ミツバチ科学21(4):169-178 HoneybeeScience(2000)
フ ィール ドで観 察 され た
ブ ラジル産 プ ロポ リス起 源植物
加藤 学 ・山田 英生 ・藤善 博人 ・
河合 仲之 ・杉本 広之
主婦の井戸端会議で もプ ロポ リスという言葉 が通 じるよ うにな り,数年前 に比べプロポ リス が一般 の人々に も浸透 し始 めて きた. 世界各地でプロポ リスの研究が進展 している が,依然 と して注 目を集 め続 けているのが ブラ ジル産 プロポ リスである.従来知 られていた抗 菌,抗炎症 などの効果 に加 え,抗癌,冒潰療, 肝臓病への効果 (Park eta1.,2000;佐藤,宮 高,1999;Sugimotoeta1,,1999), さ らにエ イズ (HIV) に対す る抗 ウイルス作用が明 らか になって きた(Parketa1.,2000).これ らの多 岐にわたる効果 と相関す るよ うに新規 の有用成 分が次 々と単離 され続 けている. しか しすべて のブラジル産 プロポ リスにおいて上述 した効果 を 期 待 で き る と は 限 ら な い (Park eta1., 1997). なぜな ら, プロポ リスの主要 な原料が植物で あ り, ブラジルの植生 は多種多様で地域 によ っ / MG=ミナスジェライス州 てめま ぐる しく変化す るか らである. この起源 植物の研究 は重要であ りなが ら極めて少な く, 未知の部分が多 い. その割 に,真実かどうかわ か らない情報が先 に広 まる傾向にある.現在 ま で正確 に証 明 され たの は ブ ラ ジルにお いて7 種である (Banskotaeta1.,1998;Malaspina and Palma,1998;Bankova,2000). それ ら を列 挙 す る と, ナ ンヨウスギ科 のAraucaria heterophylla,同属の別 の 1種 でおそ らくパ ラナマツ
A.
angustifolia,ウル シ科の コショウボ クSchinusterebinthifolius,キ ク科 の ア レク リンBaccharisdracunculifolia,同属の別の1 種Baccharisspり フクギ科 のClusiaminor, C.majorである. 以上 の理 由か ら産地別 ブラジル産プロポ リス の起源植物 を解明す ることは,安定 した安全な 良質のプロポ リスを生産す るために不可欠であ り, さらに作用の異 なる差別化 したプロポ リス 図 1 ミナスジェライス州の南端に沿うマンチケーラ山脈の北面が調査地パ ッサクアトロ図2 マンチケ-ラ山脈 の生産を将来可能 にす るだ ろう. そこで私 たち は,良質のプロポ リスが採取 され るといわれて いる ミナス ジェライス州で, まず野外調査を通 じて起源植物 の研究を行 った. 調 査 期 間 と調 査 場 所 1999年10月 に数 日間 の予 備 調 査 と 2000 年2月 に 1か月間 の本格 的 な野外調査 を行 っ た . 調査場所 は, ブラジル国 ミナス ジェライス州 パ ッサクア トロ町のマ ンチケーラ山脈の一角で ある (南緯22024′,西経44063′;図 1,2).標 高 は約1,000-1,600m,気候 は,亜熱帯気候 に 属 し,夏の平均気温22℃で,冬 は 15℃である. 朝晩は夏で もかな り冷え込 む. ミナス ジェライス州 には10,000種 を超 え る 植 物 が生 育 して お り, この数 は 日本 産 の約 7,500種 よ り多 い. パ ッサ クア トロの植生 につ いては現在 まで部分的に調査 され,同 じ町内で も場所や標高 によ り植生が異 なることが報告 さ れている (Contieta1.,1999).調査 を行 った 5つの養蜂場周辺の植物 に関 しては,後述の表 図3 通りがかりに昆虫を餌食にするダンクイアリ バチ以外 に, シロア リ目の シロア リ類,-チ目 ア リ科のア リ類, スズメバ チ科 ア シナガバチ亜 科 ボ リビア族のハチ, ミツバチ科ハ リナ シバチ 亜科 の-チである. いずれ も真社会性 を営み, 生態系に重要 な役割を している昆虫である.特 に シロア リ塚 を至 るところで見 ることがで き た . なお調査場所で飼育 されているアフ リカ蜂化 ミツバチは,ApismelliferascutelllataとA. m.ligusticaかA.m.meuiferaの問の雑種で あると考え られている. 調査方法 以下 に調査の順序を示す. 1)調査場所 のプ ロポ リス とアフ リカ蜂化 ミツ バチの調査 2)期待 され る植物の調査 (次 ペー ジ注) 図4 巣箱に仕掛けた花粉 トラップ (上)と, トラッ プ内の花粉団子とプロポリス団子 (黒 く見える 大きいもの.実際には深緑色をしている)
171 図 5 プロポリスがほとんど見 られなかったシロア リ塚再利用の自然栄 (左,側面を壊 してある).巣門には花粉だんごをつけた採餌蜂がたくさ ん戻ってきていたがプロポリス荷をつけていたものは見られなかった 3)植生か ら起源植物 を推測 4)起源植物 か ら ミツパ テがプ ロポ リス原料 を採取 している証拠写真の撮影 5)その植物 と養蜂場 の周辺 に生育 している 植物 の採集 6)専門家への同定依頼 (症)期 待 さ れ る 植 物 と は,1) Crane (1990) により纏め られた起源植物 と同種 また は近縁種, 2) ア レク リンという名前で呼ばれ ている種類,3)現地 の情報か らの種類である. 調 査 場 所 で採 取 で きた プ ロポ リス と
アフ リカ蜂化 ミツパテ
まず調査場所でどのよ うなプ ロポ リスが採取 されるのかを知 るために, プロポ リスを巣か ら の直接採取や花粉 トラ ップを付 けての採取 によ って調べてみた (図4上).その結果, ミツパテ が集 めて くるプロポ リスは,すべて深緑色のプ ロポ リスであった.なお新芽や葉 を原料 と して いると思われ るグ リー ンプ ロポ リスは,花粉 と 同様 に トラップの下 に落 ちた (図 4下). 落下 しないポプラなどのプ ロポ リスに比べ多少粘性 が低 いのではなかろうか.同 じ調査場所で以前 に養蜂家が採取 したプ ロポ リスは,茶色や赤褐 色の ものが少 し混 じっていた.季節 によ って も ミツバチが利用す る起源植物 の相違が多少ある のか も知れない.なお同時期 に ミナス ジェライ スとサ ンパ ウロ州で採取 されたプロポ リスは, 茶色や黒色 まで変化 に富んでいた. アフ リカ蜂化 ミツバチの生態調査 において, 自然巣 と飼育 された巣 とそれぞれの ミツバチを 観察 した. シロア リ塚内に存在 した自然巣 にお いては (図 5),外勤蜂の観察 と巣の解体調査の 結果 ほとんどプロポ リスを集 めていなか った. また飼育 してい る巣 で も隙間 のない巣箱 など は, ほとん どプロポ リス原料 を集 めに行 く個体 を観察で きず,花粉や蜜集 めに出ていた. アフ リカ蜂化 ミソバチは, いっで も頻繁 にプロポ リ スを集 めるイメージがあるが, それは大間違 い で,巣の状況 によ り大 きく左右 されることがわ か った.私 たちは,-チの生態か ら野外でプ ロ ポ リス起源植物を探すためには,-チにプロポ リスの採取を促す状況作 りの重要性を知 った. この生態を応用 したプ ロポ リス採取巣箱があ るが (図 6),現在 はあまり用 い られていない. 早 く採取で きる長所があ るが,短所 としてプロ ポ リス中に旭が混 じりやすいこととE]光 にさら されやす くな り品質が落 ちるためである,現在 図6 プロポリス採集用巣箱.巣箱側面は細い桟を積 み重ねた構造で,これをひとつひとつはず して 隙間を作りプロポリスを付着させていく.最終 的に大型の板状のプロポリス塊を収穫できる図7 プロポリス起源植物の調査に際 して巣箱の交 換を行 った.アフリカ蜂化 ミツバチは攻撃性が 強く,多数の蜂が飛び交う中での作業となった. はさ らに進化 した方 法でプ ロポ リスを集 めてい るとい う. その よ うなわ けで効 率 的 な調 査 をす る 1つ には,野外調査 の前 に巣箱 の交換か (図7),栄 箱 に隙間を作 る必要 がある. しか しミツバ チが 攻撃的なため危険を伴 うだ けでな く,-チ ミツ を生産 している養蜂家 に とっては ミソバチが花 に行 きに くくな り,生産性 が低下す るので簡単 図8 7レクリンの頂芽をllBり取る ミツバチ.触角で 芽を探 っている.後肢にはすでに別の頂芽か ら 取ってきた疹出物塊がついている 亡 くな っている. ミツパテで死 ぬのか と疑問 に 思 われ る方 もい らっ しゃるか も知 れないが, マ ウスに対 す る毒性 (LD50-2.8mg/kg)と蜂1 頭 分 の毒 量 (約150/Jg)と攻 撃 可 能 な蜂 数 (1,000頭以上)を考 え る (体重60kgな ら半致 死量 は60×2.8mg-168mg, この量 は ミツパ テ 1,120匹分 の毒量 に相当) と不思議 な ことで はない.私 たちの調査 した巣 では,攻撃性 は巣 内のハチの数 に比例す る傾 向にあ った. なお調 査地 の養蜂家 は,1か月 に一回だけ巣箱 の内検 蓑 1 期待 していた起源植物 科名 種名 マツPinaseae ナンヨウスギ Araucariaceae ア オ イMalvaceae フ トモ モMyrtaceae シ ソLabiatae キ クCompositae Pmusellwttii Araucariaangustifolw ⑤ Hibiscussp. Eucalyptusspp. Psidiumsp. Rosmarinusolficinalis Baccharisdracunculifolia@ B.tridentata Vernoniasp, イ ネGramlneae Brachiariaruziziensis ㊨ :アフリカ蜂化 ミツバチ;⑤ :調査場所に生息 して いた- リナシバチによる利用が認められた起源植物 図9 7レクリンが生育する再生林.広範囲に群生が見られる
173 図10 B.trimera(左)と葉を唱ってみせるClaudio氏 (右) をす るとのことである. 植 生 の異 な る養 蜂 場 周 辺 で の観 察 か ら 期 待 して いた約10種 の植物 か ら探 せ たの は,わずか1種である (表 1).それは,ブラジ ル 名 で "Alecrim-do-campo" (ア レ ク リ ン ・ ド・カ ンポ,以下 ア レク リン) と呼ばれ,学術 的 にはキ ク科 のBaccharisdracunculifoliaで ある (図 8).約 1m の木本で南米の南東部 の原 野や再生林 に普通 に生育 している (図 9). この植物 は,民間で は,強壮や胃腸障害 に用 いるとの ことである.本種が,長年話題 にな っ ていたア レク リン系 プ ロポ リスの起源植物の 1 種 である. なおBacchans属 は, アメ リカ大陸 特産で総種数が約400種,雌雄異株で草本 また は木本で広 く薬草 に使用 されているグループで ある.現地の人 は草本 のB.trimera(図10)を 胃によいといって留 っていた.一方,本属の種 類で, トリコテセ ンという有毒成分が含まれて いるものがあ り,食べ た家畜が中毒 になったと いう報告がある (Harbermehleta1.,1985). 幸 いに してア レク リンではそのようなとが知 ら れていない.有害な成分 と無縁であることを物 語 るかのように本種上 で種種 の昆虫を目撃で き た (表 2).あたか も,この木 の存在で小 さな生 麦 2 7レクリン上で目撃 した昆虫 Order(目) 記録部位 Mantodea カマキリ Orthoptera バ ッ タ Hemlptera カ メ ム シ Coleoptera コウチュウ Hymenoptera ハ チ Dlptera ハエ Lepidoptera チョウ 葉 葉,茎 ′′ 茎,新芽 茎,新芽,莱,花 花 花 態系がで きあが っているかのよ うであ った (図 ll). この植物 を採取す る ミツバ チの生態 につ いては詳 しく後述す る. なお以前 か ら騒がれていたローズマ リーは, 起源植物 にな っていなか った. このことに関 し ては,玉川大学の松香光夫教授が PRA (プロポ リス研究者協会)会報 に 「ア レク リン物語」 と いうタイ トルで旨 く纏 め られてい らっしゃるの で参照 されたい (松香,2000). 予想 していなか った起源植物 としては,Eup-atorium tweedianumを観察す ることがで きた (図12).これ もキク科 で,近年分類が再検討 さ れた属である. 日本 に生育 しているヒヨ ドリバ ナの仲間であ り,同 じグループでは腫癌や下痢 止 めなどに使用 され る薬草である.本種 は草丈 が,約40cm の草本で,新芽 は粘着性があ り, 場所 によって群生 して いた.世界か らまだ一度 も野外観察 のない種類 である. プロポ リス原料 は新芽 と葉か ら採取 していたが,調査期間中, 目撃で きたのは2度である.生産 されているプ ロポ リスとこの植物間 との化学的な比較 は行 っ ていないので, どの程度 プロポ リス中に含 まれ 図11 アレクリンで吸汁するツノゼミの甘露に集ま ってくるアリ(Camponotussp.)
イ ネ Gramineae ② ナ ン ヨ ウス ギ Araucariaceae etc. (卦 ア オ ギリ Sterculiaceae フ トモモ Myrtaceae キク Compositae イ ネ Gramineae Vernoniawestiana Brach‡αriaruziziensis Araucariaangustifolia etc. Waltheriaindica Eucalyptuscitriodora Erobusta Evimmalis Bacchansdracunculifolia Elephantopusmouis Eupatorium tweedはnum BrlaChiariaruziziensis ◎ ○ ? ? ? ? ? ? ? ○ ○ ? ? ? ? ○ ? ? -? ◎ ? ? ④ ナ ン ヨ ウス ギ Araucariaceae クスノヰ Lauraceae ヴ ォキ シ ア VochyslaCeae 7トモモMyrtaceae ア カバ ナ Onagraceae ナ ス Solanaceae ア カ ネ Rubiaceae キ ク Compositae ラ ン Orachidaceae イネ Gramineae マ ツ Pinaseae ア オ イ Malvaceae バ ラ Rosaceae -7} Le guminosae ヴ ォキ ンア Vochysiaceae セ リ Umbelliferae ミソハ ギ Lythraceae フ トモ モ Myrtaceae ノ ボ タ ン Melastomataceae トウダイグサ EuphorblaCeae ナ ス Solanaceae ク マ ツ ゾ ラ Verbenaceae ア カ ネ Rubiaceae キク Composltae Araucariaangustifolia Sp・ Vochysiatucanorum Eucalyptussp. Fuchsiaregia Solanum vulgare Borrerw verticillata
Bacchandastrum tγゆImervium Baccharisdracunculifol2a Eupatorlum tu)eedianum Vernoniawestiana Oncidiumsp BrachwrulruZiziensis Pinuselliotii Sidarhombifolia Rubusrosaefolius Cassiahilariana Vochysiatucanorum Foeniculum vulgare CuPheacaloPhylla Eucalyptusgrandis Esaligna E.Viminalis Psidium cattleianum Leandrasp. Sapium glhndulosum Solanum vulgare Lantanalrifol2a Stachytarphetacayennensis Borreriaverticillata DiodiabrasillenSis Baccharidastrumtriplinervium Baccharistridentata B.tnmera Seneciobrasiliensis アルス トロメ リア AIstrOemeriaceaeAIstroemenaisabellana ○ ○ ? ○ -○ ? ? ◎ ◎ ? ? -? ○ ○ ◎ ? ? ? ? ①:標高 980m ∴②:標高 990m.; ③:標高 1000m . :④標高 1200m, ,I (9:標高 1600m. *Pr: プロポリス ;Ho: ハチミツ; Po: 花粉;資源としての有望性
◎
:N>20; ○: 1<N<20 :? :今後確認 できる可能性有るのか残念なが らわか っていない. 植物相 の異 な る5か所 の養蜂場 にお いて ア レク リンの生育 を確認 で きた3か所 の養蜂場 では, これがすべて起源植物 にな っていた (衰 3). 標高980m の養蜂場① は,開 けた環境 にあ りその周 りにはユーカ リ類 とェ リオ ッテ ィマツ が優先 していた. ア レク リンは, ほとん ど生育 していなか ったので他の起源植物か らも採取 し ていると思われ る. 標高990mの養蜂場(参は,林内にあり、その 周 りにはパ ラナマ ツな どの高木 が群生 して い た.起源植物 は分か らなか ったが,パ ラナマツ の樹液 は赤褐色であ ったのでパ ラナマツ以外の 植物か ら採取 していることが推測で きた.
Johnsonetal.(1994)は,アメ リカでセイ ヨウ ミツバチによるマツ類 の樹脂の利用率が低 か ったことを報告 している.岡山県苫 田郡鏡野 町で飼育 しているセイ ヨウ ミソバチで も針葉樹 起源 と思われ る赤褐色のプロポ リスはあまり集 めない. 標高1000mの養蜂場③ は,比較的開 けた環 境 にあ った.ユ ーカ リ難 と牧草 が優先 して い た.調査場所 の養蜂家 は、 アフ リカ蜂化 ミツバ チが イネ科 のBrachiariasp.の葉 を留 って プ ロポ リスを採取す るとい っていたが,それは確 認 で きなか った.なおE.tweedianumの新芽 とEucalyptuscitriodoraの樹 液か らも採取 し ていなか った. 標高1200mの養蜂場④ は,開 けた環境でア レク リンなどの潅木が優先 していた. ここでは 2種 の起 源 植 物 (ア レ ク リ ンとE.tweedi a-num)とい くつ かの情報 を得 え ることがで き た.やはり高木が優先す る場所 よりもず っと調 査が Lやすか った.頻繁 にア レク リンか らプロ ポ リス原料を採取 しているのを観察で きた.一 方でア レク リンが生育 している同地域で同時に 採取 され る他のプロポ リス起源植物 は, どのよ うな状況 の時 に採取 され るのだろうか.興味深 い疑問である. ここでは,分類学上 ミツバチ
(
A
pissp.)に 近縁 の2種 のハ リナ シバチを多数 目撃 した.輿 175 味深 いことにハ リナ シバチの仲間は, ア レク リ ンか ら疹出物 を一度 も採取 していなか った (表 1).一方でパ ラナマツか ら- リナ ンバチの1種 が樹液を集めていた. セイヨウ ミツバチ問で も 系統の相違 によ って多少 な りとも採取するプロ ポ リス原 料 が異 な るよ うだ が (Micheland Park,1997),亜科が異 な って も誘引され るプ ロポ リス起源 に相違があ りそ うである. そ うい う意味ではハチ目の問においてプロポ リス起源 は花 よ りも競合が避 け られ独 占で きる傾向にあ るのか も知れない. 標高1,600mの養蜂場⑤ は,比較的開けた環 境 にあ り野生植物 とユ ーカ リ類 が生 育 して い た. ア レク リンは生育 していなか った.起源植 物 を見つけることはで きなか ったが,新芽か ら 粘着性 の溶出液が出ていて,かつプロポ リスの 匂 いが したB.tridentataが起源植物 にな って いるか も知れない. 以上の結果か ら,起源植物 として期待 されて いるパ ラナマツやユーカ リ頬 などが巣箱の近 く に存在 していたのに, それ らの植物 はプロポ リ 図12群生す るE.lweedianum(上) とその頂芽か ら疹出物を噛り取るアフリカ蜂化 ミソバチ (下)バチが他の植物 よりア レク リンに強 く誘引され やすいことは間違 いなさそ うである. アフ リカ 蜂化 ミツパテが何のためにア レク リンにこだわ るのかは, はっきりわか らなか ったが, セイヨ ウ ミツパテの原産地 には自生 していない有用な 薬 草 を選択 しプ ロポ リスを熱心 に集 め る様子 は,あたか も製薬製造を代行 しているかのよ う である. ブラジルか ら有用 なプロポ リスが生産 されやすい理由は,植生 だ けでな くアフ リカ蜂 化 ミツバチの生態 にも隠 されているのか も知れ ない.
アレクリンの漆出物を採取する
アフ リカ蜂化 ミツバチの行動から
この起 源植物 の最初 の観 察記録 は01iveira and Bastos (1998) によるものだろ う. また 柴 田 ら(2000)は, ミナス ジェライス州 (南緯 21075′西経45087′)で ア フ リカ蜂化 ミツパ テ が, この植物上 で新葉 や若 葉 の先端部分 を探 し,若葉や新芽の先端 を留 りそれ らを前脚 ・中 脚 に移動 し後脚 の花粉か ごに付着 させ るのを発 表 している.私 たちの調査で も新芽 の先端 を留 っているのは観察で きたが, この植物 の若葉 を 留 っているのは見なか った (n>50).現在 まで 温帯のセイ ヨウ ミツバチが,新芽 ごとプロポ リ スを採取す る行動 は知 られていない. グ リー ン プ ロポ リスの所以 は,新芽 ごと採取す るアフ リ カ蜂化 ミツバチの行動 に隠 されていたのである が, ブラジルにアフ リカ蜂化 ミツバチが導入す る前のセイ ヨウ ミツバチのプロポ リス採取方法 はどのよ うであ ったのだろ うか ? ちなみに岡 山県苫 田郡鏡野町では,緑色のプロポ リスも集 めている.温帯 のセイ ヨウ ミツバチで も新芽 の 留 り行動がないとは断言で きない. し, もしすでに留 られている場合 は,他の頂芽 へ行 く.③外見上 まった く同 じこの植物 の株問 で も誘引率がまった く異 な った (表4,図 13). ④ ミツバチの後肢 に集 めて いるプロポ リス団子 があまりにも大 きくな りす ぎた場合,荷重 に耐 え られな くなり花粉か ごか らそれ らが落下す る ことがあ った.⑤新芽を留 り終わ った後, この 植物 の新芽 は切断 される (図14左).その形態 は、極めて特徴的で新芽が成長 して も奇形す る のである (図14右). (Dは温帯 の セイ ヨウ ミツバ チで も観察 で き る.① と③ は, ミツバチが嘆覚 により誘引 され ることが推測で き,(参か らプロポ リス起源植物 に誘引されて も採取部位の物理的な形態の確認 は,嘆覚だけでな く触覚や視覚 も駆使 している ことが推測 された.③ は,私 たちに ミツバチが どの成分 に誘引されやすいか教える ヒン トを与 え るか も知れない. この個体問においては, い くつかの成分比率や量が異 なるか も知れない. なお花が咲 いていなか ったので2株 とも雌株か 蓑 4 アレクリンの株問で生 じた誘引率の相違 株 新芽調査数a) 留られていた数 (%) 左側A IOO 94 右側B 100 25177 図14 アフリカ蜂化 ミツパテによって噛り取 られた 新芽の部分 (左).疹出物を噛り取る際に,葉原 基あるいは幼妻を含む芽の構造が損害を受ける. 切断された幼葉は,その後成長 し,先端が尖らな い特徴のある形になる. 雄株かわか らなか った.④ は, 自分で もプロポ リス原料荷を花粉か ごか ら外す ことが可能であ ることを示唆 しているか も知れない.現在 まで セイヨウ ミツパテは自分では花粉か ごにつ けた プロポ リス原料荷を外せないと考え られている が,そのあた りの行動観察の精査が必要であろ う.⑤ は,特徴的な留 り跡 によ って, この植物 か らプロポ リスが集め られたかどうか推測す る ことがで きる.例えば,巣箱か らあまりに も遠 く離 れ た所 で は
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な どの花 には来ていたが,群生 しているア レク リンに ミ ツパテは来てお らず,かつ新芽 も留 られた跡が なか った. この ことか ら, アフ リカ蜂化 ミツパ テはそ こか らはプ ロポ リス原料 を集めていない ことが示唆 され る.巣か ら遠す ぎるプ ロポ リス 起源植物 は,採取 しない傾向にあると考え られ る. ミツバチはコス トに見合 う範囲内で,巣か らなるべ く近 い所 に存在す る起源植物か ら採取 していることが推測で きる. さらにこの特異 な 留 り跡 を応用す ると新 たな起源植物を探す時の 手がか りとな り,多種の植物か ら絞 りこめるこ とがわか った. 例えば図15の植物 は, プ ロポ リス起源植物 と しての可能性がある.後 は化学 的な面でプ ロポ リスとこの植物の比較研究をす ればよい.ただ し他 の昆虫 も ミツバチと同様の 起源植物 を利用す る可能性があるので,竃 り跡 だけでは、残念なが ら判断で きない. 図15 起源植物の候補はたくさんあ る.今後の研究によってさらにプ ロポ リスの起源植物の特定が進 むと思われる.今後のプロポ リスの研究
今回の調査か ら養蜂場 で ミツバチと接 し, そ こで長時間動植物 を見慣れている養蜂家の情報 は,千句一言 に値 し重要であることを感 じた. だか ら長年の経験の中で得 られた情報 を持っ彼 らと学術的な知識を持っ研究者の共同調査 は, 意義がある.そこで得 られた情報を蓄積 し,公 開す ることは,今後,起源植物を明 らかにす る 上で重要である. 現在 い くつかq)研究機関か ら似たよ うな内容 の成果が出て独立的に発表 されているようにも 思 う.例えばア レク リンの成分や作用の研究が まさにそうである.先取権 に従えば、最初 に業 績 をあげた方が利益 の大半 を得 られる仕組みに な っているだろう.競争す るか ら研究が早 く進 展す ることも考え られ るが,多様な ブラジルの 植生を相手 に している現状で不利 となる重複研 究 は, なるべ く避 けたいものである.理想 は, 各研究機関が,得意 と している研究分野を分担 し,常 に情報交換 しなが ら研究を進めることが 最 も効率的な方法ではなかろ うか. そ ういう意 味では,共同研究 も威力を発揮す る 1つの手段 だろう. 謝辞 本研究 にあた り,玉川大学の松香光夫,中村 純両博士,CentrodePesquisasdeHist6ria Naturalの橋本梧郎氏,ClaudioMota氏,増 田昭次郎氏,狩山俊悟氏 MN-Propolis杜の松2000.Apidologie31:3-15.
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Weconducted an intensivefield survey on thesourceplantsofpropolisattheMantiqueira MountainrangeinMinasGerais,BrazilinFe b-ruary 2000 Research aplaries were located aroundPassaQuatro(S:22024',W:44063')and
nculifoliaandEupalorium tweedianumwereide -ntified as the plantorigin ofpropolis there. Both of2 species belong to Compositae and producebudexudate.Africanizedhoneybeese n-thusiastically gathered the bud exudate from theformerplant.even underdifferentveget a-tion.
Weobservedalotofinsectspeciesusingthe plantofB.dracuncuLifolia director indirect. However,stinglessbees,Trigona(Trigona)niger -rima,PaTlatrigonaPelroPolis,PlebeiaguadriPunct -ataandMel砂onasp.ascoloselyrelatedspecleS ofhoneybeesdid notseem togatherthebud exudatefrom thisplant.
Unique behavior of AfricanlZed honeybees while they were gatherlng the bud exudate fromB.dracunculifoliawasobserved.The yob-viously bitbuds and theirantennae touched the budstightly.Afterthey finish to gather exudatefrom abud,honeybeescutoffthetip ofthe bud.Theform ofthecutend had a characteristicappearanceasamark.Counting thismarkwefoundtheattractivenessofthe且
dracunculifoliawasdifferentfrom planttoplant even they had similarappearance.This sug一 geststhatAfricanized honeybees usea order cue rather than visualone to approach the plantandthereisasllghtdifferenceinvolatile
componentdependingonplants.
Thebud from which theexudatewerecoレ Iected will produce a characteristically de -formedleavesifithasnotdead.Thedeformed leavesasbite一markprovidesstrongevidenceto presumethatAfricanizedhoneybeesgatherthe materlalofpropolisfrom theparticularplant.If we can flnd numerous number of the bite一 marksaround an aplary WeCan identlfy the
sourceofso-cal一ed "green propolis"with high reliability.This kind ofpresumption willbe morehelpfulforchemicalanalysistocompare thechemicalcompositionof boththepropolis from theapiaryandthesourceplantsgrowing aroundtheapiary.