• 検索結果がありません。

機能性月経困難症の原因と治療に就て

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "機能性月経困難症の原因と治療に就て"

Copied!
7
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

(東京女医大誌 第24巻斗4号:頁125一一131昭和29年8月)

機能性.月経困難症の原因ミ治療に就て

:東京女子医科大学産婦人科教室

教 授 柚 ユノ

木 鮮 三

キ シ司ウ ザデ

(受付 昭和29年6

月経に随伴する一連の症候群,特に下腹痛,腰 痛或は骨盤i痛等の疹痛が強くて,時には臥床を必 要とし或は日常の作業動作を妨げるような程度で ある自適,これを月経困難症という。月経時症状 の主要なものぱ月経痛であるから,月経困難症ぱ 狭義では強い月経痛を伴う月経,或は月経痛と略 k’ッ意味に解されている。 この中でその障害の原因となるべき局所変化を 証明し得ないものを機能性月経困難症 Functio− nal dysmenorrhea,又は本態性月経困難症Es・ sential dysm.という。多くは月経初潮或は其の 後間もなくして発現し,以後引ぎ続いて起る月経 困難症である。故に叉原発月経困難症Pr;mary dysmenorrhea等とも呼ばれノる。 原 因 月経困難症の原因は主として異常に強い子寓の収縮 或は子宮筋の痙攣性収縮によって起るものと考えられ ているが(一部には神経障害郎等があって疹痛感受性 の過大を説く)tの子宮収縮を起す磯魚について多種 多様の説が唱えられる。 実験的に子宮腔内にゴム球を入れて内圧を測定する 方法で子宮筋の収縮状態が研究されるが,それによれ ば子宮は常に自働性に収縮を営んでいみもので,絶え ず収縮と弛緩とを繰返している。tの状態は月経時を 除けば,正常月経の婦人に於ても月経困難症の婦入に 於ても同様であって差異を認め難い。月経周期の前半 期には狭い振幅のものでむしろ頻回であり,子宮は中 等度のトrヌスを維持しているのであるが,』後半期に に収縮が著しく高度の振幅をもち回数が少くトーヌス が低下するようである。tの収縮状態は月経期中も存 続する。3(との自働性は玉部下腹神経を切除しても変 化しない。Bickersの最近の研究によればエス1・ n 郎 ロウ 月 2 日) ゲンが前半期の低度収縮に・プげステ・助媛半騨 の高度収縮に閥連するものであるととが明かと.な’つ た。月経困難症の子宮では月経期に於ける収縮が更に 一層強度となり又痙攣性となるのであるo Bickersは多数の例に於て定型的なテタヌス様痙攣を 認めたという。 1) 内分泌障害説 最:近承認されている新しい 一つの事実ぱ,本症は唯排卵が月経に先行する丁 合で,プロゲステロンが』血中に存在する場合にの み起り,無排卵性月経には起らないことである。 即ちSturgis及びAlbright(1940)等によって 本症が唯子宮内膜の黄体期変化,即ち分泌相のあ るときにのみ起り得るものであることが証明され flc o’このことは従来のプロゲステロンは子宮筋を 弛緩させる故に三三を抑制するとの説とば相反す るものであるが,月経困難症のある婦人に於て排 卵を抑制することによって本症を防止し得る事 実,及び無排卵性周期の闇にでもプロゲステロン を投与すると月経痛を起すことが出来るUとによ っても立証される所である。叉本症の多くが月経 初潮当時には未だ見られす,これより数ヵ月乃至 数年後に発現するものであることも,初潮当時に は月経は多くは無排卵性であるという事実から充 分了解することが出来,叉本症が月経毎に必発す るものでなくて時に現われないことがある事実 も,排卵性月経が続く間には時にぱ無排卵性月経 が起るごと渉あるという点から容易に説明出来る のである。 Markee(1940)は子宮内膜を猿の眼球に移植 して研究した結果,月経時に因て子宮内膜内に何 か一種の一血管収縮作用をもつ物質(仮想)が産生 されて,内膜の螺線血管(コ■ル動脈)に強V・痙 一125一一一一

(2)

2 攣が起り血流の杜絶によってこの周囲に無数の小 さな局所貧血部位を生じる。このために其の局所 に酸素欠乏が起り,これが刺戟となってその部位 にある神経末端装置が過敏となり疹痛を生じるも のであろうと老えた。このような現象ぱ排卵性及 び無排卵性月経のいつれの揚合にも見られるので あるが,仮想痙攣性物質は恐らく内膜組織の壊死 破壊の結果産生されるものと想像され,実際上排 卵性月経でば無排卵性月経の丁合よりも遙かに多 量の内膜剥離物質を生じるのであるから,従って 排卵性月経の際にぱ一層強V・疹:痛の原因となり得、 るとの考えより,本症の発現には少くともプロゲ ステ.只ンの方がエストロゲンよりも重大な関係が あることを推理し得るという。Frantz Schuck (1951)も亦其の原因を子宮血.管の攣縮に帰して ∀、る。 然しながらこのような説明ではプロゲステロン が本症を起す機序をなお充分了解することは出来 なV・。従って1血管或は子宮筋の痙攣性収縮を起す 何等かの物質がエストロゲンによっては産生され ないか,或は極めて少量より産生されないに拘ら す,プロゲステPンによって多量に産生されるも・ のではないか等の仮説も唱えられるが,現今では 未だこの謎ぱ解けない。 従来エス1・ロゲン過剰説(Novak&Reynolds 1932,其の他)が行われたが,これは其の後臨床 的にも実験的にもこれに矛盾する事実が発見され ヌ前述の如く本症の子宮内膜は多くは分泌相を示 し,増殖相を呈する場合には一般IC本症が見られ す,即ち無排卵性月経には起らす,又エストPゲ ン過剰のためとされている出.血性メトロパチーに は必ずしも本症を伴わなV・事実等ICよって否定さ れる。 更に脳下垂体前葉から分泌される性腺刺戟ホル モン(卵胞成熟及び黄体化ホルモン)に量的失調 があるために卵巣から分泌されるエストロゲンと プロゲステロンの量にも亦不均衡を生じる結某, 異常に強い子宮収縮従って強い月経痛が起るとし て,其の原因を脳下垂体前葉の障害に帰せんとす る説がある。 其の他本症には甲状腺が関連することが以前か ら唱えられている。即ちその機能西進殊に甲状腺 中毒症Thyrotoxicosisの場合には神経の刺戟感 受性が異常に充熟して疹痛に対して過敏となるた めに月経痛の原因となる∼二とがある(Hertzler 1925,WendelH930)といわれ,ヌ,反対に甲状 腺機能低下による基礎代謝低下の際にもこれが月 経痛の原因となり得ることは,この際甲状腺物質 の投与によって屡々疹痛の消失を見ることで証明 されるといわれ.る。然しこれ等にはなお反対説も 多い。 膜様月経困難症Dysmenorrhoea±nembrana・ ceaとL(うものがある。通常月経時に剥脱した子 宮内膜は細片となって融解せられ,血液と共に子 宮外に流出するものであるが,時としてt一の内膜 が融解されないで小片のまN或ぽ稀には子宮腔の 形を保つたまS(子宮腔の鋳型)排出されること がある。この際には屡々陣痛様の強い下腹痛を伴 う。三面は月経開始後1∼数日聞持続し,膜様物 の排出が完了すれぼ消失する。Hoffmanによれ ば彼の調査した月経困難症婦人の約23%に於て内 膜片の排出を認めたという。 この子宮内膜異常剥離の原因は明かではない が,内膜の自家融解に必要な1・リプシン酵素産生 の障害に因るといわれ・,又感染による内膜の軽V・ 炎症が原因になる等とV・われる。一説には黄体機 能の充進,其の他性ホルモンの不均衡によるとh われ,Cott6は内分泌障害に基因する内膜の異常 増殖が主な原因であるという。然し黄体嚢胞の場 合或は大量プロゲステロン投与によっても必ずし も本症が見られす(Fluhmann)又この際本症ぱ 増悪しないごと等から,黄体機能充進説は必ずし も妥当とはV・えなV・。 2)血行或は血液障害説Moir(1934)は実験 的に月経痛を訴える患者に就て子宮収縮と子宮動 脈の脈搏との関係を研究した結果,子宮筋の収縮 が最:高調にあって,従って子宮内圧が患者の血圧 よりも高くなっている時に痙攣様疹痛が起ること を発見し,月経痛は子宮筋層の血管が圧迫されて 局所貧血を来し,従って筋肉内の酸素欠乏を生じ るために起るものであるとし,Bickersも亦これ に賛成し,且つ月経困難症では既に高度の緊張状 態にある子宮筋層に更に収縮が加わるものであっ て,この異常状態は子宮筋それ自身に生理的の欠 陥が存することに基くものであると仮定した。 然しごれ等の説には叉ピツイトリンを注射すると 子宮内圧は上昇するが,その際必すしも月経痛は 起らないこと等の事実を挙げて反対説を唱える人 一一一@/26 T−tr.n

(3)

もある(Wi正son&Kurzrok)。其の他強前屈や 後屈等の子宮位置異常のある場合には子宮壁に欝 血を来すことが原因となり,或は骨盤内欝.血が原 因になる等の説がある。 月経.血ぱ通常凝固し難いものであるが,何等か の原因で.gfii液中にその凝固を防害する或種の物質 (仮想)が不足叉ぱ欠如し,凝固が促進されて月 経血が凝闘し,その凝血が頸管を通過して排出さ れる際に温血が起るとの説(B正air−Be11)或は月 経時に頸管を拡張すると疹痛を増悪させるとの班 由からこれに賛成する議論もあるが,この様な凝 血は軟く破砕し易い故に頸管を拡張したり,疹 痛を起す程度の抵抗を与えるものとは考えられな い。然しK:ieffer等は子宮口の刺戦が子宮の収 縮,子宮頸痙攣及び官命を起すことを認め;月 経困難症に見られる痙攣性の畑島は頸部神経節の 異常状態に基因するものであろうと推定した。Bl− otevoge1等はエストロゲン不.足によってフラン ケンホイゼル頸部神経節の退行変性に陥ることも 考えられるという。叉Blosは70%アルコールを 頸部回心節1(注射することによって月経困難症患 者の90%を治癒させるごとが出来たとして,これ 等の説を支持しているQ 3) 中毒及びアレルギー説Smith&Smith (1947)は月経周期の終末で子宮内膜の退行性変 化を来す時期(月経直前及び月経期)に於て,内 膜からオキシコレステリンに類似した一種の月経 毒Menotoxinが産生されることを唱えた。この 毒素は恐らくオイグロビン及び一種の細胞溶解性 の物質であって,子宮筋の過度興奮性を来すのみ ならす,身体の他の部位をも侵すものであるが, この物質によって月経困難症の症状を起すものと 想像した。所謂月経中毒症である。この説を確認 するためにPhelPSば月経困難症の婦入の尿を家 兎に注射すると,その子宮に酸化毒素(毒物の酸 化物)の増加することを発見した。こみことは回 れ等の婦人の全身循環」血中に子宮の痙攣を起す穿 る種の物質を含有することを示唆するものである という。然しこの月経中毒説は全く仮説であって 反対説も多く爾お疑いが多い。 月経困難症は一のアレルギー症状であるとする 説がある。叉子宮筋が種々のアレルゲンに対して 感受性のあることは既に以前から知られている。 アレルギーが本症に璽大関係をもつことは最初 Duke(1923)によって説かれ,叉Campbe11(19 33)ぱ月経痛は一種のアレルギー様症状を示す症 状群であると記したが,最初に多くの症例を報告 したのはD.R。 Smithである。氏によれば子宮 アレルギー患者の最も屡々訴える3症状は月経 痛,粘液性帯下及び月経不順であるという。アレ ルゲンとして小麦,卵,ミルク,牛豚魚肉,野菜 等種k’の動物性及び植物性食品が挙げられる。叉 これ等アレルゲンと思われる食品を禁止すること によって治癒するものが多いという。Roweも亦 月経痛の原因としてアレルゲンの探求に住むべぎ であると主張する。アレルギー反応の多くのもの ばヒズタミンによって作られることからして抗ヒ スタミン剤によって月経困難症が治癒したととが 多くの研究者によって報告されてV、る。 4)精神神経障害説 月経困難症には精神・々経 的要素の加わるごとが多V・。従って本症ぱ所謂 精神肉体症(心身症)の一症状として来ることが ある。精神肉体症とは近時アメリカに於て唱道せ られるもので,何等の器質的変化なくして或は器 質的所見があってもそれだけでは説明出来ない範 囲に煽て,種k’の機能障害及び無痛等の神経症状 を訴えるものであって,一般に神経質の人で総て の精神的動揺や精神的傷害,即ち恐怖,不安,驚 愕,心配,懊悩,渇望,緊張等の精神上の軋礫が 原因となって起るのである。婦人科領域に於て占 める心身症の重要性に就てはCooke其の他の入 達によって屡々主張され,殊に月経困難症の心身 症的見解は Hunter&Rolf, Robbins(1953) 等によって述べられた。 叉月経周期の後半に於ける感情の軋礫は子宮の収 縮を強くするであろうことも考えられ,る。 Boynton&Winther(1940)は機能性月経困 難症に悩む17∼25才の未婚婦人100人に就て予め いつれも優秀な治療薬であることを暗示した後 その中の50人に単なる気休め薬Placeboを与え (経i口的)他の50人にぱEstriol glycuronide 錠を与えた所,前者の8%及び後者の12%に凡て 9∼12ヵ月問月経困難症が完全に治癒したごとを 認めた。 暗示が月経困難症の治療に重要な役割を演じる ことは既にDick(1925)がこの種の治療法に成

功したことを報告し,更にKroger&Freed

一127一

(4)

4 (1943)は従来種々の薬剤或は手術的療法によっ ても無効であった重症月経困難症9例に催眠術と 精神分析を併用して7例に著効を収めた。 Weingraf(1944)は本症は一の臓器神経症で あるといい,Hunter及びRolf(1947)は特に 痛覚の鋭敏な婦人に捨ては感覚調節が異常の域に 達し,月経によって起る生理的の症状が誇張され て,それが疹痛及び他の不快症状となって現われ るのであるという。Browne(1949)は本症の疹 痛は知覚神経線維の変化によって其の感受性が変 化し,正常では無痛であるべき子宮或は卵巣から の知覚刺戟が有痛性となるものであるという。 Hamanは月経困難症の婦人を正常婦人及び男子 と比較してその疹痛閾値を研究したが,月経困難 症の婦人に於ては平均箪笥閾値は正常のものより も低いことを発見した。この低閾値は月経閉止後 にも残る。即ち本症婦人には正常婦人よりも疹痛 に対する感受性を大にするような本質的要素が存 在するのでぱないかと想像する○ 其の他子宮を支配する交感神経殊に仙骨神経或 は神経節IC炎症が存する揚合に刺戟を感じること ぶ過敏となって本症の原因になると VA Vi,或は所 謂卵巣神経痛Ovarian neuralgiaとして小胞性 変性を起した卵巣叉は被包の菲薄となった卵巣か ら疹痛が来るごとがあるといわれる.がなお明かで ない。Browneによれば卵巣性月経困難症は確か に存在するものであって,この揚合ゾンデを子宮 口に挿入すると何等の疹痛をも起さすに頸管を通 過させることが出来るが,子宮性月経困難症では 恥骨上部叉は下腹部に痛みが起ることによって鑑 別することが出来るという。又重症の卵巣性月経 困難症には常に卵巣に硬化した嚢胞の存在を発見 すると唱えた。 5)子宮発育不全 機能性月経困難を訴える婦入に 子宮の発育不全を証明するごとが甚だ多い。R. Schr6−

derは31.5%, Naujoksは140%, Joachimovits& Hirshは60%に過てこれを見るとv)う。との数字は我 国には過大であるかも知れないが,子宮発育不全の多 いことは確かに了解出来る。 子宮発育不全のために子宮腔が小さく,子宮口叉は 頸管が狭く,或は子宮筋の発育が不良であるために伸 展性に乏しく,月経血の晶出が障害されて子宮腔に貯 溜し,子宮壁が強く緊張するtとが疹痛の原因である といわれた。子宮発育不全に璽目合訴ナる子宮の強度 前屈や後屈症の時も亦血液の流出が妨げられて同様の 結果となる。或は子宮発育不全の際子宮壁の筋線維の 発育がその結合組織に比して著し姻く良であるために 収縮が不充分で,月経時には静脈欝血を来して子宮壁 の強い緊張を起すた菊であるとなし(Schultz)或は同 時に子宮の靱帯が短く伸展性に乏しく月経時充血に際 して緊画して漿膜を刺戟するため(Schr6der)等と説 明される。然しとれ等の説にはなお矛盾す裁噌まも多 く,必ずしもこのような磯械的障害のみによって痙痛 が起るものとは断じ難いQ 子宮発育不全が今日主として諸内分泌機能障害の一 症状と見倣され,殊に卵巣機能と密接な関係のあるご とが認められ,又子宮発育不全では植物蔵経系殊に血 管運動神経の興奮性が異常に高くなっているといわれ ているのであるから,本症が月経困難症の原因となる 場合も取前に述べたような内分泌機能障害,殊に卵巣 機能失調説がi眩に重要なものとして登場するのは当然 である。 6)体質又は栄養の障害 適当な内分泌機能を保っ ためには1一般の栄養が適正であることが重要であると とは既に実験的にも臨床的にも証明されでいる。又栄 養不良の脚達の間には月経困難症の発現率が高いtと も以前から知られている。との場合に栄養を改善する tとによって治療の目的を達するtとも可能である。 ビタミンや加レシウムの投与,食餌療法が屡々本症の 治療に奏効するととも認められる。ビタミンBは肝臓 に於てエスト・ゲンが適当に破壊される上に必要欠く べからざるものである。又近来月経前緊張症Preme− nstrual tension と同様にナトリウムイオン滞積を伴 う水分の代謝障害が月経困難症の原因となり得るとせ られる。 痩せた勉強熱心な坐り勝ちの少女及び肥満した或ぽ 強大な体格の持ち主で体重過大の少女,tの両者共に 月経困難症に罹り易い。叉筆者の統計観察では無力性 の繊細な体質の霊亀及び反対に強大な細身型体格を持 つ婦人の両者に於て,共に正常体格の立入に比して子 宮発育不全が高率に存在する。Hoffmanによれば月 経困難症婦入124例に於て正常体質29%に対し脂肪休 質35%,無力性体質36%である。 以上主として機能性月経困難症の原因に就て述 べたが甚だ複雑である。これ等の中ICは器質的原 因と見られるものもないではない。 治 療 月経困難症の原因が単一でなV・から治療法も亦 多種多様である。従ってこれ等の治療法を簡単に 分類して述べることは出来ないが其の主なるもの 一一 128 一

(5)

の概略に寝て記すこととする。 1) 精神療法,暗示療法,催眠術及び精神分析』 等を応用して本症癸生の精神的要素を除去し,素 謡に対する閾値を高くすることを目的とする。精 神分析及び催眠術等は特殊の知識と経験とを必要 とするため簡単には行い難いが,暗示療法は患者 の信頼を得ているならば容易に行い得るものであ る。本症の原因として重大な器質的疾患のないこ とを説き,患者に本症の病理を理解せしめてその 治癒を確信するように暗示を与え,且つ親切に慰 安することが必要である。 Alice Clowは母校G英国)の女学生に月経の 生理を説明し,月経は全く生理的現象であるから 疹痛や倦怠を伴うものでないことを力説してこれ を確信させることによって,月経困難症を70%減 少させることに成功したという。彼女1ま月経を血 脈1する Unwellという言葉を用bることが禍因 であるとしてこれを禁じ(恰も無痛分娩を行う際 に陣痛という言葉が不適当であるというように) 温水シャワー,坐浴及び中等度の体操を奨励し, 便秘に傾く者には緩下剤を一与えた。 本症に対する薬剤療法に於てすらも多分に暗示 的効果を含むものであるから之れを軽視してはな らない。 2)体操療法 Ayer&Ussher, B量llig等に よる研究を基礎とし,主として腹筋,背筋,腰品等 の伸展運動を目的としたもので種A’の型が案出さ れてV・る。Haman式体操は甚だ簡単で家庭に於 ても行い得,所要時間は1日5分以内である。通 常2∼3ヵ月間毎日続行することによって効果を 挙げることが出来るが,この体操の効果が現われ たなら一旦中止し,若し疹痛が再発した場合には 再び続行する。この場合月経前1週間毎日続行す ることは疹痛の再発予防法として有効であるとい う。氏はこれを就床を必要とする程度の月経困難 症婦人129人に応用したが,その結果,程度の差 はあるが少くともその85%に於て由る程度の効果 を挙げミると,とカ§出来たとV、う。 其の他戸外の散歩等の適度の運動或は日常の仕 事を行うことによって気分の転換をはかることが よ/・。 3) 食餌療法 痩せた無力性体質の婦人にはカ Pリーの豊富な食餌を与えて体重の増加を図り全 身の栄養状態を向上させることが必要であIP,肥 満した脂肪質の婦入にぱカロリーを調節して体重 の減少を図ることが良い。街おビタミン(殊に B)及びカルシウム等を充分に摂るごとが必要で ある。Boynton&HartleyはCa1cium glucona・

te約49をViosterolと共に月経前2週間毎日

投与することによって,本症の67%を完全lc治癒 させることが出来たと報告した。共の他Gubner &UngerleiderはビタミンKを以て治療したと ころその過半数に於て有効であったという。 4)薬物療法 子宮筋痙攣を排除するのに最も 有効なものはモルヒネ及び阿片アルカロイドであ る。然しながら之れ等の薬剤は習慣性を有し反復 して使用するときは慢性中毒症に陥る故に,これ 等の薬剤並に習慣性を有するアルカロイドを本症 の治療に用いることは禁止さるべきである。Bic−

kers或はGrossman等は無毒性の非麻薬性合

成痙攣抑制剤Pavatrine等を用いて甚だ良い成 ヨ 績を得たと報告しているが其の薬剤の成分等は明 かでなV・。 薬物療法は薄症療法であって…一時的の疹痛緩和 を図る目的に用いられるに過ぎない。従って通常 催眠剤,鎮静剤,筋肉弛緩剤等が用いられ又種々 のこれ等薬物の合剤が用いられる。アスピリン, アミノピリン(ピラミドン),フェナセチン及び この3者の合剤(その割合tj: O.5:0.310.5),ア ンチピリン,グレラン,セダロン,サリドン,プロ バリン,ルミナール,プロムラρル,ヂアール, パパペリン等の外に時として一蒔的使用に用いら れるパビナール,パビナールアトロピン,燐酸コ デイン等である。

Fekette, A正exander V等ぱMenockin(ヒニ

ン,コデイン,アミノピリン,アスピリンの合 剤)Bauer, Locenz等ぱMerstin(ピラミド ンデパビナール,ルミナールの合剤)津:田,夏, 堤低回ばアPクイン(アンチピリン,塩酸パパペ リンの合剤) を用いAinlay ぱアスピリン(約 0,3)フェナセチン(0.2)塩:酸プPパドリン (0.()5)の合剤,Greenhi11はアスピリン,フ・z ナセチン,パパペリン,アトロピンの合剤を用い て夫々良好な成績を得たことを報告している。伺 お井戸及び平林氏ぱ Tetraethyl ammonium bromide(テブμン)を予定月経前2∼4日に2 日間連続して1日1アンプルを静脈内に徐々に注 射ナるごとによって良成績を得たことを報告し,

一129一一

(6)

6 殊に副交感神経機能充進の患者に有効であったと いう。 5)ホルモン療法性ホルモン・新陳代謝ホル モン等が用いられるカ㍉卵巣,睾丸,脳下乖体前 葉等のホルモン使用の基礎となるべき理論は未だ 混沌として一定せす,或る揚合には反って現今の 学理と矛盾するように思われるものさえある。 a,エス1’・Pゲン療法前lc述べたように準聾心 性月経困難症は無排卵性月経には軽んど起らない という事実に立脚してSturgis&Albrightは 排卵を抑制して本症を治療することを試み,エチ ニ_ル。エストラジオールエ万単位を1FII量とし て6日間に亘って投与し(周期の第6日目以前に 投薬を開始する)甚だ良い成績を得たことを報告 した。其の後この種排卵抑制法によって奏効した 多くの報告が発表された。Sturgis&Meigsは Estradiol dipropionateエOm9乾メ1経周期第6日 に埋没し,以後10日の翁忌を以て反復することに よって3ヵ月間の無月経を見,Bandall&Odell はスチルブェストロール1mg匙周期の第2日か ら開始し20日間毎日投与し,Haus等ぱこれの全

量60mgを用いて奏効を見た。又Schuckぱ

Estinyl O.05mg投一与を周期の第1日から開始し 10∼20日問継続して60%に有効であったという。、 其の他の治験報告も多い。 一般にスチルブエス}n一ル1m9(!万単位) 一他の種類のエストゴゲン剤も同様1漁れに相 当する量,例えばエストラジ■一 ・一ル⑪.⑪5∼0,1mg 内服等が用いられる一つつを毎日凡そ月経第1 日から20∼25日間投与すると,投一与中止後多くは 2∼8日で疹痛を伴わない出血が起る。これを周 期的に繰返すのであるが,この投与を止めると次 の月には再び排卵して疹痛を伴う月経が現われ る。即ち本療法の効果ぼ永続するものではないか ら常に反復して治療する必要がある。しかも本法 も亦必すしも常に奏効するとは限らす,又受胎能 を低下さぜ内分泌平衡を障害する可能性があるか ら常時行うべき:方法でぱない。更にエスト鷺ゲン の大量投与に引き続いて大量の子宮出.血を来すご, とがあるから長期使用ぱ避けねばならない。 b,プロゲステロン療法.黄体ホルモンは子宮 筋を弛緩せしめでその収縮を抑制する作用がある として月経周期の後半に用いられるが,前に述べ たように之れには最近の理論からすれば其の作用 機転に疑義がある。然しLockner等はプロゲス テロン1∼5mgを月経前1週間毎日又は隔日に 筋肉に注射して効果を挙げたことを報告し,’最近 でも黄体ホルモンが月経困難症に有効であるとの 報告(河田)があり,黄体形成の不足乃至欠如が あると思われるような若年未婚婦人或は月経前期 に内膜が増殖相を呈:している患者には月経前にプ ロゲステロンの投与は有効であるという。 プロゲステロン製剤としてぱプロゲスチン及び 合成剤であるオオホルミンルテウム,エチ戸田ル テ.ストテロン等がある。 c,アンドロゲン療法男性ホルモンがエスト ロゲン同様に用いられることがある。テストステ Pンを予定月経のユ4日前から月経開始まで隔日に 10mg宛注射,或は口腔(舌下)用メチールテス+ ステロンを月経前10日問毎日用いる等である。其 の他テストステロン・プロピオナートの筋肉内注 射が用いられる。其の作用機転は未だ明かでない が,恐らく化学構造がプロゲステロンに類似して いることから後者と同様の作用或は内膜の黄体相 化を阻止するにあるのではないかと老えられる。 然し其の効巣は疑わしく又大量使用は男性化を招 く危険がある等の理由で現今応用されることが少 い。 d,ゴナドF. vピン及び性永ルモン併用療法 Pohl等は1日韓乖体前葉ホルモンが有効であると いい,又絨毛窪々腺刺戟ホルモンと卵胞*ルモン の合併療法が行われる。殊に子宮発育不全による 困難症,膜様月経困難症にはこれ等の併用或ぱ卵 胞ホルモンと黄体ホルモンの併用療法が有効であ るといわれる。 6,甲状腺ホルモン 月経困難症で新陳代謝の 低下を伴う揚合には甲状腺物質を単独に,又甲状 腺機能心証の訳合には沃化物及び臭化物等を用い てその機能を調節することによって奏効すること があるG f,インシxリン療法 A工tschu1は栄養不良患 者の治療にインシュリンを用熔た際に偶然月経困 難症のある患者の月経痛が治癒したことを発見し た。そこで月経困難を訴える正常栄養の婦入12人 にこれを試みたところ10人が治癒したのを認め た。Schrickも亦予定月経の3∼5日前から毎日 一 ISO 一

(7)

昼食前にインシュリン5単位の注射を始めて月経 終了まで継続し甚だ優秀な成績を得た。Tedstr− om&Wilsonは含水炭素の多V喰餌によって月 経困難症が治癒することを認め,膵臓に対して過 剰のインシュリン分泌を催起する刺戟的効果によ るものであろうとして,含水炭素療法殊に月経の 1週前から多量の糖分を与えることを推奨する。 6)抗ヒスタミン療法Muethere其の他はヒ スタミナーゼを用V、ることによって多くの月経困

難症を治癒し得たことを報告し,McElin&

Hortonは. Benadryl(抗ヒスタミン剤)を用 いて50%治癒iの効=果を;挙1ずたQ ’ 月経困難症の原因的要素としてアレルギーが重 大関係のあるように思われる入合であっても,そ のアレルゲンを探求し決定することは通常甚だ困 難なことであるから,このような似合には適当な 抗ヒスタミン剤を試みることも良い方法である。 7)子宮頸管拡張法 子宮発育不全等の場合に 狭小な頸管をヘガール氏拡張器等を用V・て適当の 大いさに拡大する方法である。この時最後のヘガ …ル拡張器を数分問頸管に挿入したまXで置くと よい。なるべく月経周期の中隔殊に排卵前に行 う。この効果は一時的であって永続しないために 再三反復する必要がある。Stone, Emerson等の 機能性困難症に甚だ有効であるとの報告がある。 この拡大効果を持続させるために,頸管を拡大し た後これに適当の太さの硬ゴム盲管或は軟い魚町 ゴム管を挿入する方法が行われる。長さは約1。5 ■ンチ,内子宮口を越えて深く挿入することが必 要である。この管が脱出しないように外子宮口辺 に1カ所縫合する等の方法で固定して.もよV・。重 々期間は数日乃至1週無傷はそれ以上を必要とす る。重症例には次回月経終了まで挿弛しておく。 これ等の治療期間は数ヵ月乃至数年間を必要とす ることがある。Fehlin9, Mense等は夫k・同様の 方法で良成績を得ることを報告してbるが感染の 危険が多V・から警戒を要する。頸管拡張と同時に 子宮内膜の刺戟掻爬を行う人達もある。 頸管拡張の刺戟が交感神経を介して脳下垂休に 達するといい(Birnb’erg)頸管拡張叉は掻爬後 に脳波を描写するとその脳電図に変化を認めたと いう(Bertrand)。叉頸管拡張が排卵を刺戟する ことは動物実験に於て証明されていることから, 頸管の拡張が脳下垂体を刺戟してその内分泌に影 響を与えるものと囲えられる。子宮発育不全性月 経困難症の婦人が1度妊娠分娩を経過すれば其の 後の月経痛は消:失すること伽多い。 8)子宮位置矯正手術 子宮後屈症等の子宮位竃異 常が本症の原因と認められる場合にはとれを手術的に 矯正することは勿論よい。然しながら実際玉子宮後転 症が原発月経困難症の真の原因となるtとは少く,し かもとれ等は多くは子宮発育不全に合併するものであ るから,その原因としての価値を決定するtとは一層 困難であるQ従ってたとえ子宮後屈等が唯一の原因と 考えられるような場合でも他の隠れた原因の追求を怠 らず,叉手術的矯正前に他の治療法を一応試みるごと が必要である。それ等が無効である場合にはペツサリ ウムを使用して子宮の位置を矯正し,その効果を確認 した上で手術的矯正を行うことが望ましい。然し他の 目的を併せて手術の適応とするtとは差支ない。 9)理学的療法 温浴,温湿布,デイアテノレミM,ラ ジオテノレミーを下腹部に応用すること,Vントゲンに 層よる卵巣弱照射或は聞脳照射等が試みられる。これ等 も全く無効ではない。詳細は省略する。 10)手術療法 以上すべての療法が無効であるよう な頑固重症の月経困難症に対しては上部下腹神経叢切 除術(Cott6氏手術〉或は:子宮の膣上部切断術等を行 うととがある。 以上機能性月経困難症の原因と治療の大略に就 て綜卜したが,臨床上これ等の正確な診断には甚 だ困難を伴うものである。従ってその治療法を決 定するに当ってもよろしく個々の患者に就て慎:重 に取捨選択して最も適当な方法を決定施行する以 タトに=良策はないようである。 一一一一一 /3i ww.

参照

関連したドキュメント

[r]

 ところで、 2016年の相模原市障害者殺傷事件をきっかけに、 政府

市民的その他のあらゆる分野において、他の 者との平等を基礎として全ての人権及び基本

既存の精神障害者通所施設の適応は、摂食障害者の繊細な感受性と病理の複雑さから通 所を継続することが難しくなることが多く、

電子式の検知機を用い て、配管等から漏れるフ ロンを検知する方法。検 知機の精度によるが、他

条第三項第二号の改正規定中 「

長期入院されている方など、病院という枠組みにいること自体が適切な治療とはいえないと思う。福祉サービスが整備されていれば

「1 カ月前」「2 カ月前」「3 カ月 前」のインデックスの用紙が付けられ ていたが、3