• 検索結果がありません。

日本人学生の英語音声認識・意味理解の方法に関する一考察--リスニングストラテジー使用の観点から 利用統計を見る

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "日本人学生の英語音声認識・意味理解の方法に関する一考察--リスニングストラテジー使用の観点から 利用統計を見る"

Copied!
21
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

る一考察--リスニングストラテジー使用の観点から

著者

喜田 慶文

雑誌名

観光学研究

8

ページ

61-80

発行年

2009-03

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00005095/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

(2)

〔査読論文〕

日本人学生の英語音声認識・意味理解の

方法に関する一 察

リスニングストラテジー 用の観点から

喜 田 慶 文

1 はじめに

実際のコミュニケーションの場において、聴覚信号はしばしば不明瞭である。それにもかかわら ず、聞き手は話し手の発話の内容が理解できるのはなぜか。それは、私たちが持っている言語知識 で欠けている情報を埋めるからである(Buck, 2001)。しかし、日本人大学生対象の英語リスニング 指導において学生たちがこのストラテジーを十 に えるようになるまでには、多くの障害が え られる。例えば、学生たちは、他の L2学習者と同じく、“英語のストレスやイントネーションのパ ターンに慣れていない”(Ur:1984)し 、また語彙、文法その他の言語知識が十 でない場合が多 い。したがって、指導を効果的に行うには、学生がリスニングに有効なストラテジーを実際にどの ように、また、どの程度 用することができるのかを正確に理解しておく必要がある。 本稿では日本の大学の教室における適切なリスニング指導法の一助とすることを目的として、英 語を専攻としていない日本人大学生の中級英語学習者を対象に、短文を 用してディクテーション テストを行い、その結果の評価を数値化し、テスト参加者が文レベルで英語の音声をどのように認 識しているのか、そして聞き取った音声から意味をどのように、またどの程度理解しているのかを 析する。また、テスト参加者が聞き取りを成功させるために必要なリスニングストラテジーをど の程度 用しているのか、またストラテジーの 用が、もし限定的なものであれば、限定的にして いる要因は何か、を明らかにしていく。具体的には、以下の 2つの課題について、 析、 察する。 1.英語の語句および文レベルの聞き取りの過程で観察される学生(日本人中級英語学習者)の 音声認識、意味理解のストラテジーを明らかにすること。 2.学生のリスニングストラテジー 用において、有効なストラテジーの 用を限定的にしてい る要因を明らかにすること。 日本人大学生の中級英語学習者が英語のリスニングを行うとき、音声認識と文レベルの適切な意

(3)

味理解に必要なストラテジーとその運用の障害となっている要因を特定できれば、学習者のリスニ ング技能向上のための指導方や学習法に貢献できると えられる。

2 リスニングストラテジー

Bottom-up Strategy and Top-down Strategy

語認識では Marslen &Wilson(1980)のコホートモデルある。これによれば、単語の音響信号が 聞こえてくるにしたがって、可能性のない候補の語を排除していき単語を最後まで聞かなくても一 つの候補に ることができる。この場合、始めのほうは音響情報に依存した bottom-up ストラテ ジーを 用するが、進むにしたがい top-down ストラテジーに移り、終わりのほうでは音響情報には ほとんど依存しないで語を認識する。また、Rost(2002)では、(語の)音響構造の 析で他(の候 補)を排除しながら一つの候補にまで り込んだとき、すなわち聞き手が、もっとも有り得そう、 あるいは適切な候補と認めたとき語は認識される、としている。 文や談話レベルでは、聞き手が認識した音声から意味理解に至るには、bottom-up ストラテジーで は、まず個々の音(音素)から始め、この音素を語に結合し、句、節、文へと組み立てていく。こ のモデルでは聞き手、話し手、あるいはコンテキスト、などの外部情報を参照しないでコミュニケー ションは成り立つ(Flowerdew,J.and Miller L.,2005)。一方、top-down ストラテジーでは聞き取っ た個々の音や語よりもすでに持っている知識を利用して意味処理をすることに重点を置く。例えば、 実際の発話では語の音声が一部欠けていたり、雑音、あるいは無音になっているというのはむしろ 一般的である。しかしこのような状況でも母語話者の聞き手は “その言語の中で「あり得る」単語 は何かといった頭の中にある情報”(Ryalls,1996)を利用し発話を合理的に理解しようとする。An-derson & Lynch(1988)によれば、聞き手は言語信号における音響情報を利用するが、もし、音響 情報の他の情報が利用できなければ、その音響情報は発話された語を同定するのに質的に十 なも のにならない場合が多い。聞き取りは音響、音韻情報に有効な文法的、意味論的情報を加えること ができたときに、そしてこれらのすべての利用可能な情報源が同時的に利用されたときに、より効 率的に処理できる。したがって、能力のある母語話者は聞き取りを効率よく成功させるために利用 できるすべての情報を利用している、としている。 また、ストラテジーを音韻レベル、文法レベル、意味レベル、そして語用レベルのそれぞれ異なっ たレベルで並行的に う「相互(Interactive)」モデルがある。このモデルが階層的なモデルよりす ぐれているのは、bottom-up であれ、top-down であれ、個人の能力にあった方法で発展させていく ことができることである(Flowerdew, J. and Miller L., 2005)。

L2学習者のストラテジー 用の難しさ

しかし L2学習者は母語話者とは異なり、ストラテジーを 用する際にいくつかの障害が えら れる。Buck(2001)は Schneider and Shiffrin(1977)、Shiffring and Scheider(1977)を引用して、 認知処理には、自発的に制御し意識を向けて行う“制御された処理、”と意識しないで自動的に行わ

(4)

れる“自動処理”があるが、“多くの L2の聞き手は通常目標言語を部 的にしか知らず、したがっ て、言語処理も部 的にしか自動処理ができない”と指摘し、さらに、L2の聞き手には未知語、複 雑な文法、あるいは発話の速度など、他の問題もある、としている。

3.研究方法

3−1 テスト参加者 日本の大学 1年次に在学する英語専攻ではない学生32名。テスト参加者は入学時にプレースメン トテストとして受けた TOEIC Bridgeの平 点が146点(TOEIC 換算で441点)で、英語中級学習者 と えられる。 3−2 ディクテーション問題 ディクテーション問題は喜田(2006)の一部を 用し、20問題を作成した。各文 3語∼11語(発 話時間は0.8秒∼3.63秒)から成り、20問題中16問題は 3語∼ 9 語(発話時間は0.84秒∼2.623秒)を 書き入れるクローズドテスト形式とした(Appendix 1 参照)。 音声は 用した本に付属している CD を 用した。CD には英語母語話者(男女)によってナチュ ラルスピードで吹き込まれでいる。 3−3 ディクテーションテストの手順 リスニングの第 1の要素は音声の認識である(Oxford:1992)。したがって、まずテスト参加者が 英文の音声をどのように認識するのかを調べるために、テスト前に「できるだけ聞こえた通りに書 くように」と指示した。各文それぞれ 2回聞かせ、文が読み上げられた後、書き取るための時間を 十 に確保できるよう20秒のポーズ(無声時間)をおいた。次に、認識した音声の意味をどのよう に、またどの程度理解しているのかを調査するために、2週間後に同じ問題を 用し、今度は「聞い た英文の文全体の意味を日本語で書くように」指示し、各文とも読み上げられた後に前回と同じく 20秒のポーズを取り 1回だけ聞かせた。 3−4 データの処理方法 データの処理と評価 英文聞き取りデータの語句の 類と 析 得られた英文ディクテーションデータは各文ともできるだけ、音韻的にまとまっていると思われ るところ を区切りとして処理し、そのまとまりごとに誤り、欠損などのパターンに 類して、各問 題文ごとに整理した(Appendix 1)。この中から、語の音声認識のためのストラテジーを検証するた めに、聞き取り率の低かった語句をその特徴から、「短縮形」、「固有名詞」、「/l/,/r/を含む語」、「未 知語」、「発音の不正確な知識」、その他、に 類し、その認識率とその誤聴のバリエーションを 析

(5)

し、表示した。 音声認識率と意味理解率の評価 「文の音声認識率」、「聞き取った音声の意味理解率」を調べるために、英文ディクテーションは 原文の音声再現の正確さに応じて、また日本語訳は、意味伝達度に応じて、順序尺度で、2,1,0、 の評価付けをした。 英文ディクテーションのデータ(以下「DP」とする)は以下のように評価処理した。 正 確:ほとんど正確に音声を聞き取っている。(成功度の評価は 2とし、以下「PA」とする) 部 的:いくつか誤りが見られたり、欠損の部 がみられる場合があるが、その情報から発話内容 の一部、または困難を伴うが、全体を推測できる可能性がある。(成功度の評価は 1とし、 以下 PBとする) 不正確:ほとんどブランク、あるいは聞き取られた英文から原文の意味推測は困難で部 的にも推 測できる可能性は非常に低い。(成功度の評価は 0とし、以下「PC」とする) 日本語訳のデータ(以下「DU」とする)は原文の表している意味を正確に表しているかどうかに 応じて、以下のように順序尺度で、2,1,0、の評価付けをした。 成 功:原文の意味をほとんど正確に伝えている。(成功度の評価は 2とし、以下「UA」とする) 部 的:いくつかの誤りや、欠損の部 があるが、原文の意味を部 的には伝えている。(成功度の 評価は 1とし、以下「UB」とする) 失 敗:ほとんどブランクであったり、日本語訳が原文の意味をほとんど、あるいはまったく、伝 えていない。(成功度の評価は 0とし、以下「UC」とする) 音声認識率と意味理解率の関係 データは DP(音声認識)の 3つの異なった認識レベル(PA、PB、PC)はどの意味理解レベル(UA、 UB、UC)に散らばるのかを検証するために、問題 1∼20の各問題毎に、また、問題 1∼20の全問題 について、 析結果を DP−DU の評価をクロスさせ 9 つのカテゴリーに 類して表にした(表 1− 1、表 1−2)。 音声認識率と意味理解率の差異 データは DP、DU の評価付け(2∼ 0)の後、テスト参加者の「音声認識率と意味理解率」、及び この認識率と理解率の「差異」を調べるために、DP−DU の平 値、平 値の差異、平 値の相関 係数、について SPSS を 用して値を求め表にした(表 2)。 音声認識から意味理解のためのストラテジー また、日本語訳のデータを英文ディクテーション(音声聞き取り)データに対応させて 析し、 音声認識から意味理解に至るためにどのようなストラテジーが 用されているかを検証し、「直訳」、 「削除」のストラテジーを問題番号別にその標本数を表にした(表 3参照)。

(6)

尚、テスト文の音韻情報をより正確に把握するために、問題文の音声を「音声工房プロ」 を 用 して、文の強勢、文中のポーズ、隣接語の同化、発話時間等を調べ、結果 析の資料の一つとし、 その一部を巻末に資料として付した(Appendix 2)。

表1−1 音声聞き取りレベルと意味理解レベルのクロス(各問題) 各問題 n=30

NO. PA-UA PA-UB PA-UC PB-UA PB-UB PB-UC PC-UA PC-UB PC-UC

1 1 1 0 1 7 8 0 1 11 2 2 0 3 0 0 22 0 0 3 3 4 5 5 0 1 14 0 0 1 4 0 0 0 2 6 4 0 1 17 5 2 0 2 0 9 6 0 2 9 6 19 11 0 0 0 0 0 0 0 7 0 0 1 0 0 1 0 0 28 8 2 2 0 2 18 4 0 0 2 9 2 2 5 1 7 11 0 1 1 10 7 1 0 8 5 4 0 2 3 11 11 0 12 0 0 0 1 0 6 12 0 0 0 4 1 1 1 3 20 13 1 0 0 1 4 17 0 1 6 14 5 6 0 5 12 2 0 0 0 15 5 10 3 0 9 1 0 2 0 16 6 5 5 1 5 2 2 2 2 17 2 3 0 1 1 23 0 0 0 18 4 0 0 7 15 2 0 1 1 19 20 4 0 0 2 1 2 0 1 20 0 1 0 0 24 5 0 0 0 合計 93 51 36 33 126 128 6 16 111 表1−2 音声認識と意味理解のクロス(全問題) n=600 UA UB UC 合計 PA 93 51 36 180 (30%) PB 33 126 128 287 (48%) PC 6 16 111 133 (22%) 合計 132(22%) 193(32%) 275(46%) 600(100%)

(7)

4.結果の 析

4−1 語句の聞き取り 英文ディクテーションデータを 析(Appendix 1 参照)し、聞き取り率の低かった、語句を 類 すると以下のようになった:「短縮形」、「固有名詞」、「/l/,/r/を含む語」、「未知語」、「発音の不正 確な知識」、他。 *注:丸カッコ( )内は聞き取り標本数、半カッコ[ ]は主な誤聴例 は無認識 各問題 n=30 短 縮 形:【NO.3】I ll 文頭での音声認識率(16)[all(12)]、

【NO.1】I ll 文中(0)[I(4)、 (7)、and(3)、all(2)、our(2)] 固有名詞:【NO.7】 Tom(13)[turn(15),term(2)]

【NO.4】the Holt(0)[the hole(3),the boat(2)the folk(2)] /l/,/r/:【No.17】wrong(5)[long(10),local(4)]

【No.20】rake(1)[lake(16),way(3)] 未 知 語:【No.7】renew(2)[new(12), (3),knew ] 発音の不正確な知識:【No.8】career(4)[Korea(15)]

そ の 他:【No.12】hard to(2)[fun to(2),all/our(3),not/won t(2), (7)]

4−2 音声認識率と意味理解率の関係 音声認識が成功した PA は全標本(n=600)の中で180例(30%)、そして、PA から UA(PA-UA) に至ったのは93例で、全 PA の約半 (52%)でしかなかった。 PB(部 的音声認識)は287例で全標本の50%弱であったが、PBから UB(部 的意味理解)に至っ た PB-UBは全 PBの約44%で、PA-UA の比率より少し低い。部 的音声認識から完全な意味理解 に至る PB-UA は全 PBの約11%であり、PBから意味理解失敗に至る PB-PC が約46%で PB-UBと ほぼ同率である。 また、音声認識失敗である PC は111例で全標本の約19%であるが、全 PC の約17%は何らかの意 味理解(PC-UB、PC-UA)に至っている。 4−3 音声認識率と意味理解率の比較 音声認識率と意味理解率の平 値、差異、ピアソン相関係数は「表 2」のようになった。 相関係数は0.5[p<.01]で正の相関関係にはあるが、DP(音声認識率)より DU(意味理解率) の方が低い[p<.01(t検定両側)]。個々の文でも11問題、NO.1、2,3、4、5、8、10、12、17、18、 19について相関性[p<.05]がみられ、10問題、NO.1、2,3、5、6、9、11、12、13、17で差[p< .05]があることが認められる。

(8)

体的に DPが DU よりもポイントが高く、NO.2、3、9、11では 0.7∼0.97ポイント[p<.01]の 差が見られた。NO.10、12、18では DU のほうが高くなっているが、そのうちの 2つ、NO.10、18で は有意差が認められなかった。 4−4 直訳、削除 音声を認識してから意味理解に至るのに、全標本(n=600)中でデータから直接的に観察できた ストラテジーは、認識した音声をそのまま「直訳」したもので、213例あった。また、音声を認識し た後で、意味の再構築が困難な音声情報を「削除」し、その他の聞き取れた部 だけを直訳したと 思われるものは76例あった。 表2 音声認識率と意味理解の平 値、差異とピアソン相関係数

NO. 平 値 DP 平 値 DU 差異 DP-DU 相関係数DP-DU 相関係数の危険率 t値 (t両側)の危険率 1 0.67 0.43 0.23 0.575 0.001 2.249 0.032 2 1.07 0.13 0.93 0.487 0.006 9.815 0 3 1.43 0.47 0.97 0.576 0 8.61 0 4 0.40 0.37 0.03 0.630 0 0.373 0.71 5 0.77 0.50 0.27 0.444 0.014 2.112 0.043 6 2.00 1.63 0.37 ** ** 4.097 0 7 0.10 0.00 0.10 ** ** 1.361 0.184 8 1.07 0.93 0.13 0.543 0.002 1.439 0.161 9 1.23 0.53 0.70 0.113 0.553 4.583 0 10 1.10 1.27 −0.17 0.579 0 −1.306 0.202 11 1.53 0.80 0.73 0.290 0.121 3.612 0.001 12 0.20 0.47 −0.27 0.677 0 −2.504 0.018 13 0.80 0.30 0.50 0.335 0.071 4.39 0 14 1.37 1.27 0.10 0.249 0.184 0.828 0.415 15 1.23 1.03 0.20 0.025 0.894 1.361 0.184 16 1.33 1.00 0.33 0.054 0.774 1.67 0.106 17 1.07 0.33 0.74 0.686 0 7.712 0 18 1.07 1.27 −0.20 0.535 0.002 −1.987 0.056 19 1.70 1.67 0.03 0.437 0.016 0.273 0.787 20 0.97 0.83 0.14 −0.083 0.663 1.682 0.103 全標本 1.06 0.76 0.30 0.504 0 9.666 0 *問題 NO.6,7は DP、DU の一方の全標本同じ数値なので、相関係数は測定できなかった。

(9)

5.

まず、語句レベルの音声認識と意味理解について、音声認識率の低かった短縮形、固有名詞、/l/と /r/、未知語、発音の不正確な知識、その他(hard to)、の誤聴例を検証し、語句レベルの英語音声 認識に見られるストラテジーについて 察する。次に、音声認識率と意味理解率の関係(表 1)、音 声聞き取り率と意味理解率の差異(表 2)の 析結果を検証し、文レベルでの音声認識から意味理解 に至るには、どのようなストラテジーがどのように 用されているか、を 察する。また、認識し た音声情報の意味理解のストラテジーで最も多く見られたのは「直訳」、「削除」(表 3)であったが、 この理由も検証する。 5−1 語句の音声認識 短縮形 短縮形 I ll は文頭(NO.3の文)では50%近く(14例)の音声認識率であるが、文中(NO.1の文) では正確な聞き取りは皆無であった。これは NO.3では I ll の後のポーズが0.12 sec.(Appendix 2 参 照)で後に続く語句と識別しやすく、したがって、よりはっきりと聞き取れたためと えられる。 NO.1では I ll の前後のポーズ(前0.04 sec.後0.09 sec.−Appendix 2 参照)は NO.3と比較して、 短い。NO.3 I ll take them.では I ll を all(16例)と誤った例が多かったが、意味の通る可能性の ある文に復元するのに“あり得る”候補を選択しているようである。NO.1では、 人 ,I,and,all な どバリエーションが大きくなっているが、その半数は復元した文の意味にあまり矛盾しない意味の 語を選択している。 固有名詞 固有名詞の音声認識では、より一般的(に日本 英語学習者に知られている)と思われる NO. の7 Φ 表3 直訳、削除の標本数 問題番号 直訳 削除 1 20 6 2 19 8 3 16 0 4 9 14 5 10 5 6 11 0 7 12 4 問題番号 直訳 削除 8 16 1 9 8 4 10 5 1 11 2 1 12 3 11 13 10 4 14 14 0 問題番号 直訳 削除 15 8 1 16 2 6 17 19 4 18 6 1 19 7 1 20 16 4 1-20合計 213 76 *注「直訳」 認識された音声をそのまま直訳したもの。ただし、慣用句などは、語の直訳では意理 解に至らない。* PA-UA の標本は含まない。 「削除」 音声として認識したが、その認識した部 が文全体の意味と整合性がない場合、その 部 を削除することにより矛盾を解消し、部 的意味理解をしていると えられるも の。

(10)

Tom は13例であったが、Holt【NO.4】では正確に認識したものは皆無であった。Tom の誤聴例は Turn(15)が多いが、Turn では原文の意味復元に“あり得る”語の候補になるのは難しいが、この 同じ文には聞き取り率の悪かった renewed も出ており、この語の音声認識は(2例)であり、top-down ストラテジーを って推測するには、利用できる情報が不足していたと えられる。聞きなれ ていない発音の Holt では、誤聴例のバリエーションが多いが、音声情報のみで音声復元が試みられ た結果と えられる。意味理解(日本語訳)では、Holt の部 が正確な音声認識ができず、誤聴し た語の意味では文全体の意味と整合性が保てないので、Holt を削除して訳しているものが11例(部 的意味理解がされている 6例はすべて Holt の部 を削除)ある。 /l/,/r/

/l/,/r/を含む語の音声認識率も低く、NO.17 I took a wrong train.では、wrong(5例)を、 最小対となる long としたものが10例、localが 4例で、/l/,/r/の音韻の識別はほとんど出来ていな いが、原文の意味を復元する候補としては “あり得る”選択である。この文のコンテキストにおい ては、long は wrong と比較して、“もっともあり得そうな語”ではないかもしれないが、(出現)頻 度の高い語は、頻度の低い語よりも素早く認識される(Garnham,1985)ので、両音の識別ができ ない場合、頻度の高い long の方が選択されやすいのであろう。NO.20では rakeを lakeとしたもの が15例、rakeは 1例あったが、これも日本語訳から推測すると lakeを意図したが、ミススペルで rakeとしたようである。すなわち、rakeはこのテスト参加者グループにはまったくの未知語であり、 lakeでも原文の意味復元には“あり得る語”であり、この文の意味を推測するのに不自然な語では ない。 未知語 未知語の聞き取りでは、NO.7の renewed の音声を聞き取ったのは 1例あるが、しかしこの語の知 識はなかったようである。newと聞いたものが12例、knewも 1例あった。未知語が文の意味のキー ワードとなった場合、他の情報から、文の意味を復元するのは困難なようであり、この renewed で は 30例すべてが意味理解に至らなかった。ここでの意味理解に至るストラテジーは聞き取った音韻 情報と与えられている情報(この問題文は文の一部が視覚情報で与えられている)をそのまま直訳 することのみであった。 発音の不正確な知識 また、発音の知識が不正確な NO.8の career(4)の音声認識(「キャリア」と誤って発音されてい るのでこの語の音声の知識がない)では持っている言語知識の中で、career の音に極めて近い Korea(15)が候補として選択されている。すなわち、テスト参加者の持っている音声知識では、 career は career(職業)ではなく Korea(朝鮮)であり、career は候補に入らなかったのであろう。

その他

その他、【NO.12】Its hard to believe...の hard to の聞き取りは 2例のみであり、誤聴例の not/ won t(2例)は原文の意味復元には “あり得る語”の候補になるが、その他の fun to,all,our, などは候補にはなり得ない。“Its hard to believe”は日常会話ではきわめて 用頻度の高い表現と

(11)

えられるが、もしこの言語知識があれば、前後の Its(26例)と believe/belief(24例)の聞き取り 率が極めて高いので適切なストラテジーで原文の復元ができたであろうと えられる。 5−2 音声認識率と意味理解率の関係 表 2でみたように、音声認識率と意味認識率のピアソン相関係数は0.5強[p<.01]であるが、こ こではこの 2つの結果をクロスさせた表 1(表 1−1、表 1−2)の集計結果から音声認識率と意味理 解率の関係を「音声認識率(PD)と意味理解率(UD)」から 察していく。 3つの異なった音声認識レベル(PA、PB、PC)はどの意味理解レベル(UA、UB、UC)へ向かう のか? リスニングでは意味理解に“2種類の情報が われる:音韻情報とコンテクストの知識” (Buck:2001)、とされている。したがって、コンテクストの知識が同じなら、音韻情報が多いほど (すなわち音声認識率が高いほど)、それに応じて意味理解率も高くなると えられる。例えば高い 音声認識率(PA)であれば意味理解率も高く(UA)、音声認識率が低ければ(PC)、理解率も低く (UC)なると予測されるであろう。また、音声認識から意味理解に至るストラテジーが上手く機能 しているのであれば、意味理解率は音声認識率よりも高くなるか、少なくとも同じくらいにはなる ことが予測される。つまり、PA(ほとんど音声認識ができている)なら UA(ほとんど意味理解が できている)へ、PB(部 的聞き取り)なら UB(部 的な意味理解)、あるいは UA へ向かう確率 が高くなるはずである。すなわち、音声認識から意味理解に至るストラテジーが上手く 用できれ ば、音声認識率が PA であれば PA-UA、PB であれば PB-UBまたは PB-UA、(PC でも PC-UB、 PC-UA の可能性もある)にテスト結果は偏ると予想されるであろう。しかし、PA で48%が UB、UC へ、また、PBで45%、が UC に至っており、有効なストラテジーが“上手く” 用できていないこ とを示している。

PA(正確な音声認識)の DU(意味理解率)における比率

PA は600例中180例(30%)あるが、PA から UA(意味理解率 2ポイント−理解成功)

に至った PA-UA は93例(PA の52%)で、約半数は「部 理解」(PA-UB 51例、28%)や「理 解に失敗」(AP-UC も36例、20%)であった。PA の UA、UB、UC のおよその比率は 5:3:2に なっており、UA への比率は(180例)52%にすぎない。音声認識がほぼ完全でも原文の意味を正確 に理解できているのは約半数しかなく、音声認識から意味理解に至ったのは、ここでは約50%強で しかない。約半数は音声が認識できていながら、英語の知識(語の正確な意味、文法、表現など) 不足で、正確な意味理解に至らなかったと えられる。 PB(部 的音声認識)の DU(意味理解率)における比率 音声認識率が「部 的」である PBでは、意味理解も「部 的」である PB-UBへの比率が高くな り、音声認識から意味理解に至るストラテジーが上手く機能していれば、UA(PB-UA)に至る可能 性も高いと えられる。しかし、PB-UA は PB(287例)の11.5%(33例)しかなく、言い換えれば、 部 的音声情報でストラテジーを適切に い「原文の意味復元に成功した」のは11.5%しかない、と いえる。部 的音声情報で部 的意味理解(聞き取った音声情報のみで意味理解した)の PB-UBは、

(12)

最小限のストラテジーは 用されていると えられるが、これは全 PBで287例ある内の44%(126 例)である。その音声情報も適切に利用できず意味理解に至らなかった PB-UC は44.5%(128例)で ある。PBの意味理解率(UBまたは UA への 布)55%で、これは PA の(UA への 布の)52% とほぼ同じである。すなわち、聞き取った英語音(認識した音声)の約半 しか、その音声の正確 な意味理解に至っていない。 PC(音声認識失敗)の DU(意味理解率)における比率 音声認識が上手くできていない PC の場合、意味理解はほとんど失敗するであろうと予測される が、PC の133例中、PC-UB(部 的意味理解)が16例(12%)、PC-UA(原文の意味復元)も 6例 (5%)で、合計すれば22例となり、音声認識に失敗しても約17%は何らかのストラテジーを 用し ていると えられる。日本語訳(n=600)で、全く何も書いていない、1語だけ、または意味のない 句、を書き入れているのは20例のみ(3.3%)で、音声がほとんど正確に聞き取れなくても多くは意 味の通る訳文を書き入れようとしていることが伺える。すなわち、自 の持っている言語知識(限 られてはいるが)を利用して、原文の「復元を試みようとしている」、と えられる。 5−3 音声認識率に影響を与える要因 今まで見てきたように、本稿の調査対象者のテスト結果は、母語話者とは異なり、意味理解率の 平 値は音声認識率の平 値はより低い(全標本での t検定[p<.01])。 表 2の 析結果を参 に、この項では、まず音声聞き取り率と意味理解率に差[p<.05]があると 確認された10問題の内、差の大きい 5問題について検証し、次に差は確認されなかったが、聞き取 り率、意味理解率ともに高いもの、またともに低いものを検証しながら、音声認識率に比較して、 意味理解率が低くなっている要因を えてみたい。 音声認識率と意味理解率の差が大きい文 音声認識率と意味理解率の差が大きい(0.7∼0.93ポイント[p<.05])問題文は NO.2、3、9、11、 17である。 NO.2は慣用句が 用されていて、慣用句の知識がなければ音声が聞き取れても、意味は理解でき ない。NO.3は“take them”の理解が正確でないものが多く、NO.9 は“doubt”と聞き取れている のは10例あったが、その意味が正確に理解できているのは 3例のみである。比較的簡単と思われる これらの語句の意味、用法にまだ習熟していないことが伺われる。

NO.11は主格補語として われている“all I want”の文法構造は複雑ではないが文法的に正確に 意味解釈ができていたのは11例だけであった。

NO.17では、聞き取り率の評価は1.07ポイントで“部 的”であるが、“wrong”を “long”(10例) と誤聴し、文の意味の整合性を 慮せずにそのまま直訳したと思われる例が 7例、削除が 2例みら れた。母語話者であれば、聞き取った語の意味検索や文法構造理解、文全体の意味とそこに現れて いる語の意味の整合性など“自動処理”していると えられるが、目標言語を部 的にしか知らな い L2の聞き手には未知語、文法、などの問題があり(Buck:2001)、聞き取った言語音声を確実に

(13)

意味処理できるとは限らないのである。したがってまだ英語に習熟していない日本人英語学習者の 場合、音声認識率より、意味理解率が低くなるのは予想され得ることであろう。

音声認識率、意味理解率とも高い文

音声認識率、意味理解率とも、比較的に良かったのは、NO.6(DP:2.00―DU:1.63)、NO.14(DP: 1.37―DU:1.27)、NO.19(DP:1.70―DU:1.67)であった。

NO.6“Shed like to see the movie.”の聞き取り率は100%で、日本語訳も“行くようだ”のよう な不正確な「意訳」もあったが概ね理解できていた。“ d like to”や“movie”は日本の学 では比 較的早い機会に学習し、日本人学生たちにとっては出会う頻度が高く、音声、意味ともに“よく知っ ている”基本語(「JACET8000」 の最初の1000語に 類される)と予想される。このようなものは、 “あまりになじみになっているのでいちいち処理に掛ける必要はほとんどない”(Rivers:1981)の で、“自動処理”が可能になっていると えられる。 NO.14では“either”の聞き取りが11例しかなかったが、この文は“either”の後の後半部 “biology or zoology...”は視覚情報で与えられているので、“either”が聞き取れていなくても“or”を直訳し て、あるいは“or”をキーワードとして原文の意味の推測が可能となったと えられる。 NO.19では25例で正確に聞き取れており、意味理解もほぼ聞き取り率と同じである。この文は「指 示を与える文」で語句の区切りが明瞭である[First,/draw a/long/line/with/the ruler](Appendix 2 参照)。したがって、音声は比較的容易に聞き取れ、現れた語句は“ruler”をのぞいて日本人大学 生には基本語(同上の「JACET8000」の最初の2000語)であり、文法構造も簡単で、したがって、 容易に意味理解されたと えられる。

音声聞き取り率、意味理解率とも低い文

NO.4,7,12は音声認識率、意味理解率とも0.5ポイント未満であった。NO.4は固有名詞の Holt(聞 き取り 0例)、NO.7は未知語の renewed(2例)、NO.12は hard to(2例)で、これらの語の聞き取 りに関しては、「5−1 語句の音声聞き取り」のところで 察しているのでここでは省略するが、名 詞、動詞、形容詞など、文の意味決定に重要な「内容語」が聞き取れない場合、目標言語の知識と 経験が十 でない学習者には、残りの音韻情報や他の利用できる情報から原文を復元するためのス トラテジーはほとんど えないことを示唆しているように思える。 音声聞き取り率より意味理解率が高い文 音声聞き取り率より意味理解率が高い文は NO.10、NO.12、NO.18であったが、ここでは NO.10、 と NO.18について 察する(NO.12は前出)。ただし、NO.10、NO.18はともに音声認識率と意味理 解率との間に有意差は認められない([p>.05])ので、厳密には上記の「音声認識率、意味理解率と も高い文」に入る(音声認識率と意味理解率は NO.10[1.10,1.27]、NO.18[1.07,1.27])。

NO.10“Nobody got a better score on the exam than Tony”では視覚情報として、文の最後の 部 である“than Tony”が与えられているので、Nobody、と scoreが 聞き取れれば原文の意味を 推測することは可能である。Nobody が29例、scoreが22例、それぞれ聞き取れていて、他の部 の 認識率は半 以下であるが、意味理解のキーとなる部 と視覚情報“than Tony”から意味理解に至

(14)

るストラテジーが えたと えられる。

NO.18“It began to rain just as we got out of the gymnasium”では視覚情報として、文の最後 の部 である“of the gymnasium”が与えられている。この文では began、rain、out が聞き取れ れば、視覚情報の of the gymnasium とあわせて原文の意味復元は十 可能であろう。begin/began/ begun で29例、rain は26例であったが、out は 5例のみで、また weは18例が であった。この文は 音声のユニット数(語数、シラブル数)が多く、文の後ろの方では聞き違い(誤聴)よりも聞き逃 し( )が多くみられた(we の は19例、got out の は 7例)。尚、この文の音声波形に関して は、Appendix 2 を参照。

部 的音声認識(PB)から原文の意味理解(UA)に至ったのは NO.10が 8例、NO.18が 7例(全 600例中 PB-UA は33例)で、原文の意味復元のためのストラテジーが他の文と比較して、よく機能 しているといえる。この 2つの文では視覚情報として与えられた語句がキーワードの一つとなって おり、それが利用できたためにストラテジーを活性化できたと えられる。言い換えれば、キーワー ドの音声認識ができなければ、自 のもっている英語の知識が限定的な学習者には欠けた音声の復 元や、原文の意味推測などは難しい、ということを示しているようである。 5−4 音声認識から意味理解へのストラテジー 直訳 音声認識から、意味決定に至るストラテジーで多く見られたのは「直訳」と「削除」である。PA-UA を除いた507例で、直訳が213例、削除が76例見られた。音声の意味理解を目標言語の知識が十 で ない“非母語話者は音韻そのものに過重に依存している”(Reed:2000)ので、聞き取った音声情報 から、自 の持っている言語知識に照らし合わせてより適切な意味理解をするようなストラテジー を 用するのは容易でなく、したがって、認識した音声をそのまま、語句毎の直訳をせざるを得な かったことが えられる。 削除 聞き取った音声はそのまま直訳し、聞き取った音声から同定した語句の意味が文全体の意味と整 合性を保たない場合、他の(意味の)候補を選択するのではなく「削除」して文の意味の矛盾を避 けるストラテジーを取っていると えられる。それは、まだ目標言語に習熟していない L2学習者は Buck(:2001)の言うように、“その言語の部 的知識しかなく”、選択できるより適切な候補を知 識として持っていないからであろう。

6 ま と め

一般的な日本の大学生としての英語力を持っていると えられる英語中級学習者を対象に、学生 が英語の聞き取りを行うときに、どのようなストラテジーを っているのか、また有効なストラテ ジーが十 に えない要因は何か、を探るために、文レベルの聞き取りテストを行い、結果を検証

(15)

し、 察した。 語句の音声認識では、語句の切れ目が比較的 かりやすく、前後の語句との識別がし易い音声で あれば、認識率は高くなっている。音声認識を阻害している要因としては頻度の低い固有名詞、日 本語では音韻の最小対立にならない /l/ と/r/ などの英語の音声を十 に識別できないこと、未知 語や発音の知識が不正確な語、などが見られた。語句の同定には認識した音韻情報に大きく依存し ているが、それでも文全体の意味となるべく矛盾しないように、自 の持っている言語知識の中で もっとも“あり得そうな”候補を選択しようとしている。しかし、言語知識が限られているので、 その選択の成功率は低く、したがって、合理的な候補が選択できない場合認識した音声の「削除」 をストラテジーとして選ぶ確率が高い。 音声認識が完全でない場合でも、母語話者であれば、持っている言語知識などの、利用できる情 報を って原文の意味が理解できるので、音声の認識率よりも意味理解率が高くなる。しかし、日 本人中級英語学習者は、音声認識率より意味理解率のほうが低い。音声の欠けた部 を自 のもっ ている言語知識で埋めていくようなストラテジーはまだ英語の習熟度が十 でないので、 うこと はほとんどできない。しかし える場合は積極的に利用している。例えば、“Shed like to see the movie.”のように学 で比較的早い時期に学習し、すでに自動的に処理できる表現や、他に利用でき る情報、例えば、視覚情報で与えられた語が意味理解のキーワードとなっている場合など、それを 利用して、文の意味の整合性と矛盾しないような意味理解をしようとしている。 聞き取った音声から、意味決定に至るストラテジーで多く見られたのは「直訳」と「削除」であ る。言語知識が十 でなく、意味理解のほとんどを音声情報に依存し、たとえ音声情報が欠けてい ても他の える情報をほとんど持っていないので、聞き取った音声はそのまま直訳し、もし、聞き 取った音声から推測して語句の意味が文全体の意味と矛盾する場合、それは「削除」して文の意味 の矛盾を避けるストラテジーを取っている。 最後に、今回の調査で明らかになったことは、学生たちがリスニングで積極的に 用しているス トラテジーは「直訳」と「削除」であり、他の有効なストラテジーはほとんど えないこと、また、 有効なストラテジーの 用を阻害している要因は、ストラテジーについての知識に欠けていたり、 それを う訓練を受けていないためではないこと、むしろ、他に える情報がある場合はそれを利 用して積極的に有効なストラテジーを おうとしていること、である。リスニングにおいて、学習 者の理解度は、しばしば、理解のギャップを埋めようとする強い意欲に基づいている(Oxford:92)、 といわれているが、このテスト参加者も同様であり、利用できる情報がある場合にはストラテジー を って原文の意味復元をしようとし、たとえ音声認識がほとんどできなくても、認識できた一部 の語から、意味を推測しようと努力している。 有効なストラテジーを えるようにするには、特に、英語の正確な音声、基本語の知識、頻度の 高い慣用表現などについてはできるだけ多く、意味処理の自動化ができるようにしておけば、より 有効なストラテジーが 用できるようになるであろう。 最後に、テスト参加者はかなり“正直に音声どおりに聴解”(筧、1979)している場合が多い(例

(16)

えば、NO.18の got は go と tがはなれているために、go と聞いている Appendix 2,参照)。文のこ の物理的な音声の聞き取りと意味理解するための文法的な区切りのギャップを音声波形などの音声 の視覚情報を補助的に 用して、指導するのも学生たちの利益に適いそうである。この調査は次の 機会としたい。 本稿が学生のリスニング指導法の一助となれば幸甚である。 [ ] 1) 2007年度の TOEIC 受験者は915,298人で、全体の平 点:447。学生に限れば、受験者数は425,426人で、平 点:427。今回の実験のテスト参加者は2008年 4月に TOEIC を受け、平 点:146、TOEIC 協会の出している、 換算表で、TOEIC の点数に換算すれば、441点になる。全体の平 点より、6点低いが、学生全体の平 点より、 14点高い。この点数から、日本人の英語学習者の平 的英語力があると判断でき、英語中級学習者と えられ る。(資料は、財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会の TOEIC 式ホームページより) 2) NTT アドバンステクノロジー(株)より発売されている「音声解析ソフト」で各問題文ごとに音声 析し、 音声波形(包絡)にできるだけ合わせて区切りとした。 3) SPSS は日本では「SPSS Japan Inc」より発売されている統計解析ソフト。 4) 2を参照

5) 正式名は「大学英語教育学会基本語リスト」英語名「JACET List of 8000 Basic Words」で、日本人英語学 習者を対象とした教育語彙表

[参 文献]

Anderson, A., and Lynch, T. (1988). Listening. Oxford : Oxford University Ptrss Buck, G (2001). Assessing listening. Cambridge: Cambridge University Press.

Flowerdew, J. and Miller L. (2005). Second language listening. Cambridge: Cambridge University Press. Garnham, A. (1885). Psycholinguistics: central topics. London : Methuen.

筧 寿雄、他(1979). 『誤聴 析』大学英語教育学会紀要 No.10, 1-19. 喜田慶文(2006). 『TOEFL リスニングテスト問題350』東京:旺文社

OMalley, J.M. and Chamot, A.U. (1990). Learning strategies in second language acquisition. Cambridge: Cambridge University Press.

Reed, M. (2000). He who hesitates : hesitation phenomina as quality control in speech production, obstacles in non-native speech perception. Boston University Journal of Education 182(2): 67-91.

Rivers, W.M. (1981). Teaching foreign-language skills. Chicago ; The University of Chicago.[天満美智子/田 近裕子(訳)(1987).『外国語学習得のスキル』東京:研究出版社]

Rost, M. (2002). Teaching and researching listening. Harlow: Pearson Education.

Ryalls,J.(1996). A basic introduction to speech perception.Singular Publishing Group,Inc.[今富摂子/他(監 訳)(2003).『音声知覚の基礎』東京:海文堂出版]

関屋 康(1994).『音韻の習得』「第二言語習得研究に基づく最新の英語教育」49-69、東京:大修館書店

Scarcella, R.C. and R.L. Oxford, (1992). The tapestry of language learning. California ; Heinle and Heinle Publishers.[菅原泳一/他(訳)(1997). 『第 2言語習得理論と実践』東京: 柏社

大学英語教育学会基本語改定委員会(編)(2003). 『大学英語教育学会基本語リスト:JACET list of 8000 basic words』東京:大学英語教育学会

(17)

Appendex 1 ディクテーション結果の 析 各文の斜体部 がテストされた。 析は文法的に区切られる語句ではなく、音韻的にまとまっている と思われるところを区切りとした。 *すみつきカッコ【 】内が得られたデータ、まるカッコ( )内は 2回以上出現したサンプル数、φ はブランク(無回答)を示す)

1) I ve just found out I ll have to work. φ 他【 】

I ll →【I(4),φ(7),and(3),all(2),our(2),】他 have to →【have to(22),half to(4),half(2),hour, after】 work →【work(19),[the]war(3),word[s](2),walk(2)他】 2)Lets call it a day.

Lets →【lets(29),its(1)】

call it a →【call it a(4),call it the(1),calling/call-in the(4),call other(3),call(ed)on the, 他。 ** a → the(11)】

day →【day(29),date】 3)I ll take them.

I ll →【I ll(14),all(12),他】 take them →【take them(30)】 4) When did the Holts move to Arkansas

when →【when(30)】 did →【did(22),is(3)】

the Holts →【port[s](7),the hole(3),the boat(2),the folk(2),it for(2),他。 * the→ a (0)】

move →【move(12),to move, φ(8)】 5) I ll talk with the student adviser about the matter.

adviser →【adviser(5),as adviser(2),by the(2),to advice(4),to advise(2),φ(2),他】 about →【about(26),at(2),after, that】

the matter →【the matter(14),a matter(2),matter(4),[the]mother(5),the manner(2),他。 ** the→ φ(6)】

6) Shed like to see the movie tomorrow. shed →【shed(22),she(8),他】

like to see →【like to see(25),likes to see(3),他 like see, likes see】 the movie →【the movie(30)】

7) Toms renewed his student ID already.

Toms →【Tom[10],Tom[is/will/ve](3),Turn(12),Turn[slip/with/s](3),Term[s](2)他】 renewed →【renew[-ed/to](2),new(6),φ(3),他 newを含む句(6),knew, 他】

his student →【student(16),[the/this/your]student(3),他】 8) She began her career as a teacher

she began →【she began(21),she begin[s](6),他】

her career →【her career(2),[to/pro]career(2),[her/for/from/learn/re-]Korea(15),他】 9 ) I doubt the train has already left.

I doubt the →【I doubt the(7),I doubt(3),I got[it/off/](6),I ve got(2),I dont[get/have/take](6), I done[it](2),Iφ(2),他。** the→ a (2)例、 the→ φ(8)】

(18)

train has →【train(17),train[-s/has/is/was/that](8),train as(4),tiny】 already left →【already left(27),他】

10)Nobody got a better score on the exam than Tony. Nobody →【nobody(29),no every】

got →【got(16),get(2),girl[s](5),φ(2),他】

a better →【a better, the better(4),better(9),is better(2),[a/the]best(2),win the total(2),他。 ** the→ a (0)、 the→ φ(22)】

score →【score(22),scored, school(3),φ(4)】

on the →【on the(3),for(2),of(2),[at/in/that]the(3),the(2),φ(17),the school】 exam →【exam(17),[and/in]exam(2),examine(2),φ(8),them】

11)That is not all I want.

all I →【all I(26),all right(2),alright(1),alright I】 want →【want(24),wont(2),他 】

12)Its hard to believe shes finished assignment already. its →【its(26),it(2),in(2)】

hard to →【hard to(2),fun to(2),all[our](3),,not/wont(2),φ(7),他】 believe →【believe(10),believe[-d/for](3),belief/brief(11),belief that, φ(4),他】 shes →【shes(3),she(11),she find(1),he(2),φ(9),他】

13)You mustn t visit her unless you re invited. you mustn t →【you mustn t(25),You must(5)】

visit her →【visit her(16),visit[a](2),visitor(9),be visitor(2),φ】 unless →【unless(1),in less(3),in last(3),φ(7),他】

14)You can take either biology or zoology this semester. you can take→【you can take(30)】

either →【either(11),in(3),the(3),φ(6),easy, 他】 15)You shouldn t have changed your original idea.

you shouldn t have →【you shouldn t have(18),you shouldn t take(6),you shouldn t touch[in/to](3)他】 changed →【changed(11),change(12),changed for,change[for/to](4),change did, 他】 16) Wearen t able to buy antibiotics without a prescription.

we aren t →【we arent(26),we are(2),we all, φ】

able to buy →【able to buy(15),able to by(3),able to buy[MD/and to],(2),able to---(6),他】 * able to byは able to buyのミススペル

17)Mr.Wright took the wrong train in London. took →【took(24),他】

the wrong →【the wrong(5),the long(10),the local(2),the local(2),他】 train →【train(29),他。 ** the→ a (1)例、 the→ φ(4)】 in London →【in London(13)to London(11),[for/at/of/the/go]London(6)】 18)It began to rain just as we got out of the gymnasium.

it →【it(29),if it】

began →【began(9),begun(2),begin(18),他】 to rain →【to rain(7),the rain(16),rain(3),他】

just as →【just as(2),just(21),just[us/in/is/its/the/](5),justest, φ】 we →【we(7),φ(19),他】

(19)

19)First, draw a long line with a ruler. draw →【draw(30)】

a long line with→【a long line with(19),the long line with(2),long line with(4),他。 ** a → the(3)、 a → φ(4)】

with a ruler →【a ruler(15),the ruler(8)a lurer(1),a roller(1),lure(2),他。 ** a → the(8)例、 a → φ(2)】

20) Where can I find the rake?.

where can I find→【where can I find(29),where can Iφ】

the rake →【a lake(7),the rake(1),the lake(6),[for/her]lake(3),the way(3),[a/the]rate(3),他。 ** a→ the(14)】

(20)
(21)

A Study on How Japanese Learners of English

Use Strategies for English Listening Comprehension

Yoshifumi KITA

This study mainly focused on researching listening strategies (bottom-up and

top-down strategies) used by Japanese learners of English as a foreign language

(EFL) with intermediate level of English proficiency. Two main questions were

examined : (1) For Japanese learners of English, what kind of strategies are used

when perceiving English speech sounds and comprehending the meaning of them?

(2) What are the problems, if any, preventing them from choosing an appropriate

strategy for English listening comprehension? To explore these problems,English

dictation and English-Japanese translation tests were administered to a group of

students. After analysis, the results showed that Japanese EFL intermediate

stu-dents often use two main strategies: direct translation and deletion . It was

further found that these students perceived a need to employ more effective strategies

to aid comprehension. However, with their limited knowledge of English, often

the case, it is difficult for them to use appropriate strategies for English listening

comprehension.

参照

関連したドキュメント

 英語の関学の伝統を継承するのが「子どもと英 語」です。初等教育における英語教育に対応でき

いてもらう権利﹂に関するものである︒また︑多数意見は本件の争点を歪曲した︒というのは︑第一に︑多数意見は

a) The attractive square was not the creation of one architect or planner; rather, it evolved gradually over centuries of interventions by many personalities to fulˆll the needs

[r]

῕ / ῎ῒ῏ , Analytical complication of comments by Govern- ments and international organizations on the draft text of a model law on international commercial arbitration: report of

Arriba Soft Corp., ΐΐ F.Supp... Google

[r]

製品の配送までをコンピューターを使って総合的に管理する経営手法)の観点から