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原発性肺小腺癌の病理学的検討-Focal P(低分化腺癌部分)の重要性- 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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原発性肺小腺癌の病理学的検討

―Focal P(低分化腺癌部分)の重要性―

小山敏雄 川崎朋範 千葉成宏 山梨県立中央病院病理科、同外科※ 【要旨】 腺癌の縮小手術に病理診断がいかに有効に貢献できるかを最大径3cm以下の 腺癌にっいて手術時の転移の状況をもとに様々な組織学的パラメーターなどにより検討を 加えた。  最大径3cm以下の転移例7例のうち6例は少なくとも一一部に低分化な成分がみられた。 また、1例はpapillary adenocarcinoma(野口F型)であった。そこで最も低い部分での分 化度により分化度別の転移率をみると、3cm以下では高分化24例に1例も転移はみら れなかった。細胞型別にみてみると、杯細胞型とII型肺胞上皮型では4cm以下のすべて の例(10例)において転移を認めなかった。3cm以下にするとクララ型で15例中2例転 移をみたがいずれもFocal P(低分化腺癌部分)を有していた。野口分類にあてはめると、 A,B型では転移はなかったが、 C型においても14例中1例も転移がなかった。野口C 型にはFocal Pが含まれている可能性があるので、それをC型から除くことによってさら に縮小手術の適応を拡大できる可能性が高まってきた。胸膜浸潤度により検討を加えると、 低分化を除けばpO, p1であれば充分縮小手術が可能であると思われた。  低分化腺癌やpapillary adenocarcinomaのように肺胞破壊性の強い組織型は転移しや すく、肺胞置換型は転移しにくいことが明らかにされ、細胞型も加えて評価すれば、縮小 手術の評価は充分可能であると考えられた。ただし、最大径3cmを越えるものは縮小手 術には適さないと結論した。 【key word】小肺腺癌、 Focal P、細胞型(腺癌亜型)、縮小手術  【緒言】  近年画像診断の進歩や外科手術手技の発達によって小さい癌の発見や切除をする機会が 急速に増加してきた。肺腺癌は末梢に発生する頻度が高く、最近特にその切除例に遭遇す る頻度が増えてきた。しかしながら、肺腺癌は最大径2cm以下でも予後の不良なものが 他臓器のそれや他の組織型に比べて多く、その早期癌の定義をめぐっていろいろ論議され ている。その縮小手術についても盛んにその是非が検討されている。今回われわれは縮小 手術に対して病理側がいかに貢献しうるかを検討する目的で比較的小さい腺癌についてそ の転移状況を主体に様々な組織学的パラメーターも加えて検討した。また、野口分類につ いても検討・評価を加えた。

(2)

平成12年10月1日   【材料と方法】   1997年から2000年4月までの約3年間に切除された外科開胸手術およびVATSによる  標本で、腫瘍の最大径が3cm以下の腺癌40標本(39例)にっいて検索するとともに、  最大径3cmを越えて4cm以下のもの(15例)も参考として加えた。組織学的パラメ  ーターとして分化度、細胞型(下里分類1))、野口分類2)、胸膜浸潤について検討した。   尚、転移はリンパ節転移、遠隔転移、胸膜播種のいずれか1つでも術時にあれば陽性と  した。術後の転移・再発については評価の対象外とした。組織学的にはHE染色以外に  Elastica Van Gieson染色などの弾性線維染色を全例に施行した。   【結果】   最大径による転移率は表1の如くであり、最大径2cm以下は19例中2例(10.5%)、2

 cmを越えて3cm以下のもの21例中5例(23.8%)、3cmを越えて4cm以下のもの

 15例中9例(60%)であった。径2cm以下の転移例2例についてみると、1例は低分化で  胸膜浸潤度がP3(肺癌規約3))、1例は大部分が高∼中分化であったが、一部に低分化部分  (以下Focal Pl Pはpoorlyに由来)を伴っていた(図1A,B)。後者は肺門部リンパ節に転  移があり、その組織像は低分化であり、Focal Pの部分から転移したものと考えられた(図  1C,D)。次に2cmを越えて3cm以下の転移例5例についてみると、3例は低分化、1例  はFocal P、1例は高∼中分化で中分化な部分が胸膜播種をきたしていた。この中分化の  部分は新WHOのpapillary adenocarcinoma(野口F型)に相当した(図2A−D)(以下、  この例を転移F型症例とする)。従って、3cm以下の転移例(7例)はいずれも最も分化の  低いところで低分化(6例)ないし中分化(1例)であった。   次に、分化度別に転移率を検討した。上記の知見によってその腫瘍の最も分化の低いと  ころで評価した。表2の如く、4cm以下すべてでは高分化が29例中1例(3.4%)、中∼  低分化が26例中15例(57.7%)でそのうちFocal Pは5例中2例(40%)であった。これを  ・3cm以下で検討すると、高分化0%(24例)、中∼低分化16例中7例(43.8%)であった  (この中には上述のFocal P 5例も含まれている。)。   細胞型(表3)についても検討を加えたが、この分類は大部分が高ないし中分化のものに  限って行った。分類の基準としてII型肺胞上皮型は細胞の縦・横の比が1:1以下のもの、  クララ型はその比が1:1∼2:1までのもの(低円柱状)、気管支表面上皮型は2:1以  上のもの(高円柱状)とした。また、混在する場合は最も優勢な細胞型で決定し、分類の  難しいものはあえて分類していない。表3の如くに、最大径4cm以下のすべてをまとめ  ると、杯細胞型(粘液産生型)とII型肺胞上皮型では1例も転移がなかった。クララ型で  は20例中6例(30%)、気管支表面上皮型では12例中3例(25%)であった。これを3cm  以下に限ると、クララ型は15例中2例であるがこの2例にはいずれもFocal Pを認めた。  気管支表面上皮型では11例中1例であるが、この1例は上述の“転移F型症例”である。  以上をまとめると、杯細胞型、II型肺胞上皮型では1例も転移はなく、クララ型でも低分  化部分(Focal P)がなければ、転移を認めていないということになる。 一37一

(3)

      山梨肺癌研究会会誌 13巻2号 2000  3cm以下のものに限って野口分類にあてはめてみた。表4に示すごとくであるが、驚 くことに野口の原著の記載に忠実に分類するとtype Cの転移は0%(14例)であった。と ころが、野口の分類にはFocal Pを入れるところがなく、それをいれると転移率は19例 中2例(10.5%)となった。尚、type A,Bは野口の原著通り転移はなかった。  最後に胸膜浸潤度で転移率を評価した。表5の如く径4cm以下でも3cm以下でも転 移率は胸膜浸潤度とともに増加した。しかし、3cm以下で低分化を除くと、 P2例で1 例転移をみるのみで、この症例は“転移F型症例”である。 【考察】  最近小腺癌の転移や予後についての報告が相次いでなされた2・4・5)。特に1995年の野口 らの論文はin situ carcinomaを肺腺癌にて唱えた最初の報告としての価値が高い2)。 彼らは最大径2cm以下の腺癌を6つのカテゴリーに分類し、そのうちのA, B型は転移 が全くなく、5年生存率100%であることを示した。また、Etoらはその翌年、 elastotic frameworkの保たれた腺癌は10年生存率100%であることを径4cm未満まで示した。 今回われわれの検討では少数例ながらin situ carcinomaと考えられる症例には転移が術 時に認められなかった。しかし、このたび見出されたFocal Pに相当する例は野口の原著 の分類にあてはまるものがない。野口のC型では間質の変化のみが重要でその部分の腫瘍 の分化度についての記載はない。また、D型は大部分が充実性の低分化腺癌と定義してい る。それでは、大部分ではないところの低分化腺癌(充実型ではないのも含めて)はどこ にはいるのであろうか?おそらく、C型に入っているのであろう。というのは彼らのC型 のリンパ節転移率は2cm以下にもかかわらず、28%と驚くほど高い。ところが、われ われが野口の原著に忠実にC型を調べると、なんと転移率はO%であった。従って、野口 のC型から、(部分的でも)低分化腺癌を分離していけば、さらによい予後の推定が可能に なると思われる。鈴木らは3cm以下の野口のC型を線維化の面積によってさらに亜分類 しようと試みており5)、一定の傾向はみられるようだが、分化度を考慮した方がよいのでは ないかと考えている。特にFocal Pが重要であることをさらにここで強調しておきたい。 規約では分化度は最も優勢な部分を以って決めることになっている3)が、今回の検討では それは不適当で、最も低い部分ですることが重要である。  腺癌の亜型分類は下里らの仕事によってかなり、characterizeされている1)。我々もそ の分類に従って検討したところ、杯細胞型とII型肺胞上皮型は最大径4cmまで全く転移 がなかった。しかもクララ型でも転移したものはFocal Pを有するもののみであった。著 者は以前から、表6のように腺癌の細胞亜型と肺胞置換性の関係を調べていたが、転移は 肺胞置換性と密接な関係があり、今回改めてそれが実証されたといえよう。今回何度も出 てくるが、“転移F型症例”は新WHOのpapillary adenocarcinomaに相当するものであ り、以前からもtrue papillary carcinomaと言われていたもので、分化型の腺癌でも予 後が悪いことが知られていた6)。これは野口らも指摘するように既存の肺胞構造を破壊しな がら発育するからと考えられる。このタイプには下里の気管支表面上皮(粘液非産生)型

(4)

平成12年10月1日 が多い。  以上の所見をまとめると、最大径3cm以下の腺癌でも条件をいくつかのパラメーター によって絞り込んでいけば、縮小手術にふみきってよいのではないかと考えられる。特に一 胸膜下の腫瘍ではまずVATSをしてから、それを組織学的に詳細に検討することにより、 開胸するかを決定することに役に立つ。また、術中迅速診断でもFocal Pの存在は葉切な どの拡大切除に重要な情報を提供する。まだ少数例の検討であるが、ある程度の傾向はっ かめたと考えている。特に野口のC型をさらに亜分類することは縮小手術の適応拡大にも 重要である。最近の症例のために予後の検討はしていないが、遠隔転移は異時性であって も術時にすでに成立していると近年考えられていることから、その必要性はあまり感じて はいない。 【結語】 1.最大径3cmを越えるものおよび低分化腺癌は縮小手術から除外すべきである。 2.分化度は、わずかでも最も低い部分を以って決定する。  (特にFocal Pは見落としたり、記載し忘れたりしてはいけない。) 3.野口分類の最大の問題点はFocal Pを入れるところがない。  (おそらく、type Cにはいっている可能性が高い。) 4.径3cm以下で、すべて高分化(肺胞置換型が主体)かつPO, P1の症例は縮小手   術を考慮してよい。 【文献】 1・  Shimosato  Y.,  Kodama  T., Kameya  T.: Morphogenesis  of  peripheral  type   adenocarcinoma  of  the  lung.   Shimosato, Y,, Melamed, M. R., Nettesheim,   Morphogenesis of Lung Cancer, Boca Raton, Florida, CRC Press, 1982, 65−89. 2.  Noguchi M.,Morioka A., Kawasaki M.,Matsuno Y.,Yamada T., Hirohashi S., Kondo   H., Shimosato Y. Small adenocarcinoma of the lung. Histologic charateristics   and prognosis. Cancer 1995, 75:2844−2852. 3. 4. 5. 6. 日本肺癌学会編:肺癌取扱い規約、改定第5版、金原出版、東京、1999,79. Eto T., Suzuki H., Honda A., Nagashima Y. The changes of the stromal elastotic framework  in the growth of peripheral lung adenocarcinomas, Cancer 1996, 77:646−656. 鈴木健司、横瀬智之、吉岡 孝、河崎秀範、吉田純司、西村光世、高橋健郎、 永井完治、西脇 裕。 肺腺癌中心部癩痕の割合と野口分類:野口のC型腺癌の亜分 類の可能性 肺癌1999,39:3−ll. Silver S. A. & Askin F. B. True papillary carcinoma of the lung. A distinct clinicopathologic entity, Am J Surg Pathol 1997, 21:43−51. 一39一

(5)

図1

A

騒覇

㌶鯉

継識

肺胞置換性の高分化腺癌の中に低分化腺癌部分をみる。 (HEX40)

C

肺門リンパ節転移の弱拡大 (HEX10)    低分化腺癌部分(Focal P)の拡大    (HEX200)

  羅鑛

  鴻 ’

     辮 骸灘謬

同拡大1低分化腺癌よりなるe

(HEX200)

(6)

平成12年10月1日

図2

A

肺胞置換性の高分化腺癌の中に肺胞破壊性の 高∼中分化腺癌をみる。(HEXユ0)

B

融礫

麟難

鰺 騰…灘 繊。.ぷ 同拡大:高∼中分化腺癌よりなる。

(HEX200)

C

肺胞弾性線維は破壊されている。   (EVG X200)

D

胸膜播種巣  (HE X40) 一41一

(7)

      山梨肺癌研究会会誌 13巻2号 2000

表1 最大径による転移率

最大径2cm以下  転移率2/19=10.5%

 2<X≦3cm  転移率5/21=23.8%

 3<X≦4cm  転移率9/15=60.0%

径2cm以下の転移例

 Case1一低分化、P3

 Case2 一一 Focal P(大部分は高∼中分化)

径2<X≦3cmの転移例

 Case1∼3一低分化、 Case4−FocalP

Case5一野口F型、(true)papillary carcinoma

表2 分化度別の転移率

4cm以下

 高分化 1/29・= 3.4%

  (Focal P  2/5・=・40%)

3cm以下

 高分化 0/24=0%

  (Foca1 P 2/5=40%)

57.7%

43.8%

(8)

平成12年10月1日

    表3 細胞型による転移率

    4cm以下

     杯細胞型     0/2=0%

     II型肺胞上皮型  0/8=0%

     クララ型     6/20=30%

     気管支表面上皮型 3/12=25%

    3cm以下

     杯細胞型     0/2= 0%

     II型肺胞上皮型  0/5= 0%

     クララ型     2/15=13.3%

      (2例ともFocal P)

     気管支表面上皮型  1/9 =・ 11.1%

       (転移例は中分化)

   表4 野口分類による転移率

    (3cm以下のみ)

    A O/4 =0%

    B O/4 =0%

    C  O/14  =0% (2/19=10.5%)

    (Foca1 P 2/5=40%)

      −43一

(9)

       山梨肺癌研究会会誌 13巻2号 2000

表5 Pfac七〇r(胸膜浸潤度)による転移率

 (4cm以下)

PO−5/37=13.5%

P1−4/10==40.0%

P2−5/7 =71.4%

P3−1/1 =100%

(3cm以下)

3/28==10.7%

1/6==16.7%

2/4=・50.0%

1/1=100%

(3cm以下で低分化を除く)

PO−0/15=・ 0%

P1−0/O

P2−1/2 =50%

P3−0/0

表6

腺癌亜型による肺胞置換性

 II型肺胞上皮型一ほとんど肺胞置i換型

 杯細胞型   一一ほとんど肺胞置換型

 クララ型   一肺胞置換型が多い

 気管支表面上皮型一肺胞置換性比較的少ない

 気管支腺型  一肺胞置i換性ほとんどない

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