Title
シャトルボックス高回避系および低回避系ラットの内分泌
学的研究( 内容の要旨 )
Author(s)
浅井, さやか
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(獣医学) 甲第169号
Issue Date
2005-03-14
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/2223
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏 名(本籍) 学 位 の 種 類 学 位 記 番 号 学位授与年月 日 学位授与の要件 研究科及び専攻 研究指導を受けた大学 学 位 論 文 題 目 審 査 委 員 浅 井 さやか(東京都) 博士(獣医) 獣医博甲第169号 平成17年3月14日 学位規則第4粂第1項該当 連合獣医学研究科 獣医学専攻 東京農工大学 シャトルボックス高回避系および低回避系ラットの内 分泌学的研究 主査 東京農工大学 教 授 田 谷 一 善 副査 帯広畜産大学 教 授 三 宅 陽 一 副査 岩手大学 教 授 小 林 晴 男 副査
東京農工大学
教 授 小久江 栄 一 副査 岐阜大学 教 授 武 脇 義 論 文 の 内 容 の 要 旨財団法人食品薬品安全センター秦野研究所において、太田らによりSprチgue-Dawley系ラ
ットからシャトルボックス条件回避学習試験の成績を基にして、Hatanoラットが作出され た。成績の良い動物をHatano高回避系ラット(HAA)、成績の悪い動物をHatano低回避系ラ ット(LAA)として、すでに40代以上にわたり分離育成されている。このHatanoラットは、 シャトルボックス条件回避学習試験以外にも、母性行動や精子の運動性に系統差があるこ となどが明らかにされている。本研究では、両系統の詳細な内分泌学的特徴を解明するこ とを目的として、雌では発情周期中と泌乳期中、雄ではストレス負荷時およびシャトルボックス条件回避試験実施時における内分泌学的相違について換討した。
第1章では、緒論としてぬtanoラットの特徴、視床下部・下垂体・性腺軸、視床下部・下垂体・副腎軸、ストレスによる生体の内分泌反応等について記述し、本研究の目的を述
べた。 第2章では、本研究に共通する実験材料と方法について記述した。 第3章では、雌の発情周期各ステージにおける血中各種ホルモン(黄体形成ホルモン(Lめ, 卵胞刺激ホルモン(FS出,プロラクチン,エストラジオール,プロジエステロン,インヒビ ン)濃度を測定し、卵巣組織像を調べた結果を記述した。HAAはLAAよりLHサージと血中 ェストラジオール濃度が高く、逆にプロラクチンサージとプロジエステロン濃度が低いこ とが明らかとなった。また、LAAでは、HAAに比べ黄体の退行が遅れ、卵胞発育が抑制され ている事実が明らかとなった。これらの結果から、両系統間では、発情周期中のホルモン-194-分泌パターンが異なり、卵胞発育と黄体機能に明らかな差がある事実が判明した。 第4章では、乳子による吸乳刺激を与えた場合の母親における内分泌学的変化を比較し た結束を記述した。HAAは、LAAに比較して副腎皮質刺激ホルモン(ACTfI)、プロラクチンお よびオキシトシンの分泌量が多い明.らかな系統差が認められた。また、H舶はL舶に比べ て吸乳刺激負荷による視床下部正中隆起部のドパミン分泌量が多いことが判明したこと。 以上の結果からこの2系統には、ドパミンなどの神経伝達物質の分泌能に差があるものと 推察された。 第5章では、雄ラットの拘束ストレス負荷前後の血中、下垂体中および副腎中各種ホル モン濃度を測定した結果を記述した。HAAでは、LAAに比べて下垂体からのACTH分泌能が 高く、プロラクチン分泌量が低い事実、また、副腎からのコルチコステロン分泌量が低い 事実が判明した。 第6章では、ストレスによる両系統の感受性の差についてさらに調べる目的で、胃潰瘍 の形成に関与している脈絡層および室傍核中のプロラクチン受容体の発現を比較した結果 を記述した。LAAは、H舶に比べて、胃潰瘍発症率が少なく、血中プロラクチン濃度が高く、 かつ室傍核中のプロラクチン受容体の発現量が増加している事実が明らかとなった。以上 の結呆から、プロラクチンは、ストレス性胃潰瘍の抑制に重要なホルモンであることが判 明した。 第7章では、Hatanoラットの内分泌学的な系統差やシャトルボックス条件回避試験によ
る成績の違いは、中枢の神経内分泌学的な差異によるものか否かを調べる目的で、シャト
ルボックス条件回避試験前後における脳の各部位偏桃体・重傍核・正中隆起部)の学習・ 記憶に関連する脳内物質含有量(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CR8)・アルギニンバ ソプレシン(AVP)・チロシン水酸化酵素(TH)活性・ニューロペプチド(NPY))を比較検討した 結呆を記述した。正中隆起部のCRHおよびAVP含有量は、HAAがLAAより多いことが判明 した。また、室傍核内CRH含有量がシャトルボックス条件回避試験後に、H舶では試験前 に比べて増加したのに対し、LAAでは試験前に比べて減少した。このような視床下部内で のCRHとAVP含有量変化の系統差は、血中ACTH濃度の差に反映され、学習・記憶の違いに 影響している一因であると推察された。 本研究で得られた結果を総括すると、艮仙.およびLAA両系統は、シャトルボックス条件 回避試験の回避率を指標として選抜された系統であるが、発情周期中の内分泌学的変化、 吸乳刺激に対する反応性、ストレスに対する反応性およびシャトルボックス条件回避試験 に対する内分泌学的反応性に明らかな系統差が認められた。こうしたⅢ仏とLAAの明らか な内分泌学的反応性の違いから、記憶に関してはACTH分泌能が、またストレス耐性に関し てはプロラクチンが重要な要因であることが判明した。 審 査 結 果 の 要 旨 本研究では、ぬtano高回避系ラット仙仏)および低回避系ラット(L舶)の詳細な内分泌学的特 徴を解明することを目的として、雌では発情周期中と泌乳期中、雄ではストレス負荷時およびシ ャトルボックス条件回避試験実施時における内分泌学的相睾について検討した。ン,エストラジオール,プロジエステロン,インヒビン)濃度および卵巣組織像を比較した。そ の結果、HAAはLAAよりLHサージが高く†逆にプロラクチンサージが低いこと、並びに、エス トラジオールが高く、プロジエステロンが低いことが明らかとなった。また、.L舶では、鮎Aに 比べ黄体の退行が遅れ、卵胞発育が抑制されていることが明らかとなった。これらの結果から、 両系統間では、下垂体からのL臥FSH、プロラクチン分泌パターンが異なり、その結果として卵 胞発育と黄体機能に明らかに差があることが判明した。 2.乳子による吸乳刺激負荷実験 乳子による吸乳刺激を与えた場合の母親における内分泌学的変化を比較するため、吸乳刺激後 の血中各種ホルモン濃度を測定した結果、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、プロラクチンおよびオ キシトシン分泌に明らかな系統差が認められた○また、視床下部正中隆起部におけるドパミン活 性に差があることが判明したことから、両系統における内分泌的反応性の違いは、ドパミンなど の神経伝達物質の生成能の差によると推察された。 3.雄におけるストレス負荷時の内分泌学的反応 拘束ストレス負荷による内分泌学的変化を比較するため、拘束ストレス前後の血中、下垂体前 葉組織中および副腎組織中各種ホルモン濃度(ACTH、LH、FSH、プロラクチン、コルチコステロン、 プロジエステロン、テストステロン、インヒビン)を測定した結果、ストレス負荷によるプロラ クチン分泌および下垂体・副腎軸の反応性に、明らかな系統差があることが判明した。また、LH、 FSH、テストステロンおよぴインヒビン濃度は、両系統ともストレス負荷による内分泌反応に差 は認められなかったが、FSH分泌に明らかな系統差が認められた。 ストレスによる両系統の感受性の差についてさらに調べる目的で、胃潰瘍の形成と胃潰瘍形成 抑制に関与している脈絡層および室傍核中のプロラクチン受容体の発現を比較した。その結果、 L舶は、仙-;比べて、胃溝瘍発症率が少なく、血中プロラクチン濃度が高く、かつ室傍核中の プロラクチン受容体の発現量が増加していることが明らかとなった。以上の結呆から、プロラク チンがストレス性胃潰瘍の抑制に重要なホルモンであることが判明した。 4.㈲こおけるシャトルボックス条件回避覿附こよる内分泌学的反応 本研究により明らかにしたHatanoラットの内分泌学的な系統差やシャトルボックス条件回避 試射こよる成績の違い臥中枢の内分泌学的差異によるものか否かを調べる目的で、シャトルボ ックス条件試験前後における脳の各部位偏桃体・童傍核・正中隆起部)を採取し、学習・記憶に 関連する脳内物質(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)・アルギニンバソプレシン(AVP)・ チロシン水酸化酵素(TH)活性・ニューロペプチド(ⅣY))含有量を測定した。その結果、正中隆起 部のCRHおよびAVP量はHAAがLAAより多いことが判明した。また、CRHの室傍核内含有量がシ ャトルボックス条件回避試験後に、臥Aでは試験前に比べて含有量が増加したのに対し、u仏で は試験前に比べて含有量が減少した。このような視床下部内での脚とA叩含有量の系統差は、 血中ACTH濃度の差に反映され、学習・記憶の違いに影響している一因であると推察された。 本研究で得られた結果を総括すると、=仙およびL仙南系統は、シャトルボックス条件回避試 験の回避率を指標として選抜された系統であるが、発情周期中の内分泌学的変化、吸乳刺激に対 する反応性、ストレスに対する反応性およびシャトルボックス条件回避試射こ対する内分泌学的 反応性に明らかな系統差が認められた。こうした内分泌学的な反応性の違い、特にAC取分泌量 の差が記憶の定着の差に反映して回避行動に関与しているものと推察された。 以上について、審査委真金貞一致で本論文が岐鼻大学大学院連合獣医学研究科の学位論文とし て十分に価値あるものと認めた。
-196-基礎となる学術論文
1)題 目:ReproductiveendocrinologyinHatanohighーandlow-aVOidanceratsduring
the estrous cycle
著 者 名:Asai,S.,Ohta,R.,Shirota,M.,Sato,M.,Watanabe,G.andTaya,K. 学術雑誌名:Endocrine
巻・号・頁・発行年:18(2):161-166,2002
2)題 目:Differntialresponsesofhypothalamo-pituitary-adrenocorticalaxisto
acute restraint stressin Hatano high-andlow-aVOidance rats
著 者 名:Asai,S.,Ohta,R.,Shirota,M.,Vatanabe,G.and Taya,K.
学術雑誌名:JournalofEndocr!nology
巻・号・貫・発行年:181(3):515-520,2004 3)題 目:Endocrinologicalresp?nSeSduringsucklinginHatanohigh-andloY二 avoidance rats 著 者 名:Asai,S.,Ohta,R.,Shirota,M.,Tohei,A.,Vatanabe,G.andTaya,K. 学術雑誌名:JournalofEndocrinology 巻・号・貢・発行年:182(2):267-272,2004 既発表学術論文 1)題 目:Acomparativestudyofpuberty,andplasmagonadotropinandtesticularhormonelevelsin twoinbred straind of Hatano rats
著 者 名:Sato,M・,Ohta,R.,KojiJDa,Ⅹ.,Shirota,M.,Koibuchi,H.,Asai,、S.,
Vatanabe,G.and Taya,K.
学術雑誌名:JournalofRepioduction andDevelopment
巻・号・貢・発行年:48(2):11卜119,2002
2)題 目:InductionofdifferenttypesofuterineadenocarcinomasinDonryurats
due to neonatalexposure to highーdosep-tqCtylphenolfor different periods 著 者 名:Yoshida,M.,Katuda,S.,Tanimoto,T.,Asai,S.,Nakae,D.Kurok叩a, Y.,Taya,K.amd Maekava,A. 学術雑誌名:Carcinogenesis 巻・号・貢・発行年:23(10):1745-1750,2002 3)題 目:Effectsofreductionofthenumberofprimordialfollicleson follicular development to achieve pubertyin female rats
著 者 名:Shirota,M.,Soda,S.,Katoh,C.,Asai,S.,Sato,N.,Ohta,R.,Watanabe,
G.,Taya,R.and Shirota,K.
学術雑誌名:Reproduction
巻・号・貢・発行年:125(1):85-94,2003
4)題 目:NMDA receptor antagonists reduce.restraint-induced release of
prolactinin male rats
著 者 名:Liu,J.X.,Du,J.Z.,Asai,S.,ShiZ.Q.,Watanebe,G.andTaya,K. 学術雑誌名:Neuroendocrinologyletters