• 検索結果がありません。

小学校英語における担任教師・専科教師についての教師の意識調査

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "小学校英語における担任教師・専科教師についての教師の意識調査"

Copied!
11
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)Title. 小学校英語における担任教師・専科教師についての教師の意識調査. Author(s). 萬谷, 隆一. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 70(1): 165-174. Issue Date. 2019-08. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/10548. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第70巻 第1号 Journal of Hokkaido University of Education(Education)Vol. 70, No.1. 令 和 元 年 8 月 August, 2019. 小学校英語における担任教師・専科教師についての教師の意識調査1 萬 谷 隆 一 北海道教育大学札幌校英語教育学研究室. A Survey Study on Elementary School Teachers’ Preference on Homeroom Teachers and Specialist Teachers for English Classes YOROZUYA Ryuichi Department of English Language Education, Sapporo campus, Hokkaido University of Education. 概 要 本研究は小学校英語教育で担任教師あるいは専科教師のどちらが指導すべきかについての小 学校教師の意識を探った調査である。小学校教師335名の質問紙調査から以下の点が明らかに なった。1)専科教員の英語指導を望む教員の数が担任教師の指導を望む教員の数より多いこ と,担任教師が望ましい理由として,担任教師の児童理解と相互信頼,児童に合わせた指導を 重視する理由が多かった。また専科教師が望ましい理由としては,英語力・専門的指導力を重 視する回答,多忙感を理由とするものが多かったこと,2)英語指導の経験年数が少ない教師 に専科教員が望ましいと考える傾向があること,3)英語が好き,自信があると考える教師ほ ど,担任教師が教えるべきと考えていること,4)担任教師による英語指導を望む教師ほど, 児童理解を重視する指導観を持つ傾向が伺われた。結果にもとづき,今後の小学校英語におけ る担任教師と専科教師の制度と指導のあり方について示唆を示した。. 1.はじめに 平成28年度英語教育実施状況調査(文部科学省)によると74,321学級のうち3,050学級,4.1%が専科指導と なっており,公的な専科教師が教えるケースはまだ多くない。しかし,平成30年度より文部科学省の専科教 師の配置事業が施行され1,000人の専科教師の加配措置が行われた。加えて,昨今多くの自治体で小学校英 語の専科教師を配置する流れが広がってきており,その割合はさらに増えるものと思われる。このように専 科教師の増強の施策は徐々に進められているものの,今後わが国の小学校英語の充実を図るために,基礎的 な知見の蓄積と多角的な検討がきわめて重要である。 本研究においては,小学校教師が,英語教育の担い手として,専科教師と担任教師のどちらが望ましいと 考えているかについての意識を調査し,専科教師を受け入れる教育現場のニーズを探りたい。また担任教師. 165.

(3) 萬 谷 隆 一. 支持者あるいは専科教師支持者の理由も調べ,それぞれの支持意見を持つ小学校教師が英語教育についてど のような指導観・習得観を持っているかについても探りたい。. 2.先行研究 ブリティッシュカウンシルによる英語教育関係者からの調査(Rixon 2013:20-23)によると, 調査対象 となった64か国において,小学校英語の指導体制は,担任教師,常駐の英語専科教師,巡回する英語専科教 師,英語専門ではない一般教師,外部講師などとなっており,多くはそれらの教員種を併用する国が多い。 しかし調査時において,担任教師のみが指導していると回答があった国は6か国のみであり,日本もそのう ちに入っている。専科教師による指導が一般的な台湾・韓国(金2007)などと比して,わが国は担任教師に よる指導がほとんどを占めているのが現状である。 さて,専科教師の配備を進めるべきであるとする論考としては,まず伊東(2014)が,フィンランドの小 学校英語の調査に基づき,小中高のどの英語教育をも教えることができる教科ジェネラリストの養成を提案 しており,小学校英語を教える専科教師の重要性を強調している。また,小学校英語における英語力を上げ 充実させてゆく上で,専科教師による英語指導を推す向きもある。松宮(2014:18)は,資質の高い教員の 育成が質の高い教育成果につながることが自明であり,これまでの研修制度,教員養成制度の部分的修正だ けでは解決できず, 「中学校・高等学校・大学までの英語教育を系統的に一貫して指導することができる専 科教師の育成が強く望まれる」と述べている。英語力の伸長の点からは,専科教師による単独指導の効果で はないが,バトラー後藤・武内(2006a)が,指導体制のパタンの違いによって児童英検の成績が異なった ことを報告しており,そのうちJTEと担任教師のティームティーチングのパタンが優位であったというデー タを示している。データ数が少ないため断定はできないが,バトラー後藤・武内(2006b)もJTEと担任教 師のTTが効果的である可能性を示しており,示唆的な研究成果であると言える。 一方,担任教師が小学校での外国語教育の指導者となるべきであるという論考としては,まずイギリスの 外国語教育について,Sharpe(2001)は,担任教師と専科教師それぞれの特性を検討し,専科教師が語学 力と専門的指導力に勝るものの,担任教師の児童理解にもとづく柔軟な指導力の重要性を指摘している。担 任教師と専科教師のエスノグラフィー研究にもとづき,Driscoll(1999)は,専科教師が教室運営に困難さ を感じることがあると報告し,担任教師が児童に合わせて,また学校現場の特有な環境に対応して,柔軟に 指導するよさを強調している。また,バトラー後藤(2005:188)によると,韓国の小学校英語専科教師の 中で,担任教師を希望し担任教師になるケースが見られるようになったという。バトラー後藤は,そうした 「担任移行組」の教師の意識を調査し,その理由として以下のような要因があることを指摘している。それ によると専科教師たちは,担任教師の方が,1)児童の英語力や習得状況を把握しやすいこと,2)給食時 間や休み時間などに英語の練習ができること,を挙げていたという。一方,専科教師の課題として,1)多 数の児童を教えると児童理解が薄くなること,2)英語力,習得状況の把握が困難であること,3)児童を 統制する教室運営が困難であること(心理的距離がある),を問題視していたということが分かった。後述 のKang(2008, 2011)の研究も同様の傾向を示唆しており,専科教師には,英語力・専門的指導力の高さと いう強みがありながら,実際の小学校現場では課題もあることが分かり,担任教師による児童に合わせた英 語指導のメリットが示唆される。担任教師の英語力・英語指導力は今後とも課題となろうが,担任教師の役 割は小学校英語の今後の方向性を考えるうえで極めて重要な要素であるといえるであろう。 さて,小学校英語において,その担い手としてもし今後も専科教師の増強を進めてゆくのであれば,まず は受け入れる教育現場の状況や教員の意識がどうなっているのかを確かめる必要がある。韓国では,Kang. 166.

(4) 小学校英語における担任教師・専科教師についての教師の意識調査. (2008)が,専科教師に対する小学校教師200名の意識調査をし,50%が英語専門教師制度に反対し,26% が賛成し,24%は立場を留保していたと報告している。反対者の主な理由は,専科教師の「初等教師として の専門性の欠如」(29.3%),「初等教育への理解不足」(11.9%),「流暢性と教えることは別である」(7.6%) など,小学校教育に対する理解が不足し,小学校教師としての専門性が脆弱であるという理由が約半数を占 めていた。一方,わが国において,ベネッセ・コーポレーション(2010)の調査によれば,教務主任の回答 では「学級担任が教えるのがよい」が23.6%に対し,「専科教師が教えるのがよい」が75.7%。担任教師の回 答では,前者が26.3%,後者が72.9%で,同様な傾向であった。専科教師が教えることを,かなりの小学校教 師が希望していることがうかがわれる。現状において,担任・専科の担当について小学校教員の意識がどの ようになっているか,またその背景となっているものについて知ることが必要である。. 3.調 査 3.1 調査目的 本研究は,以下の研究課題を設定する。1)小学校教師は,小学校英語の指導に携わる教師として,担任 教師・専科教師のどちらを望ましいと考えているか(以降,「担任専科意見」と称する)。2)担任専科意見 は,英語指導経験年数によって変わるか,3)担任専科意見は,英語が好きである,自信があると考えるか によって変化するか,4)担任専科意見と指導観,習得観との関係性はどのようなものか,を探ることを目 的とする。 3.2 調査協力者 本研究における参加者は,全国の小学校教師335名である2。小学校英語の研修会に参加した教師が対象で あり,実施時期は2018年6月から8月にかけて行い,調査実施地は北海道108,青森10,徳島39,埼玉100, 横浜78名である。英語指導経験年数は,中央値4年(平均4.59年)であった。担任として教えている教師が 252名,専科あるいは持合い・授業交換等で英語を指導している教師は67名であった。 3.3 調査・分析方法 質問紙を協力者に配布し,協力の合意を得て回答してもらった。質問紙においては,担任・専科・校長・ 教務などの立場(担任・専科以外は分析から除外),専科・授業交換等による英語指導の状況,英語指導経 験年数(0年,1年以下,1-2年,3-4年,5-6年,7-8年,9-10年,10年以上),英語が好きである か,英語に自信があるか,話す聞くが得意であるか,読み書きが得意であるか,を尋ねた。 担任専科意見については,担任教師か専科教師のどちらかを選択し回答するよう求めた。またその理由と して,以下の選択肢から複数回答を選ばせた。担任教師が教えるべき理由として,以下の選択肢を示した。 1)担任教師は指導内容・方法を児童に合わせやすいから,2)担任教師はより深い児童理解があるから, 3)担任教師は児童との相互信頼があるから,4)担任教師は児童の発表意欲を引き出せるから,5)担任 教師は他教科の内容や生活経験を関連付けられるから,6)担任教師は授業時間を柔軟に設定できるから, 6)その他。専科教師が望ましい理由の選択肢として,1)専科教師は十分な英語力があるため,2)専科 教師は英語指導技術があるため,3)専科教師は準備時間に余裕があるため,4)担任教師が多忙であるた め,5)担任教師は間違った英語を教えるかもしれないため,6)その他,を選択させた。 加えて,小学校英語教育についての指導観,習得観等にかかわる考えについての以下の18項目(Likert 5 件法)を尋ねた。. 167.

(5) 萬 谷 隆 一. 1.英語指導には,正しい表現を身に着けさせることが大切である。 2.英語でコミュニケーションできるようにすることが大切である。 3.忘却させない指導の対策がとても大切である。 4.英語授業は活動構成の仕方が大切である。 5.授業では,英語でのやりとりをすることが大切である。 6.発音や文法の間違いは直すべきである。 7.英語は話す聞くことが大切である。 8.英語は読み書きすることが大切である。 9.英語は何度も繰り返して覚えるべきである。 10.英語を話す際に間違えても気にするべきではない。 11.正しい英語でなくとも,なんとか通じさせることが大切である。 12.英語の授業は専科・ALT等と担任がティーム・ティーチングするのが良い。 13.英語の授業では他教科や児童の生活や好みと関連付けて教えるべき。 14.児童の特性に合わせて指導内容・方法を柔軟に調整すべきである。 15.英語の授業では,学習規律が大切である。 16.英語の授業では,子どもと教師の関係性が大切である。 17.英語の授業には,児童理解が大切である。 18.英語の文化や言葉の面白さを教えるべきである。 なお分析には,SPSS 21を用いた。. 4.結果と考察 4.1 担任専科意見の差および諸要因との関連 まず研究課題1)について,担任専科意見(「小学校英語の指導者としてどちらが良いですか?」)につい て,担任教師が望ましいと答えた人数は,図1に示すように,全体335名中,134名(38.6%)が担任教師が 望ましいと答え,201名(57.9%)が専科教師が望ましいと答えた。 次に,担任専科意見(「小学校英語の指導者としてどちらが良いですか?」)への回答として担任教師ある. 図1 担任専科意見( 「小学校英語の指導者としてどちらが良いですか?」への回答数). 168.

(6) 小学校英語における担任教師・専科教師についての教師の意識調査. いは専科教師と答えた理由の傾向を見てみる(表1)。回答は複数選択が可能である。まず,担任教師がよ いと答えた回答者の理由として多かったのは, 「1 担任教師は指導内容・方法を児童に合わせやすいから」 (82.84%) , 「2 担任教師はより深い児童理解があるから」(83.58%),「3 担任教師は児童との相互信頼 があるから」 (85.07%),「5 担任教師は他教科の内容や生活経験を関連付けられるから」(79.85%)の4つ であり,担任教師の児童理解と相互信頼,児童に合わせた指導の観点から,担任教師の方が望ましいと考え ている傾向があることが分かる。残りの2項目「4 担任教師は児童の発表意欲を引き出せるから」 (68.66%), 「6 担任教師は授業時間を柔軟に設定できるから」(66.42%)も,比較的多い回答であった。 なお, 「その他」に記述された内容として,「小学校英語は学級経営するうえでも大変効果的だから」,「子 どもとの心の触れ合いや思いを伝え合う楽しさがあるから。担任-児童にしかわからない様々を生かせるか ら」 , 「専科教師は実質担任以外の先生というだけで,英語が得意かどうかで決められているわけではないか ら」 , 「専科教師にすると,英語が苦手,嫌いな教師が何もしなくてもよくなるから」などの理由があった。 次に専科教師が良いと答えた回答者の理由として多かったのは,「1 専科教師は十分な英語力があるた め」 (89.50%) , 「2 専科教師は英語指導技術があるため」(91.50%)という専科教師の英語力・指導力への 期待であり,また「3 専科教師は準備時間に余裕があるため」(83.50%)と「4 担任教師が多忙である ため」 (83.00%)という教師の多忙さの視点からの理由も目立った。「5 担任教師は間違った英語を教える かもしれないため」は46.50%で,英語への不安から専科教師に任せたいとする回答は半数弱であった。「そ の他」の自由記述には, 「子どもの実態をよく知っている担任にはT2,T3で入ってもらい子どもたち全体を じっくり観察し,子どもの評価をしてもらいたい」,「これ以上担任が教える教科を増やしてほしくない。ま た,成績も負担になる」 , 「担任だと英語のテンションが作りにくいときがある。(指導した後など)専科だ といつも明るく迎えてくれるので,子どもたちも嬉しそう」,「学級間の差がでないようにするため(指導者 による指導内容の差異)」という理由があった。 表1 担任専科意見の理由 意見. 理由(複数選択可). 度数. %. 担任がよい. 1 担任教師は指導内容・方法を児童に合わせやすいから. 111. 82.84%. 2 担任教師はより深い児童理解があるから. 112. 83.58%. 3 担任教師は児童との相互信頼があるから. 114. 85.07%. 92. 68.66%. 107. 79.85%. 89. 66.42%. 7. 5.22%. 134. 40.12%. 度数. %. 4 担任教師は児童の発表意欲を引き出せるから 5 担任教師は他教科の内容や生活経験を関連付けられるから 6 担任教師は授業時間を柔軟に設定できるから その他 小計 意見. 理由(複数選択可). 専科がよい. 1 専科教師は十分な英語力があるため. 179. 89.50%. 2 専科教師は英語指導技術があるため. 183. 91.50%. 3 専科教師は準備時間に余裕があるため. 167. 83.50%. 4 担任教師が多忙であるため. 166. 83.00%. 5 担任教師は間違った英語を教えるかもしれないため. 93. 46.50%. その他. 14. 7.00%. 200. 59.88%. 小計 . 169.

(7) 萬 谷 隆 一. 次に,研究課題2)の担任専科意見と英語指導経験の年数の関係について分析する。表2に担任専科意見 の2群の英語指導経験年数の差を示す。担任教師が望ましいと答えた回答者の英語指導経験の平均は5.37年 であり,専科教師が望ましいと答えた回答者の平均は3.92年であり,専科教師を望む教師は英語指導経験の 年数が短いことを示している。 さらに詳しく見るために,表3および図2に,経験年数による度数分布を示した。これを見ると,専科教 師を支持する回答者に,英語指導の経験年数が浅い教師が比較的多いことが分かる。英語指導経験年数が長 くなると,両意見の差は目立たないが,専科教師支持の意見を持つ回答者で英語指導経験が0年である者は 44人いるのに対し,担任教師支持の回答者の0年経験者は12人である。また専科教師支持の意見を持つ回答 者で英語指導経験が1年以下である者は,27人いるのに対し,担任教師支持の回答者の1年経以下の験者は 17人である。同様に,1-2年経験者,3-4年の経験者についても専科教師支持の回答者が一貫して多く, 同じ傾向が見られる。 次に, 研究課題3)の担任専科意見が英語の好き嫌い・自信によって変化するかどうかを比較する(表4)。 担任派と専科派のそれぞれの「英語が好きである」「英語には自信がある」「話す聞くが得意」「読み書きが 表2 担任専科意見の2群の英語指導経験年数の差 担任専科 意見. N. 英語指導経験年数 (平均). 標準偏差. t. p. d. 担任. 121. 5.37. 3.88. 3.27. 0.00 **. 0.38. 専科. 190. 3.92. 3.78. 表3 担任専科意見別の英語指導経験年数の度数分布 担任専科意見 . 0年. 1年 以下. 1-2年. 3-4年. 5-6年. 7-8年. 9-10年. 10年 以上. 総計. 担任が教えるべき. 12. 17. 10. 24. 17. 7. 15. 19. 121. 専科が教えるべき. 44. 27. 25. 33. 18. 10. 15. 18. 190. 図2 担任専科意見と英語指導経験年数の度数分布. 170.

(8) 小学校英語における担任教師・専科教師についての教師の意識調査. 得意」の平均点(5点評価)を比較した。その結果,全ての対について有意差が見られた。総じて,英語が 好き,あるいは英語に自信があれば担任教師が望ましいと答え,英語がそれほど好きではない,あるいは自 信がないと専科教師が望ましいと答えたことがわかる。それぞれ効果量は「英語が好きである」の効果量は 中であり,その他は小であった。 表4 英語への好悪・自信による担任専科意見の差 意見 英語好き 英語自信 話す聞く自信 読み書き自信. N. 平均値. 標準偏差. 担任. 123. 4.33. 0.82. 専科. 201. 3.61. 1.33. 担任. 124. 2.69. 1.07. 専科. 201. 2.25. 1.10. 担任. 124. 2.81. 1.12. 専科. 201. 2.32. 1.14. 担任. 124. 2.70. 1.01. 専科. 201. 2.36. 1.13. t. p. d. 5.39. 0.00. **. 3.55. 0.00. **. 0.41. 3.73. 0.00. **. 0.43. 2.73. 0.01. **. 0.31. 0.62. 最後に,研究課題4)の小学校英語にかかわる指導観・習得観についての質問18項目を分析し,担任専科 意見とどのような関係があるかを探ってみる。担任教師支持の回答者の項目ごとの平均値と専科教師支持の 回答者の平均値を比較し,検定した。その結果,両者の差は,項目13「英語の授業では他教科や児童の生活 や好みと関連付けて教えるべき」,16「英語の授業では,子どもと教師の関係性が大切である」,17「英語の 授業には, 児童理解が大切である」において有意差がみられた(5%水準)。いずれも効果量は小であった。 表5 小学校英語にかかわる指導観・習得による担任専科意見の差 項目. 担任専科 意見. N. 平均値. 標準偏差. t. p. d. Q1. 専科. 193. 3.40. .991. 1.024. .307. 0.13. 担任. 91. 3.27. 1.001. 専科. 193. 4.49. .751. 1.668. .096. 0.19. 担任. 121. 4.35. .750. 専科. 193. 3.26. .982. .890. .374. 0.1. 担任. 121. 3.16. 1.000. 専科. 193. 4.14. .820. -1.205. .229. 0.14. 担任. 121. 4.26. .852. 専科. 193. 4.26. .826. -1.205. .229. 0.14. 担任. 121. 4.37. .776. 専科. 193. 2.86. .882. .493. .622. 0.06. 担任. 120. 2.81. .938. 専科. 192. 4.37. .719. -.856. .392. 0.1. 担任. 121. 4.44. .631. Q2 Q3 Q4 Q5 Q6 Q7. 171.

(9) 萬 谷 隆 一. Q8 Q9 Q10 Q11 Q12 Q13 Q14 Q15 Q16 Q17 Q18. 専科. 193. 2.99. .927. 担任. 121. 3.11. .929. 専科. 192. 3.94. .928. 担任. 121. 3.93. 1.023. 専科. 193. 4.30. .854. 担任. 121. 4.47. .827. 専科. 193. 4.52. .729. 担任. 121. 4.60. .713. 専科. 193. 4.11. 1.002. 担任. 121. 4.20. 1.046. 専科. 193. 4.01. .918. 担任. 121. 4.23. .761. 専科. 192. 4.42. .727. 担任. 121. 4.43. .728. 専科. 193. 3.57. .928. 担任. 121. 3.74. .953. 専科. 193. 4.33. .799. 担任. 121. 4.51. .720. 専科. 193. 4.32. .776. 担任. 121. 4.55. .683. 専科. 193. 4.52. .685. 担任. 121. 4.50. .720. -1.047. .296. 0.12. .079. .937. 0.01. -1.795. .074. 0.21. -.954. .341. 0.11. -.758. .449. 0.09. -2.213. .028. -.093. .926. 0.01. -1.599. .111. 0.19. -2.085. .038. *. 0.24. -2.763. .006. *. 0.32. 0.237. .813. *. 0.26. 0.03. 4.2 結果の考察 研究課題1)については,専科教師による英語指導を望む教員の数が担任教師による指導を望む教員の数 より多いことが分かった。まず,専科教師が望ましい理由としては,英語力・専門的指導力を重視する回答, 多忙感からの理由が多かった。前者については,積極的理由が主であり,後者に関しては積極的理由ととも に消極的理由が含まれている。とりわけ後者の,専科教師を望む声の背景にある,小学校教師の消極的な意 識や背景,状況を,建設的な視点から改善してゆくことが重要であろう。 次に,担任教師が望ましい理由として,担任教師の児童理解と相互信頼,児童に合わせた指導の観点から, 担任教師の方が望ましいと考えている傾向があることが分かった。担任教師が望ましい理由として,児童理 解や児童理解にもとづく指導の力が有力であったわけであるが,これについては,バトラー後藤(2005: 189)の調査結果やSharpe(2001)の論考とも関連しており,小学校英語の指導者の資質として児童理解は 見落とせない点であることが分かる。 研究課題2)について,まだ英語指導経験が少ない教師は,いまだ英語指導にまだ取り組んでいない,あ るいは英語指導に慣れていない教師がより多いということが考えられる。専科教師を望む教師のうちには, すでに英語指導経験が長い教師は別として,単に経験が浅いために,担任教師では教えられないと不安に思 う教師もいることが考えられる。今後の検証を待たなくてはならないが,少なくとも,そうした教師の一部 は,英語指導経験を積むことにより意見が変化する可能性もあり,研修を続け,実践の取り組みを支援する ことが今後とも重要である。. 172.

(10) 小学校英語における担任教師・専科教師についての教師の意識調査. なお,韓国の小学校教師が専科教員制度に対する意識についてのKang(2008)の調査では,専科教員制 度に対する反対意見が優勢であったが,指導経験年数との関係性は見られなかった。両国の制度的,社会的 な差異が影響している可能性もあるが,担任教師あるいは専科教師のどちらがよいかについての意見が英語 の指導経験によってどう変化するかは,今後のさらなる検証を待たなくてはならない。 研究課題3)の担任専科意見が英語の好き嫌い・自信によって変化するかどうかについての比較において は,英語が好きではない回答者ほど,また英語に自信がない回答者ほど,専科教師が望ましいと考える傾向 があることが分かった。このことは,小学校教員業務量の多さ,多忙さの状況がある中,理解できる傾向で ある。そうした多忙な状況を改善する努力を続ける一方で,校内研修や地域の研修を通じて英語の楽しさを 感じる経験を積むこと,また英語力に関しても,小学校英語に必要な初歩的な英語力の修養から徐々に力を 高め自信を得るようにすることが必要である。 指導観にかかわる研究課題4)については,担任教師の指導が望ましいと考えている回答者は,子どもの 知識や興味に合わせた指導,良好な関係性,児童理解が大切であると考えていることが伺われた。担任教師 が教えるべきと答えた回答者の理由に,児童理解を中心とする理由が目立っていたのは,そうした指導観が 担任教師支持者の心のうちに,より明確に意識されているとも解釈することができるであろう。. 5.結論と今後の課題 本研究から以下の点が明らかになった。1)専科教師による英語指導を望む教員の数が担任教師による指 導を望む教員の数より多いこと,担任教師が望ましい理由として,担任教師の児童理解と相互信頼,児童に 合わせた指導の観点から,担任教師の方が望ましいと考えている傾向があることが分かった。また専科教師 が望ましい理由としては,英語力・専門的指導力を重視する回答,多忙感からの理由が多かった。2)英語 指導の経験年数が少ない教師に専科教師が望ましいと考える傾向があること,3)英語が好き,自信がある と考える教師ほど,担任教師が教えるべきと考えていること,逆に専科教師の支持者は英語があまり好きで はなく,自信もあまりない傾向があることが分かった。4)担任教師による英語指導を望む教師ほど,児童 理解が重要であるとする指導観を持つ可能性が示唆された。 本研究の課題としては,ある程度の調査人数を確保しているものの,協力した小学校教師は,地域や学校 について層化やランダムサンプリングによって選ばれたわけではなく,また個人意志による研修と公的な指 名研修が混在しており,厳密な意味では小学校教師全体を代表した調査結果とは言い切れないことを指摘し ておきたい。 また質問紙において,担任教師と専科教師のどちらがよいかという2択にしたため,両者の長短を意識し た中間的な意見を十分にとらえることができなかったことも本研究の課題である。自由記述から,やむなく 片方を選択したが,どちらも条件づきであるとの意見や,さらに両者の良さを生かす教育体制を考えるべき という意見があった。両者の良さと課題を意識して,ティームティーチングにおいて担任教師と専科教師を どのように組み合わせた制度とするか,どのような役割分担をすることが望ましいのか,今後の研究が必要 である。 おわりに,今後は,担任教師が良いか,専科教師が良いかという議論にとどめるのではなく,小学校の英 語指導者に必要と考えられる英語力と児童理解などの資質の視点から,どのような制度・指導体制が望まし いのか,またどのような研修・養成が必要であるのかを検討してゆくべきであろう。. 173.

(11) 萬 谷 隆 一. 注 1.本研究は,平成30年7月29日小学校英語教育学会長崎大会において口頭発表したものである。また本研究は,2018-2020 年度科学研究費基盤研究C(18K00732「小学校英語における専科教師と担任教師の意識差および児童への影響に関する調 査」代表 萬谷隆一)の援助を受けている。 2.この合計数は,担任教師と専科教師のどちらが良いかを回答した人数の合計である。各集計における人数の合計数は,項 目によって欠損値があるため,必ずしもすべて同じとならない。. 謝 辞 本研究の質問紙調査において協力してくださった小学校の先生方に感謝の意を表したい。. 引用文献 バトラー後藤裕子(2005).『日本の小学校英語を考える』三省堂. バトラー後藤裕子・武内麻子(2006a).「小学校英語活動における評価:児童英検(BRONZE)を使った試み」 『日本児童英 語教育学会紀要』25,1-15. バトラー後藤裕子・武内麻子(2006b).「小学校英語活動における指導とコミュニケーション能力―児童英検シルバーによる 調査―」『STEP Bulletin』18,248-262. ベネッセ・コーポレーション(2010).『第2回 小学校英語に関する基本調査(教員調査) ・ダイジェスト版』ベネッセ・コー ポレーション. Driscoll, P. (1999). Teacher expertise in the primary modern foreign languages classroom, in P.Driscoll and D.Frost (eds.). The Teaching of Modern Foreign Languages in the Primary School, 43-64, Routledge. 伊東治己(2014).『フィンランドの小学校英語教育 ——日本での小学校英語教科化後の姿を見据えて』研究社. Kang, H.D. (2008). Elementary teachers’ perception of the English specialist instructor system and the suggestions for strengthening teacher education, Primary English Education, 14⑵ , 117-143. Kang, H.D. (2011). Elementary teachers’ perception of the English conversation instructor system at schools and suggestions for its improvement. English Language Teaching, 23⑷ , 203-224. 金泰勲(2007).「韓国の初等学校における英語教育の現状と課題」 『教育学雑誌』42,74-94,日本大学. 松宮新吾(2014).『小学校「外国語活動」の教育効果に関する実証的研究―「日本型小学校英語教育」の創設へ向けて』博士 論文,兵庫教育大学大学院連合学校教育学研究科. Rixon, S. (2013). British Council Survey of Policy and Practice in Primary English Language Teaching Worldwide, British Council. Sharpe, K. (2001). Modern foreign languages in the primary school: The what, why and how of early MFL teaching. Routledge.. . 174. (札幌校教授).

(12)

参照

関連したドキュメント

工学部の川西琢也助教授が「米 国におけるファカルティディベ ロップメントと遠隔地 学習の実 態」について,また医学系研究科

目標を、子どもと教師のオリエンテーションでいくつかの文節に分け」、学習課題としている。例

専任教員 40 名のうち、教授が 18 名、准教授が 7 名、専任講師が 15 名である。専任教員の年齢構成 については、開設時で 30〜39 歳が 13 名、40〜49 歳が 14 名、50〜59 歳が

オーディエンスの生徒も勝敗を考えながらディベートを観戦し、ディベートが終わると 挙手で Government が勝ったか

 英語の関学の伝統を継承するのが「子どもと英 語」です。初等教育における英語教育に対応でき

ニューゲイト監獄の教誨師はロンドン市参事会によって任命された︒教誨師はニューゲイト・ストリートに地租を免除された住

エドワーズ コナー 英語常勤講師(I.E.F.L.) 工学部 秋学期 英語コミュニケーションIB19 エドワーズ コナー

授業設計に基づく LUNA の利用 2 利用環境について(学外等から利用される場合) 3 履修情報が LUNA に連携するタイミング 3!.