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生後のマウスの肺生長における細胞増殖に関する研究 : 抗 BrdU 抗体法による評価

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Academic year: 2021

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(1)

原  著

熊鷹薦29第犠、甕鴛〕

生後のマウスの肺生長における細胞増殖に関する研究

一瞬BrdU抗体法による評価一

東京女子医科大学 第一内科学教室(主任:金野公郎教授)        ウエ    ノ     ピサ    キ

       上 野  寿 樹

(受付平成6年1月19日) Ce藍1“1ar Proliferation during Postnatal Lung Developmental Phase in the Mice

       Hisaki UENO

Department of Medicine I(Dir㏄tor:Prof. Kimio KONNO)      Tokyo Women’s Medical College   We investigated cellular proliferation of the lung of postnatal mice by using a BrdU・labeling method. Rate of proliferation of both epithelial cells and interstitial cells increased from postnatal day 4to 7, then decreased gradually。 Proliferation of the endothelial cells of larger blood vessels started day lafter birth, until postnatal day 4, whereas in smaller vessels endothelial cell proliferation was found in a relatively later period of time.   The diameter of the terminal bronchioles increased from day l to 10。 These findings suggest that epithelial cells and interstitial cells interact during alveolar developmental phase, and endothelial cell proliferation is accompanied by alveolar cell proliferation.          緒  言  人を含め,多くの動物では胎生期1)∼4)に引き続 き生後早期に肺の著しい生長がみられるD5).肺の 生長には,肺胞や血管系のremodelingのみられ ることが指摘されているが,これらの構築変化に 際して,肺細胞がいかなる程度の増殖性を示すか については充分な検索がされていない.近年,モ ノクロニナル抗brolnodeoxyuridine(BrdU)抗体

を用いて,細胞の増殖能の評価が行われてい

る1)∼5).従来のthymidineを指標とした場合と異 なり,抗BrdU抗体を用いた場合には,陽性細胞

と非陽性細胞を明瞭に識別することが可能

で6)∼11),本研究では,生後直後から肺が充分に生長 したと思われる生後4週までのマウスを対象とし て,抗BrdU抗体を用いて経時的に肺細胞(肺胞 上皮細胞,間質細胞,血管内皮細胞)の増殖性に ついて検討を行った.また,これらの生長期の肺 では,気道と肺胞の移行領域において,肺胞が気 道の中枢方向に進展,形成されることが指摘され ている12)13)ことから,終末細気管支について形態 計測を行った.        対象および方法  1,対象

 生後1,4,7,10,14,28日目のICRマウス

(雄).  2.方法  0.5mg/kg体重のBrdUを腹腔内に投与し,2 時間後に過量のベントバルビタールを腹腔内に注 入.下行大動脈を切断し,脱血屠殺した.次いで, 前胸壁を切離し肺を露出させ,前頸部切開により 露出した気管にアーガイルチューブ(24G)を挿入 し,チューブを通して70%メチルアルコールを肺 内に注入し25cm水柱圧で肺を拡張固定した.エ タノール固定肺をパラフィン包埋,矢状断面にて

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肺の3μm縦断切片とし脱・・ラフィノ後,3N塩酸 処理をし,抗BrdUモノクローナル抗体(Beckton Dlcklnson社)と反応させたその後ヒオチノ化標 識抗マウスIgG,酵素標識ストレフトアヒノノ試 薬を作用させDAB発色の後,ヘマトキノリノに よる核染色を行った BrdU抗体て染色された細 胞は赤褐色を示し非染色細胞と容易に識別するこ とかてきた これらの標本を用いて光顕観察を 行った  3 形態計測  肺の上皮細胞と間質細胞の評価については, strat1丘ed random sampllng法14)に基づき選択さ れた24(左肺12,右肺12)の領域について,1領     図1 生後4日目の肺組織光顕像 抗BrdU陽性細胞は赤褐色に染色され散在性に認め られた 矢印Ep1は細胞上皮細胞をIntは間質細胞を 示す (HE+BrdU染色×200)       図2 肺組織光顕像 矢印はBrdU陽性細胞を Alvは肺胞腔を示す (HE+BrdU染色×100) 生後1日目 secondry crestの発達か不充分て カス交換領域の壁か未だ厚く粗大な肺構築像か認 められる 生後4日目 肺胞壁はまた厚しものの生後1日目の肺に比してsecondary crestの発達かみられ た 生後10日目 肺胞壁か菲薄化し 肺胞形成(septatlon)か進み さらに複雑な肺胞構築を示した 生後28日目 肺は薄い壁をもつ充分に発達した肺胞から形成されており 気道終末から連なる肺胞 道には肺胞か開口してしる像か観察された

(3)

域が100×100μm2となる倍率で計測が行われた. 上記領域でのBrdU抗体陽性細胞をcountし,肺

胞上皮細胞・間質細胞に関して一定領域内の

BrdU陽性細胞数(BrdU陽性細胞数/単位面積) として,評価算出した.  また終末細気管支の口径について,気管支切断 面で楕円形の短軸の最長径の基底膜問の距離を測 定し,各生後日数ごとに平均値を算出した.

 血管内皮細胞のBrdU抗体陽性細胞の出現頻

度の推移については,ロ径50μm以下の血管に関 して,10μmごとの群に分け(50∼40,39∼30, 29∼20,19∼10),二二での血管内皮細胞のBrdU 抗体陽性細胞数(BrdU陽性細胞数/標本)を算出 した.  4.統計解析  成績は平均値±SE(標準誤差)で示す.各回の

平均値の検定にはanalysis of variance

(ANOVA)とStudent−Newman−KeuPs testを用 いた.p<0.05をもって有意差ありとした.          結  果  1.肺組織所見

 図1のように光顕像において抗BrdU陽性細

胞は赤褐色に染色され散在性に認められた.

 生後1日目の肺を図2左上に示す.secondary

crestの発達もまだ充分にみられず,ガス交換領 域の壁が未だ厚く粗大な肺構築像であった.これ らの構造はsubsaccular phaseに相当するもので ある.生後4日目の肺を図2右上に示す.肺胞壁は また厚いものの,生後1日目の肺に比して,secon− dary crestの発達がみられた.生後10日目の肺を 図2左下に示す.生後4日目の肺に比較しさらに 肺胞壁が菲薄化し,肺胞形成(septation)溢進みγ さらに複雑な肺胞構築を示した.生後28日目の肺 を図2右下に示す.肺は薄い壁をもつ充分に発達 した肺胞から形成されており,気道終末から連な る肺胞道には肺胞が開口している像が観察され た.終末細気管支と肺胞領域は明瞭に境界され, ヒト肺にみられる気道と肺胞構造が混在する呼吸 細気管支に相当する構造を示す領域は観察されな かった. 50 40 30 8rdU labe暑ed cell (・/unit a・ea)20 10 0  ノ  ノ  ノ

1

! ・1 墨 、 、 、 激  、、 、 、、’ }㌔_  一¥一一 EPI−cell m 一一 汕鼈黶@  Intrcell m       0       10       20       30       1Day)   Day−BrdU labeled Epi,lnt−ce胆(mean±SE) 図3 肺胞上皮細胞と間質細胞におけるBrdU陽性  細胞数の推移 2.形態計測  図3に肺胞上皮細胞と間質細胞におけるBrdU 陽性細胞数の推移を生後日数ごとに示す.図に示

されるようにBrdU陽性細胞の数の変化につい

ては上皮細胞,間質細胞ともに同様の傾向が認め られた.すなわち生後1,4,7,10,14,28日

目のBrdU陽性肺胞上皮細胞数(BrdU陽性細胞

数/単位面積)は8.00±2.88,38.67±6.33,34.67± 6.36,16.00±3.51,8,00±0,58,2.33±0.33であ り,BrdU陽性細胞数は,4日目にはその数が著し く増加し,生後10日目,14日目には漸減し,28日 目にはほとんど認められなかった.一方間質細胞 をま2.00±0.58, 34.33±6.98, 36±5.00, 25.67± 3.48,5.00±0.58,1.67±0.33であり,肺胞上皮 細胞と同様の推移を示した.  図4に各生後日数における終末細気管支の口径 の平均値の推移を示す..生後1.,.一4,7,10,14, 28日の終末気道径(μm)は,43.69±2.31,48.98± 1.91, 53.73±2.36, 57.25±1.62, 56.81±1.33, 57.96±2.21であり,上皮細胞・問質細胞の増殖の 著しい1日目から10日目には終末気道口径の増大 傾向を認めたが,10日目以後は一定の値となった.

 図5に1血管細胞のBrdU陽性細胞の生後日数

ごとの推移を示す.血管の口径を10μmごとに分 けてカウントしたBrdU陽性細胞数は10∼19, 20∼29,30∼39,40∼50μmにおいて生後1日目で

(4)

Terminal bronchio恰r   diameter   (μm) 70 60 50 40 30 0 10 (Day} 20 Day−Terminal bronchlolar diameter(mean±SE)  図4 終末細気管支径の平均値の推移 30

は0,1,5,4,生後4日目では9,7,7,

10,生後7日目では4,3,10,4,生後10日目 では11,19,7,5,生後14日目では8,2,2,

1,生後28日目では0,1,0,0であった.す

なわち生後1日目では口径の太い血管ほどBrdU 陽性細胞は多数観察され,生後14日目では逆に細 い血管にBrdUを取り込んだ細胞が多く認めら れた.これらの期間では,一様にBrdU陽性細胞 が比較的多数みられたが,28日目ではBrdU陽性 細胞はほとんど認められなかった.         考  察  生後のマウスの肺の生長期においてBrdUモ ノクロナール抗体を用いて肺細胞の増殖について 検討を行った.その結果肺胞上皮細胞,間質細胞 共に生後4日目から7日目に増殖が高度となり, その後漸減する傾向を示した.気道系においては, 終末細気管支の口径は生後1日目から10日目に増 大傾向を示したがその後は一定の値になった.血 管内皮細胞に関しては生後直後は口径の太い血管 に細胞増殖が認められたが,その後は逆に細い血 管に内皮細胞の増殖が認められた.以上の肺に見 られる細胞増殖は14日までは高値であるが,それ 以後はほとんど低い値を示した.  本研究では,細胞の増殖を評価するにあたり

BrdUモノクローナル法を用いて行われた.

thymidine法はgrainの数によって陽性細胞とみ なすため陽性細胞の判定には不正確な面があるの に対し,本研究で用いられたモノクローナル抗 BrdU法では核が染色された細胞は明瞭に判別す

ることができ,細胞増殖を判定するのに

thymidine法に比べて有用な方法と考えられた.  マウスの肺はラットと同様に出生時には未成熟 な構築となっており15),本研究においても生後早 期の肺はsubsacculer phaseと思われる肺胞壁の 厚い粗な構造をした肺胞構造が見られた.これら の肺胞においての上皮細胞と間質細胞の細胞増殖 については,生後4日ないし7日目が最も高度で あり,その後14日まで低下をたどり生後14日以降 20 BrdU labeled  1{} blood vessel ce11 0

  147101428

       (Day)  Day・BrdU labeled blood vessel cell 図5 血管細胞のBrdU陽性細胞の推移 Bbod vessel (μm) 口10−19 國20−29 孝 圃30−39 圏40−50 珍 、z 彦 薄÷ 轟 垂 薮

(5)

はほとんど細胞増殖が見られなかった.この生後 14日目までの期間はBurriらの報告16)によれぽ, 肺胞構築で見られる肺胞形成期に当たっており, 肺胞構築の成熟と肺内細胞の増殖とが,同一時期 に当たっていることを示している.これらの報告 は従来ラットにおいて行われた報告16)∼18)と一致 するものである.  肺胞の上皮細胞と間質細胞の増殖傾向が生後早

期の肺で一致する機序としては飾roblast−

pneumocyte factor19)により,上皮細胞・間質細胞 の間にinteractionが生じ,同時にこれらの増殖 が行われている可能性や20),両細胞に同時に働く 成長因子の関与等が上げられるが,本研究では, 明らかにすることはできなかった.  気道系においては,終末細気管支の口径平均値 は,生後1日目から10日目には増大傾向を認めた がその後は一定の値を示した.この終末細気管支 の口径が生後10日目にまで増大した理由として, 一つは肺の生長に伴い気道口径も増大したことが 考えられる.その他の理由としては,肺胞形成時 に気道末端においては,気道が肺胞構造へと置換 されていく12)13>ことが知られており,そのため気 道の口径が増大となったことが考えられる.  本研究では血管の内皮細胞の増殖についても検 討が行われた.その結果,血管細胞の増殖は口径 の如何にかかわらず生後1日目より10日目に増殖 傾向が著しく,その後14日,28日と増殖傾向が低 下し,28日には血管の増殖傾向はほとんど認めら れなかった.この傾向は気道口径の増大とも良く 一致しており,肺細胞の増殖とも一致していた. 血管は生後より肺の末梢方向に進展する形で生長 することがReidらの研究にて知られている21). 本研究において肺の気道の生長と肺血管の生長 が,ほぼ時期を同一にする結果となったが,この こともReidらの成績を支持するものである2ユ).

図5において,BrdU陽性細胞数が30∼40μm径

の血管以外は生後7日目に比較的二値を示した. 生後の肺生長では,初期には細胞増殖が盛んであ るが,その後肺の拡張が起こるとされている13).生 後7日目に血管内皮細胞の増殖性低下が一過性に みられた理由としては,肺がその時期に高度に拡 張したため,単位面積あたりで評価したBrdU陽 性細胞数が低値となつ、たと考えられる.          結  論

 生後のマウスの肺の成長期においてBrdUモ

ノクロナール抗体を用いて肺胞細胞の増殖につい て検討を行い以下の成績を得た.  (1)肺胞上皮細胞,間質細胞共に生後4日目か ら7日目に増殖が高度となりその後漸減する傾向 を示した.  (2)気道系においては,終末細気管支の口径は 生後1日目から10日目に増大傾向を示したがその 後は一定の値になった.  (3)血管内皮細胞に関しては生後直後は口径の 太い血管に細胞増殖が認められたが,その後は逆 に細い血管に内皮細胞の増殖が認められた.  稿を終えるにあたり,ご指導ご教授賜りました東京 女子医科大学第一内科学金野公郎主任教授に深謝致 します.またこの研究に際し終始直接ご指導賜りまし た永井厚志助教授に深謝致します.  本論文の要旨は第31回日本胸部疾患学会総会(1991 年大阪)において発表した.          文  献  1)Brody JS, Thurlbeck WM:Development,   growth, and aging of the lung.1勿Handbook of   Physiology:The Respiratory System, Vol 3,   Part I.(Fishman AP ed)pp355−386, American   Physiological Society, Bethesda(1986)  2)Nagai A, Thurlbeck WM, Reboeck C et al:   The effect of maternal CO2 breathing on lung   development of their fetuses in the rabbit. Am   Rev Respir Dis 135:130−136,1987  3)Nagai A, Thurlbeck WM, Jansen AH et a1:   The effect of chronic biphrenectomy on lung   growth and naturation in fetal lams. Am Rev.   Respir Dis 137:167−172,1988  4)Nagai A, Sakamoto K, Konno K:The effect   of meternal exercise on somatic growth and   Iung development of fetal rats:Morphologic   and studies. Pediatr Pulmono115:332−338,   1993  5)Yasui S, Nagai A, Oohira A et al: Effects of   antimouse EGF antiserum on prenatal lung   development in fatal mice, Pediafr Pulmonnol   15:251−256, 1993  6)Nagai A, Matsumiya H, Yasui S et al:

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