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66  不安定性原理とハロッド=ド‑‑:;>ー型経済変動成長理論

の経済現象への一つの論理的接近として総合的な考察を目指す理論分析を展開す ることは興味深いことであろうし(少なくとも分析の自然な進展である)、また実 際の経済現象がそれらの側面について明確な境界を持つわけではないので、こう

した試みは、いたずらに複雑な考察といっよりはむしろ、より現実的な意味での 考察の一般化を展開することになる。以下では、前節の個々の想定を単純に結合

して総合的なモデル分析が行われる(各想定は相互に独立)。

(11) と (13)を用いて、場合Iで用いられた体系と場合2でのそれとを単純 に結合すれば、次の体系が得られる。すなわち、

r e= (Q ‑sc)・6・(1‑ev'/v)‑1  (16) 

c~fè {c‑v(c)‑v(e) ,}

ただし、関数uと関数Uとは前述の諸性質を有するものと仮定する。前と同様 に ♂ 三v‑1(Q!s)とc*:=Q/sを用いて、長三e‑e*とt三c‑c*とで(16)を 表現すれば次のようになる。

(

長=‑se(五+♂){l一(五+e*)v'/v}‑l (16') 

e=fe  {正+且/s‑v‑v,}

ただし (16') における関数UUの値は、それぞれ、 CQ

/ s

での値と e+♂ での値である。また、 (15)の想定を導入して分析を拡張することもでき、その場 合(16)及 び (16つはそれぞれの第 1式 の { }の中に前節の場合 2で為された 若干の変更を加えられるが、すでに明らかなように模型の構造としては大した変 化はなく、何ら本質的な変更を引き起こすことはない。

(16)は相速度 Oで、c=Q/s(=c阜)

~二 o かつ c=v 十 v

~~ 0だから、dc=v'dc+

v'deとなり、 de/dc=(l‑v')/〆である。したがって〆と〆の符号についての

諸仮定から、 (16) の位相図は上の第 8図で描かれている。ただしv"とv"とは

(27)  e (14)の式を取ったものであり、 c (ll')と(13)から成り、 (13) (ll')に代入 したものである。また記号の複雑化を避けるため前と同じ正を用いていることに注意せよ。

これまでに展開された議論においてもそうであるが、分析全体を通じて Cは正でも負でも 任意の値を取ることができる。しばしは描かれる図は正象限のみであるが実際は Cの負領域

も定義域に含まれているのであり、単に図による描写の簡略化のために部分的に作図されてい るにすぎない(しかし成長過程にのみ分析の関心を限定したいのなら正象限のみに Cの定義 を局限してもさしっかえないだろう)。

8

rM  

cJ 

c' 

= 1 Y

常に正であるものと仮定して作図きれているが、この仮定は何ら本質的なもので はない。また平衡点が一義的に与えられることは分析の想定(v'>1)からわかる

(図では〆'>1の場合が想定される)。

ここで、 e=♂についてν(Co) v(♂)なる Cの正の値 Coが存在すること、

お よ び 、 〆 >1、v'<0などの諸条件を伴う (16)によって動的過程が支配きれる 経済体系を「伸縮的修正Harrodian体 系jと呼ぶことにする。また、体系の平衡 点 (e*,♂)では形式的均衡成長、つまり Q=G(=sc) = Gω、が成立する。した

~91

がって以上のことから次の結果が得られる。

補 題2 伸縮的修正Harrodian体系では、平衡点が唯一存在しかっ局所的に 漸近安定となる。さらに、その平衡点では、 α

=

Q / {sv (e*)}なるときそのと

きに限り均斉(=斉一的均衡)成長が成立する。.

(16')のヤコビ行列は平衡点の近傍での値が第22列目の要素を除けば命題 側分析全体を通じて、微分方程式に関する議論では(特に安定性につい)、 Coddington and 

Lεvinson (10)Hirschand Smale [23)、ポントリャーギン [35)Gandolfo(13)が参照 されている。当然のことだが、平衡点では雇用も失業も共に4の率で成長を持続する(いわば 均衡失業成長状態がそれである)。

68  不安定性原理とハロッド=ド‑ 7ー型経済変動成長理論

5でのそれと同じであるから、命題5のヤコビの£を

x

(1‑v')に替えれば(16') のヤコビ行列が得られる。そのヤコビ行列の対角要素の和が仮定から常に負であ るから(その行列式の値は常に正)、体系の漸近安定が言える。また、

x

21 ‑V') 2

4 xse*v'( 1 ‑e*v'/v)1が正・負・零となるのに対応して、平衡点は安定結節点・

渦状点・退化結節点となる。それゆえ補題2の主張が成立する。また均斉成長に ついては自明である。

補題2' 弱い新古典派的想定の下でも補題2の主張が成立するo

命題5'の証明で施した命題5でのヤコビ行列への変更を、ここでも、上の補題 2のヤコビ行列に同様の仕方で施せばよい。その変更は体系の安定性に影響しな いから主張の成立は自明。

定理4 伸縮的修正 Harrodian体系に支配きれる経済は局所的には均斉成 長状態に漸近的に到達する。.

補題2から平衡点が経済によって局所的には漸近的に到達されることがわかる から、問題は平衡点においてα=Q/{sv(♂)}が到達されるかどうかである。と ころで、α/α=sc‑svα‑ev'/vだから、長=e=0ではα=α(Q‑svα)となり、こ のαの単独微分方程式の平衡点ピ*=(sv) 

v=v(♂)が漸近的に(大域)安定だか ら、 limα=α材、またα刊では斉一的成長が成立するので、 lime= lim e= 0か

t~・+∞ t→+∞

つ limα

=

(sv) I e二♂より、主張の成立は明らかである。また、補題2と補題2' 

t→+閣

との相違に注意すれば、この定理4とほぼ全く同様の論法で次の命題6が得られ るのも明らかである。

命題6 $~い新古典派的想定の下でも、定理 4 の主張が成立する o

0) ヤコビ行列の第1行第2列自の要素での(・)‑1の中にe*k'jkを加えることがそれであ

しかしながら、体系の大域的安定性について確定した一般的結果を引き出すこ とはできないが、いくつかの事例または特殊な場合を想定することで体系の安定 条件を得ることができる。にもかかわらず、そのようにして得られる安定条件の 経済的意味は強引なあるいは少なくともかなり組野なものにすぎないだろう。こ の一例を成す場合を次に提出する。

UEについての弾力性をぬと表わせば、 (16')のヤコビ行列は次のように 表わされる。 E二五十♂とら=

e v '  / v

に注意して、

δ

e  s

正 ( V' (五十Eホ)

a e   ‑ s (

五+♂)

一 一 一 一 一

I  ae‑

+  v e  l 

+  v e  " ‑ '

J' 

a e  

V

J =   I 

U

AX

‑ ‑

  FC τe  

a

δ δe 

' 五 Z‑i‑u

もしも、

l e l

<;なる

j

が存在

! l

、しかも五→

eo r ‑ e *

のとき

I v e l

I v ' l

が 共 に 増 大 す る と し て 、 常 に

a e / a c +

δ

/ a e >

0つまり

‑s(

正+♂)/ (1 

+  v e ) 

か'>0となると想定すれば、

F

を/の転置行列として、

(e, c)υ(0, 0)

F

(0,  0)] 

( n  

が6Oと5Oについて得られる。

さらに、 t Oと

5

Oについて

ee+cc=

0とおくと、五

= f e{c+ 

/s‑v‑

v}・(1十九)/ 

{ ( e +

) s }

だから、このとき

(

一 一 日 ・ }

a h c ' a  a f e ) )    

c

~~

; ( £

一一} s (

(1十九)

e + e * )  

となる({・・}と反及ぴ{…}はどれも常に正である)。従って

I v ' l

が十分に 大 き く 、 社

I

Ve 

I

も十分に大で、他方Sが十分に小さいなら占、加えて、そのと

(31)  現実の脈絡においてはeがそれほど大きな値をとることはなく、例えば大きく見積もっても そ れ が +2 (=失業率50%)を越えることはないだろうし、少なくとも現実的には有界である (さもなければ経済の運動は体系に従わない)からeの存在を想定することはある意味で十分 に正当な根拠を持っと考えられる(換言すれば、 eを有界な範囲で定義する方が適当であると 現実的には考えられる)。

上記のdeldc+dclδe> 0なる想定を含意する条件を意味している。

70  不安定性原理とハロッド二ドーマー型経済変動成長理論

きもし、

e2

(Ou+

♂ ,  , 1,  " ‑i  {‑e} ~sgn

I

一一一{一一一一1V 1 r 

+  ( 

1 ‑v') 

e  I 

el 1 

V ‑ )   , ‑) 

ならば(あるいは {δe/δtae/δ副長を(…〕の中に含めたより弱い型式でも よいが)、長ヰOかっ

2

ヰOについて、明らかに、

(e, 

e)υ(ιe)  +  F 

(e, e)) 

(~)) < 

となる。それゆえ、 Mas‑Colellの系の条件が満足されるから体系の平衡点は大域 漸近安定となる (Brock& Scheinkman 6 、) p.l77、系3.2.)という結論に我々

は達する。

ここに提出きれた大域的安定条件の記述はあまりにも厳しすぎて、一般的には、

とても充されそうにない。しかし、このように唐突に強行された記述は、極めて 荒削りに表わせば、次のような経済的含意によって大まかに要言される。即ち、

企業家が経済状態の変化に対して十分に感応的でかつ敏速に行動し、純粋競争的 な生産要素市場の需給の程度に十分に伸縮的に対応して敏感に行動するとき、し かも社会の平均貯蓄率が十分に小さいならば、そのとき経済は安定成長状態へ近 づく自然な傾向を持つ。換言すれば、豊富の逆説に象徴されるようなKeynes的 な景気動向に関するパラメータの含意を我々は裏返しに再び確認したことになる のかもしれない。

上述の特殊な場合を別にすれば、一般的に体系(16')の大域的漸近安定を主張 することはできず、むしろ閉軌道が存在する可能性や大域的な不安定の可能性が 十分に強〈考えることもできる。もし体系に閉軌道が存在するとすれは¥それは

半安定かそれとも不安定で、あろうと考えられ、少なくとも相平面上で右匝りに軌

(33)  このMas‑Colellの系はHartmanand Olech (21)や周知のOlechの定理などの他の条件 よりもこの場合にとっては比較的に有用である。

(34)  Keynes (27)pp.30‑31(邦訳、 pp.31‑32)、を参照(しかしここでの議論と直接の関連が あるわけではないことは自明である)。

すなわち極限閉軌道の安定性のことを意味している。

道が進むはずで、ある。いずれにしても相平面上の軌道は右回り的な傾向を一般に

0

, 

持っと考えてよい。この傾向を解釈することによって経済の動的過程の変動過程 としての経済的意味が明らかとなる。

(16')から、経済状態の運動について Eよりも Cの方が主要な役割を果たし

ているのがわかる。しかし ECを先行して Cの運動方向を指示し Cを先導す る。実際、このことは第8図においてよりよく理解される。すなわち、経済状態 が領域Aから出発するとき、経済はABDAなる周期的運動の循環過 程を繰り返しながら変動し続けるのであるが、その際各領域て自のeの変化方向が それに続〈次の領域での Cの変化方向と一致している。例えば、 Aでの eの変 化方向とBでの Cのそれとは一致している(共に減少している)。

Aでは、 CEが共に高い水準にあるので、 Yが労働力よりも速く成長するが 実質賃金もそれほど高くはならないだろうし相対速度の基準uもまだそれほど高 くはならないから、 Yの成長は投資と共に加速される。しかし経済が成長するに つれてUUの効果が大きくなるので、やがてYと投資の加速度は正だが徐々に 小さくなって行き、遅かれ早かれ経済は領域Bへと突入することになる。

Bでは、 eが低い水準にありまた引き続いて減少するので、実質賃金が要素市 場の小きな需給差を反映して高騰するようになるだろうし、またすでに高速のY の成長を経験した後の企業家にとって、相対速度の基準がかなり高く設定され、

以前のYの成長もそれほど速くない、あるいは、遅くなりつつあると判断される (いっそう速く成長することを投資拡大のために要求する)から、 Yも投資と共 に減速されることになるo しかしYの成長率の絶対水準が高いので、 Eの減少も 持続され、したがっていっそう投資及びYの減速が促進される。こうして経済は 領域Bから領域Cへ吸引される。

Cでは、 Cが比較的に低くなるので、労働力の成長がYを追い越して進むから

(36)  8図の中の各々の矢印に注目せよ。

間例えば平衡点を中心とした途切れのある時計四りの様相を考えてみよ。

(38) 要するに、 06')の安定性はν関数の'性質にほとんど依存していると言える。このことは前節 での2つの場合を比較対照することから明らかにわかる。

(39)  企業家はだんだんと経済の成長速度に慣れて行くので、彼の速度感と相対的に経済の成長速 度は彼にとって前よりも比較的に鈍〈感じられるようになる(前節の場合1を見よ)。

72  不安定性原理とハロッド=ドー7ー型経済変動成長理論

Eは上昇する。一方、相対速度の基準uがなかなか低い水準に落ち着かないので、

依然として投資及びYの減速が持続される。つまり投資の冷却化と失業増大が共 に進行するのである。 eの増大は実質賃金の低下をもたらすだろうが、その負の 傾向を変えることはできず、そのためにはUの十分な低下を持たねばならない。や がて長い負の傾向を反映して、わずかなYの成長でも相対的に速く企業家が感じ るようになるとき、経済は領域Cを脱出して領域Dに移る。

Dでは、十分に低いuと共にいっそっ eが増大し続けるので、投資拡大する企 業の態度がゆるめられ、Yの成長の相対的速度が高まるから、楽観的に投資が加速 される。したがって、Yと投資は共に加速し合うため、Cがいっそう上昇すること になり、経済は再び領域Aへと返ることになるo つまり、 UUもなかなか大き

くならないので、比較的低いYの成長が、企業家の投資意欲を高〈保つのである。

このように経済の循環的運動は、 G と

Gw

の不安定性と共に、いわゆる景気 変動の循環的4局面と類似の、成長過程としての諸局面を伴って起こる。すなわ ち、 A・B・C.Dの各領域は、それぞれ、成長の速さの意味では、いわば、(成 長の)繁栄・後退・沈滞・回復の各局面として捉えることができるだろう。また、

曲線 c=0付近でBとDに属する部分を除けば、上述の説明は、平衡点が結節点 となる場合、あるいは、不安定で、ある場合でも同様に(少なくとも部分的に)適 用できるはずで、ある。換言すれば、企業家自身の行動心理の中の、現実と理想、を 望ましく総合しようとする自然な主体的性向が、成長経済の循環的変動を引き起 こすのであって、その総合が相対的にしかも調和的に達成されるとき、そのとき に限り経済は、長期均衡点に到達することができるにすぎない。重要なのは、現

ω )  

これら4つの領域の説明では、 ADでは資本不足が発生し、またBCでは資本過剰が発 生しているのに応じてのHarrodの不安定性原理についての投資調整の説明(の叙述)が省略 されている(その叙述の導入が上述の循環の説明に必要なのは当然である)が、このことは自 明なことなのできしっかえないだろう (HarrodCl7)  (18) (20)を参照)。

1) つまり、 GwGwに修正した相対的な不安定性原理とでも言うべきもの。

(42)  これらの用語はSchumpeter(38)に従う周知の景気局面分類である(しかしそれらは上述 の意味で用いられているにすぎないことに注意せよ)。したがって強いて言えば、 ABは好 CDは不況と考えることができる (Bumsand Mitchell (8)流に言えば、 ADを拡 BCを収縮の過程と呼ぶこともできょう)。

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