• 検索結果がありません。

遺伝性パーキンソン病の臨床分子遺伝学的研究 利用統計を見る

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "遺伝性パーキンソン病の臨床分子遺伝学的研究 利用統計を見る"

Copied!
3
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

氏 名 一瀬 佑太 博士の専攻分野の名称 博 士 ( 医 学 ) 学 位 記 番 号 医工博4甲 第216号 学 位 授 与 年 月 日 平成29年 3月 23日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第1項該当 専 攻 名 生体制御学専攻 学 位 論 文 題 名 遺伝性パーキンソン病の臨床分子遺伝学的研究

(Familial Parkinson’s disease:a clinical and genetics study)

論 文 審 査 委 員 委員長 教 授 杉田 完爾 委 員 准教授 猩々 英紀 委 員 講 師 大森 真紀子

学位論文内容の要旨

(研究の目的)家族性パーキンソン病(PD)12 家系の原因遺伝子の同定を目的に遺伝子解析を行っ た.さらに,GBA遺伝子の長大欠失変異を有した1 家系において,GBA遺伝子変異によるPD 発症 機序の解明のため,変異の有無によるドパミン神経細胞脱落,脳血流分布,遺伝子発現量の違いを親 族内で比較検討した. (方法)家族性パーキンソン病 12 家系において,GBA遺伝子のサンガー解 析,エクソーム解析,エクソーム解析のデータを用いた構造変異解析を行い,既知のPD 原因遺伝子 変異をスクリーニングした.さらにGBA遺伝子の長大欠失変異を有した1 家系には,サンガー法に よる変異の確認,mRNA 発現量解析,ドパミントランスポーターシンチグラフィ(DAT scan),脳 血流SPECT,グルコセレブロシダーゼ酵素活性測定を行なった.(結果)対象家系の発症者は 1 家 系を除き皆40 歳以上での発症であり,典型的な臨床像を呈していた.GBA遺伝子のサンガー解析 により,2家系にGBA遺伝子のヘテロ接合変異(p.L444P と p.G430V)を見出した.エクソーム 解析では,上記2家系においてGBA遺伝子解析で見出した変異が検出された他,構造変異として

PARK2遺伝子の複合ヘテロ接合性長大重複変異(Exon2〜5 の長大重複と Exon5 の長大重複)を1 家系, PARK2遺伝子の複合ヘテロ接合性長大欠失変異(Exon3 の長大欠失と Exon6 の長大欠失) を1 家系,GBA遺伝子のヘテロ接合性長大欠失(Exon3〜11 と隣接する偽遺伝子の Exon1〜2 まで の長大欠失)変異を1 家系見出した.PARK2遺伝子の複合ヘテロ接合性長大重複変異の家系では発 端者以外の若年性PD 発症者に変異を認めたが,発端者では認めなかった.GBA遺伝子のヘテロ接 合性長大欠失を有する家系では,PD 発症者 2 名を含む親族 6 名に変異を認め,4 名は未発症変異キ ャリアであると考えられた.本家系におけるGBA遺伝子のmRNA 発現量は,有意差はなかったも のの変異のない健常者に比べて変異キャリアにおいて低い傾向にあった(P=0.087).DAT scan では, PD 発症2名において SBR(Specific binding ratio)が 1.57,0.94 と著明な集積低下を認めた.非 発症変異キャリアは全例とも集積が保たれていたが,うち2 名では年齢に比して集積が低い傾向に あった.脳血流SPECT では PD 発症者 1 名で,頭頂葉,後部帯状回と楔前部,後頭葉外側面,後頭 葉内側面の血流低下を認めた.血清グルコセレブロシダーゼ酵素活性は,PD 発症者 2 名と非発症変

(2)

異キャリア1 名が正常基準値下限(4.1nmol/mg protein/hour)を下回った.(考察)PARK2 は遺伝 性PD の中で最も頻度が高い若年性 PD である.発端者以外の若年性 PD 発症者に変異が検出された 家系では,発端者のみ高齢発症で進行が早い点で臨床像がPARK2 とは大きく異なっており,他の発 症者とは原因が異なると考えられた.本邦の孤発性PD 患者の 9.4%がGBA遺伝子のヘテロ接合変 異を有するとされるが,本解析では対象12 家系中 3 家系(25%)にGBA遺伝子変異を認め,遺伝 性PD 例においては,孤発性 PD よりも高頻度にGBA遺伝子変異を有する可能性が示唆された.GBA 遺伝子の長大欠失変異を有した家系では,年齢に比してDAT scan の集積が低かった非発症変異キャ リア2 名は,PD の発症早期の特徴とされる被殻外側後部の集積低下が伺われ,今後数年の経過で臨 床的にPD を発症する可能性が高いと考えた.一方,集積が保たれていた非発症変異キャリアは PD を発症する可能性が低いと考えた.本解析により遺伝子変異を有する者全てがドパミン神経細胞の変 性脱落を生じるわけではないことが確認された.また,本家系の血清中グルコセレブロシダーゼ酵素 活性と末梢血中のGBA遺伝子のmRNA の発現量は,共に発症者において低い傾向にあったが,ヘ テロ接合性変異の有無と酵素活性や遺伝子発現量が単純に相関するわけではないことがわかった.以 上より,GBA遺伝子関連PD の発症にはGBA遺伝子変異以外の因子が複数関わっている可能性が 高いと考えられる.今後はGBA遺伝子関連PD の発症に関与する他の因子を探すため,グルコシル セラミドの代謝系に関わる酵素をコードする遺伝子やGBA遺伝子のプロモーター領域のSNPs, PD との関連が見出されている SNPs などの解析を行う.(結論)遺伝性 PD の 12 家系の解析から, PARK2 を 2 家系,GBA遺伝子関連PD を 3 家系見出した.GBA遺伝子関連PD では変異の有無と 遺伝子発現量,グルコセレブロシダーゼ酵素活性量,ドパミン神経細胞の脱落の程度に一定の相関は なく,発症メカニズムにはGBA遺伝子変異以外の因子の関与があると考えられた.

論文審査結果の要旨

家族性パーキンソン病(PD)12家系の原因遺伝子の同定を目的に、サンガー法、エクソーム解析、 構造変異解析を行った論文である。特に、GBA 遺伝子のヘテロ長大欠失変異を有した1家系におい ては、PD 発症機序の解明のため、GBA 遺伝子発現量、ドパミントランスポーターシンチグラフィ ー、脳血流SPECT、グルコセレブロシダーゼ酵素活性を親族内で測定し、変異の有無によって比較 検討を行っている。 3家系にGBA 遺伝子のヘテロ接合体変異、2家系に PARK2 遺伝子のヘテロ接合体変異を見いだ した。GBA 遺伝子のヘテロ長大欠失変異を有した1家系においては、未発症変異キャリアの2名が、 ドパミントランスポーターシンチグラフィーでPD の発症早期の特徴とされる変化を示し、今後数年 の経過で臨床的PD を発症する可能性が高いと推測された。一方、未発症変異キャリアの2名におい て GBA 遺伝子発現量やグルコセレブロシダーゼ酵素活性に統計学的に有意な低下が証明されず、 GBA 遺伝子関連 PD の発症には、その他の遺伝子変異など複数の因子が PD 発症に関わっていると 推論された。 以上の研究結果は、発症前画像解析によって未発症 GBA 遺伝子変異キャリアを推測できること、 GBA 遺伝子関連 PD の発症メカニズムの解明に寄与する知見を見いだしたことなどが高く評価され た。

(3)

<質疑応答> 猩々委員: 1) 家系図、表4などに記載ミスがあり、修正が必要である。 2) 優性遺伝、劣性遺伝の鑑別方法について 3) ドパミントランスポーターシンチグラフィーの判定方法について 大森委員 4) GBA 遺伝子変異の多様性について 5) 既に死亡したり、遺伝子解析が行われなかった人における PD の臨床診断の確かさについて 杉田委員長 6) 表1の修正、Figure legends の修正、加筆について などにについて質議があったが、適切に回答が成された。また、修正された学位論文が再提出された。 以上、本論文は、博士論文として非常に価値が高い研究であると考えられた。また、一瀬氏は本研 究域に関する医学的、遺伝子学的知識を充分に有しており、発表・質疑応答の際の態度も及第点であ り、研究内容、人格・識見ともに博士 (医学) を授与するものとして相応しいと判断された。

参照

関連したドキュメント

• 家族性が強いものの原因は単一遺伝子ではなく、様々な先天的要 因によってもたらされる脳機能発達の遅れや偏りである。.. Epilepsy and autism.2016) (Anukirthiga et

今日のお話の本題, 「マウスの遺伝子を操作する」です。まず,外から遺伝子を入れると

それぞれの絵についてたずねる。手伝ってやったり,時には手伝わないでも,"子どもが正

 高齢者の性腺機能低下は,その症状が特異的で

[Publications] Taniguchi, K., Yonemura, Y., Nojima, N., Hirono, Y., Fushida, S., Fujimura, T., Miwa, K., Endo, Y., Yamamoto, H., Watanabe, H.: "The relation between the

マーカーによる遺伝子型の矛盾については、プライマーによる特定遺伝子型の選択によって説明す

・逆解析は,GA(遺伝的アルゴリズム)を用い,パラメータは,個体数 20,世 代数 100,交叉確率 0.75,突然変異率は

その産生はアルドステロン合成酵素(酵素遺伝 子CYP11B2)により調節されている.CYP11B2