Hokuriku University
NII-Electronic Library Service Hokurlku Unlverslt Y
’
医
薬
品
の
製
造
物
責
任
亠
医薬 品
の瑕 疵
の問
題 を中
心 に一
三
浦
泉
Product
Liability
ofPharmaceuticals
−
With
regardto
the
Problems
ofthe
Vice
of rpharmaceu
七icals
一
Izumi
Miura
丶1
は
じ
め
に わ細
・お・ て藻 はますます 社会生
活曙
攤 関 係を紘
同暾
雛
嫺 題 を鰍
す・ に い たっ て いる。 これ は,
国 民の生活 レヴェ ル の 向上 に と も ない,
築
の繁
用 が 生命・
健康 に大 き な影 響 を及 ぼす
こと を示 す もの である。 文 明 社 会の 「一
特 徴と して,
薬の使 用 量が多 くな り, ま た さ ま ざ ま な種類
の 薬へ の依存傾向
の増大
が 認 め ら れ る。 従っ て, 医 薬 産 業の飛躍
的発 展も さ ることな が ら, 薬髻
の問麺
も大 幅に助 長されて きた。わ が
国
丁’
, 現征
約 4
万数千品
留
に及ぶ医薬
品が市
販さ扎ノ
昨年
(昭和右3年
)』
の医薬品
生
産
額は2
兆7900
億円 (推定繊
)に達 して い る が,
その背
景にほ
,薬
に頼る医 療体
制と薬の持っ神
秘的
な効 果 を期 待 する国 民 的 傾 向 が あ り, 医 薬 品 業 界 を 巨大な利 益集
団にまで押 し上 げで きた の であ る。
,しか し
一
方、
薬の害につ い て も,
それが最近
にわか に社会
問 題 化し,
批 判されて い る事 実に 眼を 向けざるをえ な くな っ てきた。 経 済 的 利 益の追及を 主眼 にして きた薬 業 界に も, 生 命・
健 康へ の謙 虚な反 省か ら,
人 命 尊 重を重 視 する動き が見 られ る ように なっ て き たの で ある 。 すな わ ち, 薬 物の有 効 性は どの よ うな もの か,・
その有 効 性以上に患 者に副 作 用が及ぶようなこと は ないか どうか, とい うように,
患 者の完 全な健康
回 復が優 先さ れ る点に社
会 的 関心 が集まっ て きて い るの で ある。近
来
,1961 年
の サ リドマ イ ド事件
をは じめ と して20数件
の薬害
事件
が引き
起こ さ れ た。
周 知 の ようにt.
サ リドマ イ ドの 訴 訟 は,
和
解に よ り解 決 さ れた が,
大 規 模な薬 害 訴 訟ζ
して の ス モ ン事 件で は,
は じ め て昭和53
年3
月1
日, 金沢
地 方 裁 判 所におい て判 決が
なさ れたの で ある『
そ して これ ら二つ の事件
を 通 じて の世論
の高揚
は,今
や医薬
晶
製
造業者
の法
的
責任
につ い て ま で,
関 心 を よせ るに いた っ て い るの である6
そ こ で
本
稿で は, 医薬
品 製 造業者
爾
法 的 責 任が不 法 行 為 責 任である の か, また は そ の他
の法
的 責 任 と して構
成 すべ き か は一
先 ず置 き , 不法 行 為的構
成 が今日の 大勢
で あるの で,
不 法 行為87
N工 工一
Eleotronlo LlbraryHokuriku University
NII-Electronic Library Service }{okuriku University 三 浦 泉
丶
と して考え る
場
合,特
に 過失 論 (国の責 任 論 も含めて),
因 果 関 係 論 及 び損 害 額 算 定 論がそ ので
重
要 な 問 題 点であるが,、
本 稿で は過 失の 問 題を取
り上 げること に した。 この 間髓
につ き 筆者
は,
\
、
医 薬 品の瑕 疵の
概
念を明 確に した上で,
それ を 基礎
と して過 失 論を
構 成 するべ きで あろう と考えてお り, 本 論 文は そ の ような
構
成と な っ て い る。 また, この問
題につ い て は北陸
ス モ ン訴訟判 決の 検 討が 必
須
の こ とで あ るので
,
そ の分 析を 通 して論旨
を展 開 する ことに した。〔
1
) 今 日の社 会にお け る薬あ重要性 な らびに薬に関 与 してい る薬 剤 師の法 的 責 任につ いては,
.
拙稿 「薬 剤師の職業上の過失につ いての一
考 察」北陸大学紀要 第2号,1978
年, 33頁以下を参照 され た い。
薬 害 とい う用 語,
概 念につ いては,
はっ き り した 定 義 はなく,
「医 薬 品 公 害 」 「薬 禍 」 と 言 わ れたりしてい る が
,
「薬の害
作用 を 示 す 用 語で もっ とも用い られて いる の は副作用とい う」言葉である。
こ れ は 英 語の 「side effect (有 害 反 応 ) ,Unwanted
effect (予期せ ぬ作 用,好ま し か らざ る作 用 )な ど に用い ら れ る 」と言わ れて いる。
高野哲 夫, 「日本の薬害」1979 年 2 月19
日第一
刷, 大 月書 店, 8 頁 参 照。1
』
’
〔3
} 薬 事日報p 昭和50猝 7月 5 日号,
4
頁 参照。
{
4
〕 薬事M
’
生産動態統 計月報,
昭和
53年11月,
薬業 経 済 研究所出版,
1頁 参 照。 〔5) 北 陸ス モ ン訴 訟 第一
審判決をは じめ,、
東 京ス モ ン (昭 和53年8月3日 ), 福 岡ス モ ン (昭 和53年11月
14
日),
広島スモ ン (昭和54年』
2
月22日) 等々 の判 決がな さ れてい る。 皿医 薬 品
の 瑕疵
』
(肉 )序
.
説 (1)
「薬は原 則 的
1
こ毒である 」と言わa
てい る。 しか し薬は , 人 類の歴 史 上, 生 命・
健 康の分
野で
数
限り ない貢献
をな
し, 人 間の長 寿に対 する悲 願忙
測 り知 れない希 望を与え て きた。 遡れば,ア
草 根 木 皮の使 用 か ら結 核の治 療
薬
ス トレプ トマ イシ ン等の 発 見 まで,新
しい 薬の 開 発は,
人 間、の創 造
的苦闘
の成
果であり,
人類
の生存
に貢献
してきた ところ極
めて大である。だ が新 薬の開 発が
一
面に
おい て,
その乱 用 (誤まっ た 用法・
用量)に よ り,
副作
用
とい う 厂有害
性
」を
惹 起 した こと も十
分考鯉
しな
けれ ば な ら ない。tt
麟
吊
}・瑕 疵があ棋
当然
入 間の生命 ・躰
賄
害
であ り藻
の 「有
効性
」・
厂安
盤
」が 確保 きれてい な か っ た と言え るで あ ろ う。 しか し
,
それ だ か らとい っ て, 薬は多 少にか かわら
ず副作
用を内在
し℃
お り,
副作
用の ない薬は存
在し ない と言 わ れて いる
以 上, 副作
用が
あることか ら直 ちに
そ
の薬
に
瑕 疵がある とは
い え ない で あ ろ う。 副作
用を有
し て も代
用薬
に変
え ることの で き ない薬 もある。
・
その 場合
には,
その 医薬 品を服 用し た結 果,
有効
性と副 作 用の比 較におい て
有
効性
が優っ て い るな らば, た だ ちにその医薬
品に瑕疵が あp
た と断言す
るこ.
と はでき
底
い で あろ魂
)さ
て瑕 疵とは,
製造物 責 任の根 幹 をなす もの で あ り.
,一
般に 「欠 陥 」 という語で 置 換 され
てい る。 し か
レ
厳密
に は,両者
は別個
の概
念と されて い る。 すな
わ ち瑕 疵は 「瑕 疵 担 保 責 任における瑕 疵 概 念 と して売 買の 目的 物の物 質 的 欠 点 を 意 味 し, 原
則
と して製 品 自体の 取 引 上の低 落を もた らす 状 態」 という ふ う に
説
か れ る。
これ に対
して欠
陥は, 「物
の危 険 性 を意味 し, 製 品の 通常
備
え るべ き安 全 性の欠 如により生 命・
身 体 等に積 極 的に侵 害 を 加 え る状
態 」 と説
明 さ れ88
N工 工一
Eleotronio LibraryHokuriku University
NII-Electronic Library Service Hokurlku U
・
nlver−
sエty 医 薬 品 の 製 造 物 責 任 て い る。し か し
製
造物 責任に おい ては 「商
者に実 質 的 差 違は な く,
生 産 物の安 全 性 欠 如の状 態」を考 こ (3) える の が一
般である。 そ こ で医 薬 品の場 合を考 えてみ ると,
医 薬 品の特 殊 性 を 考 慮 す れば,
他の生 産 物 との差 違は 明白
である。医薬品
に おける 「売買
の目的物
の物質
的 欠 点 」と は副 作 用に よ っ て惹 起 され た損害
と考
え ら れ, その結果,
入身
的侵害
を引
き起こすであ ろ う。 こ の ようIC
一
そ れが生 命・
身 体 等に積 極 的に侵 害 を加え た かど うか 異 論がある が一
安 全性
に欠 如あ る医薬吊
は畷 疵 ある 医 薬 品 といえよう。」
で は安全性欠 如 と は 何 か
。
医薬品の場合一
た と え ば 錠剤の 変 形,顆粒
剤へ の 異 物の 混 合な ど,客
観 的に知見可能
な場
合は 別 と して一
一一
L,
い わ ゆる内在 的 危険
性が ある こ と,
すな わち医 薬 品 自 体に欠 陥 が あること を 医 薬 品の瑕 疵 と考えて よ い の で はな かろ うか。さて
,
製造 物責任に おける蝦疵 (欠 陥)のと らえ方
と して,
わ が国の学説
は一
般
に (1
) 設 計 上の欠 陥 製 造 過 程 上の欠 陥 (3
> 指 示 上の欠 陥 (4
)開 発途 中の欠 陥に 分類 し てい るの (4’
) で あ る。
(5)こ の分 類 を 医薬 品にお ける瑕 疵にあて は め て みれ ば
,
学 説は,
(1
) 開 発 上の瑕 疵製 造 上の 瑕疵
(
3
) 後 顕 的瑕疵(
4
> 用法 指示 上の瑕疵 に 分類してい る。 し か し筆 者と しては,
製 造 上 並 び に製造後に おける品 質管
理 は重 要な問題 と考え,
に品 質 管理 上の 瑕 疵を加え たい 。 さ らに医薬 品の副 作 用 (有 害 性)につ い て の警 告 義 務を注楫
した い の で,
{4
}に警 告 上の瑕疵 を 加 えたいと思 う。tt
(二)
開 発 上
ID
瑕 疵医 薬 品製 造 業 者に とっ て
,
新 医 薬 品を開 発 すること は,
企 業の存
亡 を かけた問 題で あると同時
に,社会
的責務
を課
せ られた重要
な課
題でも
ある。 こ の開発
上の蝦疵
の問
題 は,局方薬
のみ なち ず 特に新薬
につ い て生じる。 し た が っ て,
製 造 販 売 以 前に開 発の段 階で,
医 薬晶
の安 全 性 L(6) が確 保されて いなければ な ら ない。さて , 医
華
品 (主に新薬
)の開
発 は,文献
調査,市場
調 査に は じ ま り,薬
理学
的 研 究,
毒 性 研 究,
一
生 化 学 研 究,
理 化学
的研 究をへ て,
動 物 実 験,
臨床 試 験 と調 査という具 合に,
多 大な時.
(7) 間’
と経 費 と労
力 をかけて行なわ れるもの で ある。 ア メ リカ では,
新 医 薬 品の開 発に5
年〜 7
年 (s)1,000
万 ドル〜
1
,
500
万ドル を 必 要とする と言
わ れ ている。 そ れ ほど困 難な仕 事である。 わ が国 で は, 昭和42
年 12月 (厚生省薬
務局長通知)の 「医 薬品の 製 造承 認 に 関 す る 基本 方針
につ いて」 の通 達によっ て,新
薬の 開 発は,
厳 格な基 準に従
っ て 行な わ れ, その 開 発上
の 過程に おい て安 全性の 確認 が十分に行な わ れ な け れ ば な らず,
こ の手続
に不十
分な点が ある場 合には,
開 発 上 c9) の瑕 疵があると考えられるの である。 こ の開 発 上の瑕 疵は一
般の製 造 物 責 任で言 う設 計 上の欠 陥に相 当 するものであ る。(三 )
製
造・
品 質管
理 上の瑕疵つ ぎに, 製 造 さ れ た医 薬 品 が, 定め られ た 品 質 を備 えて いるか 否 か が 暇 疵の問 題 と して
考
え ら れ るの で あ る。 しか しそ れ は, 品質管
理上 め 問題 と合
わせ で考
え られるべ きで あ る。 製造 さ れ たい わ ゆ る完成
医薬
品が 厂欠陥
のある品質
」の 医薬 品であっ たり, 異 物 を 混 入 して い た り,89
N工 工一
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NII-Electronic Library Service }{okurlku UnlVerSlty 三 浦 泉 規
格
の成 分を含有
し な か っ た り, 変質
し た医 薬 品であ る場合
, その製 造, 品質管
理上に手 落 ち があれ ば,
瑕 疵があっ た と言え る の で あ’
る。そこ で
,
も う少 し具 体 的にみてみ よ う。 医 薬 品 は 各々物 質におい て生 産工程 が 異 な り,
種々 な製 造工程を持っ て い る。た とえ ば, 近 代 医 薬 品の生 産工程 を 類型化 す れ ば
,
ア ス ピリンな どの製造
に用い られ る 工程 は,
原料→
化 学 的 過 程 (製
薬 )→
物理的 過 程 (製 剤 )→
小 分 け 包 装→ 最 終 製 品 , の方 式 を とる。 また, 血 清, ワ ク チンのよ う な生 物 学 的 製剤
に 用い ら れ る 工程は,
原料→
生物
学 的過程→
物理 的過程→ 小 分 け包装→ 最 終 製 品である 。 さらに伝 統 的な家 庭 薬な どでは, 原 料 → 物 理 的 過程
→ 小 分 け 包 装→ 最終
褻
囂
} とい う工程
を経
る。
とこ ろで
,
これ ら医 薬 品は,
生 産工程が一
貫 作 業で あ り、 長い 工程を要 する ため, 医薬
品の 有 効 性の 保 持とい う観 点か ら, 特に晶質
管理の 問題 がクU一
ズア ッ プ さ れ るの で あ る。
こ うし た問題に対 し, 1969
年,
世界 保健機
構 (WHQ
)に よ り 「医薬品の 製 造な らびに品 質 管理 に関 する規 範 (GMP
)」の勧 告が な され,
国 際 的にもより高
い品質
の 医薬 品の供給
が強
く要 請 され るに至っ た。 これ を受 けて厚 生 省 は, 昭 和49
年9
月14
日各 都 道 府 県 知 事にあて 「医 薬 晶の製 造 及び品 質 管理に関
す る基 準につ い て」の薬 務 局 長 通 達 を 行な
っ たの で あ る。 この 基 準の 目的 は, 医 薬 品の 製造所にお ける医 薬 品の 製 造 及び保 管 並びに医薬 品の製 造 所の構 造 設備
に関 する基準
を定め る こ と に よ り, 医薬品の 品質 を図 ること と して い るの で あ82
、
ところで,
医薬
品製
造業者
が こ の通 達 を遵 守 すべ きは勿 論で あるが, それを遵 守したか否
かi が
,
そ の法 的 貴 任 を 判 断 する 資 料にもな るもの と考えられる。
高 品 質 性が 重要 視さ れる
医 薬 品ic
おいて は,筆者
は,品質管
理の適否
は医薬
品の生
命であ り,製造業
者には特
に厳
格な
注 意 義 務が求め られる稽
きである, と考え る の で ある。(四 )
後顕的 瑕 疵
,
つ ぎに, 医 薬 品の開 発の過 程で は, その有
害
性は発 見され ず, 製 品 は市
販さ れ,使
用者
が服 用中
に副 作 用に より生 命・
身 体た
傷 害を受 けた場 合,
そ の医 薬 品に果た して瑕 疵 が あっ た か否 かの問題 が生まれる。 これ を後 顕 的 瑕 疵と い う。 これ を言いか え れ ば].
医薬
品の製 造時
点で は,
現 在 の学問
や技術
をも
っ て しても
, 認識
されな かっ た瑕
疵が,後
に なっ て顕 現し た場合
で あ藐
)こ こ で考 え な け れ ば な ら ない こ とは, 現 代の 複 雑 化 した
社
会 生 活の な かで,薬
の必要性
が緊
急の 問題 と な るこ とで ある。 病 気 の 大 量 化,
多様
化が み ら れ る時 代 (病 人の大 衆 化 )に は, 新しい病 気に対 処ず
る新 しい治 療 薬が必 要と さ れ る。 新 薬の開 発は,
ま さに国 家的
国民的 願 望 で ある (例えば今
日の癌
の蔓
延に対 する癌 新薬
の 必 要 性 )。 しか し,新
薬の開発を急 げ ば 急 ぐ ほ ど, 暇 疵 ある医薬 品の開 発 途 上で の 発 見は困 難に な る。 そ の うえ,
薬に関 する学 問 的 水 準が, 開 発 製 造 当 時に比べ , 市販
, 服 用される時 点で向 上 する こと も十 分 考え られることである。では
後顕的
蝦 疵と は,厳密
には どの ような観
念であろ うか。 医薬晶製
造業者
は,自
己の 開 発 医薬 品に対 し,
(1
}市 販 中に も,
医薬 品に対 する情 報 を提 供 し,
調 査, 研究 を 行ない,
安 全 性に 関 し て十分
な注
意 と管
理 を義
務付
けられ{
2
)もし市
販中
に その医薬
品に副作
用が臭
受 け られ れ ば, 直ちに原 因を明 ら か に し,警告
な り, 回収
停 止 を 講 じ る義 務が あ るといえ る。 そ し て医薬
品製 造業者
が こう し た措 置を懈
怠 した場
合に製
造業
者に後
顕的
瑕疵 に よ る責 任が生じ るこ と に (13) なる。90
N工 工一
Eleotronlo LlbraryHokuriku University
NII-Electronic Library Service Hokuriku Universlty 医 薬 品 の 製 造 物 責 任
(
耳
)用法 指 示
・
警 告 上の瑕 疵製造
物
責
任につ い て は,指
示 上の 欠 陥とい う言 葉 が 用い られる。 そ して これ が, 医 薬 品 製 造 業 者の責 任におい ては,
医薬 品の 用法
指 示・警
告 上の 瑕 疵に相当
する。医薬品 は, 「両 刃の 剣」 と
言
わ れ る ご とく, 不 可避
的に有 効性
と副 作 用を兼ねそなえ て い る。
医 薬 品は,
その使
用上の方
法次
第で毒にな っ たり , 薬になっ た りする性 質 を 保 持 して い る。 そ して 医 師・
薬 剤 師 等の専 門 家で あっ て も,
新しい 医 薬 品の効 能,
効 果,
副作
用i
ど
つ い ては無 知 な場侖
がある。専
門家
とい えど も, 医薬
品 製 造業
者 か らその使 用 上の指 示, 警 告を受 け な け れ ば な らない立 場にある。 医 薬 品製 造 業 者はそ の 立 場 上,
医 薬 品の効能 ・
効 果・
副作
用 につ い て, 情 報,
調 査,
研 究 等を司 り得る唯
一
の責任者
で あ るといえ る。 した が っ て製 造 業 者は, その知 (14) り得るすべ て の危 険を警 告 する義 務を負っ て い る,
と考え ら れ るの であ る。さて , 用法指 示
・警
告上の瑕疵は医 薬 品ゐ
適 切な 用法・
服用方 法の指示,
副作
用の警
告 が な さ れ る 球きなの に,
そ れ が な されてい ない , という場 合に認め られる。ちな みに
,
薬 事 法 52 条 第1 号
には 「医薬 品は,
これ に添 附 する文 書又 は その容
器 も し く は被 包に次
の号 に掲 げる事 項が記 載 さ れて いなけ れば ならない」と して第1
号に,
用 法,
用 量,
そ の他使
用お よび 取扱
の上
で必要
な注
意 を 明記
し てい る。 しか し,特
に この規 定 が な くて も, 同 (15) 種の注 意 義 務 は 製 造 物 責 任 法 理 上 認めうるもの で ある と思 わ れ る。 こうした副作
用の警
告義
務 (16) につ いて,
最近の ス トマ イ 副作
用 (全聾
) 事 件 第一
審 判 決では, 薬 事 法52
条 との関 連において, 製 薬 会 社に次のような薬 事 法 上の 義 務が ある と判 示さ れ た。 「医薬品
製 造業
者は, その 製 造 した 医 薬 品につ きそ の副 作 用 等 使用 上 の注 意 事項
を 添付 文 書等 に記 戦して使
用 者た る医 師 等にその 注意
を 喚 起 すべ き薬 事 法 上の義 務 を 有 する と解 するのが相当
で ある」と。医薬 品の用 法の指示
・
警 告につ いて,
その製 造業
者 が不 完 全な指 示・
警 告 を 行な っ たことに,
より, 消 費 者 (患 者 )に傷 害 を与 えたと す れば,
医 薬 品に瑕 疵が あっ た と 認 め ら れて し か る べ き である。・
宣 伝 ・ 広
告
上の閊 題1
用 法 指 示
・
警 告に関 連し て医薬
品の宣
伝・
広 告 上の問 題 が ある。大 別 して,
医
薬 品の宣 伝広
告 ぽ 医 師 , 薬剤師向
けあ
専 門雑
誌と大
衆 薬の宣 伝 手段
と して の テ レド
等
の方 法に
分け られ為
。 前 者は,
医 療 用医
薬 品の専 門的
知識
を 使用して の宣 伝 広 告で あ り,
’
後者
は, 素 人 向けの情
報 伝 達 方 法で ある。問題 に な るのは素 人 (消 費 者 )へ の 宣
伝広告
で あろ う。 薬 事 法66条
で規 制 しそ
い るよ うに 「効 能・
効 果 又は性 能に関して,
明 示的である と暗 示 的で あるとを 問わ ず,
虚偽又
は誇 大な記 CIT)事
を 広 告 し, 記 述し, 又 は流布
しては なら ない」 と されて いる ように,
そ れ は万 能 的 宣 伝, 科 学 的 根 拠の ない薬 効 宣 伝;
主 要な副 作 用 を 挙 げない 宣伝
は一
種の誇 大 広 告で あ「
馨
〉と さ れ よ う。
.
1広
告 ・
宣伝
1特
に テ レ ビ等の大衆
向吋
情
報伝
達に は,
特に注 意 が 払 われ てい るのが現 状であ る。 服 用 す れば健 康に な る が如きの誤解を与え る よ うな誇 大な広
告は禁 止されな け れ ば な ら な い で あろ う。
1医 薬 品の用 法 指 示 が 適 切であっ た と して も
,
こ う した誇 大 広告
が な さ れ るな らば , 医薬 品に 瑕 疵 が ある と考
え ら れ るの である。 〔1
} 高 橋 眺 正 他,
「食 品・
薬品 公 害 」,
昭 和49
年9
月30日再版 第二刷,
有斐閣 選 書,
143頁参照。91
N工 工一
Eleotromd LlbraryHokuriku University
NII-Electronic Library Service Hokuriku Un ]
’
versl ゼy 丶1
三 浦
泉 (
2
} たとえ ばこ の点につ いて, 福 岡ス モ ン判 決 は,
医 薬 品の特 性 を 論 ず る な かで, 医 薬 晶 が 有 す る と考え られる有 効憾と副作用とを勘案の う え有 用 性とい う概 念 を用いて
,
医薬品の 「有用 性」を判 定 する 場合に考慮 すべ き副 作用の評 価は , (1
)効 果 とのバ ラン ス 〔2
)代用薬の 有 無 {3
)副作用の症状の重さ 〔41病 気の重さ とのバ ラ ン ス 〔5〕 副作用の可 逆 性 副作用の頻度 〔7慮 者の特 殊な状 態とのかかわり等々 と し 「有効性の認定に
際
して は,
厳 格に, 副 作用の発 現可能 性の認定に際 して は,緩か に判 断」 Lされるべ しと判 示し てい る の である
。
(判 例 時 報,
910号93
〜
94頁 参照)。
(3
) 植 木 哲,
「製 造 物 責 任」,
加 藤一
郎。
米 倉 明 編 『民 法の争 点 』,
ジ= リス ト増 刊,1978
年 7月20日号,
333
頁参照Q 四 高木多喜男他著,
「民 法 講 義6
不 法 行 為 等 」 昭 和52年6月30
日初 版,
有 斐 閣 大 学 双 書,
313〜
314頁。 山口浩一
郎,
「医薬 品 製 造 者の民 事 責 任 」, 唄 孝一
,有 泉 亨 編 『現 代 損 害 賠 償 法 講 座4
医 療 事 故・
製 造 物 責 任 』
,
日本 評論社,
昭 和49 年11月
30日版,454
頁参照。 山口。
前 掲 論文,
455頁参照。 〔7〕 津田恭 介,
野上寿 編,
「医 薬 品 開 発 基 礎 講 座〔1},
医 薬 品 開発
概 論 」昭 和45年12 月 1日初 版,地人 書 館,38
頁 参照Q 平井 俊樹,
長友紀介,
「医薬品の開 発におけ る法規 則」,1978
年,
ファル マ シ ア,
レ ビューNo.
1 ,76
頁 参照。
(9
) ち な み に, この通 達で は,新薬の製 造申請 時に は次の ような資料を 添 付し なけれ ば な らない.
とさ れ てい る。 〔1
}医 薬 品につ いての起 源 又 は発 見の経緯及 び外 国での使 用 状 況 等に関 する資 料 医薬 品に Iつ い て の構造決定, 物理的 三化学 的恒数及 び その基 礎実験資料並びに規格及 び 試験 方法の設定に 必要
な資 料
〔3)医 薬 品につ い て の経 時 的 変 化 等 製 品の安 金 性に関する資 料
急 性 毒 性に関する試 験 資 料 【5)亜 急 性 毒 性及び慢性 毒 性に関す る試 験 資 料 (
6
〕胎 好 試 験 (人 体に直 接 使 用 しない場 合 を 除 く)その 他 特 殊 毒 性に関する資料 (7)医薬品につ い て の効 力 を裏づける試 験資料 〔8
)一
般 薬理 に関する試 験 資料
〔
9
阪 収,
分 布,
代 謝及び排泄に関 する 試験 資料ao
臨 床試験成
績資料 (精 密かつ 客観 的な考 察が な さ れて い るもの であること)。 これ ら製 造 承 認 申 請のた めの添 付 資 料は膨 大な もの とな る。 これは医 薬 品の開 発 が 厳 密 な 試 験
,
実験を要求 す るもの であると共に,
細 心の注 意 を義 務 付 けるもの であ る。
した が っ て こ の開 発の手続上な に か不 完 全な点が あれ ぼ, そ れ は暇 疵 ある医薬品の作 出にっ な が ヨ ることに留 意し なけ れば な らない。 (日本 公 定 書 協 会 編,
「医 薬 品の製 造 承 認に関する基 本 方 針につ い て 」薬発591号,
昭和46年 6月29日一
部改正,
製 薬 関 係 通知集,
1964年 版,
薬 業 時 報 社発行,
105
頁 参 照。
)。
qo
} 吉田甚 吉 著, 「医 薬 晶 業 界 」 産 業 界シ リー
ズ (24), 教 育 社 新 書, 52〜
54頁 参 照。 こ の通 達は,
5章 か らな り,
1
章 総 則,
2章 製 造管 理,
3
章 品 質 管 理,4
章 構 造 設 備,
5
章 品 質 等 に関 する苦 情処理 につい て等々 の基準内容を詳細に明記 してい る。
詳し く は,
日本公定書 協会 編, 製 渠 関係通知 集, 1978年 版, 薬業時 報社,
351頁以下を参照さ れ たい。
〔12} i⊥1口YI
”
ltil掲論文,
458頁 参照。
〔13
) ちな みに, わ が国で は 「医薬品の 副作用 報告につ いて 」昭 和46年11月15日 (薬 発第 1059号 )の通 達 に よ り,
昭 和41年 度より医 薬 品 副 作 用 制 度 を 発 足さ せ た。
そして昭 和42
年 度 以降の新開発 医 薬 品について は, 医薬品 製 造業者及び輸入業者に当 該 医
薬
品の承認許可後一
定 期間 (3.
年 聞 )を 定 めて,
〔1
床.
知の副 作月1
, 〔2)既知の副 作用であっ て重篤な もの, (3
}既 知の副作用 であって,
その副作用の発生頻 度 程 度, 症 状 な ど が 従 前 知 られているもの と著 し く変 化 した ものなどにつ いて厚 生 省 薬 務 局 長に報 告す92
N工 工一
Eleotronio MbrapyHokuriku University
NII-Electronic Library Service Hokuriku University
ノ
丶 医 薬 品 の 製 造 物 責 任.
る義 務 を 課して い るのである
。
また,
国 内,
国 外の情 報 を容 易に速 みや か に収集 する ことを目途 として
,
昭 和41
年に医 薬 品の副 作用
モ ニ ター
制 度が肇
足し たの で あ る。
(日本公定 書 協会編 製 薬 関 係通知 集
,
1977
年 版,
271
頁 参照。
)。.
’
』
q
の=般に 「製 造物に危険で あ る
場
合, その危
険がすでに一
般
に知ら れて い る (明白な)場 合に は, 警 告 す る義 務 は ない」、
(森島 昭 夫,
「製 造 物 責 任に おける警 告 義 務 」ジュ リス ト,
684
号,
56頁 ) と言 われ ている が
,
医薬品の場 合,
i果 た し て それで よいであろうか。
筆者は本 文の ように考 える の である。’
もっ と
・
も医 師・
薬 剤 師の専 門 家の 過 失 を 論 ず る場
合は また別である。一
般に広 く知 られてい る危 険 は,専 門 家 (医師
,
薬剤 師等 ) な ら当 然に知ら
ていな けれ ば な らない。 した がっ て専 門 家 が 知 らずに投与 量の過 誤 を 犯 し, 患者に傷害 を与え る な ら, そ れ は職業 上の過 失の 問 題 と な るであ ろ う。 (15
}森 島・
前掲 論 文 囲 矼3
), 56頁。U6
) 判 例 時 報,
907
号,37
頁 参 照。1
ノ
.
.、
−
q7
) 詳し くは,小
林大三郎f
薬の広告 規制と消 費者保 護 」ジュ リス ト,
『特 集 薬 害』547号,
74頁〜
80頁を 参照 さ れたい
。
な誇日本 製 薬 団 体 連 合 会で は」「広 告に関する自 粛 要 綱 」 (昭 和39
硫10刀16EP,一
医薬 品等の 「使用上の注 意」表現にっ い て の申合せ一
等』
(昭和47’
ff
・
3E
17日)の 自主 規制を して いる。
また,
厚 生 省 薬 務 局 長通 達として 「医 薬 品 等 適 正広 告 基 準」(11召和39年8月10EI,
薬 発 留9号,
改 正 昭 和46年11月 1・
日, 第946
号 )が な さ れて いるので合わ せて 参 照さ れ た い。
(18} 山、
口・
前掲論 文, 463頁。皿
医
薬
品 製
造業 者
の責 任 .
ノ製 造 物 責 任におい ては, 近 来, 製 造 者は, 「製 造
物
の瑕 疵につ い て製 造 者に 過失が あ るな ら ば,民法709 条 (
製造者
A
が消費
者C
に対 して )によ
る不 法 行 為 責 任 を 負 う (〕
) と説 か れている。 (2) これ炉
一
般 的傾向
で あ る。.
.
・
』 、
製 造
物責
任の法理諦
的展關は, わが国では, 昭 和31
・2 年
か ら始 まる外国法
の紹介,
そ して 昭 和40
年におい て 「注釈民法
」 }と
不法
行為
の一類
型 と して製 造 物責
任が取 り上
げ られ讐
以来
;
と み に充 実 してきた観がある。 いわゆ る新 しい問 題で ある。 しか しこ.
れに関 する 理 論 は,
公害
事
件の発 生 と歩調
を合わ
せ る かのように多彩
な展開
を 見せて き た。 公害
問 題を
中 心 と した学説・
判 例が食 品・
薬品
事 件に も影 響 して, 判 決に組み入れ ら れて き たのである。
そ し
七
製
造物責任
に お いて は,類
型 的考察
が な さ繍
)た と えぽ
交 通 機 関, 機 械 器 具類
食 品,
薬 品 事件
等の類 型に分 けて, それな
れの事 情の相 異か ら,各
々異
な る責任
が課せ られ るのL であ る。
本 稿 は主 題 を 医 薬 品の
製
造 物 責 任に限 定 し,一
般の製 造物責
任の法律構成
,根
拠な ど は論 じ ない。
とこ ろで医 薬 品の 場 合,
そ の対 象が人 間の 生 命・
身 体に重 大な影 響 を及
ぼす
ゆ え に,他
の製
造物
と異な り, 製 造 者に対 して特殊
な使 命と責任
が課
せ ら れて い る と考
え ら れ る。こう した点 を考 慮 しなが ら, わ が 国の 食 品
・薬
晶の 製 造物
貴 任訴訟
は,
法律 構 成で は,t
今 日 の ところ民法709 条
の不法
行
為
貢 任を根 拠と して い るの で ある
%
)’
そ こで以下,
薬 害 事 件に おける過 失の問題につ い て検 討 してみ たい。 (一
)民 法
709
条の過 失につ いて 周 知の ご とく,
不 法 行 為 責 任は,
故 意ま
たは 過 失 がなけ れ ば成 立し
ない のが原 則で あ8
) ,1
言93
N工 工一
Eleotronio LibraryHokuriku University
NII-Electronic Library Service Hokurlku UnlverSity 三 浦 泉
’
t7) わ ゆ る 過朱 責 任 主義
と よ ばれて い るの である。 自 己の行為
に過 失が あることを根
拠と して,自
己の行 為につ い ての み責
任 を負
うヒと を原 則と してい る の であ話
碧
伝 統 的 適 説で は
,
過失と は 「違法な結 果を予 見 すべ きである に もか か わ らず 不注
意の た め に これを 予見 しないとい う心 理 状 態 (内 心の 状 態 )である (S
) と定 義付
られて い る。
こ の意 味 する ところ を幾 代
教
授の説 述を か りれば,
これは心 理 状 態と みるか行 為 義 務 違 反 と みるか は哲
学 的 思考
や表現
の問
題と して,
い わ ば 心 理状
態を 「結
果 発 生を予 見 すべ きべ あるの に 不注意で予 見 し な かっ たこ とを 過 失と考 えるか ら,
予 見 可 能 性の あるよ うな結果 につ いては,
当 然その発 生 を 防 止 しない し回避
すべき
行 為 義 務 (作
為ま た は不作為
の義務
)で あ謂
) と解
さ れ, 予見可 能 性 説と よ ば れてい る。 これ
が通 説 とな っ て い るの である。〔イ) こ の通説の立場を公 害 (薬 害 )賠 償 訴 訟に お い て主張されて い る の が 沢
井
裕 教 授で あ る。教授
は, 予 見 可能
性 説 と は 「損 害の発 生につ いて予 見宙
能
性 が あ れ ば)
t
不作為
を含
む ところ の損 害回避 措置 を と るこ と に よ っ て損 害を防ぎうる か ら,
予 見 可 能 性を もっ て終 局 的 損 害 回 避 (11〉義
務違反と して の過 失とみる考え 方 」 と説かれ, 義 務 違 反 と して の予 見 可 能 性説
の立 場 を と ら れ てい る。 ま た そ れ は論
理 的に考えて も「過 失の前 提 となる注 意 義 務な るものは 損 害 回 避 義 務 」 で あ り,
過 失 は 「結 果 を 認 識 すべ き 注 意 を 怠っ た ため に, 結 果 と して 損 害 を回避できな か っ た (12) こと を 意味
する。 し た が っ て,
過 失の本
質は損 害 回避 義 務 違 反に認め るべ きで ある 」と される。 こ の意
味 する ところは, 客 観 的 注 意 義 務 違 反 を 過 失の基本
と し, 予 見 義 務 と損
害 回避 義務 を要件
とする伝統
的理論に基づ く過 失 論 といえよう。l
予見可 能であ れ ば損 害を回 避できる であ ろ うし, 予 見が可能で なけ れ ば
損害
を回避で きない であろ う。 予見が可 能で ある場合
は注 意 義 務をつ くせ ば損 害の発 生 を防
ぐこ と がで き るであ ろ う し, 注 意鞭
務 を 懈 怠す れば,損
害が 発生 するこ とは明 らか
で ある。 いかに して損 害の発 生を 防ぐ かを 考え た場 合,
予 見 が 可能であ れば 損 害 を回避 するだけの注 意 義 務をつ くすこ と が必 要 と な ろ う。 過失は,
予見
が 可能で あ るに も か か わ らず,
注 意 義務
の 懈 怠にょ
り損 害 を発生させン
る とい う , 損害
の発 生に対 する回避 義 務の違 反, と考 えて よい の では な か ろうか。 注 意 義 務は厳格
な法的要件
と して要求
され,
驢
た と えば 調 査,研究義務
が関
連 学 問の水準
に達 して い るとい う立証が な される こと が最 低 条 件であろう。 現 在の学 問の最 高水
準を把 握 して い な かっ た といら
た笏
合
は,
調 査,研
究の 義務を尽
くさなかっ た とい え よ う。老
れによ っ て損 害を発 生さ せれ ば∫ 回避 義 務 違 反と して過 失が成 立 する と考え られ る。 そ れ は法 的 評 価で あ る。
回 防 止 義 務 違 反 説ない し回 避 可 能 性 説こ の立 場は 「
一
定の防止 設 備を施せ ば損 害の発 生を防 げたの に,
その よ う な防
止 設 備 を 施さ (13) な かっ たこ とをもっ て 過朱
」層
とみ るので あ る。こ の説に よれ ば, 逆に最 善の設 備 を 施 した な らば
,
結 果 的に回避
し え たであ ろ うか ら過失
が ない と言 うこと に な る。 し か し仮に最善
の設 備 を施
して も損害
の 回避が できない場合
もあ り得 るの で ある。単
に防 止 義 務 違 反 とするに は抽 象 的で, 回 避で きる予 見 性があっ たか 否かの 問 題 を導 入 しなければ な らない の ではなか ろ うか。 この 説の 問 題に な る点
は 「最善
の防
止 設備
」 を (14) すれ ば免責
さ れ るこ と にな るの で,加害者
の立場
に偏
し,被害者
の保 護に欠け る おそれがある ことで ある。』
新 受忍限 度 論こ の立場は 「
被害
者が被
っ た損害
の種類 ・程度
と加害
行為
の態様 ・損害
の 回 避措
置な ど加害
94
N工 工一
Eleotronlo LlbraryHokuriku University
NII-Electronic Library Service Hokurlku UnlversiEy 医 薬 品 の 製 造 物 責 任
者側
の諸要
因,
そ れ に 地域性
な どの その他
の諸 要 因を比較衡
量し,
損害
が 「受 忍 限 度 」’
を越 え て い ると 認め られ る場合
には;
予 見可能 性の有
無にか か わ らず, 過失
を認め覇
) とするの であ る。
回 の防 止義務違 反 ない し回 避 可 能 性
説
で述べ たご とく , 最 善の 防 止 措置
を施
しで
も損害
の発 生 が不 可 避であった
場 合,
侵 害 性の重 大 性その他の 事 情か ら損 害が受 忍 限度を越 える と判 断さ れ続薯
責任
を認 め よ う とするの がこの 立場で あ る が,
そ れ に は 予 見可能性
は必要
と し ない とす るの で ある。 薬 害な ど を発 生さ せ る近 代企業に予 見 可 能 性を要 求 する に は,
限 界があるように 思 わ れる が, 損害
の衡 平な分 担の原 則か ら言
っ て, 加害
者 側の予見 義 務 (調 査, 研 究義務
)の 問題 を注視
し なけれ ば ならない であろ う。、
(二 ) 医 薬 品製造業 者の 過 失さて
周
知の ごとく,北 陸
ス モ ン裁判
をは じ め とす
る他
の ス モ ン裁判
(福
岡,東京
,広 島
, 北 海道,
京 都,
静 岡 等々)は犀
薬 品 製 造 業 者に対し,
民 法709
条に基づい て過 失 責 任が追 及さ れ たの で ある。
これ ら は, 伝 統 的過 失理論の導 入 をは か り、 予 見可能 性 と損 害 回 避 義 務 (
防
止 義務
)違 反に その責 任 を 求 めているものである。そこで主に
,
北陸ス モ ン判
決を中
心 と して医薬
品 製造業
者 の過失
につ い て検 討 して み たい。(
な お判 決 文
の参 照は北陸
ス モ ン訴 訟 第一
審 判 決 , 判 例 時 報, 昭 和53
年4
月21
日号,22
頁〜
59 頁に よ っ た。 )。 r (A
) 医薬品製 造 業 者の注意義 務民 法
709
条
に基づ く過失責任
に は, 過失
の前提
と しての 注 意 義務
が求 めら れ てい る。注
意義
務の 性 質によっ て具 体 的 過 失.
と抽 象 的 過 失が問 題 と なり,
不 法 行 為の場 合には,
抽 象 的 過 失の み が 問 題 と なる。 そ の基 準は,一般
本
, 普通人の 注 意 程 度であるが, (た とえ ば薬 品・
食品
に お けるよ うに) 生 命・
身 体に直接
被害
を 与え る製 品の 製 造業者
に は 重 い注
意 義務
が 課せ ら れて い (零
と言え るで あ ろ う。 (前 述のH
の(/・
}を参 照 )。本件
ス モ ン裁判
に お い て は,勿論医薬品
が生命 ・身体
に直接関係す
ることは
誰
れ もが認め る ものぞ
あ り,.
医 薬品
は本 来 危 険 性 を 内 在さ せ てい ること は, 現在で は当然 熟 知さ れて い るこ と で あ る。 そ れ を製
造 販売
する医薬品製
造業者
は その有効性 ・安
全性
を十分
に把握
する義
務があド
る。こ の 点 を 原
告
は力説
して, 医薬
品 製造業者
は 「世 界 最高
の学問的水 準に よ る調 査,
研 究 義 務 を負
っ て おり,
国 内外の 文 献 調 査,
動 物 実 験,
その他 各 種 試 験を行な っ て,
医薬 品の安 全 性を確
認 し な け れ ば な ら ない 」と して 「製造販 売 開始
時の み な らず,
そ の後
も 追跡 調 査 研 究をする 義 務を負っ て い る」 と主 張 した。 これに対 し, 被 告 製薬
会 社 らは,
「その販 売 す る医 薬 品にっ いて は,安
全 性 を 確保
する た めの注 意義務
並 びに発売後
に お け る追跡
調 査 をレ
,場
合に よっ て は適 切な措 置 を す る」 義 務 を 認めな が ら も, 具 体 的 内 容につ い ては, 「そ の時々 にお ける医 学・
薬
学の水準
,医薬
品の安
全 確保の た めの社会的管
理体
制 等 具体
的 事情
との関 係に おい て決
定さ れるべ きで あ り,
医薬 品に は絶 対 安 全とい う もの は ない 」の である か ら 「絶 対 的 安 全 確 認 義 務 を要 求 するのは相 当でない 」 と反 論 したの である。95
N工 工一
Eleotronlo LlbraryHokuriku University
NII-Electronic Library Service Hokurlku Unlversl
’
ty 三 浦泉 丶
本件判
決は まず
「医薬
品は自
己矛盾
的も
しくは両 刃の剣 的 性 質 を 有 する もの で あっ て , 医 薬 品の安 全 性は医 薬 品の 有 する性 質の 故に, か えっ て一
層厳格
かつ 慎重に確保さ れ るべ きで ある」 とし 「……
医薬
品製
造業
者は,
医薬 品を製 造,
販 売 することに よっ て 利 潤 を 得て い ること を 鑑 み る と, 医 薬 品 製 造の業 務に従 事 する者には安 全性
確 保につ いて条
理E
の注 意義
霧
が課
せ ら れ でい る1
と判 示し たの である。こ の安 全 性 確
保義務
と は,判
決に よ れば 「最高
の学
問的水
準に拠
っ た もの でなけ れば ならな い 」。 な ぜ な ら 「医 薬 品は直 接 人の生 命・
健 康 に か か わる か らで ある 」。,
安全
性
確 保 義 務の 具 体 的 内 容につ いては,
医 薬 品 自体につ い て科 学 的 確 認を し,
用法, 用 量, 効 能 をは じ め正 しい使 用 上の指 示 を すること。 @ 流 通 後 使 用 状 況 を 追 跡 調 査 する
。
囚
場合
に よっ て は警 告を発 する。
(→
安 全 性 確 保のために必 要 と考 え られる可 能 な 限 りの
方
法 を とる。こ の意味 する とこ ろ を
私
見で分析
す れば,
(イ}の正 しい使 用上の指
示は,
既述医薬
品の瑕疵の 面で説 述 したこと と璽 複す
る が,
正 しい使 用 上の指 示は,
医薬
品 と直 接か かわる
医師,薬剤師
に対す る 医薬
品 製 造業
者の徹
底 し た指 示 義 務で あ る。
す くな く と も用法
指 示が医 薬 品 製 造業
者か ら正 し
く副作
用等
の情報,注意
が伝
達さ れて いた か否かの問題 がこ の正しい使
用 上の指 示の 意 味で
あろう。.
‘
第二 に
大衆薬
に対
し, ラベ ル ,能書等
に 正 しい使
用上の指
示が な さ れて い る か否かで ある。 ズ消費
者は, 薬の知 識, 情 報を得
る機
会が なく, そ の た め無 防 備 状 態にあ り, 医 薬 品の安 全 性に つ き,
これ を判 定 する能 力に欠 けて い る のが実 情である。 こ の一
般 消 費 者に服 用k
の注 意 を詳 細に指 示 する義 務,
これ が使用上の指 示で あ る。同の 流 通後に追
跡
調査す る義務 は,
医薬品 は, 製 造, 販 売 が許 可さ れ, 市 場に 流 通 さ れ た な ら, 人間の 生 命・
健 康にあ まり関 係の ない一
般の 生 産 物の ように流 通にまか せて しま う製 品 と t 異 なるの は当 然で あろ う。 医 薬 品の開 発 当 時の未 知の副作
用につ い て販 売後数年
を経
て副作
用が発 見 さ れる場 合 も あ り得 る ごとで あ り
,
全 く副作
用の ない薬
はない と言
わ れて い る医薬
品の特
殊
性を考え る な らば,
医 薬 品の販 売 後 も,
医 薬 品 製 造 業 者は, 有 効 性・
安 全 性 と副 作 用について, その持つ 研 究
設
備,
ス タヅラ,情報
量を駆使
して研究す
る と同時
に,販売後
に発 見さ れ一
る 副 作 用の情 報 (ささいな もの も) を 調 査 し, 報 告 (副作
用モ ニ ター
制魔
新薬
につ いて は発
売
後
三年)するこ と は勿 論,
そ の後 も継 続 して,
販 売されて い る限 り,
追 跡 調 査 する義 務があ ると言え よ う。の
警
告を発 する義 務は前 述の〔イ)に おい て と同様
の意 味を含む が,
医 薬 品 製 造業者
は,
医薬
品の有 効 性
・
安 全性
のみを 強 調す
るのではな≦
その副作
用につ いて も警告す
ると
い うことである。 医 薬 品 製 造
業
者 も利
潤 を上 げなけ れば な らない こと
は認め な が ら,
その社 会 的に特 殊な業
種で あ るこ とを
考
え合
わせれば,単
な る利
益集
団では ない。 その 置か れ た社
会的責任
の 重さを考えれ ば そ の医 薬 品の副
作
用につ い て使 用 者である医 師J 薬 剤師
等に詳 細に警
告を発 する
(一
般 消 費 者に も同様で あ る が) 義 務があるとい え よ う。 o o eロ
e(=)
厂安全 性確 保のた めの
可
能な限 りの方 法を と る」と は どの ような もの で ある か 。 北 陸スモ ン判 決は明 示して いないが, こ の点に関 して福 岡ス
蓍
ン裁 判 は,
これを 「安 全 性確 保のた めの具 体 的 注 意 義 務」 と して 北 陸スモ ン判 決より具
体
性 を 持たせているので参考
のために付
記 し96
N工 工一
Eleotronlo LlbraryHokuriku University
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