執行関係訴訟の性質
著者名(日)
丹野 達
雑誌名
東洋法学
巻
39
号
2
ページ
47-84
発行年
1996-03-20
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00000506/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja執行関係訴訟の性質
丹
野
達
東洋法学
[ 本稿の目的 一般に裁判規範としての法は、一般私人間の私法上の権利に関する紛争解決手段である裁判をするについての 基準となるものであり、紛争解決の手段に用いられるという点で、技術性がその特徴の一つである。手続法は、 実体法に比して技術性がより一層強いが、手続法の中でも、執行手続は、その存在が確定した後における債権者 の権利の実現ー債権者に対する利得の供与を目的とするため、より技術性が強いし、その目的からして合理性、 合目的性、経済性、迅速性が求められる。 執行文付与の訴、執行文付与に対する異議の訴、請求異議の訴及び第三者異議の訴︵以下﹁執行関係訴訟﹂と 言う。︶は、民事紛争の一般的解決を目的とする通常訴訟とは異なる側面がある。通常訴訟は、紛争の対象であ る権利の存否についての判断を目標とするが、当事者の主張の当否は未定であり、当事者の提供する訴訟資料、 証拠資料に基づいて、その目標の達成を図るものであり、当事者の訴訟追行作業が中心となる。これに対して、 47執行闘孫訴訟の倥質 執行手続は、既に存在する債務名義に基づき、執行債権の存在を前提とし、その実現に向けて手続を進行するも のであり、その進行の手順は、民事執行法により克明に定められ、専らそれに従うものである。したがって、そ の内容及び進行過程は、前者においては流動的、非画一的傾向が強いのに対して、後者においては同質的、画一 的傾向が強い、と言うことができる。そして、執行関係訴訟は、執行手続と密接に関連し、これに付随する訴訟 である。それは執行手続を前提とし、いわばこれに奉仕するものである。執行関係訴訟がアクチオ的なものとな ︵−︶ っているゆえんも、この辺りにあるのではないかと臆測される。民事執行手続が民事執行法の規定するところに 従って進行すれば、手続自体としては動いて行くものであるし、動いて行かなければならないのである。そうい う意味では、民事執行法の立法、改正の場においては、その基礎としての理論が重要であるが、その中から立法 政策として一つの方向が選択され、法が制定されると、その規定を前提とする解釈が前面に現われ、理論性はよ り稀薄となると言えるように思われる。したがって、執行関係訴訟の性質、機能、態様等について考えてみる場 合には、執行手続の目的、態様、効果を離れて、一定の原理・原則からのみ演釈的に論ずることは相当でない場 合がある。むしろ執行手続上の諸現象から遡って、いわば帰納的に考究することも必要である。本稿は、この観 点から、執行関係訴訟の性質、機能を見直してみようとするものである。 48 二 執行手続の概観 執行手続は、前述したほかにも、訴訟手続と基本的な点で異なる。訴訟手続においては、権利という観念的存
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在の存否を判定するという思考作用・判断作用が主流となるのに対し、執行手続においては、債権者の権利の実 現ー債権者に対する利益の供与という事実形成作用を営むものである。したがって、その担当機関もそれにふ さわしいものであることが必要であり、訴訟手続では判決裁判所がこれに当たるのに対して、執行手続では執行 裁判所及び執行官がこれに当たる。 執行手続は債権者の給付請求権の実現手続であるから、債権者の給付請求権が実在することが基本的前提とな る。しかし、それが当然の前提であるにも拘らず、執行手続自体には事前のその確定手続が設けられてはいない。 それは、執行手続とは別に、給付請求権の存否を確定する訴訟手続を経て、給付請求権を認容した給付判決︵実 体的執行力を有する︶が既に存在するから、執行手続の基礎として訴訟手続の成果を利用することとしている。 この判決が執行法上債務名義と言われ、執行手続は債務名義を基点とする。債務名義が存在すれば、執行機関は、 給付請求権の実体上の存否を顧慮することなく、執行を開始し、進行することができるし、しなければならない。 執行債権者は、債務名義を有することにより、執行機関の利用権能が認められ、そのような執行法上の地位を得 ているのである。 このように、債務名義が存在すれば、執行手続の進行は可能になるが、債務名義となりうる文書が存在するだ けでは、執行を開始するには不十分であり、債務名義が執行を適法有効になしうる状態にあること︵形式的執行 力を有すること︶を要する。例えば、判決であれば、それが確定し、執行力を有するものでなければならない。 判決が言渡しにより成立しただけでは足りず、被告が上訴期間を徒過するなどにより、形式的確定力を得たこと 49執行闘孫訴訟の牲貿 を調査し、確認する手続が必要であり、その手続を経ていることである。この役割を果す手続が執行文付与手続 であり、これらの事実を調査・確認し、公証する機関が執行文付与機関であって、裁判所書記官及び公証人がこ れに当たる。執行文付与機関は、単独官庁であり、独立してその権限を行使する。民事執行法制定前の民事訴訟 法五二〇条一、二項においては、執行文付与の特別要件︵以下、単に﹁特別要件﹂と言う。︶の場合には、裁判 官の命令を要することとし、その際債務者を審尋することができるものとしていたが、民事執行法においては、 いずれも廃止し、執行文付与機関の権限を強化するとともに、執行文付与手続における一方的審尋を徹底してい ︵2︶ る。執行文付与の訴を経た場合であっても、執行文を付与するのは執行文付与機関なのである。 執行債権者は、執行の申立てに先立ち、執行文付与の申立てをしなければならない。執行文付与機関は、訴訟 事件の一件記録を調査し、執行債権者の提供する一定の資料に基づき、執行文付与の要件の存否を審査する。執 行文付与の要件は、おおむね手続上の事実︵一般要件︶であるが、実体上の事実であることがある。これが特別 ︵3︶ 要件であって、一は条件であり、二は承継である︵民事執行法二七条︶。条件の場合は、執行債権の同一性に変 動はないが、承継の場合は、執行当事者が交替するから、執行債権の同一性も変動する。法は、この場合には実 体権の変動をも予定していることに注目すべきである。執行文付与手続において、執行債権者の提出しうる資料 は書証に限局されている︵民事執行法二七条︶。債権者は、債務名義について執行文の付与を受けることが必要 的であるが、証拠資料の制限により執行文の付与を受けることができない場合の生ずることが予想される。その 救済措置が執行文付与の訴︵民事執行法三三条︶である。債権者が執行文付与の訴を提起した場合には、審理手 50
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続は口頭弁論を開くことになるから、証拠資料の制限は解除されるし、債務者も被告として訴訟手続に関与する こととなって、執行文付与手続における一方的審尋も解除される。他方、執行文付与手続の制度的論理は貰徹さ れており、執行文付与の訴で債権者が勝訴の判決を受けても、それが執行文の付与となり、あるいはそれに代わ るものではなく、債権者が勝訴判決を執行文付与機関に提示して執行文の付与を受けることになることは、前述 のとおりである。 執行文の付与についての不服申立方法として、執行文の付与に対する異議が認められているが︵民事執行法三 二条︶、特別要件に基づく執行文の付与については、更に執行文付与に対する異議の訴が認められている︵民事 執行法三四条︶。この訴は、執行文付与の訴に対置されているように見えるが、その性質、内容に相当な差違が あることに留意すべきである。 執行債権に係る執行文付与手続と本案判決手続との間には、債務名義の効力について連続面と非連続面とがあ る。債務名義の執行力については、両手続において連続し、一連の役割を果すが、執行債権に係る既判力につい ては、両手続において連続しない。債務名義が判決である場合には、口頭弁論を経て双方審尋の機会が確保され、 裁判をするのは裁判所であり、その裁判の形式は判決である。これに対して、執行文付与機関は、裁判所ではな く、裁判所書記官又は公証人であり、審理は口頭弁論によるものではなく、しかも一方的審尋である。執行文付 与の要件が実体関係に係る事項である場合であっても、付与手続に変わりはないから、執行文付与の時点におい て執行債権の実体的存在が確定されたものー既判力を有するものとはいえない。いわば、木に竹を継いだ手続 51執行灘孫訴訟の倥質 によってなされたものとみるほかはない。このことに関連して、執行文付与の訴又は執行文付与に対する異議の 訴を経た場合の効果についても、それをどのように評価すべきかは一つの問題である。少なくとも訴訟手続を経 ることにより、原判決の判決手続との連続性が回復されると見るか、それとも執行文付与手続の制度的論理を貰 徹させて執行文付与の訴及び執行文付与に対する異議の訴をそれにふさわしいように取り扱うべきであろうか。 以上は、執行手続を手続面から見るものであるが、執行手続も、執行債権の実現ということでは、執行債権の 実体的存在と無縁ではありえない。むしろ判決手続における訴訟物たる債権の存在の確定された状態も、それが まだ観念的存在に止まるのに対して、執行債権は、それが執行手続により実現されるのであるから、現実の生活 利益に密着している。実体面における執行債権の変動は、迅速に執行手続面に連動させることが法的正義を保持 するゆえんである。これらの実体面における変動を執行手続に反映させるのが請求異議の訴である。執行債権に 係る実体面の変動と執行手続との橋渡しは、あげて請求異議の訴に委ねられている。 執行手続は、執行当事者間の利害に関わるだけではなく、第三者をその渦中に巻き込むことがある。執行処分 の事実上の効果が第三者に及ぶことである。執行は、債務者の責任財産について行わなければならないはずのも のであるが、執行手続面の要請から、執行機関による執行財産の帰属の判定は、その外観のみから行うこととさ れている。そのため、執行財産が第三者に帰属するものであるにも拘らず、これについて債務者に対する執行が 行われることが生ずることがある。もとより第三者には執行を甘受すべき義務はない。したがって、このような 執行が行われた場合には、これを排除する手段を与えることが必要である。その手段が第三者異議の訴である。 52
ところで、債務名義は、債務者に対して執行力を有するのであり、第三者はその増外にある。現在する執行は第 三者に対して行われているものではなく、執行機関自体にも第三者に対して執行している意思はない。執行の法 律上の効果は第三者との間には生じていない。第三者は事実上の不利益を被っているにすぎない。この点は、前 三者の訴と第三者異議の訴との基本的相違点である。 執行関係訴訟は、このような執行手続を軸として行われるのであり、その役割分担を明確に把握する必要があ る。 三 執行関係訴訟
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1 執行文付与の訴 e 執行文付与の訴の存在理由 執行文は、前述のように、債務名義の成立︵実体的執行力︶と執行力の現存︵形式的執行力︶との間の手続上 の間隙を埋め、執行機関が、当該債務名義に係る執行力の現存の自らによる確認の労に煩わされることなく、即 時に執行を開始し、進行することを可能にしようとするものである。裏から言えば、執行機関は執行力の現存の 確認作業から疎外されていると見ることもできる。実体権の存否の確認作業ないしは公証作業は既になされてい るから、執行文付与の要件は、本来は形式的要件︵手続上の要件︶に止まる。しかるに、民事訴訟法が将来の給 付の訴︵これを認容する判決︶を認め︵民事訴訟法二二六条︶、民事執行法が執行力の承継人に対する拡張を認 53執行闘孫訴訟の倥質 めているため︵民事執行法二三条︶、この場合について原判決を債務名義として容易に利用することができる途 を開くとともに、その執行力の現存を公証する手段を講ずる必要をもたらした。このため、その要件事実の存在 が給付請求権の実体的存否に関わるものであるのに、これを訴訟手続によることなく、少なくとも執行手続に関 する限りでは、執行文付与手続という簡易な審理手続で処理することとした。そして更に執行文付与手続におけ ︵4︶ る証拠制限に起因して債権者に対する救済手続である執行文付与の訴を設けたのである。 口 本訴における攻撃防御方法 本訴は、専ら債権者のために設けられた訴訟である。債権者が特別要件を書証によって証明することができな い場合の補足的手段として認められた訴訟である。債権者は、自己の給付請求権について給付訴訟を提起するこ ︵5︶ とは何ら妨げられないのであるから、当該給付請求権のための給付訴訟として本訴を設ける実益はない。債権者 にとって最少限度必要なことは、特別要件の存在を証明することである。特別要件の存在を証明することができ るならば、債権者は直ちに補充︵条件成就︶又は承継執行文の付与を受けることにより、強制執行の申立てをす ることができるのであって、必ずしもそれ以上の効果ー執行債権についての既判力の獲得1を求める必要は ない。そのためには、争点をできるだけ絞って、迅速に右執行文の付与の当否が決せられるものとするのが合理 的である。債権者が既判力を得る必要があると考える場合には、別個に給付請求権についての給付訴訟を提起す れば足りるのである。問題は、執行文付与手続と異なり、被告が登場するのであり、被告は、本訴においては審 尋を受けることができるという利益を有する反面、被告として応訴を強制される債務者の不利益をいかに保護す 54
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べきかという点であろう。債務者を本訴に関与させる代償として、特別要件の消滅、発生障害等の事由︵例えば、 給付請求権の発生を、特定又は一定の処分行為の効果の発生に係らせた場合にはおいて、その処分行為について 錯誤、詐欺等の報疵により効果の発生が妨げられ、又は効果が消滅したことなど︶を主張させることにより、債 務者との関係における給付請求権の存在を否定させ、一挙に債権者の請求を排斥させてしかるべきではないかと いうことが考えられる。しかし、これらの事項は、もちろん執行文付与の要件自体ではなく、執行文付与の訴は 執行文付与手続︵この手続では一方的審尋であるから、抗弁事由が入り込む余地はない。︶の一部であって、こ れを出るものではない。また債務者がこれらの事項について他に争う手段がないわけではない。すなわち、債務 者のためには、執行文付与に対する異議の訴あるいは請求異議の訴が用意されており、これらの事項は、両訴の ︵7︶ ︵8︶ それぞれの異議事由ともなりうるから、それらの訴を別訴として提起することが可能である。もっとも、執行債 権の不存在を理由とする執行の排除は、債務者が求めるとしても、債権者にはその点まで争う意思もなく、必要 ︵9︶ もない。しかもそのためには債務者に対してそれにふさわしい別の手段−請求異議の訴1が認められている から、債務者はそれを選択すれば足りる。そして、執行文はまだ付与されていないから、債権者は執行手続上の 地位を与えられておらず、この段階では債務者としては執行文の付与を止めることができれば足り、債権者の執 行手続上の地位の消滅を図る必要もないし、できもしないのであるから、執行文付与に対する異議の訴の利益は ない。したがって、債務者の防御方法としては、特別要件の消滅・発生障害事由を主張することになるが、それ で足りる。これを要するに、本訴での攻撃方法は、原告の請求原因としての条件の成就又は承継の存在の主張と 55執行衡孫訴訟の倥貿 これについての本証の提出であり、防御方法は、請求原因に対する被告の認否と反証の提出であり、抗弁として の承継及び条件が法律行為である場合におけるその消滅・発生障害事由の主張とこれについての立証とである。 なお、債務者が本訴において請求異議の訴の異議事由を抗弁として提出することができるかについては争いが ︵10V ある。本訴の請求原因が特別要件の存在であるとすれば、これに対する抗弁はおのずから限定されたものとなり、 たかだか執行文付与に対する異議の異議事由に尽き、請求異議事由全般ではない。その上、本訴の目的は特別要 件の存否の確認であるのに対して、請求異議の訴の目的は、執行債権の不存在を理由として当該債務名義の実体 的執行力を除去し、これに基づく執行を排除しようとするものである。したがって、この異議事由を抗弁とし、 認容されたとしても、本訴の判決の守備範囲以上のものは得られないのであるから、主張の構成としても、得ら ︵n︶ れる判決の効果としても実益がないと言わざるをえない。債務者が本訴において請求異議の訴の異議事由を主張 することができないとした場合の難点は、別訴としての請求異議の訴の訴状の作成の手数及びその印紙の貼用に 係る費用を出掲しなければならない不利益が残存することになることである。債務者がこの不利益を受忍せざる をえなくなることは否定できないが、このことは、現行執行制度から招来するものであり、制度自体の構成を変 えることなしに、単に当事者の不利益という観点から、解釈によって制度の実質的変更を試みることは相当では ない。そして債務者のこの不利益が本訴についてその本来の目的、機能から逸脱した構成をしなければならない ︵12︶ とする程の致命的欠陥となるものとは到底考えられない。 56
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㊧ 本訴の性質 本訴においては、債務名義が存在することが当然の前提である。したがって、本訴の請求原因は、特別要件の 存在−条件が成就したこと又は承継の事実が存在することである。債務名義に表示された既判力を有する給付 請求権又は条件付給付請求権の存在を争うことができないわけであるが、当該請求権について承継があった場合 あるいは条件が成就した場合、このことによる現在の給付請求権について当然に既判力が生ずるものではない。 しかし、民事執行法二三条は、このような場合には、右各請求権について執行力が生ずるとしているのであるか ら、執行文付与機関が債務名義に執行文を付与するのである。執行文付与機関は、これらの特別要件の存在する ことを証拠資料により確認した場合には、一般の執行文付与の要件が存在する限り、それ以外に執行文の付与の ために斜酌すべき事項はなく、いわば自動的に補充︵条件成就︶執行文あるいは承継執行文を付与することにな る。そして本訴を経た場合でも、このメカニズムは異なるものではなく、執行文は、執行文付与機関が付与する のである。いわば本訴の判決裁判所が特別要件の存否の認定を執行文付与機関に肩代わりするにすぎないと言っ てよい。執行文付与機関による執行文付与の要件の存否の判断の審理手続が、書証のみによる審理に代えて、証 拠方法の制限を解除した口頭弁論としたことは、執行文付与の要件の実体的な部分を変えたものではなく、審理 手続を変えたにすぎない。手続が書証による非公開の証拠調から、証拠方法に制限のない公開の証拠調である訴 訟手続を経なければならないこととされたものである。だからと言って、それに基づく判決について、債権者に 執行文を受けうる地位ないしは執行の申立てをなしうる地位を得たとの形成効を認めなければならないと言う必 57執行衡孫訴訟の控質 要はないのであるし、また判決である以上、そのような独自の効力を与えなければならないとする理論的根拠は 存しない。これを要するに、本訴の機能は、債権者に対して補充︵条件成就︶執行文又は承継執行文を受けるた めの障害となっている条件の成就又は承継の事実の存在の証明手段を与えることである。これによって障害が除 去され、この執行文を受けうる状態に至るのであり、このことが執行文によって!本訴の認容判決によってで はなく1公証されることにより、執行手続を開始することができるのである。この状態に到達したことを、本 訴の判決によって執行文付与可能の法律状態が形成されると言うまでの必要はなく、証書真否確認訴訟のように、 率直に特別要件となる事実の確認訴訟ー法が例外的に認めた事実確認訴訟及び事実確認判決1とすることに ︵13︶ ︵14︶ よって十分にその役割は果されるのであり、それにより格別の障害が生ずるとは認められない。 民事執行法は、前述のように、執行機関を独立の単独官庁としている。どのような執行名義︵債務名義に限ら れないのであって、反対債務名義︵執行取消判決、取消・停止命令のみならず執行処分に関わる法定の私成文 書︶も含む。︶に基づき、どのような執行処分をなすべきかが執行法規上に逐一規定されている。一般に指揮監 督関係にあれば、下位の執行機関は事前に受訴裁判所の命令をまつべきであろうし、上位機関は具体的な処分を 命ずるか、場合によっては、自ら下位機関に代わって当該処分をなしうべきである。しかし、そのようなことを 明示する規定もないし、それを窺わせる規定もない。もちろん一の執行機関が他の執行機関の補助者として執行 手続に関与することがある︵例えば、執行官が執行裁判所の命令により執行不動産の現況調査、売却手続を行う ような場合︶。しかし、それはそれに即する規定があるのであり、一般的に上位、下位の指揮監督関係に立つも 58
のではない。異議裁判所、抗告裁判所も原処分をした執行機関と指揮監督関係に立つものではない。それは訴訟 制度における不服申立制度一般と同様である。すなわち、当事者の不服申立てに対する処理として、第三者機関 が当該処分の当否について審理し、当否の判断を示すものであって、判断の範囲はこれに止まり、その判断がな された後の処置については逐一規定されており、一般的上命下服の関係にあるものではない。執行関係訴訟にお いてもこれと異なることを示す格別の規定はなく、その受訴裁判所が上位者として指揮監督権限を有するもので はないと言うべきである。したがって、命令訴訟と構成する必要はないし、構成することによる実益も認め難い。
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2 執行文付与に対する異議の訴 e 執行文付与の訴と本訴との関係 執行文の付与に係る当事者の救済手段︵不服申立方法︶として執行文の付与に関する異議︵民事執行法三二 条︶があるが、訴訟形式による不服申立方法としては、債権者についての執行文付与の訴と形式面ではパラレル に債務者について本訴が設けられた。何故に執行文付与に関する訴として統一しなかったのであろうか。両訴の 顕著な差違の原因は執行文の存否にある。執行文付与の訴の場合は、まだ執行文の付与はなく、債権者は執行手 続上の地位を有していないのに対して、本訴の場合は、執行文が債権者に付与されており、執行が開始されてい ない場合もあるものの、債権者は執行手続に関する一定の地位を有するに至っている。執行文付与の訴では、債 権者は自己の有する債務名義について執行文の付与を受ける必要があるのみであるし、その債務名義に係る執行 59執行衡孫訴訟の牲質 手続は現存していない。本訴では、執行手続が現に行われているか、行われる直前の状態にあり、債務者として は、これを排除し、又はその開始を阻止する必要に迫られている。したがって、債権者・債務者の執行手続に係 る地位・立場の相違により、両訴の形式上の類似に反して、その性質ないし態様について顕著な差違をもたらし ている。両訴の性質の点においてこれを見ると、執行文付与の訴は、前述のように事実確認の訴とみるべきであ るが、本訴においては、債権者が既に執行手続上の法的地位を得ているのであるから、執行手続を排除するため には、この債権者の法的地位を消滅させる必要があり、最少限形成訴訟とみざるをえないと言うことができよう。 なお、この論点は後に本訴の判決の効力の項において再考する。 ⇔ 執行文付与に関する異議と本訴との関係 債権者に対して執行文が付与された場合の債務者の対抗手段として、執行文付与に関する異議と本訴とがある。 執行文付与に関する異議︵債務者に限って言えば、執行文の付与に対する異議︶は、執行文の付与一般について の不服申立てであるから、執行文の付与を違法とするあらゆる理由︵形式的事由であると、債務名義に表示され ︵15︶ た請求権の不成立や消滅等の実体上の事由を除き、実体的事由であるとを問わない。︶が異議事由となり、ある 意味では包括的なものである。これに対して、本訴は、特別要件に係る執行文の付与に対する不服申立てのため ︵16︶ に設けられたものであるから、その異議事由は制限されている。それは特別要件︵条件又は承継︶に関わる事由 に限定される。執行文付与に対する異議の裁判に対する不服申立てをすることができないのに対し︵民事執行法 三二条四項︶、本訴の敗訴当事者には上訴が許されている。したがって、本訴の債務者が特別要件の不存在及び 60
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一般要件の欠訣を主張したところ、特別要件の存在は認められるが、一般要件の欠鉄があるとして被告である債 権者が敗訴した場合、被告は、一般要件の具備することを理由として上訴することができることとなろう。この ︵17V ような結果は、一般要件が軽微な事項であり、存否の判断が容易なものであることから、不服申立てとして異議 ︵18︶ は認めるが、その裁判に対しては上訴︵執行抗告︶を禁止した民事執行法の立法趣旨に反することになる。した がって、一般要件に係る不服申立ては専ら執行文付与に関する異議によることとし、本訴ではこれに触れること ︵19︶ ができないとするのが相当である。訴訟経済の見地からこれに反対する考え方があるが、形式的事項である一般 要件と実体関係に関し、かつ制限的な特別要件との区分けは明白であり、その一般要件の存否の判断は容易であ って、簡易な審理方式︵当事者にとっても裁判所にとっても、書面審理と口頭弁論とではその手数には格段の差 違がある。︶をとることが可能であり、本訴とは別個に申立てをしなければならないとしても、申立人にとって それ程の負担を煩わすものではない。にも拘らず、たまたま付随的に一般要件の主張していることにより、その ︵20︶ 点についての審理のために上訴が認められるとすることは著しく均衡を失することではないであろうか。 国 本訴の攻撃防御方法 執行文付与の訴と本訴とは、前述のとおり、その前提要件の差違から、各訴の原告が反対となるから、主張の 形式的構成は逆となるが、主張すべき事項︵要件事実︶についての主張責任の分配には変わりはない。執行文付 与の訴の請求原因は、条件又は承継の発生原因︵債権者が立証責任を負担する事項︶に限られ、それは債権者が 主張すべき事項であるから、本訴の異議事由は、その消滅、発生障害、阻止に係る事由に限られ、これらが債務 61執行渓1孫訴訟の盤質 者の主張すべき事項となる。すなわち、債務者は、請求を特定するため、狭義の請求原因として、概括的に条件 ︵21﹀ の未成就又は承継の不存在を陳述する必要があり、被告である債権者は、抗弁としていかなる条件であり、承継 であるか及びその発生原因を具体的に特定して主張し、かつ立証しなければならない。原告である債務者は、再 抗弁として当該条件又は承継の消滅、発生障害、阻止事由を主張・立証することになるにすぎない。 四 請求異議の訴と本訴との関係 本訴の異議事由には、本来は請求異議の訴の異議事由にも含まれるものがある。そのため、これに関連して二 つの問題がある。一は、特別の訴訟︵本訴︶を設けた以上、その要件事実を理由として一般的訴訟︵請求異議の 訴︶を提起することは許されないものとすべきか、と言うことである。これについては、その訴訟ないし判決の 守備範囲を見てみる必要がある。本訴は、執行文付与の違法を争うものであるから、その認容判決は、執行文付 与の違法を是正するにすぎず、執行債権の実体的存否について踏み込むものではないのに対し、請求異議の訴は、 執行債権の不存在ないし現時点での請求の失当を理由として、実体関係と執行関係との齪齪を是正するものであ って、その認容判決は、執行債権の不存在等の実体的判断が基礎となり、これについて既判力を生ずるものであ る。同一の異議事由を主張しても、その効果を異にするものであり、執行を排除する効果︵形式的執行力に及ぼ す影響︶は同一であるものの、執行債権の実体的の存否ないし変容の有無の判断についての効果を異にする。し たがって、特別要件中請求異議の訴の異議事由に当たる事項を請求異議の訴の異議事由から除外することは、債 務者に著しい不利を課することになるから、両訴それぞれの異議事由ともなり、その訴における攻撃方法とする 62
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ことができるものとし、また、債務者は、いずれの訴を選択することもできるし、両訴とも提起することもでき ︵22︶ ると解すべきである。二は、特別要件は執行文付与の要件ではあっても、実体関係に関わる事由であり、給付請 求権の存否に影響がある以上、同じく給付請求権の存否を左右する請求異議の訴の異議事由を、本訴の攻撃防御 方法として提出することができるか、という点である。これについては、前段で述べたように、両訴はその守備 範囲を異にするのであり、その判決の効力の範囲・態様を異にする。請求異議の訴の異議事由の存在により執行 債権の現存が否定され、その債務名義に基づく一切の執行が許されないのであるから、同一の異議事由に基づき ながら、本訴により、当該執行文を付与すべきではないとするのみに止め、その債務名義に基づく将来の執行文 ︵23︶ の付与ないし執行の申立ての可能性を残すことは適当ではないとも言えよう。しかし、本来の請求異議の訴の異 議事由︵執行債権の存在を否定する事由であって、特別要件に当たらないもの︶であっても、本訴の異議事由と して主張する限りでは、この制約をこえることはできないのであるから、本訴を提起しながら、当該債務名義に 基づく執行を許さない旨の判決主文を得ることはできないのである。債務者が執行の可能性を根こそぎに排除し ようと欲するならば、請求異議の訴によるしかない。そうであれば、請求異議の訴の異議事由を本訴において主 ︵24︶ 張することを認めるメリットはないから、むしろその提出を許さないとするにしくはない。これに反し、本訴の 異議事由が請求異議事由にも当たる場合には、本訴の異議事由に当たるからと言って、請求異議の訴の異議事由 ︵25﹀ として主張することが否定されるものでないことは前述のとおりである。 63薪行灘孫訴訟の倥質 国 本訴の性質及び判決の効力 本訴の判決の効力については、本訴が設けられた理由を考えてみるべきである。債権者は、執行文付与の要件 ︵一般要件であると特別要件であるとを問わず︶を充たすことにより、執行の申立てをなしうる地位にあり、執 行文によりその旨が公証される。債務者が債権者の執行の申立てを阻止するためには、このような債権者の地位 を消滅させることが必要である。そのための債務者の対抗手段の一つとして本訴が認められているのであるから、 本訴の認容判決が少なくとも形成力を有することは前述のとおりであって、本訴はまず形成訴訟ということにな る。 債権者の地位は、執行法上の地位であるから、この形成訴訟の訴訟物は、執行法上の異議権ということになり、 債務者は、執行債権の形式的執行力の不存在を理由として異議権を主張しているのである。それは、執行債権の 不存在自体を理由とするものではなく、執行文付与の要件の不備の点から、執行文の付与を否定し、それによっ て執行の取消しないし開始の阻止を可能とすることができるのであるから、その限りにおいてその目的を遂げよ うとするものである。したがって、その認容判決もこれに尽きる。そして他に執行債権の不存在を理由として、 執行の取消し、開始の阻止を図る手段も用意されており、それが請求異議の訴であるが、特別要件の場合︵した がって、本訴の場合︶には、実体関係に係る事項を要件事実とするものであるから、執行債権の存否に関わり、 その訴に包撮される。債務者としては、本訴によらず、この訴を選択することもできるのである。また、特別要 件に基づく執行文の付与がなされた場合には、当該執行文は債務者へ送達されるから︵民事執行法二九条後段︶、 64
債務者はこれに基づく執行に備える機会が与えられており、債務者において執行停止を命ずる仮の処分を求める など適切な防衛手段を講ずるならば、違法な執行により損害を被むり、その賠償を求めなければならなくなるお それは少ないであろう。そうであれば、他に執行債権の存否を確定する手段があるのに、執行債権の存否の判断 について常に十分な攻撃防御方法を尽くさせたとは言い難い本訴の判決について、既判力を認めるとしても、そ の範囲は限定されざるをえず︵本訴で争った特別要件に基づくものに限られる。︶、得るものは少ないと言わざる をえない。本訴の判決については、形成効のみを生じ、既判効は生じないとして差支えはないと言うべきであろ ・フ。
東洋法学
3 請求異議の訴 e 本訴の機能と性質 執行文の付与された債務名義が存在すれば、これに基づく執行手続は適法有効とされる。しかし、執行債権が 現実に存在しなければ、実体関係上その債権の実現が許されないことは当然である。執行債権が発生していった ん存在したとしても、永続的に消滅しないものではない。その存在が判決により確定されたとしても、この理は 変わらない。時間の経過と共に、確定した給付請求権の消滅・変更がありうることは否定できない。執行債権の 消滅・変更があれば、執行債権の実現は許されないし、あるいは実現の程度・態様も異ならざるをえない。執行 手続上は債務名義により執行債権の存在は一応肯認されるのであるが、なお執行債権の実体面と絶縁することは 65執行衡孫訴訟の盤貿 できない。実体関係についても執行手続の正当性の保障手段が必要であり、この債務名義と実体関係との乖離を 更正する手段と共に、既判力より若干低度の確率のまま容認されてきた執行債権の存在を既判力による存在の蓋 然性にまで高める機会を保障する手段が請求異議訴訟である。その認容判決は、執行債権者の執行手続上の法的 地位を消滅させる効果を生じさせるー形成効をもつーことが必要であり、それがこの判決の第一次的機能で ︵26×27︶ ある。少なくとも、この効果を有することが最低限の要求である。ここから本訴についての形成訴訟説が生まれ る。 執行債権の不存在にも拘らず、債務名義の執行力が排除されずに執行手続が進行・終了し、執行債権実現の結 果が生じた場合には、実体関係上執行債権者は、不当利得者あるいは不法行為者となる。したがって、執行債務 者にその損失の回復を図る手段を与えることが必要である。このことを理由として、執行債務者が執行債権者に 対して不当利得返還請求訴訟ないし不法行為に基づく損害賠償請求訴訟を提起した場合、それに先行してその責 任原因についての共通の要件事実を含む請求異議訴訟が係属し、終了しているときに、この請求異議訴訟ないし その認容判決を利用することができないであろうか、というのが本訴の第二の役割である。ところで、本訴は、 債権者の債務者に対する債務名義の存在することがその当然の前提であり、その請求原因は、債務名義に表示さ れた債権ー執行債権の消滅・変更事由が存在することである。そして、争点はこの一点に絞られ、それ以外に は存在しない。本訴においては専らこの執行債権の存否が審理判断される。執行債権の存否の確認が本訴の本質 ︵28︶ であり、その判決は執行債権の存否について既判力を生ずる、とするのが確認訴訟説である。本訴の認容判決に 66
庚洋法学
より、執行機関が執行を取り消し、あるいは開始しないことは、執行債権が存在しない以上執行手続を進行させ ることは適当ではないので、右判決の反射的効果として執行手続を取り消し、あるいは開始しないのである、と する。実体関係的にはまさにそうであるが、執行手続は、債務名義を出発点として執行手続を遂行するものであ り、債務名義の存在が執行手続の適法性・有効性を決定する。債務名義が存在する以上、執行債権の実体関係上 の存否は、執行手続の適法性・有効性に何ら影響を及ぼしえない仕組となっている。したがって、執行手続に影 響を及ぽすためには、債務名義の執行力を消滅させることを判決主文上表明することが必要である。これを単に 判決の反射的効果ということで片付けることは困難である。 この二つの要求を充たすためには、本訴判決に正面から明示的に二つの効果を与えることである。しかし、こ の二つの効果を併有する判決ないし訴訟は、既存の判決ないし訴訟類型には見当たらないから、新しい類型を創 ︵29︶ 出するほかはない。このような発想から生まれたのが救済訴訟説である。この考え方では、この判決は、執行債 権の存否の判断についての既判力と当該債務名義の執行力を消滅させる形成力とを併有するのであるから、上記 の二要求を満足させるものである。たしかに、この考え方によれば妥当な結果を得られるが、妥当な結果を生ず る効力をまず措定し、その上に判決の効力を当てはめたと言う感を受けないではない。 本訴の訴訟物である異議権は、その請求原因の存在ー執行債権の消滅ないし変動の事実の存在が認定される ことにより、それだけを理由として認容されるのであり、それ以外に要件事実は存在しない。それは、売買代金 請求訴訟において、請求原因である売買契約が成立して売買代金債権が発生し、売買代金請求権が存在すること 67執行闘孫訴訟の倥質 が認容されたことによる給付判決や、離婚請求訴訟において民法七七〇条各号所定の離婚原因となる事実が存在 することから離婚請求権が存在することが認容されたことによる離婚判決と同様な関係に立つ。右の給付判決や 離婚判決が売買代金請求権や当該離婚原因に基づく離婚請求権の存在について既判力を有するとすることにはほ ︵30︶ とんど異論がない。たまたま請求の態様が給付、形成請求であるがため、その判決主文が、あるいは被告に対し て支払いを命じ、あるいは離婚の効果︵婚姻関係の消滅︶を表示しているけれども、同時に給付請求権又は離婚 請求権をも表示していることを読み取ることに格別の困難はない。そうだとすると本訴において主文として本訴 の異議権という形成請求権の表示と共に給付請求権の表示がなされ、本訴の請求認容の判決の場合には、原債務 名義に係る執行力消滅の形成判決であるが、給付請求権不存在の確認につき既判力が生ずると解することに差支 えはないと言える。そうなると、救済訴訟という新しい訴訟類型の目指すところは充足されるのであり、新しい 訴訟類型の創出の必要がなくなる。 請求異議訴訟の認容判決がなされた場合も、執行手続は当然には消滅せず、そのまま進行する。右判決が執行 機関に提示されて初めて、執行機関はその執行手続を中止し、あるいは既になした執行手続を取り消さなければ ならなくなるのである︵民事執行法三九、四〇条︶。債務名義作成機関と執行機関とが別個の独立の機関である 以上、既存の債務名義が失効した場合、それが執行機関にどのように影響するとみるべきであろうか。その最も 端的なとらえ方は、本訴の判決裁判所の判決の指揮命令的効力の働きとみることである。この場合原判決の第︼ 審裁判所は違法な執行処分の是正を行うものであるが、それは執行機関に対する指揮命令の機能をも有すると見 68
東洋法学
︵31︶ ることができる。この点を率直にとらえて、本訴判決に命令効を認めるべきであるとするのが命令訴訟説である。 これは前三者の考え方とは、執行手続に対する見方を異にするものであり、別個の観点に立脚するものと言うべ きである。しかし、執行機関である執行裁判所と是正機関である本訴を含む執行関係訴訟の判決裁判所とは同等 の地方裁判所であることが多いし、執行裁判所と執行官とは上位下位の関係に立つものではないから、判決裁判 所と執行官との関係のみが上位下位の関係に立つとみるのは均衡を失すると言うべきであり、是正機関と執行機 関とが上位下位の関係に立つものではない。民事訴訟手続一般においても、原判決ないし処分裁判所と上訴裁判 所との関係は上位下位の関係とはしていない。それは原判決等の是正に止まり、その後の処分を示さないのであ る。また、これらの是正機関の裁判を命令ととらえなくとも、これらの裁判に基づく執行機関の対応は、いわば 機械的に逐一民事執行法に規定されている。しかも、本訴判決の効力について命令効をその本質とした場合、そ の命令の名宛人が訴訟当事者とならないというのは奇異な取扱いと言うべきであろう。 ⇔ 転用型請求異議の訴 債務名義が確定判決である場合には、その判決の基準時に執行債権が存在したことについて債務者は争うこと ができない。したがって、執行債権の存在を否定するには、基準時後に生じた執行債権の消滅・変更事由を主 張・立証せざるをえない。これは既判力のある債務名義により執行債権に係る全要件事実︵発生原因事実のみな らず、消滅、発生障害、阻止原因事実も含まれる。︶が包括的に示されているものとされるから、個別的な訴訟 資料として顕出するには及ばないということであって、実質的には執行債権の表示と共にこれに漏れなく包含さ 69執行脚孫訴訟の倥貿 れているのである︵この請求異議訴訟を﹁本来型﹂と言う。︶。これに対して、債務名義が既判力を有しない場合 ︵この請求異議訴訟を﹁転用型﹂と言う。︶には、執行債権の発生原因事実及び債務名義の成立要件に係る事実の 主張・立証責任は被告である債権者に存する。これらの事項については、執行債務者である原告が主張すること を要せず、被告が弁論の形式上は抗弁として主張すべきこととなる。この場合には、執行債権に係る積極・消極 の要件事実がすべて攻撃防御方法となるばかりでなく、債務名義の成立・有効要件もこれに加わるのである。本 来型の場合には、実質的には債務名義が作成された給付訴訟の続行であり、給付請求権の存否のみがキーポイン トである。これに対して、転用型は、実質的には原初的給付訴訟であり、給付請求権の存在のみならず、債務名 義の成立・有効要件の存在との両方が是認されることにより、原告の本訴請求が棄却されるので、給付請求権の 存在の判断は不可欠である。これに対して、請求認容の場合には、給付請求権が是認されないときと、債務名義 の成立・有効要件を欠くときとがある。後者の場合には、給付請求権の存否の判断はなされていないから、給付 請求が否定されなくとも、当該債務名義の執行力が排除され、請求認容の判決がなされるから、この判決には給 付請求権の不存在について既判力を生じさせるに由ない。このように見てくると、本来型の場合には、その判決 について執行債権の存否について既判力が生ずるとすることも、従来の理論からしてもそれ程の違和感のない説 明が可能であるが、転用型の場合は単純には行かない。ある場合には執行債権の存否が決め手となることもあれ ば、執行債権の存在には何ら触れることなく、判決の結論が導き出されることがある。したがって、転用型では、 場合を分けて既判力を認め、あるいは認めないとするか、それともすべて既判力を否定するかであろう。いずれ 70
にしろ、 がある。 転用型の請求異議の訴の性質をまず決定して、この訴訟の判決に既判力を認めるという行き方には難点
東洋法学
4 第三者異議の訴 e 本訴の特異性 債務名義の執行力は原則として第三者には及ばない。したがって、債務名義が存在しないのであるから、第三 者に対する執行は、それ自体違法である.債務名義の執行力が第三者に拡張される場合には、当該執行手続にお いては、その第三者が執行債務者となっているのであるから、その執行手続はもはや第三者に対する執行ではな い。第三者に帰属する財産に対して執行処分が行われた場合には、違法に第三者の財産を侵害することになるか ら、その第三者に対して救済手段を与える必要がある。ただ外形的に執行手続が存在し、外観に基づいてなされ る執行処分は執行法上適法とされ、執行機関はそのように執行処分を行うべき権限があるとともに責務を負うの であるから、執行手続を取り消すには、執行機関に提示すべき執行法上定められた反対債務名義が要求される。 これに対応する救済手段が第三者異議の訴である。 本訴と執行関係訴訟の他の三個の訴訟との決定的な相違点は、他の三個の訴訟においては債務名義の執行力の 傘の中で争いが存するのに対して、本訴は債務名義の執行力とは絶縁されているところにある。端的に言えば、 被告である執行債権者による、執行力という外被をまとわない違法な財産の侵害に対する救済である。第三者に 71執行灘孫訴訟の倥質 対する権利侵害は、第三者とは無縁の債務者に対する執行処分という方法によってなされている。執行機関の、 執行財産について外観上債務者の財産であるとした判断が正当であったとしても、それは第三者を債務者とする 執行においてであれば、執行手続上一応是認されるにすぎないものであって、第三者に対する関係では、そのよ うな法的評価を受けることはできない。執行機関の当該執行処分は、故意であるとの判断を避けることはできて も、過失の有無については不法行為一般と同様なレベルで処理されるべきものである。 ⇔ 本訴の性質 執行行為が第三者の財産について行われた場合に、その執行処分を違法と目さしめる原因は、執行の対象であ る財産に係る権利が原則として本訴の原告であるその第三者に帰属することである。本訴においては、第三者の 財産の侵害が執行を介して行われているのであり、債務者に対する執行手続の存在が本訴の当然の前提である。 このため、第三者の権利の侵害行為の存在・態様は自明の事実である。したがって、本訴の請求原因は、執行の 対象となっている財産に係る権利が原告である第三者に帰属することのみである。これが本訴における争点であ ︵3 2︶ り、それは唯一のものである。訴訟物は、執行の対象である財産に係る原告である第三者の権利であり、その存 否の確定によって、直ちに本訴の請求の当否が決定される。ところで、本訴の目的を達成するためには、その当 然の前提となっている執行処分を執行の対象から排除することであり、その方法は執行の解放であって、それは 執行機関によってのみ行われうる。したがって、本訴判決の主文は、執行の解放手続にのることができる表現を とらなければならず、そのためには執行手続が取り消されなければならない旨を表示することが必要である。こ 72
の点は、請求異議の訴及び執行文付与に対する異議の訴の主文の表現と形式的には同様である。ただ他の執行関 係訴訟においては、その当事者は執行債権者と執行債務者とであり、執行債権者のための執行債務者に対する当 該債務名義の執行力を取り消すことを目的とするものであるのに対して、本訴においては、執行という事実状態 を事実上排除することを目的とするものであることにおいて、その機能を異にするのである。したがって、判決 主文の形成的ないし命令的と目される表現にも拘らず、請求異議の訴について述べたと同様な理由により、かつ、 被告である執行債権者のための執行力が原告である第三者に対しては存在しないという意味で、同訴訟以上に、 執行財産に係る権利の帰属の判断についての既判力が生ずるものと解することが容易であると言えよう。すなわ ち、判決主文の表現上は、形成訴訟におけるそれの態様を示す︵外観上の形成訴訟︶が、実質的には所有権その ︵33V 他の譲渡又は引渡しを妨げる権利の存在確認訴訟と言うべきである。 四 ま と め ,東’洋法学 執行関係訴訟の性質について、これを一元的にみるのが従来の考え方であり、それは学説における体系の樹立 という基本的態度ないし願望からすれば、当然の現われと言うべきであろう。しかし、こと執行関係訴訟の性質 については、単純に統一的ないし同質的なものとすることはできないのではなかろうか。執行手続と執行関係訴 訟との関係について見直してみようとしたのが本稿の出発点であった。 執行関係訴訟として一括される各訴訟は、執行手続の流れに即して見ると、それぞれ特徴を有するのであり、 73
執行灘孫訴訟の倥質 その特徴に応じた性質決定をするのが相当であるように思われる。 執行文付与の訴は執行文付与手続に直接関わるものであり、その手続の一部を構成するものである。その判決 裁判所は、手続から見れば、むしろ執行文付与機関の援助機関ないしは補助機関と見るのが相当である。この訴 の性質は、特別要件の存否の確認訴訟 一種の事実確認訴訟と言うべきものである。これに対して、執行文付 与に対する異議の訴は、執行手続上執行文が付与されたことにより、債権者に執行の申立てをなしうる地位 執行手続上の地位が与えられている段階に関わるものであるから、債権者のこの法的地位を消滅させる効果 を、最少限の要求として備えることが必要である。そして執行文付与の訴が特別の訴訟類型として認められてい るのに対して、その反対形相の訴訟類型として執行文付与に対する異議の訴が設けられている。前者が事実存在 確認訴訟であるのに対して、後者は事実不存在確認訴訟として、本質的には、債権者の積極的訴訟に対応する債 務者の消極的訴訟としての位置を占めるにすぎない。ただ訴訟がおかれた前提状態−執行文の付与の有無 から、その効果について相違点が生ずる。 請求異議の訴は、執行の実体的正当性の保障である執行債権の存否を争うものであり、執行手続における実体 面に係る争いはすべてこの訴訟に集約される。執行文付与に対する異議の訴は、執行債権の実体的要件の一部に つき債務者が執行文の付与の局面で処理することとしたことにより設けられた訴訟類型であって、これがなけれ ば、むしろ請求異議の訴に吸収されて然るべきものである。 第三者異議の訴は、これら三者と趣きを異にする。第三者にとっては、現に行われている執行手続の債務名義 74
東洋法学
の執行力は無縁である。執行手続上の法的効果は第三者には及ばない。しかし、執行が行われることにより、事 実上権利の侵害を受けている第三者に救済手段を与えないわけには行かない。これが第三者異議の訴の本質であ り、存在理由である。したがって、執行を非とする法的原因である第三者の権利の存否が唯一の争点となるので あり、第三者の権利の存否の確認がその判決の第一の機能である。その結果を執行手続に反映させるために、第 三者の権利について行われた執行の排除が、判決主文に謳われ、執行手続はその限りにおいて消滅させられるが、 債務名義の効力自体には何らの影響も及ぼさないのである。 このように、執行関係訴訟は、執行手続に専ら奉仕するものであるから、その役割分担は明確であって、その 性格付け、役割の評価、性質決定は、この役割分担に応じて与えられるべきである。 更に、執行債権の不存在により生ずる執行債務者の不利益、あるいは執行により権利の侵害を被った第三者の 不利益の回復に関わる場合には、執行関係訴訟であっても、その唯一の争点が実体権の存否に係るものは、実体 権の存否のみを要件事実としてその当否が決せられるのである。たまたま執行手続が行われ、あるいはその以前 であっても、債権者に執行法上の地位を与えられている場合には、これを、別個独立の機関であり、執行処分を 専属的に管轄する執行機関の処分に反映させるため形成訴訟として構成せざるをえないのであるから、この現象 にとらわれることにより、その実質を排除する必要はないし、あるいは無視することは不当である。その判決に ついて、必要とする限り、実体権の存否について既判力を認めることは、むしろ事理の当然と言うべきである。 転用型請求異議の訴においては、執行債権の実体的存在を確定する債務名義作成機関と執行処分を専属的に行 75薪行灘孫訴訟の控質 う執行機関との二元制が失われ、形式上は二元制を保持しているものの、実質的には一元制に変容していると見 ざるをえない。そこでの債務名義は執行手続の実体的正当性を十全に保障するものではないからである。したが って、執行手続段階において執行債権の実体的存否を探究し、執行の実体的正当性の保障の役割を担う請求異議 の訴においては、執行債権の実体的存在及び執行適格︵当該債務名義の形式的執行力︶に係るあらゆる事由がそ の攻撃防御方法とされることになる。ただこの場合においても、執行文の付与及びこれに対する不服申立てであ る執行文付与に対する異議又は異議の訴が用いられるから、それらに関わるものは、その限度において転用型請 求異議の訴から除かれるにすぎないと見るべきである。判決を債務名義とする場合の請求異議の訴が、その意味 ではむしろ特殊の請求異議の訴と見るのが相当であるとも言えよう。 76
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︵3︶ 中野貞一郎﹁執行文付与にかんする訴訟と請求異議﹂︵強制執行・破産の研究︶九五頁。 菊井維大・強制執行法総論一二一頁、上谷清﹁債務名義と執行文﹂︵実務法律大系7強制執行・競売︶五六頁、 石川明編・民事執行法七五∼六頁︵西沢宗英︶、田中康久・新民事執行法の解説︹増補改訂版︺七八頁、中野・前 掲︵1︶六五頁、同・民事執行法︵二訂版︶二四九頁、鈴木忠一”三ケ月章編・注解民事執行法ω五五頁︵拙稿︶。 承継とは、単なる事実ではなく、承継の有無は複合的な事実に法的評価を下してはじめて得られる法的判断であ るとし、不特定概念ととらえる考え方︵竹下守夫﹁執行文付与の訴と請求異議事由﹂︵民事執行における実体法と 手続法︶三〇五頁︶がある。承継自体は包括的な概念であり、相続・売買等の法律行為の集合である。そしてその 中には、給付判決の訴訟物が所有権に基づく建物収去土地明渡請求権の場合のように、承継人が当該義務の引受人 ではなく、単に地上建物の譲受人であるにすぎない者であるが、この判決の執行力が拡張されるとされ、承継と認東洋法学
︵4︶ ︵5︶ ︵6︶ められる範囲は広い。しかし、この場合でも、要件事実は建物の売買であって、建物の売買が当該の場合による評 価に従って承継に該当したり、しなかったりするものではない.当該第三者に対して給付請求権が生ずるから承継 となると言うのでは、承継を執行力拡張の要件とすることと反することになろう。 この見方に対して、執行文付与手続を偏重しすぎると言う考え方もありうる。すなわち、実体面を特別要件とし たが、本来それに基づいて執行文を付与するのは執行文付与の訴によるべきものであるが、例外的に制限された証 拠資料の範囲内で容易に判断しうる場合にのみ執行文付与手続に委ねたものであると。しかし、民事執行法上執行 力の拡張が認められ、特別要件を含め簡易な手続により執行文が付与され、それに従って執行手続が行われている のが常態であることは否定しえない。これを率直に見るならば、執行文付与の訴が例外的であるとすることが自然 であろう。 既に得ているのは将来の給付請求認容判決であって、条件成就執行文の付与が受けられることがまだ認められて いるものではないとするならば、給付訴訟について訴の利益がないとは言えない。更に本訴を設けても、攻撃防御 方法が制限されているのであるから、これによって給付請求権の存否について既判力を生じさせることはできず、 給付請求訴訟については訴の利益があると言うことができる︵大判昭和八年六月一五日民集一二巻一四九八頁、最 判昭和五四年一一月三〇日判例時報九一八号六七頁。中野・前掲︵2︶二四八頁、山木戸克己・民事執行・保全法講 義八四頁、斎藤秀夫編・講義民事執行法六五∼六頁︵梅本吉彦︶。給付請求権の存否について既判力を生じさせる ことにするのであれば、それに応じた攻撃防御方法の提出を認めざるをえず、結果的には給付請求訴訟と同一に帰 するものであって、そもそも本訴を設ける意味がなくなろう。 本訴によって実体関係も含めて債務名義に関わる紛争を既判力をもってすべて解決しようとする考え方︵松岡義 正・強制執行法要論上五七一頁、板倉松太郎・強制執行法義海二八O頁、加藤正治・強制執行法要論七八∼九頁、 兼子一・増補強制執行法一一六頁、菊井・前掲︵2︶二五三頁、吉川大二郎・強制執行法一四九頁、斎藤秀夫編・強 制執行法講義四八頁︵林屋礼二︶、中田淳一・民事訴訟法概説⑭六八頁、竹下・前掲︵3︶三〇六ー七頁、鳴田敬介 77執行衡孫訴訟の倥質 ︵7︶ ︵8︶ ︵9︶ ”上北武男﹁執行文付与に関する訴訟の諸問題﹂︵実務民事訴訟講座10︶五一頁以下、とくに五二∼三頁︶がある。 しかし、これに対応する手段として請求異議の訴が設けられているし、執行証書のように債務名義自体が既判力を 有しないものがあるから、本訴だけで既判力による解決は望みえないのである。 特別要件が承継である場合、原判決の被告の承継人が債務者とされるが、承継に当たる譲渡行為が無効であると きは、債務者に対して執行債権は発生しないことになる。したがって、承継に係る点では執行文付与に対する異議 の訴の異議原因となるし、執行債権の実体的存否に係る点では請求異議の訴の異議原因となる。条件の場合は、そ れが単純な事実である場合と法律行為︵例えば、売買したとき、差押を受けたときなど︶である場合︵この場合で も、売買契約を締結したことだけを条件とするなら、前者の場合に含まれる。︶、またそれらが一回的な場合とくり 返される場合︵累次的な場合︶とがある。事実の場合は存在するかしないかであって、法律行為のように消滅、発 生障害、阻止事由はない。また一回的であれば、存在しないことが確定し、更にそれが法律行為であれば、消滅、 発生障害事由があると、執行債権自体が消滅し又は発生しないことが確定するから、請求異議の訴の異議事由とも なりうるが、累次的であれば、一回の条件である事実に不発生あるいは消滅があっても、執行債権の存在には影響 がないから、執行文付与の要件を欠くに止まる。 実際にはその例は少ないであろうが、執行文付与の訴が先行した場合には、その認容判決の既判力が特別要件の 存在について生じているから、本訴は、原告である債務者が前訴である執行文付与の訴の口頭弁論終結時後に生じ た異議事由を主張・立証することから始めることになる。 これに関連して、自称承継人の問題がある。執行文をまだ受けていない自称承継人に対して、債務者は、執行関 係上対抗手段があるのか、あるとしても請求異議の訴によるべきか、それとも執行文付与に対する異議の訴による べきであるのか。詳論は控えるが、債務者は事実上煩わしいではあろうが、手続的にはまだ執行を受けるおそれは ないのであるから、執行関係訴訟の関知するところではない。自称承継人の承継原因が理由がなく、その請求の程 度・態様が常軌を逸脱しているのであれば、債務者としては、債務不存在確認訴訟を本案訴訟として、請求差止め 78