Title
「スポーツマンのこころ」の講義理解後のスポーツ実践が
生きがい感と自尊感情へ与える影響( 内容と審査の要旨
(Summary) )
Author(s)
髙橋, 正紀
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学) 乙第1461号
Issue Date
2012-11-21
Type
博士論文
Version
none
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/48074
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏名(本籍) 学 位 の 種 類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与要件 学位論文題目 審 査 委 員 髙 橋 正 紀(神奈川県) 博 士(医学) 乙第 1461 号 平成 24 年 11 月 21 日 学位規則第4条第2項該当 「スポーツマンのこころ」の講義理解後のスポーツ実践が生きがい感と自尊 感情へ与える影響 (主査)教授 永 田 知 里 (副査)教授 塚 田 敬 義 教授 藤 崎 和 彦 論 文 内 容 の 要 旨 本研究の目的は,スポーツ実践者がスポーツへの正しい理解を持つことを目的に構成された「ス ポーツマンのこころ」の講義を学習した上で一定期間に競技性を持つゲームを中核としたスポー ツ実践を行った場合に,どのような精神面への影響があるかを生きがい感(PIL テスト:part-A; 以後PIL-A)と自尊感情(Rosenberg 自尊感情テスト日本版;以後 RSES-J)の2つの側面から 調査することである。 【対象と方法】 調査対象者は,2011 年 4 月~7 月の間に筆者がスポーツ指導を担当した3つのスポーツ講座の 参加者 122 名(女性 31 名男性 91 名,18 歳~61 歳,平均年齢 24.80 歳±11.01)であった。3 つのスポーツ講座および各講座の参加者等の詳細は,K精神障がい者通所作業所が開催した「ボ ール運動エンジョイ教室」参加者17 名(女性 5 名男性 12 名,24~61 歳,平均年齢 45.8±10.40 歳 統合失調症15 名双極性障害 2 名):以後 A 群,O医師会看護学校 必修科目「体育実技」受 講生32 名(女性 17 名男性 15 名,19~43 歳,平均年齢 28.5±7.66 歳):以後 B 群,G大学 選 択体育実技科目 「スモールサイディッドサッカー」受講生73 名(女性 9 名男性 64 名,18~22 歳,平均年齢 18.2±0.67 歳)以後 C 群であった。それぞれの講座への参加者は,実技実践の開 始前に,各参加者がそれまでに持っている可能性の高い「スポーツ理解への歪み」を修正するこ とで「勝利を志向して・真剣に・仲間や相手と・ルールを遵守して・楽しく」ゲームを行えるこ とを目的に行われた 1 時間の「スポーツマンのこころ」の講義を受講し,その後に 10 回(週 1 回 90 分)程度のボールゲームを中心としたスポーツプログラムを行った。講座開始前と講座終 了後にはPIL-A および RSES-J テストを行い,講座終了後には,「スポーツマンのこころ」の講 義により各参加者のスポーツ実施態度が改善したかどうかのアンケート調査をした。 【結果】 「スポーツマンのこころ」の講義の理解が自身の実技実施態度に影響があったかというアンケ ートに対して,「非常に影響があった」「影響があった」と答えた者の合計は104 人(n=122)で であった。「非常に影響があった」と答えた者の割合が最も高かったのは B 群であった。また, すべてのグループにおいて「影響がなかった」と答えた者はいなかった。 講座開始前と講座終了後のPIL-A 得点の変化は,全体で講座前⇒講座終了後に増加し,t 検定 によって有意差が認められた(p<0.001)。グループ別の PIL-A 得点の変化は,A 群,B 群,C 群 [ ]
のすべてのグループにおいて講座前⇒講座終了後で増加し,t 検定によって有意差が認められた。 (A 群:p<0.01,B 群:p<0.001,C 群:p<0.01) 講座開始前と講座終了後のRSES-J 得点の変化は,全体で講座前⇒講座終了後で増加し,t 検 定によって有意差が認められた(p<0.001)。グループ別の RSES-J 得点の変化では,A 群,B 群 において講座前⇒講座終了後で増加し,検定の結果有意差が認められたが,C 群では講座前⇒講 座終了後でその増加に有意差が認められなかった。(A 群:p<0.05,B 群:p<0.001) 実技前の講義が実技実施に与えた影響への質問に「影響がなかった」と答えた者がいなかった ため,「非常に影響があった」=影響大,「影響があった」=影響有,「多少影響があった」=影響 小の3 グループに分け,それぞれのグループにおける講座開始前と講座終了後の PIL-A 得点およ びRSES-J 得点の変化をみたところ,PIL-A 得点,RSES-J 得点ともにすべてのグループにおい て増加したが,t 検定によって有意差が認められたのは PIL-A 得点においては影響大(p<0.001) および影響有(p<0.01)のグループ,RSES-J 得点においては影響大(p<0.001)のグループで あり,PIL-A 得点における影響小のグループと RSES-J 得点における影響有と影響小のグループ ではその増加に有意差が認められなかった。
講座開始前と講座終了後の男女別でのPIL-A 得点および RSES-J 得点の変化をみたところ,男 女共にPIL-A 得点,RSES-J 得点が増加し,t 検定によって有意差が認められた(PIL-A:女性 p <0.05,男性 p<0.001,RSES-J:女性 p<0.01,男性 p<0.01)。 【考察と結論】 本研究では,競技性を持つボールゲームを中心としたスポーツ実践を,スポーツ実践者がスポ ーツへの正しい理解を持つことを目的に構成された「スポーツマンのこころ」の講義を学習した 上で一定期間行った場合にどのような精神面への影響があるかを,PIL-A 得点の合計点と RSES-J 得点の合計点の変化によって検討した。その結果,参加者全体では PIL-A 得点の合計点 と RSES-J 得点の合計点が共に有意に増加する(PIL-A:p<0.001,RSES-J:p<0.001)こと が認められた。その際,「スポーツマンのこころ」の講義が参加者に与えた影響は,アンケート調 査の結果から非常に高い確率(影響有以上85%,影響無 0%)で講義が目的としたスポーツ理解 の歪みの修正に寄与していることが示された。さらに,影響の程度(大・有・小)とPIL-A 得点 の合計点とRSES-J 得点の合計点の変化の関わりからも,講義について「非常に影響があった」 と答えたグループにおいてのみPIL-A 得点の合計点と RSES-J 得点の合計点に有意な増加が認め られ(PIL-A:p<0.001,RSES-J:p<0.001),「多少影響があった」と答えたグループではPIL-A 得点の合計点とRSES-J 得点の合計点には有意な増加が認められなかったことから,講義の影響 によるスポーツ理解の歪みの修正が実技へ取り組む態度の変化につながり,態度の変化の上での スポーツ実践が生きがい感や自尊感情の向上に結びついている可能性が認められた。 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨 申請者 髙橋正紀は,スポーツ実践による参加者の精神面での改善という成果を「スポーツマ ンのこころ」の講義とスポーツ実技をセットにして実現した点と,スポーツ実技の内容に競技性 を持ったボールゲームを採用した点においてオリジナリティを示し,スポーツ実践以前に正しい スポーツへの理解を持つ講義の必要性に対しての知見も示した。本知見はスポーツ医科学の進歩 に少なからず寄与するものと認める。 [主論文公表誌] 髙橋正紀:「スポーツマンのこころ」の講義理解後のスポーツ実践が生きがい感 と自尊感情へ与える影響 スポーツ精神医学9, 59-67(2012)