166 氏名(生年月日) 本 籍
学位の種類
学位授与の番号 学位授与の日付 学位授与の要件学位論文題目
論文審査委員
(67) スギ シタ ユウ コ杉下裕子(昭和3
博士(医学) 乙第1413号平成5年12月17日
学位規則第4条第2項該当(博士の学位論文提出者)
Neuropathyにおける末梢循環動態について
一指先容積脈波検査と冷水負荷試験による検討一 (主査)教授 丸山 勝一(副査)教授橋本 葉子,澤口 彰子
論 文 内 容 の 要 旨
目的 neuropathyと末梢循環との相互関与を検討する目 的で,指先容積脈波(DPG),加速度脈波(APG)を応 用して末梢循環を評価し,neuropathyの原因としての 循環不全所見とともに,neuropathyが宋梢循環に及ぼ す二次的影響について検討を行った. 対象及び方法 neuropathy患者37例を対象とし,運動,感覚,自律 神経の各障害の優位性により,それぞれM群(13例), S群(17例),A群(7例)に分けた.またneuropathy を有せず末梢循環障害のみの12症例をC群として併 せて検討した.DPGでは波高,切痕指数,冷水負荷試 験時の波高変化について,APGでは三型,及び前期と 後期の波高比(d/a)について検:討を加えた. 結果1)DPG所見上,低波高を示すものがS群6例
(35.3%),C群6例(50,0%)に多くみられ, S群では .そのうち拡張波が5例(83.3%),C群では収縮波が3 例(50.0%)認められた.M群には異常所見が少なく, A群の所見は低波高・拡張波2例(28.6%),低波高・ 収縮波1例(14.3%),高波高・拡張波1例(14.3%) 等,多彩で一定の傾向を示さなかった.2)冷水負荷 DPG所見は, S群に過剰な充血反応を示すもの,波高 回復の遅延を示すものの2型が観察された.3)APG では,C群に循環状態の悪化した波型がやや多いが4 群問の波型の差は明らかでなく,末梢血管抵抗の一指 標であるd/aには一定の傾向を認めなかった. 考察 neuropathyの病型による差はDPG所見上,血流量 を反映する波高,細動脈拡張度を示す切痕指数,およ び冷水負荷時の波高変化に反映された.S群, C群には 低波高が多いが,S群では拡張波であっても低波高の ものがみられ,その機序には,温・痛覚神経と血管運 動神経はともに径の細いC線維からなり両者の障害 が併存する可能性と,感覚神経を介する血管拡張反応 が関与する可能性とが考えられた.またS群の冷水負 荷所見では,病初期には過剰な充血反応を,長期経過 後は波高回復の遅延を示す傾向がみられた.M群に異 常所見が少ないのは,対象の重症度や病期の偏りにも よるが,運動神経の障害自体が末梢循環に直接及ぼす 影響の比較的小さいためと考えられた.A群の所見の 多様性は,血流調節の著しい変動幅によるものと推測 された.一方,APGの波型は加齢で変化する(d/aは 20歳台0.25±0.11,60歳台0.41±0.12)ので,広域の 年齢層を含む4群間にAPG所見上,病態のみによる 明らかな差異は認め難いものと考えた. 結論 neuropathyと末梢循環の相互関与を捉えるため, neuropathyの臨床病型を亜型に分け, DPG上の所見 の特異性を確認し,末梢循環障害に対する運動・感覚・ 自律の各神経の関与を明らかにした. 一772一167