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音楽教育の基礎となる音律についての一考察

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Academic year: 2021

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(1)Title. 音楽教育の基礎となる音律についての一考察. Author(s). 三浦, 弘. Citation. 北海道教育大学紀要. 第一部. C, 教育科学編, 44(1): 31-42. Issue Date. 1993-07. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/5275. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) . 北海道教育大学紀要 (第1部C ) 第44巻 第1号 i i i l Sec ty ofEducat t 44 I Journalof Hokkaido Univers on I C)Vo on( ‐ ‐ , No. 平成5年7月 Jul y ,1993. 音楽教育の基礎となる音律についての-考察. 浦. 弘. は じ め に. ピアノがヨーロッ パより我が国に何時入っ てきたかについては, はっ きりとした記録は残されて いないが, 少なくとも明治初期と推察される. 学校音楽教育は187 4(明治7) 年に伊沢修二が愛知 県師範学校長の職に在っ た時, 初めて唱歌, 遊戯科を設けたのが始まり であり, ピアノ教育は5年 1 { }以 来 今日まで西洋音楽教育は多く の成 後の1 879(明治1 2 ) 年雅楽課に於いて実施されている. 果を得たが併し, 日本人の演奏する音楽, 特にピアノ音楽は, ヨーロ ッ パの演奏家の音楽と違っ て 何か心満たされない音楽の響きを感 じる. 本 来 日本の音楽教育は伝統文化 である邦楽を基に教え るべきと考えるが, 明治の文明開化の波にのまれ, 有機的に1500年以上も続いた高い芸術を有して いた邦楽は, 教育に西洋音楽を取り入れられてから教育からはみ出され, 音楽といえば我々はあた かも西洋音楽を古来から受け継い でいる音楽であるかの如く, ごく当たり前にに受け入れている . それでは現在の学校音楽教育 は西洋音楽が基本としている音楽の三要素, 即ちリ ズム メロデー , , ハーモニーのそれぞれが音楽的に生きた響きとなっ て児童・生徒らの心に何時までも残る音楽教育 と な っ て い る か どう か.. 今日までの我が国の学校音楽教育を振り返っ て見た時, 表面的な音楽を楽譜から教える事に終始 し, 真に心を開く音楽教育の在り方が試行錯 誤のうちに経過して来たの ではなかろうか . 我が国の音楽教育で現在使用されている ピアノの調律は全てと言っ てよい程「平均律音律」によっ て調律されている‐ 併しこの 「平均律音律」 調律法はヨーロ ッ パ で確立した直後に日本へ西洋音楽 が導入されたため, この音律の調律法が唯一無二のも のと思われて来たのである 我が国の音楽教 . 育が西洋音楽を中心に教育しているのであれば, 教師は平均律音律以外に数多くの音律のあること を理解すると共に, 少なくとも平均律音律より美しい響きの古典音律で指導すべき である ピアノ . 調律を古典音律にしたならば,音楽的に何が欠落しているか,児童・生徒の求めているのは何か等々 , より充実した音楽教育を生 み出す 「きっ かけ」 になるものと考える . 人間と音楽の長い付き合いの中 で見い出した微妙且つ個性的な響きの 「音律」 が, 如何に重要な 意義を有するかを解明することと, 音楽の本質に迫る次なる音楽教育の向上のため 音律の歴史的 , 経過と日本に於ける今後の音楽教育に必要とされる事は何かについて述べることが本論文の主題 で ある.. 1. 音律の歴史 日本ではピアノの調律といえば 「平均律音律」 以外にないと思っ ている方々 が多い 中にはオー . 31.

(3) . 三. 浦. 弘. ケストラの演奏 であれ, 音楽で使われる音律の全てが 「平均律音律」 となっ ていると考えている人 さえいる. それはわが国のこれまでの学校音楽教育の指導に大きな誤りがあっ たというより, 種々 な音律を作っ たヨーロッ パ でさえ今日, 尚 「ピアノ調律は平均律音律でするもの」 と誤っ た理解を している位であるから致し方ないことと思う. 併しヨーロッ パと日本のピアノを実際に弾き比べた 時, 長三和音, 短三和音のみならず, 曲を演奏した時, ヨーロッ パのピアノは一瞬, 調律が間違っ て い る の では な い か と さ え 思う程の戸惑いを覚える. 即ち日本の平均律調律は正確な平均律音律の 調律であるが, ヨーロッ パの平均律調律と言われている実際の響きの中身は, 古典音律の一つであ ることに気付かされる. 音律は今より約26 00年前に作られているが, 特に西暦1000年代, 鍵盤楽器に使われた音律は, 2 ( } 種々 な音律が考え出されている. 音律の歴史の発達過程を表で示す. B.C 6 ピタ ゴ ラ ス 音 律 4 ア リ ス トセ ク ノ ス, 純 正 音 律 A.D 6 、グレ ゴリ ア 讃 歌. 7‘ドレミ唱法 (ヨハネ讃歌) 8 多声音楽の発生, 文字譜, 3度の登場 1O Bb の鍵盤 ‐ 11 4 線 譜 13 12 音 鍵 盤 15 ”バ ル トロ メ オ ・ ラ ミ ス, 純 正 和 音 16. ピエ ト ロ ・ ア ロ ン, ミ ー ン ・ トー ン 音 律. ▼ 17 メルセンヌ 平均律理論を発表 , ヴェ ル グマイスター調律法発表 18 バッハ, 平均律 (?) を採用 (対位法) ラモー機能和声論発表 キルンベ ルガー調律法発表 1 9 ブロー ドウッ ド社平均律オルガン発売 ノ 2音音階 20 ドヴィ ッ シー, 6音音階. シェーンベ ル 1. 1 1.、各 音 律 の 特 徴. 1. 【ピタ ゴラス音律】 ) はギリシャに生まれた宗教家, 哲学者, 数学者であるが, 全ての音 2~497 ピタ ゴラス (B .C .58 を完全五度音程から導き出し, ピタ ゴラス音律といわれる最初の音 楽理論をつく っ た. ピタ ゴラス音律の3度は純正3度より24セント多いため和声的には使用 出来ないが,5度が純正 2セント) であるため旋律的には素晴らしいメロデイーを聴かせてく れる. ピタ ゴラス音律はギ ( 70 リシャ に定着し, そのままの音律でローマ教会に伝えられ, 後の グレ ゴリア聖歌の音律となり, 更 に吟遊詩人の音律となり, 中世の音楽を形成した‐ ギリシャ 人は数学に優れていたが, ローマの人々 23年, ミーン・トーン音律が出現するまでの約2000年の間, 無 は数学を苦手としたため, 西暦15 条件に続いた調律法である. 即ち音律は数学, 物理の発達と共に進歩, 発展をしてきたと考えるべ きである. 32.

(4) . 音楽教育の基礎となる音律についての一考察. 平均律音律とピタ ゴラス音律のセント値を比較する.. ◎平均律音律3. 6ト 0. 200. ー側 400 500. 700. 900. 1100. 1200. ◎ピタ ゴラス音律 (楽譜上の数字は平均律との偏差) 0. 十4. +8. 204 .. 408. サ 0. -2. +2. +6. 702. 906. 十10. 0. 9 o 498. 1110. 1200. ☆ セ ン トに つ いて. 3度・5度という音程の表わし方は半音, 全音, オクター ブ等には適切な対数目盛ではあるが, 微妙な音程を論ずるには余りに大雑把過 ぎるため, 2音間の振動数比という複雑な数値を対数 を利 用したセント法により, 音程の幅が一目でわかるように音程の単位セントを考案したのがイ ギリス の 音 響 学 者 ア レ キ サ ン ダー・ジ ョ ン・エ リ ス (1814~1890 ) で あ る‐ 1 オ ク タ ー ヴ は 対 数 を 使 用 し,. 1 2等分すると平均律半音になる. 平均律半音を更に対数を用いて100等分したものを1セントとし た. つ ま り 半 音 は 100 セ ン ト, オ ク タ ー ヴ は 1200 セ ン ト と な る.. アレキサンダー・ジョ ン・エリスは著書 「諸民族の音階」 の中で, 平均律を基準に他民族の音律 を数値によっ て明らかにし, 今日の民族音楽研究への道を開いた功績者で もある. このセント値に より平均律の長3度と後で述べ るミーン・トーン音律の長3度の違いを, 明解に知ることが できた . ピタ ゴラス音律の特徴的なことは, 音名の 「E・F」 「H・C」 の半音が平均律の1 00セントではな く,90セントと狭くなっ て導音, 且つ旋律的役割を持っ ている‐ この90セントの導音を持つ ピタ ゴ ラス音律が, 日本伝統音楽の音律と, 紀元前7世紀頃, 中国で作られた 「三分損益法」 の音律と全 く同一 であることに驚かされる. ギリシャ と日本は遠く離れ, しかも260 0年前に作られた音階が同 一 であるということは, 人間に内在する音楽的感覚は基本的には同じではないのか. 民族的な音楽, 又その地の音楽特有なものは, 次なる技術, 習慣, 思考の微妙な相違によっ て歴史的に徐々に違っ た形に創られていっ たのではないかと考えられる. ピタ ゴラス音律の欠点として5度圏が閉じないことである. 5度圏を調べて見ると, 〔Es- B - F- C 十 G 一 D - A - E - H 一Fi 〕 ヴォ ル フ Gi s-Ci s-Gi s s-Es と な っ て い る‐. 各音間は7 02セントの純正5度のため, 平均律音律では閉じる 5 度 圏 も, Cdur 又 は Fdur か ら ス タートし次々と転調 したと仮定した場合, Gi s-Es間の5度の幅は, 純正5度より24セント狭く なっ て, ビートの数に-記号の負号がつくこととなる. それでは長3度はどうか. 純正長3度3 86セント, 平均律の長3度は400セント, ピタ ゴラス音 律の長3度は408セントで, 純正長3度に比べて,十22セント広くなっ ている‐ 鍵盤楽器の音律は何 であれ, ビートの少ない美しい響き で‐曲を終えようとするならば, 最小限 の転調にする以外に方法がない. 転調が少ない大曲となっ ては, 単調で変化のない曲となっ てしま う. その点平均律音律 では転調が容易 であるが, 転調先の色彩感が単調となり, 古典派, ロマン派 時代の作品の音楽も無機質な内容になり易い. 鍵盤楽器ではいずれの調であれ長所と欠点があると 33.

(5) . 三 浦. 弘. いう こ と に な る.. 転調しても色彩 感があっ て機能的, 音楽的な演奏 可能な 「楽器」 は何か. それは弦楽器, 管楽器 である.特に弦楽器の独奏とピタ ゴラス音律は不可分の仲にある.もしもヴァイオリンやトランペッ ト独奏に平均音律で調律 したピアノの伴奏 であっ ては, しっくり 合わない音楽となるのは当然であ り, 高度な技術と音楽性をもっ た演奏家程, 違和感を感じる. その解決策としては, 伴奏のピアノ を独奏楽器音より弱く弾くことである. 又ピアノ伴奏により ヴァイオリン独奏曲を演奏する時には, どの様な音律のピアノであっ ても先 ずA線より調弦し, 次にD・G・E線へと調弦するが, D・G・E線は絶対ピアノに合わせてはならな 702セント)上行しており, 平均律音律の鍵盤楽器で い. なぜならピタ ゴラス音律は純正5度ずつ( は半音が全て700セントとしているため, 開放弦の響きが濁っ てしまう. そこでG線では-4セン トの差がつくた め, 演奏者によっ て はA線をピアノのA音より少々 高め (1~2 セント高く) に調 弦し, 純正5度を維持する. 併し弦楽器だけで合奏する 時は, そのような気配りの 必要はなく, 完 全なピッチと完全な純正5 度を響かせるべきである. 又ヴァイオリンの基本練習と して, ピタ ゴラス音律による旋律的な音律と, 次に述べ る純正音律 による和声的な音律の両方を練習し, 常に対応することが大切 である. 合奏の際ヴァイオリンのよ うな作音楽器は, ソロの時には「ピタ ゴラス音律」 を使用し, 合奏 で速度の遅い曲の場合には, 「純 正音律」 を使用する. 2. 【純正音律】 私達は 「純正音律」 と 「純正三和音」 の言葉の意 味と使い方を理解しないままに純正音律に現 れ る三和音, 全てが純正であると 思いがちである. 「純正音律」 と 「純正三和音」 は作られた時代も 内 C )が考え 354 容も違うことに注意すべき である. 「純正音律」は音楽理論家のアリス トテクノス(B. . 出した音律である. 初めピタ ゴラス派の学者に師事した後, アリストテレスに学ぶ. 彼の音楽論は, ピタ ゴラス派が 「数一 に基づいて神 秘的な解明を試みたのに対し, アリストテクノスは聴覚にもと づき理論的な説明を加えたことに特徴がある. 「純正三和音」は次の項で述べる事として 先ず純正音律に含まれる 3度と5度は純正音程を持っ , ているが, 全てが純正音程となっ ている訳ではない.. 4 ◎純正音律 (楽譜上の数字は平均律との偏差) 0 十. 十1 十”4. -14. 一2. 十2. -16. - ‐12. 0 ” U. べ … う. y. 0. 200. ] - I I. - 112 386. 1 2 l 498. 702. 884. 1088. 1200. 上記の音階7音の中で,5度1個と短3度1個が22セントも狭いためシン トニッ クコンマ(不純) となっ て使用 できない. D-Aの-22セントを他の4つの5度に分割したならば, 今我々 が一般的 に使用 している和声音へと展開したであろうに,D-Aという1つの5度に全部負担させたこと が, 使いものにならない音律の原因となっ ている. 他C-Eの3度は純正. 併しD-Fの3度はビートが多く不純となって使用が出来ない. 純正音程の2音間の数値は, 次の通りである. 0 長 2度:204 (セン・ト) 減 5度:61 短 34. 6 3度:31. 完全4度:7 02.

(6) . 音楽教育の基礎となる音律についての一考察 長. 3 度 :386. 短. 6 度 :814. 完全4度:498. 長. 6 度 :884. 増. 長. 7 度 :1088. 4度:590. 純正音律が上記の数値に調律出来れば何ら問題ないのであるが,1 2音で構成される鍵盤楽器では 全ての調を純正のセントとするには無理である. 純正音律も多くの他の音律と並 ぶ一つの典型的な 音律にす ぎず, 最良のものではない. 5 ) C音を基準に各音律のセント値を比較する.{. ◎平均律音律半音階 700 700. 今 村十 一 - 100 ‐ 100. 100. -]. 100. 100. L i1 II IL I 100 100 100 100 100. ◎ピタ ゴラス音律半音階. 0. 114. 90 204 318 294 408. 612. ピタ ゴラスのセント数値を見るとC#とDb の場合, 平均律ではセント値がC弁とD b 共に100 セントで異名同音であるが, ピタ ゴラス音律, 純正音律 では異名異音となる‐ 例としてピタ ゴラス 音律のC#は, 平均律のC#より1 4セント高く, D bは10セント低くなっ ている. 純正音律も同 じく異名 異音となっ ている. このことは#系, b系共に, 基準音以外の音は異なるセント値からで きていることを示す. 純正音律が音楽として生かさ れたのは, 約2000年以上経っ てからである. 即ち1400年代になっ て多声音楽の発達の時代となり, 純正和音が旋律と同等の価値を占め ることとなっ た. 3. 【純正和音】 純正音律から純正和音を導き出したのは,スペイン生まれのバルトロラミス・デ・バレーフア( 1 440 「 頃~14 91 ) である. 1482年に著した 実践音楽」 は, 純正3度を主要な和音として確立したもので ある. 純正3度の響きは当時の大聖堂建築様式が ゴシッ ク建築 だっ た事と大きな係わりがあっ た ‐ 高い天井と硬い音を吸収するステン ドグラス, パイ プオルガンの倍音を容易に5~6秒も反響させ る大聖堂では, 天井から音楽のシャワーを浴びている感じとなる. その様な中での パイ プオルガン の倍音は, 自然発生的に純正3度, 4 度, 5度の響きを創り出している. この響きは 「音楽のバイ ブル」 とも呼ぶべきものであり, ヨーロッ パの宗教, 芸術音楽発展の基となっ ている この倍音を . 実際にヨーロッ パの教会, 音楽ホール等で耳に した時, 今までの日本の音楽教育 は何を目指して教 育をしようとしているのかと深く考えさせら れてしまうのである‐. 35.

(7) . 三 浦. 弘. ◎平均律和音と純正和音の主和音のセント値 〔平均律和音〕 ハ長調. . 〔純正和音〕. ÷÷→ 一 ( 十2) ( ) 14 (一14 ). ハ短調. . . ÷÷→ (十16 ). ◎純正和音の各和音セント値. +2 一14 n. { +2 一14. +2 十1. +2 十・. 了. ‐. m. w. 十4. 8 +2. +2 ^ -14. n十2 . 受+ば , M , 一 . v. w. 囲. 十16. 工. ト,二第5音は十2セントである. 短 14セン′ この和音の特徴は, 長三和音の第3音は平均律より- ‐ ′- ● ・ ー ・ 、. ・ { r 三和音の第3音は平均律より十16セントづ 第5音は十2セント高い. 即ち純正和音は純正5度に, 3度のセントを如何に上下させるかがポイントである. 一般的には遅い音楽は, このセント値を基準として演奏する. 又, 上記の純正和音は作音楽器で ある弦楽器な どでは随時音程の微調整が容易であるため, 各自が持つ微妙な音楽性と, ソリステッ クな諸々の要素を加味しつつ演奏できるため, 鍵盤楽器とは異なる旋律的且つ高い純正音を得るこ とができる. 鍵盤楽器によっ てこのセント値の純正和音を得ようとしたならば, たとえ古典音律で あっ ても極く限られたある一部分 しか純正和音を得られない. 鍵盤楽器で不快なビートを出さず, これらの全和音を純正で出すことを望むならば, 1オクターヴに12音ではなく,69の鍵盤を必要と する計算になる. ルネッサンス時代, ピアノではなくオルガンでこの純正和音に挑戦した楽器が, 現在武蔵野音楽 大学の楽器博物館に展示されているが, このオルガンで演奏しようとするならば, 1オクター ヴ内 に鍵盤が余りに多過 ぎるため, 音楽を楽しむところではない‐ 日本では 「田中正平」 が, 昭和7年から昭和1 3年までの8年間に純正 調オルガンを5台製作した が, 平均音律が唯一無二と信じられていたためか, 後は途絶えたままとなっ ている. 弦楽器, 管楽器は純正和音でビートを処理出来るが, 鍵盤楽器類では完壁な音律でないため, 数々 の修正をしつつ多くの音律が考え出された‐ その一つに純正音律 ‐純正和音を基に鍵盤楽器への実 用化を見たのがミーン・トーン音律である. 4. 【ミーン・トーン音律】 00年 500年から17 ミー ン・トーン音律は, 1 523年にピエトロ・アロンが考え出した音律である. 1 末期までに約600種類に及ぶ調律法があっ たと言われている. 今日のように計器がなかっ たのにも 拘らず, 作曲家自身の好みの調律を, 自分 で調律していた時代であっ た. しかし, 一般的に使用さ れていた調律法としてはミーン・トーン調律法である. 5度を犠牲にするか, 長3度を犠牲にする 1個の5度 かの選択の中で, ミーン・トーン音律はできるだけ多くの長3度を純正にするために, 1 を同一のわずかに狭い幅にした調律法である. 36.

(8) . 音楽教育の基礎となる音律についての一考察. ◎ミーン・トーン音律, 長音階6 697. β. -. ・ 3 .\÷ ÷eヒ ー9 17 」----- ----- ----‐-- 1 3 86(純正). 9 3 - 1. 1 17 」 ------------- --- 3 86(純正). . 94. ◎ミーン・トー ン音律, 半音階 6 97 310. 9. ‐‐d--. --117 .. …. 令. 蒜柾) 6( 8 ≠ ;3. #+ 7 6. 、 ‐ノ 7 6. ノ 、 . 一 ー. 117. 7 6. , ▲“ ”. ” . ] ‘ # 7 6. n7 ぎ 7. 1 7. 7 37(不純). 純正音律の大全音と小全音をプラスして純正長3度 を得る この純正長3度を2分の1にしたも ‐ のを全音と決めれば, この新しい全音2個 で純正な長3度が得られることになる この全音を 「中 . 全音」 と呼んでいる. これがミーン・トーンの語源 である. (ミーン・トーン音律を日本 では中全音 律とも訳している) 純正音律では全音が大全音 と小全音の二種類あっ たが, ミーン・トーン音律 では一つの音名に対 するピッ チを-種類とするこ とが出来た. 即ち黒鍵を使用する時, 異名 異音から異名同音にしたた め, 完壁に完成された純正和音 ではないが, パイ プオルガンやピアノの調律への実用となっ たので ある‐ ミーン.トーン音律の長所は, b4個と#3個までの長 調ま純正度は高いがそれ以上に』# が多くなると3度, 5度が突然 「ウルフ」 と呼ばれる不協和音となる 鍵盤楽器 の12音は純正度が . 高ければ高い程, 使える調が少なくなり不便であるが, 好ん で作曲に用いたのが モーツアルト , , ヘンデルである. モーツアルトはピアノソナタを18曲, 作曲している. 各調を調べ ると, 長調が16曲 短調が2 , 曲となっ ている. しかも長調の曲の調号は, ハ長調が4曲 b の数が3個ま での曲が7曲 #の数 , , が3個ま での曲が5曲である. 短調はハ短調, イ短調, 各1曲だけとなっ ている . 短調の曲が極端に少ない理由として, 実際にミーン・トーン音律で演奏して感じることは 臨時 , 記号の セント値の幅が高す ぎたり少なかっ たりで弾き終えた時 満ち足りた感じになれない むし , . ろ短調の曲は次に述べる ヴェ ルグマイスター音律 で演奏した方が 音楽的には満足感を得られる , . ヘンデルもミーン・トーン音律 を使用したが, ヘ ン デルは黒鍵を2 等分することにより 異名異音を 作り, より多くの純正和音を得るようにチェ ン バロを改良したこと である . 私達がよく知っ ているヘンデ作曲の組曲第5番 「調 子のよい鍛冶屋」 はミーン.トーン音律を作 るために, 黒鍵を2等分 に改良したチェ ン バロならではの曲である もしも黒鍵を2 等分に改良し . ないチェ ンバロ で弾いたならば, #数が4個というのは ビートが多く とても聞ける音楽ではない , . 当時, 黒鍵を2等分にする発想は, 2段鍵盤のチェ ン バロ であっ たため可能であっ て 現在のピア , ノでは構造上無理である. 15年前音楽研修のため, ドイ ツ北部のハノーバーの片 田舎 モンタヴァ ー ルヘ行っ た時 近くに , , あっ た古い教会 のパイ プオルガンがミーン・ トーン音律であっ た パイ プの本数が500本と中型の ‐ オルガンであっ たが, 今もその地を思い出すに に, 大空に描かれた素晴ら しい絵のような音楽 を心 に越らせてくれる. ミーン・トーン音律 のおおらか且つ豊かな響きの音楽は 聴く度ごとに今生き , ていることの喜びと幸福, そして明日への希望をあ たえてく れたのである 残響音が6~7秒 と想 . 像以上のヨ÷ロッ パの教会で, ビートの多い 「平均律音律」 の パイ プオルガンでは 曲が どのよう , 37.

(9) . 三 浦. 弘. な速さ であれ, 音楽というより騒音の何物でもない. 併しヨーロッ パの パイ プオルガンの音律の全てがミーン・トーン音律で調律さ ‐れている訳ではな い. ラモー音律, キルンベ ルガー音律と様々な音律を採用 しているが, 最も多いのは, ヴェ ル グマ イスター音律である. 5. 【ヴェ ル グマイスター音律】 ヴェ ル グマイスター音律は ドイツのオルガニストであり,音楽理論家でもあるアン ドレアス・ヴェ ) によっ て考案された. ミーン・トーン音律の#bが多くなっ た時の 16 45~1706 ル グマイ スター ( 不協和音解決法としてピタ ゴラス音律の純正5度を基本にして, 幅の狭いミ」ン・ト」 ン音律の5 度を, より幅の広い純正5度に置き替えることにより, 各調が個性的な色彩感を効果的に表現でき る音律である. 一般的にはウエルテン パート調 律法 (うまく調律する, 調性的調律の意) と言っ て い る.. 平均律音律とヴェ ルグマイスター音律のセント値について 比較する.. ◎平均律音律 半音階 ー ( y 」 ー. 著・. 「qト. #1 ト. ‐. ′ L÷÷」ー #‘ ” 、 . - ′. r rA1…一÷面「 爾 m. ◎ヴェ ル グマイスター音律 ′ へ ′. mo. 10o. =. 半音階7. ‘ 3 9 Q . -… -- ,. ;. ; ^. ‐ ′ ・ # ; 90 ー L÷」 ・ - や - 8 o - 9 6 1 02 1 o2 9 0 ; :. mo. 0 ( 。 止 ,# “ 骨, , 1 0 0 ゴL r ,. 」 ÷ ÷十一 t 一 ハ ^ ^o - - 則 m 1側 mo. 9 6. 1 08. 9 6. :. 39 0. 「平均律」はオクター ブ以外全て不純である 純正5度は70 2セント. 純正3度は386セントであ . るが, 平均律音律では5度が-2セント狭く, 3度は十14セントも広くなっ ている. ヴェ ル グマイ スター音律のセント数を平均律音律と比較して見ると, 基準音のC音以外のセント値で同一のもの はない. 併し古典派, ロマン派の作曲家はヴェ ル グマイスター音律を使い, 数多くのピアノ音 楽の 名曲を作曲したのである. # bの限られた調のミーン.トーン音律と自然倍音音律で異名 異音のピ タ ゴラス音律の良いところを合わせたヴェ ル グマイ スター音律の調律法は, #bの少ない調は純正 調の明るい響 おこ, # bの多い調はピタ ゴラス音律 (日本 部皆と同じ) となり, 中間では段階的に 曲想が変わる. また移調した場合, 長調, 短調共に上げると曲想が明るくなり, 下げると曲想が次 第に暗く なる. 又それまでのごく狭い範囲の転調から開放されて自由な転調を可能に した音律 であ る-. 自然倍音の法則から作られたピタ ゴラス音律の5度の幅は, 単旋律では何ら問題ではないとして も, 鍵盤楽器による対位法や和声的な音楽では, 過度のビー トは音楽としては成り立たない. その ための解決策として, A-E, EーHの2個の5度を純正にとり, 残る4個の5度を6セント狭い 5度としたのである. 嬰ハ長 調では全音が204セント, 半音は90セントで完全なピタ ゴラス音律と な る‐. 純正5度( 702セント)の多い音律では心地良い響きを得 られ易いが, 1カ所だけ3度が入ると バ 38.

(10) . 音楽教育の基礎となる音律についての一考察 ラ ン ス の 悪 い 長 三 和 音 が あ る. そ れ は, Ci s-Ei s-Gi s の 和 音 で あ る. そ の 原 因 は, Ei s 音 が 十22 セ ン ト高 い た め, こ の 和 音 を 弾 く 時 ヨ ー ロ ッ パ の 人 達 は, Ei s 音 を 弱 く 弾 く こ と で 解決している. 平均. 音律調律のピアノで多声音楽を弾いた場合,旋律線を出すために必要以上の集中力を必要とするが, ヴェ ルグマイスター音律の調律では, 難なく自然に旋律線を浮き出させることができることと, 人 の声や弦の音等ともよく溶け合う音律である. 更に ヴェ ルグマイスター音律は, 調号による調性感, 色彩感をはっ きりと表現できる音律であるため 「調性的音律」 である. それに対し, 平均律では全 ての調が調性感, 色彩感がないため, 「モノクロ, モノラル的音律」 である. バ ッ ハ は ヴェ ル グマ イ ス タ ー 音 律 に よ り 「Das Wohl ier」 を 作 曲 し た が, 直 訳 i temper teK1av er ,. すると, 「程よく 美しく響くように調律された鍵盤楽器の曲」となる‐ バッハは一言も平均律と書い てはいないが, 日本では 「平均律ピアノ曲集」 と誤訳されている. 2等分平均律を ドイツ語で書く. と 「G1eichschwebende Temperatur」 と な る‐ schwebende は 「う な り」 の 意. そ れ で は な ぜ 平 均 律と誤訳されたのか, その経過は次の通りである. ヴェ ルグマイスターが1691年に 『音楽的調弦法』 を著したが, ドイツの医師で生理学者・物理学 者でもあっ たヘルムホルツ ( 1821~18 94 ) が 『音感覚論』 の書の中で, 「ヴェ ル グマイスターは平均 律の発明者である」 と書いている‐ 更にその本をセント値の考案者であるイ ギリ スの音響学者アレ キサンダー・ジョ ン・エリスが英訳した本と訳注に 「ヴェ ルグマイスターが平均律を開発した」 と 書いている. またフー ゴー・リーマン ( 849~191 1 9 ) は彼の書いた 「音楽辞典」 の中で, ヴェ ルグ 「 8 ) マイスターの 音楽的音律」 は平均律を要求した最初の本であると述べている.{ これらのことから, 音律についての全ての音楽書は, ヴェ ル グマイスターが平均律を開発し, バッ ハがそれによっ て曲を書き, 和声理論は平均律によっ て体系づけられた, と思われるようになっ て しまっ たのである. わが国の今日まで出版された全ての音楽辞典, 音楽史の書物を調べたが, ヴェ ルグマイスター音律について記さ れている書物は見当らない. 音楽之友社 出版の標準音楽辞典に ヴェ ルグマイスター氏について次のように述べている‐「ヴェ ル グマイスターは今日まで一般に行わ れている平均律調律法を考案した. かれの平均律理論は, バッハの平均律クラヴィ ーア曲集におい 9 { )となっ ているが バッハは ヴェ ルグマイスター音律を使用 しているのであり て実用化さ れた」 , , ヴェ ルグマイスター音律は, 平均律とは似ても似つかぬ別の音律である. にも拘らず, エリスが誤 訳したものが修正されず今にそのまま伝えられたため, バッ ハは平均律音律で作曲したとされてし まっ たのである‐ 市田儀一郎著のバッ ハ平均律クラ ヴィ ーア1の序文 「平均律クラヴィ ーア曲集の 1 0 )と述べてい 成立」に, ヴェ ルグマイ スターは今日なお原則的に通用する平均律調律法を発見した( るが, 市田儀一郎氏自身昭和61年東京芸術大学に於いて 「古典調律の理論と平均律との比較演奏」 の公開講座で 「私は平島達司氏に幾度となくお会いし, 古典音律について御指導戴いた‐ 今ま で古 典音律と言えば平均律音律と 思っていたが, 併しバッハが使用 していたのがヴェ ルグマイスター音 律であっ て, 今我々 が使用している平均律とは違うという ことが解っ た. ヴェ ルグマイスター音律 のセント値, 調性感等から考えると, 平均律クラヴィ ーア曲集1, 1 1の再出版の際は, 大幅な修正 を し な け れ ば な ら な い」 と 語 っ て い た.. 古典派に属するベートー ヴェ ン, ハイ ドンは勿論, ヴェ ルグマイスター音律によっ て作曲してい たの である. 平均律に調律されたピアノと, ヴェ ルグマイスター音律に調律したピアノを弾き比べ た時, ヴェ ルグマイスター調律法の倍音の微妙な組合せは, ベー トー ヴェ ン, ハイ ドンがここで何 を語りたいのか, 次の音楽はどの様な響きの音楽か等, 容易に楽しい想いのうちに弾く ことができ るが, 平均律 ではビートが多いこと, 倍音を聴くことがヴェ ルグマイスター調律のピアノより, 数 倍努力を要するため私にとっ ては苦痛を覚える‐ 39.

(11) . 三 浦. 弘. 平均音律に慣らされた人によっ ては, ヴェ ル グマイスター調律のピアノの響きが物足りないと言 う方がいるが, 何と言っ ても西洋音楽が日本に入う て来た時, ヨーロ ッパ では平均律調律法が確立 した後だっ たため, 日本では ヴェ ル グマイ スター音律の調律を誰一人聴いた人もないし, ましてや 調律技術の未熟な当時であっ たから, 無理からぬことかも知れない. また決定的なことは, ヨーロッ パの調律師や学術書が今だに 「バッハが平均律音律で作曲した」 ということになっ ている事が, 鍵 盤楽器に対する大きな誤りとなってしまっ たのである. ロマン派の音楽はどう か. ショ パン, シュ ーベルト, メンデルス ゾー ン, シュー マン, ブラーム スもヴェ ル グマイスター音律によっ て作曲しているのである. 特にシュ ーマン, シュ ーベルトの歌 曲は, ヴェ ル グマイ スター音律の伴奏で歌うならば, , 美しい響きと深い感動を得られる. また移調 せずに原調で歌っ たならば, 音楽の方から自分に語りかけてく れるのである. 幾度となく訪れた ドイツのピアノ調律師に, 「ピアノ調律をする時, ドイ ツ では ヴェ ル グマイス ター音律にするのか‐ それとも平均律音律で調律?」 と聞いた所 「ピアノ調律はいつも平均律音律 で調律している」 との答えが返っ てくる. しかし調律終っ た後で弾いてみるとヴェ ル グマイ スター 音律に近いヴァ ロッ テヤン グ音律だっ たり, キルンベ ルガー音律らしき音律となっ ているが, 基本 的には ヴェ ル グマイスター音律と なっ ている‐ 1 87 5年) の序文に 「出 ゴーリュー ブンゲンの著者である哲学者フランツ・ヴェ ルナーは原典初 版( 来るだけ伴奏なしで歌わせ, ただ音の誤りと不純とを訂正する時にのみ, 楽器を用いること. 音程 練習や和音の練習は, 全て楽器の助けなしに行うこと. 階名唱法はまず伴奏なしで稽古させ, 最後 になっ て始めて伴奏をつ けること. しかもその時, 歌うべき音をピアノで一緒に奏してはならない. n { }と記している ヴェ 平均律に調律されたるピアノを頼りにして正しい音程の練習は望まれない」 . ルナーは当時一般的 であっ たヴェ ルグマイスター音律を基本にコールュ ーブンゲンを著わしたので 875年当時, ピアノ調律法が少しず あるが, この事からコールュ ー ブンゲンの原典初版を出版した1 「 平均律調律 にな ていたものと推察される つ っ 」 .. 6. 【平均律音律】 158 8 ) 8~1 64 平均律音律に関する理論をはじめて著したのは, フランスのマラン・メルセンヌ ( である. この時代は現在のように精確な周波数を測定する機器がなかったこと, 各音の周波数と対 数計算が確立されていないことなどから, 調律の時に使用する 「ビー ト数」 の計算が難しかっ た. 1 2 ) 併 しメ ルセ ン ヌ は, 12ノテ を 算 出 し た こ と に よ り フ レ ッ ト を 持 つ ギ タ ー, マ ン ドリ ン に 用 い た.(. 1 842年になっ てイ ギリスのブロー ドウッ ド社がピアノの大量生産, 大量販売に見合う調律者養成 を得るための方策として, 初めて平均律調律のピアノを市販したのである. それまで和声的な音楽 の ヴェ ルグマイスター, キルンベ ルガー, ミーン・トーンの各音律が主流となっ ていたのが,・次第 に平均律調律が一般に普及したのである. 平均律調律を好ん で多くのピアノ曲を作曲したのが, ド ヴィッンー, ラヴェ ルである. 指先をそっ と鍵盤に置くようにしな がら, 微かに倍音の響きを受け 止めて演奏する. その音楽は現代的な響きを表現するには, 最も適した音律である. 併し倍音も知 らず, タッチをしっ かり, がっ ちりするように指導されているわが国のピアノ演奏法では, 古典派, ロマン派を問わず, 倍音も聴かずに速く, 強く, 美しく ではオリンピッ ク精神のような音楽を作る こ と に な る.. 私の古典調律 (ヴェ ル グマイ スター音律) の経験では, 古典派, ロマン派時代の音楽は, 自然で 色彩豊か且つ, ゆっ たりと音楽を無理なく表現出来ることである. それでは平均律は どうか. 先ず 緊張感が強いこと. その曲の音楽を CD , ビデオ等で知りえても, 自分で弾いた音が無機質的である 40.

(12) . 音楽教育の基礎となる音律についての一考察. ため, 体に不必要な動きと強く叩きつけるようなタッ チで音楽を表現しようとすること. 又, 音が 無機質で色彩感が乏しいため, 飽き易いこと. もしも長時間弾くことを望むならば, 我慢するしか ない. その結果, 肩こり, 庭鞘炎などを引き起こすこととなる. 平均律の各音間が全部100セントに統一されているため, いずれの調に転調しても曲想の変化が 乏しい. そのため, 調律をする時ピアノ鍵盤の中央部より高音への音は高めに, 低音への音は低め に調律し, 演奏で高音を弾いた時は, あたかも音楽がきらびやかに聞こえ, 低音は迫力が有るかの ような 「調律曲線」 を作ら ざるを得ない‐ ドイツ, オーストリアのピアノ調律は古典音律によっ て 調律されていることと, ピアノ調律曲線をフラッ トにしているため, 2~3オクター ヴ離れた音で あっ ても倍音の響きがよく溶け合っ て, 心地よい音を聴きながら演奏を楽しむ事ができた. 併し日 本のピアノ調律は平均律音律に加えて調律曲線が非常にきついカー ブとなっ ているのが一般的であ る. 古典音律と違っ て緊張感のある平均律音律に, 更にきついピアノ調律曲線では, 穏やかな音楽 も神経質になら ざるを得ない‐. おわ り に 各種音律の歴史的経過と特徴, 更にピアノ調律がヨーロ ッ パと日本ではどのような違いがあるか について述べたが, 私は平均律音律を否定するものではない. 教師は種々 な音律の違いを知ること により, 音楽教育 でより豊かな感性を育むことが出来るのではないか‐ 音律の問題は, 単なる鍵盤 楽器だけではなく, 音楽教育, 音楽療法, 人間教育全般にかかわる根源的な問題であると考える‐ これまで学校音楽教育に関する論文が数多く 書かれているが, 「音律」について明確に把握されてい ないため, 多分に表面的である. 感覚的には音楽を知りつつも, 現実には指導技術が先行し, 目先 の教育, その場限りの教育となっ ていると考える. 平成4年度全国音楽研究会鹿 児島大会の大学部会 で, 私がデジタルピアノでピタ ゴラス音律, 純 正音律, ミーン・トーン音律, ヴェ ル グマエスター音律の古典音律でコラールを弾いたところ, 古 典音律の理論, 響きを知っ ていた方が70名 中, 1名のみ. バッハがヴェ ルグマエスター音律を使っ ていたことを知 っていた方は2名. 大学の先生方でさえこの数であれば, 小・中・高の学校では更 に寂しい数と思わ ざるを得ない. 無限に高い音楽性と豊かな人間性を得, 且つ与えるためには, 確 実に音楽の響きに対する基礎基本を究めるべきである. 音楽と対話の出来る美しい倍音の微妙な響 きを得られる古典音律の 「ヴェ ルグマイスター音律」 を理論ではなく, 実際の音で弾かれることに より, 次なる音楽への発見をするものと考える. ピアノ調律を一度ヴェ ルグマイスター で試されて, 心を開く豊かな倍音の音楽を味わっ て戴くことを願うものである‐. 引 用 文.献 1) 音楽教育研究, 1 974年4月号, 年表・唱法と教育, 樫崎真彦編より 2) 内藤忠勝, 「音程を正しく理解し把握するには?」 ムジカノーヴァ, 19 9 2年2月号, p53 3) 4) 5) 6) 7) 市田儀一郎, 日本ピアノ調律師協会関東支部, 昭和61年度技術研修講演会「古典調律の理論と 平均律との比較演奏」 参考資料より 8) 平島達司, 「ゼロービートの再発見」 平均律への疑問と古典音律をめぐって, 東京音楽社, 1 98 3年, p5 6 9) 音楽之友社, 「標準音楽辞典」1 96 6年, pl l o 41.

(13) . 三 浦. 弘. ) 市田儀一郎, 「バッハ平均律クラヴィ ーアー1」1 8年, p9 10 96 9 25年, pp5~6 1 1 ) フランツ・ヴェ ルナー, 「全訳コールュープンゲン」 信時潔訳, 1 ) 平島達司, 「ゼロ・ビートの再発見」 技法篇, 東京音楽社, 19 83年,、p5 8 12. 42. (本 学教 授 ・ 旭川 分 校).

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参照

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