スイバの生理・生態に関する研究とその教材化
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(2) 目 次 はじめに一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一1. 第1章 スイバの生理・生態に関する研究. 1−1節 はじめに一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一2 1−2節 スイバの多年草としての特徴 一一一一一一一一一3 1−2−1目的一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一3. 1−2−2資料と方法一一一一一一一一一一一一一一一一一3 1−2−3結果と考察一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一3. 1−3節 スイバの雌雄異株植物としての特徴一一一一一一一13 1−3−1目的一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一13 1−3−2方法一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一43. 1−3−3結果と考察一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一14. 1−4節 スイバの性比と環境一一一一一一一一一一一一一一一22 1−4−1目的一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一22 1−4−2方法一一一....__...........__一一..._.22. 1−4−3結果と考察一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一23. 第2章 スイバの教材化 2−1節 はじめに一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一28. 2−2節 スイバの文化...一___.一...__.._..一.一29 2−3節 春先の紅葉一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一32. 2−3−1方法 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一32 2−3−2結果と考察一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一33. 2−4節 植物の雌;雄性の視点一一一一一一一一一一一一一一一一一一36. おわりに一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一40 要旨一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一41. 謝 辞 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一44. 引用文献________._.._____一___46 資料一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一48.
(3) はじめに スイバ (Rし1melx ace古osa L.)はタデ科、ギシギシ属(Rumex)の宿根性多年. 生草本で、その熱型が雌雄異株の植物である。被子植物の中で雌雄異株の性表現を 示す種は数%をしめる(Yampolsky and Yampolsky、1922)。分布は温帯一熱帯で日. 本では南西諸島と北海道の北東を除く各地の田んぼの畦や川の堤防に自生してい. る。北半球温帯の原産で今は世界中に広く帰化している(北村・村田、1961)。北 原白秋は「土手のスカンポ ジャワ更紗 ...」と土手に咲くスイバの美しさを 詠んでいる。また、その葉や茎には酸味があり、昔から子どもらがよく採って食べ た。フランスではスイバをオゼーユ[oseiUe]というが、千切りにしたスイバをバ ターでいため、卵に加えて焼いたオムレツにして食べるなど食用にしている(山 本、1995)。. 高等植物の性染色体はこのスイバで初めて発見された(Kihara and Ono、. 1923)。次いで、スイバの倍数性問性体も発見され(小野・下斗米、1928)、その 間性体の染色体研究により、スイバがDrosopゐ11a型の性決定機構を示すことが明ら かにされた。その後、スイバの核型はかなりの多様性を示すことが報告されている (Kuroki and Kurita、1969)。最近ではスイバの染色体の地理的変異の研究(岩. 坪、1991)や性比決定についての細胞遺伝学的・生態学的研究(Masuoka・ F頭shima and Shimizu、1993)がなされている。. 本研究は、スイバの染色体に関する先行研究の成果をふまえ、スイバの生理・生 態に関する幅広い研究を進め、さらに「植物の性」という視点も含めて教材化をは かろうとする試みである。. 第1章ではスイバの生理・生態に関する研究をとりあげた。ここではスイバの年間 を通しての乾重量分配率を測定し、スイバの多年草としての生育型の性質を明らか にした。また、雌雄異株植物としての特徴とともに、ごくまれに見られる問性株の. 形態や二次性徴についても調べた。そして、スイバにおける興味深い問題の一つで ある性比については地理的条件のちがう場所において調査し、性比と環境との関係 を探った。第2章では昔から人々に親しまれているスイバの特徴を生かした教材化を 図るとともに、性染色体についての先行研究を生かし、植物の雌雄性という視点か らの教材化を提案をした。 1.
(4) 第1章 スイバの生理・生態に関する研究. 1畦節 はじめに 多くの種:子植物は両性花のみをつける両全性雌雄同株(he㎜aphrodite plant)で. あるがスイバは雌雄異株の多年草本植物である。スイバの株には雌株、緋鯉のほか にわずかではあるが間性株がある。植物の性表現は多様で、本研究でとりあげたス イバやフキ、アオキのように雄花と雌花がことなった株につく雌雄異株(dioecious plant)、雄花と雌花が同じ株につく単性雌雄同株(monoecious plant)、雌花と両性. 花をつけるもの(アキノキリンソウ、スズメノカタビラ)、雄花と両性花をつける もの(ウメ、ヤツデ、キンエノコロ)および植物体の大きさに合わせて性を変える もの(マムシグサの仲間)などさまざまである(田中、1988)。また、環境要因、 ホルモンバランス、年齢などの影響で性が決定される種も多く、遺伝的に性が決定 され、性染色体をもっている高等植物はごく少数派である(松永・黒岩、1996)。前. 述のように高等植物の性染色体はスイバで初めて発見され、性表現とその染色体の. 型は詳しく調べられている(Ono、1935)。個体の性表現が遺伝的に固定されてい る場合の例としてウリ科がある(藤下、1985)。ウリ科では、直接に性表現を決定 する遺伝子座と雄性花をつける頻度を変化させる遺伝子座によって決定されている. ことがわかっている。ただし、これらの性表現は環境や生理条件の影響もかなり強 く受けることもあるようである(Freema:n et a1、1980,牧、1993)。. スイバは多年草であるので、その年齢とともに植物体は生理・生態学的に変化し ているはずである。スイバはいったい何年生きるのか。スイバの性表現は植物体の 年齢によって変化するのか、しないのか。問性株の性表現は毎年同じなのかどう か。そうした研究はスイバの染色体研究とは対称的にほとんど行われていない。ま た、スイバの生殖の方法も有性生殖のほかに根茎による無性的な栄養生殖も考えら れる。さらに、無配生殖の可能性の有無など明らかになっていない部分が多い。 本章ではスイバの多年草としての特徴を根の形態や乾重量分配率の年周変化から. 調べるとともに、雌雄異株植物としての特徴として守株、雌株そして間性株の生態 を探った。また、スイバの興味ある問題の一つである性比が、環境との関係でどう なっているのかについても調べた。. 2.
(5) 1−2節 スイバの多年草としての特徴についての研究 1−2−1 目的. スイバには多年草としての生活環がある。ここでは、スイバが年間を通してどの ような生育型を示すのかを乾重量分配率を測定することによって探った。また、多. 年草であるがゆえに野外では1年目の株、2年目の株、3年目の株など年齢(age)の 異なった株が混在している。乾重量分配率といっても年齢の異なる株によって年間 の乾重量分配率の変化は異なってくると予想される。したがって個体の年齢を決定 することは重要と考える。ここでは、スイバの根と根茎の観察によって、個体の年 齢をある程度予測することを試みた。 1−2−2 試料と方法. 兵庫教育大学芸術棟南西樹木園に生育するスイバ255個体に雌雄別のマーキングを した。雌雄の判定は1996年の5月末に成熟個体の花の形態により行った。毎月定期 的に同程度の大きさのスイバ10個体(雄株5、雌株5)を根から掘り起こし乾重量測 定の試料とした。試料は実験室で根に付着している土を水できれいに洗い去り、根 及び根茎の形態を観察し記録した。その後、試料を器官別(根、根茎、茎、葉、花 穂)に分け、紙i袋(クラフト封筒、筋入、長型4号、90×205皿m、フク印封筒製)に. 入れ、105℃の乾燥機(Dryi㎎Oven DX41 YAMATO SCIENTIFIC CO.工TD!rOKYO JAPAN)で24時間乾燥させた。こうして乾燥させた試料は紙袋 のままデシケーター内で10分間放冷してから紙袋を含んだ重量(W①)を上皿電子. 天秤(メトラー・トレド製、PB302)で測定した。同様に、空の紙袋5枚を105℃で 24時間乾燥させ、デシケーター内で10分間放冷してから重量を測定し、空の紙袋1. 枚当たりの平均重量(W②)を求めた。器官別乾重量(W①一W②)を総噸重量で除 して乾重量分配率(%)とした。こうして求めた10個口の乾重量分配率を平均して 各月の乾重量分配率とした。. 3.
(6) 1−2−3結果と考察 (1)個体の年齢推定. スイバを根ごと掘り起こし、付着している土を水できれいに洗い流すと黄色い根 を観察することができた。スイバは多年草であるため、根の形態は個体の年齢によ り次のような3点の特徴があった。. 特徴①スイバの根は黄色を帯びているが、その黄色は幾種類かの若干異なった色に 分けることができる。. 特徴②現在盛んに成長している根 は現在分化している茎の直 ぐ下から出て、白色をして. 4//白色の根. いる。. 黄色の根. 特徴③スイバの根茎は過去の茎痕. 〆. を残している。. この3点の特徴から個体の年齢 榿色の根 をある程度推測することができ た。まず、特徴①②の観察結果を 示す(図1、図2)。. 図1. △//白色の根 ・らふ」}. 黄色の根. 榿色の根. 図2 スケッチ、スイバの根の色. 4. 写真、スイバの根の色.
(7) ふつう、スイバの根は黄色みを帯びているが、よく観察するとはっきり色の違い があることがわかった(図1)。根の表面に付いた土をさらに水できれいに洗い去る と、現在成長している白色の根と明るい黄色の根、暗い燈色の根が観察できた(図 2)。. ・ミミミ. 1996年の12月21日に種子を蒔 ・. N、、. き、発芽したものを実験室及び 変フ. 温室にて栽培した。その根の状. 態を約1年後の1997年12月6日に 観察した。その株の根は太いも. ノ. 白色の根、 醍. ぐ. き、. のや細いものがあったが色はど. ,島. ll. れも黄色であった。また茎の直 ぐ下の細い根は白色をしていた. “. 黄色の根. (図3)。. 自然状態では、地上部が小さ くても、根の色が2色以上確認で きる個体(図4)や、どの根も同 じ黄色をしている個体など様々. 図3 発芽後1年の根. な根の様子が観察できた(図5)。. 黄色の根. 燈色の根一N」. 回4 地上部は小さいが2色 以上の根が観察できる 5. 図5 地上部は小さく、どの 根も同じ黄色をしている.
(8) さらに様々な個体の根を観察 黄色. 白色. していくと、白色、黄色、榿色. 藁}〆 舞・蟻・. のほかにも、暗いこげ茶色の根. 榿色. を見ることができた。. つぎに、特徴③の観察結果を. こげ茶色. 示す。. スイバは多年草としての生活 環をもっている。後述するよう に、花期の終わった個体は雌雄 図6 スイバの根の色. 株ともに花茎を枯らし、夏の終. 古い茎痕. わりにいったん休眠に入る。そ して、秋が近づくと再び根生葉. を出し光合成を始める。この 新しい茎. 纒r. 時、新しい茎の隣に古い茎の痕 跡(盈虚)が残る(図7)。. 囮. 根茎から新しい茎と根を取り. 図7 スイバの茎痕. 払うと古い茎痕がはっきりと観. n o. o\㍉壷/ 0. 察できた(図8)。. n\▲. な. △/o. ’. n. ∠藍./n. 0. く、. び. n:新しい茎 o:古い茎痕. 図8新しい茎と根を取り外した根茎. 6.
(9) Polygonatum(ユリ科)の. β. ノ b c. 場合、毎春頂芽を地上に出. 4 : :. し、冬季に枯死し、測芽が地. 1 し. 中で発育し、翌春の頂芽とな. d :. 1. 騎1{”廓・^. ,一e. る。したがって、上面に枯死 した地上茎の残痕が円痕と. W一曙脚. なって見られ、下面に不定根 図9 根 茎. を出す(図9 木島、. Polygonatum a芽 b,c,d,e茎痕 w根〔SCHNECK〕. 1962)。よって、. (木島正夫1962、植物形態学実験法、廣川書店より引用). Polygonatum(ユリ科)場合 は上面の茎痕の数を数えれば個体の年齢が推定できることになる。. スイバはPolygonatum(ユリ科)ほど鮮明ではないが、古い茎痕が見られた。そ して、個体によってはスイバの根茎もユリ科のように水平に近い状態で伸長するも のも見られた。このような特徴を総合すると、スイバの年齢を推定する事ができる (図10.11)。. 新しい茎. 白色/1鷺 黄色. こげ茶色. 図10 スイバの茎痕及び根茎と根 7.
(10) 〆’. 古い茎痕. N. 冒し. 醸. “. 白色の根. 憲. 新しい茎. 4_一榿色の根. (現在). (去年) ノ. 、. ノニ. こげ茶色の根. /(_昨年). 蛎. 黄色の根 (今年). 図11 スイバの年齢推定図(1997.10.21). 発芽後3年以上経過している個体の根 ・細くて白い根は現在細胞分裂して盛んに伸びている根 ・黄色の根は去年の秋∼今年の夏にかけて太った根 ・榿色の根は一昨年の秋∼去年の夏にかけて太った根 ・こげ茶色の根は3年前の秋∼一昨年の夏にかけて太った根. 8.
(11) (2)乾重量分配率の年間変化. 兵庫教育大学芸術棟南西樹木園に生育するスイバの乾重量分配率の年間変化を調 べると、多年草としての生育型の特徴がいくつか明らかになった。 特徴①春から初夏にかけての花芽分化の時期には根への乾重量分配率が減少し、 地上部への乾重量分配率が増加する。. 特徴②夏から秋及び冬にかけての根生葉生長(地上部乾重量増加)の時期には根よ りも根茎の総重量分配率が減少する。 特徴③夏以降の根生葉による生産物質は根茎よりも主に根に貯蔵される。 以下にその特徴をあげるに至った結果を示す。. 2月から5月にかけて スイバの地上部への乾 重量分配率は増加する (図12)。この時期は. s. 繁殖活動に向けての花. 襲圃. 芽分化と花穂を持ち上 げる茎の生長が見られ. 潔 地. る。そのための盛んな. 物質生産は光合成器官 (葉)で行われる。こ. 2月 3月 4月 5月. 月. 図12 根と地上部の乾童量分配率の変化. の時、地上部への語学 量分配率が増加するにつれて、根の乾重量分配率の減少が見られる(図12)。つま. り、初夏の繁殖活動に向けて、スイバでは、根の乾重量分配率が減少するかわりに 地上部への乾重量分配率が増加することがわかった(特徴①)。. 初夏に花粉散布を終えた雄株の地上部は短期間の内に枯れて観察できなくなる。 それにやや遅れて種子散布を終えた雌株の地上部が枯れる。7月末には、ほとんどの スイバの地上部は枯れる。そして、夏が終わり彼岸が近づくと地上部に根生葉が展 開する。この時、根生葉生長の栄養はどこから供給されるのであろうか。. 9.
(12) 8月から12月における乾重量分配率の変化をみると、地上部の乾重量分配率が増加 するにしたがって、根茎の乾重量分配率が減少していくことがわかる(図13)。 これに対して、根の乾重量分配率は少しずつ増加している(図14)。. 70 60 ∼∼50 ). 樹一40. 根茎. 固. 魚30. 幽一 @地上部. 劉2・. 10. 0 皿= 【疋 ロ= 囚= 町 qコ 0㌔ O ・一 くM. 月. 図13 根茎と地上部の乾童量分配率の変化. 70 60 婁50 ). 掛40 固. 根 ■口 @地上部. 司R30 劉2・. 梛10 0 町: 皿 皿:1 田:: 田= αコ ⊂恥 o ・一 個. 広 幅14根と地上部の乾重量分配率の変化. 10.
(13) つまり、夏から秋及び冬にかけての根生葉生長(地上部乾重量増加)の時期には根 茎の貯蔵栄養分が消費されていくことがわかる(図15)。そして、光合成器官であ る根生葉の生長にしたがって生産物質は根へ貯蔵されていくことがわかった(図 16)。スイバの年間を通した生育型を乾重量分配率の月別変化からみると、春先か ら初夏の開花までは乾重量分配率を根から地上部へ移し、夏の休眠の後、根生葉展 開のためには根よりも根茎から地上部へ乾重量分配率を移すことがわかった(図 17)。. 1.20 1.00 ハ. 肋0.80. ). 留・・6・. ■根茎. 翼α4・. 囲地上部計. 0.20 0.00 肛: 皿 賦 1疋 皿 αコ σ㌔ o 一 くM. 月 白15根茎と地上部の平均乾重量の推移. 1.20 1.00 ハ. 紬O.80. ). 留α6・. ■根. 饗α4。. 国地上部計. 0.20 0.00 匝:= ロ= 1現 皿 皿. o σ’ 9 ;: 型 壮 図16根と地上部の平均乾■量の推移. 11.
(14) 纒 . 渕. 樽垂直曄蝉 ■團□■園 冒1. 冒引. 冒ロ. 目Ol. 目6. ξ 演 皿. e. 暇 白月 [皿魚. 冒9. 噌 倒. ≧. 冒9. 冒ツ. 巨£. 冒乙. 8. 8. 8. 穿. F. 室胆呂七一堕. 12. 8. o. 図.
(15) 1−3節 スイバの雌雄異株植物としての特徴 1−3−1 目的. スイバは世界に広く分布する雌雄異株植物として知られている。被子植物の中で は雌雄異株植物の占める割合は数%といわれている(Yampolsky and Yampolsky、. 1922)。自然状態では雄株、雌株及び両性花株(間性体)といわれる両性花をつける 株が見られる。野外では性比は雌に偏り、御株の出現率は30%前後(Kihara and. Ono1923)で3倍体の出現頻度は約1%である(岩坪1997未発表)。しかし、スイ バの自然集団に見られる♂の性比は13%∼44%とかなりの幅がある(Zarzycki& Rychlewskn 972、 Putwain&Harper 1972)。すべての個体が両性花だけをつけ. る性表現型は両全性雌雄同株(hermaphrodite)とよばれ、被子植物の中では最も 普通に見られる。また、すべての個体が雄花と雌花をつける単性雌雄同株. (monoecious)は風媒の植物に多い(矢原1988)。植物の性表現にはこの他に雄 花と両性花をつける雄性両全性同:種(andromonoecy)、雄蕊と両性株が遺伝的に 分化している雌性両全性異種(gynodioecy)などさまざまなものが知られている (矢原:1988)。そこで、本節ではスイバの雌株、雄株及び両性花株(間性体)につ. く花の形態を調べ、その特徴をとらえることを目標とした。さらに、問性体の性表 現をいっそう精密にあらわすため、雄性的両性花と雌性的両性花、そして両性花の それぞれの数を花穂ごとに調査し、両性花株(間性体)の特徴を探った。また、性 染色体を持つスイバは 「雌雄によってさまざまな生理・生態的な差(性差)がある」. との仮説を立て、それを実証することを目的とした。 1−3−2 試料と方法. 雌株、雄株及び間性株につく花の形態を調べるための株は兵庫教育大学内に生育 するスイバの雌株、雄健及び両性花株を用いた。また、野外調査で発見した両性花 株2個体(兵庫県鉢伏及び氷ノ山にて採集)も試料に加えた。花の形態は双眼実体顕 微鏡で観察し、顕微鏡写真およびスケッチにて記録した。両性花株の花穂の花々調. 査の試料は兵庫教育大学内で採取した両性花株3個体を用いた。両性花株の開花時に 各花穂中の雄花的両性花、雌花的両性花、及び両性花の数:を数え両性花株(問性 体)の変異を調べた。. 13.
(16) また、雌雄による性差の実証のための試料は兵庫教育大学内に生育するスイバ76 個体(雄株25個体、雌株51個体)を用い、1997年4月∼5月にかけて草丈を測定 し、その生長に性差があるかどうかを調べた。また、雌雄株、及び両性花株の葉の 気孔を観察し、孔辺細胞の大きさ及び気孔の密度を調べ比較した。気孔の観察に用 いた葉は雌雄株及び両性花株ともに根生葉で同程度の大きさのものを用いた。さら に、気孔観察のための葉の場所は中央部にそろえた。 1−3−3 結果と考i察. (1)雌花、雄花及び問性花の形態. スイバの雌花は6枚のがく片を持っている。開花時はそれらはほぼ同形同大である が、花の生長に伴って外側の3枚のがく片は反り返り、内側の3枚のがく片は子房を. 包んだまま生長する(図18のA∼F)。. で. 、’. _. ’も. A. B. ♂. 、. D. C. E F. 図18 スイバの雌花(実体顕微鏡写真フィルムをコンピュータにて処理). A:つぼみB:外側のがく片が開き始める C:柱頭がのぞき始め D:多数の柱頭が出てくる E、F:外側のがく片が反り返る 雄花は6枚のがく片と6本の雄しべからなっている。6枚のがく片は同時に開き、 ぶら下がった6本の雄しべは風に揺れて花粉を散布する(図19のA∼C)。. A. C. B. 図19 スイバの雄花(実体顕微鏡写真フィルムをコンピュータにて処理) A:つぼみ B:がくが開き始める C:がくが完全に開き花粉を散布する. 14.
(17) 両性花(間性体の花)としては様々な形態のものがみられた。 ほとんど雄花と変わらない形態だが、退化した雌花があるもの(図20)。. 雄しべと雌しべを両方備えているが雌しべに稔性がないもの(図21)。 雌しべが大きく、稔性をもつもの(図22)。. 醒. A B C. 図20 雄花的両性花(実体顕微鏡写真をコンピュータにて処理). A:ほとんど雄花に見える B:中心に退化した雌しべ C:退化した雌しべ. 図21 両性花(実体顕微鏡写 真). 雌しべのまわりに雄しべがある. 15.
(18) (2)両性花株(間性体)の花穂の花数調査. 両性花時には雄しべと雌しべを両方備えた両性花がつく。しかし、その性表現を もう少し精密に調べると、両性花の他に、雌しべがほとんど退化した雄花的両性花 や雌しべが大きく、種子をつける雌花的両性花がある。兵庫教育大学内で採取した 両性花株の花穂ごとの花山調査の結果、両性花株Aでは、両性花がほとんどであっ たが、花穂⑦から上の花穂で雄花的両性花を観察した(図23、図24)。. 花の数(個). ⑲⑳. 鬼 潟. ⑰.. ⑬ ⑫ ⑩. 0. ⑰ ⑯ ⑮ ⑭. ⑤. ④ 11. ③. 150. ⑳ ⑲ ⑱. ⑥. 7. 50 100. 10. ②. ⑬ ⑫ 呈⑪ 繹⑩. 9. ①. 8 7. ロ両性花の数 ■雄花的両性花の数. ⑨ ⑧. 16. ■雌花的両性花の数. ⑦ ⑥ ⑤ ④. 5. 4. ③ ・3. ② ① 2. 1. 図24両性花株Aの花穂中の両性花、. 単性的両性花の数. 図23 スイバの両性花株A 花穂に下から①②・・と番号を付け 両性花、単性花の数を調査した. 16.
(19) また、両性花株Cでは花穂①から両性花に混じって雄花的両性花、雌花的両性花 が観察できた。そして、その割合は両性花株Aに比べ大きいことがわかる(図25)。. 花の数(個). 0. 40. 20. ⑩ ⑨ ⑧ ⑦. □両性花の数. 呈⑥. 桿⑤. ■雄花的両性花の数. ④. ■雌花的両性花の数. ③ ② ①. 回25両性花株Cの花穂中の両性花、 単性的両性花の数 両性花株Bについては正確に調べることはできなかったが、両性花株A、Cに比べ て雄花的両性花の割合が圧倒的に多かった。. このように、両性花株にも様々な割合で両性花、単性的両性花をつけることがわ かった。. 17.
(20) (3)雌株と雄株及び両性花株の生育の性差. 野外で隣り合って生息す る雌株、雄株を観察する と、はじめは雄株が大きい. が、そのうち雌株が雄株と 同じ大きさになり、ついに は雌株が雄株より大きくな ることがわかる(図26∼図 28)。. 開花も雄株の方が早い。. スイバはいわゆる雄性先熟 の植物であることがわか る。. 兵庫教育大学内に生息す. るスイバ76個体(雄株25個 体、雌株51個体)を用い て、草丈の変化を継続測定 した結果を次に示す。. 図27 1997.4.21雌株と雄株がほぼ同じ高さになる. 図28 1997.4.26雌株が雄株より大きくなる. 18.
(21) まず、雄株の草丈の変化をみると、伸長生長(growth in length)の速度:はゆっ. くりであることがわかる(図29)。雄株に比べて雌株の伸長生長速度はある時期を 境に急激に速くなることがわかる(図30)。雌雄別の平均草丈の変化を比べてみる と、雄株の平均草丈の成長速度がゆっくりであるのに対して雌株の平均草丈の伸長. 生長速度が4月26日あたりを境に急激に大きくなっているのがわかる(図31)。ま た、雄株の草丈の個体差が少ないのに対して、雌株の草丈の個体差が大きいことも わかる(図29、図30)。. 博∼10番圏の百分位数. 120. 120. 100. 100. 80. 80. ) 60. 60. 餅 40. 40. 20. 20. ハ 弓. ボックスグラフ説明. 0. 0. 望望 工エエ. ≧. し. 頃. 頃. 望. 年月日 図29 雄株草丈の変化. σ1σi 工==コ= =:コ:. 年月日 図30 雌株草丈の変化. 19. 呈.
(22) 90.0 80.0 70.0. 一→一雄株主均. 60.0. 一■一一雌株平均. ハ. 冒50、0. ). 。d◆鰭一一髄噛囎髄幽’鶴一町一隔暉. ,d◆ 〆◆. 据40.0 樹 30.0 20.0 10.0. 0.0 寸. 鶏譲鵠鵠鵠畢巴 r 室 σ{6 σ; 1η rl. 呈. 塁 呈 工 工 工 呈 望. 蕊. 年月日 図31雌雄株別平均草丈の変化 ここで、スイバの伸長生長をもう少し精密に調べるため、草丈を(茎長+花序. 長)という捉え方で考えた。つまり、伸長生長が主にどの部分で盛んなのかを調べ た。その結果、刀工では5月5日∼5月17日にかけて草丈平均は45.0㎝から47.6㎝と 2.6㎝のわずかな伸びだが茎長平均は32.4cmから28.8㎝と3,6(m減少している(図. 32)。このことは、花序の部分が6.1cm生長したことを示している。旧株の場合、5 月5日∼5月17日にかけて草丈平均は71.5cmから84.2cmと12.7㎝の伸びを示している が、茎長は58.2α範から50.5(通と7.7㎝減少している(図33)。つまり、雌株の花序. がこの間に20.4㎝生長したことを示している。. このことから、スイバ雌雄株における伸長生長の性差は主に花序の伸長生長の性 差であることがわかった。. 20.
(23) 90 80 70 60 ハ. +草丈平均 一門一一茎長平均. 暮SO. 47、6. り. 初40 唖30 20. 3・2冨L一一一一______._. 花序の長さ. 28.8. 10. 0 1997/ 1997/ 5/5 5/17 年月日. 函32雄株の草丈と茎長の変化. 90 80. 84,2. 花序の長さ. 7◎. 60 ハ. 尋50. 50.5. り. 初40 唖30 20. +草丈平均 一剛L一一茎長平均. 10. 0 1997/ 1997/. 5/5 年月日 5/17 図33雌株の草丈と茎長の変化. 21.
(24) 1−4節 スイバの性比と環境 1畷一1 目 的. スイバの性比は野外では雌に偏ることが知られている(Zarzycki&Rychleski、. 1972 Putwain&Harper、1972 Kihara&Ono、1923)。スイバの性比は環 境とどのように関係しているのであろうか。ここでは様々な環境に生育するスイバ の性比を調査し、性比が環境と何らかの相関があるかどうかを調べた。 1−4−2 方 法. この研究では、それぞれの環境に生育するスイバの個体群における雌、雄及び問 性の出現率を調査した。各調査地域における全調査個体数にたいする雄、雌及び問. 性の個体数の割合を百分率で表し、それをそれぞれの出現率とした。本論文では性 比を雄出現率で表すことにする。なお、株と株が接近し、クローンの可能性がある 場合は主軸数をもって個体数とした。雌雄の判定は成熟個体の花の形態により行っ た。調査地域は兵庫教育大学の敷地をはじめ加東郡社町および小野市から16地域。. 兵庫県の最高峰氷ノ山を中心に10地域。中国地方の最高峰大山を中心に標高差をつ けた11地域。日本列島の緯度に差をつけるため低緯度の鹿児島県3地域、高緯度の青 森県5地域、中緯度の長野県7地域の計52地域である。なお、調査地域は様々な環境 に生育するスイバの性比をとりその関係を探るという目的のために次の観点で選定 した。. ①日当たりの違い②標高の違い③緯度の違い 調査に際し、土壌のpH及び土壌湿度を土壌酸湿度測定器DM−5(E.M.System Soil. Tester TOKYO JAPAN)により測定した。また、日当たりは、ロビッチ自記日射計 (OTA KEIKI SEISAKUSH:O CO..1∫rD TOKYO JAPAN)により積算日射量を測. 定した。標高は国土地理院の1:5000または1:2500の地形図から求めた。 なお、調査は1㎡の方形枠を用いて各個体群での調査面積を10㎡以上となるように した。広くて個体数の多い地域はランダムに方形枠を置きその中の個体数を数え. た。また、田の畦のように幅が狭くてそれほど長くない場所に生育する個体群の場 合は連続で方形枠を並べ、全個体を数えるようにした。また、個体群の生育面積が. 非常に広い場合は5m四方のロープで区切り、この25rdの方形枠をランダムに並べて 個体数を数えるようにした。このようにして調査した全調査面積は1201㎡で、全調 査個体数は9701個体である。. 22.
(25) 1−4−3 結果と考察. (1)スイバの地域個体群にみられる性比の変異. 調査時期が不適切で花による雌雄の判定が不可能である個体が多い調査地での性. 比は除いた。よって、調査地は40地域、調査全個体数は9435個体、全調査面積は 1137r㎡である。今回の調査個体群の性比で最も低いものは7.4%(調査地NO 18の鳥. 取県日野川河口近く)であり、最も高い性比は49.1%(調査地NO32兵庫県関宮町 面伏高原畑の畦東向き)であった。調. 査地40地域の性比の度数分布をとって. 14 12 10. みると性比20∼30の頻度が一番高く14 件であった。また、平均の性比は28.2 %であったが、標準偏差は10.1とかな り大きいばらつきがあった(図34)。. 週 8 賢 6. つまり、環境条件が異なる地域の性比. 4. はかなりのばらつきがあるといえる。. 2. 0. しかし、性比が50を越える(雌よりも. o o o o o ・一 c唖 ド) 寸. 雄のほうが多い)個体群は今回の調査. 性比(%). 地域にはなかった。. 図34 調査性比の度数分布. (2)標高と性比. 一概に標高といっても緯度との関係があるので同緯度における標高と性比の関係 を示す。鳥取県皆生海岸から大山にかけて11個体群の性比を調査した (1997.5.30)。標高はOm∼950. 50 mである。日当たりは1地域がや や悪かったが他の10地域は同程度. 40. に良好であった。鳥取県皆生海岸. 30 §. から大山にかけては標高300m辺. 藝2・. りを境にしてそれより低い標高で. 10. は性比は30%以下を示し、より高. 0. い標高において性比は35%以上を. 0. 200 400 600 800 1000. 標高(m). 示した(図35)。. 図35鳥取県大山における標高と性比. 23.
(26) 次に兵庫県鉢伏高原において7個体群の性比を調査した(1997.6.6)。標高は660. m∼880mである。日当たりは2地域がやや悪かったが他の5地域は同程度に良好で あった。兵庫県鉢伏高原においては標高が高いほど性比もやや高くなる傾向があっ. た。さらに、青森県青森市荒川∼八甲田へ向かう国道103号にそって4個体群の性比 を調査した(1997.7.11)。標高は16m∼730mである。しかし、調査時期がやや遅 く、雄株に枯れているものが多かった。したがって性比はかなり低めにでていると 推測される。しかし、ここでも標高が高いほど性比がやや高くなる傾向があった。. (3)積算日射量と性比. 積算日射量と性比の関係をさぐるのに適当な個体群の生育条件を次のように考え た。. ・標高差や緯度に差がないこと。. N. ・土壌のpHや土壌湿度等の土壌条件が同じであ ること。. ・人為的概乱があるところでは、毎年、同じ時 期に同程度なされていること。 ・日当たりの程度がかなり異なること。. 自然、. 今回の40調査地域の内、この条件を満たす個体 群としては兵庫教育大学芸術棟南の樹木園の3個体図36 兵庫教育大学芸術棟南 の樹木園における調査地域 群NO.00、 NO.05、 NO.06(図36)と兵庫県小野市. 小田上町の2個体群NO.07、 NO.08(図37)があ. 積算日射量はNO.05が一番多 く次に00で06が一番少ない。. る。. 兵庫教育大学芸術棟のNO.05は日当たりが良く、 NO.06はほとんど南側の建物の 陰になる地域である。そして、NO.00は午前中はほとんど北の建物の陰になるが、. 午後から日があたる個体群である。3地域とも大学敷地造成時に同質の土壌で造成さ れ、降雨量は全く同じと考えられるので土壌条件はほとんど同じと考えてよい。ま た、毎年同じ時期に同じ程度の草の刈り取りが行われている。したがって3個体群の 生育環境の差は積算日射量のみと考えられる。. また、兵庫県小野市小田上町の2個体群は道をはさんで北向き斜面に生育する個体. 群(NO.07)と南向き斜面に生育する個体群(NO.08)である。2個体群を分断する. 24.
(27) 道は1984年に低い河岸段丘を削って東西方向につ けられたものである。したがって、2地域の土壌条 件はほぼ同じと考えてよく、草の刈り取りも同じ 時期に同ように行われている。したがって、この2 個体群の生育環境の差は積算日射量のみと考えら れる。それぞれの調査地域の積算日射量はロビッ チ自記日射計により測定した。積算日射量の測定 にあたっては晴れた日に測定器を設置し、雲によ る日射量の減少を補正した値で比較をした。. 図37 兵庫県小野市小田上町. 兵庫教育大学芸術棟南の樹木園の3地域における. における調査地域 NO.07は北向き斜面で積算. 積算日射量と性比の関係を散布図で表すと積算日. 日射量は南向き斜面の08に. 射量が多いほど性比が低くなるという結果が得ら. 比べて少ない. れた(図38)。. また、小野市小田上町の2地域における積算日射量と性比の関係を散布図で表すと 積算日射量の差によって性比がかなり違ってくることがわかる。ここでも、積算日. 40. 40 ^30 )20 醒 翠10. ■. 30 蓑 二20 逼10. ■. ■. 0. 0 0 100 200 300. 0 100 200 300. 積算日射量(㌍/c㎡). 積算日射量(㌍/㎝り 図38積算日射量と性比(兵庫教育大学). 図39積算日射量と性比(小野市小田上町). 射量が多いほど性比が低くなるという結果が得られた(図39)。 (4)考察. 今回の調査個体群の中から比較のための条件に合う個体群を抽出し、標高と性 比、日射量と性比の関係を出してみると、標高が高くなるほど性比がやや高く(雄 の出現率がたかく)なる傾向があるようにみえる。また、積算日射量が多いほど性. 25.
(28) 比が低くなる傾向もあるようにみえる。このことは、どのように考えるとよいのだ ろうか。. スイバの性染色体の性型はYXY型:♀14=X+X+12、♂15雪Y+X+Y+12であるこ 1 2. とがわかっている(Kihara and Ono、1923>。そして、雄の性染色体は、小胞子 母細胞第1分裂で3連染色体を形成し、その後、Y1およびY,は同一極へ、 Xが他極へ 分離する。この結果、雄ではXとY、Y、をそれぞれ含む2型の生殖細胞ができあがる。.. 一方、雌の大胞子骨細胞第1分裂では、2つのXはおのおの両腕端で結合した環状の2 価染色体の形をとる。そして、分裂後期ではおのおのが均等に両極へ分離し、生殖. 細胞はXを含む1型だけとな る。したがってスイバの染色 体の生活環を示すと右のよう. 体細胞(2の 生殖細胞(n). 三脚・2<趾斐1:. ♂. X+6. ♀. になる(黒木、1975>。. よって、スイバの性比は遺伝. ♀14=X+X+12. 的に決まり1:1となるはずである。ではなぜ、スイバの野外観察場合は理論値の性. 比1:1を示さないのだろうか。Correns(1928)はその理由の一つとして精細胞の 受精力の強弱にもとめている。Corrensは花粉の中に雌雄を決定する2型のものがあ り、その受精力に差がある場合、なんらかの方法で競争を強化するか、あるいは競 争をなくすれば、両者の間にちがった性比の結果をみることができると考えた。前 者の場合弱い花粉は受精の可能性がへるし、後者では弱いものでも受精の機会があ たえられることになる。Corrensのこの考えによる実験結果から、スイバの場合、 多量受粉では. 性比が8.92% 表1多量および少量受粉による性比の比較(Correns) であるのに対 し、少量受粉. 供試植物. 多量受粉. 少量受粉. ♂(%)i総数. ♂(%);総数. Mを㎜d玄加maめα搬. では30.87%で Rαmex ace亡osaスイバ. 差(%). 31.6512,256. 43.78;2,377. 12.13. 8.92i 3,429. 30.87i 3,410. 21.95. あった(表1)。 (小野知夫:1963植物の雌雄性岩波全書253より引用). この表から、スイバは受粉競争による効果をヒロバノマンテマ(Merandrium album)より著しく受けることがわかる。つまり、スイバは受粉の際の花粉量の多 少が性比に大きく影響を与える植物であるといえる。Corrensの実験結果から、ス イバの性比と積算日射量の関係をうまく説明できないであろうか。. 26.
(29) 私は、積算日射量に差があると炭酸同化量に差ができ、花粉生産量にも差ができ ると考える。積算日射量が多いと花粉生産量が上がり、結果的に多量受粉を引き起 こし、性比が下がる。反対に、積算日射量が少ないと花粉生産量が下がり少量受粉 となって性比が上がると考える。もちろんブンセン・ロスコーの法則(光化学的効 果は吸収された光の強さと照射時間との積に比例する。)は積算日射量と花粉生産 量の関係を説明する前提となっている。ただし、スイバの雄株の花粉生産量が積算 B射量に比例しているかどうかは実験で確かめる必要がある。. Conn,」.S&UBlum(1981)は土壌肥よく度、土壌pH、土壌含水可能量と個 体密度はRhas魏ωαsの性比に影響を与えなかったと報告している。そして、 R ゐas謝ロ1αsの性比に影響を及ぼす機構として受精競争をあげ、さらに寿命の性差、. あるいは種子の休眠状態の性差について言及している。また、Lloyd.and Webb (1977)はマンテマ属とスイバで雄性が雌性より高い死亡率を示すと記載してい. る。そこで、兵庫教育大学内に生育するスイバ55個体(♂23個体、♀22個体)につ いてそのageを調べた結果、雄の2.27に対し、雌は3.00であった。これは、雌の平 均ageが雄に比べてやや長いことを示し、 Lloydら(1977)の結果と一致する。した. がって、スイバの性比が雌に偏ることの原因としては前に述べたCorrensの考えに つけ加えて、死亡率の性差が影響していると考えられる。. 標高と性比の関係においては、緯度との関係があるため標高を年平均気温に換算 して調査地の年平均気温と性比の関係も調べた。調査地の年平均気温は日本気象総. 覧下巻(高橋、1983)により、調査地に最も近い気象観測所の過去5年間のデータ をもとに推定した。気温の推定方法は地理的比例法(高橋、1983)によった。 その結果、今回標高と性比の関係を考察した鳥取県の皆生海岸から大山にかけて. のH個体群と兵庫県鉢伏高原の7個体群、および青森県青森市荒川∼八甲田へ向かう 国道103号にそっての4個体群に関しては年平均気温が低いと性比が高くなるという 関係が得られた。これは、気温の推定方法が気温(逓)減率を用いているため、標. 高と性比の相関と同じ関係になることは明らかである。そこで、今回の全国52調査 地の年平均気温と性比の関係を調べてみたが、相関は得られなかった。その理由は. 様々な環境という観点で選定した52調査地を推定年平均気温という単一の尺度で 測っても単純な関係は得られないということによるものと考える。標高以外の条件 をそろえて調査した性比と年平均気温の関係を調べることは今後の課題である。. 27.
(30) 第2章 スイバの教材化 2−1節 はじめに. スイバの教材化を考えるときに、理科教育、特に生物教育の目標についてふれて おく必要がある。ここでは、教材化の範囲を義務教育課程に限定して話を進めるこ とにする。. まず、小学校における生物教育の目標はどこにポイントをおくとよいのだろう。. 小学校指導書理科編(文部省、1989)の中から、生物とその環境に関わる目標を あげると次のようである。. 第3学年 「(1)身近に見られる植物、動物及び人の体を比較しながら調べ、見いだした問題を. 興味・関心を持って追求する活動を通して、・… 生物の体のつくりや成長の決 まりについての見方や考え方を養う。」. 第4学年 「(1)身近に見られる植物、動物及び人の体を天気や時刻などと関係付けながら調. べ、… 、生物の活動や成長と環境との関わりについての見方や考え方を養 う。」. 第5学年 「(1)生物の発生や成長をそれらにかかわる条件に目を向けながら調べ、・… 、. 生命の連続性についての見方や考え方を養う。」. さらに、第6学年では 「(1>生物の体のつくりと働き及び環境を相互に関係付けながら調べ、… 、生物. の体の働きの共通性や環境との関係についての見方や考え方を養う。」. また、中学校指導書理科編(文部省、1989)の中で、第2分野の(5)生物のつ ながりの目標は次のように記されている。. 「身近な生物についての観察、実験を通して、細胞レベルで見た生物の体のつく. り、親と子のつながり及び生物の進化について理解させるとともに、自然界におけ る生物同士のつながりについての認識を深める。」 そして、その内容の中に、. 「植物と動物を総合的にとらえ、細胞レベルで見た生物の共通性と相違性及び連続. 28.
(31) 性に気付かせるとともに、時間的、空間的なつながりについても理解を図ることが 主なねらいである。」 と解説してある。. 小学校の生物分野のカリキュラムの基本的な考え方としては次の提案がある(山 田、 1985) 。. 小学校における生物教育の目標 第一:生物を通しての感性の育成 第二:人間の生活文化の理解 第三:人間自身と身のまわりを取りまく環境の理解 また、中学校理科の内容の指導目標としては次の提案がある(山田、1985)。 ア.生物の多様性と共通性の認識. イ.人類の歴史および人間と自然との関係の知識・理解. こうした生物教育の目標をふまえて、スイバをとらえ直すとき、教材化の視点と してどのような点が考えられるであろうか。. 本章では、まず、人間の生活文化の理解と言う点からスイバの文化について考え てみる。次に、スイバの生態の中でも特徴的な冬から春先にかけての紅葉について 教材化を試みる。さらに、植物の雌雄性という視点からスイバをとらえるとどのよ うな教材化が可能であるかを提案する。. 2−2節 スイバの文化 スイバは「土手のスカンポ、ジャワ更紗、昼はホタルがねんねする… 」 (「酸模の咲く頃」北原白秋作詞、山田耕搾作曲)と、子供の歌の歌詞にもあるよ うに雌花は真紅:で、群れ咲いている花穂の、花や実の色あいは、更紗をおもわせる (山田、1992)。. 青森県での聞き取り調査では「春先、まだ青い野菜が少ないときは、スイバを野 菜代わりにして食べていた(70才男性)。」. 北海道東旭川では「旭川ではスイバは全く見ないね。ヒメスイバやギシギシはた くさんある。わたしは福島県から嫁いできたんだけど、小さいとき福島ではスイバ をとってよくおやつ代わりに食べた。場所によっておいしいスイバとまずいスイバ. 29.
(32) があって、ガキ大将が「おい、あそこのスイバを取りに行くそ。」とみんなをつれ て食べに行っていた。だからスイバは見たらすぐわかる。でも、旭川に嫁いできて から今までスイバは見たことないね(50才女性)。」. このように、スイバはかつて北国では春先の貴重な野菜としての役目をはたして いたり、子供が遊びつかれてかわいたのどを潤すのにもつてこいの酸っぱいおやつ 代わりであったことがわかる。. 食用の仕方は、4月∼5月頃、若い茎10αn∼15㎝くらいのものをナイフで切りと り、冬から早春には、霜にあたって柔らかい葉を摘む。ひとつまみの塩をいれた熱 湯あるいは重曹をいれてゆで、水にさらして、辛子あえ、酢みそあえ、油妙めなど にする。かなり伸びた茎は、つぼみつきの穂先と葉をとりのぞき、かたいものは、. 茎の皮をむいて、10∼12時間ほどうすめの塩水に漬けて、生のままサラダにでき る。穂先もまた、天ぷらにできる。しゅう酸が含まれているので、多量に食べるの はよくない(山田、1992)。. 表2 方言数の多い植物. スイバが日本入の生活に深く関わっていることは方. 植物名 1方言数. 言を調べることによってもわかる。日本植物(草本. イタドリ 529. 類)方言集(日本植物友の会編、1966)によると、ス イバにはスイスイ(京都、和歌山、兵庫、岡山、島 根、広島、山口、熊本、大分)、スイコン(長野、富 山)、スイコ(愛知、長野、越後高田、加賀)、スカ ンポ(秋田、岩手、山形、江戸、川崎市、新潟、山. ヒガンバナ 1 410 ツクシ 377 ジャガイモ 262. サルトリイバラi 255 カタバミ 223 1 Iオバコ 210. スイバ 1輌. 口、長崎)、シンジャ(鳥取、島根)、スイスイグサ. トウモロコシ 188. (岡山、島根、徳島)など190の方言がある(表2)。. (参照:日本植物方言集). また、欧米ではスイバの葉は好んで食べられている(北村・村田、1961)。ヨー ロッパ、とくにフランスでは、煮物用野菜として改良され、葉も大きく肉質のやわ らかなものが栽培されている(塚本編、園芸植物大事典、1994)。フランス料理用 語辞典(山本、1995)によると、フランスではスイバをオ出馬ユ[oseiUe]という が、千切りにしたスイバをバターでいため溶かし、卵に加えて焼いたオムレツにし て食べたり、ゆでたオゼイユの葉に黄金色のルウとブイヨンを加えて混ぜ、ミキサ ーにかけて卵、クリーム、バターを加え、タンバル(timbale)に盛って食べたりす. 30.
(33) ると記載されている。. 近年、日本でもフランス料理やハーブ嗜好の需要から、ソレルという商品がスー パーに出回るようになった。これは、主に大分県の大山町で栽培され全国に出荷さ れているものであるが、ソレルの学名はRαmex ace亡osa しである。ソレルの種子は. 大阪の種子業者がオランダより輸入している。その業者によるとソレルはフラン ス、イギリス、ドイツ、デンマークなどにも自生しているため、どこの種子がオラ ンダに入ってきているかわからないとのことであった。ちなみにその業者では Rロmex属の種子は20種扱っているとのことである(藤田種子株式会社、大阪)。 このようにみてくると、スイバは日本だけでなく、世界中の入々と深い関わりを 持つ植物のひとつであることがわかる。. 小学校低学年の生活科で日本の伝統文化と国際理解という視点からスイバを食べ る活動を展開することは可能であると考える。また、総合的な学習の場で、理科 (生物)と家庭(料理)そして社会(地理・国際理解)をクロスする教材としても スイバは活用できるであろう。. 31.
(34) 2−3節 春先の紅葉. 春先、野外でスイバを観察していると根生葉が真っ赤に紅葉しているのに気がっ く。ノゲシやタンポポ、ナズナなどの根生葉も紅葉しているがスイバのそれは特に 鮮やかである。植物の葉は秋に紅葉するものが多いが、秋の紅葉と春先の紅葉では その意味や仕組みがちがうのであろうか。本節ではスイバの生態の中でも特徴的な 春先の紅葉について調べ、教材化を試みた。 2−3−1方法. 1997年2月に兵庫教育大学内に生育しているスイバで紅葉している株にマーキン グを行い、紅葉がどのように変化していくか継続観察を行い、記録した。. また、紅葉している葉の色素を調べるため、シリカゲル薄層クロマトグラフィー (片山ら、1994)を行った。さらに、紅葉している葉とそうでない緑の葉で光質別 光エネルギーの吸収率を測定し、紅葉している葉とそうでない葉では吸収している 光エネルギーにどのような違いがあるのかを調べた。光質別意エネルギーの吸収率 の測定には「LI−1800C波長威光エネルギー分析装置(Portable Spectroradiometer)」 (盟和商事株式会社製)を用いた。試料は野外で採集したス. イバの紅葉と緑色の葉を用いた。採集した試料は速やかに分析装置にセットし、色 素の時間的化学変化を少なくした。測定の手順は“:LH 800 Portable. Spectroradiometer Instruction Manua1”にしたがった。主な手順を次に示す。 ①試料の表面を積分球側にセットし、基準反射率(IR)を測定した。 ②試料はそのままでサンプル反射率(ls)を測定した。 ③サンプル透過度(lt)を測定した。. ④試料を裏返して裏面を積分球側にセットし、基準透過度(Ir)を測定した。 ⑤試料はそのままでサンプル反射率(Is)を測定した。. 反射率(RS)はRS謹IS/1R、サンプル透過度(TS)はTS=IS/lrで求め、さらに吸収率. (1−RS一胎)を算出した。このようにして求めた波長別のエネルギー吸収率をプ. ロットし、紅葉の葉と緑の葉ではどの波長の光をどれぐらいのエネルギーとして吸 収しているかを比較した。. 32.
(35) 2−3−2結果と考察. 1997年2月19日から4月8日までマーキングしたスイバ5個体を継続観察した結 果、3月の始めまでは赤く葉を染めているが3月の中旬頃から徐々に赤い色素が抜け るように薄くなり、3月の下旬から4月上旬にかけて、葉が緑色に変化していくこと. がわかった(図40のア∼カ)。秋に紅葉するカエデやナンキンハゼ等はやがて枯れ 葉となり散るが、スイバの春先の紅葉は真っ赤に染まった葉が気温の上昇とともに 緑に変わっていく。スイバの紅葉は秋の紅葉のように一斉に枯れるということはな い。. ア1997.2.19. エ1997.3.21 . イ1997.2.24. オ1997.3.31. 図40 スイバの春先の紅葉(継続観察). 33. ウ1997.3.8. カ1997.4.8.
(36) 次に、シリカゲル薄層クログラフィーの結果を示す(図41)。紅葉、緑葉ともに クロロフィルaとクロロフィルbの両方の光合成色素を含んでいることがわかった。 スイバの紅葉は秋の紅葉と違い、さかんに光合成を行っている紅葉であることがわ かった。. 赤い葉の主役をなす色素は、一、二の例外はあるがほとんどすべての植物の場合ア ントシアニン系色素のグループの一つで、クリサンチミンという色素である(増. 田、1988)。本実験で行ったシリカゲル薄層クログラフィーではクリサンチミンの スポットは得られなかった。. ス}’ぐ. 紅葉. スらワで . 緑葉. carotene. ____...._」.一,,______....明■『ら________. chlorophyll a ・一一一一一一一一一一舵一一一一一一一 chlorophyll b一一一一一一一一一一一一一一一一ρ一一一一一一一一一一. 図41 シリカゲル薄層クロマトグラフィーの結果 展開溶媒:石油エーテル(沸点30−60℃)とアセトンの体積比7 3. 34.
(37) 次に、光質別光エネルギーの吸収率の測定の結果を示す(図42)。スイバの紅葉 の葉は緑の葉が吸収しない500から600㎜の光をよく吸収していることがわカ》つ た。このことは、光が弱い秋から冬さらに春先にかけての時期に、スイバの紅い葉 は効率よく光のエネルギーを吸収し、クロロフィルa.bで盛んに光合成を行っている ことを示している。. 1.00E+00 9.1〕〔〕E−01. 曾8㎝む1 壽7・00E−01 ◆紅葉. 蒼・細1 ◆緑葉 富. 憩5加E−01 ) 4.00E−01 ≧≦ 3F.OOE−01. 2,00E−01 1.00E−01. 0.00E+00 0 100 1200 ヨ00 400 500 600 ’700 800. :庄長(nm). 図42 スイバの葉の表からあたった波長別光エネルギーの吸収率. 35.
(38) 2−4節 植物の雌雄性の視点. 現行の学習指導要領では小学5年生で植物の発芽、成長及び結実の仕組み、魚など の動物及び人の発生や成長などの様子を、発生と雌雄の結びつきに視点をあてなが. ら調べさせ比較することによって性を教える6さらに、6年生では、植物、動物及び 人の体のつくりと働きの共通性に目を向け、生物としてまとめて見ることを教え る。しかし、小学校低学年では、一般に動物については生命のあるものと考える が、植物についてはなかば無生物的なものと判断することが多い(根本、1987)。. さらに、西川ら(1995)の「生物教育における文脈依存性に関する研究」によると 5年生でもP性による違い」、 「子どもの誕生理由」,、 「父との遺伝関係」で過半数 の児童が文脈依存性(context dependency)もしくは領域固有性(domein specificity)を示. すという報告がなされている。このことは、学習指導要領でねらっている植物、動 物及び人を生物としてまとめてみることの達成の難しさを示している。児童は動 だ 物、植物または生物一般の代表としてその生物を学んでいるのではなく、特定のそ の動物の学習であると考えている可能性が高い(西川ら、1995)。 植物の性の特徴とは何であろうか。. 植物の生活環は核相の交代にともなって世代の交代がみられる、そして各世代は 植物の種類によってちがった体制の発達を示すほか、性型についても各世代は別々 な分化を示している(小野・1963) (表3)。. 表3 植物の各世代における性型の分化 造配体(n) 造胞体(2n). 混成. 混成. 」性. ャ成. s性. 」性. 植 物 の 例 同株性苔蘇、同胞子羊歯. ル調性七回、異胞子羊歯 シ全性種子植物 ル感性種子植物. (引用)小野知夫:植物の雌雄性、岩波全書253、岩波書店(1963). また、約12万の被子植物種の性型についての統計的調査結果(Yampolsky and. Yampolsky、1922)から被子植物の70∼90%までが両全性であることは、動物種の 大部分が雌雄異体であるのとは対照的である(小野・1963> (表4)。. 36.
(39) 表4 被子植物の性型(Yampolsky and Yampolsky、1922) 性 型 単子葉植物(%) 双子葉植物(%). 属 種. 属 種. 73 71. 同脂性. 74 73 14 10. 異振動. 4 3. 6 4. 雑性. 6 7. 8 7. 多 性. 2 7. 6 14. 100 100. 100 100. (1898)(25145). (821) (96347). 両全性. (実数). 7 4. (引用)小野知夫:植物の雌雄性、岩波全書253、岩波書店(1963). さらに、矢原(1988)は花の性表現の多様性について、花の性のあり方、性表現 が私たち人間を含む高等な動物の場合といちじるしくことなっていることを具体的 な例を示しながら紹介している(表5、6)。. 表5 花・個体・集団の十型 花. ○. △. の. 性 型. 雄花. 個 癖. 雌花. ◎ 両生花. 戯や. 箋 朕\. 雄株. w扇 両全性株 遺伝的異型. 非遺伝的異型. 囲 囲. ♪、織,芦 織. 両全性雌雄同裸単性雌雄同株 (矢原徹一:花の性と交配、.Newton speciai issue,植物の世界,3,117より引用). 37.
(40) 表6 花・個体・集団の性型 集団の二型. 例. 個体の性型. 花の性型. 両全性雌雄同株. 両全性. 両性花. 単性雌雄同株. 両性. 雄花・雌花. 雄性両全性同株. 両性. 雄花・両性花. 混生同種. 両性. 雄花・雌花・両性花. オオモミジ. 雌雄異株. 雄性、雌性. 雄花、雌花. クロモジ、フキ. 雌性両全西下株. 雄性、両全性. 雌花、両性花. カワラナデシコ. 広義の雌雄同株. カタクリ、チゴユリ、ホオノキ、ショウ. Wョバカマ ブナ、ヤシャブシ ツユクサ、クサイチゴ、トチノキ、シュロ. ¥ウ. (矢原徹一:花の性と交配、.Newton special issue,植物の世界,3,117より引用). 植物の性の特徴の1つはその性表現の多様性にあるといえる。さらに、植物の性 には生殖法として有性生殖の他にジャガイモやさし木のような無性生殖(栄養生 殖)とセイヨウタンポポのような無性生殖(無融合生殖)がある。そして、同じ種 の中で有性生殖を行う系統と無融合生殖を行う系統が分化していることもある(矢 原、1988)。このように、植物の雌雄性は多様性に富んでいることが特徴である。 したがって小学校で植物の性を指導するとき、この多様性という視点を入れてはど うだろう。もちろん花の基本的構造はアブラナの花などできちんと押さえることは 大切である。しかし、児童の文脈依存性という点からいえば、アブラナで花の基本 がわかると考えているのは教師の独りよがりになる可能性がある。児童はアブラナ の . の花で花の基本構造を学んでいるわけではなく、アブラナの花の構造を学んでいる のである。それならば、いろいろな花のつくりを調べさせるとき、花・個体・集団 の押型の表(前述)の視点を押さえて観察をしていくと植物の性の多様性に気づか. せることができると考える。このとき、多くの被子植物は両性花をつけているが、 植物の中には少数だが私たちヒトと同じ雌雄異体(雌雄異株)のものもあるという 点を示すことによって、児童はより関心を持って植物を見るのではないかと考え る。もちろんこの時に雌雄同株では同じ個体に雄性器官と雌性器官を作る遺伝子群. があって、それが時期的に、または場所的に異なって発現し、雌雄異株ではそれぞ れの性器官を作る遺伝子群の一部が別々の個体に分離しているという理解は教師側 に必要ではある。しかし、遺伝子レベルのことは小中学校では無理なので高校、さ らに大学での教材としての発展を予想し、あえて雌雄異株植物も扱ってみることは 38.
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