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ケインズ『一般理論』における資産選択と投資 : レイヨンフーヴッド,パティンキン,ヒックス,デヴィッドソン,カーンの理論

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Academic year: 2021

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滋 賀 大 学 教 育 学 部 紀 要   人 文 科 学 ・社 会 科 学 ・教 育 科 学 No.40  p.p.43-50,  1990 43

ケ イ ンズ 『

一 般 理 論 』 に お け る資 産 選 択 と投 資

レ イ ヨ ン フ ー ヴ ッ ド 、 パ テ ィ ン キ ン 、       ヒ ッ ク ス 、 デ ヴ ィ ッ ド ソ ン 、 カ ー ン の 理 論

納  正

      Portfolio  Selection  and  Investment  in  Keynes,  General  Theory -On  the  Theory  of L、eijonhし1fvud

, Patinkin,  Hicks,  Davidson  and  Kahn一

Masao  KANO 1.は じ め に   本 稿 の 目 的 は 、 ケ イ ンズ の 『一 般 理 論 』 の 資 産選 択 と投 資 に 関 す る諸 解 釈 を整 理 し、 そ れ ら の議 論 の評 価 と発 展 の 方 向 を探 る こ とで あ る。   周 知 の よ う に 、 ト 般 理 論 』 の 資 産選 択 は、 所 得 と利 子 の 関 数 で あ る貨 幣需 要 関数 に よ って 表 され る。IS・LM分 析 と して 表 さ れ る通 常 の マ ク ロ ・モ デ ルで は、 この 貨 幣 需要 関数 を使 用 した 貨 幣 需 給 均 等 式 と貯 蓄 ・投 資 の均 衡 式 に よ って 所 得 と利 子 率 が 決 ま る。 この よ うな モ デ ル の 資 産 選 択 は非 常 に単 純 化 され た もの で あ り、 そ の 背 後 に 、資 産選 択 に関 す るケ イ ンズ の理 論 を どの よ う に解 釈 す る か、 とい う問 題 が 隠 され て い る。 こ れ らの 問題 の うち、 本 稿 で取 り上 げ る の は、 次 の 問 題 で あ る。 第 一 は、 貨 幣 と債 券 以 外 の 資 産 の扱 い で あ る。 特 に、 株 式 の 扱 い が 問 題 に な る 。 第 二 は 、 この よ うな資 産 選 択 を決 定 す る要 因 は何 か とい うこ とで あ る。 この場 合 、 特 に ケ イ ンズ が 強 調 す る投 機 的貨 幣 需 要 の 評 価 が 問題 とな る。 第 三 は、 こ の よ うな資 産 選 択 と 投 資 の 関係 で あ る。 特 に 、 ケ イ ンズの 場 合 、 貯 蓄 を投 資 に 結 び付 け る メカ ニ ズ ム の ど こ に問 題 が あ る か は 重 要 で あ る。 以 上 の よ うな問 題 に関 して 、 ケ イ ンズ の理 論 に対 す る諸 解 釈 を整 理 ・ 評 価 す る こ とに よ って 、 ケ イ ンズ の資 産 選 択 理 論 の 発 展 の 方 向 を 探 る こ と が 本 稿 の 目 的 で あ る 。 本 稿 で 取 りあ げ る の は 、 レ イ ヨ ン フ ー ヴ ッ ド (A.Leijonhufvud)、 パ テ ィ ン キ ン(D. Patinkin)、 ヒ ッ ク ス(J.  R. Hicks)、 デ ヴ ィ ッ ド ソ ン(P.Davidson)、 カ ー ン(R.  F. Kahn) の 解 釈 で あ る 。 い ず れ も 、 『一 般 理 論 」 の 解 釈 に お い て 重 要 な 存 在 で あ り、 か つ 、 上 述 し た 問 題 に 関 して 異 な っ た 議 論 を 展 開 して い る 。 レ イ ヨ ン フ ー ヴ ッ ドに よ る 『一 般 理 論 』 と所 得 ・支 出 モ デ ル の 集 計 構 造 の 相 違 に 関 す る 議 論 は 、 本 稿 の 問 題 意 識 の 出 発 点 で あ る 。 レ イ ヨ ン フ ー ヴ ッ ドは 、 ケ イ ン ズ の 資 産 選 択 に お い て は 、 資 産 の 長 短 の 区 別 が 重 視 さ れ る と主 張 す る 。 パ テ ィ ン キ ン は 、 一 般 均 衡 論 的 な 観 点 か ら ケ イ ン ズ を 解 釈 して き た 学 者 で あ り 、 通 常 の 資 産 選 択 理 論 を 支 持 す る 。 ヒ ッ ク ス は 、 一 般 均 衡 論 的 な ケ イ ン ズ 解 釈 か ら 、 よ り動 学 的 な 解 釈 に 立 場 を 移 し て き た 学 者 で あ り、 資 産 選 択 に お い て は 、 ケ イ ン ズ の 流 動 性 に 関 す る 議 論 を発 展 さ せ て き た こ と が 特 徴 で あ る 。 デ ヴ ィ ッ ド ソ ン の 議 論 は 、 家 計 の 資 産 選 択 が 実 物 資 産 を 含 ま な い こ と 、 家 計 の 評 価 す る 資 本 財 の 価 値(こ れ は 金 融 諸 証 券 の 価 値 と し て 表 さ れ る)と 企 業 の 評 価 す る 資 本 財 の 価 値 の 相 違 を 重 視 す る こ と が 特 徴 で あ る 。 最 後 に 、 カ ー ン は 、 ケ イ ン ズ の 『一 般 理 論 』 の 形 成 に 深 く関 わ っ た 存 在 で あ り、 ケ イ ン ズ が ど の よ う に 考 え て い た か 、 ま た 、 ど の よ う な 方 向 で

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44 加納正雄 理 論 を発 展 させ よ う と した か を明 らか にで きる。 2.『 一 般 理 論 』 の 集 計 構 造 と資 産 選 択:レ   イ ヨ ン フ ー ヴ ッ ド   レ イ ヨ ン フ ー ヴ ッ ドに よ れ ば 、 『一 般 理 論 』 の 集計 構 造 は 、 所 得 ・支 出 モ デ ル の集 計 構 造 と       け は 異 な ったも の で あ る 。   標 準 的 な 閉 鎖 経 済 モ デ ル を言 葉 で表 した場 合 、 集 計量 は 、 消 費 財 、 資 本財 、労 働 サ ー ビス 、貨 幣 、債 券 の5個 で あ る。 した が って 、財 の需 給 均 衡式 は5本 で あ るが 、 この うち1本 が独 立 で' は な い の で 、 独 立 の 式 は4本 で あ る 。 した が っ て 、 同 時方 程 式 モ デ ル と して表 した場 合 、4個 の 価 格 が 含 まれ る はず で あ る 。 しか しな が ら、 標 準 的 な所 得 ・支 出 モ デ ル に 含 まれ る価 格 変 数 は、 名 目物 価 水 準 、 名 目賃 金 率 、利 子 率 の3個 で あ る。 した が って 、 独 立 な式 が4本 に対 して 、 未 知 数 は3個 で あ るか ら、5財 を集計 して 、4 財 と しなけ れ ば な ら ない 。 この場 合 、 どの財 を 集 計 す るか に関 して 、 ケ イ ンズ と所 得 ・支 出 モ デ ル(ケ イ ンジ ア ン ・モ デ ル)は 異 な った もの で あ る。 す な わ ち、 所 得 ・支 出 モ デ ル は 、労 働 サ ー ビス 、 貨 幣 、債 券 、 商 品 で あ るの に対 して 、 『一 般 理 論 』 は労 働 サ ー ビ ス、 貨 幣 、 非 貨 幣 資 産 、 消 費 財 で あ る。   所 得 ・支 出モ デ ル の特 徴 は、資 本財 と消 費財 を商 品 と して 集 計 した とい う意 味 にお い て 、1 財 モ デ ルで あ る。 こ れ に対 して 、 ケ イ ンズ の集       の 計 方 法 に は次 の よ うな特 徴 が あ る 。 (1)『 一 般 理 論 』 は 「2財 モ デ ル 」 で あ る。 消 費 財 と資 本 財 は 区別 さ れ る。 (2)ケ イ ン ズ の基 本 モデ ル は資 本 財 と債 券 を一 つ の集 計 量 と して扱 って い る。 貨 幣 を別 とす れ ば 、モ デ ル は こ れ を資 産 の唯 一 の 集 計 量 と して 含 む。 これ を 「非 貨 幣 資 産 」 と呼 ぶ 。 (3)ケ イ ン ズ の 「代 表 的 」 非 貨 幣 資 産 は長 期資 産 で あ る。   レイ ヨン フ ー ヴ ッ ドが この よ う な集 計 方 法 の 相 違 を強 調 す る の は 、 こ の集 計 方 式 の 相 違 が 、 投 資 の利 子 弾 力 性 に 関係 す る と考 え るか らで あ る。 す な わ ち 、債 券 と資 本 財(長 期 実 物 資 産)' が 、非 貨 幣 資 産 と して集 計 さ れ る とい う こ とは 、 債 券 と資 本 財 の 代 替 の弾 力 性 が 高 い こ と を意 味 す る。 した が って 、資 本財 供 給 の価 格 弾 力 性 は 高 い か ら、投 資 の 利子 弾 力 性 は高 い と い う こ と に な る。 レ イ ヨ ンフ ー ヴ ッ ドに よ れ ば 、 ケ イ ン ズ のr一 般 理 論 』 に お い て 、投 資 が 完 全 雇 用 を 維 持 す るの に不 十 分 な の は 、低 い利 子 弾 力 性 の せ い で はな く、 利 子 率 の硬 直性 の 問題 な ので あ る3,。   レイ ヨ ン フー ヴ ッ ドが 消 費財 と資 本 財 の区 別 を主 張 す るの は 、 消 費財 で 測 った資 本財 の価 格 (両 者 の 相 対 価 格)が 投 資 を決 定 す る こ と を強 調 す るた め で あ る。 しか しな が ら、 こ の レイ ヨ ン フ ー ヴ ッ ドの 主 張 は 、1財 モ デ ル に お い て も、 財 の フ ロ ー価 格 とス トッ ク価格 を区 別 す る こ と に よ っ て 説 明 で き る。 た と え ば、 トー ビ ン [12]の 一 般 均 衡 モ デ ル は 、1財 モ デ ル で あ る が 、 財 の ス トック価 格 とフ ロ ー価 格 を 区 別 し、 フ ロ ー価 格 をス トック価格 が 上 回 る こ とが投 資 の 誘 因 と な る。 また 、 債 券 と株 式(実 物 資 産) は集 計 され ない で 、 区 別 され て い る 。 したが っ て 、 重 要 な こ と は、 資 本 財 と消 費財 の 区 別 で は な く、 貨 幣 、 債 券 、 株 式 、 実 物 資 産 の 間 の代 替 性 お よ び投 資 へ の 影 響 で あ る。 これ は 、 ケ イ ン ズが 、 どの よ う な資 産 を対 象 に資 産 選択 が行 わ れ る と考 えて い た か とい う問 題 で あ り、 また資 産 選 択 にお いて どの よ うな 要 因 が重 視 され た か と い う問 題 で あ る。 集 計 の 問 題 で い え ば 、財 で は な く、 資 産 の 集 計 構 造 が 重 要 で あ る 。 相対 価 格 が 一 定 の 財 は集 計 す る こ とが で きる 。 資 産 の 場 合 、価 格 は収 益 の リス ク に よ って 決 まる 。 こ の場 合 、相 対 価 格 に影 響 す るの は リス クの 程 度 で は な く、 リス クの 種 類 で あ る。 した が って 、 資 産 の集 計 構 造 は、 資 産 の どの よ うな特 徴 を重 視 し、他 の特 徴 を無 視 す るか とい う問 題 で あ る 。   資 産 選 択 の対 象 に な るの は、 代 表 的 には 、 貨 幣 、短 期 債 、 長 期 債 、 株 式 、 実 物 資 産 と考 え て よ い 。 レイ ヨ ン フ ー ヴ ッ ドに よ れ ば 、 『一般 理 論 』 の モ デ ル は、 これ らの 資 産 の う ち、 貨 幣 と 短 期 債 を貨 幣 と して 集 計 し、 長 期 債 と株 式 と実 物 資 産 を非 貨 幣 資 産(長 期 資 産)と して 集 計 し て い る とい うこ とで あ る。   こ の よ うに 、 レイ ヨ ンフ ー ヴ ッ ドの 議 論 で は、 『一 般 理 論 』 の 資 産 選 択 は 短 期 資 産(貨 幣)と 長 期資 産 の 問で 行 わ れ る。 したが って 、 収 益 の リス クや資 産 の流 動 性 の要 因 は無 視 され る。 レ

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ケ イ ンズ 「一 般理 論 」 に お け る資 産選 択 と投 資 45 イ ヨ ンフ ー ヴ ッ ドは 、 こ の よ うな集 計 の 根 拠 を 『一 般 理 論 』 の 第17章 に求 め て い る。 た だ し、 レイ ヨ ンフ ー ヴ ッ ドは、 こ の よ うな集 計 方 法 に は問 題 が あ る と考 え て い る。 しか し、 資 産 を こ の よ うに集 計 す る とい うこ とは 、資 産 選 択 にお い て何 が 重 要 か とい うこ とを表 して い る。 す な わ ち 、資 産 選 択 に お い て重 視 され る要 因 は、 長 期 資 産 の期 待 価 値 に 関 して生 じる投 機 で あ る。 レイ ヨ ンフ ー ヴ ッ ドは 、投 機 に よ る利 子 率 の 誤 調 整 、す な わ ち 、資 本収 益 が 低 下 して も、 弱 気 の投 機 に よ って投 資 率 が低 下 しな い こ とを、投       ね 資 減 少 の重 要 な要 因 と考 え て い るの で あ る 。 レ イ ヨ ンフ ー ヴ ッ ドの議 論 は 、投 資 の利 子 弾 力 性 に 関 して よ りも、 む しろ この よ うな観 点 の 方 が 重要 で あ る と思 わ れ る 。 3.パ テ ィ ン キ ン   パ テ ィ ンキ ン はケ イ ンズ の資 産選 択 を次 の よ う に解 釈 す る。 す な わ ち 「『貨 幣 論 』 の諸 証 券 は 、 主 と して 株 式 証 券 で あ る。 さ らに 、 ケ イ ン ズ は これ らの 諸 証 券 と資 本 財 の 区 別 を して い な い 。 そ の た め 、 『貨 幣 論 』 の ポ ー トフ ォ リ オ選 択 モ デ ル は 事 実 上 、2資 産 、 す な わ ち貨 幣 と株       の 式 証 券 の モ デ ル と な って い る」 。 これ に対 して 、 「『一 般 理 論 』 の そ れ に対 応 す るモ デ ル は事 実 上 2段 階3資 産 モ デ ルで あ る。 ケ イ ンズ は依 然 と して 、 資 本 財 と株 式 証 券 を と を区 別 して は い な い が 、 今 や 彼 は 「諸 証 券 」 とい う用語 をほ とん ど使 わ ず 、 そ れ に代 わ って 貨 幣 保 有 に対 す る代 替 物 と し て 、 特 に 「諸 債 券」 あ る い は 「諸 負 債 」 の こ と を論 じて い る。 した が って 、 第一 段 階 で は、 個 人 は資 本 の限 界 効 率 を市場 の現 行 利 子 率 と比 較 し、 そ の基 礎 の う え に物 的資 本(あ るい は株式)の 保 有 か他 の 流 動 諸 資 産 の保 有 か を選 択 す る。 次 に、 現 行 利 子 率 と将 来利 子 率 に 対 す る 自 ら の予 測 との比 較 を基 礎 に して 、個 人 は 、 これ ら の流 動 諸 資 産 を長 期 債 券 の形 態 で保       の 有 す るか 貨 幣 の形 態 で 保 有 す るか を選 択 す る」 。   この よ う な解 釈 の根 拠 と して 、 パ テ ィ ンキ ン が 重 視 す る の は、 『一 般 理 論 』 の次 の 文 章 で あ る 。   「同 じ よ う に、 投 資 物 件 の 予 想 収 益 が 市 場 の 期 待 す る も の よ り も低 くな る と信 ず る個 人 は 、 流 動 的 な現 金 を保 有 す る十 分 な理 由 を もつ と考 え られ るか も知 れ な い。 しか しそ れ は正 し くな い 。彼 は株 式 の保 有 を選 ば ない で 、 現 金 か 債 券 を保 有 す る十 分 な理 由 を もって い る。 しか し、 彼 が さ らに将 来 の利 子 率 は市 場 の 予 想 して い る もの よ りも高 くな る と信 じない か ぎ り、 現 金 の 保 有 よ りも債 券 の購 入 の方 が 選 択 され るで あ ろ     7} う。」   パ テ ィ ンキ ン は、 「ケ イ ンズ が 、 個 人 を、 三 つ の 代 替 的 な諸 資 産 一 貨 幣 、 債 券 お よ び資 本 資 産一 すべ て の 間 の 同時 的 な選 択 に よ って 自 らの 最 適 ポ ー トフ ォ リオ を決 定 す る もの とみ な して い た 、 とい う言 い方 を して もケ イ ン ズの 見 解 をそ れ ほ ど誤 り伝 え る こ とに な る と は思 わ な     きエ い 。」 とみ なす 。   株 式 と資 本 財 に 関 して は 、『一 般 理 論 』 にお い て も、 両者 を区 別 して い な い、 とパ テ ィンキ ン は考 える 。 た だ し、 ケ イ ンズが 他 の所 で は、 既 発 行 証 券 の価 格 は 、短 期 的 に は、 生 産 費 に も 新 固 定 資 本 の価 格 に も厳 密 に は少 しも依 存 しな い 、 と矛 盾 した こ と を述 べ て い る こ と も指 摘 し て い る。   ケ イ ンズ が 、 『一 般 理 論 』 に お い て、 債 券 と 株 式 を区 別 した 理 由 に 関 して は、 パ テ ィ ンキ ン が 重 視 す る の は 、 『一 般 理 論 』 の次 の 箇 所 で あ る。   「投 機 的 動 機 に 基 づ く流 動 性 選 好 は、 私 が r貨 幣 論 』 の な か で 「弱 気 の状 態 」 と呼 ん だ も の に相 当 す るけ れ ど も、 そ れ は決 して 同 じ もの で は ない 。 なぜ な ら、 そ こで は 「弱 気 」 は、 利 子 率(ま た は債 券価 格)と 貨 幣 量 の 間 の 関 数 関 係 と して で はな く、 資 産 と債 券 と を一括 した も の の価 格 と貨 幣 量 との 問 の関 数 関 係 と して 定 義 さ れた か らで あ る。 しか し、 この 取 り扱 い は、 利 子 率 の 変 化 に よる結 果 と資 本 の 限 界 効 率 表 の 変 化 に よ る結果 との 混 同 を含 んで い た 。 そ れ を       9, 私 は こ こで 取 り除 い たつ も りで あ る。」   こ れ よ り、 『一 般 理 論 』 の流 動 性 選 好 に お け る資 産 選 択 は 、 貨 幣 と債 券 の 間で の 選択 で あ り、 株 式 を分 離 した とい うこ とに な る。   パ テ ィンキ ンの解 釈 を レイ ヨ ン フー ヴ ッ ドの 解 釈 と比 較 す る と次 の よ うな こ とが い え る 。 す な わ ち、 パ テ ィ ンキ ンの解 釈 の よ うに 、 ケ イ ン ズ は言 葉 の 上 で は 、 貨幣 、債 券 、 株 式 また は 実

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46 加納 正雄 物 資 産 の 間 で の 同時 的 な選 択 を考 えて い た とい え る 。 しか し、 『一 般 理 論 』 の 流 動 性 選 好 は、 貨 幣 と債 券 の 問 で の選 択 で あ り、株 式 と実 物 資 産 の選 択 は 、理 論 的 に は 、扱 わ れ て い な い。 し た が っ て、r一 般 理 論 』 を モ デ ル と して 表 す な らば 、債 券 、株 式 、 実物 資 産 を長 期 資 産 と して 集 計せ ざる をえ ない とい う こ とに な る 。   パ テ ィ ンキ ンは 、 ト 般 理 論 』 の 第17章 に 関 して は ま っ た く評 価 して い な い 。 す な わ ち 、 「『一 般 理 論 』 の なか に は事 実 、一 た とえ ば 第 17章 「利 子 と貨 幣 の 基 本 的 な 諸特 性 」 にお け る 形 式 的 な 厳 密 性 を 得 よ う とい う試 み の よ うに 一 不 完 全 で あ る こ とが 明 らか に な った、 そ れ         ほ ど不 可 欠 で は な い部 分 も存 在 して い た 」 。 こ れ は、 レ イ ヨン フ ー ヴ ッ ドや デ ヴ ィ ッ ドソ ン の 評 価 と比 べ る と、 ま っ た く逆 で あ り、 通 常 の 資 産 選 択 理 論 を支 持 す るパ テ ィ ンキ ンの 立 場 を 表 す もの で あ る。 4.ピ ッ ク ス   ヒ ック ス は 、 ケ イ ンズ の貨 幣 理 論 を一 貫 して テ ー マ と して追 求 して きた学 者 で あ る。 ケ イ ン ズ の 貨 幣 理 論 に対 す る ヒ ック ス の 評 価 は 、 『貨 幣 理論 』、rケ イ ンズ経 済学 の危 機 』、 『経 済 学 の 思 考 法 』 と発 展 して きて い るが 、基 本 的 な考 え は 、 『貨 幣 理 論 』 の 講 義1、n、 皿で す で に完 成 して い る 。 一 言 で い え ば 、 ヒ ック ス は 、 ケ イ ンズ の 流動 性 に 関 す る 理 論 を純 化 し、発 展 させ て きた とい え る。 ピ ックス の資 産選 択 の理 論 は、 資 産 の 収益 の リス クで はな く、資 産 の流 動 性 を 重 視 した議 論 で あ る。 した が って 、 ヒ ック ス は 流 動 性 に よる 資 産 の 分 類 を重 視 す る 。流 動 性 選 好 と は、 よ り流 動 的 な 資 産 に対 す る需 要 で あ り、 貨 幣 は最 も流 動 的 な資 産 で あ る。 『貨 幣 論 』で は、 流 動性 に関 して 、 この よ うな 相対 的 な概 念 が 使 用 され て い る。 しか し、 『一 般 理 論 」 で は、 貨 幣 が 唯 一 の 流 動 的 な資 産 とな る。 した が っ て 、 ヒ ックス は、 ケ イ ンズ の 議 論 が 『一 般 理 論 』 で は む しろ後 退 した と考 えて い る と思 わ れ る。 こ の よ うな貨 幣 に対 す る需 要 は、 流 動 性 に 対 す る 予 備 的 需 要 を形 成 す る。 これ に対 して 、 貨 幣 に 対 す る投 機 的 需 要 に対 して は、 「そ れ が 存 在 す る こ とを否 定 しな いが 、 しか しそ れ は一 般 的 で       ユロ な い特 殊 な現 象 で あ る」 と考 え る。   この よ うな 、貨 幣 に対 す る投 機 的 需 要 に よ っ て 、 短 期 的 に は 、利 子 率 が 下 が らな い こ とが あ る。 しか しな が ら、投 資 に影 響 す るの は、 長 期 の 政 府 債 券 の収 益 とい う意 味 で の 長 期 利 子 率 で は な く、 産 業 に 供給 され る貸 付 条 件 で あ る。 ヒ ックス に よれ ば 、 『一 般 理 論 』 の利 子 率 は 、「健 全 な借 手 、 つ ま り十 分信 用 の お け る借 手 が 市 場 で 長 期 の 借 入 れ を行 うこ とが で きる利 子 率 なの で あ る。 あ るい は、 そ れ とほ ぼ ま っ た く同 じ も の と考 え られ る、 長 期 の 国債 の利 子 率 を言 って         ほ い るの で あ る」 。   で は 、 ケ イ ン ズ はなぜ 長期 利 子 率 を あの よ う に重 視 したの で あ ろ うか 。 ピ ック ス に よ れ ば、 「永 続 的 な 失 業 の 傾 向 に対 処 す る た め に は、 投 資 が現 在 な い し今 年 増 加 す る こ との みが 必 要 な こ とな ので は な い。 必 要 な こ とは 、投 資 水 準 全 体 が何 年 もの期 間 に わた って 、 引 き上 げ られ る こ とで あ る。 貨 幣 政 策 が この よ うな永 続 的 な効 果 を持 つ た め に は 、 さ ま ざ まな利 子 率(お よび さ ま ざ まな貸 付 条 件)の 全 体 が 引 き下 げ られ 、 そ の低 い水 準 に と どま ら な けれ ば な らな い 。 こ の よ うな利 子 率 の下 落 は、 長 期 利 子率 の下 落 、 そ の 長期 に わ た っ て持 続 す る下 落 を意 味 す るで       ロの あ ろ う」 。   しか しな が ら、 いず れ に して も、 一 般 的 に適 用 で き る貨 幣理 論 は 、投 機 的 動 機 を中 心 と した もの で はな く、流 動 性 の理 論 が 必 要 で あ る と考 え る。投 機 は通常 の 資産 選 択 の理 論 の なか に容 易 に取 り入 れ る こ とが で きるが 、流 動 性 は資 産 選 択 の 理 論 の な か に 登場 しな い。   こ の よ う な流 動 性 を重 視 した 議 論 は、 『ケ イ ン ズ経 済 学 』 に到 って 、 主体 の流 動 性 を重 視 し た議 論 へ と発 展 して い る。 この場 合 の主 体 の流 動 性(投 資 家 の 流 動 性)と は、 「予 期 せ ざ る需 要 に対 して 他 の 主 体 の 同 意 を うる こ とな く反応         し う る能 力 」 で あ る。 こ の よ う な 主 体 の 流 動 性 が 、主 体 の意 志 決 定 に影響 す る の で あ る 。 し た が っ て、 投 資 に対 して は、 単 に 長期 利 子 率 の み で は な く、 こ の よ う な主 体 の 流 動性 の状 況 が 重 要 で あ り、企 業 の流 動 性 に不 安 が あ る場 合 に は 、単 に利 子 率 の低 下 の み で は、投 資 は増 加 し な い こ とに な る。 こ の点 が 、 レ イ ヨ ン フ ー ヴ ッ ドの議 論 との相 違 で あ る。

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ケ イ ンズ 「一 般 理 論 」 にお け る資 産 選 択 と投 資 47 5.デ ヴ ィ ッ ド ソ ン   デ ヴ ィ ッ ドソ ンが 重 視 す るの は、 ケ イ ンズ が 『一 般 理 論 』 第17章 に お い て 、 貨 幣 の 基 本 的 特 質 と して 、 貨 幣 が 生 産 に関 して も代 替 に関 して も と もにゼ ロ(ま た は無 視 しう る程 度)の 弾 力 性 を もって い な け れ ば な らな い 、 と述 べ て い る           こ とで あ る 。 デ ヴ ィ ッ ドソ ン に よれ ば 、 貨 幣 の代 替 の弾 力 性 が ゼ ロ で あ る とい うこ と は、 貨 幣 と諸 証 券(こ れ も また無 視 し うる程 度 の 代 替 の弾 力性 を もつ)で は な く、生 産可 能 な物 的 耐 久財 との代 替 可 能 性 が ゼ ロ で あ る とい う こ とで あ る 。物 的耐 久 財 を対 象 と しな い とい うこ とで あ る 。 なぜ な らば 、 金 融 資 産 に は十 分 組 織 化 さ れ た市 場 が存 在 す るの に対 して 、実 物 資 産 に は そ の よ うな市 場 は存 在 せ ず 、価 値貯 蔵 手 段 と し て は 需要 され ない か らで あ る。   この よ うな 資 産 選 択 にお け る投 機 的貨 幣需 要 に 関 して は 次 の よ う に考 え る。 価値 貯 蔵 物 と し て の 貨 幣 需 要 は、 予 備 的 動 機 お よび投 機 的動 機 の 両 者 を含 む が 、 両 者 は分 離 して 存 在 し え な     い 。 ケ イ ンズ は投 機 的 貨 幣 需 要 を強 調 したが 、 「そ の わ け は 、 一 波 はそ の動 機 が 予 備 的 動 機 よ りもい っ そ う重 要 で あ る と考 え た か らで は な く一 公 開 市 場 操 作 が ポ ー トフ ォ リオ 決 意 に い か な る影 響 を与 え る か 、 その メ カニ ズ ム に つ い て 一 般 的 な 理 解 が 欠如 して い る と考 え た か らで     ユアコ あ る」 。   デ ヴ ィ ッ ドソ ンの この よ うな ケ イ ンズ 解 釈 を レイ ヨ ンフ ー ヴ ッ ドと比 較 す る と次 の よ う にな る。 レイ ヨ ン フ ー ヴ ッ ドは 、金 融 資 産 と実 物 資 産 を長 期 資 産 と して 集計 され て い る と解 釈 す る。 こ れ に対 して 、 デ ヴ ィ ッ ドソ ンは 、金 融 資 産 と 実 物 資 産 の 代 替 の 弾 力性 は低 い と考 え る。 した が っ て金 融 資 産 と実 物 資 産 は集 計 で き ない 。 た だ し、 デ ヴ ィ ッ ドソ ンは 、株 式 を金 融 資 産 に含 め る。 した が って 、 問 題 は、株 式 以 外 の 実 物 資 産 と金 融 資 産 の 関 係 で あ る。   デ ヴ ィ ッ ドソ ンの 議 論 の特 徴 は 、家 計 の 資 産 選 択 に よっ て 決 ま る、 株 式 を含 む諸 証 券 の 価 格 が 企業 の資 本 財 に対 す る評価 と異 な る 、 とい う こ とで あ る 。 なぜ な ら、「貯 蓄 者 は価 値 貯 蔵 物 と して の み 富 に対 す る権 利 証 券 に 関心 が あ り、 他方 、企 業 家 は資 本 財 か らの 生 産 用 役 フ ロ ー を 所 望 す る ので 、富 保 有 決 意 ない しポ ー トフ ォ リ オ均 衡 決 意 と投 資 決 意 とは、 異 な る価 格 水 準 に       し  直 面 す るで あ ろ う」 か らで あ る。 こ の よ う な デ ヴ ィ ッ ドソ ンの資 本 主 義 経 済 に対 す る ヴ ィ ジ ョン は次 の 言 葉 に表 され る。 す な わ ち、 「金 融 資 本 主義 は資 本需 要 決 意(要 素 用 役 の 生 産 支 配 あ るい は 管理 に 関係 す る)と ポ ー トフ ォ リオ均 衡 決 意(要 素 の所 有 に 関係 す る)と の 問 の 連 結 環 を断 ち切 って きたか らで あ る。 い う まで も な く、 この 点 こそが 経 営 者 資 本 主 義 の 主 な制 度 上         の 矛 盾 な の で あ る」 。 した が っ て 、 株 価 と企 業 の 評 価 す る資 本財 価 格 は乖 離 す る こ と に な る。 この 点 、 他 の 解釈 が 、 ケ イ ンズ は 『一 般 理 論 』 にお い て も、 基 本 的 に は、 株 式 と資 本 財 を同 一 視 して い る、 とす る の と異 な る。 た だ し、 資 本 財 の 需 要 価 格 は家計 の資 産 選 択 に よ って 決 定 さ れ るの で はな い が 、 家計 の資 産 選 択 は、 企 業 の 資 金 調 達 に与 える 影響 を通 じて 、資 本 財 の 需 要 価 格 を決 定 す る際 の割 引率 に影 響 す る。 した が って 、家 計 の 資 産 選択 が 、企 業 の投 資 に 対 して ど の よ う な影 響 を与 え る か が問 題 と な る。 これ は 、企 業 の 資 金調 達 に与 え る影 響 を通 じて で あ る。 デ ヴ ィ ッ ドソ ン に よ れ ば 、 「不 明 確 で あ る と して しば しば無 視 され る 『一 般 理 論 』 の 第16 章 と第17章 にお い て 、 ケ イ ンズ は 自 らそ の 著 書 の他 の諸 車 の 短 期 的 な枠 組 み か ら脱 出 を試 み る とい う問 題 に取 り組 ん だ の で あ る。 これ らの 章 の エ ッセ ンス は、 社 会 の実 物 的富 が 蓄 積 され て い る と きに、 追 加 的 な投 資 需要 を資 金 調 達 す る       コの 問 題 を 含 ん で い る」 。 この よ うに 、 デ ヴ ィ ッ ドソ ンは 『一 般 理 論 』 の 第17章 を企 業 の 資 金 調 達 の 問題 と して重 視 す る。 6.カ ー ン   カー ン に よれ ば 、 「ケ イ ン ズ は 『貨 幣 論 』 に お い て流 動 性 選 好 理 論 の 初 期形 態 を提 示 した 。 そ の と きケ イ ンズが 心 に描 い て い た証 券 は株 式          の で あ っ た」 。 したが っ て 、 『貨 幣 論 』 の 弱 気 、 強 気 の投 機 は 、貨 幣 と株 式 の 問 で行 わ れ る。 た だ し、株 価 と投 資 の関 係 に関 して は 、r貨 幣 論 』 に お い て も、 『一 般 理 論 』 にお い て も、 ケ イ ン ズ は断 定 的 な こ とをい うの を躊 躇 して い る。 株

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48 加 納正雄 価 が投 資 に 影響 す る こ とに対 して は 、 否定 的 で あ る が 、肯 定 的 な 文 章 もあ り、 カ ー ンに よれ ば 、 ケ イ ンズ の 議 論 は 混 乱 して い る 。   こ れ に対 して 、 『一 般 理 論 』 で は 、 ケ イ ンズ は 、債 券 と株 式 を区 別 して い る と考 え る 。 そ の 理 由 は、利 子 率 の 変 化 に よ る結 果 と資 本 の 限 界 効 率 表 の 変 化 に よ る結 果 との 混 同 を除 くた め で あ る。 この 根 拠 に関 して は、 パ テ ィ ンキ ンの所 で 引 用 した ケ イ ン ズの 文 章 で あ る。 した が って 、 『一 般 理 論 』 の 投 機 的 貨 幣 需 要 は 、 債 券 投 機 に 基 づ くもの で あ る。 た だ し、 カ ー ン に よれ ば 、 貨 幣 保 有 の 「投 機 的 動 機 と予 備 的 動 機 の 問 の 区 別 が きわ め て あ い まい で あ り、 問 題 を含 ん で い     ユ る」 の で あ り、 両 者 は 分 離 で き な い 存 在 で あ る。   資 産 選 択 が こ の よ うに貨 幣 と債 券 に限 定 され た こ とに対 して 、 カ ー ンは次 の よ う に批 判 して い る。   「この 節 で 引 用 した 『一 般 理 論 』 の 中 で 最 初 の文 章 にお い て 、 ケ イ ンズが 現 金 と確 定 利 付 き 証 券 以 外 の 他 の どの よ うな富 の 流 動 的 形 態 を も 予 想 して い な か っ た こ とは 、奇 妙 な こ とで あ る。 貨 幣 と株 式 との 問 に は か な り高 い代 替 の 弾 力 性 が あ り、 ま た 、貨 幣 と家屋 との 問、 貨 幣 と組 織 的生 産物 市 場 で取 り引 き され る財 との 間 に も代 替 の弾 力 性 が あ る 。 そ して 、 こ れ ら資 産 相 互 間 に も もち ろ ん代 替 の弾 力性 が あ る。 取 引 動 機 に よっ て吸 収 され る 貨 幣量 を上 回 る貨 幣 量 の 超 過 分 と関係 が あ るの は,ひ と り確 定 利 付 き証 券 の 価 格 水準 だ け で は な い 。 こ の よ うな貨 幣 量 超 過 分 の うち の あ る特 定部 分 と結 びつ い た、 これ ら さ ま ざ ま な 資 産 の価 格 の 無 数 の 系 列 が 存 在 す     23} る 。」   ま た 、 こ の よ う に し て 決 ま る 利 子 率 は 、 債 券        り の 利 子 率 で あ り、 危 険 の な い利 子 率 で あ る 。 この よ うな利 子 率 と資 本 の 限界 効 率 が 投 資 を決 定 す るこ とに 対 して次 の よ うに批 判 す る。   「ケ イ ンズ は 、 投 資 率 の 決 定 要 因 と して の 危 険 の な い利 子 率 の一 他 の 要 因 に比 して の一 重要 性 を強調 した 点 で 、 当 然 に批 判 され て よ い。 そ の 他 の要 因 の 中 に は、 危 険 と不 確 実 性 、資 本 減耗 と陳腐 化 が 含 まれ る。 私 は次 節 に お いて 、 他 の 諸 要 因 一 そ の 中 の 最 も重 要 な 要 因 は 、 「金 融 の 状 態 」 と い う混 成 語 で 一 括 で き る もの で あ る一 に比 して 利 子 率 を特 に重 視 す る こ と へ の きわめ て 強 力 な 反対 者 と して 、 ケ イ ンズ を       25, あ げ る予 定 で あ る。」   た だ し、 危 険 の ない 利 子 率 が重 要 とな る場 合 と して 、 「そ れ と 同時 に 、 ケ イ ンズ も もち ろ ん 十 分 に気 づ いて い た こ とで あ るが 、一 国 の投 資 の な か のか な りの 割 合 は、 住 宅 、 公 共 施設 、道 路 お よ び鉄 道 と い う よ う な耐 久 資 産 の 形 を と っ て い る。 こ の よ う な場 合 に は、 危 険 は わ ず か な もの で あ り、年 々の 資 本 減 耗 も少 な い 。利 子 率         ラ が 重 要 な 決 定 要 因 とな る の で あ る 」 。 した が っ て 、 「耐 久 的 事 業 へ の投 資 が 有 効 需 要 の重 要 部 分 をなす 場 合 に 、利 子 率 水 準 が 全体 と して の 経 済 の 活 動 量 と あ る種 の 関 係 を持 つ 理 由 で あ   ンほ る 」 。 こ の よ うな 投 資 は レイ ヨ ンフ ー ヴ ッ ド が 強調 す る投 資 で あ る。 これ らの 投 資 に関 して は 、危 険 の な い債 券 の長 期 利 子 率 が 重 要 で あ る。   ケ イ ン ズ 自身 、 『一 般 理 論 」 に お い て も、投 資 に影 響 す る の は危 険 の な い利 子 率 で は ない こ とは 十 分承 知 して お り、 た とえ ば、r一 般 理 論 」 の 第11章 で 、投 資 に影 響 す る二 つ の 危 険 と して 、 企 業 家 また は貸 手 の危 険 と借 手 の 危 険 に言 及 し       おユ て い る 。 この 議 論 は、 言 葉 に よ る もの で あ る が 、 ケ イ ンズが 投 資 に影 響 す るの が 単 に安 全 な 債 券 の 長期 利子 率 で は な い と考 えて い た こ と を 意 味 す る 。   い ず れ も して も、 ケ イ ンズ は 、 『一 般 理 論 」 で 資 産 選択 の 簡単 な一 形 態 を必 要 と したの で あ るが 、 ケ イ ンズ 自 身 、 そ の扱 い に は満 足 して い な か っ た と い え る 。 カ ー ンに よれ ば、 『一 般 理 論 』 を出 版 した 後 に 、 ケ イ ンズ は こ の分 野 へ の 挑 戦 を試 み たが 、 「ど ち らか とい え ば不 満 足 な        の 結 果 に 終 わ っ た 」 。 こ の よ う な 挑 戦 が 、 「金 融 (finance)の 概 念 で あ り 、 ケ イ ン ズ は 、 こ れ に よ っ て 、 投 資 の 説 明 に 関 す る 『一 般 理 論 」 で の       のし 説 明 を修 正 し よ う と した 。 カ ー ン に よ れ ば 、 「ケ イ ンズ は 、「金 融 」 とい う用 語 を、計 画 か ら 実 効 に至 る まで の期 間 中 に必 要 とな る信 用 を意       ヨリ 味 す る もの と して 用 い た」 。 また 、 「こ の 「金 融 」 とい う用 語 は 、 量 的 定 義 が不 可 能 で あ り、 投 資 の 進 行 中 に投 資 を まか な うた め の 資金 が利 用 可 能 と な る容 易 さ一 資 金 に 対 す る対 価 の支 払 と利 用 可 能 性 の 両 方 の 面 で の一 に対 す る企       ヨゐ 業 家 の信 頼 度 を示 す 合 成 語 で あ る」 。 そ して 、

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ケ イ ンズ 「一 般 理 論 」 にお け る資 産 選 択 と投 資 49 金 融 は、 「将 来 の利 潤 獲 得 能力 につ い て の期 待 、 当 該 資 本 財 を生 産 す る産 業 の 物 理 的 生 産 能 力 、 お よ び 「血 気 」 に追 加 さ れ る、 投 資 率 決 定 の 一 要 因 で あ る。 そ れ は危 険 と不 確 実 と に強 く左 右 され る利 潤 期 待 と対 照 的 な危 険 の ない 利子 率 の 信 頼 度 に疑 問 を持 つ す べ て の 人 々 に対 す る 一つ       おぼ の 解 答 で あ る 。」 。 7.む す び   『一 般 理 論 』 の 資 産 選 択 は、 言 葉 の 上 で は 、 パ テ ィ ンキ ンの い う よ う に、 貨 幣 、債 券 、株 式 の 選択 が考 え られ て い る。 しか し、理 論 的 に は 、 債 券 と貨 幣 しか 扱 わ れ て い な い 。 したが っ て、 ケ イ ンズ の 理 論 をモ デ ル と して表 す な らば、 レ イ ヨ ンフ ー ヴ ッ ドの 主 張 す る よ うに 、非 貨 幣 資 産 の 間 の収 益 率 は比 例 的 な 関係 に あ り、 集 計 さ れ た もの と考 え ざる をえ な い 。   一 方 、 ケ イ ンズ の 理論 を、 モ デ ル と して で は な く、 ケ イ ンズ の 意 図 を考 慮 す る場 合 に は、 ケ イ ンズ の理 論 は 、 多 数資 産 の資 産 選 択 理 論 を単 純 化 した もの で あ り、 よ り現 実 的 に は、 複 数 の 資 産 を重 視 した もの と して発 展 させ られ るべ き で あ る と考 え る こ とが で きる。 ケ イ ンズ の 場 合 、 モ デ ル と して表 され る部 分 と言 葉 に よ る分 析 の 部 分 と 区別 す る こ とが重 要 で あ る。 厳 密 に モ デ ル化 で きる部 分 は 、 ケ イ ンズの 理 論 の 本 質 と考 え る よ り も、分 析 の手 段 で あ り、 一 つ の例 示 で あ る と考 え るべ きで あ る。 ケ イ ンズ 自身 、 『一 般 理 論 』 の 金 融 面 に 関 して は、 単 純 化 した もの で あ る こ と を表 明 して お り、 また 、 『一 般 理 論 』 で の 扱 い に 満 足 して い なか った こ とは カ ー ンの 議 論 よ り明 かで あ る。   次 に 、 ケ イ ンズが 資 産 選 択 にお い て何 を重 視 した か で あ る。 貨 幣 資 産 を短 期資 産 、非 貨 幣 資 産 を長 期 資 産 とす れ ば、 この よ うな資 産 選 択 に お い て は 、 資 産 価 値 に関 して生 じる投 機 が 重 要 とな る。 ま た、 投 資 の 予 想収 益 が減 少 した 場 合 に 、投 資 を 減 少 させ る要 因 は 、投 機 に よ って 、 利 子 率 が 低 下 しない こ とで あ る。 ただ し、 現 実 に は、 非 貨 幣 資 産 の 間 の代 替 は不 完 全 で あ り、 多 数 の 非 貨 幣 資 産 が 存在 す る場 合 に は、 投 機 が どの よ う に 影響 す る か は複 雑 で あ る。   一 方 、 ケ イ ンズ の資 産 選 択 を貨 幣 、 債 券 、株 式 、 実 物 資 産 の 問 で の 選 択 と考 え る な ら ば、 『一 般 理 論 』 で は 、 貨 幣 と債 券 以外 の 選 択 が ど の よ うに な る かが 問 題 と な る。 また 、 資 産 選 択 と投 資 の関 係 も問 題 とな る。 これ らの 点 に関 し て は 、 ケ イ ンズの 議 論 は明 確 で は な い 。 ヒ ック ス とデ ヴ ィ ッ ドソ ンの 議 論 は 、 ケ イ ンズ の 議 論 を発 展 させ た もの で あ る と考 え る こ とが で きる 。   ヒ ック スの 場 合 は、 ケ イ ンズ の流 動 性 に 関す る議 論 を重 視 す る。 ヒ ックス の議 論 で は 、主 体 の流 動 性 が 投 資 決 意 に影響 す る。 こ の よ うな ヒ ック スの 議 論 は、投 資 の資 金 調 達 の問 題 を重 視 す るデ ヴ ィ ッ ドソ ンの議 論 を よ り具 体 化 した も の と して み る こ とが で きる。   投 資 に対 す る 影響 と して 、 レイ ヨ ン フ ー ヴ ッ ドの よ うに投 機 に よる利 子 率 の 誤 調 整 を重 視 す るか 、 ヒ ックス の よ うに主 体 の 流 動 性 の 低 下 を 重 視 す るか ≧い う問題 は 、景 気 の 局 面 と も関 連 す る と思 わ れ る。 す な わ ち、 景 気 後 退 の 契 機 と しは、 レイ ヨ ンフ ー ヴ ッ ドの 議 論 が 重要 で あ り、 景 気 が すで に停 滞 してい る不 況 の局 面 で は ヒ ッ クス の議 論 が重 要 に な る と考 え られ る鋤。   『一 般 理 論 』 の 革 新 の 一 つ は有 効 需 要 の 概 念 で あ る。 こ れ に対 して 、 金 融 的 側面 が どの よ う に 影 響 す る か は重 要 で あ る。 しか し、 『一 般 理 論 」 の金 融 面 の 詳 細 に関 して は背 景 に退 い て い る 。 そ の場 合 で も 『貨 幣 論 』 を表 したケ イ ンズ と して は、 十 分 目的 を達 成 で きる と考 え てい た と思 わ れ る。 しか しなが ら、 こ れ は む しろ ケ イ ンズ理 論 の 欠 陥 とな って い る もので あ り、 ケ イ ンズの 理 論 を発 展 させ る た め に は金 融 の 理 論 の 拡 充 が 必 要 不 可 欠 で あ る。 注 1)Leijonhufvud[9]、 第3章 参 照. 2)Leijonhufvud[9]、   p.135、 邦 訳p.149. 3)Leijonhufvud[9]、   p.183、 邦 訳p.197. 4)投 機 に 関 す る レ イ ヨ ン フ ー ヴ ッ ド の 議 論 に 関 し   て は 加 納[15]参 照. 5)Patinkin[11]、 邦 訳p.95. 6)Patinkin[11]、 邦 訳p.95. 7>Keynes[8]、   p.170、 邦 訳 、 p.168注1. 8)Patinkin[11]、 邦 訳p.96. 9)Keynes[8]、  PP.173-174、 邦 訳PP.171-172. 10)Patinkin[11]、 邦 訳p.174.

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50 加 納正雄 11)Hicks[2]、 邦 訳p.67. 12)Hicks[3]、   p.33、 邦 訳p.46. 13)Hicks[3]、   PP.34-35、 邦 訳PP.48-49. 14)Hicks[4]、 邦 訳p.98. 15)Devidson[1]、  p.222、 邦 訳p.246. 16)Devidson[1]、  p.197、 邦 訳p.217. 17)Devidson[1]、  p.190、 邦 訳p.209. 18)Devidson[1]、  p.68、 邦 訳p.77. 19)Devidson[1]、  p.68、 邦 訳p.77. 20)Devidson[1]、  p.62、 邦 訳p.69. 21)Kahn[5]、  p.140、 邦 訳p.218. 22)Kahn【5]、   p.138、 邦 訳p.216. 23)Kahn[5]、   p.140、 邦 訳p.218. 24)Kahn[5]、   p.146、 邦 訳p.225. 25)Kahn[5]、   p.148、 邦 訳p.228. 26)Kahn[5]、   p.148、 邦 訳p.228。 27)Kahn[5]、   p.148、 邦 訳p.229. 28)Keynes[8]、   p.144、 邦 訳p,142. 29)Keynes[5]、   p.140、 邦 訳p.218. 30)Economic  Joranalの1937年6月 号 、1937年12月 号 、     1938年6月 号 の ケ イ ン ズ の 論 文. 31)Kahn[5]、   p.163、 邦 訳p.251. 32)Kahn[5]、   p.164、 邦 訳p.253. 33)Kahn[5]、   p.162、 ヲ弔 訳p.250. 34)詳 し く は 、 加 納[14]参 照. 主要参考文献

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