Title イグチ類のきのこの菌糸体生長に対する糖環境の影響( 内容の要旨 ) Author(s) 畠山, 朋之 Report No.(Doctoral Degree) 博士(農学) 甲第324号 Issue Date 2004-03-15 Type 博士論文 Version URL http://hdl.handle.net/20.500.12099/2665 ※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。
氏 名(本(国)籍) 学 位 の 種 類 学 位 記 番 号 学位授与年月 日 学位授与の要件 研究科及び専攻 研究指導を受けた大学 学 位 論 文 題 目 審 査 委 員 会 畠 山 朋 之 (北海道) 博士(農学) 農博甲第324号 平成16年3月15日 学位規則第4条第1項該当 連合農学研究科 生物資源科学専攻 信州大学 イグチ類のきのこの菌糸体生長に対する糖環境の影響 主査 信州大学 教 授 大 改 正 武 副査 信州大学 助教授 福 田 正 樹 副査 岐阜大学 教 授 百 町 満 朗 副査 静岡大学 教 授 露 無 慎 二 論 文 の 内 容 の 要 旨 本論文lま外生菌根菌イグチ類の菌糸体生長における糖類の影響を窒素との関連に おIlて明らかにし,さらに物質移動の観点から検討したものである。従来,マツタ ケ,ハナイグチなどの外生菌根菌の培養に関する併称ま多く行われているが,未だ に旺盛な菌糸体生長が困難で,子実体形成は行われ弟林地などに人工的に菌根菌
を増殖させることも困難が多い。本論文吐外生菌根菌の自然における生長におい
て,菌糸は陪などの栄養環境が大きく異なる二つの環境を繋いで生育している点が 特徴であり,また,そのことに自然状態での菌根菌の栄養源の低い土壌中における 生育の基盤が有るとの仮説を建て,二つの研究を進めた。 一つは植物の節管液はかなり栄養素が豊富なこと,外生菌根菌が共生する横の内 部は栄養素が比較的高濃度に存在し,菌根菌は基本的に根の内部を高栄養素を提供 する環境として利用するとの仮定を建て,従って菌根菌は比較的高濃度の糖や窒素 の環境に適応している可能性があるという予想の基に,イグチ類の菌糸生長をグル コース濃度l∼叫が(∼2∝柳)・窒素源の酒石酸アンモニウム濃度α2∼5g月(∼ 卿)という広い範囲で変化させ菌糸体の生長を調べた。培養は液体培養で行い 基本培地には合成培地である太田培地を使用し,菌糸体の初期生長速度を調べた。 なお,菌は植物内部でスクロースから作られるグルコースを利用すると考え糖源に グルコースを使用した。その結果,次のような結論を得た。 1)イグチ類は従来その培養に最も一般的に利用される糖濃度1卿より高い3脚付近で最も良く生長し,系硫と条件によりl00卯で最も良く生長する。
2)琶素顔度嘲以上で菌糸生長が良いが,高糖濃度条件では窒素濃度が高
くなると急速に菌糸生長が抑制される。また,従来菌糸生長に対してαN比 の概念が用いられるが,この値は窒素濃度により大きく変化する。 3)グルコース,トレハロースなどは⊥働こ良く利用されるが,スクロース, グリセロール,フルクトースなどは利用されない。 これらの結果吼菌根菌が栄養豊富な植物内の環境に適応しているとする仮説を支 持するもので,従来から行われている培養の常識を革新するものである。
二つ目の研究でlキ外生菌根齢ま栄養素の豊富な植物組織内と栄養素の乏しい土
壌環境を跨ぎ生活することに生長の基盤が有るとする仮説を検証するために,この
系を模した最も単純な系として市販の画叫臆を加工したベトリ皿の片側に植物
組織内に対応する高栄養素濃度の培地を入れもう十方の側に土壌中に対応する低 栄養素濃度の培地を入れてそれらを跨ぐように菌を接種してその生長を観察した。 このような二相培地による試験は従来,VA菌根菌やアミガサタケなどでは行われ てきたが外生菌根菌では殆ど行われていない○また,外生菌根菌の純粋培養を用い る物質移動に関する研究もリンについては行われているが,糖については殆ど行わ れてこなかった。この試験の結果,次のような結果を得た。なお,培矧ま太田寒天 培地を基本培地として使用した。 4)高栄養素側の列レコース濃度を高くすると,両相の菌糸生長は非常に良く なり・貧栄養素側でも菌糸が旺盛に生育し,菌糸体生長量のみでなく,菌糸 体の密度も非常に高くなり,コロニーの形状が変化する。 5)高栄養素側から低栄養素側に栄麦素の輸送が起こり!それは低温環境など に置くことにより促進される。 6)高栄養素側にフルクトースや高濃度のリン酸を加えると低栄養素側の菌 糸生長が促進される。 7)外生菌根菌でsp払画地の実験系を確立し,この系が外生菌根菌の物質輸 送の定性的な研究に利用できることを示した。 従来・外生菌根菌の糖の輸送の研矧ま植物体に共生した系で行われており,菌糸の みの研矧ま殆ど行われてこなかったが,本研究は外生菌根菌の生育の基本的パター ンを解明し,菌糸体による糖など栄養素の輸送の基礎的性質を明らかにした。 以上の研究成果は外生菌根菌の実用的利用においても広い応用範囲が期待される。 審 査 結 果 の 要 旨 本論文は外生菌根菌イグチ類の菌糸体生長における糖類の影響を窒素との関連に おいて明らかにし,さらに物質移動の観点から検討したものである。従来,マツタケ,ハナイグチなどの外生菌根菌の培養に関する研究は多く行われているが,未だ
に旺盛な菌糸体生長が困難で,子実体形成は行われず林地などに人工的に菌根菌 を増殖させることも困難が多い。本論文は外生菌根菌の自然における生長につい て,糖などの栄養環境が大きく異なる二つの環境を繋いで生育している点が特徴であり,また,菌の生育の基盤が有るがあるとの仮説を建て,二つの研究を進めた。 一つ曜植物の節管液はかなり栄養素が豊富なことより,外生菌根菌が共生する根 の内部は栄養素が比較的高濃度に存在し,菌根菌は基本的に根の内部を高栄養素を
提供する環境として利用するとの仮定を建て,イグチ類の菌糸生長をグルコース濃
厚を1∼岬柳(∼Ⅱ即),窒素源の酒石酸アンモニウ皐濃度を0.2∼瑚(∼卿)
の範囲で変化させ菌糸体の生長を調べた。培地には合成培地である太田液体培地を 使用し,菌糸体の初期生長速度を調べた。なお,菌は植物内部でスクロースから作 られるグルコースを利用するとした。その結果,次のような結論を得た。 1)イグチ矧ま従来その培養に最も一般的に利用される糖濃度1卿より高い 3瑚付近で最も良く生長し,系統と条件により1∝即で最も良く生長する。2)窒素漬廣瑚以上で菌糸生長が良いが,高糖濃度条件では窒素濃度が高く
なると急速に菌糸生長が抑制される。また,従来菌糸生長に対してm比 の概念が用いられるが,この値は窒素濃度により大きく変化する。3)グルコーえトレハロ∵スなどは一般に良く利用されるが,スクロース,
グリセロール,フルクトースなどl却岬されない。 これらの結果は菌根菌が栄養量嘗な植物内の環境に適応しているとする仮説を支 持するもので,従来から行われている培養の常識を革新するものである。 二つ目の研究で坑外生菌根熟ま栄養素の豊富な植物組織内と栄養素の乏しい土 壌環境を跨ぎ生活することに生長の基盤が有るとする仮説を検証するために,この 系を模した最も単純な系としてspli叫ぬの片側に植物組織内に対応する高栄養素 濃度の培地を入れもう十方の側に土壌中に対応する低栄養素濃度の培地を入れてそれらを嘩ぐように菌を接種してその生長を観察した。このようなこ相培地による
試験は従来外生菌根菌では殆ど行われていない。この試験の結果,次のような結果
を得た。なお,培地lま太田寒天培地を基礎培地とした。 1)高栄養素側のグルコース濃度を高くする・と,両相の菌糸生長は非常に良く なり,貧栄養素側でも菌糸が旺盛に生育し,菌糸体生長量のみでなく,菌糸体の密度も非常に高くなり、コロニーの形状が財ヒする。
2)高栄養素側から低栄養素側に栄養素の輸送が起こり,それは低温環境など に置くことにより促進される。 3)7高栄養素側にフルクト∵スや高濃度のリン酸を加えると低栄養素側の菌糸 生長が促進される。 4)外生菌根菌で$p払ゆ批の実験系を確立し,この系が外生菌根菌の物質輸送 の定性的な研究に利用できることを示した。 従来・外生菌根帯の糖の輸送の研究lま植物体に共生した系で行われており,′菌糸のみの研究は殆ど行われていなかったが,本研究は外生菌根菌の生育の基卒的パター
ンを解明し,菌糸体による糖など栄養素の輸送の基礎的性質を明らかにした。 以上の研究成果は外生菌横菌の実用的利用においても広い応用範囲が期待される。 以上について,審査委員全員一致で本論文が岐阜大学大学院連合農学研究科の学 位論文として十分価値あるものと認めた。基礎となる学術論文 1)HatakqarTn,TJmdOhJⅦ娼a,M・(200叫 MycelialgrowthofsbainsofthegeneraSuilLus andBoletinusinmediaw抽awiderangeofconc印血onsofcahandnibgensouⅣeS. My∞SCience44(inp陀∬). ?)H血yann,TandOhTmSa,M・(2瑚)MycelialgwtI-Characterisdcsinaspht-plate Cu知将_Qffou-S血insofthegenus,Su地肌qCOSCience44(inpress).