Title
英語におけるアクティブ・ラーニング型授業の効果と課
題 : 協同学習の側面に注目して
Author(s)
知念, 秀明
Citation
教職実践研究(6): 51-55
Issue Date
2016-03
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/21850
Rights
沖縄大学教職支援センター
<実践報告>
英語におけるアクティブ・ラーニング型授業の効果と課題
~協同学習の側面に注目して~
知念 秀明 沖縄県立南風原高等学校
The Effects and problems of Active learners in English class
Hideaki CHINEN(Haebaru High School) アクティブ・ラーニング型授業の協同学習に注目して、どのような生徒がアクティブ・ラーニング型授 業を肯定的に捉えているのか,あるいは苦手に感じているのかを調査した.その結果,女子の方が男子よ りも友人との学習に積極的に取り組んでいることや英語を苦手な生徒も協同学習を通して英語の授業を楽 しんでいることが分かった.また,アクティブ・ラーナーとなるためには友人との学習活動において問題 の解答を求めるのではなく間接的なヒントを求める姿勢が必要であることが分かった. キーワード:アクティブ・ラーニング 学業的要請 1.問題と目的 次期学習指導要領の全面改訂の中で,一番 の目玉とも言えるのが「アクティブ・ラー ニング」の導入である.中央教育審議会は 2014 年に「新しい時代にふさわしい高大接 続の実現に向けた高等学校教育,大学教育, 大学入学者選抜の一体的改革について」にお いて高校教育改革の必要性を示し,アクティ ブ・ラーニングの「飛躍的充実」を求めた. では,アクティブ・ラーニングとはどのよ うな学習・指導法であろうか.文部科学省で はアクティブ・ラーニングについて「教員に よる一方的な講義形式の教育とは異なり,学 習者の能動的な修学への参加を取り入れた教 授・学習法の総称.学修者が能動的に学修す ることによって,認知的,倫理的,社会的能 力、教養,知識,経験を含めた凡用的能力を 図る」ことと定義している.また,具体的に は「発見学習,問題解決学習、体験学習、調 査 学習等か含まれるが,教室内でのグルー プ・ディスカッション,ディベート,グルー プ・ワーク等も有効なアクティブ・ラーニン グの方法である」としている.そこで本研究 では,アクティブ・ラーニング型授業の切り 口の一つとしてペアやグループワークに代表 される協同学習の効果に注目した. 本研究では英語の得手不得手,英語授業の 好き嫌い,協同学習の得手不得手,協同学習 の好き嫌い,協同学習への期待感や英語の必 要性を感じているかどうかなどとアクティ ブ・ラーナーの学習戦略との関連を検討する ことで,どのような生徒がアクティブ・ラー ニングに適しているのか,あるいはアクティ ブ・ラーニングを苦手としている生徒の特徴 は何かを明らかにすることを目的としてい る。それにより今後,より効果的なアクティ ブ・ラーニング型授業を実践できることにつ ながると期待できる. 2.方法 (1) 調査対象 沖縄県立A 高等学校普通科 1 年生と 3 年 生の計84 名(男子 51 名,女子 33 名)から 回答を得た. (2) 調査の手続き アクティブ・ラーニング型授業を4月から 毎時間実施する.「英語学習についてのアン
53 52 -英語におけるアクティブ・ラーニング型授業の効果と課題 知念 教職実践研究, 2016, 3, pp.51-55 教職実践研究, 2016, 3, pp.51-55 ケート」として教示を行い,無記名で回答し てもらった.調査は英語の授業を使って行わ れ,その場で回収した. (3) 調査時期 平成27 年 4 月から 10 月までの 6 ヶ月間に 次の二つの授業でアクティブ・ラーニング型 授業を毎回実施した. 1) コミュニケーション英語 I(週 3 時間) 2) コミュニケーション英語Ⅲ(週 4 時間) 10 月下旬に調査用紙を用いて (4) 尺度 野﨑 (2003) の学業的援助要請尺度 ( 対教 師 )(全11 項目),学業的援助要請尺度 ( 対 友人 ) と岡田 (2008) の友人との学習活動尺 度 ( 全23 項目 ) を使用した. 1) 友人との学習活動 岡田 (2008) は,友人との学習活動に注目 することで,友人関係が学習意欲や学業達成 に及ぼす影響を調べるため「友人との学習活 動尺度」を作成している.友人との学習活動 尺度は下位尺度として,友人に助言を求めた り,質問して課題の解決を求める「援助要 請」や,友人に教えてあげたり,ヒントをあ げる「援助提供」,一緒に考えたり調べたり する「相互学習」,学習活動そのものではな く,感情や情報を友人と共有する「間接的 支援」,授業以外で学習の場を作ろうとする 「学習機会」の5 つがある. 2) 学業的援助要請 野﨑 (2003) は自分の力だけでは解決でき ない課題の解決援助を他者に助言を求めた り,質問したりする学習的援助要請に着目 し,「学習的援助要請尺度」を作成してい る.学習的援助要請尺度はその下位尺度と して,間接的なヒントよりも直接的な答え を求める「依存的要請」,逆にヒントを求 める「適応的要請」,そして要請そのもの を避ける「要請回避」の3 つを作成してい る.今回は授業中における協同学習の効果 を中心に調査を進めるため学業的援助の対 友人を使用した. (5) アクティブ・ラーニング型授業の取り組 み 実際に取り組んできた学習法やアクティビ ティ等について具体的に示す. 1) グループワーク 2) ペア・ワーク 3) ジグソー法 4) スマートフォンを用いた受講者参加型授 業 5) CALL システムを使用した授業 6) 課題発見解決型学習 これらのように学修者が能動的に取り組め るように様々な形態の授業が実施されたが全 体を通して共通している点は 1) 協同学習が含まれている 2) 振り返りが行われている の2 点であった. 3.結果と考察 (1) 要因計画 友人との学習活動尺度23 項目について, 下位尺度である「援助要請」「援助提供」 「相互学習」「間接的支援」「学習機会」に ついて,岡田 (2008) の結果に従って各尺度 得点を,各因子に対応する項目の評定値の平 均として算出した.これらの下位尺度につい てα 係数を算出したところ,十分な整合性が 得られた.しかし,学業的援助要請尺度11 項目については,学業的援助要請の下位尺度 である「依存的要請」「要請回避」,「適応 的要請」を野﨑 (2003) の結果に従い,各因 子に対応する項目の評定値の平均として算出 した.これらの3 つの下位尺度について α 係 数を算出したが本研究では,野﨑 (2003) の 結果とは異なり,「依存的要請」において十 分な内的整合性(信頼性)が得られなかった が,今回の分析には採用した (Table 1).
2) 記述統計量 本調査の回答は84 名から得られた.調査 対象学年は1 年生と 3 年生であった.アク ティブ・ラーニング型授業を受けた期間は4 月から10 月までの 7 ヶ月間であるが,夏季 休業で1 ヶ月半ほど授業を受けていない期間 があるので実際には6 ヶ月間程度であった. なお,週単位の授業は,1 年生が週 3 時間, 3 年生は週 4 時間であった. (3) 英語・協同学習の得手不得手と好き嫌い の関係 英語が得意かどうかについて「得意ではな い」から「得意」までの5 件法で回答を求め た.さらに英語の授業が好きかどうかについ て「好きではない」から「好き」までの5件 法で回答を求めた.また,協同学習について 英語の授業でペアやグループで活動すること が好きかどうについて「好きではない」から 「好き」までの5 件法で回答を求めた.さら に英語の授業でペアやグループで活動するこ とは得意かどうかについて「得意ではない」 から「得意」までの5 件法で回答を求めてい る. 英語は「得意ではない」あるいは「あまり 得意ではない」と回答した生徒は53 名も多 く,全体の63% にも当たる (Table2).しか し,そのうちの25 名は英語の授業について 「好き」あるいは「少し」と回答しており, これは英語不得意グループの47.2% に当た る.Table3 には英語の得手不得手と協同学習 の好き嫌いの関係を示した.英語が「得意で はない」ある いは「あまり得意ではない」と回答した生徒 53 名のうち,32 名は協同学習を「好き」あ るいは「少し好き」と回答している.このこ とから英語でのアクティブ・ラーニング型授 業は英語の苦手な生徒たちからも好意的に受 け入れられていると考えられる.つまり英語 が得意でではない生徒でも協同学習を通して 英語の授業を楽しいと感じていることが推測 される. ペアやフループワークといった協同学習を苦 手と感じている生徒でも協同学習自体を嫌っ ているわけではなく,「好きだけど積極的に 参加していくことが苦手」と感じていると考 えられる. Table 1 下位測度 α 係数 N 平均値 SD 友人との学 習活動尺度 援助要請 0.85 84 17.31 4.64 援助提供 0.88 84 12.98 3.91 相互学習 0.84 84 16.46 4.49 間接的支援 0.86 84 13.27 3.31 学習機会 0.89 84 11.11 3.98 学業的援助 要請尺度 依存的要請 0.41 81 12.65 3.38 要請回避 0.66 81 8.06 2.56 適応的要請 0.75 81 12.84 3.45 Table 2 英語の得手不得手 英語授業の好き嫌い 度数 好きで はない あまり 好きで はない どちらで もない 少し 好き 好き 合計 得意ではない 2 7 7 4 1 21 あまり得意で はない 0 5 6 17 4 32 どちらでもない 0 0 3 4 2 9 少し得意 0 1 1 5 11 18 得意 0 0 1 0 3 4 合計 2 13 18 30 21 84 Table 3 英語の得手不得手 協同学習の好き嫌い 度数 好きで はない あまり 好きで はない どちらで もない 少し 好き 好き 合計 得意ではない 2 1 6 5 7 21 あまり得意で はない 0 6 6 11 9 32 どちらでもない 0 0 3 3 3 9 少し得意 0 2 3 5 8 18 得意 1 1 0 0 2 4 合計 3 10 18 24 29 84
55 54 -英語におけるアクティブ・ラーニング型授業の効果と課題 知念 教職実践研究, 2016, 3, pp.51-55 教職実践研究, 2016, 3, pp.51-55 (4) 協同学習における性差の検討 次に協同学習において性差がみられるか, 友人との学習活動の下位尺度についてそれぞ れ分散分析を行った. 分散分析の結果,援助要請で1% 水準の有 意に男子より女子の方が高かった.また,援 助提供においては5% 水準で有意に女子の方 が高い結果が得られた.相互学習,間接的支 援,学習機会においては男女間において有意 な差は認められなかった.このことから女子 は男子よりも積極的に協同学習を行っている と考えられる.その結果をtable 4 に示す. (5) 協同学習のクラスタ分析 友人との学習活動尺度の下位尺度の得点を 用いて,ウォード法によるクラスタ分析を行 ない,3 つのクラスタを得た.第 1 クラスタ は高アクティブ・ラーナー(30 名)で第 2 クラスタは低アクティブ・ラーナー(13 名), 第3 クラスタは中アクティブ・ラーナー(41 名)の調査対象が含まれていた. 次に,得られた3 つのクラスタを独立変 数,学業的援助要請尺度の「依存的要請」 「要請回避」「適応的要請」を従属変数とし た分散分析を行なった.その結果,「依存的 要請」「適応的要請」に有意な群間差が見ら れた.続いてTukey 法による多重比較を行っ たところ「依存的要請」については,第3 ク Table 4 性別 平均値 SD N F 値 援助要請 男子 16.25 4.92 51 7.2 ** 女子 18.94 3.69 33 援助提供 男子 12.18 4.04 51 5.74 * 女子 14.21 3.4 33 相互学習 男子 15.71 4.58 51 3.9 n.s. 女子 17.64 4.02 33 間接的援助 男子 12.96 3.45 51 1.16 n.s. 女子 13.76 3.07 33 学習機会 男子 10.76 4.18 51 0.96 n.s. 女子 11.64 3.66 33 *p<.05, **p<.01 ラスタ>第2 クラスタ(5% 水準)という結 果が得られ,その結果をTable 5 に示した. 「適応的要請」については第1 クラスタ> 第3 クラスタ>第 2 クラスタ(0.1% 水準) という結果が得られた (Table 6).要請回避 において有意な群間の差は認められなかった ことから,低アクティブ・ラーナーは難しい 課題を解くことを諦めているわけではなく, 友人に質問する行為自体に抵抗を感じている と考えられる.依存的要請において第3 クラ スタは第2 クラスタよりも有意に高い得点で あったことから中アクティブ・ラーナーは直 接的に答えを聞くことに抵抗が少ないと考え られる.しかし,高アクティブ・ラーナーと なるためには直接的な解答を求めるのではな く,何がわかれば解決の糸口となるかなどを 考え,ヒントを求めるような学習活動ができ るようになる必要がある. (6) 本研究も問題点と今後の課題 まずは,アクティブ・ラーニング型授業の 実態を把握する尺度についてである.今回, アクティブ・ラーニング型授業の一つの側面 として協同学習を中心に調査をするため,野 﨑 (2003) の学業的援助要請尺度 ( 対友人 ) と岡田 (2008) の友人との学習活動尺度を使 用した.しかし,アクティブ・ラーニング型 Table 5 平均 SD n 高AL 14.56 2.22 28 低AL 8.92 4.88 12 中AL 12.83 2.7 41 中AL> 低 AL* *p<.05 Table 6 平均 SD n 高AL 14.56 2.22 28 低AL 8.92 4.88 12 高AL> 低 AL*** 中AL 12.83 2.7 41 中AL> 低 AL*** ***p<.001
授業においては、グループワークが能動的, 協同する形になるとは限らないという指摘も ある.そのため,アクティブ・ラーニング型 授業の効果を測定するためには協同学習だけ でなく,多面的な角度から適切に測定する尺 度を作成する必要がある. また,アクティブ・ラーニング型授業が生 徒たちの主体的な学びを促すのであれば,必 然的にその学力も向上するはずである.従っ て,今後はアクティブ・ラーニング型授業と 学力との関係を明らかにする必要がある. <引用文献> 岡田涼 (2008). 友人との学習活動における自 律的な動機づけの役割に関する研究 教育 心理学研究,56, 14-22 中央教育審議会 (2014). 新しい時代にふさわ しい高大接続の実現に向けた高等学校教 育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改 革について(答申)(中教審第177 号) 野﨑秀正 (2003). 生徒の達成目標志向性とコ ンピテンスの認知が学業的援助要請に及ぼ す影響- 抑制態度を媒介としたプロセスの 検証- 教育心理学,51, 141-153.