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汎用心電計による心房細動関連不適切診断の現状と問題点

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(1)

原 著

汎用心電計による心房細動関連不適切診断の

現状と問題点

加藤貴雄

 八島正明 髙橋尚彦 渡邉英一

池田隆徳 笠巻祐二 住友直方 植田典浩

森田 宏 平岡昌和

【背景】心電図自動診断はすでに半世紀を超える歴史があり,健診や臨床の場で広く用いられて

いる.各心電計メーカーの汎用心電計には,それぞれ最新の自動解析プログラムが搭載されて

いるが,その診断精度は決して十分とはいえず,実臨床の場ではいまだに専門医によるオー

バーリードが不可欠である.【目的】近年,臨床的意義が高まっている心房細動を取り上げ,不

適切自動診断の現状とその問題点ならびに不適切診断をもたらした要因について検討すること

を目的とした.【方法】有志の集まりである「心電図自動診断を考える会」会員から収集した,匿

名化心房細動関連不適切診断心電図計 145例について,世話人間で詳細解析を行った.【結

果】①一般健康診断(会員 A)における不適切自動診断は,健診心電図連続 50,000例中 1,108

例(2.2%)に見られ,そのうち心房細動関連は 54例(約 0.11%,誤診 43例,読み落とし 11

例)であった.一方,循環器専門外来(会員 B)の調査では,さまざまな不適切診断連続 272例

中 51例(18.8%)で心房細動の読み落としが見られた.②心房細動を読み落とした計 62例で

は,f波を洞性 P波と誤認したのが 42例(67.7%),異所性 P波としたのが 5例(8.1%),心

房粗動としたのが 8例(12.9%),心房波を読み取れなかったのが 7例(11.3%)であった.③

心房細動と誤診した計 83例では,洞性 P波を見落としたのが 38例(45.8%),異所性 P波を

認識できなかったのが 37例(44.6%),粗動波を f波と誤認したのが 8例(9.6%)であった.

【結論】心房細動の不適切診断に関しては,誤診が不要な再検査や専門医受診を招く一方,読み

落としによる治療の遅れが脳梗塞や心不全の発症など,重大な合併症を引き起こす危険性をも

たらす.波形計測や診断アルゴリズムのさらなる改良に加え,適切な心電図所見のビッグデー

タを用いた人工知能(AI)の導入など,より精度の高い自動診断システムの構築が求められる.

(心電図,2021;41:5-13)

Inappropriate Automatic Diagnosis of Atrial Fibrillation in Widely-used Electrocardiograph : Current Situation and Problems

Takao Katoh, Masaaki Yashima, Naohiko Takahashi, Eiichi Watanabe, Takanori Ikeda, Yuji Kasamaki, Naokata Sumitomo, Norihiro Ueda, Hiroshi Morita, Masayasu Hiraoka

Keywords ⃝心電図   ⃝自動診断 ⃝心房細動  ⃝不適切診断 「心電図自動診断を考える会」世話人 (〒113-8603 東京都文京区千駄木1-1-5日本医科大学循環器内科内「心電図自動診断を考える会」事務局 *は責任者を示す 2020年 9月 9日 原稿受領/ 2020年 11月 19日 掲載承認

(2)

Ⅰ.背   景

コンピュータを用いた心電図の自動診断はすでに

60年の歴史があり

1)~7)

,各心電計メーカーの汎用

心電計には最新の自動解析プログラムが搭載されて

いる.しかしその診断精度は,すでに半世紀を超え

て改良が重ねられてきた現在でも,心電図専門家に

とっては決して満足できる水準ではない

8)~11)

一方で,必ずしも心電図を専門としない医療従事

者も,さまざまな場面でさまざまな医療行為の一助

として汎用心電計を用いていることから,心電図記

録後に表示される自動診断結果に関しては,より高

い正確性と理解しやすい表記が求められる.しか

し,実際には多くの問題点・疑問点が存在し,我が

国のみならず諸外国においても,実臨床の場ではい

まだに専門医によるオーバーリードが不可欠であ

12)~15)

特に心房細動に関しては,カテーテルアブレー

ション治療の進歩や新規抗凝固薬の開発に伴って,

近年その臨床的重要性が再認識されており

16)~19)

心電図記録時の自動診断精度を高めることは喫緊の

課題の一つである.

このような現状を踏まえ,本研究ではオーバー

リードの際に「心房細動に関連した自動診断の結果

が不適切である」と専門医が判断した心電図記録の

実例を,別記「心電図自動診断を考える会」の会員か

ら広く収集し,不適切診断の内容を詳細に分析・評

価することを目的とした.

Ⅱ.対象と方法

1.対象

別記「心電図自動診断を考える会」会員(文末に記

載)である循環器専門医がオーバーリードした 12誘

導心電図のうち,自動診断の表記が以下のどちらか

と判定された例の心電図を解析の対象とした.

①心房細動以外の所見を“心房細動”と誤診して表

記した例

②

“心房細動”であることを読み取れず,他の診断

名を表記した例

2.方法

自動診断結果が不適切で,上記①,②に該当する

と会員それぞれが判断した例について,年齢,性別

以外の個人が特定できる情報を匿名化した後,その

心電図のコピーもしくは電子媒体を郵送ないしメー

ル添付で心電図自動診断を考える会事務局宛に送付

することとした.収集期間は,実際に記録された時

期にかかわらず 2018年春から秋までの約 6ヵ月間

とした.なお収集に際しては,事前に各自の所属施

設における倫理委員会もしくはそれに準ずる組織の

承認を得た.

収集した上記の心電図を複数の世話人で詳細に分

析し,世話人間で合議の上,以下の成績を得た.

Ⅲ.結   果

1.心房細動関連不適切自動診断の出現頻度

心房細動関連の不適切診断の出現頻度を検討する

場合,その成績は調査対象とする集団の特性に大き

く依存すると考えられる.そこで,まず健常人集団

における出現頻度を大まかに知るため,会員 Aが

調査した 20歳代から 60歳代までの一般企業社員の

健康診断連続 50,000例の心電図を対象として調べ

たところ,1,108例(2.2%)にさまざまな不適切自動

診断が見られ,そのうち心房細動関連は 54例(誤診

43例,読み落とし 11例)であった.図 1にその概要

を示すが,心房細動関連不適切診断の出現頻度は,

不適切診断 1,108例中 4.9%,健診全体の 50,000例

中では 0.11%であった.

一方,多くの循環器疾患患者の診療を行っている

専門外来(会員 B)の調査では,調査の母数や記録の

時期は明らかでないが,抽出されたさまざまな不適

切自動診断連続 272例中 51例(18.8%)で心房細動の

読み落としが見られ,その内訳をみると,約半数で

第 1度あるいは第 2度房室ブロックと誤表示されて

いた(図 2).

(3)

2.収集された心房細動関連不適切診断心電図の

分類

会員有志 8名から 40例の心房細動関連不適切診

断心電図が提出され,上記会員 Aおよび会員 Bの

症例を含め,計 145例を対象として以下の解析を

行った.対象とした心電図については,いずれも個

人を特定できないように匿名化されていた.これら

の心電図自動診断所見に関し,随時の世話人会議の

席上ないし WEB会議によって合議の上,不適切診

断に至った要因について詳細評価を行った.

不適切診断の内訳は大きく分けて,“心房細動”で

あることを読み取れず,他の診断名を表記した例が

62例(43%)

《心房細動読み落とし群》,心房細動以

外の所見を“心房細動”と誤診して表記した例が 83

例(57%)

《心房細動読み過ぎ群》であった.

3.《心房細動読み落とし群》の解析

“心房細動”であることを読み取れず,他の診断名

を表記した 62例に関して,読み落とした結果,ど

のような診断がつけられたかを細かく解析した成績

を表 1に示す.

f波を洞性 P波と誤認したことが原因と考えられ

た 42例(67.7%)では,RR間隔の不整がない場合は

“正常洞調律”

(11例),RR間隔の不整がある場合は

心筋梗塞の過剰診断 325(29.3%) 心筋梗塞の過剰診断 325(29.3%) ST-T変化の 見落とし 151(13.6%) ST-T変化の 見落とし 151(13.6%) 期外収縮の誤診 132(11.9%) 期外収縮の誤診 132(11.9%) 洞性・異所性 P波の見落とし 112(10.1%) 洞性・異所性 P波の見落とし 112(10.1%) WPW症候群の 誤診98(8.8%)WPW症候群の 誤診98(8.8%) 心房細動の 誤診 54(4.9%) 心房細動の 誤診 54(4.9%) ペーシングスパイクの 見落とし 16(1.6%) ペーシングスパイクの 見落とし 16(1.6%) 房室ブロックの誤診 12(1.1%) 房室ブロックの誤診 12(1.1%) その他 86(7.8%)その他 86(7.8%) 脚ブロック/軸偏位 の不適切診断 122(11%) 脚ブロック/軸偏位 の不適切診断 122(11%) (50,000例中1,108例:2.2%)(50,000例中1,108例:2.2%)

図 1 健診例における不適切診断心電図の内訳

房室ブロック 25(49%) 房室ブロック 25(49%) 洞不整脈 11(21%)洞不整脈 11(21%) (不適切自動診断連続272例中51例:18.8%) (不適切自動診断連続272例中51例:18.8%) 期外収縮 6(12%)期外収縮 6(12%) 不明な頻脈 4(8%) 不明な頻脈 4(8%) WPW症候群 4(8%) WPW症候群 4(8%) QT延長 1(2%)QT延長 1(2%)

図 2 循環器専門外来における心房細動読み落とし

例の内容

表 1 心房細動を見落とした 62例の内訳

(1)f波を洞性 P波と誤認した N= 42   ・心房細動⇒正常洞調律:11   ・心房細動⇒洞不整脈:9   ・心房細動⇒ PR短縮:3   ・心房細動⇒ PR延長:16   ・心房細動⇒第 2度房室ブロック:3 (2)f波を異所性 P波と誤認した N= 5   ・心房細動⇒上室期外収縮:5 (3)f波を粗動波と誤認した N= 8   ・心房細動⇒心房粗動:8 (4)f波を読み取れなかった N= 7   ・心房細動⇒洞房ブロック:4   ・心房細動⇒ペースメーカーリズム:3

(4)

“洞不整脈”

(9例)と表記される一方,洞性 P波と誤

認した f波とその直後の QRS波の関係から,“PR短

縮”

(3例),“PR延長”

(16例)あるいは“第 2度房室

ブロック”

(3例)などの誤った診断が表示されてい

た.その他,f波を異所性 P波と誤認したと考えら

れた 5例(8.1%)ではいずれも上室期外収縮と表示

され,f波を粗動波(F波)と誤認し“心房粗動”と誤

判定したのが 8例(12.9%)あった.一方,f波のみな

らず本来あるべき部分の心房興奮波をまったく読み

取れなかった 7例(11.3%)では,4例で“洞房ブロッ

ク”,3例で“ペースメーカーリズム”と誤診されて

いた.図 3に“心房細動”見落としの 1例を示す.

4.《心房細動読み過ぎ群》の解析

心房細動以外の所見を“心房細動”と誤診して表記

した 83例に関して,何が原因で心房細動と誤診し

たかを解析した成績を表 2に示す.

洞性 P波の見落としが誤診の原因であると考えら

れたのが 38例(45.8%)で,そのうち“洞不整脈”を“心

房細動”としたのが 33例,“Wenckebach周期の第 2

度房室ブロック”を“心房細動”としたのが 5例であっ

た.また,異所性 P波を認識できなかったため“上

V1 V2 V3 V4 V5 V6 Ⅰ Ⅱ Ⅲ aVR aVL aVF

図 3 心房細動を見落とした 1例

【症例】65歳の男性.高血圧,持続性心房細動にて外来通院中の記録.自動診断では “第 1度房室ブロック ”“上室期 外収縮(多発)”と表示された.第Ⅱ誘導の矢印部分に見られるような比較的振幅の大きい f波を洞性 P波と誤認し, QRS波までの時間が長いと判断して “第 1度房室ブロック ”と誤診したと考えられる.また,洞調律との判断を優先 したために,心房細動特有の所見である RR間隔の絶対性不整があるにもかかわらず,“上室期外収縮(多発)”と判 定したと考えられる.

表 2 心房細動と誤診した 83例の内訳

(1)洞性 P波を認識できなかった N= 38  ・洞不整脈⇒心房細動:33  ・第 2度房室ブロック⇒心房細動:5 (2)異所性 P波を認識できなかった N= 37  ・上室期外収縮⇒心房細動:37 (3)粗動波を f波と誤認した N= 8  ・心房粗動⇒心房細動:8

(5)

室期外収縮”を“心房細動”と誤診したのが 37 例

(44.6%),粗動波を f波と誤認したため“心房粗動”を

“心房細動”としたのが 8例(9.6%)であった.図 4に

“洞不整脈”を“心房細動”と誤診した 1例を提示する.

Ⅳ.考   察

1.心電図自動診断における心房細動関連不適切自

動診断の出現頻度

心房細動は期外収縮と並んで,臨床上最も頻回に

遭遇する不整脈の一つとして位置づけられており,

非弁膜症性脳梗塞やうっ血性心不全の原因としての

重要性から,その出現状況に関しては国内外で多く

の大規模調査研究が行われている

20)~28)

.これらの

研究結果によれば,調査対象とした母集団の特性に

よって報告される数値にはばらつきがあるが,いず

れも加齢とともにその発生頻度が増大することが共

通しており,特に超高齢社会を迎えた我が国におい

ては,その臨床的意義は高まるばかりである.心房

細動の診断は心電図所見によって確定されるが,我

が国では日常臨床の多くの場面で汎用心電計が用い

られており,記録終了と同時にコンピュータによる

自動診断所見が表示される.この自動診断所見に関

して,心房細動でないものを心房細動と表記した

り,心房細動を見落としたりする例があることは,

日常診療の中でしばしば経験するところである.こ

のような心電図自動診断の精度や不適切診断の出現

頻度に関しては,どのような集団を対象に調査をす

るかによって,その結果が大きく左右されることか

ら,心房細動に特化して詳細に検討した報告は多く

ない

29),30)

本研究では,まず健常人における出現頻度を知る

ため,20歳代から 60歳代までの一般企業社員の健

V1 V2 V3 V4 V5 V6 Ⅰ Ⅱ Ⅲ aVR aVL aVF

図 4 洞不整脈を心房細動と誤診した 1例

【症例】19歳の男性.健康診断における記録.各誘導における洞性 P波の電位が低いことに加え,基線の動揺,U 波の存在,一部誘導の二相性ないし陰性 T波などを f波と誤認し,さらに洞不整脈による軽度の RR間隔の不整 があるため,“心房細動 ”と誤診したと考えられる.

(6)

康診断 50,000例を対象として調べたところ,心房細

動関連の不適切診断は 54例,そのうち心房細動を見

落としたのは 11例(0.02%)と少数にとどまった.こ

れまでの報告を見ると,年代によって数値に大きな

開きがあるので正確に推計することは困難であるが,

我が国の一般市民における心房細動の有病率は平均

して 1%前後と考えられる

25),26)

ことから,本研究

の成績から大まかに推定すると,心房細動を見落と

す確率はおおよそ 500例中 11例(約 2.2%)というこ

とになる.逆に言えば,大多数は心房細動を正しく

診断していることになり,健康診断という場におい

てはおおむね容認される数値と考えられるが,たと

え少数であっても心房細動の見落としを避けるため

には,専門医のオーバーリードが不可欠であろう.

一方,循環器疾患を専門に診療している外来にお

いては,一般市民と異なり心房細動の有病率が桁違

いに高いと考えられるが,今回の循環器専門外来の

調査では不適切自動診断例のうち,実に二割近くが

心房細動の見落としであった.循環器専門外来では

担当の循環器専門医が心電図を目視で確認・診断す

るため,自動診断結果が独り歩きして心房細動を見

逃すことはないが,心電図自動診断の精度という観

点では大きな疑問符が付く成績である.

2.心房細動読み落としの実態とその原因

心電図自動診断において,“心房細動”であること

を読み取れず,ほかの診断名を表記した例の心電図

を詳細に解析すると,その読み落としの原因には大

きく分けて 4種類あることがわかる.一つは,心房

細動特有の細動波(f波)の振幅にばらつきがあり,

一部の f波高が突出して大きい場合,それを洞性 P

波と誤認識するもので,洞調律であるとの判断のも

と,RR間隔に不整がなければ“正常洞調律”,不整

があれば“洞不整脈”と表示される.またこの際,誤

認した P波とそれに続く QRS波の関係から,PR間

隔が短ければ“PR短縮”,長ければ“PR延長”,変動

があれば“第 2度房室ブロック”などと誤診が重なる

ことになる.二つ目は f波の陰性成分を異所性 P波

と誤認する場合で,“上室期外収縮”と誤診される.

三つめは振幅の大きな f波が連続して現れた場合

で,これを粗動波(F波)と誤認し“心房粗動”と診断

してしまうことがある.一方,これら三者とは異な

り,f波の振幅が小さいとそれを読み取ることがで

きず,RR間隔が長く心房興奮がないと判断して“洞

房ブロック”と判定してしまう場合がある.さらに,

そのうちの QRS幅の広い一部の例では“ペースメー

カー調律”と誤診することもある.

心房細動読み落としを減らすためには,f波の特

徴を詳細に分析してその認識精度を上げることに加

え,心房細動特有の RR間隔の絶対性不整の把握が

必要であり,そのためのアプローチとしてベイズ理

論,隠れマルコフモデル,系列相関法,周波数解析,

ウェーブレット解析など,さまざまな数学的手法が

試みられている

31)~34)

.これらの解析プログラムを

自動診断アルゴリズムに導入することによって,心

房細動の読み落としの頻度は大幅に減少していると

考えられるが,実態としては上述のように 0.02%程

度の読み落としが起こっていると判断される.

3.心房細動読み過ぎの実態とその原因

今回の調査における心房細動の不適切診断の発生

頻度は,読み落としよりも読み過ぎのほうが多かっ

た.その理由の一つとして,読み過ぎによって心房

細動と誤診されても,多くの場合はその後専門医に

よって誤診が修正される可能性が高いので,脳梗塞

や心不全の発症などの見落としによる危険性を考え

れば,診断基準を厳しくして読み落とすよりは,緩

めの診断基準による多少の読み過ぎは許容範囲内で

あるという心電計メーカーの考え方があるのかもし

れない.図 1に示すように,不適切自動診断のうち

心筋梗塞の過剰診断が多くを占めている実態があ

り,心房細動に限らず,ほかの重要な心電図診断に

関しても,見落としを防ぐための読み過ぎと考えら

れる偽陽性所見が多く出現する傾向がある.

本研究における心房細動読み過ぎ例を詳細に検討

すると,いずれも独立した波形として存在する洞性

P波や異所性 P波あるいは特徴的な粗動波を読み取

れなかったもので,洞調律や心房粗動ではないとい

(7)

う最初の判断のもと,“心房細動”と誤った診断を下

してしまったと考えられた.その要因としては①洞

性 P波の電位が低いことに加え,②基線の動揺やノ

イズ,U波の存在,一部誘導の二相性ないし陰性 T

波などを f波と誤認した可能性,③ RR間隔の不整

があることなどが考えられ,これらが誤診に至った

経緯と推測された.なお,RR間隔の不整の多くは

洞不整脈によるものであったが,Wenckebach周期

の第 2度房室ブロックによる不整が原因と考えられ

る例が少なからずあった点は,臨床上注意を要する.

4.心房細動関連不適切自動診断是正への工夫

心電図自動診断において心房細動の診断が不適切

であると,これを日常的に活用している臨床現場で

は大きな問題を生じる.すなわち,心房細動でない

ものを心房細動と誤診すると,不要な再検査や専門

医受診を招き,結果として医療費の増大や医療の非

効率化をもたらすことになる.一方,適時・適切な

治療を必要とする重要疾患である心房細動を見落と

すと,治療の遅れが脳梗塞や心不全の発症などの重

大な合併症を引き起こす危険性が高まる.このよう

な心房細動読み落としや読み過ぎによる誤診を減ら

し,診断精度をさらに向上させて心電図自動診断の

有用性をより高めるためには,自動診断システムの

抜本的改良が不可欠であるが,心電計メーカー各社

の解析アルゴリズムの詳細が公開されていない現状

がこれを難しくしている.

本研究の成績を踏まえ,特に心房細動の自動診断

精度を向上させるために必要な方策としては,P波

の検出精度をさらに高めること,ノイズやドリフト

あるいは U波との鑑別を確実に行うこと,周波数

特性などを考慮し f波を確実に検出すること,の 3

点が最も重要であると考えられる.また RR間隔の

不整の評価に際しても,洞不整脈のようにある程度

周期性のあるものと心房細動による絶対性不整とを

きちんと鑑別できるような評価法を考案するなど,

さらなるブラッシュアップが必要であると考えられ

た.そのためには,P波検出のための新たな数学的

手法

35)~37)

を適切に導入することに加え,近年進歩

の著しい人工知能(AI)を波形計測や診断アルゴリ

ズムの中に積極的に組み入れてゆくことも考えるべ

きであろう

38)~40)

謝辞

本研究を遂行するにあたり,その一部に対して鈴

木謙三記念医科学応用研究財団から平成 27年度・

平成 28年度疾患別指定研究として助成を受けまし

た.ここに明記し,深甚の謝意を表します.

付記

心電図自動診断を考える会会員は下記の通りであ

る(2020年 7月現在)

(順不同).

【世話人】10名

平岡昌和,加藤貴雄,髙橋尚彦,渡邉英一,池田

隆徳,笠巻祐二,住友直方,八島正明,植田典浩,

森田 宏

【顧問】10名

相澤義房,井上 博,大江 透,岡本 登,小川 

聡,奥村 謙,児玉逸雄,杉 薫,田邉晃久,山内

一信

【会員】33名

芦原貴司,河野律子,小林義典,志賀 剛,清水 

渉,池主雅臣,中川幹子,中居賢司,平井真理,青

沼和隆,鎌倉史郎,小林洋一,佐々木真吾,加藤 

賢,樗木晶子,箕浦慶乃,村川裕二,山科 章,渡

辺重行,泉田直己,和田高士,古川佳子,佐野元昭,

吉岡公一郎,牛ノ濱大也,堀米仁志,山内 剛,石

黒卓也,貝阿彌隆,鏡原有祐,須藤二朗,山口英司,

米山達哉

〔文   献〕



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Inappropriate Automatic Diagnosis of Atrial Fibrillation in Widely-used Electrocardiograph :

Current Situation and Problems

TakaoKatoh,MasaakiYashima,NaohikoTakahashi,EiichiWatanabe,TakanoriIkeda,YujiKasamaki,NaokataSumitomo, NorihiroUeda,HiroshiMorita,MasayasuHiraoka TheTaskForceonAutomatedDiagnosisoftheElectrocardiograminJapan Background : Automaticdiagnosisofelectrocardiograms(ECG)hasbeenwidelyusednotonlyinclinical practicebutinthehealthcheck-upsformorethanhalfacentury.However,thediagnosticaccuracyofwidely- usedcomputerequippedelectrocardiographisnotalwayssatisfactoryandthereforerequiresanexpert’sover-read.Theaimofthepresentstudywastoevaluatethecurrentsituationandfactorsthatledtoinappropriate diagnosisfocusedonatrialfibrillation(AF).Method : ECGswithinappropriatecomputerdiagnosiswere evaluatedcarefullybymembersofTheTaskForceonAutomatedDiagnosisoftheElectrocardiogramin Japan.Results :(1)InappropriatediagnosisofAFwasfoundin54of50,000healthcheck-upECGs(0.11%)and 51of272consecutivepatients(18.8%)atacardiovascularclinic.(2)Factorsof62under-diagnosesforAF consistedof42(67.7%)misdiagnosesoff-waveassinusPwaves,5(8.1%)asectopicPwaves,8(12.9%)asatrial fluttersand7(11.3%)ofnoatrialexcitations.(3)Factorsof83over-diagnosesforAFconsistedof38(45.8%) thatmissedsinusPwaves,37(44.6%)thatoverlookedectopicPwaves,and8(9.6%)thatmisdiagnosedtypical flutterwaves.Conclusion : InappropriateautomaticdiagnosisofAFmayresultnotonlyinunnecessary consultationswithexpertphysiciansduetoover-diagnosisbutalsoincreasedriskofcerebralinfarctionor heartfailureduetounder-diagnosis.Theconstructionofhighlyaccurateandreliablesystemsbyfurther improvingcomputeralgorithmsisurgentneedlytoimproveautomaticdiagnosisofECG. Keywords :Electrocardiogram,Automaticdiagnosis,Atrialfibrillation,Inappropriatediagnosis

参照

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