4を上回れば、. 所得格差が大きく、社会の安定を脅かすとされている。もちろん、中国の所得格差がどれ だけ深刻であるかを理解するためには、中国の時系列データだけではなく、世界各国のデ ータと比較してみる必要がある。. 表1−1は、各国のGDPと1人当たりGDPの順位と各国の所得分配の状況を示す。中国の 経済成長は、世界が驚くほど急速であるが、その所得格差も欧米先進国はもちろん、アジ アの低所得国の中でも大きい。たとえば、その不平等の程度は、インド、インドネシア、. タイ、ベトナムより深刻であり、経済成長と所得不平等の悪例であるフィルピンと並んで. いる(辞他、2008)。中国の1人当たりGDP順位をみると、インドより高いが、ジニ係数 だけではなく、所得の上位20%の割合もそれより高い。世界銀行によると、米国では、5% の人口が60%の富を保有している。中国では、1%の家庭が全国の41.4%の富を保有しており、. 富の集中度は米国を大きく上回り、世界で格差がもっとも大きい国の一つとなっている。 12.
(21) 中国の所得分配の不平等は、1990年代を通じて拡大を続け、ジニ係数は1988年の0,382 から2009年の0.47まで上昇している3。このように、所得分配の不平等の拡大をもたら す要因として、さまざまな種類の所得格差の拡大が考えられる。. 中国における所得格差については、産業問、職種問などあらゆる分野での格差も存在し ているが、本章では、都市・農村間、地域間、民族間または都市内、農村内、民族内の所 得格差を中心に分析する。. 表1−1経済発展と所得格差の国際比較 国別. 世界GDPl11頁位 (2005年). 世界1人当たりGDP. ジニ係数(調査年). 順位(2005年). 所得のシェア1 上位 20%. 下位20%. アメリカ. 1. 4. 0,408(2000). 45.8. 5.4. 日本. 2. 5. 0,249(1993). 35.7. 10.6. ドイツ. 3. 16. 0,283(2000). 36.9. 8.5. イギリス. 4. 9. O.360(1999). 44.0. 6.1. 中国. 5. 109. 0,447(2001). 50.0. 4.7. フランス. 6. 17. 0,327(1995). 40.2. 7.2. イタリア. 7. 20. O.360(2000). 42,0. 6.5. カナダ. 8. 18. 0,326(2000). 39.9. 7,2. スペイン. 9. 22. 0,347(2000). 40.O. 7.O. インド. 10. 134. 0,368(2005). 45.3. 8.1. 韓国. 11. 31. O.316(1998). 37.5. 7.9. インドネシア. 26. 122. 0,343(2002). 43.3. 8,4. タイ. 32. 80. O.432(2000). 50.0. 6.1. マレーシア. 37. 61. O.492(1997). 54.3. 4.4. フィルヒン. 47. 111. O.461(2000). 52.3. 5.4. ベトナム. 59. 139. O.361(1998). 44.5. 8.O. (出所)世界GDPと世界1人当たりGDP l11頁位はwor1d bank2006。各国のジニ係数はWDl and GDF2010。. 1−1−2. 一都市・農村問所得格差. 中国では、13億人以上の人口のうち、約6書・1が農村に居住しているが、都市と農村の1 13.
(22) 人当たりの可処分所得の比率は、1978年の2.6倍から2008年の3.3倍に拡大している4。 しかし、このような都市と農村の格差を放置していくことは、大きな社会的不安定要因と. なるだけではなく、経済成長を支える消費需要の拡大が困難となるという問題がある。中 国が経済成長を維持していくためには、都市・農村の所得格差の是正が大きな課題となる。. 都市・農村格差は、1949年の中華人民共和国成立の時代から始まり、1978年の改革開放 以後この格差はさらに拡大した。その要因はさまざまであるが、政策面からみると、政府 の重工業主義戦略と都市と農村を分離する戸籍制度であると考えられる。戸籍制度に加え、. 農業・農村・農民の軽視、工業・都市・都市住民の重視の政策により、中国は二重構造の 経済・社会をもつ国となり、都市・農村間格差が拡大した(蒔他2008)。都市部1人当た り可処分所得と農村部1人当たり純所得の格差は、1978年時点ですでに2.6倍に達してい る。1978年から農家経営請負制を中心とした農村改革が実施されたため、1985年にはその. 格差が1.9倍までに縮小したが、改革の重点が都市部に移ったため、その格差は再び拡大 した。その後、2001年に中国がWT0に加入したことを契機に、その格差は再拡大し、2002 年には3.1倍となった(図1−1)。中国統計年鑑から推計された都市・農村間格差は、過 小評価されているとの指摘も多い。たとえば、都市住民には医療保険、年金、失業保険な どの社会保障があるが、農村住民はいまだに一部の人に一部の社会保険しか適応されてい ない。. 図1−1都市・農村間所得格差(時系列データ). ミ・1・い・一一一・一一一 二㍗繕:蛎 干都爾郵一人書た 汐司処分所篤. 1・・… “贈一熾 1800ぺ一…・鵬一・・一一一一一一 ・・…一一∴、ろ 16000主III. 111ボ 、. 1 1; 1. O. ・. 。_締.鰍㈱. 胴嚢(麟) O. 的◎ぬ◎一州榊マぬりト的⑦◎パ剛韓ツぬりい物 卜切装ε働⑦前輪③⑦⑦⑦⑦前◎◎◎◎◎◎◎◎◎ ζ藏 o’⑦ ⑰’⑦ 前 o’6}③⑦ 書=’⑦◎’◎◎ ◎ () ◎ζ)ζ)◎◎ 一一一一一一一一パー一一一縦∼納◆、棚引州榊州 (出所)中国統計年鑑2009により作成。左目盛は所得、右目盛は倍率である。. 14. り鈍榊.
(23) 都市・農村間格差は、アンケート調査などのミクロデータからも確認できる。筆者が行. った吉林省の農村部と都市部住民に対する調査5によれば、都市部1人当たり賃金所得は 20889元で、農村部一人当たり純所得は8835元で、その格差は2.4倍である。中国統計年 鑑によると、同じ時期の吉林省の都市部1人当たり可処分所得と農村部一人当たり純所得 は、それぞれ12829元と4933元で、アンケート調査データより所得は低いが、その格差も. 2.6倍に達している。さらに、農村部1人当たり純所得の中、出稼ぎ所得が全体の約7割 を占めるため、出稼ぎ所得がない家庭の場合、その格差は更に大きい(表1−2)。. 表1−2都市・農村間所得格差(ミクロデータ) 都市・農村別. 所得平均. 最大値. 最小値. 最大値/最小値. 都市部1人当たり賃金所得6(2009年). 20889元. 180000元. 3600元. 50.O. 農村部1人当たり純所得(2008年). 8835元. 40000元. 875元. 45.7. i3234元). i10000元). i250元). i40.O). 都市・農村間格差17(倍率). 2.4. 4,5. 4,1. 一一. s市・農村問格差28(倍率). U.5. P8.O. P4.4. iそのうち、1人当たり純農業所得). (出所)都市部1人当たり賃金所得は筆者の2009年のアンケート調査に基づいて作成。農村部1人当た り純所得と純農業所得は筆者の2008年のアンケート調査に基づいて作成。. 中国政府も都市・農村間格差問題の重要性を認識し、「三農問題」9を重要な政策課題と. 位置づけた。「三農問題」を解決するため、政府は、2006年から西部地域農村の9年制義 務教育段階の学費・雑費を全額免除し、その政策を2007年から中部地域と東部地域の農村. に対しても実施した。また、2006年から中国で2600年間にわたって課せられている農業 税を廃止した。これらの政策によって、相対的に農村の貧困も緩和されると期待される。. しかし、都市と農村を分離する戸籍制度の改革を先送りにしたことや医療・年金など社 会保障の農村普及率が低いことから、都市・農村間格差はいまだに大きな中国所得格差を もたらしている最も重要な要因であると言える。. 1−1−3. 地域間所得格差. 中国政府は、1986年から正式に中国の国土を東部、中部、西部という三大経済地域に分 けた。東部地域は、北京、、上二海、天津など11省・市であり、中部地域は、内モンゴル、吉. 15.
(24) 林、広西など10省・自治区であり、西部地域は、四川、チベット、新彊など9省・白治区. である。1997年には、新しくできた重慶市(直轄市)を西部地域に入れ、西部地域はlO 省・市・自治区となった。2000年から、西部地域は、「西部大開発」を契機に、もともと 中部地域である内モンゴル自治区と広西チワン族自治区も含めて、12の省・市・自治区と. なった。さらに、2003年の「東北振興」戦略を契機に、東部地域であった遼寧省と中部地 域であった吉林省、黒竜江省が東北地域となって、経済発展地域が三大地域から四大地域 となっている。計画経済の下、均衡発展戦略が実施され、財政投資は各地域に平等に行わ. れた。しかし、改革開放以降、中国政府が「先宙論」により不均衡発展戦略を選択し、資 本、技術、人材を東部地域に向け、沿海部には優遇政策を実施した。その結果、東部地域 は優先的発展の恩恵を受けて先進地域となり、中国の高度経済成長の牽引車としての役割 を果たしてきた一方で、他の地域との経済格差も拡大してきた(酵他2008)。. 図1−2四大地域の都市部1人当たり可処分所得格差の推移. へ!ノノ\ ∵1舳棚用一崖、山、一二携圭芸誰 200020012002200:32004200う200620072008. (出所)中国統計年鑑2001∼2009により作成。. 図1−2によると、東部地域と東北地域、東部地域と中部地域の所得格差は、2003年の 「東北振興」と2005年の「中部台頭」 (中国語では「中部幅起」)戦略実施以降、緩やか. な減少傾向を示しているが、東部地域とその他3地域平均との倍率は依然として約1.5倍 の高い水準である。東部地域と西部地域の所得格差は、1999年の「西部大開発」戦略の実 施以前より拡大傾向を示し、2007年には約1.7倍まで上昇した。2008年には、中部地域、 16.
(25) 西部地域、東北地域ともに、東部地域との格差がやや減少したが、依然として格差は大き い。. 図1−3四大地域の農村部1人当たり純所得格差の推移 1,90. 榊(}0. 五、流. 国東都地域. 6帆}O 1−8{). 1、流. 調調中雛鍾域. 1.70. 40(,O. ユ、粥 :き帆}0. 鱗西都雄域. 五、6⑰. 8■糞北地域. 2(}00. 1.測. 舳㈱舳東部雄域とその催;書. 1(}00. 1、揃. 0. 多惣域平均との侶率. 1,蜘. 2000201)12002200:32004200520搬620◎τ:二…Ol)8. (出所)図1−2に同じ。. 改革開放初期には、四大地域の農村部1人当たり純所得はどの地域も低く、その差も大. きくなかった。1986年には、東部地域の585元に対し、西部地域は314元で、東部地域の 54%であった。2000年には、東部地域の3588元に対し、西部地域は1632元で、東部地域 の45%まで低下し、格差が拡大したが、2008年には53%で、格差は縮小傾向を示した。図1 −3によると、東部地域とその他3地域の平均との倍率は、「西部大開発」、 「東北振興」. と「中部台頭」戦略実施以降、緩やかな低下傾向があった。特に、2008年の東北地域との 倍率は約1.3倍で、 「東北振興」戦略実施以降、格差の縮小傾向が明らかになった。しか. し、西部地域との倍率は依然として約2倍の高い水準である。図1−2と図1−3によると、. 2000∼2008年の間に地域格差は、都市部1人当たり可処分所得は地域発展戦略実施以降、 拡大傾向を示す一方で、農村部1人当たり純所得は縮小傾向を示した。. 地域間格差は、計画経済時代にはどの地域も所得が低く、その格差も比較的小さかった が、市場化改革以降所得格差は拡大した。地域間格差の主な要因は、地域発展の差別的政 策と所得分配の不平等であるが、それ以外に、地理条件、インフラ整備の程度などが影響 したと考えられる。制度・政策面の要因を除いても、東部地域と他の地域との地理的条件、 17.
(26) インフラ整備、資本、人材の差は依然として大きく、格差の縮小にはかなりの時間がかか ると思われる。しかし、経済発展が遅れている西部地域と東北地域は国境を接する辺境地 域であると同時に,多数の少数民族が居住している地域でもある。特に、西部地域は全国 の少数民族人口の8割以上が集中しており,少数民族の生活水準を向上させることは,社 会的安定維持のために不可欠である。. 1−1−4. 民族間所得格差. 地域問格差が拡大する…一方、東部地域に住む漢族と経済発展が遅れている中西部と東北. 地域に住む少数民族の間の経済格差も拡大している。同じ地域内でも、民族間の所得格差 は拡大してきた。例えば、同じ地域内である新彊ウイグル自治区では、石油、天然ガスな ど資源関係の大企業で働く漢族と農民が多数を占める少数民族との間の経済格差が深刻で ある。東部沿海地域と西部少数民族地域との経済格差が広がってきたことを背景に、1999 年に「西部大開発」戦略が実施され、西部地域への政府資金によるインフラ整備をはじめ、. 内陸部、特に経済発展が遅れている西部地域への補助金給付を大きく増やした。しかし、. 梶谷・星野(2009)の実証研究によれば、近年における西部地域に対する補助金額の増加 は必ずしも少数民族への「優遇」政策とはなっていない。また、2009年の新彊ウイグル白. 治区での暴動発生を受け、中国政府は少数民族地区での経済格差解消が社会安定につなが ると判断しており、同自治区などに経済特区と同じような優遇政策を導入することを検討 しており、寧夏回族白治区では「内陸開放型経済区」の設置が見込まれている。東部沿海. 地域との格差解消をめざして進められてきた「西部大開発」の中期計画は2010年に終了す るため、政府の新計画では、上海など沿海部から内陸部への産業移転などの政策も検討さ. れている。しかし、少数民族への「優遇」政策より地域政策を中心として検討し、少数民 族経済発展への具体的措置は示されていない。. 今までの多くの研究は、都市・農村間、地域間の格差問題が中心であり、民族問、特に 漢族と少数民族の間の所得格差に関する研究は少ない。また、中国統計年鑑などマクロデ ータによる分析は、あくまで民族地域とそれ以外の地域との格差分析であり、同じ地域で ある民族間の格差については分析できなかった。吉林省の漢族と少数民族の間あるいは少 数民族の中で、朝鮮族または満州族とその他少数民族の間でも、所得格差問題が存在して いる(表1−5を参照)。朝鮮族と満州族の場合、中国の55少数民族の中、都市化水準が高 く、教育水準モ)高いため、漢族とのさまざまな格差が一一番小さいと言える。ただし、吉林 18.
(27) 省の朝鮮族は、韓国の存在がない場合、中国語を話す能力や個人のネットワーク資本を含 む社会資本の低さから、他の少数民族と同じように中国労働市場の中で非常に弱い立場で ある。出稼ぎ所得によって一時的に朝鮮族の1人当たり農家所得が高く見えるが、長期的 にみると、農村部では漢族との所得格差が拡大している。. 本章では、まず、マクロデータを使って、省レベルと「地区級市」10レベルから民族自. 治地域と非民族自治地域の経済格差を検討する。次は、ミクロデータを利用して、同じ地 域である民族間格差を分析することで、漢族と少数民族の所得格差を明らかにする。. 表1−3東部沿海地域と西部少数民族地域の所得格差 省レベル. 都市部1人当たり可処分所得(元). 農村部1人当たり純所得(元). 1995年. 2000年. 2005年. 2008年. 1995年. 2000年. 2005年. 2008年. 上海. 7192. l1718. 18645. 26675. 4246. 5596. 8248. l1440. 北京. 6235. 10350. 17653. 24725. 3224. 4605. 7346. 10662. 広東. 7439. 9762. 14770. 19733. 2699. 3655. 4691. 6400. 内モンゴル. 2863. 5129. 9137. 14433. 1208. 2038. 2989. 4656. チベツト. ■. 7426. 9431. 12482. 1200. 1331. 2078. 3176. 寧夏. 3383. 4912. 8094. 12932. 999. 1724. 2509. 3681. 新彊. 4163. 5645. 7990. 11432. 1137. 1618. 2482. 3503. 吉林11. 3175. 4810. 8691. 12830. 1610. 2023. 3264. 4933. 全国. 4283. 6280. 10493. 15781. 1578. 2253. 3255. 4761. (出所)申国統計年鑑1996.2001.2006.2009より筆者が作成。. 中国統計年鑑により,都市部!人当たり可処分所得の推移をみると,1995年から2008年 までの13年間、西部地域の少数民族自治区の平均は、全国の平均より低く、上海,北京な. どの東部沿海地域平均の2分の1にも達していない。表1−3から、1995年と2008年の上海 市と新彊ウイグル白治区の都市部1人当たり可処分所得を比較すると,所得格差は1.7倍か ら2.3倍までに拡大した。都市部1人当たり可処分所得は、内モンゴルを除いて、その他少. 数民族自治区と上海、北京など東部沿海地域との所得格差は拡大してきた。農村部1人当 たり純所得をみると、上海市と新彊ウイグル白治区の所得格差は1995年の3.7倍から2008年. 19.
(28) の3.3倍に縮小したが、その格差は部市部のそれより大きい。1995年から2008年の13年間、. 特に「西部大開発」実施以降、新彊など西部少数民族自治区は、上海など東部沿海地域と. の所得格差が縮小傾向であったが、所得が最も高い地域である上海の3分の1にも達してい ない。西部少数民族自治区の都市部1人当たり可処分所得と農村部1人当たり純所得は、 全国平均より低く、依然として所得が最も低い地域となった。 「西部大開発」の大きな目. 標は,東部との地域格差を縮小することであった。しかし,上海、北京など東部沿海地域 と西部地域の少数民族自治区の所得格差は依然として大きい(表1−3)。このように,「西 部大開発」は,これまでのところは,地域間の格差の縮小にはあまり貢献していないが,. 中国の経済成長が従来の東高西低型から西高東低型に転じており,今後は地域間の格差が 縮小に向かう可能性が出てきた(王雷軒 2010)。. 表1−4 吉林省の民族自治地区(地紙市)と非民族自治地区の所得格差(2009年) 地紙市別. 都市部1人当たり可処分所. ユ人当たりGDP. @ GDP(元). 得. 可処分所得(元). 順位. 農村部1人当たり純所得. 純所得(元). 順位. 順位. 長春市. 38920. 1. 16277. 1. 5685. 2. 吉林市. 33157. 2. 15540. 3. 5650. 3. 四平市. 20309. 8. 15100. 7. 5550. 6. 遼源市. 27464. 5. 15980. 2. 5586. 5. 通化市. 22326. 6. 15500. 4. 5730. 1. 白山市. 28462. 4. 15415. 6. 5588. 4. 松原市. 31035. 3. 15500. 4. 5241. 7. 白城市. 17574. 9. 14800. 8. 3490. 9. 延辺朝鮮族自治州. 20548. 7. 13813. 9. 5177. 8. 非民族自治地区平均12. 27405. 15514. ■. ■. 5315. (出所)「吉林統計年鑑2010」を用いて作成。. 表1−4によると、民族自治地区である延辺朝鮮族自治州の2009年の1人当たりGDPは、. 9地区の中7位で、1人当たりGDPが最も高い長春市の53%にしか達していない。また、延. 20. 一.
(29) 辺朝鮮族自治州の20548元に対して非民族自治地区平均は27405元で、その差は約7000 元である。それは、 「東北振興」戦略実施以前の2002年の1人当たりGDPの差(1271元). と比べて、拡大した。さらに、2009年の都市部1人当たり可処分所得と農村部1人当たり 純所得をみると、延辺朝鮮族自治州は、それぞれ9位と8位で、最も低い所得である。都. 市部1人当たり所得は、2002年と比べて、非民族自治地区のほうが約3500元多く、民族 白治地区との格差は拡大傾向がある。農村部所得格差は、あまり拡大していないが、民族 白治地区の所得は、依然として非民族自治地区平均より低く、所得が最も低い地域となっ た。したがって、 「西部大開発」と同じように、 「東北振興」戦略を実施以降、吉林省の. GDPをはじめ、1人当たりGDPとL人当たり所得は増えているが、省内の民族白治地区と 非民族自治地区の経済格差は、依然として大きく、しかも拡大傾向があると考えられる。. 表1−5吉林省の民族間経済格差(ミクロデータ) 民族別. 2009年の都市部毎月. @平均賃金(元). 2007年の農村部所得(元) ユ人当たり純所得. ユ人当たり農業所得. ユ人当たり出稼ぎ所. @. 得. 漢族. 1689. 6270. 2892. 3378. 朝鮮族. 1809. 11787. 1990. 9797. 満州族. 1767. 一. ■. 一. 一. ’. 一. その他民族. 1546. ■. ■. ’. ’. 一. 一. 平均. 1703. 9028. 2441. 6588. (出所)都市部平均賃金は筆者の2009年のアンケート調査に基づいて作成。農村部!人当たり純所得、. 1人当たり農業所得とユ人当たり出稼ぎ所得は、筆者の2008年のアンケート調査に基づいて作成。. 表1−5によると、民族間格差については、都市部の平均賃金からはあまり格差は見えな いが、農村部所得からは大きな差が見られる。たとえば、各民族別にみると、朝鮮族と満 州族の平均賃金が若干高く見えるが、それは、民族間格差より産業間、職種間格差あるい は正規・非正規、学歴による格差が主な要因である。しかし、農村部!人当たり所得は、. 漢族より朝鮮族の所得が約5000元高く、その差は大きい。吉林省の場合、農村部の所得の 中、出稼ぎ所得の割合が高く、純農業所得を上回っている。特に、朝鮮族の出稼ぎ所得は、. 21.
(30) 農家の所得の8割であり、漢族の約3倍となる。朝鮮族の場合、農村部1人当たり所得が 漢族より高いにもかかわらず、純農業所得はそれより低い。吉林省の朝鮮族の農業所得の 低さは、出稼ぎなどによる農村労働力不足がその要因である。労働力不足は、農業経営の 困難さをもたらし、耕作放棄農家の出現や村内・村外農家への委託耕作による農地の集中 化という現象が起きている。したがって、朝鮮族は、まず、出稼ぎ、すなわち出稼ぎによ る送金がない場合、漢族より所得が低い。また、中国の55少数民族の中、朝鮮族の都市化 水準は高く13、教育水準も高いため、漢族とのさまざまな格差が一番小さいと言える。さ らに、韓国をはじめ、日本、アメリカなど先進国と地理的、歴史的、社会的(コリアン・ ネットワークの形成)に密接な関係をもっているため、他の民族と比べて、海外移動の割 合が高い。ミクロデータによると、漢族とすべての少数民族の間に所得格差があると結論. することは難しい。しかし、全体的に漢族と少数民族の間、特に東部地域の漢族と西部地 域の少数民族の間に所得格差を含め、教育格差、住居格差など民族間格差が存在すること は事実である。. 民族間格差は、地域間格差と同じように、計画経済時代には比較的小さかったが、市場. 化改革以降拡大した。民族間格差の主な要因は、地域発展の差別的政策と所得分配の不平 等など制度・政策面の要因もあるが、それ以外に、自然地理条件の悪さなどによる開発の 遅れと市場化意識の薄さなど社会意識問題も重要な要因であると考えられる。. 1−1−5. 都市内、農村内、民族内の所得格差. 都市・農村間、地域問、民族間の格差が深刻化する一方で、都市内、農村内、民族内の 格差も拡大している。中国の急速な経済成長は、所得の不平等の拡大を引き起こしたが、 その問題は、すでに改革開放以前から存在した。多くの研究者は、今の所得の不平等問題 は、都市・農村間不平等より都市内・農村内の不平等が深刻であると認識している14。. 毛沢東時代では、集団的に農業に従事し、その集団に対する貢献度によって、所得が分 配されたが、同じ村の農民の所得は大体同じであった。さらに、無料の医療保障と義務教 育を受け、その格差は小さかった。都市部では、失業率が低く、多くの人は仕事があって、. 賃金と労働保障を受け取って、農村と同じように、医療保障と義務教育を受けた。都市部 労働者の所得は基本的に同じで、地域間の格差は小さかった。Benjamin(2005)は、中国 の最大の不平等は、都市・農村問より都市内、農村内の所得格差であると指摘した。たと えば、中国の析江省など東部沿海地域の農民は非常に豊かで、中西部地域の農民は非常に. 22.
(31) 貧しい。都市内の所得格差は、もっと深刻であり、同じ町あるいは同じ道に住んでいる家 庭の所得には大きな差がある。. 表1−6吉林省の民族内・農村内・都市内の経済格差(ミクロデータ) 民族別. 農村部!人当たり所得(元). 最大値. 最小値. 都市部毎月賃金(元). 最大値. 最大値/最小値. 最小値. 最大値/最小値. 漢族. 20000. 875. 23. 8000. 300. 27. 朝鮮族. 40000. 1000. 40. 15000. 300. 50. 満州族. ■. ■. ’. 5000. 500. 10. 一. 】. 3500. 550. 6. その他民族. ■. (出所)表1−5に同じ。. 表1−6によると、農村内の格差より都市内格差がより深刻で、民族間においてもその格 差が異なる。特に、朝鮮族の場合、農村内の1人当たり所得の最大・最小値の差は40倍に 達しており、都市内の毎月賃金差はさらに拡大して50倍になっている。それは、第6章と 第7章で議論する民族別労働力移動の決定要因の」つであると考えられる。吉林省では、. 農村内・都市内所得格差だけではなく、民族内格差も大きく、出稼ぎ(特に海外への出稼 ぎ)の有無によってその格差も拡大する。農村では、出稼ぎ所得によって、都市との格差 が一定範囲で縮小したが、逆に農村内の格差は拡大した。都市では、出稼ぎの所得が都市L 内の所得格差の拡大の主な要因ではないが、農村と同じように都市内の格差を拡大させる 役割を果たしている。. 今までの研究で、都市・農村間、地域間、民族間所得格差が拡大したのであれば、都市 内、農村内、民族内の格差も拡大してきたと考えられる。特に、90年代以降、その格差に よって、農村から都市へ、都市から都市への労働力移動が一層加速化してきた。もちろん、. 民族間あるいは民族内の経済格差などによって、民族別労働力移動も大きく変わってきた。. 民族別労働力移動は、規模だけではなく、移動パターンや移動の決定要因なども民族別に 異なる傾向を示している。. 1−2. 経済格差と労働力移動. 23.
(32) 改革開放以降、中国政府が「先覚論」と呼ばれる不均衡発腿戦略を選択したため、郁巾・ 農村間、地域問の経済格差が拡大してきた。中国の農村部住民と都市部住民の所得格差は,. 改革開放以前から存在したが、その後、拡大を続けて、2007年には、都市部一人当たりの 可処分所得13786元に対して、農村部一人当たり純所得は4140元であり,その格差は著しい。. 農村から都市への労働力移動は、所得格差が存在するにもかかわらず、戸籍制度など都市 と農村の「二元的経済社会構造」が形成されているため、自由に労働力移動ができなかっ た。改革開放を実施して以来、特に90年代以降、農業の労働需要は全く伸びなくなり,人 口増加と労働力率の上昇によって増大した労働力人口を農業は吸収できなくなった。農業 が吸収できない労働力人口の余剰部分は,地元の郷鎮企業と地域を越えた労働力の移動に 向かったが,年を追うごとに後者の重要性が増している(丸川、2002)。こうして農業か ら非農業に労働力が流出し,さらに経済的後進地域から先進地域への労働力移動が顕著に なった。2000年の人口センサスによると、農村からの流出人口は8840万人で、都市からの 流出人口3267万人を大幅に上回って、人口流出全体の7割を占めている。人口移動の中、労 働力移動の割合は77%で、労働移動者数が9300万人にも及、Sく。その割合をもとに計算すると、. 2005年未まで、人口移動が1億4千万人であることから、労働力移動人口が1億を超えている。 さらに、改革開放以降、都市・農村問所得格差とともに、地域間所得格差も拡大を続け、. 1999年の「西部大開発」、2003年の「東北振興」と2005年の「中部台頭」(中国訴では「中. 部脳起」)戦略実施以降、緩やかな減少傾向を示しているが、東部地域とその他3地域(西. 部地域、中部地域、東北地域をいう)との経済格差は依然として大きい。特に、東部地域 と西部地域の所得格差は、1999年の「西部大開発」戦略の実施以前より拡大傾向を示し、. 2007年には約1.7倍まで上昇した。それに伴って、地域間労働力移動も西部、中部、東北 地域から東部地域への一極集中が進んだ。たとえば、2000年の人口センサス資料によると、 移動人口の流出元として全体に占める割合は、中部地域の55.6%、西部地域の29.8%、東部. 地域の14.6%の順になっている。1990年と比べて、人口流出に占める割合は、西部地域と. 東部地域がともに下がる一方、中部地域は約13ポイントが上がって、人口流出の主要な地 域となっている。移動人口の流入先として全体に占める割合は、東部地域が71.7%、中部 地域が16.2%、西部地域が12.1%で、東部地域への流入は、1990年の46.2%より大幅に急増 した。. 四大地域の中、東北地域(遼寧、吉林、黒竜江など3省を言う)は、歴史的にみると、 70年代末まで、人口移動の純愛け入れ地域であった。しかし、中岡の経済体制改革以後、 24.
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