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へき地小規模校経営の特性と学校管理職の役割

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(1)Title. へき地小規模校経営の特性と学校管理職の役割. Author(s). 玉井, 康之. Citation. へき地教育研究, 59: 51-57. Issue Date. 2004-12. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/1223. Rights. 本文ファイルはNIIから提供されたものである。. Hokkaido University of Education.

(2) No.59. へき地小規模校経営の特性と学校管理職の役割. へき地小規模校経営の特性と学校管理職の役割 玉 井 康 之 (北海道教育大学釧路校). TheRoleofSchooIManagerinRuralSmallSchooI Yasuyuki TAMAI. 可能性を教職員に伝え,教職員集団全体としてへき地教. はじめに−へき地小規模校経営と管理職の課題. 育の積極面の活用方策を集団的に検討していくことが求. 本稿は,へき地小規模校の積極面を生かすための管理. められる。へき地小規模校の学校改善を考える基本的な 領域と課題をここではとらえておきたい。. 職の基本的な姿勢と役割を明らかにすることを課題とし ている。. 本来へき地小規模校には,少人数で自然の中にある学. 1.へき地小規模校の特性を生かした学校経営. 校だからこそできる教育課程や教育方法も多くある。へ. 改善の基本課題. き地の教員がへき地のマイナス面として認識しているへ. き地の環境や条件も,むしろ積極面として生かしていく. (1)へき地小規模校の課題とリーダーシップの課題. ことが求められている。すなわちへき地小規模校をとら. 実際にへき地小規模校の運営はプラス面も多く,積極. えるパラダイムの転換が求められている。. 面を生かせば,へき地教育の特性がそのまま先進的な学. しかし一般的にぺき地小規模校では,厳貞の定着率も. 校づくりの条件となる。一方,へき地小規模校の学校経. 低く,教師のへき地教育への理解も必ずしも高くないと. 営の改善にとってマイナス面として指摘される条件も客. 言われる。このようなへき地小規模校のマイナス面が指. 観的に存するため,それらを克服するために,意識的に. 摘される現状を打開するためにも,管理職がへき地小規. へき地小規模校の良さをとらえていく経営を行う必要が. 模校の積極面を生かした特色づくりを,率先して進めて. ある。へき地小規模校の運営を妨げる条件は,‘一般的に. いかなければならない。管理職がへき地小規模校の積極. 次の点である。. 的な展望と改革の方策を指し示すだけでも,教師たちは,. 第一に,へき地小規模校に勤務することを不本意であ. へき地に対する意識を前向きに変えていくものである。. ると思っている教員が相対的に多いことである。した. しかし現実には,必ずしもへき地小規模校の管理職が. がって,へき地に定着せず,数年たてば市街地・都市部. へき地小規模校に合った経営を進めているわけではな. に転勤希望を出す教員が少なくない。. い。まキ管理職がへき地の積極面があるという発想にキ. 第二に,へき地小規模校から転勤した教職貞の補充と. てていか−場合も少なくない。へき地小規模校の管理職. して,新卒者や比較的若い教師が赴任を求められる場合. の中には,管理職になる時にはじめてへき地小規模校に. が多く,教職員の平均年齢が極めて若い学校が少なくな. 赴任する人も少なくなく,管理職昇任の通過儀礼として. い。その結果,校務分掌に支障がある場合や教育指導力. へき.地小規模校への赴任をとらえている場合も少なくな. が全体として弱くなる場合も多いとしミうことである。む. いからである。. ろん若い教師が多いということは,それだけ柔軟性が高. このように,管理職の意識がへき地の積極面に向いて. く,新. いないために,教職員全体がへき地の積極面を生かした. 向けば,若いということをプラスに変えられる面もある。. 第三に,へき地小規模校は,地域性や地域共同体が強. 教育を創り出そうとする雰囲気を高めることができない. のである。様々な条件の制約がありつつも,へき地小規. く,また地域教育力もまだ残っているが,地域と連携し. 模校の管理職が,へき地小規模校の教職貞を鼓舞する. たりとけ込もうとしない教師が多くなっておりl地域の. リーダーシップが求められるのである。教職員の意識の. 教育力を生かし切れていないことである。とりわけ若い. 向上を図るために,管理職自らがへき地小規模の良さと. 教師には,市街地に住んでへき地小規模校に通勤する教. − 51−. 2004.12.

(3) 玉 井 康 之. 求められるのは,へき地小規模校では,全学校児童生徒. 師も増えている。 第四に,ぺき地小規模校の地域環境は,自然環境に恵. の顔が見え,学級担任を超えて指導できるとともに,な. まれているが,自然環境を体験学習等の教育課程に生か. おかつ学習指導・生痍指導・地域活動もトータルにとら. す発想と技能を持ち合わせていない教師が多いことであ. えて指導することが求められるからである。したがって,. る。市街地の学校では,博物館・資料館・図書館・科学. 教務・生徒指導などの分葦を細かく細分化するよりも,. 館・役所などの社会教育施設・公共施設を地域教育活動. 全員が全児童生徒を指導し,全教育指導分野を一緒に検. の一環として活用する場合が多いが,へき地小規模校に. 討していくことが求められる。管理職は,全員が全分野. 転勤した教員が,市街地の発想のままでへき地の教育を. を担当するという分単組織を作ると共に,その理念を教. 行おうとするため,へき地小規模校の教師には,「使え. 職員に理解しでもらうことが必要になる。. る施設が何もない」という悲観的な視点しか持てない人 が少なくない。. (3)地域住民の協力を生かした地域学校経営の促進と課. このようなへき地小規模校の教職員の意識を変えるた. 題. めには,管理職自らがへき地小規模校の積極面を語ると. へき地小規模校では,元々学校と地域の関係があらゆ. 共に,教職員がへき地環境をどのように生かすかについ. る場面において密接な関係を有している。へき地小規模. て,ブレーンストーミングを行うなどして,教職員の意. 校では,教職員が少ないだけに,行事や生活指導などあ. 識を高めていくリーダーシップが不可欠である。とりわ. らゆる学校の運営において地域住民の力を借りノなければ. け教職員に明るくへき地教育を語り,アイデアを出し合. ならず,地域の教育力を生かしてはじめて,へき地小規. う説明能力が求められている。教職員が議論をして多面. 模校の学校教育が成り立つといっても過言ではない。ま. 的な見方ヤアイデアを出し合うことによって,マイナス. たへき地小規模校では,地域環境や地域の人間関係が子. 面と見なされていたへき地小規模校の環境も,プラス面. どもの発達や人間関係に直接影響する場合が多く,地域. に変わっていくのである。. の状況を無視して学校の中だけで適切な教育活動を進め ることはできない。. しかし近年地域の教育力も低下すると共に,学校数職. (2)小規模教職員集団の特性を生かした小規模学校経営 と課題. 員もあえて地域にとけ込もうとしなかったり,地域の教. へき地小規模校の教職員数は少ない。それだけに,学. 育力の重要性を認識していない教職員も増えている。ま. 級担任任せや分掌担当者任せになるのではなく,全教職. たへき地小規模校にとけ込むことを敬遠し,市街地・都. 員の一致を図りやすく,全員が一丸となって教育活動に. 市部から遠距離通勤をする教職員も少なくない。これら の教師にとっては,地域にとけ込み様々な活動を相互に. 当たりやすい。. しかし一方で,へき地小規模校に赴任した管理職の中. 協力し合うことは,本務ではないととらえている場合が. 多い。. には,市街地の大規模校と同じような校務分掌組織を設. 置し,それぞれの担当ごとに明確に分けてしまう管理職. しかし,教職員が地域にとけ込めばとけ込むほど,学. もいる。大規模校では分掌が明確に分担されながら,学. 校の様々な活動に地域は協力的になるのであって,教職. 校運営が進んでいくが,一方でその.ような明確に分かれ. 員が地域にとけ込もうとはせずに,地域の協力だけは得. た分掌組織になればなるほど,他の分掌との関連が相互. ようとしても無理がある。仮に自宅が当該へき地にない. に見えにくいという弱点もある。. 場合でも,土日を含めて積極的に地域の行事や活動に出. このような独立的な分掌組織になると,へき地小規模. て行くことを心がけなければならない。. 校では教職員数が少ないだけに,1分掌1担当者になり. このような中で,へき地小規模校の管理職は,地域を. かねず,分掌の中の相談・協働遂行が進まなくなる。1 人だけの担当者では,担当者本人もどうしていいか分か. 意識的に巻き込むために,保護者のみならず地域住民と の連携を意識的に進めていくことが重要になる。また教. らない場合や元気が出ない場合が多く,企画・立案・行. 職員に対しても積極的に地域に出て行き地域にとけ込む. 動の発展に限界が生じるからである。. ことを奨励していかなければならない。仮に教職員から. そのためへき地小規模校では,分掌担当者を設けたと. 地域に出ることへの抵抗があったとしても,呼びかけ続. しても,他の全貞がその分掌部員になることを確認して. けることが重要である。. おかなければならない。分掌の部貞を確保するだけの教. 管理職や教職員が地域に入っていくことで,地域性民. 職員が本来いないのであるから,職員会議が事実上の各. は,学校の方針に対しても徐々に協力的になっていく。. 分掌部をかねているととらえるのが妥当である。. へき地の地域住民は市街地の地域住民に比して,全体と して学校に協力的であるため,学校の教育方針や年間カ. このような全員が全分掌に関わる分掌組織の在り方が. − 52 −.

(4) No.59. へき地小規模校経営の特性と学校管理職の役割. リキュラム等の情報を積極的に伝え,日頃から学校への. 2004.12. とが求められる。. 協力を要請していくことが重要である。それによって, 生活指導も,行事も;給合的な学習活動や学習指導も,. (2)自然環境を生かした特色ある教育課程経営の促進と. より効果的な指導内容を構築することができる。. 課題. 一方で,地域からの様々な要望も増える場合もあるが,. 自然環境は,近年重要な課題となっている環境教育の. 可能な限りそれらも引き受けていく姿勢も必要である。. 素材に最も有効な条件となる。また自然体験学習は自然. 行事筆での要望を拒否することは,へき地の教育経営に とっては,マイナスになる。教貞個々人の都合が悪い場. 探索や生命育成活動等を通じて,身近な地域の再発見や 子ども同士の触れあいを促進する。自然体験学習は「心. 合を除けば,可能な限り全教職員が地域行事に参加する. の教育」の→環として,特別活動や道徳をはじめとして,. ように促すことが重要である。地域行事などは,意識的. 設定されることが課題となっているが,へき地小規模枚. に学校教育課程の一環に位置づけて,全体の年間行事計. では,学校・学級の年間行事としてすでに組み込まれて. 画も再編することが必要である。へき地においては,地. いる学校も多い。一方,へき地は自然が当たり前である. 域行事には,子どもたちは出てきているのが通常であり,. からといって,自然体験を減らす方向で検討する管理職. たとえ学校の行事でなくとも,教職員は地域行事に一緒. も少なくないが,近年はへき地の子どもほど自然体験が. に参加するという教育的配慮が必要である。へき地小規. 減少しているのも実態である。このようなへき地小規模. 模校では,教職貞が地域行事等に出ることによって,学. 校の豊かな自然を生かした活動が意識的にも一層求めら. 校′・家庭・地域の全体を通じたトータルな教育指導が可. れている。. 能となる。. 具体的には,自然体験は,野山・海・川の動物・魚・. ′. 昆虫・植物や農業生産活動等を進めるが,これらの自然 への具体的な接し方やキャンプ活動を含めて,実技指導. 2.地域の産業・自然を生かした特色ある教育. 力や特殊な知識・技能が必要になってくる。しかしへき. 課程経営の促進と課題. 地小規模校に勤務する教職員が,必ずしもそれらの体験 学習の指導技能を持っているわけではない。. (1)第一次座業を生かした特色ある教育課程経営の促進. そのため管理職は,教職員の自然体験に関する指導技. と課題. へき地の基幹産業は第一次産業の農林漁業であるが,. 能を高める講習や情報を入手すると共に,それらへの研. 農林漁業を生業とする保護者も必ずしも農林漁業を子ど. 修を奨励していかなければならない。また個々の教師が. もに理解させているわけでも\ない。農林漁業は,食料生. 有する技能や情報を単に個人的な指導力に留めることな. 産業としても,生命育成産業としても教育上重要な内容. く,学校全体として共有しながら,学校全体の指導力の. を含んでいる。またへき地では,子どもたちの親の職業. 向上を図っていく必要がある。. であり,子どもたちが親・′地域の職業に誇りを持つこと. さらに教職貞だけで対応できるものではないので,地. は,あらゆる教育活動への意欲にもつながり,教育効果. 域の専門的な技能を有している人に協力してもらいなが. が高い。管理職は,このような第一次産業を体験したり,. ら,学校の教育実践力を高めていくことが重要になる。. 調べたりする教育活動を意識的に作れるように,教職員. 個々の教職員が持っている地域住民とのコネクションを. に啓発・示唆するようにつとめることが求められる。. 学校全体として議論しつつ,学校全体の協力者として位 置づけていく必要がある。管理職は,個々の教師の技能・. そのためには,基本的なカリキュラムづくりの方針を. 明確にすると共に,教務担当者と連携して農林漁業に閲. コネクションを全体のものに引き上げていくように仕向. す\る地域素材の情報・アイデアを集約する必要がある。. けていくことが必要である。. 教科単元の中の第一次産業に関する部分は,地域に出て 行って話を聞いたり,体験したりする内容に置き換える. (3)坤域住民のアドバイス・評価を生かレた教育課程経. こともできる。また総合的な学習をはじめとした調べ学. 営の促進と課題. 習としては,農林漁業等の地域産業の現状を踏まえた上. 第一次産業や自然を生かした学習活動を展開するとき. で,地域の未来や地域づくりの方向性を提案していく教. には,その分野の職業的な専門家との連携は不可欠であ. 育活動が求められる。単に状況を調べるだけでなく,自. る。「へき地には専門家が少ない」と言っても,農林漁. ら地域づくりに関わる提案をすることで,地域への愛着. 業従事者や自然を対象にした関係者は,へき地にも在住. や誇り,主体的に状況を打開していく姿勢や自信を高め. している。例えば,機関としては,農協・漁協・森林組. ていくことができる。管理取は,農林漁業を学校カリキュ. 合・食品生産加工業などの産業団体もあるし,公共機関 としての普及所の支所があるところもある。また農家・. ラムに取り入れていくことを,積極的に提案していくこ. − 53 −.

(5) 玉 井 康 之. 漁師等の第一次産業従事者は,農林漁業と自然を相手に. らを開発でき先進的な事例にも位置付づいており,へき. したその分野の専門家である。. 地小規模校で積極的に開発していく必要がある。. てもらったり,関連学習教材に関する解説をしてもらう. 管理職は,間接指導や複式学習指導方法の導入や工夫 に関する様々な問題提起を行いながら,小規模校にあっ. ことは,学習の深まりを促す上で重要なことである。個々. た指導方法を議論し開発していく雰囲気を作っていく必. の学習に関して,子どもたちが家庭で聞いてきて,学校. 要がある。. これらの専門家に,子どもたちが調べたことを評価し. で発表してもらうなど,地域住民・保護者を学習の支援 者として協力依頼することは重要である。これらについ. 4.地域全体で「心の教育」を推進する学校経. ても,各担任任せではなく,学校全体として協力を依頼. 営の促進と課題. していくことが不可欠である。管理職は,地域の協力者. 現代の少年非行の低年齢化や社会的なモラルの欠如な. を得られるような連携と窓口の整備などの学校体制づく. ど,「心の教育」が大きな課題となっている。この「心. りを進めていかなければならない。. の教育」は,単に道徳の授業だけで展開するものではな く,様々な大人と子どもや子ども同士の人間関係の触れ. 3.少人数指導・個別指導方法の指導法開発を. あいを設定し?つ,全地域・全生活過程を通じて育成す. 重視した学校経営の促進と課題. るものである。. へき地小規模校は,学級人数も少人数であり,複式授 業を含めて異学年集団を構成している。このような学級 の状態が異なるにもかかわらず,市街地での一斉授業方. このような人間的な触れあいが可能となる条件がへき. 地小規模校には存在しているのであるから,それらの条 件を意識的に「心の教育」に生かしていく必要がある。. 式で授業を進める教員も少なくない。教師の中では一斉. またへき地小規模校のあらゆる触れあい活動が,潜在的. 授業方式が優れた指導法で,家庭教師のような個別指導. に「心の教育」になっていることを教職員に啓発してい. は誰でもできる指導としてあまりいい指導ではないとい. く必要がある。. 例えば,収穫祭や地域祭りなどの地域行事も,学校と. う価値観を持つ人が少なくない。. して位置づけて参加することで,、教師と子ども,大人と. しかし,少人数学級の中で一斉授業方式にこだわる必. 要はない。むしろ,思い切って少人数指導・個別指導を 重視して,個に応じた指導内容を徹底的に重視した方が,. 子ども,子ども同士の触れあいを促進し,結果として「心 の教育」を進めることになる。地域の共同作業・清掃作. 少人数学級のメリットを生かすことができる。. 業等も,大人との触れあいをしながら,公共精神を養う. また複式・異学年集団の中では,子どもから同学年の. ことになる。. 高齢者との触れあいやボランティア活動も,ぺき地で. 子どもへの間接指導方法や相互学習方法を用いながら,. 教師の一方通行的な授業を転換することができる。間接. は,高齢者と日常的に触れ合っているが,触れあいを意. 指導を展開していくためには,子どもたちが子どもたち. 識的に勧めることで,日常的な高齢者へのボランティア. を指導できる各単元の学習部分のマニュアル化を進めて. を行うことができる。. いくことが重要である。すなわち,教師が一回一回の指. また自然体験とも関連して,植林・稚魚放流・などの. 示をしなくとも,子ども同士で進められる学習指導形態. 生態系の維持を基本とした環境保全活動や学校農園等の. を作り上げることが重要である。. 栽培活動も「心の教育」につながる。これらを含めたへ. 複式授業も,同単元AB方式だけでなく,まったく別. き地小規模校での自然体験・社会体験・生活体験学習自. 体に,「心の教育」につながる内容が含まれている。. の単元を行ったとしても,子ども達自身の相互学習や間. このようにへき地小規模校の「心の教育」は,単に道. 接指導方法をうまく使うことで,発達段階に応じた異単. 元を展開することも可能である。このような複式学習指. 徳授業・特括の学校教育の時間だけで行うのではなく,. 導は,単式指導に比べて教える内容が2倍にもなるため. 日常的な地域活動・触れあい活動全体の中で行うもので. 教師の負担感もあるが,へき地小規模校の学習指導方法 を開発することで,より子どもの学習効果を生み出す方. 域全体が担う人間関係づくりや体験づくりの指導の雰囲. 法を開発していかなければならない。. 気をいかに構築していくかが課題である。そのためにも. 現代の教育政策は,指導方法の発想も一斉授業方式が 優れているという価値観が転換しつつあり,むしろ少人. 学校として,地域の行事や日常的な活動を把握すると共. 数指導方式や習熟度別指導方法が大きく展開しつつあ. の教育」の一環として地域の行事や活動を位置づけても. る。このような中では,へき地小規模校の授業は,それ. らえるよう,協力を依頼していくことが必要である。管. ある。すなわち,学校関係者が指導するだけでなく,地. に,教育課程に位置づけていったり,また地域にも「心. ー 54 −.

(6) No.59. へき地小規模校経営の特性と学校管理職の役割. 理職は,これらの活動の良さを教職員や地域住民に啓発. では,へき地の高齢者比率は高く,日常的に高齢者と接. し,地域全体で子どもを見守る雰囲気を作っていかなけ. する繚合的な学習を組むことができる。高齢化の問題は,. れぼならない云. 単にへき地の問題だけでなく,日本の高齢化社会の普遍. 2004.12. 的な問題としてとらえることができる。高齢者との交流 や調べ学習を通じて,心の教育・ボランティアを含めた. 5.へき地小規模校の素材と条件を生かした総. 現代的な課題をとらえることができる。. 合的な学習経営の促進と課題. 第四に,農村・漁村の共同体を中核にした地域の伝統 文化や規範価値をとらえる総合的な学習では,日本の伝. (り ′へき地の素材を生かした総合的な学習経営の促進. へき地小規模校では,一般的に市街地のような専門施. 統的な価値観や文化をとらえることができる。元々日本. 設や専門家は少ない。したがって,そのような専門施設. の規範価値や社会的な行動様式は,農村共同体から由来. や専門家をあてにするような総合的な学習をイメージす /. しており,欧米のように宗教に規範を求めているもので. ると,条件が揃っていないというマイナス面しか見えて. はない。農村・漁村の文化や規範をとらえることで,日. こなくなる。逆に豊かな自然と農業と地域性を最大限活. 本の伝統的な社会性・集団性やモラルをとらえることが. 用する総合的な学習を組み立てるならば,これらを使っ. できる。 これらのへき地小規模校ならではゐ素材を最大限生か. た「学び方・調べ方を学ぶ」総合的な学習の意義を高め. すように総合的な学習を組み立てていくことが重要であ. ることができる。. へき地小額模校で活用できる総合的な学習の素材は,. る。管理職は,総合的な学習の基本的な設定課題や内容. 大きく分けて次の4つである。第一に,原生的な自然を. を教職員に提示しつつ,給合的な学習のある程度の体系. 生かした総合的な学習である。第二に,地域の農林漁業. 化を因っていく必要がある。. と食卓を結ぶ総合的な学習である。第三に,高齢者との 交流を含めた福祉の総合的な学習である。第四に,農村・. (2)へき地の社会的条件を生かした総合的な学習経営の. 漁村の共同体を中核にした地域の伝統文化や規範価値を. 促進. とらえる総合的な学習である。. へき地小規模校では,於合的な学習を進める社会的条. 件としても有利な点が多い。市街地よりも有利な側面を. 第一に,原生的な自然を生かした総合的な学習では,. 水槽や実験の中での観察ではなく,全自然生態系を通じ. 生かして,総合的な学習の経営を進めていくことが重要. た総合的な自然をとらえることができる。動物・昆虫・. である。. 有利な側面は,第一に,自治体行政が地域住民の生活. 植物の生態系や,水を通じた川・海・空気・陸地の循環 体系をとらえることによって,全体としての環境保全の. に直結しているものが多く,自治体の役割や公共的な役. 在り方を考えることができる。市街地の子どもたちは,. 割が見えやすいことである。また役場や公共機関も,学. しばしば水や空気の汚れも機械で対応できると思いがち. 校や子どもの活動に協力的で,へき地では,公共機関の. であるが,原生的な自然を総合的にとらえることによっ. 役割を活用することが重要である。. て,自然の再生産の意味を実感としてとらえることがで. 第二に,社会・経済の仕組みをとらえる上で,地域産 業の関連性が見えやすいことである。身近な第一次産業. きる。 第二に,地域の農林漁業と食卓を結ぶ総合的な学習で. から第二・第三次産業までの産業連関構造が見えやすい. は,/農林漁業を社会科学的・自然科学的・生活科学的に. ことである。それによって,社会科で習うような生産と. あらゆる角度から調べ学習の対象とすることによって,. 生産,生産と消費の産業連関構造や循環が見えやすく,. 毎日身近に見ている部分・食べている物であるにもかか. どの職業もなくてはならないものであることが理解でき. わらず,それまで気づいていなかった奥の深さを児童生. る。. 第三に,公民館・社会教育行政の役害りが大きく,生涯. 徒は感じ取ることができる。食料と農業との関連性は, 近年重要な課題となっている食育の課題ともつながろ内. 学習活動と学校教育を連携させた教育活動を組みやすい. 容である。農漁業に関わる内容は,地形・気候・流通・. ことである。社会教育等で開設している講座や体験学習. 市場・環境保全・食糧問題′・国際間題・商工業との関. と学校が連携できれば,より豊かな総合的な学習を組む. 連・生命再生産など,あらゆる科学的な観点からとらえ. ことができる。. ることができる。また地域の基幹産業を調べ学習の対象. これらの地域の公的機関・全産業・生涯学習活動を学. にすることで,地域産業にも誇りと自信を持つことがで. 校教育に取り込めるような学校経営を進めていく必要が. きる。. ある。管理職がそれらのパイプ役となることで,教職貞 の総合的な学習に対するイメージも広げていくことがで. 第三に,高齢者との交流を含めた福祉の総合的な学習. ー 55 −.

(7) 玉 井 康 之. きろ。. そのため,第一に,へき地小規模校においては,学習 活動においても学級経営においても,調べたことや分. かったことを,まとめ,発表する機会を多く設定するこ. (3)へき地のまちづくりと総合的な学習経営の促進. へき地小規模校は,過疎地が多く,経済的にも人工的. とである。集合学習を行う意義についても,発表する機. にも地域が衰退している地域が多い。そのため,子ども. 会を設定するなど、積極的な意義を付加することができ. 体験学習等の総合的な学習も,最終的. たちの調べ学習・. る。少人数となりこれまでの活動ができなくなったので,. には地域づくりと関連させていくことが重要である。ど. 小規模校同士で集まる占いう消極的な意味に留まえので. んな領域もそれを調べることで地域の再発見につなが. はなく,各学校の成果発表を合同で行ったり,テーマを. り,その課題解決方法を考案していくことで,まちづく. 決めて競い合ったりする場として活用すれば,よりいい. りにつながるという意義付けが必要である。どんな内容. 意味での競争心や刺激を与えることができる。. もまちづくりにつながるからである。. 第二に,へき地小規模校では図書館などの資料情報の. また調べたことの発表会には,子どもだけでなく,地. 収集では弱点はあるが,新聞資料についてはどの地域に. 域住民を巻き込んだ発表会を企画し,調べた成果を地域. もあり,新聞資料を地域・社会の生きた資料として活用. に還元していくことが重要である。ポスターセッション. することが重要である。新聞情報をNIE(Newspaper. 等の調べ学習の成果等は,公民館の掲示板に貼ったり,. InEducation)として活用するなど,日常的な問題を教. 社会教育の行事・イベントと連携して発表の会を設けれ. 科や総合的な学習の資料とすることもできる。. ば,子どもたちにも調べ学習の張り合いができる。. またインターネットの資料は,調べ活動のきっかけに. あらゆる活動をまちづく. はするが,役場や公共施設の生資料に直接当たりながら,. 自分自身が知識を得るだけでなく,その知識を地域・社. 身近な情報資料を最大限活用することが重要である。電. 会に還元するという意義を感じることができる。子ども. 話帳・住宅地図・郷土読本・子ども向け百科事典なども. たちはまちづくり活動を通じて,公共性・献身性を身に. 身近な資料であり,基本的な情報を探す上で,最低限学. つけることができる。. 校に用意しておかなければならない基本資料である。. このように総合的な学習の一環としてまちづくり活動. 第三に,伝統的にへき地小規模校で多く展開してきた. を行う場合には,学校全体として,地域調査方法を蓄積. 地域体験学習が減少してきているために,体力・集団行. しておき,それらを子どもたちに指導できるようにして. 動・活動力など,へき地小規模校の子どもたちが持って. おかなければならない。例えば,課題設定のための用語. いた良さが失われてきているが,再度これらの活動を高. 資料・百科資料の調べ方,資料収集の方法,聞き取り調. めることによって,へき地小規模校の子どもの生きる力. 査の方法,アンケート調査の方法,電話かけや訪問の方. を高めていくことである。それらの体験活動は都会では. 法,実体験調査の方法,気づいたことのまとめ方,発表. できない活動であることを,子どもたちにも積極的に位. の仕方,などを最低限のマニュアルとして確立しておく. 置づけて語り,体験活動を徹底して実施することが重要. 、. 必要がある。. である。このことが,へき地小規模校の子どもたちの意. 管理職は,まちづくりにつなげる総合的な学習の意義. 欲の減退などの課題を克服することになるのである。. 付けを行うと共に,このような調べ学習方法のマニュア. これらのようにへき地小規模校では,新しい刺激を子. ル化をすすめられるように,学校全体として意志統一し. どもたちにもたらすことが重要である。そのため,発表. ていく必要がある。. の機会・集合学習の在り方・文字情報資料の探し方・体. 験学習の展開など,管理職は,へき地小規模校の新しい 刺激の導入の仕方を問題・提起していくことが重要であ. 6.へき地小規模校の小規模性を克服する経営. る。. と課題. へき地小規模校の積極面を活用すると共に,マイナス. おわり に. 面にもなりうる小規模性・遠隔性を克服する課題も検討. しかナればならない。小規模性・遠隔性の中では,子ど. 以上,へき地小規模校の積極面と課題を踏まえながら,. もたちは意思疎通を高めている反面,なれ合いになった. 学校管理職がへき地の積極面を展開できるような経営の. り,新しい刺激に乏しくなったりする。これらのマイナ. リーダーシップを発揮する必要性をとらえてきた。へき. ス面を克服するために,意識的にフォーマルな集団的・. 地小規模校では,構極面が内包されているにもかかわら. 社会的な関係やコ享ユニケーションの機会を与え,新し. ず,教職員のへき地教育への関心や姿勢が前向きになっ. い刺激を創り出す必要がある。. ている分けでは必ずしもないからである。. ー 56 −.

(8) No.59. へき地小規模校経営の特性と学校管理職の役割. すでに見たように,へき地小規模校では,小規模であ. 2004.12. うことが不可欠である。へき地の積極面を出し合えるよ. る点や地域住民の関わりが強いことなどを生かして,へ. うな雰囲気を管理職が持つと共に,そのような場を意識. き地教育の活性化を図っていくことが不可欠である。そ. 的に設定して,教職員の合意と意志決定の機会を拡大し. のための分掌組織はへき地ならではの,全員が全体を見. ていかなければならないムそのような中で一致した内容. 渡すという分掌形態が望ましいことも指摘した。. については,教職員のまとまりを作りやすいだけに,へ. また身近な素材としては,第一次産業や自然を,あり. き地小規模校の経営改革は急速に進むのが一般的であ. ふれた陳腐な物ととらえるのではなく,へき地小規模校. る。そのためにも,へき地小規模校の良さと改革の可能. の最も重要な素材として位置づけていくことが重要であ. 性を,まず管理職が語れるかどうかという説明責任能力. ることも指摘した。地域の関係者は,これらに対する専. とリーダーシップが求められている。. 門家でもあり,地域を巻き込んで子どもたちの農漁業や 自然に対する自信と誇りを培うことが重要である。 参考文献. 指導方法では,少人数である条件を生かして,個別指 導や間接指導を用いながら,‘市街地の一斉指導では展開. 1.全国へき地教育研究連盟癌『効率的な学習指導と学 校・学級経営』全国へき地教育研究連盟,平成11年. できない指導方法を大胆に取り入れることによって,へ. き地小規模校のメリットが生かせることも指摘した。へ. 2.小島宏著『少人数指導の評価一個に応じた指導をど. き地小規模校に赴任しても,市街地の授業と同じように. う進めるか』教育出版,平成16年. 一斉指導を中心にした指導にこだわる必要はないのであ る。 心の教育では,体験的な活動や高齢者との日常的な接 触も可能なへき地小規模校.の積極面を生かしながら,単 なる教訓話としての心の教育ではなく,実体験の中から 人間関係や奉仕の精神をとらえることが重要であること. も指摘した。. 総合的な学習では,環境教育の条件となる原生的な自 然や,食育の基礎ともなる食卓と地域の生産業を結ぶ第 一次産業や,福祉の基礎となる高齢者問題の学習,社会. 規範の基礎となる農村共同体の文化や規範,などへき地 の琴境を総合的な学習に展開できる素材は豊富にある。 さらにこれらの活動を含めて,へき地小規模校ではあら ゆる内容をまちづくりの癒合的な学習に結びつけていく ことが重要であることも指摘した。内容の成果がまちづ くりに繋がっているだけでなく,調べたことの成果を, まちづくりの発表会等で,地域に還元していくのである。. さらに小規模・遠隔性のマイナス条件に関しては,子 どもたちに新しい刺激を与えるために,発表する機会を. 多く設けて表現力の向上を図ることや,統一テーマによ る集合学習での成果発表会などで良い意味での競い合い を行うことも必要であることを指摘した。新聞などの身 近な情報源については最大限活用し,また役場や公共施 設での生情報に触れさせることが重要であることも指摘 した。これらのようにへき地小規模校の積極面を意識的 に伸ばすと共に,マイナス面を克服できるような新しい カリキュラム・生活指導の運営体制を再構築することが. 重要である。 最終的に当該学校にどんな活動が展開できるかは,へ き地小規模校での構極面を考え出すための教職員のプ レ⊥ンストーミングに依拠しながら,アイデアを出し合. − 57 一.

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