• 検索結果がありません。

<論説>フェビアン協会時代のグレアム・ウォーラス

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "<論説>フェビアン協会時代のグレアム・ウォーラス"

Copied!
52
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)フ ェ ビ ア ン協 会 時 代 の グ レ ア ム ・ウ ォ ー ラ ス. 一 社会 主議論. フ ェビ ア ン協 会 へ の入 会. 井. 健. ﹃政 治 に お け る 人 間 性 ﹄ §. 石. ウ ォーラ ス. 一九 〇 八 年 に 発 表 し た. フ ェビ ア ン 協 会 時 代 の グ レ ア ム. 二 民 主主議論. は じめ に. 三 社 会変革 論. ((} ﹃鋤ゴObP ぐく. 〇一 一 口ω) は 、. 四 む す び にか え て. は じ め に. グ レ ア ム ・ウ ォ ー ラ ス. §§. 司. き 皿 §越. § ぎ ミ 腎勲 一8 。。) に お い て 当 時 の 伝 統 的 政 治 学 を 批 判 し 、 政 治 研 究 に 心 理 学 的 ア プ ロ ー チ を 導 入 す る こ と に よ っ て. (ぐ﹃〇一 ↓O﹃ ][帥 bOヨ 鋤口づ) を 通 じ て メ リ ア ム. (O匿 ユoω 即 ζ ①三 ①ヨ ) や ラ ズ. ﹁政 治 学 の 変 革 ﹂ を 図 る べ き こ と を 主 張 し た 。 こ う し た 彼 の 主 張 は 、 直 接 的 に 政 治 学 の 方 法 論 的 革 新 に つな が った わ け で は な か った が 、 そ の弟 子 リ ップ マ ン. 一107一.

(2) ウ ェル 働 る。. ﹁四 巨 頭 ﹂. ・バ ー ナ ー ド ・ シ ョ ウ. フ ェビ ア ン協 会 の. (ω圃αコ①蜜 ぐ﹃①σげ)、 ジ ョ ー ジ. (○ っ旨 づ①団 ○ =≦ 興 ) ら と と も に 、. 一八 八 六 年 四. (周鋤σ圃 鋤  口 ωOO沖 O梓団) に 所 属 し 、 そ の 中 心 的 な メ ン バ ー と し. (類舘 o乙 U°ピ自・ωω≦Φ=) に 有 益 な 示 唆 を 与 え 、 の ち の 投 票 行 動 や 政 治 意 識 の 研 究 に 道 を 開 い た と い わ れ て い. と こ ろ で 、 そ の ウ ォ ー ラ ス が 若 き 日 に フ ェビ ア ン 協 会. シ ド ニ ー ・オ リ ヴ ィ エ. ・ウ ェ ッブ. て積 極 的 に社 会 主 義 運 動 に か か わ って い た こと は 、 あ ま り 知 ら れ て い な い事 実 であ る。 ウ ォ ー ラ スは 、. ω冨 ≦ )、. 月 二 日 に フ ェビ ア ン 協 会 に 入 会 し 、 シ ド ニ ー (08 お ① b σ①ヨ 四a. ③. (田 αq 閃o霞 ) と よ ば れ 、 協 会 の 運 営 に お い て 指 導 的 な 役 割 を 果 た し た 。 し か し 、 や が て ウ ォ ー ラ ス は 、 関 税 改 革 や 教. ㈲. (国αぐ弔山﹃α カ゜℃①鋤ωO) は 、. 育 政 策 を め ぐ っ て 彼 ら と 対 立 し 、 一九 〇 四 年 一月 二 十 四 日 に フ ェビ ア ン 協 会 を 脱 会 す る こ と に な る の で あ る 。 だ が 、. フ ェ ビ ア ン 協 会 の メ ン バ ー で あ り 、 ウ ォ ー ラ ス の 友 人 で も あ っ た エ ド ワ ー ド ・ピ ー ズ. (国同]口Φo◎仲 しu餌叫肝①﹃) は 、 ﹁ウ ォ ー ラ ス は 、 ⋮ ⋮ 社 会 心 理 学 に 照 ら し て 現 在 の 代. ウ ォ ー ラ ス は フ ェビ ア ン協 会 を 脱 会 し た 後 も 、 ﹁名 前 以 外 の す べ て の 面 に お い て フ ェビ ア ン の ま ま で あ った ﹂ と 述 べ ⑤. て い る 。 ま た 、 ア ー ネ ス ト ・パ ー カ ー. 議 制 度 の 病 弊 を 診 断 し 、 そ の 治 療 法 を 示 唆 し よ う と し た 。 ⋮ ⋮ 一八 八 九 年 の フ ェ ビ ア ン ︹1ー ウ ォ ー ラ ス ︺ は 、 そ う し. た 病 弊 を 予 見 し な か った が 、 ︹フ ェビ ア ン協 会 で の ︺ さ ら な る 政 治 生 活 の 体 験 と 社 会 心 理 学 の 新 し い 研 究 と が 一八 八 ㈲. ①. ︹政 治 活 動 の ︺ 体 験 か ら 直 接 に 知 識 を え. 九 年 以 降 に 結 合 し 、 そ れ を 発 見 す る に 至 った ﹂ と 述 べ て い る 。 さ ら に 、 ウ ィ リ ア ム ・ス ト ー ン (ぐく帥 =凶 鋤ヨ 閃゜QOけO⇒①) も 、 ﹁フ ェビ ア ン の 政 治 活 動 家 と し て の ウ ォ ー ラ ス は 、 政 治 を 熟 知 し 、 そ の. た 。 そ う し た 政 治 に つ い て の知 識 は 、 彼 の 心 理 学 的 な 描 写 を 豊 か な も の にし た ﹂ と 述 べ て い る。 彼 ら が 指 摘 し て い る. よ う に 、 ウ ォ ー ラ ス の フ ェビ ア ン協 会 時 代 の さ ま ざ ま な 体 験 は 、 のち の彼 の思 想 形 成 に大 き な 影 響 を 与 え て い る と 思. 一108一. 第50巻第1号 近畿大学法学.

(3) フ ェ ビ ア ン協 会 時 代 の グ レ ア ム ・ウ ォ ー ラ ス. わ れ る 。 に も か か わ ら ず 、 ︿現 代 政 治 学 の 先 駆 者 ﹀ と し て の ウ ォ ー ラ ス が 検 討 の 対 象 に な った こ と は あ っ て も 、 ︿フ ェ. 這 卜。一)、 ﹃思 考 の 技 術 ﹄ (§ 鳴 毎 ミ ミ § 。曇. ひ お ト。0)、 ﹃社. S ミ轟 画 。ミ. ビ ア ン社 会 主 義 者 ﹀ と し て の ウ ォ ー ラ ス が 検 討 の 対 象 に な った こ と は 、 こ れ ま で あ ま り 例 が な い の で あ る 。 筆 者 は 今. ⑦。9ミ ミ 蕊ミ窒. §§ 斜 ち 認 ) へと 至 る 、 ウ ォ ー ラ ス の政 治 思 想 の 全 体 像 を 明 ら か に し 、 イ ギ リ ス政 治 思 想. お 一心)、 ﹃社 会 的 遺 産 ﹄ (Oミ. 後 の 長 期 的 な 研 究 テ ー マと し て 、 ﹃政 治 に お け る 人 間 性 ﹄ に は じ ま り 、 ﹃大 社 会 ﹄ (O越 ミ ⑦oo漕竜 、﹄ き 臥 § ミ゜。費 会 的 判 断 ﹄ (⑦09ミ 誉 會. 史 上 に お け る そ の位 置 づ け を 再 検 討 し た い と 考 え て い る 。 こ う し た 筆 者 の ウ ォ ー ラ ス研 究 に お い て、 フ ェビ ア ン協 会. 時 代 の ウ ォ ー ラ ス の政 治 思 想 を 検 討 す る こと は 、 看 過 で き な い重 要 な 課 題 であ る 。 そ こ で本 稿 で は 、 こ れ ま で あ ま り. 光 を 当 て ら れ る こ と の な か った ウ ォ ー ラ ス の 初 期 の 論 文 を 検 討 し 、 あ わ せ て彼 が 当 時 お こ な って い た 政 治 活 動 の内 容. を 分 析 す る こと に よ って、 フ ェビ ア ン協 会 時 代 の ウ ォ ー ラ ス の政 治 思 想 の特 徴 を 明 ら か に し て み た い。 本 稿 の構 成 は. 以 下 の通 り であ る。 ま ず 第 一章 で は 、 ウ ォ ー ラ スが フ ェビ ア ン協 会 に入 会 す る ま で の経 緯 と 、 フ ェビ ア ン協 会 の 初 期. の活 動 に つい て概 観 す る。 第 二 章 で は 、 フ ェビ ア ン協 会 時 代 の ウ ォ ー ラ ス の社 会 主 義 論 に つい て検 討 し 、 社 会 主 義 に. 対 す る 彼 の ア ン ビ バ レ ン ト な 感 情 を 明 ら か に す る 。 第 三 章 で は、 フ ェビ ア ン協 会 時 代 の ウ ォ ー ラ ス の民 主 主 義 論 に つ. い て 検 討 す る 。 こ こ で は 、 ウ ェ ッブ 、 シ ョウ ら フ ェビ ア ン主 流 派 の民 主 主 義 論 と 、 ウ ォ ー ラ ス の そ れ と の比 較 に焦 点. が 当 て ら れ る 。 第 四 章 で は 、 資 本 主 義 か ら 社 会 主 義 への 変 革 の方 法 に か ん す る ウ ォ ー ラ スめ 見 解 を 、 彼 が フ ェビ ア ン 協 会 時 代 に お こ な って い た 政 治 活 動 と の関 連 を ふ ま え な が ら 検 討 す る 。. 一109一.

(4) 一八 五 八 年 五 月 三 十. ( (}=σ①門↓ ぐくΩ 9コ鋤ω) の 息 子 と し て 、. (Oo6 二ω. (ω¢a Φ二き α) で 生 ま れ た 。 ウ ォ ー ラ ス は 、 シ ュ ル ズ ベ リ ・ ス ク ー ル. 一日 、 国 教 会 牧 師 ギ ル バ ー ト ・ ウ ォ ー ラ ス. フ ェビ ア ン協 会 への 入 会. ウ ォー ラ スは、 イ ング ラ ン ド 北 東 部 の 港 町 サ ンダ ー ラ ン ド. 一八 七 七 年 に オ ッ ク ス フ ォ ー ド 大 学 コ ー パ ス ・ク リ ス テ ィ ・カ レ ッ ジ. C 巳 く⑦邑 な ) に 進 学 し 、 大 学 を 卒 業 し た 三 年 後 の 一八 八 四 年 に は 、 ハ イ ゲ ー ト ・ ス ク ー ル. (ωげ﹃Φ≦ ooσ鐸﹃嘱 ωOげOO一 ) を 経 て、 O訂 凶 ω二 〇〇ぎ α qρ ○ ×hoa. 一年 も し な い う ち に そ の 職 を 解 雇 さ れ て し ま う 。 ウ ォ ー ラ ス は 、 国 教 会 牧 師 を 父 に も ち な が ら も 宗 教 的. (= 同 α qげ〇一① ωOげOO一 ) で 古 典 教 師 の 職 を え た 。 し か し 、 ウ ォ ー ラ ス は 、 そ の 職 務 の 一部 で あ っ た 聖 餐 式 へ の 出 席 を 拒 否 し た た め に、. ⑧. 懐 疑 に 悩 み 続 け 、 オ ッ ク ス フ ォ ー ド 大 学 の 第 一学 年 が 終 わ る こ ろ に は キ リ ス ト 教 信 仰 を 放 棄 し て い た の で あ る 。 の ち. ⑨. に ウ ォ ー ラ ス は 、 こ の こ ろ の 心 境 に つ い て 、 ﹁わ れ わ れ は み な 、 自 ら の 懐 疑 心 と 闘 った 。 そ の 闘 い に 勝 利 し た 者 は ほ. ﹁立 派 な 、 そ し て あ る 場 合 に は. "リ ベ ラ ル な " 教 育 を 受 け た に も. と ん ど の 場 合 聖 職 者 と な り 、 そ の 戦 い に 敗 れ た 者 は 不 可 知 論 者 と な った ﹂ と 回 想 し て い る 。 こ う し て 職 を 失 った ウ ォ ー ラ ス は 、 ﹁知 的 プ ロ レ タ リ ァ ー ト ﹂、 す な わ ち. α①. か か わ ら ず 、 現 代 社 会 で生 計 の ロ を 見 つけ る こ と が でき な い 中 流 階 級 の青 年 た ち の増 大 す る 階 級 ﹂ の 一人 と し て、 ロ ン ド ン に 住 む こ と に な った の で あ る 。. 当 時 ロ ン ド ン で は 、 経 済 史 上 ﹁大 不 況 ﹂ ( ○冨 讐 08 器 ゜。ωδ口) と よ ば れ る 深 刻 な 不 況 の影 響 に よ っ て、 失 業 者 の増. 大 、 貧 困 層 の拡 大 、 労 働 条 件 の悪 化 と い った 重 大 な 社 会 問 題 が 引 き 起 こ さ れ て い た 。 イ ギ リ スは 長 い あ いだ ﹁世 界 の. 110. 第50巻第1号 近畿大学法学.

(5) フ ェ ビ ア ン協 会 時 代 の グ レ ア ム ・ウ ォ ー ラ ス. 工 場 ﹂ と し て未 曾 有 の繁 栄 を 誇 っ てき た が 、 一八 七 三 年 の 世 界 恐 慌 か ら 一転 し て慢 性 的 な 不 況 に お ち い り 、 途 中 一時. む. ( O コ. 的 な 回 復 は あ った も の の、 一八 九 六 年 に 至 る ま で、 長 期 に わ た る 不 況 か ら 脱 却 でき な か っね 。 こ う し た 慢 性 的 な 不 況. は 必 然 的 に大 量 の失 業 者 を 生 み出 し 、 貧 困 層 を 拡 大 さ せ る こ と に な った 。 失 業 問 題 に つ い て いえ ば 、 コ ー ル. ⑫. 即 09Φ) に よ れ ば 、、﹁大 不 況 ﹂ 以 前 の 一八 七 二 年 に 一パ : セ ン ト であ った 失 業 率 は 、 一八 七 九 年 に は十 ニ パ ー セ ン. 下 近 く に ま で 上 昇 し た 。 ま た 貧 困 問 題 に つ い て い え ば ( チ 堂 ー ル ズ ・ブ ー ス (O冨 ユoω じuoo夢 ) の 画 期 的 な 社 会 調 査. に よ っ て 、 首 都 ロ ン ド ン で 暮 ら す 約 百 万 世 帯 の う ち 、 お よ そ 三 十 パ ー セ ン ト が 週 収 入 二 十 一シ リ ン グ の ﹁貧 困 線 ﹂ 以  . 下 で生 活 し て い る と い う 驚 く べ き 事 実 が 明 ら か に さ れ ね 。. こ う し た ﹁大 不 況 ﹂ の 深 化 に と も な う 失 業 .貧 困 問 題 の 発 生 は 、 そ れ に 呼 応 す る 新 た な 労 働 運 動 の 動 向 を 生 み 出 す. こ と に な った 。 そ の 一 つは 、 ﹁社 会 主 義 の 復 活 ﹂ (話 く帥く巴 oh ωo鼠 o嵩ωヨ ) と よ ば れ る 、 一八 八 〇 年 代 初 頭 に お け る 社. =旨 α日 き ) が 、 イ ギ リ ス で 最 初 の マ ル ク ス 主 義 団 体 で あ る ﹁社 会 民 主 連. 会 主 義 運 動 の 進 展 で あ る 。 そ れ は 具 体 的 に は 、 種 々 の 社 会 主 義 団 体 の 結 成 と い う か た ち で あ ら わ れ た 。 ま ず 一八 △ 二 年 に ヘ ン リ ー . ハイ ン ド マ ン (= ①霞 団 ︼≦. αq⊆Φ) を 結. 盟 ﹂ (GOOO陣 鋤一︼ ∪⑦ヨ OO﹃鋤一帥 O 周ΦαO﹃O紳凶 O P) を 結 成 し た 。 し か し 、 こ の 団 体 は ま も な く 路 線 対 立 を 起 こ し 、 ウ ィ リ ア ム ゜. モ リ ス (<﹃出財口H ロ ン臼O﹃﹃帥 ω) を 中 心 と す る 一派 が 別 れ て 、 一八 八 四 年 に ﹁社 会 主 義 者 連 盟 ﹂ (Q。09鋤=馨 ピ8. 成 し た 。 こ の 二 つ の 社 会 主 義 団 体 は 馬 一八 八 〇 年 代 末 に ロ ン ド ン で 頻 発 し た 労 働 者 ス ト ラ イ キ に お い て 指 導 的 な 役 割 ¢の. を果 たし た。. 労 働 運 動 に お け る も う 一つの 動 向 は、 ﹁新 組 合 主 義 ﹂ ( ZΦ≦ ⊂巳o巳 ωヨ ) と よ ば れ る 新 し いか た ち の労 働 組 合 運 動 α励. の 台 頭 であ る。 一八 八 〇 年 代 末 の ロ ン ド ツ で は 、 一八 八 八 年 の マ ツチ 女 工 ス ト ラ イ キ 、 一八 八 九 年 三月 のガ ス労 働 者. 111.

(6) スト ラ イ キ 、 同 年 八 ∼ 九 月 の ド ック 労 働 者 スト ラ イ キ な ど 、 不 熟 練 労 働 者 に よ る 大 規 模 な ス ト ラ イ キ が 頻 発 し た 。 こ. ㈹. れ ら の ス ト ラ イ キ が 労 働 者 側 の勝 利 に終 わ った こ と に よ っ て、 労 働 組 合 員 数 は 急 速 な 増 加 を 示 し た 。 一八 八 八 年 以 前. に 約 七 十 五 万 人 だ った 労 働 組 合 員 数 は 、 一八 九 二 年 に は そ の ほ ぼ 二 倍 の 百 五 十 万 人 以 上 に 達 し た の で あ る 。. こ う し た 社 会 主 義 団 体 の 結 成 や 新 組 合 主 義 の 高 揚 は 、 上 流 ・中 流 階 級 の 人 々 に 、 イ ギ リ ス の政 治 体 制 が 揺 る ぎ か ね. ㈹. ⑳. (函 鋤ユ ζ 四﹃図). OΦo﹃σqΦ) の 土 地 単 一税 論 、 コ ン ト (≧ ﹄αqζω8. ↓ o団づσ㊦①) の セ ツ ル メ ン ト 運 動 、 マ ル ク ス ㈲. (二 曾 曼. な い と の 大 き な 危 機 感 を 抱 か せ ㎞ ・ そ う し た 危 機 感 は イ ン テ リ 階 層 に も 伝 播 し 、 イ ギ リ ス思 想 界 は か つ て な い 知 的 混. (﹀ ヨ o置. 乱 の 様 相 を 見 せ て い た 。 ロ ン ド ン で は 、 ヘ ン リ ー ・ジ ョ ー ジ Oo3 8 ) の 実 証 主 義 、 ア ー ノ ル ド ・ ト イ ン ビ ー. の共 産 主 義 と い った 諸 思 想 が 入 り 乱 れ 、 そ の信 奉 者 を 求 め て 相 争 って い た 。. こ う し た ロ ン ド ン の 知 的 雰 囲 気 の な か で 、 ウ ォ ー ラ ス は 若 い 急 進 主 義 者 グ ル ー プ の 一員 と な っ て い た 。 こ の グ ル ー. ⑳. プ に は 、 当 時 植 民 地 省 の 一等 書 記 官 で の ち に ウ ォ ー ラ ス と と も に フ ェビ ア ン 協 会 の 指 導 者 の 一人 と な る シ ド ニ i .. ウ ェ ッブ や 、 の ち に 劇 作 家 ・社 会 批 評 家 と し て 有 名 に な る ジ ョ ー ジ ・バ ー ナ ー ド ・シ ョ ウ ら が 参 加 し て い た 。 ウ ォ ー. ラ ス と ウ ェ ッブ が 最 初 に 出 会 った の は 、 ウ ォ ー ラ ス が オ ック ス フ ォ ー ド 大 学 を 卒 業 し た 翌 年 の  八 八 二 年 、 大 学 時 代. の 友 人 で あ る シ ド ニ ー °オ リ ヴ ィ 肋 を 訪 ね て ・ 彼 の つ と め る 植 民 地 省 に 立 ち 寄 っ た と き の こ と で あ った 。 の ち に. ︹U ウ ェ ッブ と オ リ ヴ ィ エ︺ は 、 一一 人 と も 植 民 地 省 の 書 記 官 で あ った 。 オ リ ヴ ィ エは 不 在 で、. ウ ェ ッブ は 、 そ の と き の こ と を 次 の よ う に 回 想 し て い る 。. 当時、 われわれ. ウ ォ ー ラ ス は 彼 の 帰 り を ま っ て い た 。 ウ ォ ー ラ ス に 持 ち 前 の 知 的 な 親 し み や す さ か ら 、 ほ と ん ど す ぐ に私 た ち は. 112. 第50巻第1号 近畿大学法学.

(7) フ ェ ビ ア ン協 会 時 代 の グ レ ア ム ・ウ ォ ー ラ ス. チ ェス に 興 じ 、同時. ㈱. に 国 民 の現 状 に つい て議 論 し て い た 。. や が て 彼 ら は 、 シ ョ ウ が 一八 八 四 年 九 月 五 日 に 、 ウ ェ ッブ と オ リ ヴ ィ エが 一八 八 五 年 五 月 一日 に 、 そ れ ぞ れ フ ェビ. (= 口げΦ昇 Uu冨 口α)、 フ. ﹁新 生 活 友 愛 協 会 ﹂ (葺 ① 閃Φ=o≦ の三 〇 〇h 9 Φ Zo≦ = hΦ) か ら. ア ン 協 会 に 入 会 す る こ と に な る 。 当 時 の フ ェビ ア ン 協 会 は 、 ス コ ッ ト ラ ン ド の 社 会 思 想 家 ト マ ス ・デ ヴ ィ ッ ド ソ ン (訥 ﹁げO∋ 鋤ω UO<一 αのO昌) の 信 奉 者 に よ っ て つく ら れ た. (閃吋鋤昌評 勺Oα日 O﹃①)、 ヒ ュ ー バ ー ト ・ブ ラ ン ド. (] ﹃  ﹃ΦαO﹃一 〇屏 } (①αα①=) ら 無 名 の 若 手 知 識 人 を 中 心 と し た 、 小 さ な 知 的 サ ー ク ル に す ぎ な か っ. ⑳ 分 派 し た ば か り で あ り 、 フ ラ ン ク ・ポ ド モ ア レ デ リ ッ ク ・ケ ッ デ ル ⑳. た 。 フ ェビ ア ン協 会 は そ の目 的 を ﹁最 高 の道 徳 的 可 能 性 に基 づ い て社 会 の再 建 を 促 進 す る こと ﹂ と 規 定 し て い た が 、. 当 初 会 員 た ち は そ う し た 目 的 に向 け て取 ら れ る べき 具 体 的 な 計 画 が 何 であ る の か 、 ま った く 分 か っ て い な か った 。 会. 員 た ち は 若 く て熱 心 だ った が 、 労 働 者 と の 接 触 も な く 、 ア ジ テ ー シ ョ ン の経 験 も な い 、 ま った く の政 治 的 初 心 者 だ っ ㈱. た 。 結 成 当 初 の フ ェビ ア ン協 会 の活 動 内 容 は 、 各 会 員 が そ れ ぞ れ 論 文 を 発 表 し 、 そ の 報 告 を 聞 き 、 各 種 の情 報 を 収 集. 寄 o寛 ) で は 、 貧 困 の 原 因 を 生. (≦﹁ G °勺三 =6 ω) の 執 筆 に よ る 最 初. す る と い う 程 度 の も の で あ り 、 会 員 に は 漠 然 と し た 社 会 主 義 へ の志 向 は あ った も の の 、 そ の議 論 は 抽 象 的 か つ ユー ト ⑳. ピ ア 的 な も の で あ った 。 た と え ば 、 一八 八 四 年 四 月 に 発 行 さ れ た フ ィ リ ップ ス. の フ ェ ビ ア ン ・ト ラ ク ト 、 ﹃な ぜ 多 く の 人 々 が 貧 し い の か ? ﹄ (一 § ヒ 黛蕊 ミ ⑪ ﹄ § 塁. 産 手 段 の 私 的 所 有 に 求 め 、 生 産 手 段 の公 有 化 こ そ 貧 困 の解 決 策 だ と 主 張 し て は い る も の の、 そ の具 体 策 に つい ては 何 ㈱. ら 触 れ て い な い の で あ る 。 し か し 、 一八 八 四 年 か ら 一八 八 五 年 に か け て 、 シ ョ ウ 、 ウ ェ ッブ 、 オ リ ヴ ィ エ ら が 相 次 い. で フ ェ ビ ア ン協 会 に 入 会 し た こ と に よ り 、 協 会 内 部 に は 、 壮 麗 な 理 論 を 振 り か ざ す よ り も 、 社 会 改 革 の 実 際 的 方 向 を. 一113一.

(8) ﹃政 府 に よ る 失 業 労 働 者 の組 織 化 ﹄ (寒 鳴 Oミ 鳴ミ §§ 牒○餐 ミ 防 ミ軌 § ミ § 鳴奉. 着 実 に 調 査 ・研 究 し 、 政 策 を 提 言 し て い こ う と す る 新 し い傾 向 が あ ら わ れ は じ あ た 。 そ う し た 傾 向 を 示 す 代 表 的 な 例 は、 一八 八 六 年 に 提 出 さ れ た 報 告 書. 黛 ミ ミ トS oミ ) であ る 。 ウ ェ ッブ が は じ め て執 筆 に 参 加 し た そ の報 告 書 は、 ピ ー ズ に よ れ ば 、 ﹁緊 急 の社 会 問 題 を. 建 設 的 な 方 向 で扱 お う と す る 試 み ﹂ であ り 、 ﹁そ の 分 野 を 調 査 し 、 現 状 を 分 析 し 、 実 際 的 な 解 決 策 を 提 案 し た﹂ と こ ⑬①. ろ の 、 ﹁最 初 の 典 型 的 な フ ェビ ア ン の 出 版 物 ﹂ で あ った 。 や が て ウ ォ ー ラ ス も 、 ウ ェ ッブ ら の 勧 誘 で 、 一八 八 六 年 四. 月 二 日 、 フ ェビ ア ン 協 会 に 入 会 す る こ と に な る 。 シ ョウ 、 ウ ェ ッブ 、 オ リ ヴ ィ エ、 ウ ォ ー ラ ス の 四 人 は 、 一八 八 八 年. に は フ ェビ ア ン 協 会 の 執 行 部 に 選 出 さ れ る 。 彼 ら 四 人 は フ ェ ビ ア ン 協 会 の ﹁四 巨 頭 ﹂ と よ ば れ 、 協 会 の 運 営 に お い て 融. 指 導 的 な 役 割 を 担 う よ う に な って い く の で あ る 。. 切器 δ. こ う し た 四 人 の チ ー ム ワ ー ク に よ っ て な さ れ た 最 も 重 要 な 仕 事 の 一 つ は 、 ﹃フ ェビ ア ン 社 会 主 義 論 集 ﹄ ( 壽 ミ§. 穿 ・。亀 吻 § ⑦09ミ 蹄ミ ) の 出 版 で あ る 。 フ ェビ ア ン 協 会 は 、 一八 八 八 年 の 秋 、 ﹁社 会 主 義 の 基 礎 と 展 望 ﹂ (↓冨. (十 二 月 二 十 一日 ) ら が 続 い た 。 こ の 連. ⑳. (≦ ≡ 猷 5 Ω ⇔甚 ①) ( 十 一月 二 日 )、 ウ ォ ー ラ ス (十 一 (﹀ロコ帥 Φ bd①ω鋭口仲) (十 二 月 七 日 )、 ブ ラ ン ド. (十 月 五 日 )、 ウ ィ リ ア ム ・ク ラ : ク. 鋤口α 零 o°。唱Φ9 ω oh ω09巴 圃 ωヨ ) と 題 す る 連 続 講 演 を 開 催 し た 。 最 初 の 講 演 は ウ ェ ッブ に よ っ て 九 月 二 十 一日 に お こ な わ れ 、 そ の後 、 シ ョウ. 月 十 六 日 )、 ア ニ ー ・ベ ザ ン ト. 続 講 演 は 好 評 を も っ て む か え ら れ 、 キ ン グ ス ・カ レ ッジ や ケ ン ブ リ ッジ 大 学 、 レ ス タ ー 大 学 か ら も 要 請 を 受 け て 、 再. び 講 演 が お こ な わ れ た 。 こ う し た 反 応 を み た ウ ェ ッブ ら 協 会 執 行 部 は 、 こ の 連 続 講 演 を 一冊 の 本 に ま と め て 出 版 す る ㈱. こ と を 計 画 し 、 シ ョウ を 編 集 委 員 に任 命 し た 。 イ ギ リ ス学 術 協 会 で の シ ョウ の演 説 を 加 え て、 講 演 集 は ﹃フ ェビ ア ン. 社会主義論集﹄ ︹ 以 下 ﹃論 集 ﹄ と 略 記 ︺ と い う タ イ ト ル で、 一八 八 九 年 十 二 月 二 十 五 日 に出 版 さ れ た 。 ﹃論 集 ﹄ の目 次. 114. 第50巻第1号 近畿大学法学.

(9) フ ェ ビ ア ン協 会 時 代 の グ レ ア ム ・ウ ォ ー ラ ス. は、 以 下 の 通 り で あ る 。. フ ェビ ア ン社 会 主 義 論 集. シ ョウ. ﹁社 会 主 義 の 歴 史 的 基 礎 ﹂ (↓ げΦ ︼ WOω凶 ω O賄 m} OO一 四躍ωヨ "= 帥 ω酔O﹃一 〇). ﹁社 会 主 義 の 経 済 的 基 礎 ﹂ (一 ﹃げΦ ︼ WOω凶 ω Oh ωOO一 Q=ω一 自 n国OOコO︻ 口凶 O). . (]り げΦ ゆ鋤ω一 ω Oh ωOO陣 P団ωH 口). ウ ェ ッブ. ﹁社 会 主 義 の 産 業 的 基 礎 ﹂ (↓ ゴΦ 切鋤ω帥 の Oh ωOO帥 OζωH口 " H 口α口ω一﹃一 9一 ). 社 会 主 義 の基 礎. ク ラ ー ク. (↓ げ① 9 0 q釦巳 鑓 二8. 0h ωOo一 ①蔓 ). 8. ω09 0一 ∪Φ日 Oo鑓 o団). 口づ9 ﹃ ωooμ 毘 ω§ ) 、. ω09 巴 一 ω∋ ). オ リ ヴ ィ エ ﹁社 会 主 義 の 道 徳 的 基 礎 ﹂ (↓ ゴΦ HW ゆω帥 ω Oh ωOO凶 四=ωヨ " ζ O目〇一 ) 社 会 の組織 化. (↓げΦ 目茜 霧 三 8. ﹁社 会 主 義 下 の 産 業 ﹂ (ぎ 島霧 け曙. ウ ォ ー ラ ス ﹁社 会 主 義 下 の 所 有 権 ﹂ (℃﹃8 Φ誹 団 § α臼 ベザ ント 社 会 民 主 主 義 へ の移 行. ωoo凶 巴 ∪ Φヨ ooδ o団). ﹁社 会 民 主 主 義 へ の 移 行 ﹂ (⇒ き ω三 8. 8. シ ョウ. ﹁社 会 民 主 主 義 へ の 展 望 ﹂ (↓ 7Φ ○ =二〇〇吋 ↓o G っoo凶 巴 U o日 oo機oo嘱). ㈲. (ζ 母 σq碧 Φけ 02 ①) は 、 ﹃論 集 ﹄ は そ れ ぞ れ 強 い 個 性 を も った 七 人 の 論 者 に よ っ て 執 筆 さ れ た. ブ ラ ンド. マ ー ガ レ ット . コ ー ル. `. の で 、 文 体 に お い て も 主 張 に お い て も 必 ず し も 一様 で な い よ う に 思 わ れ る と 述 べ て い る 。 し か し 、 ウ ォ ー ラ ス は 後 年 、. 115.

(10) ﹃思 考 の 技 術 ﹄ に お い て 、 次 の よ う に 回 想 し て い る 。. 四 十 年 近 く 前 、 私 は 、 ﹃フ ェビ ア ン 論 集 ﹄ の 草 稿 を 執 筆 し た ば か り の 、 フ ェビ ア ン協 会 の 七 人 の メ ン バ ー の う. ち の 一人 だ った 。 私 は 、 バ ー ナ ー ド ・シ ョ ウ に 、 出 版 さ れ る 書 物 の 編 集 を 依 頼 し た 。 当 時 私 は 学 校 の教 師 で あ り 、. シ ョ ウ は ま だ 成 功 は し て い な か った が プ ロ の 作 家 だ った 。 わ れ わ れ の な か の 困 難 の 一 つは 、 わ れ わ れ 七 人 が ま っ. た く 異 な る タ イ プ の 精 神 を も っ て い る と い う こ と だ っ た 。 も し か す る と 、 シ ド ニ ー ・ウ ェ ッブ 氏 と ヒ ュ ー バ ー. ト ・ブ ラ ン ド 氏 の そ れ は 、 と く に そ う だ っ た 。 私 は 、 ⋮ ⋮ シ ョ ウ が 寄 稿 者 た ち に 修 正 を 求 め る た め に 話 し 合 っ て. ㈱. い る際 に、 " 私 は ブ ラ ン ド を ウ ェ ッブ 化 す る つも り も な い し 、 ウ ェ ッブ を ブ ラ ン ド 化 す る つも り も な い " と 述 べ た こ と に、 大 い に 心 を 打 た れ た 。. こ の よ う に、 シ ョウ は細 心 の注 意 を も っ て編 集 上 の 指 示 を お こ な う こ と に よ っ て、 寄 稿 者 た ち の多 様 な 個 性 を 破 壊 す. る こ と な く 、 彼 ら か ら あ る 種 の 知 的 一貫 性 を 引 き 出 す こ と に 成 功 し た 。 ク ォ ル タ ー (↓①﹃⑦]口O① } 肖゜(} ⊆鋤一 け ⑦﹃) は 、 ﹃論. ⑳. 集 ﹄ は 注 意 深 く 準 備 さ れ た 案 に よ っ て前 も っ て計 画 さ れ た の で、 高 度 に知 的 で独 立 心 の強 い 論 者 た ち に よ って執 筆 さ. れ た にも か か わ ら ず 、 ま れ な 統 一性 と 一貫 性 と を 達 成 し た と 指 摘 し て い る 。 こ う し て出 版 さ れ た ﹃論 集 ﹂ への反 響 は、. ウ ェ ッブ ら 執 行 部 の予 想 を は る か に上 回 る も の だ った 。 初 版 の 千 部 は 一ケ 月 以 内 に売 り 切 れ 、 二 万 五 千 部 にも のぼ る. 第 二 版 と 廉 価 版 が 一年 以 内 に出 版 さ れ た 。 ア メ リ カ 版 や 翻 訳 版 も 出 版 さ れ 、 ﹃論 集 ﹄ は世 界 的 な 大 成 功 を お さ め た の ㈱ であ る。. 116. 第50巻 第1号 近畿 大学 法学.

(11) フ ェ ビ ア ン協 会 時 代 の グ レ ア ム ・ウ ォ ー ラ ス. (]≦ o図 切8 目) も 指 摘 す る よ う に 、 ﹃論 集 ﹂ は フ ェビ ア ン社 会 主 義 の 基 礎 を. こ う し て 、 ウ ェ ッブ 、 シ ョ ウ ら フ ェビ ア ン 主 流 派 は 、 ﹃論 集 ﹄ の 出 版 に よ っ て フ ェビ ア ン社 会 主 義 の 統 一的 な 見 解 を つく り あ げ る こ と に 成 功 し た 。 ベ ァ i 侶㊥. 形 成 す る も の で あ った 。 そ う し た 意 味 に お い て ウ ェ ッブ 、 シ ョ ウ 、 オ リ ヴ ィ エハ ウ ォ ー ラ ス の 四 人 は 、 フ ェビ ア ン社. 会 主 義 の 基 礎 を 固 め る う え で、 き わ あ て重 要 な 役 割 を 果 た し た と い え る だ ろ う 。 シ ョウ は の ち に、 当 時 の 四 人 の関 係. に つ い て 、 次 の よ う に 回 想 し て い る 。 ﹁ウ ェ ッブ 、 オ リ ヴ ィ エ、 ウ ォ ー ラ ス は フ ェ ビ ア ン主 義 の 三 銃 士 で あ り 、 自 分 ㈹ は ダ ル タ ニ ア ン で あ っ た ﹂。. 二 社会主義論. ま ず 初 あ に 、 フ ェビ ア ン 協 会 時 代 の ウ ォ ー ラ ス の 社 会 主 義 論 に つ い て 検 討 し て み た い 。 一八 八 六 年 六 月 十 九 日 、. ω団ω器 ヨ ) と 題 さ れ た そ の 講 演 は 、 ウ イ ナ ー. (ζ O吋け圃 ] 口 匂゜ぐく凶 ①]P¢﹃) に よ れ ば 、 ﹁彼 ら し く 、 倫 理. ウ ォ ー ラ ズ は 、 フ ェビ ア ン 協 会 に 入 会 し て 最 初 の 講 演 を お こ な った 。 ﹁現 体 制 下 で の 個 人 的 義 務 ﹂ (勺Φ冨 8 巴 ∪ロ¢ § α興 9 ①. 津 oωΦ三 ω. を 扱 った も の ﹂ で あ った 。 ウ ォ ー ラ ス は こ の 講 演 の な か で 、 次 の よ う に 述 べ て い る 。. 義 務 感 と い う の は 共 通 のも の で あ り ハ そ れ が た と え 誤 った 方 向 に向 け ら れ た と し て も 、 決 し て無 用 のも の で は. な い と いう こと を 忘 れ な い で ほ し い。 そ し て そ れ ゆ え に、 あ な た が 今 と る 義 務 が あ る と 感 じ て い る の は い か な る. 行 動 な のか と い う こ と を は っき り と 悟 って ほ し い 。 そ し て、 あ な た が そ の他 の こ と を す べき でな い か ど う か と い. 117.

(12) う こ と を 賢 明 に判 断 し て ほ し い。 世 界 の生 産 額 の う ち 、 あ な た が 自 分 の 公 正 な 取 り 分 を 越 え て使 っ て い る も の は. 何 で あ れ 、 あ な た 自 身 の も の で は な く 他 人 の も の な のだ と い う こと を 忘 れ な い で ほ し い。 し た が って、 あ な た は. そ れ を 他 人 の た め に使 う べ き な の であ って 、 自 分 自 身 の た め に 使 う べ き で は な い と い う こ と を 理 解 し て ほ し い。. あ な た の 知 的 な 優 位 性 は 共 同 社 会 の 財 産 で あ る の だ か ら 、 あ な た は そ の使 用 料 を え て、 そ し て支 払 う と いう こと. を 理 解 し て ほ し い。 あ な た の 周 囲 の状 況 を 複 雑 にす る の で は な く 単 純 にす る こ と に よ って、 心 の 慰 め を 求 め て ほ. し い 。 そ の 日 の仕 事 の計 画 を 立 て る と き に は 、 あ な た は 人 間 であ って機 械 で は な い と いう こと を 忘 れ な い で ほ し. 働. い 。 利 益 を 土ハ 有 す る こと を 拒 ま な い で ほ し い。 そ し て 、 現 在 の 政 治 に参 加 し て ほ し い。. こ の引 用 文 か ら も 明 ら か な よ う に、 フ ェビ ア ン協 会 入 会 当 初 の ウ ォ ー ラ ス は 、 主 と し て上 流 階 級 や 中 流 階 級 の人 々. に対 し て、 彼 ら が 現 状 の社 会 問 題 を 解 決 す る た め に果 た す べ き 道 徳 的 義 務 を 説 い て い る。 ウ イ ナ ー は こ の講 演 の こと ㈹. を 、 ﹁道 徳 的 な 訓 戒 ﹂ (ヨ ON餌} Φ図70﹁け鋤仲帥 OO) と 評 し て い る が 、 け だ し 的 を え た 表 現 で あ ろ う 。 シ ド ニ ー ・ウ ェ ッブ の. (Uσ①鋤齢﹃一〇① ぐく①σげ) は 、 そ の 日 記 の な か で 、. ︹フ ェビ ア ン協 会 の ︺ 道 徳 性 と 誠 実 さ を 代 表 し て い た 。 ⋮ ⋮ ウ ォ ー ラ ス は 、 善 意 を 有 す る 上 流 の 教 育. 妻 で あ り 、 自 ら も フ ェ ビ ア ン 協 会 員 で あ っ た ベ ア ト リ ス ・ウ ェ ッ ブ ﹁ウ ォ ー ラ ス は. あ る 階 級 に訴 え た 。 彼 の誠 実 さ 、 無 私 の 精 神 、 熱 心 さ 、 極 端 な 道 徳 的 純 化 は 、 誰 も 疑 う こ と が でき な い﹂ と 述 べ て い. る 。 こ の 記 述 か ら も 、 わ れ わ れ は 、 当 時 の ウ ォ ー ラ ス の パ ー ソ ナ リ テ ィ を う か が い知 る こ と が で き る。 要 す る に、. フ ェビ ア ン協 会 入 会 当 初 の ウ ォ ー ラ ス は 、 主 に 道 徳 的 な 側 面 か ら 社 会 主 義 思 想 に 接 近 し た の で あ る 。 こ う し た ウ ォ ー. ラ ス の 社 会 主 義 思 想 へ の 道 徳 的 接 近 を 、 彼 が 幼 少 時 に 受 け た 福 音 主 義 信 仰 の 影 響 か ら 説 明 す る 論 者 は 少 な く な い。 た. 118. 第50巻第1号 近畿大学法学.

(13) フ ェ ビ ア ン協 会 時 代 の グ レ ア ム ・ウ ォ ー ラ ス. と え ば 、 ク ォ ル タ ー は 、 ﹁ウ ォ ー・ ラ ス の社 会 主 義 は 、 彼 が 受 け た 福 音 主 義 的 な 教 育 の 文 脈 を 離 れ て は 理 解 で き な い﹂ ㈲. と 指 摘 し て い る。 幼 少 時 の ウ ォ ー ラ ス は 、 国 教 会 牧 師 で あ った 父 親 の熱 心 な 福 音 主 義 信 仰 か ら 大 き な 影 響 を 受 け た 。. の ち に ウ ォ ー ラ スは 、 宗 教 的 懐 疑 か ら 信 仰 を 放 棄 す る に至 る が 、 信 仰 か ら え ら れ た ﹁強 い 道 徳 的 確 信 と 、 社 会 正 義 や. ㈲. 個 人 の尊 厳 に 対 す る信 念 ﹂ は 、 か た ち を 変 え て ウ ォ ー ラ ス の な か に残 り 、 そ れ が 社 会 主 義 思 想 へ の接 近 に つな が った と、 ク ォルタ ー は いう の であ る。. ⊆ロ自頸 ωoo帥 巴伸 ωヨ ) と 題 す る 論 文 を. 一八 八 九 年 十 二 月 二 十 五 日 に 、 ﹃フ ェビ ア ン 社 会 主 義 論 集 ﹄ を 出 版. ﹃論 集 ﹄ の な か で 、 ﹁社 会 主 義 下 の 所 有 権 ﹂ (写 ob興 蔓. と こ ろ で 、 前 述 し た よ う に フ ェビ ア ン協 会 は 、 し た 。 ウ ォー ラ スは こ の. ㈲. ﹁所 有 権 ﹂ (︼ )﹃OO①﹃け団) と い う 概 念 を 、 ﹁そ の対 象 を 使 用 な い し 処 分 す る 力 や 自. 発 表 し て い る 。 こ れ は 、 フ ェビ ア ン協 会 時 代 の ウ ォ ー ラ ス の 政 治 思 想 を 検 討 す る う え で 、 き わ め て 重 要 な 論 文 で あ る 。 ウ ォ ー ラ ス は こ の論 文 に お い て、 ま ず. ﹁消 費 手 段 ﹂ (巳 $ 器. 由 を 、 そ の 資 格 を も つ当 事 者 に 与 え る す べ て の 権 利 ﹂ と 定 義 す る 。 そ し て 、 そ う し た 所 有 権 が か か わ る ﹁経 済 物 資 ﹂. ⑱. (誓 Φ 日 鎮 ①ユ巴 夢 貯 σqω) ︹ 11 経 済 財 ︺ を 、 お お ま か に ﹁生 産 手 段 ﹂ (諺 Φoコω oh 寓 oα二〇自o口) と. oh 。o口ω嬉日 b二〇ロ) ︹ 巨 消 費 財 、 生 活 資 料 ︺ と に分 類 す る 。 ウ ォ ー ラ ス は 、 ﹁社 会 主 義 者 は 共 同 社 会 に よ る 生 産 手 段 の. 働. 所 有 と 、 個 人 に よ る消 費 手 段 の所 有 の た め に 働 く ﹂ と 述 べ て、 ︿ 生 産 手 段 の公 有 ﹀ と ︿ 消 費 手 段 の私 有 ﹀ こ そ、 社 会. 主 義 者 の 実 際 的 な 目 標 で あ る と 主 張 す る 。 た だ し 、 ウ ォ ー ラ ス は こ の ︿生 産 手 段 の公 有 ﹀ と ︿ 消 費 手 段 の私 有 ﹀ と い. う 原 則 に 対 し て、 か な り 柔 軟 な 態 度 を と って い る 。 た と え ば 、 公 有 地 の 一角 が 公 園 と し て 利 用 さ れ た り 、 市 営 水 道 の. 利 益 が 市 営 図 書 館 の維 持 費 に 使 わ れ た り す る 場 合 の よ う に、 共 同 社 会 は 直 接 的 な 消 費 の た め にも そ の所 有 物 を 使 用 す 伍o. る こ と が で き る と 、 ウ ォ ー ラ ス は 述 べ て い る 。 ウ ォ ー ラ ス が こ こ で 生 産 手 段 の み の 公 有 化 を 主 張 し て い る の は 、 ﹁人. 119.

(14) 間 は ま だ 今 のと こ ろ 、 生 産 さ れ た 富 の 消 費 に お け る 共 同 よ り も 、 報 酬 の公 平 な 分 配 を と も な う よ う な 生 産 に お け る共 ⑳. 同 に適 し て い る ﹂ と 彼 が 考 え た か ら で あ る 。 ウ ォー ラ ス に よ れ ば 、 共 同 消 費 の 経 済 が 、 共 同 生 産 の経 済 と 同 じ く ら い. (幻oσo詳 ○≦ Φ口) ら 初 期 社 会 主 義 者 た ち の 実 験 に よ っ て 明 ら か に な った. 大 き な も の に な る 見 込 み が あ る こ と は 、 確 か に 事 実 で あ る 。 し か し 、 シ ャ ル ル ・フ ー リ エ ( O匿 二Φ゜・ 男雷 昌Oo冨1 ζ 鉱 器 司o霞 冨同) や ロ バ ー ト ・オ ー ウ ェ ン. よ う に 、 ﹁い か な る 共 同 消 費 の シ ス テ ム も 、 き わ め て 異 常 な 状 況 下 を の ぞ け ば 、 現 在 の ほ と ん ど の 人 間 に と っ て は 不 働. 快 な も の で あ る ﹂ と 、 ウ ォ ー ラ ス は 指 摘 す る 。 た と え ば 、 各 家 庭 は 独 立 し た 家 屋 を 所 有 し 、 個 々 の台 所 で毎 日思 い思. い の 食 事 を つく る こと を 強 く 求 め て い る 。 ま た 、 各 人 は 自 分 自 身 の食 器 、 椅 子 、 本 、 絵 画 を 所 有 す る こ と や、 自 ら が. 生 産 し た 価 値 の 一定 の割 合 を 年 俸 や 週 給 と い う か た ち で受 け 取 っ て、 そ れ を 好 き な よ う に使 った り 蓄 え た り す る こ と ㈹. を 強 く 欲 し て い る。 し た が って、 社 会 主 義 が 実 現 し た あ と の社 会 に お い て も 、 公 有 財 産 と 公 営 生 産 に加 え て、 私 有 財. 産 や 民 間 企 業 さ え 存 続 さ せ な け れ ば な ら な い と 、 ウ ォ ー ラ ス は 主 張 す る。 ま た 、 私 的 所 有 が 許 さ れ る の と 同 じ 程 度 ま 翻. で 、 地 代 と 利 子 の 私 的 な 取 得 も 許 さ れ ね ば な ら な い 。 こ の よ う に 、 ウ ォ ー ラ ス に と っ て社 会 主 義 と は 、 す べ て の 経 済. 財 の 完 全 な る 公 有 化 を 意 味 す る も の で は な か っ た 。 ク ラ ー ク (勺ΦけΦ円 () 一 山円一 (①) も 指 摘 す る よ う に 、 ウ ォ ー ラ ス に. と っ て 生 産 手 段 の 公 有 化 は 、 特 定 の 時 代 の 特 定 の 共 同 社 会 の 承 認 以 上 の も の で は な か った と い え る 。 こ う し て ウ ォ ー ラ ス は、 公 有 化 の 範 囲 に つい て次 の よ う な 結 論 に到 達 す る 。. そ れ ゆ え 、 最 も 広 い意 味 で の土 地 と 、 家 族 集 団 よ り も 大 き な 結 社 に よ っ て 運 営 さ れ る 方 が 便 利 な 形 態 の生 産 、. 分 配 、 消 費 に か ん す る 物 資 は 、 共 同 社 会 に よ って 所 有 さ れ な け れ ば な ら な い。 こ こ に お い て大 き な 問 題 は、 そ れ. 120一. 第50巻第1号 近畿大学法学.

(15) フ ェ ビ ア ン協 会 時 代 の グ レ ア ム ・ウ ォ ー ラ ス. そ れ の場 合 に お い て所 有 の範 囲 を 固 定 す る こと で あ る 。 主 要 な コ ミ ュ ニケ ー シ ョ ン の手 段 と い く つか の産 業 の形. 態 と に つい て は 、 統 制 さ れ る 範 囲 が 広 け れ ば 広 い ほ ど 、 経 営 の能 率 も ま す ま す よ く な る こと が 証 明 さ れ てき た 。. し た が って、 郵 便 制 度 と 鉄 道 制 度 、 そ し て お そ ら く よ り 大 き な 産 業 の い く つか に か ん す る物 資 は、 そ れ ら が イ ギ. リ ス帝 国 連 邦 や ヨ ー ロ ッパ 連 邦 共 和 国 に移 管 さ れ る 遠 い 日 ま で、 イ ギ リ ス国 民 に よ って所 有 さ れ る 。 土 地 は お そ. ら く 、 一般 的 にも っと 小 さ な 社 会 的 単 位 ︹ 陪 地 方 自 治 体 ︺ に よ っ て・ よ り 多 く 所 有 さ れ る か も し れ な ㎞。. ウ ォ ー ラ スは 、 特 定 地 区 の独 占 物 で あ り な が ら す べ て の 国 民 に必 要 不 可 欠 な 天 然 資 源 、 た と え ば 、 鉱 山 、 港 湾 、 水. 源 な ど は 国 有 化 さ れ な け れ ば な ら な い と 主 張 す る 。 一方 、 土 地 は 国 家 で は な く 地 方 自 治 体 に所 有 さ れ る が 、 そ の場 合. で も 地 方 自 治 体 は そ の 土 地 か ら の収 入 の何 割 か を 国 庫 に納 め な け れ ば な ら な い。 土 地 を 所 有 す る地 方 自 治 体 の実 際 の. 大 き さ は、 各 々 の場 合 に お い て便 宜 的 に 定 め ら れ る 。 ウ ォ ー ラ スが 考 え る 社 会 主 義 の基 本 的 な 構 想 は 、 以 上 のよ う な. も の で あ った 。 そ れ は 、 ヴ ィ ン セ ン ト ( ﹀口α憎Φ<¶ ノ N 沖 口OΦbh) の定 義 に し た が え ば 、 ソ シ ア リ ズ ムと い う よ り も 、 む し ろ コ レ ク テ ィ ヴ ィ ズ ム (oo=Φo口≦ ωヨ ) に 分 類 さ れ る も の で あ る と い え よ う伍鋤。. こ の よ う に 、 ウ ォ ー ラ ス が 考 え る 社 会 主 義 の 実 際 的 な 目 標 は 、 生 産 手 段 の 公 有 化 で あ った 。 し か し 、 ウ ォ ー ラ ス は. 生 産 手 段 を 公 有 化 し さ え す れ ば 、 そ れ で す ぐ に 理 想 的 な 社 会 が 実 現 す る と 単 純 に 考 え て い た わ け で は な か った 。 ウ ォ ー ラ ス は 次 の よ う に述 べ て い る。. わ れ わ れ が 今 そ こ にあ る 産 業 と 道 徳 の発 展 段 階 に お い て、 人 々 の あ い だ で財 産 の 共 同 所 有 が 可 能 と な る よ う な. 121.

(16) レ ベ ルを 考 察 す れ ば 、 す で に 私 が 述 べ てき た よ う に 、 社 会 主 義 の未 来 に お け る 発 達 の希 望 よ り も 、 む し ろ 社 会 主 60. 義 の必然 的 な困 難 性 や限 界 を 強 調す る方 が適 切 であ る。. ウ ォ ー ラ ス は 、 た と え 生 産 手 段 の 公 有 化 が 実 現 さ れ た と し ても 、 そ う し た 公 有 制 度 を 運 営 す る 現 実 の人 間 の道 徳 的. レヴ ェル が そ れ に 見 合 う だ け の発 達 を 遂 げ て い な け れ ば 、 社 会 主 義 の失 敗 は 不 可 避 であ る と 考 え た 。 し た が って、 こ. の時 期 の ウ ォ ー ラ ス の社 会 主 義 論 に お い て は、 教 育 の役 割 、 と り わ け 公 的 な 教 育 制 度 の果 た す 役 割 が き わ め て重 要 な. 意 味 を も つ。 ウ イ ナ ー の指 摘 に よ れ ば 、 ウ ォ ー ラ スは 、 生 産 手 段 の公 有 化 は公 共 精 神 (℃¢げ賦O ωb一 触団 け ) の成 長 と と も. に し か 広 が ら な い と 考 え 、 周 囲 の社 会 主 義 者 に対 し て、 ﹁現 代 の 公 共 精 神 は あ ま り に も 低 い の で、 全 般 的 な 社 会 主 義 ㈹. 化 を 支 え る こ と は でき な い ﹂ と 警 告 し た と い う 。 そ れ ゆ え 、 ウ ォ ー ラ ス に と って は 、 公 共 精 神 を 酒 養 す る た め の教 育 勧. こ そ 社 会 変 革 の手 段 であ り 、 教 育 の 仕 事 は政 治 的 革 命 に先 行 す べき も の で あ った 。 ウ ォ ー ラ ス に と って 公 教 育 の任 務. は 、 ﹁わ れ わ れ の商 業 シ ス テ ム に よ って不 道 徳 な 原 理 を 染 み 込 ま さ れ て い る ﹂ 人 間 の、 倫 理 的 ・精 神 的 レヴ ェルを 向 ㈹. 上 さ せ る こと であ った 。 ウ ォ ー ラ ス は、 社 会 主 義 下 に お け る 教 育 の 進 歩 が 、 人 々 のあ い だ に最 小 限 の コモ ン セ ン スを ㈹. つく り だ し 、 そ れ が 中 央 政 府 を 統 制 す る こと に期 待 し た 。 そ う や って教 育 と 社 会 の道 徳 化 と が 改 善 さ れ て、 私 企 業 と. い う 選 択 肢 が 実 行 可 能 な も の で な く な る ほ ど 産 業 が 徹 底 的 に社 会 化 さ れ れ ば 、 つ い に は平 等 ら し き も のが 可 能 に な る 65. だ ろ う と 、 ウ ォ ー ラ ス は 主 張 し た の で あ る 。 こ の よ う に 、 フ ェ ビ ア ン協 会 時 代 の ウ ォ ー ラ ス の 社 会 主 義 論 に お い て は 、. ﹁す べ て の 問 題 を 解 決 す る た あ の 鍵 ﹂ だ った と い え る だ ろ う 。. ㈱. 公 教 育 の 果 た す 役 割 が き わ あ て 重 要 な 位 置 を 占 め て い る 。 ウ イ ナ ー も い う よ う に 、 フ ェビ ア ン協 会 時 代 の ウ ォ ー ラ ス にと って 公 教 育 は 、 い わ ば. 一122一. 第50巻第1号 近畿大学法学.

(17) フ ェ ビ ア ン協 会 時 代 の グ レ ア ム ・ウ ォ ー ラ ス. フ ェビ ア ン協 会 時 代 の ウ ォ ー ラ ス の 社 会 主 義 論 に か ん し て 、 も う 一 つ注 目 す べ き な の は 、 社 会 主 義 に 対 す る 彼 の ア. ン ビ バ レ ン ト な 態 度 で あ る 。 ウ ォー ラ ス は ﹁社 会 主 義 下 の 所 有 権 ﹂ の な か で 、 次 の よ う に 述 べ て い る 。. わ れ わ れ が 社 会 主 義 と よ ぶ と こ ろ の所 有 制 度 は 、 よ き 排 水 シ ス テ ム が す な わ ち 健 康 を 意 味 す る わ け で は な く 、. ぬ. ミ. ヤ. も. ヘ. ヤ. も. ミ. へ. も. も. ヘ. ヘ. カ. う. ヨ. も. ヘ. ヘ. へ. も. へ. ぬ. も. ぬ. ぬ. し. へ. 印 刷 の 発 明 が す な わ ち 知 識 を 意 味 す る わ け で は な い のと 同 様 に 、 そ れ 自 体 で は 決 し て そ の よ う な ︹ 11 理 想 的 な ︺ ゐ. 生 活 を 意 味 す る も の で は な い。 社 会 主 義 は 実 際 、 人 類 の完 壁 な 幸 福 を 生 み 出 す 唯 一の状 態 で は な い。 最 大 限 に 公. 正 な 社 会 制 度 の下 で も 、 わ れ わ れ は 依 然 と し て、 貧 困 と 過 剰 労 働 の直 接 的 な 結 果 で は な いあ ら ゆ る 不 道 徳 や 悪 弊. に 直 面 し な け れ ば な ら な いだ ろ う 。 た と え ば 、 わ れ わ れ は 依 然 と し て、 あ ら ゆ る 精 神 的 な 苦 悩 や 当 惑 を 経 験 す る. だ ろ う 。 そ れ は、 宗 教 的 信 念 に よ って 引 き 起 こ さ れ る と い う 人 も い れ ば 、 宗 教 的 懐 疑 か ら 引 き 起 こさ れ る と い う. 人 も い る 。 ま た、 わ れ わ れ は 依 然 と し て 、 民 族 的 な 憎 悪 の 爆 発 や 弱 い人 民 の退 廃 や 絶 滅 を 目 撃 す る だ ろ う 。 ま た、 ㈲. わ れ わ れ は 地 球 を 人 類 以 外 のあ ら ゆ る 種 に と って の地 獄 に し てし ま う か も し れ な い。 ︹ 傍 点 引 用者 ︺. 社 会 主 義 的 な 諸 制 度 が 実 現 す れ ば 、 失 業 や 貧 困 と い った 問 題 は 解 決 さ れ る か も し れ な い が 、 宗 教 や 民 族 や 環 境 に か. ん す る 問 題 は依 然 と し て残 る に ち が いな い。 社 会 主 義 は必 ず し も ﹁人 類 の完 壁 な 幸 福 を 生 み 出 す 唯 一の状 態 ﹂ で は な. 劔. い 。 こ の よ う に 、 フ ェビ ア ン 協 会 時 代 の ウ ォ 1 ラ ス は 、 社 会 主 義 に 対 し て き わ め て 冷 静 な 態 度 を と っ て い る 。 ク ォ ル. タ ー の 言 葉 を 借 り れ ば 、 こ の 時 期 の ウ ォ ー ラ ス は 、 ﹁社 会 主 義 は 世 界 中 の あ ら ゆ る 問 題 を 解 決 す る わ け で は な い と 知 ㈹. る だ け の 実 際 的 な リ ア リ ズ ム﹂ を 有 し て い た と い え る 。 し か し 、 た と え そ う し た 限 界 を 認 め た と し ても 、 や は り. 一123一.

(18) ㈹. ウ ォ ー ラ ス に と っ て 社 会 主 義 は 、 ﹁わ れ わ れ が 望 む よ り よ い 生 活 へ の 必 要 で 確 実 な 段 階 ﹂ に ほ か な ら な か っ た 。. ウ ォー ラ ス は、 社 会 主 義 が 実 現 し た 後 の人 々 の 生 活 は 、 次 の よ う な も の に な る だ ろ う と 述 べ て い る。. イ ギ リ ス で週 給 に よ って生 活 し て い る 六 家 族 の う ち 五 家 族 に お い て、 社 会 主 義 は 確 か に新 し い幸 福 の誕 生 と な. る だ ろ う 。 興 味 も 希 望 も な く 囚 人 の 監 獄 の な か で お こ な わ れ る よ う な 長 時 間 労 働 、 彼 ら の家 庭 生 活 の憂 諺 な 不 潔. さ 、 と り わ け そ の生 活 の耐 え 難 い 不 安 定 さ 、 資 本 主 義 的 生 産 に 特 有 の結 果 であ る 不 当 な 運 命 に対 す る絶 え ざ る 心. 配 、 こう し た こ と は ︹ 社 会 主 義 が 実 現 す れ ば ︺ す べ て取 り 除 か れ る だ ろ う 。 現 在 は ま さ に教 育 や 品 性 や 余 暇 に つ. bu§ 巻 昌) の物 語 のな か で、 た い 肥 の山 を 熊 手 で な. い ての思想 そ のも のが彼 ら を 怒 ら せ ている が、 ︹ 社 会 主 義 が 実 現 す れ ば ︺ そ う し た 教 育 や 品 性 や余 暇 が 彼 ら の 日 常 生 活 の 一部 と な る だ ろ う 。 社 会 主 義 は 、 バ ニヤ ン Qoぎ. 彼 ら が 自 ら の視 線 を 上 に上 げ る だ け で 、 ︹そ れ を 手 に 入 れ る ︺ 準 備 は でき る の であ る。 わ れ わ れ の時 代. ら し て い る 男 の頭 上 に 王 冠 が ぶ ら 下 が って い る の と 同 じ よ う に 、 彼 ら ︹ ー1 労 働 者 階 級 ︺ の頭 上 に ぶ ら 下 が っ て い る。 1. の悲惨 さ か ら逃 れ 、 そ こか ら 利益 ま でえ て いる よ うな 少 数 の人 々 ︹ " 資 本 家 階 級 ︺ に と って さ え 、 社 会 主 義 は 新. し く て よ り 高 貴 な 生 活 を 提 供 す る。 そ の と き 、 そ う し た 状 況 に つい て の詳 細 な 知 識 か ら 生 じ た 、 彼 ら ︹ 目労 働 者. そ う な れ ば 、 人 間 が 自 ら の高 い理 想 の た め に 公 然 と 働 く こ と は 、 愚 行 と も 偽 善 と も 思 わ れ な いだ. 階 級 ︺ へ の十 分 な 同 情 は、 幸 福 の源 泉 と な る の であ っ て、 現 在 の よ う に絶 え 間 な い悲 し み の 源 泉 と な る の で は な いだ ろ う。ー. ㈲. ろ う 。 そ の 代 償 を 払 う 覚 悟 を す る と 同 時 に革 命 が は じ ま る か も し れ な い と い う 特 権 は、 彼 ら に 属 す る の であ る。. 一124-一. 第50巻第1号 近畿大学法学.

(19) フ ェ ビ ア ン協 会 時 代 の グ レ ア ム ・ウ ォ ー ラ ス. こ の よ う に 、 ウ ォ ー ラ スは 社 会 主 義 に対 し て 一定 の留 保 を つけ な が ら も 、 や は り そ の実 現 に は大 き な 期 待 を か け て. い た 。 ク ォ ル タ ー は、 ウ ォ ー ラ ス の社 会 主 義 は 、 資 本 主 義 が も た ら し た 不 当 な 結 果 に 対 す る ﹁道 徳 的 憤 慨 の応 答 物 ﹂. だ った と 述 べ て い る が 、 こ う し た 解 釈 は 妥 当 な も の であ る と 思 わ れ る 。 ウ ォ ー ラ ス は 資 本 主 義 を 経 済 的 に非 能 率 的 な. も の と 見 な す だ け で な く 、 道 徳 的 に も 有 害 な も の と 見 な し た 。 そ れ ゆ え 、 資 本 主 義 の欠 陥 は、 単 に 労 働 者 階 級 の経 済. 状 況 を 改 善 す る だ け で は 修 正 さ れ え な い 。 引 用 文 か ら も 明 ら か な よ う に 、 当 時 の ウ ォ ー ラ ス にと って最 も 重 大 な 関 心. 事 は 、 資 本 主 義 に よ って破 壊 さ れ た 人 間 の 道 徳 的 な 生 活 を 再 生 す る 点 に あ った と い え よ 知 。. 以 上 の よ う な フ ェビ ア ン協 会 時 代 の ウ ォ ー ラ ス の社 会 主 義 論 に お い て は 、 ﹁社 会 主 義 は そ れ を 運 営 す る 現 実 の人 間. の道 徳 的 レヴ ェ ル の向 上 に よ っ て は じ め て有 効 に機 能 す る ﹂ と い う 主 張 が 一貫 し て い る と い え る 。.こ う し た ウ ォ ー ラ. ス の主 張 の な か に は 、 政 治 .社 会 問 題 を 人 間 の心 理 と 関 係 づ け て捉 え よ う と す る 視 点 が 、 す で に含 ま れ て い る よ う に. 思 わ れ る 。 フ ェビ ア ン協 会 時 代 の ウ ォ ー ラ ス は 、 社 会 主 義 的 な 制 度 を 支 え る 現 実 の 人 間 の道 徳 的 レヴ ェル に常 に着 目. し て い た 。 あ ま り 飛 躍 し す ぎ て は い け な い が 、 ウ ォ ー ラ ス は す で に こ の こ ろ か ら 、 政 治 ・社 会 問 題 に 対 す る 心 理 学 的. 民主 主 義 論. アプ ロー チ に近 づ き は じ め て い た と い え る の で は な い だ ろ う か 。. 三. 次 に 、 フ ェビ ア ン 協 会 時 代 の ウ ォ ー ラ ス の 民 主 主 義 論 に つ い て 検 討 し て み た い 。 ウ ォ ー ラ ス は 、 一八 九 二 年 三 月 四. 日 、 フ ェビ ア ン 協 会 に お い て ﹁自 治 の 条 件 ﹂ (↓7Φ Ooコ象 鉱9 ω oh ωΦ開⊥Qo<oヨ 日 Φ三 ) と 題 す る 講 演 を お こ な った 。. 一 一125一.

(20) ﹁集 団 的 な 討 論 ﹂ (oo一 一 Φ。鉱くΦ 黛 8 ロω臨§ ) な し. (OO=⑦O叶一 くΦ 吋びO⊆鈎げけ) に よ っ て導 か れ 統 制 さ れ る 集 団. (OO=ΦO酔圃 くΦ 鋤O{圃 O箒) で あ る ﹂ と 定 義 し 、 集 団 的 な 思 考 は. こ の 講 演 の 冒 頭 で ウ ォ ー ラ ス は 、 ﹁自 治 と は 、 集 団 的 な 思 考 的 な 活動. ﹁対 話 ﹂ (α一鋤一 ①O什帥 O) と い う 技 術 を つ か う の が 最 も よ い が 、. に は 不 可 能 で あ る と 主 張 し て い る 。 ウ ォ ー ラ スは 、 討 論 す る 人 々 が ご く 少 人 数 で お 互 い を よ く 知 っ て い る 場 合 に は、 古 代 ギ リ シ ア の直 接 デ モ ク ラ シ ー に お い て 見 ら れ た よ う な. ㈲. 討 論 す る 人 々 が 多 人 数 で し か も お 互 い を よ く 知 ら な い 場 合 に は、 討 論 の た め の 公 式 的 な 規 定 が 必 要 にな る と 述 べ て い. る 。 そ し て、 ウ ォ ー ラ ス は 、 そ う し た 集 団 的 な 討 論 と 選 挙 の 関 係 に つ い て 、 次 の よ う に 述 べ て い る 。 少 々 長 く な る が 引 用 し て み た い。. いかな る種 類 の討 論 も、 討 論 す る人 々 が、 率 直 さ、 " 社 交 性 "、 専 門 的 な 知 識 に対 す る 尊 敬 、 人 格 を 判 断 す る 力. な ど を あ る程度 も た な け れば 成 功 し な い。 ︹ 集 団 的 な ︺ 討 論 が 成 功 す れ ば 、 そ の集 団 の構 成 員 のな か の誰 か が 一. 人 だ け でど う に か し て 到 達 す る よ り も 賢 明 な 決 定 を 、 そ の集 団 全 体 が 採 用 す る と い う 結 果 に な る は ず であ る 。 十. 分 な 討 論 な し に な さ れ た 採 決 は 、 多 く の 場 合 、 最 も 賢 明 でな い構 成 員 が 一人 だ け で到 達 す る決 定 よ り も 、 悪 い決. 定 を 生 じ さ せ る 。 し か し 、 文 明 社 会 に お い て は 非 常 に多 く の 集 団 的 な 活 動 が 必 要 であ り 、 ま た 、 非 常 に多 く の決. 定 に 到 達 し な け れ ば な ら な い の で、 そ れ ぞ れ の重 要 な 事 柄 が す べ て の 市 民 に よ っ て討 論 さ れ る こ と は不 可 能 であ. る 。 そ こ で、 仕 事 を 分 割 す る こ と が 必 要 にな っ てく る。 ︹ 集 団 的 な 決 定 に た ず さ わ る ︺ 人 々 は、 陪 審 制 度 の よ う. な く じ 引 き に よ っ てか 、 家 系 に よ って か 、 試 験 に よ っ てか 、 専 門 家 の 選 択 に よ っ てか 、 選 挙 民 の選 択 に よ って か 、. こ の いず れ か に よ って 選 ば れ ね ば な ら な い。 選 挙 民 の義 務 は 、 一群 の諸 問 題 に十 分 配 慮 す る こと であ ろ う 。 こ れ. 一126一. 第50巻第1号 近畿大学法学.

(21) フ ェ ビ ア ン協 会 時 代 の グ レ ア ム ・ウ ォ ー ラ ス. ら の方 法 のな か で最 も 重 要 で あ り 、 し か し 最 も む ず か し い の は 、 選 挙 の 方 法 で あ る。,選 挙 に は 、 諸 問 題 に つい て. 注 意 を喚 起 す ると いう いか な る選 挙 にも と も な う仕 事 を 別 にす れ ば 、 投 票 を 依頼 し た り、 " 興 奮 を か き 立 て た り". す る こ と に お い て、 常 に 大 き な エネ ルギ ー の浪 費 が あ る 。 な ぜ ︹そ れ が エネ ルギ ー の 浪 費 な の ︺ か と い え ば 、 そ. う す る こ と に よ って誰 も 少 し も 正 し く も 賢 く も な ら な い か ら であ る 。 し た が って、 現 在 の状 況 下 で は 、 人 民 に よ. る 選 挙 は あ ま り にも 大 雑 把 な 選 択 の 方 法 な の で、 官 吏 が 人 民 の選 挙 に よ って 任 命 さ れ る べき だ と 提 案 す る者 は ほ. ( bob巳 母 器 胃 oω⑦口雷 鼠oコ) は 、 市 民 が あ. と ん ど い な い。 な ぜ な ら 、 官 吏 に は 、 た と え ば 町 の技 師 や 裁 判 官 の よ う に、 並 外 れ た 資 質 が 必 要 と さ れ 、 そ の仕 事 に対 し て は高 い給 料 が 支 払 わ れ る べき だ か ら で あ る。 人 民 代 表 制. ㈲. る 程 度 の公 共 精 神 と 寛 容 の精 神 を も つ て い る 国 で し か う ま く 機 能 す る こ と が で き な い。 し か し 、 人 民 代 表 制 の機 構 が よ く な れ ば な る ほ ど 、 そ れ は ま す ま す う ま く い つま で も 機 能 す る だ ろ う 。. こ の 講 演 に お い て ウ ォ ー ラ ス は、 ﹁選 挙 に は 常 に大 き な エネ ルギ ー の浪 費 が あ る ﹂ と 述 べ た り 、 あ る い は 、 ﹁人 民 に. よ る 選 挙 は あ ま り にも 大 雑 把 な 選 択 の方 法 であ る ﹂ と 述 べ た り し て、 選 挙 と い う 方 法 に対 す る も ど か し さ を 隠 そ う と. は し て いな い。 し か し 、 そ の 一方 で ウ ォー ラ ス は、 さ ま ざ ま な 懸 念 を 示 し つ つも 、 ﹁集 団 的 な 討 論 が 成 功 す れ ば 、 そ. の集 団 の構 成 員 の な か の誰 か が 一人 だ け で決 定 す る よ り も 、 は る か に賢 明 な 決 定 が な さ れ る ﹂ と 主 張 し て、 集 団 的 な. 討 論 に基 づ く 決 定 を 、 個 人 に よ る 決 定 よ り も 有 益 な も の と 見 な し て い る 。 し か し 、 文 明 社 会 に お い て は、 す べ て の重. 要 な 問 題 を す べ て の市 民 に よ っ て討 論 す る こ と は 、 物 理 的 に 不 可 能 であ る 。 そ こ で ウ ォ ー ラ スは 、 集 団 的 な 決 定 に た. ず さ わ る 人 々 を 人 民 の 選 択 に よ って選 ぶ と い う 方 法 、 す な わ ち 選 挙 と いう 方 法 が き わ あ て重 要 に な って く る と 指 摘 す. 一127一.

(22) る 。 つま り 、 ウ ォ ー ラ ス に と っ て 選 挙 の 過 程 は 、 本 来 は 集 団 的 な 討 論 に よ っ て 生 み 出 さ れ る べ き 集 団 的 思 考 を 、 選 挙. 民 の 選 択 に よ っ て 生 み 出 す た め の 手 段 に ほ か な ら な か った の で あ る 。 そ れ ゆ え 、 ウ ォ ー ラ ス は 選 挙 民 に も さ ま ざ ま な. (Φ図℃四詳 ) に な. 問 題 に つ い て 十 分 に 配 慮 す る 義 務 が あ る と 主 張 す る 。 ウ ォ ー ラ ス は 、 一八 九 四 年 の ﹁ロ ン ド ン 学 務 委 員 会 ﹂ ㈲. ㈲. ﹁人 民 代 表 制 ﹂ 11 代 議 制 デ モ ク ラ シ ー は 、 ﹁統 治 に お い て 民 衆 の あ. (OびO吋一 ⑳仲O]口) の ち が い を 見 分 け る よ う に な る こ と は で き る ﹂ と 述 べ て い る 。. (︼ UO口αO⇒ ωOげOO一 ︼ WO⑳憎α) 選 挙 の た め の ト ラ ク ト の な か で 、 ﹁わ れ わ れ は 、 た と え 自 分 自 身 が 専 門 家. れな く とも 、 少 な く とも 専 門 家 と 山 師 ウ イ ナ ー も 指 摘 す る よ う に、 ウ ォ ー ラ ス にと っ て. ⑱. る 程 度 の 理 解 と 知 的 参 加 と を 保 証 す る た あ の 手 段 ﹂ で な け れ ば な ら な か った と い え る だ ろ う 。. ﹃論 集 ﹄ へ の 寄 稿 論 文. ﹁社 会 主 義 の 歴 史 的 基 礎 ﹂ (↓冨. 切器 同 ω. と こ ろ で 、 こ う し た フ ェビ ア ン 協 会 時 代 の ウ ォ ー ラ ス の 民 主 主 義 論 は 、 ウ ェ ッブ を 中 心 と す る フ ェビ ア ン主 流 派 の そ れ と は 大 き く 異 な っ て い る 。 た と え ば 、 ウ ェ ッブ は. oh Oりoo随 巴帥 ωヨ "田 ω8 ユ6) に お い て 、 次 の よ う に 述 べ て い る 。. す な わ ち 、 デ モ ク ラ シ ー の必 然 的 な 結 果 は 、 人 民 自 ら が 単 に自 分 自 身 の政 治 組 織 を 支 配 す る と いう こ と だ け で. な く 、 そ れ を 通 じ て富 の主 要 な 生 産 手 段 を も 支 配 す る と い う こと であ る 。 す な わ ち 、 競 争 的 闘 争 の ア ナ ー キ ー を 、. 組 織 的 な 協 力 に漸 進 的 に代 え る と い う こと で あ る 。 ⋮ ⋮ 要 す る に、 デ モ ク ラ シ ー の理 想 の経 済 的 側 面 は、 社 会 主 ㈲. 義そ の も のな の であ る 。. ㈹. こ の 引 用 文 か ら も 明 ら か な よ う に 、 ウ ェ ッブ は 、 デ モ ク ラ シ ー の進 歩 は 社 会 主 義 の実 現 に 直 結 す る と 考 え て い た。. 一128一. 第50巻 第1号 近畿 大学 法学.

(23) フ ェ ビ ア ン協 会 時 代 の グ レ ア ム ・ウ ォ ー ラ ス. マ ー ガ レ ット . コ ー ル は 、 ﹁フ ェビ ア ン は 、 デ モ ク ラ シ ー は 社 会 主 義 の 政 治 的 作 因 で あ り 、 国 家 の 中 央 機 構 は 最 終 的. の. に は 民 主 的 勢 力 に よ って確 保 さ れ 、 社 会 化 さ れ た 生 産 は 民 主 的 に 運 営 さ れ る だ ろ う と 信 じ て い た ﹂ と 指 摘 し て い 勧。. そ れ ゆ え 、 彼 ら は デ モ ク ラ シ ー の進 歩 と 社 会 主 義 の実 現 と を 素 直 に イ コー ル で結 ぶ こ と が で き た の で あ る 。 ウ ェ ッブ. は 、 現 在 に お い て は ﹁デ モ ク ラ シ ー に対 す る 信 頼 の欠 如 ﹂ が ﹁教 養 の あ る ほ と ん ど の社 会 主 義 への共 感 者 ﹂ に社 会 主. 義 の 原 理 の受 容 を た め ら わ せ て い る が 、 そ れ も 過 渡 的 な 現 象 であ り 、 ﹁デ モ ク ラ シ ー が 政 治 にお い て支 配 的 な 原 理 で. あ り 続 け る か ぎ り 、 ⋮ ⋮ 社 会 主 義 は ほ ぼ ま ち が いな く デ モ ク ラ シ ー の経 済 的 対 応 物 と し て予 言さ れ る だ ろ う ﹂ と 述 べ. て い る 。 こ の よ う に、 こ の時 期 の ウ ェ ッブ ら フ ェビ ア ン主 流 派 は 、 デ モ ク ラ シ ー の進 展 と そ れ に と も な う 社 会 主 義 の. 実 現 に対 し て、 き わ め て楽 観 的 な 期 待 を 抱 い て い た 。 マク ブ ラ イ ァ ( 諺゜ ン曲゜ζ O︼ W﹃ 帥 O﹃) も い う よ う に、 彼 ら は デ モ ク. ラ シ ー の 最 終 的 な 勝 利 を 当 然 の こ と と 見 な し てお り 、 あ と は た だ 、 社 会 主 義 を 実 現 す る た め の手 段 と し て の デ モ ク ラ ㈱. シ ー の 有 効 性 を 、 人 々 に説 明 し さ え す れ ば よ い と 考 え て い た 。 の ち に ウ ォ ー ラ ス は 、 こ の時 期 の フ ェビ ア ンは 、 ﹁ 労. 働 者 階 級 は よ り 多 く の賃 金 、 よ り よ い住 宅 、 よ り 多 く の余 暇 を 欲 し て い る か ら 、 そ れ ら の た め に 投 票 す る だ ろ う ﹂ と. 考 え て い た と 回 想 し て い る 。 つま り 、 社 会 主 義 が 実 現 す る こ と に よ っ て そ う し た 利 益 が 実 現 さ れ る と いう こと を 教 示. し さ え す れ ば 、 選 挙 権 を 与 え ら れ た 労 働 者 た ち は 必 然 的 に社 会 主 義 勢 力 に 投 票 す る は ず だ と 、 フ ェビ ア ンは 考 え て い. た の で あ る 。 こう し た フ ェビ ア ン の デ モ ク ラ シ ー に対 す る 楽 観 的 な 期 待 の 背 景 に は 、 当 時 の イ ギ リ ス に お け る デ モ ク. ラ シ ー の 進 展 が あ った と 思 わ れ る 。 当 時 の イ ギ リ スは 、 一八 八 四 年 の 第 三 次 選 挙 法 改 正 と 一八 八 五 年 の議 席 再 配 分 法. に よ って 、 い わ ゆ る ﹁大 衆 デ モ ク ラ シ ー の 段 階 ﹂ に突 入 し て い た 。 第 三 次 選 挙 法 改 正 に よ っ て新 た に農 村 労 働 者 と 鉱. 山 労 働 者 に 選 挙 権 が 付 与 さ れ 、 一八 八 三 年 に イ ング ラ ンド お よ び ウ ェー ルズ で約 二 百 六 十 万 人 であ った 有 権 者 は、 一. 一129一.

(24) ㈱. 八 八 五 年 に は 約 四 百 四 十 万 人 に 増 加 し た 。 ウ イ ナ ー も 指 摘 す る よ う に 、 フ ェビ ア ン は 、 こ う し た 労 働 者 階 級 へ の 選 挙. 権 拡 大 に よ っ て 、 社 会 主 義 的 政 策 の 受 容 が 民 主 的 か つ漸 進 的 に 推 進 さ れ る だ ろ う と 考 え た の で あ る 。. し か し 、 同 時 に 、 こ う し た ウ ェ ッブ ら フ ェビ ア ン 主 流 派 の 、 デ モ ク ラ シ ー の 進 展 に 基 づ く 社 会 主 義 の 実 現 に 対 す る. 楽 観 的 な 期 待 の 背 景 に 、 彼 ら 特 有 の ︿知 的 エリ ー ト 主 義 ﹀ が 秘 あ ら れ て い た こ と は 看 過 さ れ る べ き で は な い 。 確 か に. フ ェビ ア ン は 、 代 議 制 デ モ ク ラ シ ー の さ ら な る 進 展 を 信 じ 、 世 論 を 指 導 す る こ と に よ っ て 社 会 主 義 を 実 現 し よ う と し. た 。 し か し 、 ウ イ ナ ー も い う よ う に 、 彼 ら に と っ て そ の 仕 事 は 、 ﹁大 衆 運 動 に よ っ て で は な く 、 専 門 的 知 識 を 有 す る. 知 的 エ リ ー ト と 社 会 に か ん す る 科 学 的 知 識 と に よ っ て ﹂ 達 成 さ れ る べ き も の だ った 。 マ ッケ ン ジ ー も 、 当 時 の フ ェビ. ア ン協 会 に お い て は 、 社 会 を 変 革 す る こ と が で き る の は プ ロ レ タ リ ア で は な く 、 す ぐ れ た 頭 脳 と 組 織 化 の 技 能 を も っ. ﹁フ ェ ビ ア ン主 義 の 六 十 年 ﹂ (o。固×蔓 くΦ碧 の oh 同p。玄 鋤巳 ゜。ヨ ) の な か で 、 ﹁労 働 者 が わ れ わ れ に 加 わ った 場 合 、 わ. た 人 間 だ け だ と い う 議 論 が 受 け 入 れ ら れ て い た と 指 摘 し て い る 。 実 際 に 、 シ ョ ウ は ﹃論 集 ﹄ の 一九 四 八 年 版 に 寄 せ た 追 記. 鱒. れ わ れ と 同 じ 文 化 的 背 景 、 同 じ 速 度 、 同 じ 方 法 で 働 く こ と は でき ず 、 し た が っ て彼 ら は わ れ わ れ の仕 事 の障 害 と な. る ﹂ と 述 べ て い る 。 ま た 、 ベ ア ト リ ス ・ウ ェ ッブ も そ の 日 記 の な か で、 ﹁労 働 者 は 政 治 にお い て は た だ の赤 ん 坊 にす. ぎ な い 。 労 働 運 動 に つい て の わ れ わ れ の知 識 か ら 判 断 し て、 わ れ わ れ は 労 働 者 階 級 か ら は いか な る 指 導 者 も 期 待 す る ⑲①. こ と は でき な い ﹂ と 述 べ て い る。 こ れ ら の記 述 か ら も 明 ら か な よ う に、 フ ェビ ア ン は労 働 者 階 級 に統 治 能 力 が あ る と. は 考 え ず 、 あ く ま で も 彼 ら を 救 済 さ れ 統 治 さ れ る 対 象 と し て 捉 え て い た 。 名 古 忠 行 氏 も 指 摘 す る よ う に、 こ う し た. ㈹. フ ェビ ア ン の 労 働 者 階 級 に 対 す る 態 度 に は 、 払 拭 し が た い ︿知 的 エ リ ー ト 主 義 ﹀ が 見 受 け ら れ る の で あ る 。. こ の よ う に 、 ウ ェ ッブ 、 シ ョ ウ ら を 中 心 と す る フ ェビ ア ン 主 流 派 は 、 一方 で ﹁デ モ ク ラ シ ー の 進 展 ﹂ に 大 き な 期 待. 一130一. 第50巻第1号 近畿大学法学.

(25) フ ェ ビ ア ン協 会 時 代 の グ レ ア ム ・ウ ォ ー ラ ス. を か け な が ら 、 他 方 で ﹁知 的 エ リ ー ト に よ る 統 治 ﹂ を 理 想 と し た 。 こ う し た 二 つ の 態 度 は 、 彼 ら に と っ て 決 し て 矛 盾. し た も の で は な か った 。 デ モク ラ シ ー の 進 展 に よ っ て 選 挙 権 を 与 え ら れ た 労 働 者 階 級 は 、 知 的 エリ ー ト の 啓 蒙 に よ っ. て 社 会 主 義 の 正 し さ に 目 覚 め 、 選 挙 の 際 に 知 的 エ リ ー ト に 投 票 す る 。 政 権 を 握 った 知 的 エ リ ー ト は 、 社 会 主 義 的 な 政. ︿上 か ら の ﹀ 社 会 主 義 の 実 現 で あ っ た 。 ウ イ ナ ー は 、 °﹁ウ ェ ッブ と シ ョ ウ に と っ. 策 を 実 行 す る こ と に よ っ て 、 労 働 者 階 級 が 直 面 す る さ ま ざ ま な 問 題 を 解 決 す る 。 ウ ェ ッブ 、 シ ョ ウ ら フ ェビ ア ン主 流 派 の 頭 の な か に あ った の は 、 い わ ば. て デ モ ク ラ シ ー は 、 エ リ ー ト の 行 動 に 対 す る 同 意 を 民 衆 か ら 調 達 す る た め の 手 段 で あ った ﹂ と 述 べ て い る が 、 確 か に. (Φ×b9 け) に 対 す る 尊 敬 に よ っ て 緩 和 さ れ た デ モ ク ラ シ ー ﹂ だ った の で あ 娩 。. ロ. 彼 ら に そ う し た 傾 向 が あ った こ と は 否 め な い で あ ろ う 。 パ ー カ ー の 言 葉 を 借 り れ ば 、 要 す る に フ ェビ ア ン主 流 派 が 求 め た デ モ ク ラ シ ー は 、 ﹁専 門 家. 以 上 の よ う な ウ ェ ッブ 、 シ ョ ウ ら を 中 心 と す る フ ェビ ア ン 主 流 派 の 民 主 主 義 論 に 対 し て 、 ウ ォ ー ラ ス は 大 き な 違 和. 感 を 覚 え て い た と 推 察 さ れ る 。 な ぜ な ら 、 前 述 し た よ う に 、 ウ ォ ー ラ ス に と って選 挙 の 過 程 は、 本 来 は集 団 的 な 討 論. に よ っ て 生 み 出 さ れ る べ き 集 団 的 思 考 を 、 選 挙 民 の 選 択 に よ っ て 生 み 出 す た め の 手 段 に ほ か な ら な か った か ら で あ る 。. (﹀蔚 8 一①一 Φω) の 思. ウ ォ ー ラ ス に と って 代 議 制 デ モ ク ラ シ ー は、 統 治 に お い て民 衆 の あ る 程 度 の 理 解 と 知 的 参 加 と を 保 証 す る た め の手 段. であ った 。 こ の点 に 関 連 し て注 目 す べき な の は 、 ウ ォ ー ラ ス が 青 少 年 時 代 に、 ア リ ス ト テ レ ス. ミ嵩塗 ) で 詳 説 さ れ た 彼 の 思 想 に つ い て 、 多 く の 時 間 を か け て. (﹀°閏゜○自屏Φω) に 勧 め ら れ 、 古 代 ギ リ シ ア の 思 想 に つ い て 研 究 し は じ め た 。 ウ ォ ー ラ ス と ギ ル ケ ス は 、. 想 か ら 大 き な 影 響 を 受 け て い た と い う 事 実 で あ る 。 ウ イ ナ ー に よ れ ば 、 ウ ォ ー ラ ス は シ ュル ズ ベ リ ・ス ク ー ル時 代 に 、 教 師 ギ ルケ ス. ア リ ス ト テ レ ス の 思 想 に つ い て 、 と く に ・﹃政 治 学 ﹄ §. 議 論 し た 。 こう し た ウ ォ ー ラ ス の ア リ ス ト テ レ ス への 傾 倒 は 、オ ック ス フ ォ ー ド 大 学 時 代 に さ ら に強 ま り 、 そ の後 も. 一131一.

参照

関連したドキュメント

当協会に対する 指定代表者名 代表取締役.. 支店営業所等

会社名 現代三湖重工業㈱ 英文名 HYUNDAI SAMHO Heavy Industries

領海に PSSA を設定する場合︑このニ︱条一項が︑ PSSA

[r]

[r]

は,コンフォート・レターや銀行持株会社に対する改善計画の提出の求め等のよう

結果は表 2

[r]