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シロイヌナズナから作出された新奇耐塩性変異株の生理学的および分子遺伝学的解析

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(1)

東京農業大学

シロイヌナズナから作出された新奇耐塩性変異株の

生理学的および分子遺伝学的解析

平成25 年度 修了

農学研究科バイオサイエンス専攻

手塚 健二

(2)

シロイヌナズナから作出された新奇耐塩性変異株の

生理学的および分子遺伝学的解析

東京農業大学大学院農学研究科

バイオサイエンス専攻

平成25 年度 博士課程修了

手塚 健二

(3)

項目

1章

本研究の概要

---1

2章

緒論

---10

3章

mh31

変 異 株 の 緑 色 葉 形 成 能 に つ い て の 生 理 学 的 特

徴付け

---18

4章

ア ク テ ィ ベ ー シ ョ ン タ グ ラ イ ン 耐 塩 性 変 異 株

mh31

T-DNA およびその近傍に位置する遺伝子と

mh31

表現型との関わり

--- 27

5章

分子遺伝学的解析による

mh31

遺伝子の同定

--- 36

6章

mh31

の原因遺伝子として同定された新規

abi5

アリ

abi5-9

ABI5 機能検定---49

7章

考察

---63

8章

実験材料および実験方法

---70

総括--

---85

謝辞・引用文献

---87

(4)

1章

(5)

目次

9章 本研究の概要

第1節 要旨---3

第2節 本研究について---4

第3節 要約---5

図・表---7

(6)

1

本研究の概要 第1節 要旨 100 以上の国において、土壌の塩類の影響が耕作地域に影響を及ぼしている 1。 特に灌漑によって土壌の塩類の蓄積は起こっている。土壌塩類の中でも特に多 く含まれるものは、カチオンではナトリウムイオン (Na+) 、アニオンでは塩化 物イオン (Cl-) である 2 ことから、NaCl 抵抗性の強い有用作物を作るための研 究が行われている。NaCl 抵抗性について、シロイヌナズナを用いた分子遺伝学 的解析が行われている。NaCl 抵抗性に、液胞へのナトリウムイオンの隔離、適 合溶質合成および蓄積によるサイトゾルの浸透圧調節、細胞外部へのナトリウ ムイオンの排出、プロトンポンプATPase による細胞外部および液胞へのプロト ン移行は重要である 3。アブラナ科の植物 Brassica napus にて、Arabidopsis thaliana 由来の AtNHX1 (Na+/H+アンチポーター) を過剰発現するトランスジェ ニック植物は、200 mM NaCl の水でも、10 mM NaCl にて育てた野生型株と同じ 生長を示し、種子の収穫量と油についても野生型株と同じであったことを発表 された 4。Na+/H+アンチポーター以外にも、細胞内浸透圧調整物質の適合溶質で あるプロリンを蓄積するトランスジェニック植物は、NaCl 処理により発生する フリーラジカルが抑えられ、動物細胞においても抗酸化作用をする 5, 6。1 遺伝 子の発現 (AtNHX1) や 1 適合溶質の蓄積 (プロリン)によって NaCl 抵抗性は向 上していることから、複数種のNaCl 抵抗性遺伝子を用いることで、強力な NaCl

(7)

植物のNaCl 応答制御のシグナリングについても明らかにされてきている。ナ トリウムイオンのセンシングを行うタンパク質は、細胞質膜上のタンパク質で あると推測されてはいるものの、センシングを行っている細胞膜上タンパク質 は明らかとなっていない 。一方、高浸透圧のセンサーにおいては、酵母にて見 つけられた高浸透圧センサーSLN1 の Arabidopsis SLN1 ホモログである ATHK1 が植物においても高浸透圧のセンシングを行い 5、下流の MAPK カスケードへ ストレスシグナルを送っていると推定されている。これら、シグナリングの制 御が明らかとなることは、植物のNaCl 応答の網羅的な解明へとつながることが 期待される。 第2節 本研究について 本研究は、シロイヌナズナ野生型株Ws (Wassilewskija) が緑色葉形成を示さない 150 mM NaCl 添加の培地にて発芽時期に緑色葉形成を示す耐塩性変異株 mh31 に ついて、mh31 株の耐塩性の性質を調べること、原因遺伝子を明らかにすること を目的とした。 アクティベーションタギングは、遺伝子過剰発現した変異株を作出する変異 株作出の手法であり、これは、機能重複により1遺伝子破壊では表現型の現れ ないマルチコピー遺伝子から、過剰発現により表現型の現れる遺伝子を探し出 すことが可能である 6。 シロイヌナズナ耐塩性変異株mh31 は、市坪・熊谷により変異株作出および耐

(8)

された (図1)。シロイヌナズナ Ws より切り出した胚軸を CIM (callus inducing medium) 7にて培養することで、カルスを形成させた。このカルスをアクティベ ーションタギングベクターpPCVICEn4HPT 8 を保有するアグロバクテリアを感 染させることで変異株作出はなされた (図1)。耐塩性変異株の 1 次スクリーニ ングとして150 mM NaCl を添加した SIM (shoot-inducing medium) 7にて培養した カルスより形成されたシュートが選抜され、次世代M1が採種された。耐塩性変

異株の2 次スクリーニングとして、シロイヌナズナ野生型株 Ws (Wassilewskija) が発芽後に緑色葉を示さない150 mM NaCl 添加の GM (germination medium) 培 地 7にて緑色葉を示す耐塩性変異株が選抜された (図1)。M1世代のmh31 株は、 染色体に2 本以上の T-DNA を有していたが、小林により、染色体に有する T-DNA 数が1 の耐塩性を示す mh31 株を選抜し、T-DNA は第1染色体の上腕部の遺伝 子座At1g11730 と At1g11740 の間に位置することが明らかにされた (図2)。こ の第1染色体上腕部に位置するT-DNA の上流および下流の約 15 kb 内にある遺 伝子 At1g11700、At1g11710、At1g11720、At1g11730、At1g11740、At1g11750、 At1g11760、At1g11765 について、南により RNA 発現解析が行われ、mh31 株は At1g11740 遺伝子を過剰発現していることが明らかとされた (図3)。 第3節 要約 本研究は、耐塩性に関わる新規遺伝子の同定を目的として当研究室にて作出さ れたシロイヌナズナ耐塩性変異株 mh31 について、この耐塩性変異株 mh31 の

(9)

および分子生物学的解析を行った。それにより、耐塩性変異株mh31 は、水分ス トレス応答に重要な植物ホルモンのアブシジン酸 (abscisic acid; ABA) に対して 非感受性を示し、その原因遺伝子が新規abi5 アリル (abi5-9) であることが明ら かとなった。ABI5 (ABA-INSENSITIVE5) は、ABRE (ABA-responsive element) へ 結合するbZIP を有した写因子をコードし、転写因子 ABI3 とともに Em1 や Em6 といったLEA タンパク質コード遺伝子の発現制御に関わる。また、発芽時期の ABA に応答した乾燥耐性を伴った発芽成長停止に重要となっている。耐塩性変

異株mh31 より、1 アミノ酸置換型のタンパク質をコードする abi5-9 が同定され

たため、このabi5-9 の ABI5 機能についての解析から、abi5-9 は ABI3 との物理 的結合は ABI5 機能を低下しており、一方で、ABI5 の有する転写活性は abi5-9 の方が強いという結果であった。また、abi5-9 変異株 (mh31) は、bZIP をもた ないタンパク質をコードする ABI5 機能の完全な欠損株 abi5-1 と同じように、 Em1 および Em6 の遺伝子発現をしていなかった。これら結果より、1 アミノ酸 置換型によりABI5 機能を欠損した初めてのアリルである abi5-9 が同定されたこ との意義について考察がされた。

(10)

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(13)

2章

緒論

(14)

目次

10章 緒論

第1節 アブシジン酸 (abscisic acid; ABA) 応答について---12

第2節 ABA シグナリングについて---12

第3節 ABA-INSENSITIVE5 (ABI5) 遺伝子について---13

第4節 Arabidopsis Group A bZIPs

間にて保存されている領域について

---14

第5節

これまでに報告のある abi5 アリルおよび本研究にて明らかとなった新

abi5 アリル (abi5-9) について---16

(15)

2

緒論

第1節 アブシジン酸 (abscisic acid; ABA) 応答について

アブシジン酸 (abscisic acid; ABA) は生物界全体で見つけられているセスキテル ペンであるが、その役割は植物において分析が進んでいる 9。ABA は陸上植物 で、植物成長期においては、乾燥環境ストレスに適応する際 10、種子形成期に おいては、種子成熟の発達制御 11 および低含水量に対する耐性獲得 12 の際、 に必須の役割をしている。ABA はジベレリン酸 (gibberellic acid; GA) とともに 種子発芽にも関わっており、これにより種子は良好な環境下で発芽するように なっている。ABA は乾燥種子に蓄積しており、種子発芽を抑制している。種子 は吸水すると、ABA は急速に分解され、GA の蓄積量が増加し、種子発芽に至 る。 第2節 ABA シグナリングについて Arabidopsis の遺伝学的スクリーニングで、ABA を含む培地にて発芽できる変異 株 (ABA-INSENSITIVE の変異株; abi 変異株) が選抜されてきた 13。これらabi 変異株は種子発芽を抑制するABA シグナル伝達系の分子構成要素を欠損してい た。原因遺伝子を同定することで、ABI1 および ABI2 が Group A PP2C に属する ホスファターゼをコードすること 14, 15、ABI3 16、ABI4 17、ABI5 18は異なる種類 の転写因子をコードしていることが明らかにされた。

(16)

化作用はABA に応答して可溶性 ABA レセプターである PYR/PYL/RCAR により 解除されるということが明らかにされた 19-25。ABI4 は AP2-type 転写因子をコー ドしており、ABA シグナル伝達での役割 17 だけでなく、sugar シグナル伝達 26-29 およびレトログレードシグナル伝達 30-33 にも役割がある。ABI3 と ABI5 は、そ れぞれ、B3-type 転写因子 16、bZIP 転写因子 18 をコードしていた。 第3節 ABI5 (ABA-INSENSITIVE5) 遺伝子について

ABI5 および ABI3 の 2 遺伝子は、種子発達の時期、および吸水後 ABA 処理下に て発芽しつつある種子で強力な発現を示すが、他の植物組織ではほとんど発現 を示さない。このことは、ABI3 と ABI5 が、特に、種子成熟期および発芽期にお いて役割があるということを示唆している 18, 34。ABI3 は種子の乾燥耐性獲得に 必須である 35。一方で、ABI5 は ABA に依存した発芽後の成長停止を行うのに 必須である 36。 発芽中の胚におけるABI5 の RNA およびタンパク質の発現は、乾燥および高 濃度塩ストレスだけでなく、外因性ABA の投与によっても誘導される 36。ABI5 は、乾燥ストレスから細胞を保護すると考えられている late embryogenesis abundant (LEA) タンパク質をコードする Em1 と Em6 37 の ABA により誘導され る発現をABI3 とともに制御する 38-40。ABA により休眠した胚 (Ref) や発芽 停止した胚は乾燥に耐性がある 36。発芽中の種子におけるEm1 および Em6 の発 現、成長停止と乾燥耐性といったABA による誘導を、abi5 変異株は非常に損な

(17)

第4節 Arabidopsis Group A bZIPs 間にて保存されている領域について

Arabidopsis の 13 遺伝子からなる Group A bZIP に ABI5 は属する 41。これらbZIP は、N 末端の保存されたドメインに基づいて 2 つのサブグループにさらに分け られている。AREB/ABF と ABI5 を含む 9 つの bZIP (ABI5、AREB1/ABF2、 AREB2/ABF4、AREB3、ABF1、ABF3、AtbZIP67/DPBF2、EEL/DPBF4、AtbZIP15) は、C1 (conserved region 1)、C2 および C3 と名付けられている N 末端の保存さ れた3 つの領域、と C4 と名付けられた C 末端の保存された領域を有する。一方、 残りの4 つの bZIP (AtbZIP13、GBF4、FD、FDP) は C1 を欠いている 42。前者 のグループは、ABA 制御下の遺伝子の ABA 応答エレメント (ABA responsible element: ABRE; PyACGTGG/TC) 43 へ bZIP DNA binding domain を介して結合す る 38, 44, 45 ことで ABA シグナル伝達に関わり、種子発達期および発芽期に関わ っているもの (ABI5、EEL/DPBF4、AtbZIP67/DPBF2、AREB3) と、植物組織に 関わっているもの (AREB1/ABF2、AREB2/ABF4、ABF1、ABF3) とで特徴付け られている 46-48。ABI5/AREB/ABF ファミリーは、保存領域を介する翻訳後修飾 によって機能制御もされる。ABI5/AREB/ABF は、最大の転写活性化力に ABA を必要とすることが示されている 40, 45, 48。AREB1 は、Arabidopsis のプロトプラ ストが外因性ABA で処理されているときにだけ、一過的遺伝子発現系で RD29B プロモーターを活性化する。このABA 依存的な制御は、ABI5/AREB/ABF ファ ミリーの保存領域にある R-X-X-S/T モチーフを必要としている 49。R-X-X-S/T

(18)

もまたABA に応答して活性化される 51。サブクラスIII SnRK2 の三重機能欠損 株は、種子休眠、発芽、発芽後成長、気孔閉鎖および遺伝子発現を含むABA 応 答のほとんどを欠いており、Arabidopsis において ABA シグナル伝達で必須であ ることが示されている 52-55。OST1/SRK2E/SnRK2.6 は ABF3 の T451 をリン酸修 飾することが示されており、このリン酸修飾は ABF3 の安定化に重要であるこ とが明らかになっている 56。ABI5 の分解は ABA により制御されることが知ら れている。ABA 非存在下で ABI5 は、cell-free degradation assay で、急速に 1 時 間以内で分解し、この分解は26S protease inhibitor により抑制される 36。この結 果は、ABI5 がユビキチン修飾を介する 26S プロテアソームによっても制御され ていることを示唆するものであった。実際に、植物特有のタンパク質をコード するAFP1 (ABI five binding protein) 57、SUMO E3 リガーゼをコードする SIZ1 (SAP and Miz) 58 および multidomain ubiquitin E3 リガーゼをコードする KEG (KEEP

ON GOING) 59 は、ユビキチンを介する 26S プロテアソームを通じて ABI5 を制

御することが示された。

bZIP (basic and leucine-zipper) ドメインの機能的意義に比べると、とりわけ in vivo の機能で、ABI5/AREB/ABF ファミリーの保存領域 (C1、C2、C3 および C4) はこれから明らかにされるところである。現在までのところ、ABI5/AREB/ABF ファミリーの中でabi5 アリルだけが、germination assay によりスクリーニングさ れたABA-insensitive 変異株の原因遺伝子として報告されている。C3 領域は AFP との結合に必須であることより、ABI5/AREB/ABF ファミリーの翻訳後の制御に

(19)

5節 これまでに報告のある abi5 アリルおよび本研究にて明らかとなった新abi5 アリル (abi5-9) について

これまでに報告されてきたabi5 アリルは、プレマチュア-タンパク質をコードす るもの (abi5-1, abi5-2, abi5-4, abi5-5)、T-DNA インサーションラインによるもの (abi5-8)、フレームシフトを生じたもの (abi5-3) である (図) 18, 38, 61, 62。近年の研 究において、本研究にて明らかとなったC3 ドメインのアラニンの 1 アミノ酸置 換型 (A214G) の完全長 ABI5 タンパク質をコードする abi5 劣性形質のアリル (abi5-9) は、最初のものであった。

(20)

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(21)

3章

mh31 変異株の緑色葉形成

能についての生理学的特徴

付け

(22)

目次

11章

mh31 変異株の緑色葉形成能について

の生理学的特徴付け

1節 発芽時期におけるイオンストレスおよび高浸透圧ストレスに

対する抵抗性の評価

---20

2節 発芽時期における水分ストレス応答に重要な植物ホルモンで

あるアブシジン酸に対する応答の評価

---21

3節 遺伝的性質の解析---21

4節 植物成長期のストレス耐性---22

図・表

---23

(23)

3

mh31 変異株の緑色葉形成能についての生理学的特徴付け

第1節 発芽時期におけるイオンストレスおよび高浸透圧ストレスに対する抵 抗性の評価

シロイヌナズナ耐塩性変異株 mh31 (Ws バックグラウンド) は、Arabidopsis thaliana 野生型株 Ws (Wassilewskija) が発芽後の緑色葉を示さない濃度の NaCl 添加培地にて、緑色葉を示す耐塩性変異株として市坪・熊谷によりスクリーニ ングされた (図1)。mh31 変異株は、175 mM NaCl 添加した培地においても発芽 後の緑色葉を形成し、野生型株 Ws との有意な差を示した (図 4)。NaCl はイオ ンストレスおよび高浸透圧ストレスを与える。mh31 変異株が示す NaCl 抵抗性 に、イオンストレスあるいは水分ストレスに対する抵抗性が寄与しているのか 調べることとした。リチウムイオンはイオンストレスを与える際に、一方、マ ンニトールは非イオン性の高浸透圧による水分ストレスを与える際に用いられ る (Ref)。本研究においては、イオンストレスを与える物質として塩化リチウム (Rif)、非イオン性の水分ストレスを与える物質としてマンニトール (Ref) を用 いた。 mh31 変異株は、野生型株 Ws の発芽中の胚の成長が停止する濃度である 500 mM マンニトールを含んでいる培地においても成長し緑色葉形成を示した (図 4)。一方、LiCl による緑色葉形成阻害の抵抗性は、野生型株 Ws との有意な差は 示されなかった (図4B)。

(24)

第2節 発芽時期における水分ストレス応答に重要な植物ホルモンであるアブ シジン酸に対する応答の評価 mh31 変異株は水分ストレスに抵抗性を示して緑色葉形成し、一方で、野生型株 Ws は発芽後の成長停止の表現型を示していた (図4)。アブシジン酸 (abscisic acid; ABA) は、水分ストレス応答に重要な植物ホルモンである。発芽成長停止 には ABA シグナルが関わり、外因性 ABA は発芽成長を停止させる 36。mh31 変異株の水分ストレス抵抗性にABA が関わっているのか調べることとした。 mh31 変異株は、野生型株に比べると、外因性 ABA で、発芽およびそれに続 く実生の発達があまり抑制されなかった (図4)。このことは、mh31 株が ABA 低感受性株であることを示唆している。下記に示すように、mh31 株の遺伝学的 解析手法マッピングで、原因遺伝子は、インサーションされているT-DNA に関 連せず、新規abi5 アリルでと関連性を示した。後に、mh31 株を abi5-9 変異株と 命名した。 第3節 遺伝的性質の解析 アクティベーションタギングは遺伝子過剰発現により優性遺伝形質の表現型を 示す変異株を得られる変異株作出の手法である。mh31 株の示す NaCl 抵抗性お よびABA 抵抗性が優性遺伝形質であるのか調べることとした。F1Ws×mh31 を作 出し、これを用いてNaCl 抵抗性を調べ、ABA 抵抗性については F2を得て調べ た。F1Ws×mh31 は NaCl 抵抗性を示した(表 1)。また、F2Ws×mh31 の約 30%が

(25)

第4節 植物成長期のストレス耐性 耐塩性変異株mh31 は、発芽時期において NaCl、manntitol および ABA 抵抗性を 示した(図4)。耐塩性変異株 mh31 が、植物成長期においてもこれらストレスお よびホルモンに対して野生型株 Ws とは異なる抵抗性を示す耐塩性変異株であ るのか調べることを目的とした。 根伸長がわかるように、発芽後に根が培地表面を這うように、プレートを縦 におき、培養を行った。mh31 株は、野生型株 Ws よりも根が伸びるということ はなかった (図 4)。 発芽後に形成された緑色葉についてのストレス抵抗性を調べるため、GM 培地 にて2 週間育てた植物体を NaCl 添加培地、mannitol 添加培地および ABA 添加 培地へ移植した後、培養を行った。発芽後に形成された緑色葉について、mh31 株はWs よりも葉の緑色が維持されるということは示されなかった (図5)。

(26)

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Greening plant rate (%)

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(27)

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(28)

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(30)

4章

アクティベーションタグラ

イン耐塩性変異株

mh31 の

T-DNA およびその近傍に位

置する遺伝子と

mh31 表現

型との関わり

(31)

目次

12章 ア ク テ ィ ベ ー シ ョ ン タ グ ラ イ ン 耐 塩

性変異株

mh31 の T-DNA およびその近

傍に位置する遺伝子と

mh31 表現型と

の関わり

第1節 mh31 変 異 株 の 染 色 体 に 挿 入 さ れ て い る T-DNA の 位 置

---29

第2節 T-DNA 近傍に位置する遺伝子とその RNA 発現---30

第3節 トランスジェニック植物と mh31 株の比較---30

第4節 小括---31

図・表---34

(32)

4

アクティベーションタグライン耐塩性変異株 mh31 の T-DNA および その近傍に位置する遺伝子と mh31 表現型との関わり 第1節 mh31 変異株の染色体に挿入されている T-DNA の位置 mh31 株は、4×CaMV 35S エンハンサーを T-DNA に有するアクティベーション タギングベクターpPCVICEn4HPT 8 を用いて作出された変異株である。CaMV 35S エンハンサーはタンデムにつなぐことで 4 つまでは相乗的に遺伝子発現を 強化する (Ref)。4×CaMV 35S エンハンサーは染色体に挿入されると、上流領域 および下流領域10 kb の範囲に位置する遺伝子を過剰発現する 63。mh31 株はス クリーニング当初の M1世代、T-DNA 数が 2 箇所以上であったが、前任者の小 林は、サザンブロット解析を用いることでT-DNA 数 1 箇所の耐塩性を示す mh31 株をスクリーニングし、T-DNA ホモのラインとした (図2)。さらにシークエン シング解析を行うことでT-DNA の Left ボーダー (Left border; LB) に隣接する塩 基配列を明らかにした (図2)。本研究にて、前任者より受け取った mh31 株の種 子が、T-DNA 数 1 の株であること、および、T-DNA が位置するローカスは At1g11740 と At1g11730 の間の領域であることの確認を行うこととした。サザン ブロットにてT-DNA 数は 1 という結果であった (図2)。また、Right ボーダー (Right border; RB) 方向に At1g11735、LB 方向に At1g11730 を位置する形で、遺 伝子At1g11740 と At1g11730 の間に位置していることがゲノム PCR を行うこと で示された (図2)。

(33)

第2節 T-DNA 近傍に位置する遺伝子とその RNA 発現

CaMV 35S エンハンサーはタンデムにつなぐことで 4 つまでは相乗的に遺伝子 発現を強化する。4×CaMV 35S エンハンサーは染色体に挿入されると、上流領 域および下流領域 10 kb の範囲に位置する遺伝子の中から過剰発現する遺伝子 が見つけられると記されている。mh31 株は、第 1 染色体の上腕部に位置する遺 伝子At1g11735 と At1g11730 の間の非遺伝子領域に、4×CaMV 35S エンハンサ ーを有するT-DNA が位置している。前任者の南により、4×CaMV 35S エンハン サーの上流および下流15 kb の領域に位置する遺伝子について、遺伝子過剰発現 の有無の評価が行われた。これにより、遺伝子At1g11700、At1g11710、At1g11720、 At1g11730、At1g11740、At1g11750、At1g11760 および At1g11765 のうち、遺伝 子At1g11740 は mh31 株にて過剰発現していることが明らかとされた (図3)。後 に、Arabidopsis の遺伝子情報として、遺伝子 At1g11740 については推測上遺伝 子の At1g11740 RNA に加えて RAFL クローン(RIKEN Arabidopsis Full-Length cDNA clone)が登録され、さらに、遺伝子 At1g11755 および At1g11735 が新規に 登録されていた。これら2 遺伝子および At1g11740 の RAFL クローンコード領 域について、本研究にて過剰発現の有無についてRNA 発現解析を行うこととし た。RT-PCR による発現解析にて、mh31 株は、At1g11740 RAFL クローンコード 領域およびAt1g11735 コード領域の RNA 過剰発現が示された (図6)。本実験に よって、mh31 株は、At1g11740 だけでなく、At1g11735 についても過剰発現し ていることが明らかとなった。

(34)

耐塩性変異株mh31 は、少なくとも At1g11740 および At1g11735 を過剰発現して いる (図3および図6)。mh31 変異株が示す NaCl 添加培地における発芽後の緑 色葉形成の表現型に、At1g11740 あるいは At1g11735 の過剰発現は寄与している のかということを調べる目的で、各遺伝子について遺伝子過剰発現のコンスト ラクトを作製し、それを用いて形質転換株 (Ws バックグラウンド) の作出を行 った (図 7)。獲得された T2を用いて、無作為にとった 3 ラインについて NaCl 添加培地における発芽検定を行うこととした。また、mh31 株の表現型に、T-DNA 近傍に位置する複数遺伝子に由来する複数の転写産物の高蓄積が関わるかもし ない。そこで、mh31 株の第1染色体上腕部と同じ塩基配列の 4×CaMV 35S エン ハンサーから At1g11760 までの遺伝子領域 (Plasmid rescued mh31 DNA) を T-DNA 内へクローニングし、これを用いて野生型株 Ws の形質転換体の作出を 行った。T2 を得られたので、4×CaMV 35S エンハンサー-At1g11735-At1g11760

(Plasmid rescued mh31 DNA) により作出されたこの T2を無作為に4 ラインとり、

NaCl 添加培地における発芽検定を行うこととした。CaMV 35S プロモータ::At1g11740 形質転換株、CaMV 35S プロモーター::At1g11735 形質転換株は NaCl 耐性を示さなかった (図 7A および図 7B)。Plasmid rescued mh31 DNA の導 入株はNaCl 耐性を示さなかった (図 7C)。

第4節 小括

(35)

cDNA の RAFL クローン (RIKEN Arabidopsis Full-Length cDNA clone) が明らか となっている。これらのことより、遺伝子 At1g11740 は、少なくとも 4 つのス プライシングバリアントを産製しているということが示唆された。At1g11740 は cDNA type 1、type 2 および type 3 はアンキリンリピートを有するタンパク質を コードする。それに対し、At1g11740 cDNA type 4 がコードするタンパク質はア ンキリンリピートを持たない。Arabidopsis は、アンキリンリピートタンパク質 のコード遺伝子を105 個有しており、それらは特徴的なドメインから 16 の Group (Group A〜P) に分類されている 64。At1g11740 がコードするタンパク質は、ア ンキリンリピート以外の既知のドメインを有さないアンキリンタンパク質 Group B に分類されている 64。これまでのところ、遺伝子At1g11740 の役割は明 らかとはされていない。一方、At1g11735 (MIR171b) は、タンパク質コード遺伝 子ではなく、マイクロRNA の miR171b をコードする遺伝子である。Arabidopsis においてmiRNA171 は、MIR171a、MIR171b (At1g11735)、MIR171c にてコード されている。遺伝子MIR171b (At1g11735) は、cold、salt および mannitol といっ たストレスに応答した遺伝子発現を示す miRNA として分類されている。また、 遺伝子SCL6 が miR171 のターゲット遺伝子として挙げられている。SCL6 は、 SCL6-II (SCARECROW-LIKE6-II; At2g45160) 、 SCL6-III (At3g60630) 、 SCL6-IV (At4g00150) の 3 遺伝子が Arabidopsis ゲノムにコードされており、それら SCL6 は転写因子GRAS family のグループに属する。scl6 トリプル遺伝子ノックアウト 株を用いた解析によりシュートの枝分かれ (Branching) の形成に必要とされる

(36)

ても遺伝子発現する。SCL6 および miRNA171 の変異株の解析や遺伝子レベルの 解析が行われてはいるものの、cold、mannitol および NaCl といったストレス応 答に対して、At1g11735 の発現が植物にどのような役割をしているのかというこ とは、今のところ、明らかにされていない。

(37)

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(39)

5章

分子遺伝学的解析による

(40)

目次

13章 分子遺伝学的解析による

mh31 遺伝子

の同定

1節 mh31 の分子遺伝学的解析---38

2節 mh31 遺伝子候補のシークエンシング解析---39

3節 ABI5 機能欠損株 abi5-1 と mh31 変異株の交配による相補検定

---39

4節 mh31 変異株における abi5 RNA 発現の解析---40

図・表

--- 41

(41)

5

分子遺伝学的解析による mh31 遺伝子の同定 第1節 mh31 の分子遺伝学的解析 原因遺伝子候補とされた遺伝子 At1g11740 および At1g11735 についての過剰発 現ベクターを用いて作出したトランスジェニック植物は、mh31 株の NaCl 抵抗 性を示さなかった (図 7)。そのため、mh31 株の原因遺伝子を同定する目的で、 遺伝学的解析を行うこととした。mh31 株は LiCl 抵抗性を示さなかったというこ と (図 4) は、mh31 株が示す NaCl 抵抗性は浸透圧抵抗性によるものであると示 唆する。このことから、mh31 株の NaCl 抵抗性をマッピングするのではなく、 浸透圧抵抗性をマッピングすることとした。Ws 植物 (雌) と mh31 植物 (雄) の 交配により作出したF1Ws×mh31 が NaCl 抵抗性を示したことから mh31 株の NaCl 抵抗性は優性遺伝形質であることが明らかとなっているので (表 1)、mh31 株の 浸透圧抵抗性もまた優性遺伝形質であるとしてマッピング解析を進めることと した。 mh31 株 (Ws バックグラウンド) を Col-0 と交配させ、生じた F1植物を次世代 採種のために自殖させた。この F2世代を ABA 感受性および浸透圧耐性につい ての検査に供した (表 3)。F2世代は、ABA 感受性植物 196 個体、ABA 低感受性 植物74 個体を示した。このことは、ABA 低感受性の表現型が劣性形質であるこ とを示唆している。一方、浸透圧耐性の検定では、F2 世代は、浸透圧耐性植物 116 個体、浸透圧非耐性植物 12 個体であった。これら ABA 低感受性植物と浸透

(42)

クティベーションタグラインから単利され、1 コピーの T-DNA が第1染色体の 上腕部にインサーションされていることを小林らにより明らかにされている (図 2)。しかしながら、F2植物のラフマッピングにより ABA 低感受性および浸 透圧非耐性のどちらも、第2染色体の下腕部に位置する SSLP マーカーの CZSOD2 および NGA168 に遺伝的連鎖を示した (図 8)。 第2節 mh31 遺伝子候補のシークエンシング解析 その2つのマーカーのあたりの染色体領域は、種子発芽期のABA シグナル伝達 で重要な因子である ABI4 および ABI5 を含んでいた。両方の遺伝子について cDNA 増幅してシークエンス解析を行った。ABI4 は、mh31 変異株と野生型株の 間に差違なしであった。一方、mh31 株由来の ABI5 は、コード配列の中に1塩 基置換があり、C3 領域のアミノ酸置換 (A214G) を生じるものであった (図 11)。 第3節 ABI5 機能欠損株 abi5-1 と mh31 変異株の交配による相補検定 ABI5 が mh31 株の原因遺伝子であるのか確かめるために、交配による相補検定 を行うこととした。mh31 植物 (花粉) と abi5-1 植物 (めしべ) との交配を行い、 F1世代を得た。F1植物をABA 感受性について検査した。表 4 に示すように、F1 世代は、親植物のabi5-1 および mh31 に似た ABA 低感受性を示した (表 4)。こ のことは、mh31 と abi5-1 は互いに相補しないということを示唆している。mh31abi5-1 は同じローカスに影響していると結論づけた。このことより、abi5-1

(43)

第4節 mh31 変異株における abi5 RNA 発現についての解析

mh31 株は abi5 RNA 発現していない株であることも考えられたので、これを調 べるため、mh31 株における RNA 発現解析を行った。

RNA の発現は、ノーザンブロットにより示した (図 12)。mh31 変異株の乾燥 種子は、野生型株Ws が示した ABI5 RNA 発現のように、abi5-9 遺伝子の発現を していた。また、実生における発現解析についても、mh31 株は、Ws にて示さ れるABA に応答した ABI5 RNA 発現と同じように、ABA に応答した abi5-9 RNA 発現を示した (図 12)。

(44)

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(51)

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(52)

6章

mh31 の原因遺伝子として

同定された新規

abi5 アリル

(53)

目次

14章

mh31 の原因遺伝子として同定された

新規

abi5 アリル abi5-9 の ABI5 機能検

1節 GFP 融合 abi5-9 遺伝子発現株の GFP 蛍光観察---51

2節 酵母 2 ハイブリッドによる ABI5 および ABI3 とのタンパク質

-タンパク質相互作用の評価---51

3節 一過的遺伝子発現系による Em6 プロモーター:GUS の転写活

性化能の評価

---53

4節 mh31 変異株における Em1 および Em6 遺伝子の RNA 発現

---54

5節 PSIPRED により予測される 2 次構造の比較---55

6節 mh31 (abi5-9) 株と abi5-1 株のストレス培地および ABA 添加

培地における発芽成長の比較

---56

(54)

6

mh31 の原因遺伝子として同定された新規 abi5 アリル abi5-9 の ABI5 機能検定

1節 GFP 融合 abi5-9 遺伝子発現株の GFP 蛍光観察

CaMV 35S プロモーター-sGFP::abi5-9 遺伝子を用いた abi5-1 変異株のトランス ジェニックによる相補検定を行った。無作為に取った 3 ラインのトランスジェ ニック植物のT2世代について、発芽期のABA 感受性を検定した。1 µM ABA 添

加培地において、緑色葉形成した実生の割合は、トランスジェニック植物 ABI5/abi5-1 については、ライン No. 1 は 42%、ライン No. 2 は 41%、ライン No. 3 は 91%であった。それに対して、トランスジェニック植物 abi5-9/abi5-1 につい ては、ラインNo. 1 は 93%、ライン No. 2 およびライン No. 3 は 100%であった。 3 µM ABA 添加培地において、緑色葉形成した実生の割合は、トランスジェニッ ク植物ABI5/abi5-1 については、ライン No. 1 は 17%、ライン No. 2 は 35%、ラ インNo. 3 は 52%であった。一方、トランスジェニック植物 abi5-9/abi5-1 につい ては、ラインNo. 1 は 59%、ライン No. 2 は 79%、そしてライン No. 3 は 78%で あった (図 13B)。このことは、abi5-9 が完全な機能欠損型の abi5 アリルではな いということを示唆している。GFP 蛍光の観察を行うこととした。sGFP-ABI5 および sGFP-abi5-9 は、どちらも GFP 蛍光が見られ、細胞内局在に違いを示し てはいなかった(図 13C)。

(55)

質相互作用の評価

ABI5 による Em1 および Em6 の制御は ABI3 を必要とする (Nakamura et al., 2001; Gampala et al., 2002; Finkelstein et al., 2005)。そして、ABI5 は C2 ドメインと C3 ドメインを含む領域を介してABI3 が物理的に結合する 60。本研究で見つけられ たabi5-9 は、C3 ドメインの RXXS/T リン酸化モチーフに隣接する1アミノ酸置 換を有する完全長のタンパク質をコードしており (図 11)、ABI5 の機能欠損を生 じている。abi5-9 は ABI3 と結合しないことが Em1 および Em6 の転写活性化能 の欠損を生じているということが考えられた。それを調べるため、酵母 2 ハイ ブリッド検定を行った (図 15)。Gal4 DNA-binding domain (BD) につなぐと ABI3 は強いオートアクティベーションを示すことは以前に報告されており 68、本研 究においてもGal4-BD に完全長 ABI3 をつなぐと強いオートアクティベーション を示した (図 15)。同様に、abi5-9 は Gal4-BD へ連結するとレポーター遺伝子の 強いオートアクティベーションを示した。このため、ABI5 と結合することの示 されたABI3 の B1 ドメインを有する切り詰め型 ABI3 (B1S、B1L および B1B2) 60 をGal4-BD に連結し、abi5-9 および ABI5 は Gal4-activation domain (AD)につなぎ、 酵母2ハイブリッド検定に用いた。以前に示されているように 60、ABI5 は B1L 領域およびB1B2 領域と結合した。一方、abi5-9 は B1B2 と弱い結合を示し、そ して、AD-abi5-9 コンストラクトと BD-B1B2 コンストラクトの両方を保有する 酵母の増殖は、10 mM 3-amino-1,2,4-triazole (3-AT) の添加により完全に抑制され た。これら結果は、C3 ドメインの abi5-9 変異は ABI3 との結合能を減らすとい

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3節 一過的遺伝子発現系による Em6 プロモーター:GUS の転写活性化能の評 価 酵母を用いた実験で、abi5-9 は ABI3 との結合能を欠いているがそれでも転写活 性はあるということが示唆された。ABI3 の結合不十分により abi5-9 の機能欠損 表現型は明らかにされると仮定した。この可能性を検定するため、Em6-GUS コ ンストラクトをレポーターとして用いて、Arabidopsis 葉肉プロトプラストで一 過的遺伝子発現による検定を行った。 外因性ABA なしのとき、Em6 のプロモーター活性は非常に低かった、そして、 プロトプラストが10 µM ABA で処理されているときにおいては 24.4 倍に増加し た (図 16)。Em6-GUS とともに ABI5 エフェクターを導入すると、プロモーター 活性は ABA なしの条件では 2.1 倍に強まり、プロトプラストを ABA 処理して いるときでは ABI5 によるプロモーター活性化は見られなかった。一方、abi5-9 は、ABA なしで 7.3 倍にプロモーター活性を強め、これは酵母で見られたこと を支持するものであった。ABA 存在下においては、わずかではあるけれども abi5-9 による活性強化 (1.4 倍) が見られた。ABI3 は、Em6 プロモーターを ABA なしのとき5.5 倍、ABA 処理時に 6.6 倍に活性化した。ABI3 と ABI5 の共発現 による相乗作用効果はABA 無処理時においてのみ見られた (40.5 倍)。この ABA 無処理時の相乗効果は、活性化強化はすこしだけ減じていたけれども、ABI3 と abi5-9 の組み合わせにおいても見られた (25.2 倍)。T87 プロトプラストで示され ているように 69、相乗効果はABA 存在下においては見られなかった。abi5-9 に

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は、酵母でのことを支持するものであった。しかしながら、外因性ABA 存在下 においても非存在下においても、ABI5 と abi5-9 に間に著しい差違は見られなか った。本実験結果からは、ABI3 との Em6 プロモーター転写活性化能について、 abi5-9 の ABI5 機能欠損が示されなかった。しかしながら、葉肉由来プロトプラ ストを用いた Em6 プロモーター-GUS レポーターの転写活性化制御は、種子お よび発芽時期にEm6 遺伝子が ABI3 と ABI5 によって受ける転写活性化制御の様 式を完全には表してはいないのかもしれない。

4節 mh31 変異株における Em1 および Em6 の RNA 発現

酵母の実験にて、abi5-9 は ABI5 に比べると ABI3 との弱い結合を示し、ABI3 と の結合について機能欠損を生じていることが明らかとなった。abi5-9 における ABI3 との結合能の低下が、ABI3 との転写活性制御を損なうものであるのか調 べるため、葉肉プロトプラストを用いて、一過的遺伝子発現によるEm6 プロモ ーター-GUS レポーター遺伝子の転写活性能の評価を行った。しかしながら、こ の検定方法では、ABI5 と ABI3 との相互作用による Em6 プロモーターの活性化 制御に abi5-9 変異が影響しているのかということは明らかにはできなかった。 abi5-9 変異株 (mh31) を用いて、ABI5 による直接の遺伝子発現制御を受ける遺

伝子Em1 および Em6 について RNA 発現解析した。乾燥種子において、mh31 変

異株は、abi5-1 変異株において見られるように、Em1 および Em6 の RNA 発現を

(58)

発現制御能を欠損したabi5 アリルであることを示唆している。

第5節 PSIPRED により予測される 2 次構造の比較

最近、Tang らは Arabidopsis ABI5/AREB/ABF オーソログであるイネ OsbZIP46 について、C3 領域を欠失させた OsbZIP46 が構成的な転写活性能をしたことか ら、C3 領域には OsbZIP46 自体の転写活性をネガティブレギュレートする役割 があると提唱した 70。その役割を担う C3 領域のモチーフ候補として、Tang ら は、ABF/AREB/ABI5 およびイネのオーソログ遺伝子間にて保存されていた LxxxxLxxxL モチーフを挙げている 70。ABI5 において、この候補モチーフ LxxxxLxxxL に相当するアミノ酸配列の領域は、202 FGEMTLEDFL 211 である。 abi5-9 は、214 残基目のアラニンをグリシンへの置換型変異であるので、候補リ プレションモチーフLxxxxLxxxL とは異なる経路を介して ABI5 の転写活性化能 を増強しているのかもしれない。一方、グリシンはα-へリックスブレーカーと して知られるアミノ酸である 71ことから、ABI5 の Ala214 を Gly へと置換する abi5-9 変異はα-へリックスが壊れる変異であることが考えられた。これを調べ る目的で、2 次構造予測ツールの PSIPRED にて 2 次構造予測を得ることとした。 ABI5 の C3 領域は、α-へリックスをとるものとして予測された (図 17)。このα -へリックスは Ala214 から Gly への置換により confidence value を低下させた (図 17)。酵母にて、C1 を含む N-terminal region (aa 1-90) を欠失させた abi5-9 (aa 91-442) を Gal4-BD へ連結すると、その abi5-9 の示すオートアクティベーショ

(59)

第6節 mh31(abi5-9)株と abi5-1 株のストレス培地および ABA 添加培地における 発芽成長の比較 abi5-9 タンパク質は ABI3 タンパク質との物理的結合について機能欠損を示して いた (図 15)。一方で、一過的遺伝子発現の系にて、Em6 プロモーター-GUS レ ポーター遺伝子の転写活性化について、abi5-9 は ABI5 よりも強い転写活性可能 を示していた (図 16)。abi5-9 は、ABA に応答した発芽成長の抑制については abi5-1 のように機能欠損であっても、ストレス耐性の獲得については ABI5 より も強力に働いているかもしれない。mh31 (abi5-9) 株は、ABA 添加培地では abi5-1 類似の ABA 抵抗性を示す一方で、NaCl 添加培地および mannitol 添加培地にお いては abi5-1 よりも強い抵抗性を示す耐塩性変異株であるのか調べることとし た。

ストレス培地およびABA 添加培地における発芽後の緑色葉形成した植物体の 割合として、抵抗性を表した。mh31 (abi5-9) 株は、ABA 抵抗性を示す植物の割 合はabi5-1 よりも少なかった (図 10)。NaCl 抵抗性を示す植物体および mannitol 抵抗性を示す植物体の割合についても、抵抗性を示す植物体の割合は abi5-1 よ りも少なかった (図 10)。

(60)

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 Ws-2 abi5-1

Vec/abi5-1 L1 Vec/abi5-1 L2 Vec/abi5-1 L3 ABI5/abi5-1 L1 ABI5/abi5-1 L2 ABI5/abi5-1 L3

abi5-8/abi5-1 L1 abi5-8/abi5-1 L2 abi5-8/abi5-1 L3

greening seedling rate (%)

GM+0.03%DMSO !+1µM ABA !+3µM ABA

96 84 69 87 70 82 62 81 75 N.D.

0

Hygromycin-resistant plant rate (%)!

A!

B!

C!

El2! P35S! !! sGFP!ABI5! Nos-T! P35S-sGFP-ABI5!

El2! P35S! !! sGFP! Nos-T! P35S-sGFP!

El2! P35S! !! sGFP!abi5-9!Nos-T! P35S-sGFP-abi5-9! sGFP/abi5-1 (L1)! ABI5/abi5-1 (L1)! ABI5/abi5-1 (L2)! abi5-9/abi5-1 (L2)! abi5-9/abi5-1 (L3)! Leaf! Root! !"!#"#$%&'$%&'()*()*++,-./0.$12!*(,*+./,-34560$),)78-.9:;<= /0123405$678-.9:>;?@ABCD*E/FG>HI70123405$6JKLMN$OPQRST*UV W>XYT!/Z,$./,-34560Q[\T*(8*+%&'()Q]^-9:_`*(,*+>H[\abT./, -34560$/Z,Q[\T*cdefQgh>HI;!iI;<<<+=>?+j@kl9mSI-9:_`$noQ pYT*q$rstuv`Iw$rst-9:xy`><@*At/Z,Q]SIzb>{|N}t/Z,~ ,ÄQRSH\@*!

(61)

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Ws-2! abi5-1

!

Ws-2

!

abi5-1

!

(day) 1 ! 3! 5! Em1

!

Em6

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rRNA! 1 ! 3! 5! Dry Seed! Seedling

Ws! abi5-9

Ws

!

abi5-9

1 ! 3! 5!

(62)

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A!

B!

AD AD-ABI5 AD-abi5-9 BD BD-ABI5 BD-abi5-9

SC-LWHA!

AD-ABI3 AD AD-ABI5 AD-abi5-9 SC-LWHA! SC-LWHA + 10 mM 3-AT BD BD-B1S BD-B1LBD-B1B2 BD BD-B1S BD-B1LBD-B1B2 ABI3 protein! A ! B1! B2! B3! B1S (217-302)! B1L (216-388)! B1B2 (216-505)!

(63)

!"!#"#$%&'$%&'()*()*++,-./0123456789:;<=>989$?@ABC7BDEF 3GH!*,-.I/01"02/3&-$4/+/-/5/06+78+2"9-$:7;/3+57<"$2+=$39<+(>"?@*+A%B+C37576/3JA%BI>"?@+A%B+ C37576/3JDI67#"227+57<"$2+=$39<+(E?@*+75/F"+</G9/02/JH7<&EI07C"-$0/+<I061"</+6/35$0"673+DEF K2L*MN7A$2JH)IJ)KLAJ)KL%OL2I"#$%&'+POLQRDES*=>989??@ABC7B,5!+ C37576/3&MNBIJ,5!+C37576/3$OP.+4#DTSL*+(K*+"#$%&',-0UVW,5!+C37576/3$%&'(*% &'(./IJ)3"#$Q7C<$<+>7-&RXYZ$[\B[CABD12K]^3*_789IJ?@B\9`abR F3CMSTDES*cdefgFhiIJOR+U?+)K)Oj:;<kF$lm0KJ.RnopqFJMNB' (JVN>'($rsD]^3*tuIVN>'(0;jv9wCxyF3MNB'($z{uD|FK2L* }9I~ÄÅD|FK2L*Ç_789CMSTIJÉ$cdefg0:2KÑJfgJH)Ö$ÜÖDá àSLâäP12ãåK2L*çåéå$./PJ>"?@+A%B+C3756/3&+,5/3"-Q+-92$8/3"</+(,-92*+D+fg

A!

Effector plasmid! Reporter plasmid!

El2! 35S!!! cDNA! Nos-T!

Em6! GUS! Nos-T!

35S!Eluc! Nos-T! Reference plasmid! !! "!! #!! $!! %!! &!! '!!

vector ABI5 abi5-9

Rerative activity (GUS/LUC)

0µM ABA 10µM ABA

B!

(64)

B!

A!

Conf: 987889877877786211268899988500112899999999999! Pred: CCCCCCCCCCCCCCCCCHHHHHHHHHHHHCCCCCCCCCCCCCCCC! AA: NNAQNGGETAARQPTFGEMTLEDFLVKAGVVREHPTNPKPNPNPN! Conf: 986788876777886320257788676020001789999999999! Pred: CCCCCCCCCCCCCCCCCCHHHHHHHHHHCEECCCCCCCCCCCCCC! AA: NNAQNGGETAARQPTFGEMTLEDFLVKGGVVREHPTNPKPNPNPN! ABI5 (187-231)! abi5-9 (187-231)! Conserved region 3! !! Conf: 987620035512884111108889887411024312056433329! Pred: CCCCCEEEEEECCCCCCCCHHHHHHHHHCCEEEEEECCCCEEECC! AA: NGNGTSTTTTHKQPTLGEITLEDLLLRAGVVTETVVPQENVVNIA! Conf: 987510145523884111027677552332235422056334329! Pred: CCCCCEEEEEECCCCCCCHHHHHHHHHCCEEEEEEECCCCEEECC! AA: NGNGTSTTTTHKQPTLGEITLEDLLLRGGVVTETVVPQENVVNIA! EEL (90-134)! eelA117G (90-134)! !! Conf: 988864310135885320258889888501200488989999989! Pred: CCCCCCCCCCCCCCCCCHHHHHHHHHHHHCCCCCCCCCCCCCCCC! AA: KNGGSAHERRDKQPTLGEMTLEDLLLKAGVVTETIPGSNHDGPVG! Conf: 988853322345885320358888886131100388988999989! Pred: CCCCCCCCCCCCCCCCCHHHHHHHHHHHCCCCCCCCCCCCCCCCC! AA: KNGGSAHERRDKQPTLGEMTLEDLLLKGGVVTETIPGSNHDGPVG! AREB3 (104-148)! areb3A131G (104-148)! !! !"!#"#$"%&'$%&'()*+()$*,%-+,-*././0123045671(23458408,%-469:;()$* <=31++5.077233"#$"%&'38-+9:+;3<=>?=>71)23()$*8+,-*./8&&@8AAB(55!C8(%&)68,%-+:A,(565C3 "#$"%&'>?7@AB3CDE80456'($FGHIJKLMN/OP3QRSTUV3WX9YZ [G+74<DE8":A88,%-((E\*]*8F<DG8ADFA3<E3?:A8-FH<D8?:A8-F>A83IAF<D8+:J3I>:=F>=:A8,% ->+:9A>3+;-D<3+F-83IAK=ADFA9Y^7L8&8,%-4E\*]*8MAB-N8I>:+D88,%-F<-B3'(569_ ^7`a3bcdEXeZHfgh/9Y^74<DG8ADFA3O+B=A3ia3jkE8(OPCl3Xe$%m[ F<DG8ADFA3O+B=A3njZHQRST3WX9Y^7!

(65)

BD-ABI5! BD-ABI5!N! BD-abi5-9! BD-abi5-9!N!

SD/-W! SD/-WHA! SD/-WHA

+ 10mM 3-AT + 25mM 3-AT!SD/-WHA

100!10-1!10-2!10-3!10-4!10-5!100!10-1!10-2!10-3!10-4!10-5!100!10-1!10-2!10-3!10-4!10-5!100!10-1!10-2!10-3!10-4!10-5! BD! !"!#"#$%&'$%&('()*+,-"#$%&'./01234)*+%$%&"#$%&'.,&--.5678)*.9 :;<=>?@$%&',&--.5678)*.('(+,-<=>?@/0)*+%1$%&"#$%&'12/A3"4-&5()B CDEF=/0*52/GHBIJ4KLMN=OPQ?PARSOPTF=678'&-.U@/VGWXJ4*5N=OP Q?PAYZ[\678'&-.N]^_AP`aPbc=A+d/9:;<=>?@/@ABC4><>/DEACAF</B>D$FB/0G52/H/BIe fgIh.-=ijIJ4RSA0klmGno[%pGqrIJ4sqrt%/JIAaT_PlGOuvPIJ4 OuvPIJaT_PAHKLMGn.wxF=yz{_PIJ4/

(66)

7章

(67)

目次

15章 考察

第1節 ABI5 の C3 ドメインの機能---65

第2節 ABI5 の自己転写活性化および ABI5 により制御される遺伝子

---68

第3節 カルス-シュート分化時期における塩ストレス応答

mh31 遺

abi5-9 との関わり---69

第4節 ABI5 遺伝子および abi5-9 変異についての耐塩性作物作出にお

ける着目点---69

(68)

7

考察

第1節 ABI5 の C3 ドメインの機能

現在までに、Arabidopsis Group A bZIP ファミリーのうちで、発芽時期の表現型 のスクリーニングにより単離された変異株は、abi5 アリルだけであり、それらbZIP ドメインを欠損した切り詰め型の ABI5 タンパク質をコードするもので あった 18, 38, 61 (図 9)。それゆえに、Group A bZIP の N 末端の保存領域について の機能は、逆遺伝学的研究手法を通じて特徴付けされてきた。その研究により、 保存領域にある RXXS/T リン酸化サイトがそのタンパク質の活性に重要である こと 72, 73、および、C1 ドメインが転写活性化ドメインとして機能することが明 らかにされてきた 48, 70, 73, 74。本研究において、C3 ドメインにて1アミノ酸置換 のある完全長タンパク質をコードする新規abi5 アリル (abi5-9) を報告した。こ れにより、C3 ドメインのアラニン (Ala214) は ABI5 機能に必須であることが立 証された。abi5-9 (mh31 遺伝子) は、グリシンが隣に位置する進化的に保存され た 214 残基目のアラニンがグリシンへと置換された完全長タンパク質をコード するものであった。この保存されたアラニンは、C3 ドメインのリン酸化サイト に含まれる部位ではない。加えて、C3 ドメインのリン酸化サイトは植物内で ABI5 機能に影響を与えないことが、このリン酸化部位のアラニンへの置換型ア リルを用いて示されている 39。これらの情報は、abi5-9 変異 (A214G) がリン酸

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