Title
肝細胞癌に関する臨床生化学的ならびに臨床病理学的研究
(I) Reduced retinoid content in hepatocellular carcinoma with
special reference to alcohol consumption (II) 小肝細胞癌 (径
2cm以下) に関する臨床病理学的研究( 内容の要旨(Summary)
)
Author(s)
足立, 定司
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学)乙 第863号
Issue Date
1993-07-21
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/15408
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氏名(本籍) 学位の種類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与の要件 学位論文題目 足 立 定
司(愛知県)
博
士(医学)
乙第 863 号 平成 5年
7月
21日 学位規則第4条第2項該当肝細胞癌に関する臨床生化学的ならびに臨床病理学的研究
(l)Reduced retinoid content jn hepBtOCelluL8r C8rCinom8With$PeCi81
reference to8LcohoL con$umPtion
(暮り小肝細胞癌(径2cm以下)に関する臨床病理学的研究 審 査 委 員 (主査)教授 武
藤
泰
敏 (副査)教授 佐 治 重 量 教授 土井
偉 誉論
文
内 容
の 要旨
従来,肝発癌の研究はおもに小動物や肝癌細胞株の培養系などを用いて行われてきた。しかし,疫学的調査な どによって飲酒と肝発癌の関係が注目されるようになり,また,各種画像診断の進歩によって小肝細胞癌(小肝 癌)の診断が可能となるにいたり,肝発癌に関する臨床面からの研究も可能となってきた。そこで申請者は臨床 生化学的に肝癌における飲酒と発癌抑制因子として知られるレチノイドとの関係を,さらに;臨床病理学的にい わゆる「早期癌」と考えられる径2cm以下の小肝癌の特徴を明らかにし,肝発癌についての臨床的アプローチ を試みた。 Ⅰ.肝細胞癌患者における飲酒暮と肝内レチノイド濃度との関係 1.患者と方法外科切除された肝癌29例を嘩算飲酒圭別に第1群;エタノール換算500kg以上(3例),第2群;150∼500
kg(6例),第3群;150kg以下(20例)の3群に分け組織レチノイド濃度を高速液体クロマトグラフィーにて 分析した。さらに14例については非癌部を肝実質と呈状(伊東)細胞分画に分離してそれぞれのレチノイド濃度 を測定した。また,細胞内レチノール結合蛋白(CRBP)をRIAにて測定した。 2.結 果 非癌部の総retinoid,retinol,retinylester濃度は第3群に比較すると第1,2群の患者で有意に低く,飲酒 量との間に負の相関を示した。(総retinoid;r=-0.79,P<0.01,retinol;r=-0.77,P<0.01,retinylesters; r=-0.80,P<0.01)。第1,2群の癌部における総retinoid,retinol,retinylest打濃度は第3群に比較して有 意に減少しており飲酒量との間に負の相関を示した(総retinoid;r=一0.85,P<0.01,retinol;r=-0.82,P< 0.01,retinylesters;r=-0.88,P<0.01)。癌部の総retinoid,retinol,retinylester濃度は非癌部と比較する と全ての群において有意に低かった(P<0.05).組織CRBP濃度は全ての群で非癌部と比較して癌部で有意に低 かった(P<0.05).またCRBPは癌部,非癌部いずれにおいても第3群に比べると第1群で低かったが推計学的 には有意でなかった。 分離された肝実質細胞分画の総レチノイド濃度(RE,レチノール当量として表現)は第3群(n=8,中央値= 5.2FLgRE/106cells,range=4.0-6.3FEgRE/106cells)に比べて第1,2群(n=6,中央値=3.3LLgRE/106 cells,range=1.7-5.OJLgRE/106cells)で有意に低かった(P<0.05)。また,星状細胞分画の総レチノイド濃 度も第3群(n=8,中央値=58FLgRE/106cells,range=35-70FEgRE/106cells)に比べて第1,2群(n= 6,中央値=34JLgRE/106cells,range=20-45〃gRE/106cells)で有意に低かった(P<0.05)。なお実質細胞 と星状細胞の総レチノイド濃度の間には有意の正の相関がみられた(r=0.76,p<0.01)。 613.考 案 今回の研究で,肝癌患者において発癌抑制因子として知られる肝レチノイド濃度と促進因子と考えられている 飲酒量とが逆相関することが臨床的に初めて示された。その機序については,肝実質細胞と星状細胞のレチノイ ドが正相関して減少したことより栄養障害等でみられるビタミンA欠乏と違い,何らかの実質細胞障害によるも のと考えられた。また,肝発癌にレチノイド欠乏がどのように働くかは,なお十分に明らかではなく.今後の重 要な研究課題である。 Ⅱ.小肝細胞癌(径2cm以下)に関する臨床病理学的検討 1.対象と方法 1988年9月より1991年12月まで当教室において経験した最大径2cm以下の小肝癌31例について腫瘍径別に臨 床病理学的検討を行った。 2.結 果 1)多発例は全症例の45.2%と高率であった。腫瘍径別にみると,10mm以下の4例では多発が見られず,11 ∼15mmでは8例中3例37・5%に異区域の多発が,16mm以上ではじめて19例中6例31.6%に同区域の多発が 見られた。 2)超音波像では16mm以上で初めてモザイク型が出現し,辺縁低エコー帯の頻度も上昇した。 3)超音波像で検出された結節のCT・血管造影・リピオトルCT・MRIでの検出率は・,それぞ摘1・1%, 58・1%,58・1%,59・4%であった。CO2動注下US angiographyは血管造影描出不能例について施行しているに もかかわらず,その検出率は69.2%と高かった。 4)AFP100ng/ml以上の症例の割合は腫瘍径10mm以下では4例中1例(25%),11∼15mmでは8例中 3例(37・5%),16∼20mmでは17例中9例(52.9%)と腫瘍径の増大とともに増加した。特に,主結節が16 ∼20mmの多発例では1000ng/mlをこえる高値を示す症例が3例存在した。 PIVKA-Ⅱについては,殆どの症例が0.1AU/ml以下であり,16mⅢ以上の多発した4症例だけが0.1AU/ml 以上を示した。 5)組織学的分化度は15mm以下では高分化型が,16mm以上では申分化型ないし低分化型が有意に多かった (P=0.048)。 3.考 案 腫瘍径11∼15mmでは異区域のみに,16mm以上になって初めて同区域に多発が見られたことは,11-15mm の結節はそれぞれ多中心性に発生し16mm以上の同区域の結節は転移したものと考えると理解し易い。これは 病理学的にも径15mm以下で分化度の高い結節が多く,16mmを越えると中ないし低分化型が有意に増加するこ とからも裏づけられよう。また,16mm以上ではモザイク型,辺縁低エコー帯の頻度が上昇し,AFP,PIVKA-Ⅱの高値例もみられた。これらの事実は小肝癌が15mmを境にその性質を異にしていることから,その臨床的意 義が大きいものと考えられた。