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中国四川大地震の現地建物被害調査報告

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Academic year: 2021

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帝 塚 山 大 学 現代 生 活 学 部 紀 要  第 5 号 79 ∼89 (2009)

中国 四川 大 地震 の現 地建 物 被害 調査 報 告

現代 生 活 学 部 居 住 空 間 デ ザ イ ン学 科 教 授 1 は じ め に 一 一 一

山  剛史

2008年 5月12日14時28分、中 国の四川省 でMw7.9 の四 川大地震 が発生した。 9月11日に中 国政府が発 表した情報 によ れば、死 者 6万9226人、行方 不明者1万7923人、 負傷者37万4643 人 となってい る。 四川 盆地 の西側 にはチ ベ ット 高 原が接 してお り、 その境 に全長500km 、 幅40∼50km で北 東 方向に伸 びる龍 門山 前山断層帯、 龍門山主 中央断層帯 、龍 門山 後山断層帯 の3つの 断層 帯 があ る。今 回はこの うち、龍 門山前山断層 帯の半分 以上が動い たとい われてお り、M 8クラ スの地震が 発生したの は紀元前26年 以来初 めてとも言 われている 恆 建築学 会、 土木学 会の会員を はじ めとし、多 くの研 究者が中国 を訪ね、現 地の活断層や 地 震 被害調査 を行い 、復旧 のサポ ート を行っ てい る。中埜 らは 6月20日か ら25日にかけ て四川 省(Sichuan) に行 き、 棉竹市(Mianzhu) 、漢 旺(Hanwang) 、 都江堰市 巾ujiangyan) を 訪 れ、被害 調査を行い 、西南交 通大 学におい て復旧 に関するセ ミナーを現地 の設計技術 者を 対 象に開 催し てい る 恆 この中 で、今 回の地震で顕 著な地震 被害 とし て①柱 のせ ん断破壊 、 ②接合 部の破壊 、③柱 頭部周 辺の破壊 (主 筋の座 屈を含 む)、①組積 造壁 の破壊、 ⑤地 盤崩 壊 に伴う被害 の5点をあ げてい る。 地震か ら4ヶ月弱が 過ぎた 9月6日、 7日の2 日間、四川省の地 震被災地 を訪 れ、被害の状況 を調査し て きたの で、そ の報 告 を 行 う。 既 に、多 く の調 査 団 が 入 ってお り、被害 の状況 に関しては多 く の報告が なされている。本 来の学術 的な 調査であ れば、技術 的な裏づ けのあ る正 確 な 事 実 を伝 え る 報告 を 行 うべ きであ る。 し か し な が ら 調査 日数 が 少 な く、 個々 の 建 物の 詳 細 なデ ー タを 得て い る わけでは ない ため、この報 告は 自分 の眼 で見 た 被 害の 状 況 とこ れま で 中国 で の 仕事の経 験を踏ま えた 考えを残し、 将来 の研究の資料 とする。 戚lil

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2 。 調 査 概 要 訪 れた場 所 を図1 の地 図 に示す。 9月 5日に成 都(Chengdu) に着 き、 9月 6日には 車 で徳陽(Deyang) を通っ て 綿竹 と漢 旺を訪 れ、 地震被害 調査 を行っ た。 9月 7日は都江 堰 に行 き、 地震 被害 調査 を行っ た。 その後、 被害 が甚 大だっ た とい われる 餃川(Wenchuan) に向かって 進んだが、 途中で警察 が許可車両 のみを波 川に入 れる ようにしてお り、調 査目的 では 入 れな かっ た。 成 都 に向 かっ て の 帰 路、 学 校 が 大 き く 被 害 を受 け た とい う 聚 源 鎮 (Juyuanzhen) を訪 れた。 こ れらの調査 のうち、漢 旺と都江 堰では 地震被害 の大 きい場所 に は一 般の人 は入れ ない ように なっ ていたが、 現地の担当 者に特 にお 願いして 許可を得 た。 特に被害 の大きかっ た漢旺の状況 を写真 1と写真 2に示 す。レ ンガを含 む瓦礫の山 になっ てお り、 もともと どんな建物が建っ ていた か分からない状 況 になっ ていた。崩壊 してい ない 建 物でも損傷 が大 きく 補修不可 能な建物 も多 くあった。 また、祁 等の報告 によればこ の地域 の北側で地 表に断層を 確認してお り、 また、 写真3 に示 すよう に建物の北側 の山は崖崩 れを 起こしてい た。 しかし ながら、この地 域 より 数 百 メ ート ル離 れた とこ ろ で は 大 きな被害を受 けてお らず、普通の生活 に 戻っ ていた。 中国では広い 敷地で住宅 を 何 棟も同時期 に作るた め、同じ仕様 の建 物 が 一 箇所 に多 く 建っ てい る。 そ の た め、あ る敷地 では同じ ように崩壊し 、隣 の敷 地 で は全 て の建 物 の 被 害 が小 さ く なったと考 えられる。 被 害 を受 け た 建物 の 多 く に は被 害 程 度を表す表示 や立ち入 り禁止、使用可 な 写 真 2  漢 旺 の 被 災 状 況 ( 2 ) 1’ 80 写 真 1  漢 旺 の被 災 状 況 ( 1 ) 写 真 3  漢 旺 北 部 の 山 の 状 況

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写 真 4  掲 示 ( 1 ) 写 真 5  掲 示 ( 2) どの掲示があ った。写真 4、写真 5にその 例を示す。建 物に よっ て貼ってあ るシー ルの書式 が違った り、 カラ ー印 刷であっ たり、白黒印刷 であっ たりしてお り、地震後 に急 いで作っ た と考えら れる。 3。 地 震 被 災 地 の 典 型 的 な 建 物 四 川 省 の被 災 地 の典 型 的 な 建 物 は 以 下 の よ う に な っ てい る 。 1 )多 く の 建 物 は 柱 や 梁 は 鉄 筋 コ ン ク リ ート 造 に な っ て お り 、 壁 が レ ン ガ 造 に な っ て い た 。 古 い 建 物 であ れば 、 コ ン クリ ー ト 造 の 部 分 は な く、 レ ン ガ に よ る 組 積 造 と な っ て お り 、 臥 梁 や ま ぐ さ に コ ン ク リ ート 部 材 が 用 い ら れて い た。 2 ) プ レ キ ャ スト の ボ イ ド ス ラブ を 梁 や 壁 の上 に 載 せ て 床 に し て い た 。 ボ イ ド ス ラ ブ 自体 に も鉄 筋 は 使 わ れて お ら ず 、 番 線 が 補 強 筋 と し て 使 わ れ て い た 。 3 ) 鉄 筋 コ ン クリ ート の 柱 に は 十 分 な 主 筋 が入 っ て お ら ず、帯 筋 もあ ま り 入 っ て い な か っ た 。

4。 被 害 の状況

主 だ っ た 被 害 の 状 況 を 以 下 に 述 べ る 。 1 ) レ ン ガ 造 の壁 のせ ん 断 破 壊 ( 写 真 6、 写真 7) 柱 や 梁 を 鉄 筋 コ ン クリ ー ト 造 と し て 、 壁 を レ ン ガ 造 と し て い る 建 物 が 多 かっ た 。 レ ン ガ 造 そ の も の が せ ん断 に 弱 く 、 かつ レ ンガ の 目 地 、 レ ン ガ と コ ン クリ ー ト 造 と の 間 の 目地 が 十 分 に 充 填 さ れ て い ない と こ ろ も多 か っ た た め、壁 の せ ん 断 亀 裂 は 多 く の 場 所 で 見 ら れた 。 日 本 人 か ら 見 る とRC造 の 壁 に 見 え て も、 実 際 に は 表 面 が モ ル タ ル で 仕 上 げ て あ っ た り 、 タ イ ル張 り に な っ て い る が 、 中 は レ ン ガ 造 の 壁 に なっ て い る 場 合 が多 い 。 鉄 筋 コ ン クリ ー ト 造 の 梁 柱 に よ る ラ ー メ ンが 大 き く 変 形 す る こ と を 考 え れば 、 レ ン ガ 造 部 分 は 変 形 能力 と 強 度 が ない た め 、 地 震 に よ り壊 れ る こ と は容 易 に 想 像 で きる 。

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写真 6 レ ンガ壁 のせ ん断 亀裂 け ) 写真 8 腰壁 のせ ん断 亀裂 2 ) 腰 壁 や 幅 の 狭 い 壁 のせ ん 断 破 壊 ( 写 真 8、 写真 9) 腰 壁 や 幅 の 狭 い 壁 には せ ん断 力 が 集 中 す る た め 、 ひ び 割 れ を 生 じ て い た。 写 真 7  レ ン ガ 壁 の せ ん 断 亀 裂 ( 2) - ¬-ミ. ¬. ,二== - 一 一 ! 一 写真 9 壁 のせ ん断 亀裂 写真10  柱 のせ ん断破壊 設 計 者 にこ の 破 壊 に 対 す る 配 慮 が 不 足 し てい る の か 、 建 物 が 古 い か ら 当 時 は そ の よ う な 配 慮 を す る 必 要 が なか っ た の か は不 明 で あ る が 、 今 後 、 同 じ よう な せ ん 断 破 壊 を 生 じ ない よ 引 こす る こ と が 重 要 であ る 。 3 ) 柱 の せ ん 断 破 壊 ( 写真10 ) −82 −

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写真11 柱 脚 のヒ ンジ 道 路 側か ら建 物 を見 るこ と が多 く、 その 道 路側 には 長 柱が多 い こ と から、 あ ま り 柱 の せ ん断 破 壊 に 気 が っ か な かっ た。 写真 の柱 は せ ん断破 壊 であ ろ うが、 内 部 の壁 の破壊 との 相互 作用 の よう に も見 える。 こ の建 物 は道 路 側か 鉄筋 コ ンクリ ート の柱 だけ で、 裏 側が 写真12  柱 頭のヒ ンジ 鉄 筋 コ ン クリ ー ト の 柱 梁 の ラ ー メ ン に レ ン ガ 造 の 壁 が つ い て お り 、 そ のた め ね じ れ を生 じ や す く 、 こ の 柱 も道 路 に 平 行 方 向 に せ ん 断破 壊 を 生 じ て い る 。 帯 筋 の 間 隔 が 広 い こ と と 、 骨 材 が 大 きい こ と も 強 度 を 下 げ て い る と 考 え ら れる 。 4 ) 柱 頭 、 柱 脚 の 破 壊 ( 写 真11 、 写 真12 ) 柱 の せ ん 断 破 壊 ( 写真10 ) の場 合 と 同 様 に 、 建 物 の 形 式 は 道 路 側 に 柱 、 後 ろ 側 にレ ン ガ 造 の 壁 の建 物 が 多 か っ た 。 写 真11 の 建 物 で は 剛 性 の偏 り が 大 き く 、 道 路 側 は 回 転 に よ り 大 き く 変 形 す る こ と に な る 。 そ の た め 、 柱 頭柱 脚 共 にヒ ン ジ と な り 大 き く繰 返 し 変 形 し た こ と が う か が え る 。 柱 脚 の 鉄 筋 は座 屈 し て お り 、 帯 筋 も 切 れて い る。 写 真12 は 柱 頭 のヒ ン ジ を 示 す 。帯 筋 があ っ た か ど う か は 不 明 で あ る が、 大 きく 主 筋 が 座 屈 し てい る こ と が 分 か る 。 コ ン ク リ ート の 品 質 の せ い か もし れ な い が、 骨 材 が ば ら ば ら に な っ て お り 、 繰 返 し の 変 形 が多 か っ た と 予 想 さ れ る 。 5 ) 梁 の 上 下 で の 層 の す べ り ( 写真13 、 写 真14 ) 梁 の上 、又 は梁 の 下 で層 の す べり を生 じ て い る 建 物 が あ っ た 。 従 来 の 組 積 造 構 造 で 臥 梁 の 上 に 次 の 層 が そ の ま ま 載っ てい れば 層 の境 目 です べ る こ とが 考 えら れる が 、 古 い 建 物 で は な い の で、 柱 や 梁 は 鉄筋 コ ン クリ ート 造で あ る が、 こ の破 壊 の状 態 か ら上 下 階 の 柱 が 梁 と の 接 合 部 で一 体 と なっ てい ない よ う に思 わ れ る。 配筋 の問 題 か施 工 上 の 問 題 が 考 え ら れる 。 6 ) プ レ キ ャ スト ボ イド ス ラ ブ ( 写 真15 、 写真16 ) 写 真15 の 建 物 で は 建 物 の 一 部 が 崩 落 し てお り 、 残 っ た 建 物 の 梁 上 か らプ レ キ ャ スト ボ イ

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-写 真13  横 ず れ ( 1 ) 写真15  垂 れ下が った ス ラブ 写 真14  横 ず れ ( 2 ) 写真16 プ レ キ ャスト ボイド ス ラブ ドス ラブ が垂 れ下 がっ てい る。写真16か らこ のボ イド スラブ の詳細 が分か る。 こ の ボイド ス ラブは下 側に鉄筋 ではな く番 線 が補強用 に入っ てい る。建 物に よっ て はこ のボ イド スラブ の上 にコ ンクリ ート を打 設してい るもの もある。 今回 見た中 で 、 ス ラブ の 鉄 筋 が 配 筋 さ れ てい る も の は無 か っ た 。 ま た 、 こ の ス ラ ブ を 梁 に 定 着 す る 鉄 筋 も見 当 た ら な か っ た。 そ の た め 、 プ レ キ ャ ス ト ス ラブ は 梁 や 壁 の 上 に載 せ て あ る だけ だ と 推 測 さ れ る。 す な わち 、 写 真15 の 垂 下 がっ た ス ラブ は 番 線 で 梁 か ら 吊 ら れ て い る 状 態 だ と 考 え ら れ る。 7 ) 角 地 に建 つ 建 物 の 被 害 ( 写 真17 か ら 写 真20 ) 今 回 の 調 査 で は 角 地 に 建 つ 建 物 の 被 害 が多 か っ た 。 写 真17 、 写真18 で は 角 地 に 建 つ 建 物 が 崩 壊 し 、 そ の 隣 の 建 物 は 崩 壊 を 免 れて い る 。 瓦 礫 し か 残 っ て い な い ので も と の 建 物 の 状 況 は 分 か ら ない が 、 こ の よ う に建 物 が 崩 壊 し て な く な っ た 角 地 が多 く あ り 、 被 害 の大 き い −84 −

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角 地 の 建 物 も多 くあ っ た 。 写 真19 は 比 較 的 新 し い と 考 え ら れる 銀 行 の 建 物 で 、 こ の建 物 も 角 地 に 建 っ てい た 。 正 面 か ら見 て 両 側 の 円形 の 塔 の 部 分 、 正 面 の壁 に 被 害 が多 か っ た。 こ の 建 物 の 道 路 向 か い の 図 書 館 の 建 物 も新 し い 建 物 で あ っ た が 、 大 き な 被 害 を 受 け て い た 。 こ れら の建 物 は 都 江 堰 の 中 心 部 分 に あ る ラ ン ド マ ー ク 的 な 建 物 であ っ た 。 こ れ ら の建 物 の 横 の 古 い 建 物 は あ ま り 被 害 を 受 け て い な かっ た 。 角 地 に 建 つ 建 物 で は 道 路 側 2 面 に 開口 を 大 きく 取 り 、後 ろ 側 は 基 本 的 に 壁 で 覆 え ば 良 い こ と か ら 、ね じ れ を 生 じ や す い 構 造 で あ る 。 こ れら の建 物 で は ね じ れ に 対 す る 検 討 が 少 な か っ た と 予 想 さ れ る。 一 方 、 写 真20 の 角 地 に 建 つ 建 物 は 被 害 も な く 、 現 在 も 使 用 可 能 と な っ て い る。 こ の建 物 の 両 隣 、 道 路 を 挟 ん だ 反 対 の角 地 の 建 物 は 写 真17  崩 壊 し た 角 地 の 建 物 ( 1) 写 真19  損 傷 し た 角 地 の 建 物 被害 が大 きく使用禁 止となっ てい た。 こ の使 用可 能となっ た建物の内 部に は建 物 の背 後だけ でなく、 内部 にも道路 と平 行 に壁 が 配 置 さ れ、 ねじ れ にく い 構 造 に なっ てい るこ とが確認 された。 写 真18  崩 壊 し た角 地 の 建 物 ( 2 ) 写 真20  被 害 の 少 な い 角 地 の 建 物

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写真21  一部 が崩 落し た建物 写真22  階段 部分 が崩 落し た建 物 8 ) 建 物 の 一 部 が 崩 壊 ( 写 真21 、 写 真22 ) 写 真21 と 写真22 で は 建 物 の 一 部 が 崩 落 し た 被 害 状 況 を 示 し て い る 。 写 真21 で は 部屋 の 一 部、 写 真22 で は 階 段 部 分 が 崩 壊 し てい る 。こ の よ う な 破 壊 形 式 は 多 く の 建 物 で も見 ら れた 。 床 が 梁 に 固 定 さ れて い な い こ と は 先 は ど も示 し た が 、 こ れ ら の 写真 を 見 る と 、 梁 が 梁 柱 の 接 合 部 で 折 れ て い た り 、 外 れ てい た り し てい る 。 す な わち 、 梁 も 柱 や 隣 の 梁 に 十 分 に定 着 さ れて い ない よ う に 見 え る 。 剛床 を 保 障 す る もの が 何 も な い 状 況 に な っ て お り 、 こ の よ う な 建 物 は 容 易 に ねじ り を 生 じ、 弱 い 接 合 部 が 局 部 的 な破 壊 し 、崩 壊 を 生 じ る と 考 え ら れる 。 9 ) 塔 状 の建 造 物 ( 写 真23 ∼ 写 真26 ) 多 く の 建 物 が 崩 壊 し た 場 所 に塔 状 の建 造 物 ( 給 水 塔 と 思 わ れ る )( 写 真23 ∼ 写 真25 ) が 無 事 に 残 っ てい る 姿 を多 く の場 所 で 見 た 。 固 有 周 期 の 影 響 も考 え ら れ る が 、 円 形 断 面 で 一 様 な 構 造 な た め 、 安 全 性 が 高 かっ た も の と思 わ れる 。 写 真26 は 漢 旺 の中 心 街 に あ っ た 時 計 台 で、 地 震 発 生 時 刻 2時28 分 で 止 まっ て い る 。 写 真 に 写 っ て い る の は 今 回 、 現 地 の 調 査 を 一 緒 に 行 っ た 劉 文 光 教 授 ( 上 海 大 学 ) と そ の友 人 で 漢 旺 の 被 害 の 大 きい 場 所 に 入 れ る よ う に尽 力 し て く れ た 人 で あ る。 こ の塔 に 顕 著 な 被 害 は 見 ら れな かっ た し 、 こ の 付 近 の大 き な 被 害 の 建 物 は 少 な か っ た 。 10 ) 学 校 建 物 ( 写 真27 、 写 真28 ) 地 震 後 の ニ ュ ー ス で は多 く の学 校 が 崩 壊 し た と 伝 え て お り、 現 地 か ら の ニ ュ ー ス で よ く 取 り 上 げ ら れ て い た 学 校2 )を 見 た 。 確 か に学 校 は 崩 壊 し て お り 、 す で に、 瓦 礫 も取 り去 っ −86 −

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写 真23  塔 ( 1 )

写 真25  塔 ( 3 )

写真24 塔 ( 2)

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写 真27  学 校 跡 地 ( 1 ) 写 真28  学 校 跡 地 ( 2 ) て あ っ た 。こ の 学 校 の 周 り に は 多 く の 一 般 の 住宅 や 商 店 があ っ た が、 被 害 は 軽 微 で あ っ た 。 普 通 に 考 え れ ば 、 学 校 の 耐 震 強 度 が 弱 かっ た と い え る。 一 般 の 建 物 に 比 べ て 弱 く な る 理 由 と し て 第一 に 考 え ら れ る の は 発注 者 の 指 示 で あ る 。 施 工 者 や 設 計 者 が 弱 く 作 ろ う と思 う の で あ れば 、 一 般 の住 宅 も 同 じ 状 況 に な る 。 学 校 だ け 弱 く な る の は 発 注 者 の 指 示 と 考 え る の が もっ と も 妥 当 で あ ろ う 。 11) ri 川 へ の 道 ( 写 真29 ) 都 江 堰 の 調 査 を 終 え て、 波川 に向 かった。建 設資材や 生活物 資を運 んで い る 車 に出 会 っ た。 行 く 途 中 は谷 に 沿った 道で、多 く の山でがけ崩 れを生 じてい た。 この辺 りは震 源に近い場所 で、頂上 から崩 れてい る山 もあ り、地 震の大 きさに驚い た。 澆川 の手前で警 察に調 査車両はこ れ以上進 むことが 出 来ない と言 われて、引 き返し た。 写 真29 絞 川に 行 く途中 の谷

5。今 後 の中 国 の地 震 対策

今 回 の 被 害 調 査 で 被 害 の 原 因 とし て まず 考 え ら れる の は 構 造 設 計 で 気 を つ け る 部 分 の 配 慮 が な さ れて い ない こ と だ と 思 わ れ る 。 構 造 設 計 を 無 視 し た 意 匠だ け の 設 計 が 行 わ れて い た と 思 わ れる 建 物 も 見 受 け ら れ た 。い ず れ にせ よ、 ち ゃ ん とし た 構 造 技 術 者 が 絡 ん だ 設 計 に は な っ てい な い 。 日 本 で は 耐 震 要 素 の バ ラ ン ス の良 い 配 置 が 法 律 で 求 め ら れ て お り 、 そ れ にあ わ せ た 設 計 方 法 が 確 立 さ れ てい る 。 ま た 、 各 柱 や梁 が 一 緒 に 動 く よう に 床 が そ の 形状 を 維 持 す る よ う に 設 計 さ れ て い る 。 こ の こ と は 新 し い 考 え 方 で な く 、 従 来 か ら の 技 術 で あ り 、 中 国 で 分 −88 −

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かってい ない ことでは ない 。こ のような構 造的な配慮 がなさ れない状 態 になっている のであ ろ う。 鉄筋コ ンクリ ート造 の設計方 法はすで に何 十年も前 に実用上問 題のないレ ベル まで 開発さ れており、 私か中国の 大学生が 見る教科書 を見ても、実 用上問題 ない 教育を受 けてい るこ と はわかる。 逆に言う と、この ような教育を受け てない人 が設計を 行っている のか、そ れまで の教育を無視 して設計 している とし か考 えられない。 中国に とっ て差し当 たっての耐震 対策 とし ては中国 の耐震規準 の厳格 な運 用がもっ とも大 切 と思う。こ れは構造 技術 者、 発注 者、役所 が耐震性 能向上を目 指して行動 するこ とを求め てい る。被害 のもっ ともひど かっ た波川 に行っ て被害 の状 況を 見てい ないの で、この 地震 で の特徴的 な被 害がある かもし れない が、そ の原囚を探 り対策を考 える前 に、 健全 で ない建 物 を作らなく する方法を 考え、そ れを実行す るこ とが重 要である と言える。 参考文献 1) 祁憲生,司 宏悛, 中国四川大 地震の現 地調査速報, 地表断層 及び周辺の 被害調査, 防災 科研ニ ュース 夏”, 2008, No.164. 2 ) 日本建築 学会災害 委員 会,2008年中国 四川省地震,2008年岩 手・宮城内 陸地震被害 調査 報告,2008年 度日本建築学 会大 会(中 国) 災害 部門報告 会資 料,2008年 , 9月. 3) 中埜良昭 ,前田匡樹 ,迫田丈志 ,坂下 雅信 ,2008年 5月12日 中国四川 大地震復旧技 術 支 援 連 絡 会 議 第 2 次 復 旧 技 術 支 援 建 設 チ ー ム 活 動 記 録,http://www.struct.archi. tohoku.ac.jp/rehabi/pdf/shisen.pdf

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