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不安定性原理とハロッド=ドーマー型経済変動成長理論

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(1)

滋賀大学経済学部

究叢書第

3

5

不安定性原理と

ハロッド=ドーマー型経済変動成長理論

鈴 木 康 夫 著

(2)

不安定性原理と

ハロッド=ドーマー型経済変動成長理論

鈴 木 康 夫 著

(3)

は じ め に

周知のように、現代の経済成長研究分野の中心は、いわゆる「内生的経済成長 理論」や、これに基づく長期経済政策理論や経験的な実証研究などの諸応用研究 分野にすでに移行してしまった。しかしながら、経済発展論や開発経済論、及び、 経済成長の経済史的研究においては、ハロッド=ドーマー型経済(変動)成長理 論やこれを代表とする│日経済成長理論は、いまだに意義を失ってなしこうした 分野でも、とりわけ、むしろ実際的な諸応用研究では活用されている。それゆえ、 その理論的研究もまだ意義を失ってはいない。 とはいえ、ハロッド=ドーマー型経済変動成長モデルについては解釈論的な研 究や新古典派的な拡張研究は、すでに、かなり解明されてきている。そこで、本 書では、解釈論的研究から少し離れた形で拡張研究が展開され、基本モデルその ものの拡張研究を基礎として、公債蓄積の動学的応用分析や最適経済成長理論の 分析なども試みられる。もちろん、必要な分の解釈論的な分析も、少ないがある 程度行なわれる。 本書は基本的に過去の互いに関連ある諸論文に基づいているので、論文集の形 で出版される。したがって、以下に連なる諸章は、それぞれ別個の論文に基づい ているが、この表題の下に収まることで内外に一層厚い脈絡を得て、一つの書物 としての有機的な意義が生まれる。本書に収録きれた諸論文との関係では(どれ も多少の加筆と修正はあるが)、本書の構成は次の様になっている。 本書の第1章の第1節と第2節は、その先頭からのほとんどの部分が新規に書 かれたものであり、末尾の段落の後半から以下の章末までが、「不安定性原理の形 式的な表現についてのノート

J

(大阪府立大学大学院『白鷺論叢j第

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号、

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年)とほとんど同じ内容となっている。本書の第

2

章は「擬似ハロッ ド模型

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(大阪府立大学大学院『白鷺論叢』第

1

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号、

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年)の第

2

節後半と第3節を除いた内容にほぼ同じで、ただし先頭の数段落が加筆・修正き れている。また、本書の第3章も「ハロッド的変動成長分析の一般化

J

(r神戸学 院大学論集』第

2

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巻第

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年)とほとんど同じである。本書の

(4)

と長期財政支出政策

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(r (大阪府立大学)経済研究』第

3

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巻第

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号、

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1

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1

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年)とほとんど同じである。しかしながら、本書の第

5

章は全く新規に書か れた論文を収録したものである。 ハロッド=ドーマー型経済変動成長理論のモデル分析の研究は、しばしば何年 もの間隔をあけて断続的に行なわれてきたけれども、思えば約

1

9

年携わって来た ことになる。この研究主題は、かつて、本学の名誉教授でもあり 3年前に退官さ れた私の思師の玉木興乗先生の下で、初めて論文なるものに着手したときの主題 であり、また後に、故岡本武之先生の下でケインジアン研究を続けたときの主題 の一つでもあるo また、学部の恩師である関根正行先生の下ではじめて経済成長 理論を勉強してからするとこの種の勉強は一応

2

0

年を越えることになる。それゆ え、個人的に思い入れが深いものであり、このように恩師のあとに続いて本学で 研究生活が送れ、かっ諸先生方と同様に研究叢書を出させていただけることに、 玉木先生と岡本先生、関根先生はもちろんのこと、故和田貞夫先生、山谷悪俊先 生、宮本勝浩先生、荒井勝彦先生、駿河輝和先生、米j畢忠幸先生、橋本圭司先生、 赤壁弘康先生、内上誠先生、荒木長照先生、浅羽良昌先生、伊原豊賓先生、すで に退官された諸先生方と同僚の諸先生方、また私的に支えてくれた先輩方や友人 と家族に対して御礼を申し上げると同時に、心から深〈感謝いたします。 また、本書の審査にあたられた先生方には、不完全で、ひどく粗雑な原稿を急い でお読みいただき、にもかかわらず多くのコメントをいただき大変ご迷惑をおか けいたしました、重ねて御礼申し上げます。そして、経済経営研究所には本書に 関して実際上いろいろとお世話いただき誠にありがとうございました、御礼申し 上げます。

2

0

0

1

年 新 世 紀 椿 の 頃 鈴 木 康 夫

(5)

目 次

はじめに 第l章 ハロッド=ドーマー型経済変動成長理論と不安定性原理の表現 1.序:ハロッド=ドーマー型経済変動成長理論研究に寄せて....・H ・.1 2.ハロッドニドーマー型経済変動成長理論の問題………...・H ・..……3 3.保証成長率の存在...・H ・...・H ・..………...・H ・...・H ・..…...・H・...8

4

.

不安定性原理の諸表現例…...・H ・..…...・H ・...・H ・..………

1

2

5

.

不安定性原理に対する理解...・H ・...・H ・..………...・H ・...・H・

.

1

7

第1章参考文献....・H ・-……・・・H ・H ・....…・…・・…...・H ・...・H ・-………….20 第

2

章 ハロッド=ドーマー型変動成長理論と擬似ハロッド模型 1.基本的なモデル設定と分析目的…...・H ・..………・H ・H ・...・H ・..……

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3

2

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所得決定と静学均衡....・H ・-………H ・H ・-…....・H ・....・H・....…...・H ・

2

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3

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静学均衡についての補足………...・H ・..…...・H ・...・H ・..…

2

8

4.擬似ハロッド模型の動学分析…-…....・H ・-……・・……・…・……...29 5. 調和的体系のモデルと動学的経路…………...・H ・....・H ・H・H ・...・H ・35

6

.

分析結果と若干の解釈・…・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

4

4

第2章参考文献....・H ・-…....・H ・....………H ・H ・...・H ・...・H ・...・H ・.46 第3章 ハロッド的変動成長分析の一般化 1.ハロッド的変動成長分析の目的...・H ・....・H ・-…H ・H ・-…H・H ・....……

4

9

2

.

分析の基本体系....・H ・..……...・H ・H・H・..………・……...・H ・....・H ・-…

5

1

3

.

保証成長の基本性質………...・H ・...・H ・..…

5

2

4.準 Harrodian動 学 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

5

5

5

.

伸縮的保証成長率:中期と長期・………...・H・...・H・...・H・-…

5

8

6.総合的な伸縮的保証成長率と成長循環的解釈…・・…・…・…....・H ・...65

(6)

第4章 経済成長の公債蓄積と長期財政支出政策 1.公債蓄積の事実と分析目的…・・……...・H ・....・H ・-………H ・H・

7

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2

.

政府の財政予算制約式と公債の長期蓄積…...・H ・...・H ・...・H・...…

.

8

2

3.長期財政政策と公債蓄積の動学過程・・H ・H ・-………...・H ・.86 4. 5つの場合の長期財政政策の動学的諸結果…・………....・H ・...91 第

4

章参考文献....・H ・...・H ・...・H ・-…H ・H ・...・H ・..…...・H ・...・H ・...・H ・

.

9

2

第5章 ハロッド=ドーマー型最適経済成長理論 1.ハロッドとドーマーの動学と最適成長...・H ・..……...・H ・-…H ・H ・..95

2

.

ハロッド=ドーマー型最適成長の基本的モデル………

9

7

3

.

ハロッド=ドーマー型最適成長の基本的問題と解軌道…....・H ・-…

9

9

4

.

ハロッド=ドーマー型最適成長問題と確率的不安定性・…...・H ・

.

1

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3

5.ハロッド=ドーマー型最適成長と確率的不安定性を伴う基本的 モデルの試論的分析……...・H ・...・H ・...・H ・...・H ・...・H ・..……

1

0

6

第5章参考文献....・H ・...……・…・・……・・……...・H ・-…ー……H ・H ・...113

(7)

1

章ハロッド=ドーマー型経済変動成長理論と

不安定性原理の表現

1.序:ハロッド=ドーマー型経済変動成長理論研究に寄せて

経済成長理論の起源は、ロビンソン (Robinson[1962, 11 J)や佐藤 [1968,第

1

章]のように、古典派に求めることもできるけれども、現代の経済成長理論の 起源ということであれば、やはりハロッドとドーマーにありと考えるのが普通で、 あろう(lIarrod [1939

1948

1973JおよびDornar [1946

1947

1957J)。も ちろん、 1990年代の、いわゆる「内生的経済成長論」の盛んな研究からすると、 旧式の経済成長理論として、ソロ一一スワン・モデル (Solow-Swanrnode!)で有 名な周知の新古典派経済成長理論 (Solow[1956JとSwan[1956Jなど)を強調 する人がいても何の不思議もない。しかしながら、新世紀を迎えた現在にあって すら、例えば、新興アジア諸国経済の低落からの弱々しい回復状況や、少なくと もわが国におけるように、長い不況を引きずったままの形で低迷を続けている現 実の経済事情を見る限りにおいては、ハロッドとドーマーのような考察の意義を 全く否定することはできない。まだ早計ではあるけれども、新聞報道などでもし ばしば指摘されているよ7に、最近のアメリカ経済の不安定な成長状況を考える と、むしろ、彼らのような考察は、現実的にむしろ重要であり、実際上必要です らあるo 遠目には高等数学の教科書かと思わせる数理経済学の本から目を離して まわりをよく見渡せば、高度に専門的で難解な問題以外にも、まだまだ古典的で、 古臭い経済問題が息づいているのであり、こつした十分に解決されていない問題 に研究の関心を振り向けることは、経済学が実証的な学問である以上、やはり自 然である。このような素朴な理由に、本書での考察と諸分析は基本的に動機付け られている。 また、ハロッドとドーマーの経済変動成長理論は、 20世紀中頃からロストウな どにより経済史や経済発展・開発理論に応用されていて、現在でもそうした分野 (1)Rostow[1960Jおよび絵所 [1997, 第1章]を参照。

(8)

の実証分析では用いられている。もちろん、新古典派経済成長モデルや内生的経 済成長モデルの実証分析の方が全体的に見るとかなり優勢で、はあるが、基本的な 実証的考察や、特定の応用実証分析、政府部門の果たす役割が大きい場合の実証 的考察などではいまなお用いられている(秋山 [1999,第 3章,第 4章

J

)

0 例え ば、対外部門のもたらす外貨資金制約の下での経済発展問題や、累積債務を伴う 経済発展問題などの応用的な経済発展問題があり、主にマクロ経済的な政策が関 連する問題である(秋山 [1999,第 10章

J

)

。もちろん、解釈論的な、主にハロツ ド理論の研究もまだ可能だし、景気変動理論や経済成長理論としても、その単純 な生産関数などの側面を改良することで、理論的な説明カと、とりわけ、予測性 を強化することは不可能で、はないと考えられる。それゆえ、偏狭な解釈論的研究 に固執せずに、さらに一層の拡張研究および応用研究を試行すれば、まだまだ新 しい成果の導出が可能で、あり、少なくとも、これまでの諸研究では経済政策的な 応用研究に、まだかなりの余地を残しているように思われる。 特に、 1980年代以降でいくつかの先進国やアジアの新興工業諸国は、周知のよ うに実際上長期的な不安定きを示していることもあり、経済発展の応用経済政策 的ないし総合的政策の面で、ともかく実際的な経済に関する実証研究のためにも、 いまだにハロッドとドーマーの理論研究は、基礎研究として確固たる意義がある と言える。それゆえ、本書では、応用的ないし政策的な拡張を意識しつつ、ハロッ ドとドーマーの理論研究が行なわれるが、すでに多大な研究が展開された均斉成 長という純粋な長期均衡自体の安定性問題にはあまり分析の関心を置かず、主に 不安定性原理の一般化と政策的な応用研究の諸考察が展開きれる。ただし、考察 の出発点として不安定性原理の再吟味もある程度行なわれるが、これについても すでに多大な研究成果が蓄積されているので、あまり手がけられていない分析を 除き、不必要な長いサーベイやしばしば紹介を主とする解釈的な分析の展開はな るべく避けられている。議論の出発点として、ここからは、通常よく用いられて いる「ハロットドーマ

-J

モデルという表現に注目することで、彼らの経済変動 (2) 岩井・伊藤 [1994,VII, p.273Jは手短ながら構成内容がよいサーベイであり、ハロッド理 論の拡張的な非線形化研究も複雑系の分析手法を用いた新たな考察を展開していることを伝 えている。

(9)

第1章 ハロ yド=ドーマー型経済変動成長理論と不安定性原理の表現 3 成長理論の基盤となる考え方や意識とその動学的問題に接近する。

2

.

ハロッド=ドーマー型経済変動成長理論の問題

ハロッドとドーマーの諸研究で提示されている理論、特に数式による表現は、 しばしば一括した形でハロッドドーマー・モデルとして言及されているが、この 用語法はある程度定着しているけれども、多くの場合それは大別して二通りに用 いられていて、その使い手によって意味するところががかなり異なっている。す なわち、第 lのものは新古典派的な用語法であり、周知のようにソローやノ〈ーマ イ ス タ ー ド ベ ル (Solow[1970]、Burmeisterand Dobe

l

1

[1970])などの代表 的な新古典派や関連の諸研究で広〈用いられ、これによると、ハロッドドー マー・モデルとは、ほとんどの場合、固定係数の生産関数を採用する経済成長モ デルのことを意味する。他方、その第2のものはケインジアン的な用語法であり、 投資の変動が企業家の行動を通して不完全雇用の経済状態と関係する側面を備え ている経済成長モデルのことを意味する。 このケインジアン的用語法は、要するに、企業の主体性に基づく投資関数がモ デルに導入されているかどうかといつことを問題にしているのであり、そうであ るが故に、投資の事前と事後の問題や、利潤率や期待調節などの側面がモデルで 特徴をなし、またモデルの動学的不安定性を左右するとりわけ重要な役割を演じ ることとなる。これら二つの用語法で、新古典派的な用語法はしばしば普通の教 科書にも見られ多用きれているが、ケインジアン的なものは、表題や見出しなど で導入的に用いて大きな捉え方をするだけのための場合の方がよく用いられる が、それ以外にはあまり使われず、多くの場合は、あるいは詳細な議論の場では、 併用もあるにはあるが、考察の主要な部分ではハロッドのみが「ハロッド理論」 とか「ハロッド型理論j とかの呼称で言及きれている(本書でもこれらとほぼ同 様の用語法に従い、大分類の表題ぐらいの意味合いで連結の呼称が用いられたり、 また、ハロッドだけの表現も使用される)。 例えば、ヒックスの『資本と成長

J

では、 ドーマーの名前が出てくるのはほん の3回ぐらいで、ハロッドの添え物程度で何の言及もなく、ハロッド型モデルは 誘発投資に強調を置いた経済の動きを説明する理論として捉えられている。また

(10)

代表的なケインジアンの側で見ると、ロビンソンの『経済成長論』では、付録と なっているケインズ派モデルのところで(その注

(

2

)

において)、ハロッドについて の本文での叙述に際し、ほんの副次的に一度触れられているだけであり、しかも 投資誘因に関する定式化がないことを理由にドーマーのモデルをケインズ派から 除外している。さらに、ポストケインジアンでは、例えばクリーゲルの『政治経 済学の再構築』に至っては、ハロッドやカレツキーについての叙述はいくつも見 られるが、ドーマーについては皆無で、ある。このようなことから、ハロッドードー マーでかそれともハロッド単独で、かの主な呼称の採否というのは、結局のところ その呼称を採用する研究(者)の経済学的な立場の違いに依拠する。 このようにケインジアンでも、極端な立場にたつケインジアンの場合は当然に ドーマーを無視してハロッドのみが問題とされるが、そうでない一般のケインズ 派的な経済成長研究においですら、よくてもドーマーが名ばかりの扱いに止めら れ、その一方で、ハロッドがかなり重視あるいは強調されるのが一般的である。ま してや、本書もそうであるが、経済変動成長動学的なモデルの考察という場合に は一層そうである。かつて、セン (Sen[1970

Introduction])によって、経済成 長理論におけるケインズ派と新古典派の相違は明確な意味での独立な投資関数の 採否にあるということが指摘きれたが、その意味で‘ハロッドの理論はまさにケイ ンズ派の代表的な存在である。一方、 ドーマーは、少し遅れて、動学理論として 豊かな内容が混在するハロッド理論の要点を明確にし、生産能力やこの利用係数 を重視して経済成長と投資の二重性に強調を集約することで、投資の相対的な動 的弱体化という不安定性に注目しつつも、景気変動的側面ではなく経済成長論を 主な問題とした (Domar[1957. III. IV])。それゆえ、固有の着想や仮説提示と いう一次的貢献という点で、は迄かにハロッドには及ばないのであり、 ドーマーが 注目した変数もハロッドの主張の枠を越える説明力を持ち得なかったので、ハ ロッドに対して二義的な位置付けが一般的になされるようになったと言える。 このようなことから、本書の考察では、ハロッドードーマ一理論とは言っても、 (3) ここで取り上げている3冊の文献は、 Hicks[1965, chap. 11, 1.Jと、 Robinson[1962, II. J および、 Kregel[1975Jである。また、成長理論の手短でおおざっぱな学説史的な背景につい ては、 Brems[1986, part VJが有用である。

(11)

第1章 ハロ yド=ドーマー型経済変動成長理論と不安定性原理の表現 5 主にハロッドの理論に焦点を当てることがかなり多いので、それについての大ま かな本書の基本的な立場あるいは捉え方を、その経済学的役割の面に着目して、 以下の諸議論の展開のためにもここで若干触れておしまず、この章の表題で、 すでに単に成長ではなく「変動成長」という表現を用いているが、これは、ハロッ ドとドーマーが共に、経済動学あるいは経済の動学的過程の基盤が景気循環より も経済成長にあるとしながらも、経済成長とこの不安定性を併せて論じていると ここでは理解されているからである。そして、本書では、主に前半で、ハロッド 的な経済成長の不安定性の問題が論じられ、後半の半ば過ぎから、経済成長が伴 うドーマー的な公債蓄積という政策関連の応用理論問題が検討され、最後の章で は、ハロットドーマー型の最適経済成長理論が検討される。しかしながら、以下 に連なる諸章に、経済成長政策の理論に関する一つの章が欠落していることは大 変残念であるが、この政策的考察については別の機会に展開したい。 このように、本書では、ハロッドードーマー型経済変動成長理論を論点の軸とな る3つの動学的問題で捉える。すなわち、第1の問題は、短期的な局面に関連深 いもので、現実成長率 Gが保証成長率 G却に収束するかどうかという、ハロッ ドの「不安定性原理]の動学的な問題のことである。第2の問題は、そうした短 期調整が済み、その結果現実成長率

G=G

叫がほぼ成立したときには、長期的な 局面において、どのような成長過程を経済は歩み、特に経済成長の均衡と安定性 に関する諸性質はどうかという分析的な問題である。第

3

の問題は、どんな成長 過程で最適な成長が特徴づけられるのか、またその諸性質はどういうものかと いった社会厚生に関する動学的な問題である。もっとも、より大きな捉え方をす れば、これら3つの前半の 2つを純粋なマクロ理論問題とし、その第 3の問題を 動学的厚生経済学の問題と捉え、さらに、これらの他に、第1と第2の問題に関 する経済安定成長政策や、第3の問題で提示される最適経済成長経路を実現する ための動学的経済政策などが、応用理論と経済政策論の両面から考察されねばな らないという経済成長政策の問題があり、一般的な経済成長論にとってこれらは どれも不可欠な要素である。 ここに示した3つの動学的理論問題について、第1と第2の動学理論問題は、 解説書や諸研究でしばしば取り上げられ、前者は「不安定性原理

J

の解釈や定式

(12)

化論争の問題となったし、後者は新古典派成長理論の出現により問題はあるもの の長期分析による一つの解決を見た。これら 2つの問題を重視してハロッドー ドーマー型経済変動成長理論を捉えるのはごく普通で、、ジョーンズ(Jones[1975, chap. 3J)や末永 [1974,第一部 1,IV・3Jなど多くの文献で言及されている。 しかし、第3の動学的理論問題もそれに含まれるとする明示的な捉え方は少なく、 ハロッドとドーマーでは均斉成長が目標として重視されているため、その第

2

の 問題と外見上の違いが見えなく、ほぽ同ーの問題意識の内に両問題が扱われてい るようである。むしろ、定式化などで明瞭に識別されるため、新古典派の最適成 長理論が、一般には代表的な最適経済成長理論ということになっている。固定係 数生産関数の下での新古典派定理の研究(木村 [1969,pp. 128-130J)はあるが、 この種の最適成長モデルは形式上類似のものが内生的成長理論で扱われているこ とを除くとほとんどない。 本書では、上でも触れたよフに、第1と第3の動学的理論問題と若干の応用政 策理論的な動学的問題とを考察するけれども、以下の諸分析はどれも、その第

1

の問題に関する分析でさえ解釈論的な色彩は薄〈、ハロッドとドーマーによる研 究での基本的な諸要素に立脚しつつも、拡張的なモデル考察を展開する。つまり、 本書での考察の目的は、ハロッドドーマー型経済変動成長理論の手短な吟味とそ の一般化により動学的な説明力に優れた改良ないし拡張モデルを新規に提示し、 この諸性質を分析することであり、またこフしたモデルを用いてマクロ動学的な 応用問題に適用を試みることである。したがって、以下及ぴ全体での本書の考察 は、古典的なハーンマシューズのような広範なサーベイや論争についての整理を 行うことはなく、諸文献についても必要以上に言及することはない。なお、ハロッ ド=ドーマー型経済変動成長理論という表現を用いているわかり易いもう一つの 理由は、多くの理論材料がハロッドに由来するに対して、分析の特色となる主要

(4) Henin and Michel [1982Jは投資率と雇用率による動学的利潤最大化でハロッド的な不均

衡経済成長経路を合理的に説明するモデルを提示しているが、これは最適成長ではなく普通の 実証的理論としての成長モデルである。また、最適経済成長理論については大住[1985J、斎藤

[1996J、小野 [1992J、吉川 [2000J、Romer日996J、脇田 [1999Jも参照。

(13)

第1章 ハロッド=ドーマー型経済変動成長理論と不安定性原理の表現 7 な変数として、経済の現実に基づく実行可能性を考慮したドーマ一流の定義て。稼 働率を用いてることである。 また、本書での以下の諸分析と同様の資本稼働率に注目した先行研究に、鴇田 [1976,第 6章]がある。この研究は、設備稼働率を主要な新変数とする「稼働 率で修正された加速度原理」を採用して分析の一般化を試みたが、それ以外のモ デル設定は初期の諸ハロッド研究の成果にほとんど依存したもので、必要とも思 えない不安定性原理の動学的方程式をアド・ホックに導入するなど、モデルの過 剰な解釈論的定式化にもかかわらず、ハロッドの不安定性をやや詳しく確認する という、その造りから当然とも思える結果以上に新しい成果は見出せず、結局新 変数の役割がほとんど活かせていないように見える。また、足立[1982,第 8章] も、稼働率を主要な変数の一つにしているが、その場合稼働率は、雇用・資本比 率のことで、資本設備の稼働率も意味するが、ハロッド的な不安定性を詳細に確 認している。また、本書の考察や諸分析とは関連が深くないが、最近の難波

[

2

0

0

0

J

は、学説史的考察やニュー・ケインジアン風の合理的なモデル分析、及び、ハロッ ド置塩型投資関数に基づき解釈論的だか企業財務の側面で若干の拡張が見られ る分析などを試みている。 なお、内生的経済成長理論については本書の考察がその分野と関連が薄いので、 以下では全く言及きれないが、別の機会に触れてみたい。そして、この第

1

章の 残りの部分は、かつて論争的な話題となったハロッドの「不安定性原理」に関す る手短な吟味に充てられ、また同時に以下の諸章で展開きれる諸分析の出発点と きれている。続〈第

3

節では♂(三所望貯蓄率Sd) と

C.

(三必要資本係数Cr) の存在をそれぞれについて証明し、したがって、保証成長率G却の存在が証明さ れる。その際、 G却が経済学的な意味として均衡成長率の含意を持つということが (6) より詳細な理解には、 Jones[1975, chap. 3, 3. 7J を参照。 (7) ロビンソン的な要素を取り入れて、足立[1982.第8章]は、稼働率を主要な変数の一つに するが、稼働率は雇用・資本比率(ニ雇用量と資本ストックの比)のことで、資本設備の稼働 率も意味し、さらに保証成長率概念を分裂させた期待成長率や特別な均衡成長率、長期期待成 長率などを導入しでも、ハロッド的な不安定性を詳細に確認する考察にすぎず、代りばえのし ない不明瞭な要素ストックの制約も手伝っていたずらに議論を難解にしている。

(14)

わかるであろう。すなわち、 G却は、短期的側面では、代表的経済主体という平均 的な意味で社会的なある望ましい成長率として位置づけられるのである。第

4

節 では、具体的な動的体系が特殊な形で与えられて不安定性原理の可否が問われる。 第5節では、第4節の補足と若干の結論が含められている。

3

.

保証成長率の存在

いわゆる[不安定性原理」は、初期のハロッド (Harrod[1939J)よりも後の彼 の文献(Harrod[1973J)において形式的に一般化されている。すなわち、所望貯 蓄率

S

d

が現実貯蓄率Sと区別され、

S

d

は保証成長率 G即を構成し、一方、

s

は 現実貯蓄率 Gを構成するようにハロッド (Harrod

973J)は、 Sとらを与え ている。しかも、彼は G卸が一意な値を持つものと想定する。ただし、保証成長 率 G却は、形式的にはね/Cr(Cr=必要資本係数)に等しいものと定義されてい るが、本質的には

S=Sd

かっ

C=C

r

(C=

現実資本係数)であるところの Gの ある値と、強い意味合いで定義されている(Harrod[1973Jの第2章の前半を見 よ)。 以下においては、

S=Sd

かっ

C=c

γなる G却のその定義を考慮して不安定性原 理を形式的に例証しようと試みる。なぜなら、例えば、和国 [1975

1979Jが指 摘しているようにハロッド (Harrod[1973J)は彼自身不安定性原理の説明に成功 していないからである。ただし、和田 [1975

1979Jはこの困難を克服しようと 努力しているが、上で指摘した G却の強い定義を採用せずに一般的な G却につい て検討している。以下でも主にこの弱い定義、例えば G即 =S~/C~= (2s~)/

(

2

C~) =s~/C~ について不安定性原理を考えるであろう。 不安定性原理の研究において最も重要な役割を果たすのが企業家の主体的行動 である。従って、経済主体の行動を幾分詳細に分析することがこの原理の本質を 解明するために必要とされるのは当然で、ある。議論に先立つて、いくつかの形式 的な準備を整えておくのが物事の自然な手順であるが、その前に若干用語につい て注意しておくことは有益で‘あろう。以下では、分析の対象がマクロ経済に限定 される。ただし、マクロ経済とはその経済における全ての経済主体の行動が社会 的平均としてのある代表的経済主体の行動によって完全に代理できると想定きれ

(15)

第l章 ハロッド=ドーマー型経済変動成長理論と不安定性原理の表現 9 る経済として定義されているo したがって、代表的経済主体についての議論はマ クロ経済の仮定の下では常に平均的な意味で社会全体についての議論となる。即 ち、代表的経済主体の行動で社会全体の経済行動を代替的に表現できると想定す ることがマクロ経済の仮定の意味である。 ただし、この節で用いられる数学的用語については、ドブリュー (Debreu

[

1

9

5

9

J

)

及び鈴木

[

1

9

5

9

J

が参照されてる。また、この節で登場する諸変数は通 常のものと同様で、、例えば、九三予想、所得、九三所望所得、 K =資本、

S

三貯蓄 であり、右下の eは予想、を、右下の dは所望量をそれぞれ表わしている。 定義1 ある経済主体がいくつかの変数に関するの予想値と所望値のそれぞ れについて彼自身の判断により明らかな数値をいかなる状況の下でも常に有し かつはっきりと提示できるとき、そのときに限り彼は明噺主体と呼ばれる(あ るいは、彼のような経済主体は明断であると言われる)0 • 定義

2

ある経済主体がいくつかの変数の予想値と所望値の全てについてそ れらの内のどの変量も必らず他の変量と一価連続な関数関係を持つものとして 諸変量をそのように常に把握ないし評価して彼自身の行動を規定するとき、そ のときに限り彼は整合的である(あるいは整合性を持つ)と言われる

o

.

定義3 明断かつ整合的である経済主体は作動主体(あるいは作動性を持つ) と言われる。全構成員が作動主体である経済は作動経済(あるいは作動性を有 する)と言われる

o

.

これらのことから以下のことがわかる。マクロ作動経済を想定するとき、我々 は一般性を失うことなく分析の関心を代表的作動主体に限定することができる。 代表的作動主体は、定義から明断であるから、

K

Y

の増加分を表わす変数,1

K

(8) Debreu [1959]と鈴木[1959]で、特に前者の最初の章と後者の巻末の数学付録が有用で、あ る。

(16)

やLl

Y

についての予想値、及び、所望値を意味する諸変量、それぞ、れ、 LI

Ke

及 びLI

Kd

と、 LI}ミ及び LI

Yd

とを考えることができる。きらに彼はこれらの諸変 量の聞に適当な連続関数関係を見つけることができるから、 LI

Kd=F

(LI

Yd

)

、 LI

Ke=

G (LI 乙)なる関係方程式を 2本立てることができる。 所定の生産技術の下ではLl

Y

が上に有界であり、また下方有界は Yの非負性 から明らか。 LlKの有界性も自明である。明断主体にとってLlY及びLlKの可 能な区間は聞と考えることができる。(複雑な経済状況下で、例えば、彼がLI

Y

eの 値を決める問題に直面してるとすると、彼の経済行動的思考は A 乙 の 可 能 な 区 間上での点列によってその困難な過程を表現されるかもしれない。このとき彼の 決める特定の値はそのような長〈複雑な点列が収束するところの触点で表わさ れ、定義

1

から明断主体はこのょっな点を選出することができなければならず、 従ってこのような点は全て変量の可能な区間に含まれねばならない。)つまり提示 された

2

関数のグラフはコンパクトになり、またグラフは平面上の長方形を成す ので凸となる。それ故、

F-

1X G: (LI

K

d

'

LI乙)→ (LI

K

LI

Yd

)

なる連続写 像を考えると、不動点定理から次の定理が成立する。 定理l マクロ作動経済においては、(i )必要資本係数が少なくとも 1つ存 在する。(ii)必要資本係数は企業主体にとって望ましい。. ここで、(ii)は不動点つまり主体的均衡点の定義を確認すれば容易に知られ得 る。すなわち、不動点ではLl

K

戸=Ll

Kd

か っ LI

Ye=

LI

Yd

だから、 (LI

K

e

)

/

(LI乙)= (LI

K

d)/ (LI

Y

d)となり、この左辺は必要資本係数を表わしており、 一方その右辺はその左辺が望ましい値であることを我々に教えている。これまで の所で考察の対象とされていたのは企業主体であったが、同様の考察を消費主体 に適用する必要がある。前と同じくマクロ作動経済を想定して、消費者としての 代表的作動主体を考えれば、 LI

S

e

、LI

S

d

ないし LI}二、 LI}乍なる諸変量について、 主体は定義 2から整合性を持つから、 LI

Se=H

(LI乙)、 LI

Sd=

J

(LI

Yd

)

なる連 (9) 有名なブラウワーの不動点定理である。

(17)

第1章 ハロッド=ドーマー型経済変動成長理論と不安定性原理の表現 11 続関数を考えることができる。さらに L1

Y

の、従って..1

5

の有界性から..1

S

e

、 ..1

S

d

、L1}二、..1

Y

d

も全て有界区間で定義され、また主体の明噺性から、それら 全てが閉であると考えられるので、

H

f

とは同ーのコンパクトなグラフを持 つ。したがって、全く前と同様にして、

H-l

XJ :

(..1

S

e

.

..1

Yd

)

→(..1

S

d

.

..1乙) なる連続なそれ自身への写像を考えることで次の定理が成り立つ。 定理2 マクロ作動経済においては、(i )所望貯蓄率が少なくとも 1つ存在 する。(ii)所望貯蓄率は消費主体にとって望ましいo • ここで(ii)は、..1

Se=

..1

S

d

かつ..1}二 =..1

Yd

より明らか。すなわち、 (..1

S

e

)

/

(..1 乙)

=

(..1品)/(L1Yd) となっている。上でもっぱら限界貯蓄性向について のみ議論してきたが、これらのことは平均貯蓄率にもそのまま全く同じく適用さ れる。実際、..1

S

e

S

e

に、..1

S

d

S

d

に、..1}二を乙に、..1

Yd

を 九 に 置 き 換えるだけでそれ以外の変更は何ら全く必要で、なく、しかも定理

2

はこの変更に もかかわらず成立する。ただしその場合乙や

Y

dの有界性を別に示す必要があ るが、短期的には生産関数のような技術条件によって上限を有すると考えられ、 下限も明らかだから、凸かつコンパクトなグラフが容易に理解できるだろう。い ずれにしても妥当な条件を加えることで、定理

2

が平均貯蓄率に関して厳密に成 立することがわかる。以上で提出された2つの定理を総合することによって、我々 は次の定理に到達する。 定理3 マクロ作動経済においては、 (i )保証成長率が少なくとも 1つ存在 する。(ii)保証成長率は企業及び消費者の両方の経済主体にとって望ましい。

た だ し (ii)は、保証成長率の実行可能性を何ら全く含意していないので、留 保条件つきの望ましさを意味しているにすぎないということに注意すべきであ る。また、♂

=

s

かっ

C

=c

ならば♂

/c*=s/c

だから、保証成長率が実行可 能であるとき、それが望ましい成長率であるのは明らかである。しかし、最初に

(18)

注意したようにここで主張された望ましさとは、代表的主体という社会的に平均 的な意味にすぎず、しかも短期的な側面に重点が置かれた主体的行動に関係して いるだけで、長期的側面が厳密な仕方で考慮きれていないのである。それゆえ、 定理3を長期に一般化することは今後の課題である。

4

.

不安定性原理の諸表現例

定理1及び定理 2では、それぞれ、企業主体及び消費主体の、願望と予想との 調和一致という主体的均衡が問題にされていた。 ,1

K

を縦軸にとり、横軸に ,1

Y

をとった平面上に関数F と G とを描けば、それらの交点と原点とを結んだ直線 と横軸とでできる角の傾きが C*の値であった。どうように,1S と,1

Y

の平面 上でH と

J

を考え、それらの交点と原点を通る直線と横軸 (,1Y) からできる 傾きが♂であった。 C事と♂とは別々に独立に導出されたわけだから、 G却はそ れらの比で表わきれるが、しかし重要なのは 1つの分数としての

G

wではなく、 その分子と分母の個々の Cホと♂とであるというということができる。 定理 3で示されたように G却は、平均かっ短期的な意味で社会の望ましい産出 成長率を与えるが、しかし社会の各部分、すなわち、企業主体と消費主体、の所 望するものと両立するときにのみ

G

ω

はその意味で社会的に望ましい。つまり、

C=C*

かつ

s=

♂が同時に成立するときそのときに限り、 Gはその意味で社会 的に望ましいのであり、それらのいずれかの等式が満たされないときは

Gw=G

であるとしても、もはやその Gは望ましくないのである。なぜならその場合、社 会のある部分が少なくとも不満を表明するはずだからである。 G即と Gとのあい だに差異が生じるのは、いかなる個人も無力となるような大規模な経済の下で、 諸経済活動が、移り行〈市場過程と共に徐々に進行する変移局面のなかで、産出 の変動を考えているからであり、すなわち、不可欠な要因としての予想は、失敗 する可能性が極めて高〈、またしばしばそうなるからである。所望と予想が一致 しでも、これが現実と調和するとは限らないのであり、むしろ逆にそれらが一致 することはあまりないであろう。

H

G

とは、習慣化した経済活動の繰り返しの経験から得られるものと考え られるから、おそらく安定な関係であろフし、また遂行上の便利さなどから、♂

(19)

第1章 ハロッド=ドーマー型経済変動成長理論と不安定性原理の表現 13 と

C

事とは一定であるものと想定する。

C

とS とは市場過程の結果として、社 会全体の経済活動の相互作用を尽くし、総合して最終的に結果きれるものである から、個人の力の及ぶ所にはないが、しかし企業主体は Cに影響を与える最も有 力な社会部分であり、sについては消費主体を考えるのは自然だ。このことはS宇 ♂ ま た は C宇C本なる場合に、引き続いて生起する調整的な変動において、中心 的な役割を果たすと考えられる。 C*と♂とは主体的行動の様式的中枢を成すものであり、従ってG却は具現さ れた社会全体のそれである。換言すれば、

G

ω

は経済の動的過程上での平均かつ短 期的な社会的予定を意味している。したがって所定の経済活動の結果において、 各主体が彼の行動の予定したものと、実践により得られたものとを比較照合する ことで、彼の事前計画を実証するとき、そこに差異が認識されたならば、彼はそ れを相殺すべき手段として、彼自身の以後の行動を調整する必要に迫られる。す なわち現実の

G

と予想し所望した事前の

G

却との間に差異が生じるとき、社会 は何らかの調整行動をとるに違いない。このような調整は各変数の現実の絶対的 な値を管理することはできないが、しかし変数の増減方向を左右することはでき ると考えられる。 定義

4

不安定原理とは、

G>G

ωであれば

G

が増大し、

G<G

聞ならば

G

が減少するように Gが調整されることである。(当然、

G=G

却なるときその ときに限り G は全く何ら調整されず G加の値に留まったままとなる。)・ 定義5 5とCに関する非同次の線型連立常微分方程式体系、すなわち、 r 5=α(5-5*) (A) j

l

C=b (C-C

ホ) は主体分立系と呼ばれる。ただし、 α=const.>0、b=cons

t

.

>

0とする。. 命題lもし

a

ニbならば、マクロ作動経済では、主体分立系 (A)は不安定 性原理を含意する十分条件で、ある。.

(20)

Gの成長率は、

G/G=s/s-C/C

、と求められ、ここでSとCとに (A) を代入すれば、簡単に、

G/G=

α

-as* /s-b+

bC*

/C

を得る。さらに α

=b

を考慮、して若干整理すれば、 G=α

C*/s (s/C-s*/C*)

G となり、 G と G却の定義を考えれば、

G=aC*/C (G-C

却) であるから、従って、 C>Oに注意して、 sgn[GJ =sgn

[G-Gw

J

.

これは不安定性原理の定義

4

と同値。 例l もしも、ある「マクロ経済

J

が、次の非同次連立常微分方程式体系、 r

s=a' (G-G

即)、。'>0、 (B)

i

. ー

l

C=b'

(C即

-G)

b'>

0、 によって支配きれているならば、そのとき、そのマクロ経済は不安定性原理に よって支配されている。ただし a'とb'の値はそれぞれ正の定数とする。. 命題1と全く同様に計算することで簡単に例1が確かめられる。実際、

G/G

ニ ゲ

/

s

(G-Gw)-b'/C

(

C

山 一

G

)

となるから、整理して、 G= {G・(ゲ

/s+b'/C)} (G-G

w

)

とでき、この右辺では{・・}>

0

であるから、したがって、 sgn[GJ =sgn

[G-GwJ

となるのが明らかにわかる。ただしここでは G>Oかつ C>Oと想定してる。 命題

1

はαヰ

b

ならば成立しないが、しかしその場合主体分立系

(

A

)

がいか なる動的様相を程するかを調べることは興味あることである。主体分立系の経済 的意味はその単純な方程式形態から明らかであろう。即ち、貯蓄に影響を与える ことができるのは貯蓄主体のみであって主に消費主体がその中心を成しており、

(21)

第l章 ハロッド=ドーマー型経済変動成長理論と不安定性原理の表現 15 一方資本係数を左右するのは企業主体 のみであるという社会的な決定力の有 力性についての集合的な主体分離を

(

A

)

は含意している。 G弓I=.bなる場合の不安定性は自明で あろう。敢えてその時の体系の動きを s 図示すれば、右の第

1

図のようになり、 げ 平衡点 (C

s

*

)

は全く不安定な点で あり、不安定性原理の定義 4をはるか にしのぐ強力な、いわば、完全不安定 性原理あるいは点不安定性原理とでも O 第l図

¥

¥

c

*

/

/タ 、 C 言うべきものが経済の動的過程を支配している。その用語に従えば不安定性原理 は点不安定性原理の1つの特殊な場合として解され得る。次に若干、例 1を拡張 しておこう。 命題

2

もし、「マクロ経済」が次の符号決定の非同次連立常微分方程式体系、

r

s

g

n

[

s

]

=s

[G

ー ら )] (B')

i

-

.

-

=

-

_

l

s

g

n

[C] =sgn

[

C

-G]

で支配されるならば、不安定性原理がその経済を支配している。. まず

G/G

の符号を調べる。変数の定義自体を考えると、

s

g

n

[

G

/

G

]

=sgn

[s/s-c/C]

であるから、この右辺に (B') を代入したものが定義 4を満足すればよい。それ ゆえ、

G>G

wならば、上式の右辺は

(

B

'

)

から

[

C

D

C

D

]

でプラスとなり、

G=G

却 ならば明らかにゼロであり、

G<G

wならば、その右辺は [8θ]で負となるのが わかる。それ故、

(

B

'

)

が不安定性原理を含意する。 しかしながら、定義4の下での不安定性原理を主体的行動の特性から導くこと は上で提出されたようないくつかの特定の条件に強〈依存するためそれ以上の一 般化を許きれないと考えられる。 G とG却との相違に整合的な方式でSや C と

(22)

子 や C*との差異が対応するかどうかが不安定性原理の適用の可否を決めるの である。つまり、 Sや Cの変動が、 GとG却の相違と主体行動特性との聞のい かなる関係に依存しているか、ということが重要なのである。いずれにしても、 主体行動を基礎にして不安定性原理を一般的に説明ないし表現することは困難で、 ある。最後に、もう少しこの問題を形式的に検討しよう。 今、 Sや

C

の変化が s*や

C

事などのいくつかの定数を含む何らかの関数に よって規定されると想定し、これを次のように与える。 r

C=f

(

C

s) (C)

1

l

s=g

(C, s)、 ただし、

f

とgは連続微分可能と仮定する。次に、この体系 (C) をその平衡点 の近傍で線形近似して得られる体系は、

(

C

s

*

)

を唯一の平衡点と仮定すれば、 次のように表わされる。

i

x

v

[

、I 1 1 1 1 1 1 1 ノ - b ,

α

G c

l

一 一

l

-x

y

[

) F し ( ただし、

x=C-C*

かつ

y=s-s*

である。また、係数行列は平衡点近傍でのヤ コビ行すJIである。 体系(C')の平衡点

(

x

y

)

=

(0

0)が鞍点であるものと仮定するo 従って、 体系 (C')の固有値は異符号の非ゼ口実数となる。ここで、負の実根のみを考え、 これに対応する直線軌道を(C')の相平面上で考慮するとき、負の固有値λ1に対 する直線軌道の傾きは、

y/x=c/

λ(l-d)、ただし C宇Oと仮定、と求められる。 正の実固有値んを適当に与えて、さらに、

c

/

(λl-d)

=s*/c*

と仮定するなら ば、下の第2図から明らかなように、不安定性原理が成立するo しかしながら、 体系(C')がこれまでに提示された体系よりもわずかに形式的一般化に成功してい ると見ることができるとしても、加えられた諸条件がいかなる経済学的含意を ( 制。 持っているのかということについては何もわからない。 ( 10) なお、ここでの数学的な手法の詳細は、 Haberman[1980Jの第2部の微分方程式のところ を参照するのがわかりやすくてよい。

(23)

第1章 ハロ yド=ドーマー型経済変動成長理論と不安定性原理の表現 17 第2図 F c* x c* ーーーーーーーーーーーーーーー句『ー・ー・'- -s*

5

.

不安定性原理に対する理解

S*ゃC取の存在を示した諸定理からわかるように、 s*や C*の値は必ずしも

1

組だけが存在するとは限らない。もちろん、適当な諸条件をそれらに関する諸 関数に課すことで♂と C*の一意性を確保することは容易で、ある。しかし、一 意か否かということは先験的に判断することはできない。にもかかわらず所定の 時間区聞の下で、いかなる個人も彼自身の行動を継続的に決定し実行する必要か ら逃れ得ないのであるから、もっと短いある時間期間に限定すれば、確定的に実 行可能であるためには、唯一組 (C*

S事)を想定することから議論を進めるとい う手順は、必要で、はないがしかし十分に承認されるにちがいない。 いずれにしても、重要なことは、 s*を決定するのが代表的な消費主体であり、 また、 C* を決定するのが代表的な企業主体であるという極端な単純化の想定で あり、さらに、この想定によって議論の本質はほとんど影響きれないということ である。前節の主体分立系

(

A

)

はこのような想定に基つ守いていたが、その系の 行動的経済的意味はあいまいである。例えばStを再度考えてみることにしよう。

(24)

もし、

S

t

>

♂であったとすると、分立系 (A)によれば、

S

t

>

0とならねばなら ず、このときもし

C*=C

t

となっているならば、

Gt>G

wが

Gt

>

0を含意するこ とになる。しかしながら、

S

t

>

♂の場合は現実の貯蓄が過剰となっている場合で あるから、そのとき人々は、消費をよりいっそう増大させて正常な状況での貯蓄 量を下回るように、貯蓄計画の修正を次期で行うであろう、と考えること、すな わち、

S

t

=

α何事

S

t

)

なる方程式を想定することの方が自然であるように思われ る。このことはハロッド (Harrod[1973

p.34/邦訳:p.52J)での想定の一部 と合致するが、もしそうならば、前節の第 l図で示されたような点不安定性原理 の状況を回避することができ、平衡点は鞍点で与えられることになる。しかしな がら、この場合、不安定性原理を導くことはできなくなるのである。 すなわち、主体分立系 (A)はハロッド (Harrod[1973J)の文脈を反映せずむ しろ異なった含意をもっているが、先に提出した不安定性原理の定義を与える定 義4に適合する可能性を持っている。従って、適当な場合を想定して常に命題 1 が成立するならば、そのとき、もしハロッドの想定を受け入れるなら、不安定性 原理が失われるであろうし、逆に不安定性原理を保持するように主体分立系(A) を受け入れるのなら、ハロッドの想定を捨てなければならないだろう、と言うこ とができるかもしれない。つまり、このことは、単純には、不安定性原理の表現 とハロッド(Harrod[1973J)の想定とがある特殊な場合においては、全く対立し、 したがって両立することができないということを意味している。このことと同様 な矛盾を例

1

についても考えることができるに違いない。このように、特殊な場 合にすぎないけれども、定義4の不安定性原理とハロッド(Harrod[1973J)の想 定との二者択一という矛盾は、不可避的な困難なのである。 これまで、主に、 G聞の弱い定義を用いつつ、その強い定義の含意を動学体系に 微分方程式という形に反映させることで分析が進められてきた。もし G却の強い 定義、すなわち

S=

♂ か つ

C=C

事なるときそのときに限った

G

の値を

G

却と すること、をそのまま採用して不安定性原理を考えるならば、この強い不安定性 原理にちょうど対応するものが「点不安定性原理j ということになる。例えば、 任意の正の定数 mヰOについてど

=ms*

かつ

C'=mC*

となっているならば、 ゲ

/C'= (ms*)/ (mC*)

より、

(

S

'

/

C

'

)

= (

s

*

/

C

*

)

となるのは明らかであるが、

(25)

第I章 ハロッド=ドーマー型経済変動成長理論と不安定性原理の表現 19 s'ヰ♂かっ C'宇C*であるから

s

'

/

C'

*-C

即となるのである。すなわち♂と S及 び C*とCの

f

直の差異が重要なのである。 命題1に比べて例1の経済的意味はわかりやすい。代表的個人が消費主体と企 業主体の両面性を持っとするならば、それら両方の所望きれる行動パラメーター と整合する G却は、社会が平均かっ短期的な意味で所望する成長率である。もし

G>C

却ならば、代表的経済主体は、彼の望む成長率よりも高い成長率が実現され たため、つまり保持すべき成長率として望ましい Gwよりも Gが大なので、そ の期の G却を保持し続ける理由はなく、その比較的大きな現実所得に対応して、 彼の現実貯蓄をいっそう拡大しようと計画を修正し、かっこのように行動するは ずである。言うまでもないが、この場合G即は弱い定義、すなわちG即

=(s*/C

勺 によって与えられている。 強い定義については、

s'=ms

事かつ

C'=m

♂ な る s'とc'からなる Gと ら との聞の動的過程があいまいとされる。他方、弱い定義の下では、 s'と

C

'

G

が社会によって保持することが、望ましい成長率かどうかは、♂と

C

事とが行動 パラメーターであることを考えれば、貯蓄と所得の相対水準を無視できないから 多分に疑問である。そしてこれら両者に、それぞれ、主体分立系と例1とが対応 している。強い定義は G却の経済学的含意の側面を特に重視した定義であるが、 他方、弱い定義は方程式としての分数という形式的側面に重きを置いた定義と なっている。 このような定義の差異は、統一することができないように思われる。にもかか わらず、このように異なる

2

つの定義を並置したままで、不安定性原理を説明す ることが困難であるということは、すでに示されたように明らかである。ハロッ ド(Harrod[1973J)の失欺は、まさにこの点にあったのである。この不備を除去 するためには、きちんと

G

却を定義することで上の

2

つの定義を統一的に統合し て、整合的な方程式を打立てることが必要で‘ある。さもなければ、前節のように、 特殊な方程式体系を具体的に想定することで、特定の場合に応じて不安定性を説 明するしかないのである。 換言すれば、 S と ♂ とを区別することによる G即の一般化は、ハロッド (Harrod [1939J)の中には存在しなかった定義上の不備を生ぜしめたために、失

(26)

敗に終わっているのである。このことはあたかも数直線上の元の大小関係を、 2 次平面上へそのまま適用しようとするようなものである。 1次元で成立する規則 を、 2次元にあてはめようとする素朴で、素直な人にハロッドは似ている。彼は、

m <

ρ

n<q

なるとき I次元の規則を容易に適用でき、

(m,n

)

<

(p

q) と するであろうが、しかし一方、

m'>p'

n'<q'

であるような

(

m

',n

'

)

(

p

',

q')との間に何とか大小をつけようとする彼の努力は、一切、無駄な苦労なのであ る。重要なことは 1次元の規則を捨てて新しく 2次元のための他の規則を見出す ことであろう(和田(1975,p. 26Jにも似た指摘がある)。 第

1

章 参 考 文 献

足立英之 [1982J

r

経済変動の理論J日本経済新聞、昭和57年。 秋山祐 [1999J

r

経済発展論入門』東洋経済。 Brems

H.

[1986J

P

i

o

n

e

e

r

i

n

g

Economic T

h

e

o

η

1630-1980,

Baltimore: the Johns Hopkins Univ. Pr../駄田井正・他訳『経済学の歴史 1630-1980 人 物・理論・時代背景』多賀出版、 1996年。 Burmeister

E

.

and Dobell

A

.

R

.

[1970J

M

a

t

h

e

m

a

t

i

c

a

l

T

h

e

o

n

.

e

s

0

/

Economic

G

r

o

w

t

h

, London: Macm

i

1

l

an./佐藤隆三・大住栄治訳『テキストブック 現 代経済成長理論』勤草書房、 1976年。 Debreu

G" [1959J

T

h

e

o

η

0

/

V

a

l

u

e

;

An A

x

i

o

m

a

t

i

c

A

n

a

l

y

s

i

s

0

/

Economic

E

q

u

i

l

i

b

n

.

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, New York: Wiley, 1959./丸山徹訳『価値の理論』東洋経済、 昭和52年。

Domar

E

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Rate of Growth and Employment

"

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vol.14

pp. 137-147

reprinted in Domar

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Domar

E

.

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[1947J “Expansion and Employment

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American Economic

R

e

v

i

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2

章ハロッド=ドーマー型変動成長理論と

擬似ハロッド模型

1.基本的なモデル設定と分析目的

23

現実の世界では、いくつかの国々で再び失業の長期化が重大な問題として匙り つつある。この事実は、新古典派 (Solow [9 J、また Stiglitzand Uzawa [10J にも初期の諸研究が収められている)が簡単にあしらったような単純な問題では なく、不均衡動学としての周知のハロッド=ドーマー型経済成長理論のより精密 な再吟味を我々に要請している。相対的に見れば、動学的な投資の不安定性を特 に強調したハロッドの理論(Harrod[ 3

J

)

はそうした、なかなか失業が解消され ない動学的分析には適している。しかし、彼の理論表現にはアイデア豊富な面と、 時として大胆な主張と多々あいまいな論述が混在しているため、誤解やら早合点 をしばしば誘発させてきた。そこで、以下では、 ドーマーにも共通するところも あるけれども、主にハロッドから重要と考えられる諸要素を適宜抽出して、一層 明瞭な変動成長的な動学モデルを構築し、これを分析するものである(多種の動 学分析手法の要点比較には Gandolfo [2

J

参照)。 しかし、行われる考察は、ハロッド理論(Harrod[ 4

J

)

を忠実に解釈するとい うことではない。むしろ、その要素を含んだある意味で一般化された動学的な模 型を陽表的に構築すること、及びその模型の巨視的特性を標準的な手法を用いて 動学的に分析することである。つまり、この擬似ハロッド模型分析を通して、ハ ロッド的経済動学の一部を明らかにしようとするものである。従って、関心の重 点は、動的経済過程における模型の安定性に置かれている。 まず、諸変数の記号を提示しよう。

S:

総供給、D:総需要、 Y:実質総産出量、

L:

総労動力存在量、

K:

総資本存在量、 K:稼動資本量、

L:

雇用量、

α:

資本 の稼働率、

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社会の平均消費性向、

s

:

社会の平均貯蓄性向、 k:投入要素比率、 v 資本の平均生産性、1:粗投資、

C:

総消費量、 R:総利潤量、 W .賃金率、δ: 減価償却率、

φ:

雇用の平均生産性、 β:操業時間、

γ:

標準操業時間、ただし、

参照

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(2011)