献
辞
三賀 明先生は明年2月15日に満65才の誕辰をお迎えになり,3月末日をも って本学を停年退官されることになりました。 先生は京都のお生れですが,ほどなく大津にお移りになり旧制膳所中学校に 学ばれましたので,先生と滋賀との係りは深いものがあります。その後,旧制 大阪外事専門学校(現大阪外国語大学)を経て,昭和31年3月に京都大学文学部 (独文専攻)をご卒業になりました。そして間もなくM究生活にお入りになり, 本学へは昭和47年4月にご赴任になりました。以来17年にわたり独語,文学等 をご担当ねがい,研究と教育に献身していただきました。 先生のご研究はユ6世紀の啓蒙主義者レッシングを中心とし,さらに現代の作 家マンやカフカにおよんでいます。とりわけレッシングについては,18世紀ド イツの硬直化した合理主義を内面から覆滅して新しい時代をきり拓いた文学者, という理解が示されており,かれの思想と力能とがどのような源泉に由来して いるかの追跡に,研究の重点がおかれているように思います。ご研究の成果は 文字通り珠玉の論文として結実しており,高い評価がえられているものと承知 しております。 先生はお若いころ,かなり長期にわたって闘病された経験をお持ちです。戦 中戦後のこととて医療も食糧事情も十分でない悪条件のもとで,見事病魔を克 服され健康を回復された先生の強靱な精神力に改めて敬服いたします。そして このような「死」と直接対峙するという極限状況のなかで,先生は独自の境涯 をおひらきになったように思います。つね日頃の先生は謙虚で物静かで俗事に 執着されない悟淡の境地にあられました。このような先生のお人柄から深い感 銘を受け,卒業後も先生の学愚を慕う教え子の数は少なくありません。先生こ そ研究者であるとともに,まことの教育の実践者であられたと申して過言では ないと思います。 滋賀大学経済学会は先生の多年の学恩に報いるべく,本号を先生の記念号とし,ご友人や同学の方々のご労作を含めた一冊を先生に捧げることにいたしま した。 先生は本学をご退官後もひきつづき関西の地で教壇にお立ちになると承って おります。どうか今後ともますますご健勝でお過しになり,学界と教育界のた めにご活躍下さいますよう心からお祈りいたします。 昭和63年11月 滋賀大学経済学会長 仙 田 左千夫