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近世庶民の「世界」像 : 節用集の世界図を中心に

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(1)

近世庶民の「世界」像 : 節用集の世界図を中心に

著者

ポロヴニコヴァ エレーナ

雑誌名

日本思想史研究

45

ページ

62-93

発行年

2013-03-25

URL

http://hdl.handle.net/10097/60986

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六 二

は じ め に あ る 時 代 の 思 想 は 権 力 者 、 知 識 人 、 一 般 庶 民 な ど 様 々 な 階 層 の 世 界 観 か ら な る 。 し か し 、 思 想 史 で は 、 荻 生 徂 徠 や 本 居 宣 長 な ど の 知 識 人 の 個 人 思 想 を 研 究 対 象 と す る こ と が 多 い 。 他 方 、 庶 民 の 思 想 ・ 世 界 観 ︱ 特 に 泰 平 の 中 に 生 き て い る 庶 民 の 世 界 観 ︱ の 解 明 は い ま だ に 大 き な 課 題 と し て 残 さ れ て い る の で あ る 。 も ち ろ ん 、 一 般 庶 民 の 世 界 観 を 論 じ る 研 究 は 全 く な い わ け で は な い 。 近 世 庶 民 の 世 界 観 に 関 す る 先 行 研 究 は 、 い わ ゆ る 民 衆 思 想 家 ︵ 庶 民 出 自 の 思 想 家 ︶ を 例 に 論 じ ら れ て い る も の ︵ 庄 司 吉 之 助 の 研 究 ︶ 、 井 原 西 鶴 な ど の 文 学 作 品 を 資 料 と し て 町 人 文 化 ︱ 庶 民 文 化 の 一 部 ︱ を 論 じ て い る も の ︵ 石 田 一 良 の 研 究 ︶ 、 庶 民 が 残 し た 日 記 な ど を 資 料 と し て 上 層 の 庶 民 の 世 界 観 を 論 じ て い る も の ︵ 布 川 清 司 の 研 究 ︶ な ど が あ る 。 し か し 、 こ の よ う な 研 究 に も か か わ ら ず 、 近 世 庶 民 の 世 界 観 の 研 究 は ま だ 十 分 で は な く 、 広 い 意 味 で の 一 般 庶 民 の 世 界 観 を 把 握 す る た め に は よ り 有 用 な 資 料 を 求 め て い く 必 要 が あ る 。 そ の よ う な 資 料 と し て 近 世 の 辞 書 の 一 つ で あ る 節 用 集 が あ る 。 節 用 集 は 、 国 語 辞 典 と 百 科 事 典 と い う 二 つ の 側 面 を 備 え て い る 辞 書 で あ る 。 従 来 、 節 用 集 は 主 に 国 語 学 の 研 究 対 象 と し て 扱 わ れ て き た 。 百 科 的 な 側 面 、 つ ま り 巻 頭 ・ 本 文 頭 書 ・ 巻 末 に つ い て い る 多 様 な 付 録 に つ い て 触 れ た 場 合 に も 、 そ れ は や は り 国 語 学 研 究 の 一 部 で あ る 辞 書 史 学 の 立 場 か ら 論 じ ら れ る こ と が 多 い 。 近 世 中 期 以 降 は そ の よ う な 百 科 的 な 付 録 が 次 第 に 増 加 し て い き 、 近 世 後 期 に な る と 、 字 引 の 部 分 よ り 付 録 の ほ う が 節 用 集 の 大 半 を 占 め る よ う に な っ て き た 。 こ の よ う に 、 節 用 集 は 歴 史 学 や 文 化 史 学 の 対 象 と も な り う る 内 容 を 備 え て い る た め 、 付 録 部 分 に も 注 目 が 必 要 で あ る 。 従 来 の 研 究 で は 付 録 に 焦 点 を あ て て 節 用 集 を 論 じ て い る

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も の の 中 で 、 横 山 俊 夫 の 研 究 が 特 に 注 目 さ れ る 。 横 山 俊 夫 は そ の 論 考 に お い て 、 節 用 集 が 近 世 に わ た っ て 数 多 く 出 版 さ れ て お り 、 一 家 に 一 冊 あ る ほ ど 流 布 し 、 実 際 に よ く 使 用 さ れ て い た と 述 べ て い る 。 こ の よ う な 節 用 集 は ﹁ 日 用 百 科 ﹂ ﹁ 総 合 礼 法 体 系 書 ﹂ で あ り 、 節 用 集 を 通 し て ﹁ そ れ を 使 っ た 人 々 の 生 活 の 実 態 を ﹂ あ る 程 度 把 握 で き る と い う 。 節 用 集 は 庶 民 作 者 が 庶 民 読 者 ︵ 使 用 者 ︶ の 知 識 要 求 を 考 慮 に 入 れ て 庶 民 向 け に 作 成 し た も の で あ る 。 そ の た め 、 節 用 集 に 挿 入 さ れ て い る 付 録 に は 、 当 時 の 庶 民 が 必 要 と し た 知 識 や 彼 ら の ﹁ 世 界 ﹂ に 対 す る 認 識 な ど 、 当 時 の 庶 民 が 共 有 し て い た 思 想 が 表 明 さ れ て い る 。 こ の よ う な 節 用 集 は 庶 民 思 想 を 明 ら か に す る た め の 最 良 の 資 料 と 言 え る 。 節 用 集 付 録 の 地 図 等 は 当 時 の 人 々 が ど の よ う な 環 境 に 生 き て い る か を 、 年 代 記 等 は ど の よ う な 歴 史 の 中 に 、 ど の よ う な 時 代 に 生 き て い る か を 説 明 し て お り 、 日 常 生 活 に 必 要 不 可 欠 な 知 識 が 紹 介 さ れ て い る 。 近 世 後 期 の 節 用 集 の 付 録 か ら 見 る 当 時 の 庶 民 の 世 界 観 は 、 空 間 と 時 間 の 軸 の 中 に 位 置 づ け ら れ て お り 、 こ の 二 つ の 軸 の 交 差 点 に あ た る 現 在 の 時 点 ︵ 当 時 の 人 々 の 日 常 生 活 ︶ に 注 目 す る と い う 形 で あ ら わ れ て い る 。 本 稿 で は 、 節 用 集 に 挿 入 さ れ て い る 百 科 的 な 付 録 の 考 察 に よ り 、 近 世 庶 民 の 思 想 ・ 世 界 観 を 明 ら か に す る こ と を 目 的 と す る も の で あ る 。 そ の 際 、 時 代 を 近 世 中 期 ・ 後 期 に 限 定 し 、 世 界 観 の 一 部 で あ る 空 間 認 識 を 中 心 に 論 じ る 。 な ぜ な ら ば 、 中 期 以 降 は 節 用 集 の 付 録 が 次 第 に 増 加 し て い っ た か ら で あ る 。 こ こ で い う ﹁ 空 間 認 識 ﹂ と は 人 間 の 生 き て い る 環 境 に 対 す る 認 識 で あ る 。 こ の よ う な 環 境 と は ま ず ﹁ 家 ﹂ で あ る が 、 人 間 が 同 時 に 社 会 の 中 で 生 き て い る も の で あ る た め 、 そ の 環 境 も ﹁ 家 ﹂ ↓ ﹁ 近 所 ﹂ ↓ ﹁ 村 ﹂ あ る い は ﹁ 町 ﹂ ↓ ﹁ 地 方 ﹂ ↓ ﹁ 国 ﹂ ↓ ﹁ 世 界 ﹂ の よ う に 次 第 に 広 が っ て い く 。 本 稿 で は 後 二 者 の ﹁ 国 ︵ 日 本 国 ︶ ﹂ と ﹁ 世 界 ﹂ を 中 心 に 論 じ 、 庶 民 が そ れ ら を ど の よ う に 認 識 し て い た の か を 課 題 と す る 。 庶 民 が ﹁ 日 本 国 ﹂ や ﹁ 世 界 ﹂ を ど の よ う に 捉 え て い た の か を 解 明 す る 際 、 節 用 集 の 世 界 図 を 資 料 と し て 用 い る 。 も ち ろ ん 、 そ の 他 の 付 録 項 目 と 同 様 に 、 節 用 集 の 世 界 図 は そ れ ぞ れ 別 々 の 出 版 物 で も あ っ た 。 一 般 庶 民 が 単 行 の 世 界 図 を 実 際 に 目 に し た こ と は 考 え 難 い 。 他 方 、 前 述 に も し た よ う に 、 節 用 集 が 一 家 に 一 冊 あ る ほ ど 流 布 し た の で 、 そ こ に 挿 入 さ れ て い る 世 界 図 等 を 明 ら か に 見 た り し た と 言 え る 。 地 図 類 を 含 め て 様 々 な 付 録 項 目 が 節 用 集 に 含 ま れ る よ う に な っ た 理 由 の 一 つ は 、 そ の 知 識 を よ り 広 い 読 者 層 ︵ 使 用 者 ︶ に 伝 え る こ と だ と 考 え ら れ る 。 そ の た め 、 本 稿 で 扱 う の は そ の 単 行 の 世 界 図 で は な く 、 節 用 集 の 世 界 図 で あ る 。

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節 用 集 が 庶 民 の 世 界 観 ・ 空 間 認 識 を 捉 え る こ と の で き る 資 料 で あ る に も か か わ ら ず 、 そ れ に 挿 入 さ れ て い る 世 界 図 な ど の 地 図 類 は 従 来 の 研 究 対 象 と さ れ な か っ た 。 地 図 な ど を 通 し て 近 世 日 本 の 世 界 観 を 論 じ る 諸 研 究 の 中 で は 節 用 集 に 関 す る 記 述 が あ る 場 合 も あ る が 、 そ の 記 述 は 、 節 用 集 に は こ の よ う な 地 図 や 人 物 図 が 挿 入 さ れ て い た 、 と い う よ う な ご く 簡 単 な も の で し か な い の で あ る 。 し か し 、 節 用 集 の 地 図 な ど は 単 行 図 を 原 拠 と し て 用 い て 作 成 さ れ た も の で あ る に も か か わ ら ず 、 そ れ ら に 表 現 さ れ て い る 世 界 観 ・ 空 間 認 識 は 決 し て 原 図 と 同 様 な も の で は な い 。 そ れ 故 、 近 世 日 本 の 世 界 観 ・ 空 間 認 識 ︱ 特 に あ ま り 論 じ ら れ な か っ た 庶 民 の そ れ ︱ を 明 確 す る に は 、 百 科 的 な 側 面 を 持 つ 庶 民 向 け の 節 用 集 に 挿 入 さ れ て い る 地 図 類 な ど に も 注 目 す る 必 要 が あ る 。 そ こ で 本 稿 で は 、 節 用 集 の 中 に 挿 入 さ れ て い る 世 界 図 を 対 象 と し 、 近 世 庶 民 の 世 界 観 ・ 空 間 認 識 を 検 討 す る 。 ま ず は 近 世 節 用 集 に お け る 世 界 図 に つ い て 考 察 し 、 次 に ﹁ 世 界 ﹂ 像 の 変 容 に 焦 点 を 当 て な が ら そ れ ら の 世 界 図 に 表 現 さ れ る 空 間 認 識 に つ い て 論 じ る 。 六 四 ﹂ 、 近 世 節 用 集 に お け る 世 界 図 近 世 日 本 に お い て は 、 日 本 人 の ﹁ 世 界 ﹂ 像 が 新 た な 展 開 を 迎 え た 。 古 代 や 中 世 に お い て は ﹁ 世 界 ﹂ が 三 国 か ら な る と 考 え ら れ て い た 。 そ こ で は 、﹁ 日 本 ﹂ は 中 国 や 天 竺 ︵ イ ン ド ︶ と 比 べ て 、 劣 っ た も の ︵ 粟 散 辺 土 と し て の 認 識 ︶ 、 あ る い は 同 様 な 位 置 づ け を 持 つ も の ︵ 南 謄 部 州 の 一 国 で あ る 神 国 と し て の 認 識 ︶ で あ っ た 。 他 方 、 近 世 に な る と 世 界 の 国 々 と の 交 流 や 交 易 ︵ 多 く は 知 識 の 流 入 の 形 で ︶ が 以 前 の 時 代 よ り 盛 ん に な っ て き た 。 鎖 国 、 海 禁 と い う 限 定 が あ っ た に も か か わ ら ず 、 広 い 意 味 で の ﹁ 世 界 ﹂ と の 接 触 が 始 ま っ た 。 そ れ は ほ と ん ど 、 外 国 人 が 来 日 す る 場 合 に 限 ら れ た が 、 自 分 の 意 志 で で は な い と し て も 、 日 本 人 も 春 名 徹 の 言 葉 を 借 り れ ば ﹁ 世 界 を 見 て し ま っ た ﹂ 例 が あ る 。 こ の よ う に 目 の 前 に 現 わ れ て き た ﹁ 世 界 ﹂ に 対 し て は 、 幕 府 や 知 識 人 は も ち ろ ん 、 一 般 庶 民 も 強 い 関 心 を 持 ち 始 め た の で あ る 。 そ し て 、 広 い 意 味 で の ﹁ 世 界 ﹂ に 対 す る 一 般 庶 民 の 関 心 に 応 え て 、 庶 民 向 け の 節 用 集 に は ﹁ 世 界 ﹂ を 表 す 世 界 図 が 載 せ ら れ る よ う に な っ た 。 最 初 の 世 界 図 が 節 用 集 の 付 録 と し て 出 た の は 元 禄 期 ︵ 一 六 八 八 ∼ 一 七 〇 四 ︶ 頃 で あ る 。 そ れ 以 降 は 、 世 界 図 が た び た び 付 録 に な っ て い た 。 今 ま で 見 る こ と の で き た 近 世 中 期 ・ 後 期 の 節 用 集 に は 次 の よ う な 世 界 図 が あ る 。 ① ﹁ 須 彌 山 圖 ﹂﹃ 頭 書 大 益 節 用 集 鋼 目 ﹄ 元 禄 三 ︵ 一 六 九 〇 ︶

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年 、 東 北 大 学 図 書 館 狩 野 文 庫 蔵 ② ﹁ 須 彌 山 之 圖 ﹂ ﹃ 頭 書 増 補 大 成 節 用 集 ﹄ 元 禄 一 二 ︵ 一 六 九 九 ︶ 年 、 国 立 国 会 図 書 館 蔵 ③ ﹁ 世 界 萬 國 総 圖 ﹂ ﹃ 頭 書 増 補 大 成 節 用 集 ﹄ 元 禄 十 二 ︵ 一 六 九 九 ︶ 年 、 国 立 国 会 図 書 館 蔵 ④ ﹁ 世 界 萬 國 総 圖 ﹂﹃ 錦 字 節 用 無 窮 成 ﹄︵ 正 徳 四 ︹ 一 七 一 四 ︺ 年 ︶ 、 東 京 学 芸 大 学 図 書 館 蔵 ⑤ ﹁ 世 界 萬 國 総 圖 ﹂﹃ 宝 林 節 用 字 海 大 成 ﹄ 正 徳 ︵ 一 七 一 一 ∼ 一 七 一 五 ︶ 年 間 以 降 、 東 北 大 学 図 書 館 狩 野 文 庫 蔵 ⑥ 世 界 図 ﹃ 大 魁 節 用 悉 皆 不 求 人 ﹄ 正 徳 ︵ 一 七 一 一 ∼ 一 七 一 五 ︶ 年 間 以 降 、 東 北 大 学 図 書 館 蔵 ⑦ ﹁ 世 界 萬 國 総 圖 ﹂﹃ 大 富 節 用 福 壽 海 ﹄ 享 保 十 八︵ 一 七 三 三 ︶ 年 、 国 立 国 会 図 書 館 蔵 ⑧ ﹁ 万 國 人 物 正 圖 ﹂ ﹃ 悉 皆 世 話 字 彙 墨 宝 ﹄ 享 保 十 八 ︵ 一 七 三 三 ︶ 年 、 国 立 国 会 図 書 館 蔵 ⑨ ﹁ 世 界 萬 國 人 物 総 圖 ﹂ ﹃ 萬 國 通 用 要 字 選 ﹄ 寛 保 二 ︵ 一 七 四 二 ︶ 年 、 東 北 大 学 図 書 館 蔵 ⑩ ﹁ 万 国 世 界 之 圖 ﹂ ﹃ 頭 書 増 補 節 用 集 大 成 ﹄ 宝 暦 二 ︵ 一 七 五 二 ︶ 年 、 東 北 大 学 図 書 館 蔵 ⑪ ﹁ 地 球 圖 ﹂ ﹃ 増 補 童 子 字 盡 ﹄ 安 永 五 ︵ 一 七 七 六 ︶ 年 、 国 立 国 会 図 書 館 蔵 ⑫ ﹁ 万 國 世 界 圖 ﹂﹃ 日 本 節 用 万 歳 蔵 ﹄ 天 明 五 ︵ 一 七 八 五 ︶ 年 ・ 国 立 国 会 図 書 館 蔵 、 天 保 八 ︵ 一 八 三 七 ︶ 年 ・ 東 北 大 学 図 書 館 蔵 ⑬ ﹁ 世 界 萬 國 之 圖 ﹂﹃ 都 会 節 用 百 家 通 ﹄ 文 化 八 ︵ 一 八 〇 九 ︶ 年 ・ 東 京 学 芸 大 学 図 書 館 蔵 、 文 政 二 ︵ 一 八 一 九 ︶ 年 ・ 東 北 大 学 図 書 館 蔵 、 天 保 七 ︵ 一 八 三 六 ︶ 年 ・ 東 北 大 学 図 書 館 狩 野 文 庫 蔵 ⑭ ﹁ 萬 國 總 圖 ≒ 倭 節 用 集 悉 改 大 全 ﹄ 文 政 九 ︵ 一 八 二 六 ︶ 年 、 東 北 大 学 図 書 館 蔵 ⑮ ﹁ 世 界 萬 国 国 盡 ﹂﹃ 大 成 無 雙 節 用 集 ﹄ 嘉 永 二 ︵ 一 八 四 九 ︶ 年 、 東 北 大 学 図 書 館 狩 野 文 庫 蔵 ⑯ ﹁ 世 界 萬 圀 之 圖 ﹂ ﹃ 大 日 本 永 代 節 用 無 盡 蔵 ﹄ 嘉 永 二 ︵ 一 八 四 九 ︶ 年 ︵ 嘉 永 五 ︹ 一 八 五 二 ︺ 年 ︶、 東 北 大 学 図 書 館 蔵 ⑰ ﹁ 世 界 萬 國 之 略 圖 ﹂﹃ 大 福 節 用 無 盡 蔵 ﹄文 久 三 ︵ 一 八 六 三 ︶ 年 、 東 北 大 学 図 書 館 蔵 ⑱ ﹁ 萬 國 大 概 之 図 ﹂﹃ 江 戸 大 節 用 海 内 蔵 ﹄ 文 久 三 ︵ 一 八 六 三 ︶ 年 ︵ 元 治 二 ︹ 一 八 六 五 ︺ 年 ・ 架 蔵 、 慶 応 元 ︹ 一 八 六 五 ︺ 年 ・ 東 北 大 学 図 書 館 狩 野 文 庫 蔵 ︶ ⑲ ﹁ 輿 地 全 圖 ﹂﹃ 大 日 本 永 代 節 用 無 盡 蔵 ﹄ 文 久 四 ︵ 一 八 六 四 ︶ 年 、 東 北 大 学 図 書 館 蔵 六 五 こ の よ う な 一 覧 を 見 て 、 ま ず 気 付 く の は 最 初 の 二 図 で あ ろ う 。 こ の 二 つ の 世 界 図 は 仏 教 系 の 世 界 図 で あ り 、 従 来 の

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﹁ 世 界 ﹂ 像 を 表 す も の で あ る 。 し か し 、 数 多 く の 近 世 中 期 ・ 後 期 の 節 用 集 の 中 で は こ の よ う な 仏 教 系 の 世 界 図 が 二 点 し か な く 、 元 禄 期 頃 の も の に し か 見 ら れ な い こ と を 考 え る と 、 節 用 集 の 作 者 や 読 者 は お な じ み の ﹁ 世 界 ﹂ 像 を 表 現 す る も の よ り 、 未 知 の ﹁ 世 界 ﹂ ・ 新 し い ﹁ 世 界 ﹂ を 表 す も の を 要 求 し た こ と が わ か る 。 新 し い ﹁ 世 界 ﹂ を 表 現 す る 図 は ほ と ん ど 全 部 、 ﹁ 万 国 ﹂ と い う キ ー ワ ー ド を も っ て 名 付 け ら れ て い る 。 こ の こ と か ら は 、 新 し い ﹁ 世 界 ﹂ が 従 来 の 三 国 か ら な る も の で な く 、 数 多 く の 国 々 か ら な る も の だ と 窺 わ れ る 。 し か し 、 ③ 以 下 の 世 界 図 が す べ て 同 様 な も の だ っ た わ け で は な い 。 ま ず は 近 世 中 期 の も の ︵ ③ ∼ ⑪ ︶ を 見 る と 、 特 殊 と 言 っ て も い い ⑪ の 図 を 除 け ば 、 寛 文 十 一 ︵ 一 六 七 一 ︶ 年 刊 の 人 物 図 付 き の ﹃ 万 国 総 図 ﹄ を 原 拠 と す る も の で あ る 。 そ の 内 の ③ ④ ⑤ ⑦ の 図 は ﹃ 万 国 総 図 ﹄ そ の ま ま を 何 の 変 更 も な し に 載 せ ら れ た も の で あ る ︵ 参 考 図 一 ︶ 。 ⑥ ⑧ ⑨ の 図 は 方 位 が 北 を 上 に 変 え た だ け で 、 基 礎 は 同 じ く ﹃ 万 国 総 図 ﹄ で あ る ︵ 参 考 図 二 ︶ 。 ま た 、 ⑩ の 図 は 原 図 と 同 様 に 方 位 が 東 を 上 に す る も の で あ る が 、 か な り 粗 略 な 図 で あ り 、 ほ か の 図 と 違 っ て 卵 形 の 図 で は な く 、 素 略 図 で あ る 。 こ の よ う に 見 る と 、 近 世 中 期 に か け て 、 節 用 集 に お け る ﹁ 世 界 ﹂ 像 は ﹃ 万 国 総 図 ﹄ に よ る も の で あ り 、 一 世 紀 ほ ど の 間 に 庶 民 の 間 で 保 持 さ れ て い た 。 他 方 、 近 世 後 期 に な る と 、 節 用 集 の 世 界 図 ︵ ⑫ ∼ ⑲ ︶ は 様 々 な 図 形 で 現 れ る よ う に な る 。 そ の 原 拠 も ﹃ 万 国 総 図 ﹄ に 限 ら な く な っ て き た 。 様 々 な 原 拠 を 基 に 作 成 さ れ た た め 、 後 期 の 世 界 図 に 見 え る ﹁ 世 界 ﹂ 像 も 多 種 多 様 な 形 で 表 現 さ れ る の で あ る 。 ま ず は 、 近 世 後 期 の 節 用 集 に あ る 世 界 図 が 何 を 原 拠 と し た も の で あ る の か 。 六 六 ⑫ ﹃ 日 本 節 用 万 歳 蔵 ﹄ の ﹁ 万 國 世 界 圖 ﹂ ︵ 参 考 図 三 ︶ 本 節 用 集 は 天 明 五 年 と 天 保 八 年 の 二 つ の 刊 本 が あ る が 、 い ず れ に も 世 界 図 は 同 様 な も の で あ る 。 こ の 図 は マ テ オ ・ リ ッ チ 系 の 世 界 図 で あ り 、 そ の 原 拠 は 寛 文 十 一 ︵ 一 六 七 一 ︶ 年 刊 の ﹃ 万 国 総 図 ﹄ と さ れ て い る 。 し か し 、 本 図 は か な り 粗 末 な も の で あ り 、 そ の 図 形 が 刊 行 の 際 に 省 略 さ れ て き た こ と が わ か る 。 ⑬ ﹃ 都 会 節 用 百 家 通 ﹄ の ﹁ 世 界 萬 國 之 圖 ﹂ ︵ 参 考 図 四 ︶ 本 節 用 集 に お け る 世 界 図 は 、 い ず れ の 刊 本 も 共 通 の も の で あ る 。 本 図 は ア メ リ カ 大 陸 が 書 か れ て お ら ず 、 い わ ゆ る 旧 大 陸 図 で あ る 。 こ の 図 も マ テ オ ・ リ ッ チ 系 の 世 界 図 で あ る が 、 そ の 原 拠 と な っ た も の は 長 久 保 赤 水 の ﹃ 地 球 万 国 山 海 輿 地

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全 図 説 ﹄ ︵ 天 明 八 年 ︹ 一 七 八 八 ︺ 頃 ︶ の よ う で あ る が 、 本 図 の ほ う は 粗 略 で あ る 。 六 七 ⑭ ﹃ 倭 節 用 集 悉 改 大 全 ﹄ の ﹁ 萬 國 總 圖 ﹂ ︵ 参 考 図 五 ︶ 本 図 は 近 世 日 本 に 広 く 流 布 し て い た 卵 形 世 界 図 で あ る 。 前 二 者 の 図 と 違 っ て 、 亜 細 亜 ・ 欧 羅 巴 ・ 亜 弗 利 加 ・ 北 亜 墨 利 加 ・ 南 亜 墨 利 加 ・ 墨 瓦 臘 泥 加 の 六 大 州 が は っ き り と 区 別 さ れ 、 経 線 や 赤 道 ︵ ﹁ 昼 夜 平 線 ﹂ ︶ ・ 北 回 帰 線 ︵ ﹁ 夏 至 ノ 日 此 線 マ テ 至 ﹂ ︶ ・ 南 回 帰 線 ︵ ﹁ 冬 至 ノ 日 此 線 マ テ 至 ﹂ ︶ が 記 さ れ て い る 。 こ こ か ら は 簡 略 な 形 で あ り な が ら も 、 大 州 ・ 経 緯 線 ・ 太 陽 の 運 行 に 関 す る 地 理 学 や 天 文 学 の 基 本 的 な 知 識 が 知 ら れ る 。 経 緯 線 の あ る こ と や 世 界 図 の 描 き 方 か ら す れ ば 、 そ の 原 図は橋本宗吉の﹃咼[+口]蘭新訳地球全図﹄︵寛政八︹一七九六︺ 年 ︶ だ と 考 え ら れ る 。 宗 吉 の 世 界 図 と の 著 し い 相 違 点 と い え ば 、 宗 吉 図 の ほ う が 両 半 球 図 で あ る 。 し か し 、 オ ー ス ト ラ リ ア 大 陸 ︵ 本 図 で は ﹁ 墨 瓦 臘 泥 加 ﹂ 、 宗 吉 図 で は ﹁ 新 入 謁 蘭 垤 亜 ﹂ ︶ が 半 分 不 明 で あ り 、 カ リ フ ォ ル ニ ア 半 島 が 島 で あ る な ど の 類 似 点 が 少 な く な い 。 本 節 用 集 の 作 者 は 両 半 球 図 の 宗 吉 図 を お な じ み の 卵 形 図 に 変 え た だ け で あ る 。 お そ ら く 庶 民 の 間 で は 両 半 球 図 の 意 味 が 理 解 さ れ て い な か っ た か ら で あ ろ う 。 一 般 庶 民 は 従 来 、 地 理 的 な 広 が り と し て の ﹁ 世 界 ﹂ を 平 ら な も の と し て 考 え て い た 。 両 半 球 図 の 意 味 し て い る ﹁ 世 界 ﹂ が 丸 い も の だ と 説 明 さ れ て も す ぐ に 理 解 で き る こ と は な い 。 ⑮ ﹃ 大 成 無 雙 節 用 集 ﹄ の ﹁ 世 界 萬 国 国 盡 ﹂ ︵ 参 考 図 六 ︶ こ の ﹁ 世 界 萬 国 国 盡 ﹂ は 地 図 で は な く 、 大 陸 別 の 国 名 の 一 覧 で あ る 。 そ こ に は 、 ﹁ 亜 細 亜 の 部 ﹂ ︵ 十 四 の 国 名 ︶ ﹁ 欧 羅 巴 の 部 ﹂ ︵ 三 十 七 の 国 名 ︶ ﹁ 亜 弗 利 加 の 部 ﹂ ︵ 二 十 三 の 国 名 ︶﹁ 北 亜 墨 利 加 の 部 ﹂︵ 十 の 国 名 ︶﹁ 南 亜 墨 利 加 の 部 ﹂︵ 十 一 の 国 名 ︶ と あ り 、 五 大 州 が 紹 介 さ れ て い る 。 ヨ ー ロ ッ パ の 国 名 が 多 い た め 、 ヨ ー ロ ッ パ の 資 料 の 翻 訳 本 が 原 拠 と な っ た の で は な い か と 考 え ら れ る 。 ﹁ 日 本 蘭 語 也 、 已 下 こ れ に な ら へ ﹂ と い う 注 記 を 見 れ ば 、 地 名 が オ ラ ン ダ 語 か ら の 訳 だ と わ か る 。 し た が っ て 、 そ の ヨ ー ロ ッ パ の 資 料 は オ ラ ン ダ 語 の 地 理 書 の 可 能 性 が 高 い 。 ⑯ ﹃ 大 日 本 永 代 節 用 無 盡 蔵 ﹄︵ 嘉 永 年 間 刊 ︶ の ﹁ 世 界 萬 圀 之 圖 ﹂ ︵ 参 考 図 七 ︶ 本 図 は 前 述 の ﹃ 倭 節 用 集 悉 改 大 全 ﹄ の 世 界 図 と 同 様 な 図 で あ る 。 し か し 、 ﹃ 倭 節 用 集 悉 改 大 全 ﹄ の 図 と 比 較 し て み る と 、 本 図 の ほ う に は 多 少 の 相 違 点 が 見 ら れ る 。 そ の 一 つ は 、 本 図 の 楕 円 の 枠 外 に 説 明 文 が 付 い て い る こ と で あ る 。 左 上 の 文 は ﹁ 北 方 氷 海 ニ テ 船 不 通 ﹂ で 、 左 下 の 文 は ﹁ 南 方

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泥 海 ニ テ 船 不 通 故 ニ 此 ヲ 極 ム ル コ ト 能 ハ ズ ﹂ と あ り 、 北 と 南 の 海 を 通 る こ と が で き な い と わ か る 。 ま た 、 右 下 の 文 に は ﹁ 元 来 一 世 界 團 圓 ナ ル ヲ 以 テ 大 西 洋 此 地 ニ 合 ス 、 子 亦 丑 ニ 合 ス 、 此 理 ヲ 須 知 ス ル ト キ ハ ブ ラ シ ル ノ ホ ル ト ガ ル ノ 隣 国 ナ ル 事 明 ラ カ ニ 可 覧 ﹂ と あ り 、 地 球 が 丸 い と 知 ら さ れ る 。 こ の 点 で は 、 本 図 に 科 学 性 の 要 素 が よ り 明 確 に 表 現 さ れ て い る 。 六 八 ⑰ ﹃ 大 福 節 用 無 盡 蔵 ﹄ の ﹁ 世 界 萬 國 之 略 圖 ﹂ ︵ 参 考 図 八 ︶ 本 図 は 大 東 洋 ︵ 太 平 洋 ︶ を 中 心 に 亜 細 亜 ・ 北 亜 墨 利 加 ・ 南 亜 墨 利 加 ・ 墨 瓦 臘 泥 加 の 一 部 だ け が 描 か れ て い る 。 本 図 は 一 見 で わ か る よ う に 、 マ テ オ ー リ ッ チ 系 の 世 界 図 で あ る が 、 そ の 原 拠 と な っ た も の は 明 ら か で は な い 。 陸 地 は 色 分 け さ れ て い る 。 ア ジ ア は 薄 い 赤 、 墨 瓦 臘 泥 加 と ア ジ ア の 諸 島 は 黄 色 、 ア メ リ カ は 青 で あ る 。 興 味 深 い こ と は 、 日 本 が ア ジ ア と 異 な る 赤 色 で 染 ま っ て い る の で あ る 。 そ こ で 、 本 図 は ア ジ ア や 太 平 洋 地 域 に お け る ﹁ 日 本 ﹂ の 位 置 を 明 確 に す る た め に 作 成 さ れ た の で は な い か と 思 わ れ る 。 ⑱ ﹃ 江 戸 大 節 用 海 内 蔵 ﹄ の ﹁ 萬 國 大 概 之 図 ﹂ ︵ 参 考 図 九 ︶ 本 図 は 節 用 集 に お け る 最 初 の 東 西 両 半 球 図 で あ ろ う 。 ほ か の 節 用 集 の 世 界 図 と 同 様 に 太 平 洋 中 心 で あ る 。 ア メ リ カ 大 陸 は 東 半 球 と な り 、 そ の 他 は 西 半 球 と な っ て い る 。 本 図 の 原 拠 と な っ た も の は 次 の 三 図 だ と 思 わ れ る 。 東 ・ 西 半 球 の 位 置 や 度 付 き の 緯 線 の あ る こ と は 高 橋 景 保 の ﹃ 新 訂 万 国 全 図 ﹄ ︵ 文 化 七 年 ︹ 一 八 一 〇 ︺ 刊 ︶ と 類 似 し て い る 。 記 さ れ て い る 北 回 帰 線 ・ 南 回 帰 線 と 北 極 圏 ・ 南 極 圏 ︵ 本 図 で は こ の 二 つ が 名 称 な し ︶ や 書 か れ て い る 地 名 は 箕 作 省 吾 の ﹃ 新 製 輿 地 全 図 ﹄︵ 弘 化 四 年 ︹ 一 八 四 七 ︺ 刊 ︶ と 同 様 で あ る 。 大 陸 が 色 分 け さ れ て い る こ と は 、 栗 原 信 晁 の ﹃ 万 国 地 球 全 図 ﹄︵ 嘉 永 年 間 ︹ 一 八 四 八 ∼ 一 八 五 四 ︺ 刊 ︶ と 類 似 し て い る 。 本 図 は 両 半 球 図 で あ る た め 、 ま た 後 述 す る よ う に 伝 説 上 の 国 々 な ど が 見 ら れ な い た め 、 蘭 学 系 の 世 界 図 と 言 っ て よ か ろ う 。 そ れ は 前 述 し た 近 世 後 期 の 世 界 図 と 明 ら か に 異 な っ て い る 。 こ の 頃 に な っ て 、 節 用 集 の 作 者 た ち は ヨ ー ロ ッ パ か ら 入 っ て き た 新 し い 知 識 を 無 視 す る こ と が で き な く な っ て き た と 言 え る 。 ⑲ ﹃ 大 日 本 永 代 節 用 無 盡 蔵 ﹄︵ 文 久 四 年 刊 ︶ の ﹁ 輿 地 全 圖 ﹂ ︵ 参 考 図 十 ︶ 本 節 用 集 は 前 述 し た 嘉 永 年 間 刊 の ﹃ 大 日 本 永 代 節 用 無 盡 蔵 ﹄ の 再 刻 版 で あ る が 、 世 界 図 は そ れ と 違 う も の で あ る 。 図 形 や 地 名 な ど か ら す れ ば 、 本 図 の 原 拠 と な っ た も の は 箕 作 省 吾 の ﹃ 新 製 輿 地 全 図 ﹄ ︵ 弘 化 四 年 ︹ 一 八 四 七 ︺ 刊 ︶

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で あ る 。﹁ 輿 地 全 圖 ﹂ と い う 本 図 の 名 も こ の 二 つ の 図 の 関 係 を 物 語 る 。 本 図 は 東 西 両 半 球 図 で 、 見 開 き 二 面 で 度 付 き の 経 緯 線 が 付 い て い る 東 と 西 の 半 球 が 描 か れ て い る 。 空 白 に は 大 陸 ご と の 詳 し い 説 明 が あ る 。 ア ジ ア は 青 、 ヨ ー ロ ッ パ ・ 南 ア メ リ カ は 赤 、 ア フ リ カ ・ 北 ア メ リ カ は 黄 、 オ ー ス ト ラ リ ア は 樺 、 と い う よ う に 大 陸 は 色 分 け さ れ て い る 。 つ ま り 、 大 陸 が 六 つ あ る こ と が 強 調 さ れ て い る 。 前 図 と 本 図 は 両 半 球 図 で あ る が 、 庶 民 が そ の 意 味 を 理 解 し て い た か ど う か は 明 ら か で は な い 。 な ぜ な ら ば 、 幕 末 に お い て は 、 従 来 の マ テ オ ・ リ ッ チ 系 の 世 界 図 が 単 行 図 と し て 出 版 さ れ 続 け て お り 、 節 用 集 に も 挿 入 さ れ て い た の で あ る 。 し か し 、 他 方 で は 、 両 半 球 図 が 節 用 集 に 登 場 し た こ と は や は り 、 新 し い 知 識 が 庶 民 の 間 で 流 布 し 始 め た 証 拠 と な る の で は な い か と 思 わ れ る 。 以 上 で 、 八 つ の 近 世 後 期 の 世 界 図 は 様 々 な 資 料 を 原 拠 に し て 作 成 さ れ た 。 そ の 原 拠 と な っ た も の は 、 マ テ オ ・ リ ッ チ 系 の 世 界 図 も あ り 、 蘭 学 系 の 世 界 図 も あ る 。 特 に 文 久 年 間 に 節 用 集 に 両 半 球 図 が 現 れ た の は 画 期 的 と 言 っ て 差 し 支 え な い の で あ る 。 そ れ は 庶 民 の 新 し い 知 識 と の 接 触 の 第 一 歩 だ っ た か ら で あ る 。 六 九 二 、﹁ 世 界 ﹂ 観 の 変 容 近 世 節 用 集 の 世 界 図 は 様 々 な 資 料 を 原 拠 に し て 作 成 さ れ た が 、 厳 密 に 原 図 に 沿 っ た も の で は な い 。 そ れ 故 に 、 節 用 集 の 世 界 図 に 表 現 さ れ て い る 空 間 認 識 も 原 図 の そ れ と 一 致 し て い る と は 言 え な い 。 そ こ で 、 以 下 で は 節 用 集 の 世 界 図 に 見 ら れ る 空 間 認 識 を 考 察 す る 。 ま ず は 、 ﹁ 世 界 ﹂ に 対 す る 認 識 が 如 何 な る も の で あ っ た か を 、 世 界 図 の 全 体 的 な 描 写 か ら 見 る 。 な お 、 本 節 と 次 節 に 述 べ る 世 界 図 に 表 現 さ れ る 空 間 認 識 は 地 理 的 な ﹁ 世 界 ﹂ に 限 定 し 、 仏 教 系 の 世 界 図 で あ る ﹁ 須 弥 山 図 ﹂ に つ い て は 論 じ な い こ と に す る 。 二 ︲ 一 、 ﹁ 世 界 ﹂ 全 体 に 対 す る 認 識 節 用 集 の 世 界 図 の 多 く は 楕 円 ︵ 卵 形 図 ︶ あ る い は 円 ︵ 両 半 球 図 ︶ の 形 で 描 か れ て い る 。 そ れ は 地 球 が 丸 い こ と を 思 わ せ る が 、 は っ き り そ の よ う に 書 か れ て い る の は ﹃ 大 日 本 永 代 節 用 無 盡 蔵 ﹄ ︵ 嘉 永 年 間 刊 ︶ の 世 界 図 の 右 下 の 枠 外 の 説 明 ︵ ﹁ 元 来 一 世 界 團 圓 ナ ル ︵ 後 略 ︶ ﹂ ︶ に だ け で あ る 。 そ の た め 、 庶 民 は 地 球 が 丸 い と い う 認 識 を 本 当 に 持 っ て い た か ど う か 、 断 言 し 難 い 。 ﹁ 世 界 ﹂ を 囲 む 楕 円 ・ 円 を 単 な る 装 飾 と し て 見 て い た 可 能 性 が あ り 得 る の で あ る 。 あ る い は 、 ﹁ 世 界 ﹂ を 平 ら な 円 盤 と し て 捉 え た の か も し れ な い 。

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七 〇 い ず れ の 世 界 図 は ア ジ ア ︵ 日 本 ︶ を 中 心 に 描 か れ て い る 。 そ れ は 中 国 で 中 国 人 の た め に 作 成 さ れ た た め 、 ヨ ー ロ ッ パ の 地 図 と 違 っ て ア ジ ア を 中 心 に 作 ら れ た マ テ オ ・ リ ッ チ の ﹃ 坤 輿 万 国 全 図 ﹄ に 由 来 し て い る の で あ ろ う 。 し か し 、 そ れ だ け は 説 明 に な ら な い 。 前 述 に も 触 れ た よ う に 、 近 世 日 本 に お い て は 日 本 人 の ﹁ 世 界 ﹂ 像 が 新 た に 展 開 し た 。 従 来 は 、 ﹁ 日 本 ﹂ 国 が 中 国 や 天 竺 と 並 ん で 三 国 関 係 に 位 置 づ け ら れ て 認 識 さ れ て い た が 、 そ の 位 置 づ け は 三 国 か ら な る ﹁ 世 界 ﹂ の 果 て ・ 辺 境 で あ り 、 あ る い は 三 国 と 並 び う る 同 様 な 位 置 づ け を 持 つ も の ︵ 南 瞻 部 州 の 一 国 ︶ で あ っ た 。 い ず れ の 場 合 も 、 ﹁ 世 界 ﹂ の 中 心 は 天 竺 に お か れ た 。 た だ し 、 ﹁ 日 本 ﹂ が 南 瞻 部 州 の 一 国 と し て 認 識 さ れ た 場 合 は 、 た と え ﹁ 世 界 ﹂ の 中 心 が ﹁ 日 本 ﹂ で は な い と し て も 、 ﹁ 日 本 ﹂ 国 は 他 国 よ り 優 れ て い る 国 だ 、 神 国 だ と い う 認 識 が 強 か っ た 。 そ れ は た び た び 中 世 の 文 献 に 見 ら れ る ﹁ 南 瞻 部 州 大 日 本 国 ﹂ と い う ﹁ 日 本 ﹂ 国 名 か ら 窺 わ れ る 。 近 世 に な る と 、 中 世 的 な ﹁ 日 本 = 神 国 ﹂ 認 識 は 中 国 か ら も た ら さ れ た 世 界 図 ︵ ア ジ ア を 中 心 に し た も の ︶ と 結 ば れ て 、 ﹁ 日 本 ﹂ は ﹁ 世 界 ﹂ の 中 心 だ と い う 認 識 が 生 ま れ て き た 。 こ の よ う な 認 識 は 節 用 集 の 世 界 図 か ら も 窺 わ れ る の で あ る 。 さ て 、 ﹁ 世 界 ﹂ の 中 心 に ﹁ 日 本 ﹂ 国 が 位 置 づ け ら れ て い る の で あ れ ば 、 そ の 周 辺 の ﹁ 世 界 ﹂ は ど の よ う な も の で あ る か 、 を 次 に 見 る 。 近 世 節 用 集 に 出 て く る 世 界 図 に は 特 殊 な 三 例 ︵ ﹁ 日 本 ﹂ を 中 心 と し た 世 界 の 一 部 分 を 描 い た ﹃ 増 補 童 子 字 盡 ﹄ の ﹁ 地 球 圖 ﹂ 、 旧 大 陸 図 で あ る ﹃ 都 会 節 用 百 家 通 ﹄ の ﹁ 世 界 萬 國 之 圖 ﹂ 、 太 平 洋 の み が 描 か れ て い る ﹃ 大 福 節 用 無 盡 蔵 ﹄ の ﹁ 世 界 萬 國 之 略 図 ﹂ ︶ を 除 け ば 、 ア ジ ア ・ ヨ ー ロ ッ パ ・ ア フ リ カ ・ ア メ リ カ ・ メ ガ ラ ニ カ と い う 五 大 州 ︵ あ る い は ア メ リ カ を 南 北 に 分 け て 六 大 州 ︶ が 描 か れ て い る 。 近 世 に お い て は 、﹁ 世 界 ﹂ が 五 大 州 ︵ 六 大 州 ︶ に ま で 広 が っ て き た 。 し か し 、 一 般 庶 民 は 本 当 に ﹁ 世 界 ﹂ を 五 大 州 ︵ 六 大 州 ︶ と し て 認 識 し て い た の か 。 中 期 の 世 界 図 を 見 る と 、 大 州 が は っ き り と 区 別 さ れ て い な い こ と に 気 付 く 。 さ ら に 、 ほ か の 国 名 と 並 ん で ﹁ ゑ う ろ は ﹂¬ あ じ や ﹂¬ あ ひ り か ﹂¬ あ め り か ﹂ と い う も の も 出 て く る 。 し た が っ て 、 ヨ ー ロ ッ パ ・ ア ジ ア ・ ア フ リ カ ・ ア メ リ カ は 大 州 で は な く 、 そ れ ぞ れ 一 つ の 国 と し て 認 識 さ れ て い た と 思 わ れ る 。 近 世 後 期 に な っ て も 、 こ の よ う な 認 識 が ま だ 残 っ て い た の で あ る 。 そ れ は 、﹃ 日 本 節 用 万 歳 蔵 ﹄ や ﹃ 都 会 節 用 百 家 通 ﹄ の 世 界 図 か ら 窺 わ れ る 。 前 者 に は 中 期 の 世 界 図 と 同 様 に ﹁ ゑ う ろ は ﹂ ﹁ あ し あ ﹂ の 国 名 が 見 ら れ る が 、 後 者 は 大 州 区 分

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け が 全 く 示 さ れ て お ら ず 、 ヨ ー ロ ッ パ ー ア ジ ア ー ア フ リ カ は 一 つ の 陸 地 と し て 描 か れ て い る だ け で あ る 。 他 方 、 近 世 後 期 の 世 界 図 の 内 、 蘭 学 系 の 図 ︵ 前 節 の 世 界 図 一 覧 で の ⑭ ⑮ ⑯ ⑱ ⑲ ︶ や 幕 末 に 刊 行 さ れ た マ テ オ ー リ ッ チ 系 の 図 ︵ ⑰ ︶ は 大 州 が 太 い 線 や 色 分 け で は っ き り と 区 別 さ れ た り 、 大 州 名 が 大 き く 書 か れ た り す る 。 し た が っ て 、 近 世 後 期 に は 、 ﹁ 世 界 ﹂ が 五 大 州 ︵ 六 大 州 ︶ か ら な る と い う 認 識 は 次 第 に 流 布 し て い っ た 。 し か し 、 こ の よ う な 認 識 は ま だ 定 着 し た と は 言 え な い 。 な ぜ な ら ば 、 近 世 日 本 に お い て は 、 幕 末 に 至 る ま で 、 そ れ ぞ れ の 国 か ら 異 国 人 が 来 て も 、 彼 ら を 単 な る ﹁ 異 人 ﹂︵ = 自 己 た る 日 本 人 で は な い も の ︶ と 見 て い た か ら で あ る 。 七 一 二 ︲ 二 、 ﹁ 世 界 ﹂ の 諸 地 域 に 対 す る 認 識 近 世 日 本 に お い て は ﹁ 世 界 ﹂ が 地 球 規 模 ま で 広 か っ た と は い っ て も 、 当 時 の 一 般 庶 民 に と っ て は 、 統 一 し た も の で は な か っ た 。 ま ず 、 ﹁ 世 界 ﹂ は 中 心 な る ﹁ 日 本 ﹂ 国 と そ れ 以 外 の ﹁ 世 界 ﹂ か ら な る 。 そ し て 、 ﹁ 日 本 ﹂ 以 外 の ﹁ 世 界 ﹂ は 従 来 の 三 国 世 界 観 を 構 成 す る 中 国 ・ イ ン ド や 従 来 か ら 知 ら れ た 朝 鮮 と 、 近 世 に な っ て 新 し く 出 会 え た ﹁ 世 界 ﹂ ︵ ヨ ー ロ ッ パ を 中 心 に ︶ に 大 別 で き る 。 前 者 は 古 代 か ら 知 ら れ た い わ ゆ る ﹁ 旧 世 界 ﹂ で あ り 、 後 者 は 新 し く 知 ら れ る よ う に な っ た ﹁ 新 世 界 ﹂ で あ る 。 こ の よ う な ﹁ 世 界 ﹂ の 三 つ の 部 分 ︱ 中 心 な る ﹁ 日 本 ﹂・﹁ 旧 世 界 ﹂ ・ ﹁ 新 世 界 ﹂ ︱ は ど の よ う に 描 か れ て 認 識 さ れ て い た の か 。 ア 、 ﹁ 日 本 ﹂ 周 辺 の 描 か れ 方 ﹁ 日 本 ﹂ 国 は ﹁ 世 界 ﹂ の 中 心 と 認 識 さ れ た の で 、 そ の 周 辺 の 描 か れ 方 が か な り 詳 細 に な る の は 当 然 で あ る 。 ほ と ん ど の 図 に は 、 ﹁ 日 本 ﹂ ︵ ま た は ﹁ 大 日 本 ﹂ ︶ ﹁ 九 州 ﹂ ﹁ 四 国 ﹂ と い う 本 土 や 、 そ の 南 に は ﹁ 琉 球 ﹂ 、 北 に は ﹁ 蝦 夷 ﹂ と い う 日 本 国 家 の 範 囲 に 入 っ て い る 二 つ の 異 域 が 描 か れ て い る 。 ま た 、 特 に 近 世 後 期 の 世 界 図 に は ﹁ 佐 渡 ﹂¬ 隠 岐 ﹂¬ 壱 岐 ﹂¬ 対 馬 ﹂ ¬ 淡 路 ﹂ の 日 本 の 六 十 八 州 に 入 っ て い る も の や ﹁ 八 丈 島 ﹂ が よ く 見 ら れ る 。 こ の 島 々 は 日 本 国 家 の 境 界 と し て 認 識 さ れ て い た 。 こ の よ う な 境 界 な る 地 域 は ﹁ 内 ﹂ ︵ ﹁ 日 本 ﹂ 国 ︶ と ﹁ 外 ﹂ ︵ 異 域 ・ 異 国 ︶ を 分 け る 領 域 で あ り な が ら 、 あ る 意 味 で ﹁ 内 ﹂ と ﹁ 外 ﹂ を 結 ぶ 役 割 を 果 た す も の ︵ 交 流 ・ 交 易 の 場 ︶ で も あ る 。 ま た 、 こ の よ う な 境 界 は 曖 昧 な 性 格 を も つ も の で あ る 。 言 い 換 え れ ば 、 ﹁ ど ち ら の 領 域 で も あ り 、 ど ち ら の 領 域 で も な い ﹂ 両 義 的 な 地 域 で あ る 。 こ の よ う に 、 節 用 集 の 世 界 図 に は 、 ﹁ 日 本 ﹂ と い う 国 家

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の 境 界 内 に あ る も の が 表 現 さ れ て お り 、 両 義 性 を も つ 境 界 領 域 が 記 さ れ て お り 、 そ し て 北 に は ﹁ 蝦 夷 ﹂ ﹁ カ ラ フ ト ﹂ ﹁ 千 島 列 島 ﹂ 、 南 に は ﹁ 琉 球 ﹂ と い う 異 域 が 置 か れ た 。 七 二 イ 、 ﹁ 旧 世 界 ﹂ の 描 か れ 方 ﹁ 旧 世 界 ﹂ を な す 国 は 中 国 ・ 天 竺 ︵ イ ン ド ︶ と 朝 鮮 で あ る 。 朝 鮮 に 関 し て 言 え ば 、 近 世 中 期 の 世 界 図 に は ﹁ か う ら い ﹂ と 、 後 期 の 図 に は ﹁ 朝 鮮 ﹂ と い う よ う に 国 名 が 書 か れ て い る 。 実 際 、 ﹁ か う ら い ︵ 高 麗 ︶ ﹂ と い う 国 名 は 近 世 後 期 に も 一 般 的 に 使 わ れ て い た 。 ま た 、 朝 鮮 半 島 は 古 代 ・ 中 世 に は 中 国 の 属 国 と 認 識 さ れ 、 近 世 に は 日 本 型 華 夷 秩 序 の 枠 組 み に お か れ て い た 。 つ ま り 、 朝 鮮 半 島 は ﹁ 日 本 ﹂ 国 と 並 べ る 国 と し て 認 識 さ れ て い な か っ た 。 そ の た め 、 こ こ で は そ れ に つ い て 論 じ な い こ と に す る 。 他 方 、 従 来 の 仏 教 系 世 界 観 ・ 三 国 世 界 観 を 構 成 し た 中 国 や 天 竺 に 対 す る 認 識 は ど の よ う な も の で あ っ た の か 。 古 代 ・ 中 世 で は 中 国 や 天 竺 が あ こ が れ の 対 象 で あ り 、 小 国 ・ 粟 散 辺 土 で あ る ﹁ 日 本 ﹂ と 比 べ て 大 国 と し て 認 識 さ れ て い た が 、 近 世 に な る と そ の 認 識 が 変 わ っ て い っ た 。 以 下 で は 、 近 世 中 期 ・ 後 期 の 世 界 図 に お け る 中 国 と 天 竺 ︵ イ ン ド ︶ に 対 す る 認 識 の 変 容 を 見 る 。 (1) 中 国 中 国 周 辺 の 描 写 は か な り 詳 細 で あ る 。 中 国 の 国 名 だ け で な く 、 都 市 名 や 省 名 も 書 か れ て あ る が 、 そ れ は お そ ら く 、 そ れ ぞ れ の 世 界 図 の 作 者 が そ の 原 図 か ら た ま た ま 選 ん だ 地 名 に す ぎ な い と 思 わ れ る 。 他 方 、 中 国 の 国 名 に 注 目 が 必 要 で あ る 。 中 期 の 世 界 図 に は 例 外 な く ﹁ 大 明 ﹂ と 書 か れ て い る が 、 後 期 の 図 に は 国 名 が 書 か れ て い な い ﹃ 都 会 節 用 百 家 通 ﹄ と ﹃ 大 福 節 用 無 盡 蔵 ﹄ の 世 界 図 を 除 け ば 、 ﹁ 大 明 ﹂ ﹁ 支 那 ﹂ ﹁ 漢 土 ﹂ と い う 三 つ の バ リ エ ー シ ョ ン が 見 ら れ る 。 い ず れ も 当 時 の 中 国 の 国 号 で は な い 。 ﹁ 清 ﹂ と い う 国 号 は ﹃ 大 成 無 雙 節 用 集 ﹄ の 世 界 図 に し か 見 え ず 、 そ れ も ﹁ 支 那 今 清 也 ﹂ の よ う に 注 記 と し て 現 れ て く る 。 さ ら に 、 留 意 し た い の は 、 ﹃ 倭 節 用 集 悉 改 大 全 ﹄ の 世 界 図 ︱ と そ れ と 同 様 な ﹃ 大 日 本 永 代 節 用 無 盡 蔵 ﹄ ︵ 嘉 永 年 間 刊 ︶ の 図 ︱ の ﹁ 支 那 ﹂ が 原 図 に 従 っ た も の で は な い 。 こ の よ う に 、 庶 民 向 け の 節 用 集 の 世 界 図 に は ﹁ 清 ﹂ と い う 当 時 の 中 国 の 国 号 が 避 け ら れ た よ う に 見 え る 。 世 界 図 に 書 か れ た の は 、 従 来 の ﹁ 大 明 ﹂ や 一 般 的 な ﹁ 漢 土 ﹂ や 蘭 学 者 の 使 わ れ た ﹁ 支 那 ﹂ で あ る 。 一 般 庶 民 の 間 で は 、 中 国 = 清 と い う 認 識 が 薄 か っ た よ う で あ る 。 少 な く と も 節 用 集 の 世 界 図 か ら 中 国 = 清 と い う 認 識 は 読 み と れ な い 。 そ の 原 因

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の 一 つ は ﹁ 世 界 ﹂ の 描 か れ た 図 に 焦 点 が ﹁ 日 本 ﹂︵ ﹁ 大 日 本 ﹂ ︶ に お か れ て い た こ と に あ る の で は な い か と 思 わ れ る 。 七 三 ︵2 ︶ イ ン ド 周 辺 近 世 中 期 の 世 界 図 に は イ ン ド 周 辺 が 粗 略 に 描 か れ て お り 、 そ こ の 地 名 も 書 か れ て い な い 場 合 も あ る 。 地 名 の あ る 世 界 図 に は 、 短 冊 形 の 枠 で 囲 ん で 記 載 さ れ て い る ﹁ か な り ん ﹂︵ イ ン ド 中 部 ︶ 、 そ の 隣 に ﹁ い ん ち あ ﹂ 、 イ ン ド の 南 方 に ﹁ ま ら は る ︵ マ ラ バ ル ︶ ﹂︵ 図 に よ っ て は ﹁ ま か ら す ﹂ ︶ な ど と あ る 。 こ の よ う な 近 世 中 期 の 世 界 図 は そ の 原 図 で あ る ﹃ 万 国 総 図 ﹄ と 同 様 に イ ン ド を ﹁ か な り ん ﹂ と よ ん で い る 。 そ の 名 は 何 に 由 来 し て い る の か 明 ら か で は な い が 、 そ の 隣 に 書 か れ て い る ﹁ い ん ち あ ﹂ と あ わ せ て 考 え れ ば 、 こ こ は イ ン ド に 違 い な い と わ か る 。 興 味 深 い こ と に 、 中 期 の 世 界 図 に は 天 竺 も 五 天 竺 も 一 切 見 ら れ な い 。 他 方 、 近 世 後 期 の 世 界 図 に は 、 イ ン ド 周 辺 に ﹁ 印 度 ﹂ ﹁ モ ウ ル ︵ ム ガ ル 帝 国 ︶ ﹂ ﹁ イ ン デ ヤ ﹂ な ど の 多 数 の 地 名 が 書 か れ て い る 。 さ ら に 、 こ の 三 つ に 加 え て 従 来 の ﹁ 天 竺 ﹂ も 姿 を 表 し て い る 。﹁ 天 竺 ﹂ と い う 地 名 こ そ が 書 か れ て い な い が 、 イ ン ド 周 辺 の 国 々 の 位 置 が 五 天 竺 に よ っ て 定 め ら れ て い る こ と か ら 、 こ の 辺 は 天 竺 だ と わ か る 。 こ の ﹁ 天 竺 ﹂ ︵ 五 天 竺 の か た ち で ︶ の 登 場 は 近 世 中 期 の 世 界 図 と 比 べ る と 、 中 世 的 な 世 界 観 ・ 仏 教 系 世 界 観 へ の 退 歩 に 見 え る 。 し か し 、 後 期 の 図 に は ﹁ 天 竺 ﹂ と い う 国 名 が 見 ら れ な い こ と か ら 、 仏 教 系 世 界 観 は 縁 遠 い も の に な っ て き た こ と が わ か る 。 お そ ら く 中 期 の 図 に 記 載 さ れ た ﹁ か な り ん ﹂ ﹁ い ん ち あ ﹂ な ど が 何 な の か は 庶 民 に 理 解 し 難 い こ と で あ っ た 。 そ れ 故 に 、 近 世 後 期 の 節 用 集 の 作 者 は 庶 民 に わ か り や す く す る た め に 、 従 来 の 天 竺 に あ る 国 々 を 五 天 竺 と 合 わ せ た と 考 え ら れ る 。 他 方 、 文 久 年 間 ︵ 一 八 六 一 ∼ 一 八 六 四 ︶ に な っ て 、 五 天 竺 の 記 述 は 一 切 見 ら れ な く な り 、 完 全 に 仏 教 系 世 界 観 と 無 関 係 と な っ て い た 。 こ こ で 留 意 し た い の は 、 近 世 中 期 に は ﹁ か な り ん ﹂ ﹁ ま ら は る ﹂ な ど 、 後 期 に は ﹁ モ ウ ル ﹂ ﹁ 印 度 ﹂ な ど の よ う に 、 現 在 の イ ン ド に あ た る 地 名 が い く つ か 書 か れ て い る こ と で あ る 。 実 際 は い ず れ も 同 じ 国 、 イ ン ド を 指 す 歴 史 地 名 で あ る が 、 近 世 庶 民 の 間 で は 別 々 の 国 と 認 識 さ れ て い た の で あ る 。 世 界 図 を 見 る と 、 従 来 の 天 竺 の 空 間 は 大 き く 二 つ に 分 か れ て お り 、 北 は ﹁ か な り ん ﹂ あ る い は ﹁ モ ウ ル ﹂ で 、 南 は ﹁ ま ら は る ﹂ あ る い は ﹁ 印 度 ﹂ と し て 描 写 さ れ て い る 。 そ れ に 加 え て 、 イ ギ リ ス の 植 民 地 化 と て も 表 す ヨ ー ロ ッ パ 諸 言 語 風 の ﹁ い ん ち あ ﹂ ¬ イ ン デ ヤ ﹂︵India ︶ が 記 さ れ て い る 。 他 方 、 文 久 年 間 頃 か ら 、 イ ン ド 周 辺 に は 一 つ だ け の 地 名 、

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﹁ 印 度 ﹂ が 書 か れ る よ う に な っ た 。 そ れ は 文 久 年 間 に は ﹁ 印 度 ﹂ が 一 つ の 統 一 し た 国 だ と い う 認 識 が 発 達 し て き た か ら だ と 思 わ れ る 。 こ の よ う に 、 節 用 集 の 世 界 図 に は イ ン ド 観 の 展 開 を 見 る こ と が で き る 。 従 来 の ﹁ 天 竺 ﹂ か ら 、 ﹁ 印 度 ﹂ ﹁ モ ウ ル ﹂ や 五 天 竺 と 合 わ せ た 周 辺 の 国 々 の 描 写 と い う 過 渡 的 な 段 階 を 経 て 、 統 一 し た ﹁ 印 度 ﹂ に 至 る と い う こ と で あ る 。 七 四 ウ 、﹁ 新 世 界 ﹂ の 描 か れ 方 近 世 日 本 に お い て は 、 ﹁ 世 界 ﹂ に 対 す る 認 識 は 大 き く 展 開 し た の で あ る 。 そ の 展 開 と は ま ず 、 ヨ ー ロ ッ パ 人 の 来 日 に 伴 っ た ﹁ 世 界 ﹂ の 拡 大 で あ る 。 以 上 に も 述 べ た よ う に 、 ﹁ 世 界 ﹂ は 従 来 の 日 本 ・ 中 国 ・ 天 竺 ︵ イ ン ド ︶ と い う 三 国 を 中 心 と し た も の か ら 五 大 州 か ら な る も の へ 拡 大 し て い っ た 。 そ の 五 大 州 が ど の よ う に 認 識 さ れ て い た の か は 興 味 深 い が 、 こ こ で は 特 に 交 流 ・ 交 易 の 多 か っ た ヨ ー ロ ッ パ に 対 す る 認 識 の 検 討 に 限 定 す る 。 節 用 集 の 世 界 図 を 見 る と 、 数 多 く の ヨ ー ロ ッ パ の 地 名 が 見 ら れ る 。 し か し 、 ヨ ー ロ ッ パ と い え ば 、 近 世 初 期 と 幕 末 の 二 つ の 時 期 を 除 け ば 、 日 本 が 交 流 し た 唯 一 の ヨ ー ロ ッ パ の 国 、 オ ラ ン ダ で あ る 。 オ ラ ン ダ は い ず れ の 世 界 図 に も 見 ら れ る 。 交 易 の あ る 唯 一 の ヨ ー ロ ッ パ の 国 の 位 置 を 示 す こ と は 原 則 だ っ た の か も し れ な い 。 ヨ ー ロ ッ パ は ど こ な の か 、 そ の 内 の オ ラ ン ダ は ど こ な の か 、 世 界 図 か ら 明 確 で あ る 。 当 然 の こ と に 、 世 界 図 の ヨ ー ロ ッ パ が オ ラ ン ダ を 中 心 に 描 か れ て い る の で は な い 。 例 え ば 、 イ タ リ ア ︵ ほ と ん ど の 世 界 図 で は ﹁ い た り や ﹂ ︶ や ド イ ツ ︵ 世 界 図 で は ﹁ せ る ま に や ﹂ あ る い は ﹁ ど い つ ら ん ど ﹂ ︶ や ス ウ ェ ー デ ン ︵ 世 界 図 で は ﹁ す う ゑ て ん ﹂ ﹁ す う ゑ ち や ﹂ ︶ な ど の よ う に 、 オ ラ ン ダ の ほ か に も い ず れ の 世 界 図 に 出 て く る 国 名 が あ る 。 し か し 、 近 世 日 本 に お い て は 、 特 に 庶 民 の 間 で は 、 あ る 意 味 で ヨ ー ロ ッ パ = オ ラ ン ダ だ っ た の で は な い か と 思 わ れ る 。 そ れ は 、 近 世 初 期 に は ポ ル ト ガ ル 人 や ス ペ イ ン 人 を ﹁ 天 竺 人 ﹂ ︵ = 三 国 世 界 観 で は 日 本 か ら 見 て 最 も 遠 い 国 、 天 竺 か ら 来 た 人 ︶ と 同 一 し て 呼 ぶ こ と 、 あ る い は 後 に ヨ ー ロ ッ パ 人 を 区 別 な く ﹁ 南 蛮 人 ﹂ ︵ = 南 ︹ ヨ ー ロ ッ パ か ら 東 南 ア ジ ア 経 由 で ︺ か ら 来 た 人 ︶ と 呼 ぶ こ と と 同 様 な 論 理 で 起 こ っ た 現 象 で あ ろ う 。 つ ま り 、 見 知 ら ぬ 世 界 か ら や っ て き た 者 を 既 知 の も の と 合 わ せ て 考 え る と い う こ と で あ る 。 三 、 伝 説 上 の 国 ・ 地 域 の 描 写 前 節 で は 、 世 界 図 に 描 か れ て い る ﹁ 世 界 ﹂ が ど の よ う に 認 識 さ れ て い た の か に つ い て 、 い く つ か の 点 に 注 目 し な が ら 述 べ た 。 言 い 換 え れ ば 、 前 節 に 見 て き た ﹁ 世 界 ﹂ は 、 多

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少 は 違 う も の の 、 現 在 で も 我 々 が 認 識 し て い る も の で あ る 。 し か し 、 近 世 日 本 に お い て ︱ さ ら に い え ば 前 近 代 に お い て ︱ は 、 ﹁ 世 界 ﹂ は そ れ だ け で は な か っ た の で あ る 。 前 近 代 の ﹁ 世 界 ﹂ は 伝 説 上 の 国 や 地 域 を も 、 ま た 目 に 見 え な い 空 間 を も 含 む も の で あ る 。 い ず れ の 存 在 も 庶 民 の 間 で 実 際 に 信 じ ら れ て い た の で あ る 。 例 え ば 、 後 者 の 目 に 見 え な い 空 間 で あ る 。 そ れ は 妖 怪 や カ ミ な ど の い る 他 界 で あ り 、 世 界 図 で 表 さ れ て い る こ の 世 の ど こ か と つ な が っ て い る と 信 じ ら れ て い た も の で あ る 。 一 例 と し て は 、 司 馬 江 漢 の ﹃ 西 遊 日 記 ﹄︵ 天 明 八 年 ︹ 一 七 八 八 ︺ ∼ 天 明 九 年 ︹ 一 七 八 九 ︺ ま で の 出 来 事 が 記 さ れ て い る 日 記 ︶ か ら の 記 述 を 挙 げ る こ と が で き る 。 天 明 八 年 八 月 十 一 日 の 日 付 に 次 の よ う な こ と が 書 い て あ る 。 江 漢 が 世 界 図 ︵ お そ ら く 両 半 球 図 で あ ろ う ︶ を 一 般 庶 民 に 見 せ て そ れ に つ い て 説 明 し た 。 そ の 時 一 人 の 女 性 は 、 お 釈 迦 様 の い る 天 竺 に つ い て 承 知 し た が 、 極 楽 と い う 所 が ど こ な の か 教 え て く だ さ い 、 と 本 気 で 聞 い た 。 こ の 女 性 こ そ は 近 世 庶 民 の 一 人 で あ り な が ら 、 庶 民 全 休 を も 表 し て い る の で あ る 。 も ち ろ ん 、 庶 民 の 一 人 ひ と り に は 個 人 差 が あ ろ う が 、 目 に 見 え な い 存 在 ・ 空 間 を 本 当 に 信 じ る こ と 、 ま た そ の 目 に 見 え な い 空 間 が こ の 世 の ど こ か と つ な が っ て い る と 信 じ る こ と は 庶 民 の 心 理 で あ る 。 あ る い は 、 伝 説 上 の 地 域 や 国 な ど も 同 様 で あ る 。 た だ し 、 こ の 伝 説 上 の 地 域 な ど は 目 に 見 え な い 空 間 と 違 っ て 世 界 図 に 姿 を 表 し て い る の で あ る 。 以 下 で は 、 こ れ ら の 地 域 や 国 に 注 目 し て 節 用 集 の 世 界 図 に 表 現 さ れ て い る 空 間 認 識 を 検 討 す る 。 様 々 な 伝 説 に 基 づ い て い る 空 間 は 二 つ に 大 別 で き る 。 一 つ は 従 来 伝 説 上 の も の で あ っ た が 、 時 代 と 共 に 現 存 す る も の と 重 な っ て も と も と の 伝 説 か ら 切 り 離 さ れ た も の で あ る 。 そ の 一 例 は 南 方 大 陸 で あ る 。 も う 一 つ の 伝 説 上 の 空 間 と は 、 伝 説 の ま ま に 終 わ り 、 知 識 拡 大 と 共 に そ の 姿 を 消 し た も の で あ る 。 七 五 ア 、 南 方 大 陸 近 世 日 本 に お い て 南 方 大 陸 に つ い て 知 ら れ た の は お そ ら く 、 ヨ ー ロ ッ パ か ら の 世 界 知 識 と 出 会 っ て か ら で あ ろ う 。 南 方 大 陸 ︱ 後 に ポ ル ト ガ ル の 航 海 者 で あ る マ ゼ ラ ン に ち な ん で ﹁ マ ガ ラ ニ カ ﹂ ︵ ﹁ メ ガ ラ ニ カ ﹂ と も ︶ ︱ の 存 在 は 古 代 ギ リ シ ア の 地 図 な ど に 出 て く る の で 、 昔 か ら 信 じ ら れ て い た 。 古 代 ・ 中 世 日 本 に お い て は 当 時 の 世 界 観 が 三 国 を 中 心 と し た も の で あ る た め 、 南 方 大 陸 の こ と が 近 世 ま で に 知 ら れ な か っ た の で あ ろ う 。 近 世 に な る と 、 南 方 大 陸 の こ と は 知 識 拡 大 と 共 に 次 第 に 、 未 知 の ﹁ メ ガ ラ ニ カ ﹂︵ マ テ オ ーリ ッ

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チ 系 の 世 界 図 ︶ か ら ﹁ 新 阿 蘭 陀 ﹂ ・ オ ー ス ト ラ リ ア ︵ 蘭 学 系 の 世 界 図 、 両 半 球 図 ︶ に 変 わ っ て い っ た の で あ る 。 さ て 、 近 世 中 期 ・ 後 期 の 節 用 集 の 世 界 図 で は 、 南 方 大 陸 が ど の よ う に 描 か れ て い た の か 。 南 方 大 陸 の 名 称 は 文 久 年 間 ︵ 一 八 六 一 ∼ 一 八 六 四 ︶ を 境 に 、 ﹁ メ ガ ラ ニ カ ﹂ か ら ﹁ 新 阿 蘭 陀 ﹂ ・ オ ー ス ト ラ リ ア に 変 わ っ た 。 ま た 、 節 用 集 の 世 界 図 に お け る 南 方 大 陸 の 描 か れ 方 や そ れ を 伴 う 説 明 文 か ら は 、 南 方 大 陸 の 発 見 や 探 検 の 歴 史 が 読 み と れ る 。 ま ず 、 南 方 大 陸 の 存 在 は 昔 か ら 信 じ ら れ て い て も 、 そ の 詳 細 は 不 明 の ま ま で あ っ た 。 近 世 中 期 の 世 界 図 や ﹃ 日 本 節 用 万 歳 蔵 ﹄ の 図 に 出 て く る ﹁ 是 よ り 南 方 地 人 有 少 、 ゆ へ つ ま び ら か な ら す 、 人 物 い か ん ﹂ と い う 説 明 文 は そ れ を 表 し て い る 。 次 に 、 オ ラ ン ダ の 探 検 家 の 調 査 に よ っ て 未 知 の 南 方 大 陸 が ﹁ 新 阿 蘭 陀 ﹂ と 名 づ け る よ う に な る 。 そ れ は ﹃ 都 会 節 用 百 家 通 ﹄ の 世 界 図 に 出 て く る ﹁ 新 阿 蘭 陀 、 ヲ ラ ン ダ 人 近 代 此 所 ヲ ウ バ フ ト 云 ﹂ の 説 明 文 か ら 窺 わ れ る 。 次 の 段 階 と し て は 、 ﹃ 倭 節 用 集 悉 改 大 全 ﹄ と ﹃ 大 日 本 永 代 節 用 無 盡 蔵 ﹄ ︵ 嘉 永 年 間 刊 ︶ の 世 界 図 が あ げ ら れ る 。 そ こ に は ﹁ メ ガ ラ ニ カ ﹂ と い う 大 陸 名 が 残 り な が ら も 、 そ の 大 陸 の 形 が 従 来 と 違 っ て 現 在 の オ ー ス ト ラ リ ア を 思 わ せ る も の に 変 わ っ て く る 。 最 後 に 、﹃ 江 戸 大 節 用 海 内 蔵 ﹄ と ﹃ 大 日 本 永 代 節 用 無 盡 蔵 ﹄ ︵ 文 久 四 年 刊 ︶ の 世 界 図 に は 完 全 に 現 在 の オ ー ス ト ラ リ ア の 形 に な り 、 そ の フ ラ ン ス 語 流 の 地 名 、 ﹁ ア ウ ス ト ラ リ イ ﹂ ま で 記 載 さ れ る よ う に な る 。 そ し て 、 ﹃ 大 日 本 永 代 節 用 無 盡 蔵 ﹄ ︵ 文 久 四 年 刊 ︶ の 世 界 図 に あ る 説 明 文 に は 、 樺 豪 斯 多 辣 里 州 此 國 ハ 南 大 海 中 亜 細 亜 ノ 東 亜 墨 利 加 ノ 西 ニ 在 テ 、 其 地 ヲ 占 ス ル コ ト 一 百 一 十 一 度 ヨ リ 横 ハ 七 十 度 ニ 至 ル 、 其 中 間 ニ 新 和 蘭 國 ヲ 巨 大 邦 上 ト ナ シ 、 其 外 無 数 ノ 島 ア リ 、 歐 邏 巴 全 州 ニ 較 フ レ ハ 更 ニ 廣 大 也 、 東 ニ 大 山 脈 ア リ 、 南 北 ノ 海 岸 断 富 千 尺 ニ シ テ 舶 寄 ル コ ト ア タ ハ ス 、 故 ニ 其 内 理 ヲ 詳 ニ 知 ル モ ノ ナ シ ト 云 と あ り 、 ﹁ 豪 斯 多 辣 里 州 ﹂ と は 現 在 の オ ー ス ト ラ リ ア 連 邦 を 指 し て い る の で は な く 、 オ セ ア ニ ア と い う 大 州 を 表 し て い る こ と は 明 ら か で あ る 。 ま た 、﹁ 新 和 蘭 陀 ﹂ と は そ の ﹁ 豪 斯 多 辣 里 州 ﹂ の 一 国 に す ぎ ず 、 現 在 の オ ー ス ト ラ リ ア に 当 た る も の で あ る 。 こ の よ う に 、 南 方 大 陸 は 次 第 に 伝 説 的 な 存 在 か ら 切 り 離 さ れ て き た 。 た だ し 、 こ の 南 方 大 陸 ︵ メ ガ ラ ニ カ ー オ ー ス

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ト ラ リ ア ︶ に つ い て 語 る 際 、 一 つ 留 意 し な け れ ば な ら な い 点 が あ る 。 そ れ は 、 南 方 大 陸 の 伝 説 が あ く ま で も ヨ ー ロ ッ パ を 中 心 で 流 布 し た も の で あ り 、 日 本 に お い て は 特 に 庶 民 の 間 で は あ ま り な じ み の も の で は な か っ た の で あ ろ う 。 そ の た め 、 そ の 辺 に 関 心 が あ ま り な か っ た の か も し れ な い 。 七 七 イ 、 不 可 思 議 な 伝 説 上 の 地 域 他 方 、 日 本 に 古 来 知 ら れ た 伝 説 上 の 国 ・ 地 域 は 南 方 大 陸 の 存 在 と 違 う 。 こ の 地 域 や 国 は 多 く 中 国 な ど の 伝 説 に 由 来 す る も の で あ り 、 古 代 か ら そ の 存 在 が 信 じ ら れ て い た 。 一 例 を 挙 げ る と 、 ﹃ 都 会 節 用 百 家 通 ﹄ の 世 界 図 に は 中 国 と 天 竺 の 間 に あ る ﹁ 東 女 国 ﹂ 、 北 シ ベ リ ア に あ る ﹁ 鬼 国 ﹂﹁ 一 目 国 ﹂ 、 コ ー カ サ ス 地 方 の 北 に あ る ﹁ 女 人 国 ﹂ な ど が 見 ら れ る 。 こ の よ う な 不 可 思 議 な 国 々 の 存 在 と 、 近 世 に お い て ヨ ー ロ ッ パ か ら も た ら さ れ た 知 識 ︵ そ の 中 に も 最 初 の 段 階 に は 様 々 な 伝 説 に 基 づ い た も の が あ っ た ︶ が 相 ま っ て 、 独 特 な 世 界 空 間 が 形 成 さ れ た と 言 え る 。 こ の よ う な 国 ・ 地 域 は 近 世 中 期 ・ 後 期 に わ た っ て 、 嘉 永 年 間 ︵ 一 八 四 八 ∼ 一 八 五 四 ︶ ま で に 節 用 集 の 世 界 図 に 姿 を 現 し 続 け て い る 。 ほ と ん ど の 節 用 集 に 出 て く る の は 、 北 極 海 の ほ う に あ る ﹁ 夜 国 ﹂ 、 ヨ ー ロ ッ パ の 北 に あ る ﹁ 小 人 国 ﹂ 、 南 ア メ リ カ の 南 に あ る ﹁ 長 人 国 ﹂ の 三 つ で あ る 。 い ず れ も マ テ オ ・ リ ッ チ 図 か ら 受 け 継 が れ て い る も の で あ る 。 ﹃ 大 成 無 雙 節 用 集 ﹄ の 世 界 図 に 見 ら れ る 説 明 か ら は 、 ﹁ 夜 国 ﹂ = ﹁ 臥 兒 狼 徳 ﹂ ︵ グ リ ー ン ラ ン ド ︶ 、 ﹁ 長 人 国 ﹂ ︵ ま た は ﹁ 大 人 国 ﹂ ︶ = ﹁ 巴 太 温 ﹂ ︵ パ タ ゴ ニ ア ︶ だ と わ か る 。 こ の 二 つ は 、 そ の 地 域 の 特 徴 か ら 名 づ け ら れ た と 思 わ れ る 。 グ リ ー ン ラ ン ド な ど の 北 極 海 の 地 域 は 夜 が 長 い た め 、 ﹁ 夜 国 ﹂ と い う 名 称 が つ け ら れ た と 考 え ら れ る 。 他 方 、 ﹁ 長 人 国 = パ タ ゴ ニ ア ﹂ の 設 定 は 巨 人 の 意 味 を 持 つ パ タ ゴ ン と い う 言 葉 か ら 発 生 し た も の で あ る 。 ヨ ー ロ ッ パ 人 は 初 め て 南 ア メ リ カ の 先 住 民 と 出 会 っ た 時 、 そ の 先 住 民 が 非 常 に 背 の 高 い こ と に 驚 い た た め 、 そ の 辺 に は 巨 人 が 住 ん で い る と い う 伝 説 は ヨ ー ロ ッ パ に 流 布 し て き た 。 こ の よ う に 、 パ タ ゴ ニ ア = 大 人 国 ︵ 長 人 国 ︶ と い う 設 定 が 生 ま れ た 。 ﹁ 小 人 ﹂ の 国 に 関 し て は 節 用 集 の 世 界 図 に 何 の 説 明 が 見 ら れ な い 。 し か し 、 ヨ ー ロ ッ パ の 北 と い う そ の 位 置 は 不 思 議 と 言 っ て い い く ら い で あ る 。 ﹁ 小 人 ﹂ が 北 欧 に い る こ と は 節 用 集 の 世 界 図 だ け の 設 定 で は な い 。 そ れ は マ テ オ ・ リ ッ チ の ﹃ 坤 輿 万 国 全 図 ﹄ か ら 受 け 継 が れ た も の で あ る 。 だ か ら こ そ 、 不 思 議 で あ る 。 マ テ オ ・ リ ッ チ の ﹃ 坤 輿 万 国 全 図 ﹄ は ﹁ 大 航 海 時 代 の 新 し い 地 理 情 報 の な か に 、 古 代 か ら 伝 承 が 織 り 込 ま れ た ﹂ も の で あ る 。 た し か に 、 東 西 を 問 わ ず 、 小 人 ︱ ﹃ 坤 輿 万 国 全

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図 ﹄ で は ﹁ 矮 人 国 ﹂ ︱ に 関 す る 神 話 や 伝 説 は 古 く か ち 知 ら れ て い る 。 い ず れ も 、 マ テ オ ・ リ ッ チ 図 の 注 記 に も 見 ら れ る よ う に 、 小 人 が 鶴 と 戦 っ て い る 話 で あ る 。 し か し 、 そ の 位 置 は 、 古 代 ギ リ シ ア や 古 代 ロ ー マ の 文 献 で は ア フ リ カ か イ ン ド に あ り 、 中 国 の 文 献 で は 中 国 の 東 か ア フ リ カ に あ る 。 で は 、 な ぜ マ テ オ ・ リ ッ チ は こ の よ う な 古 代 伝 説 に 従 わ ず 、 小 人 を 北 欧 に 位 置 づ け た の か 。 考 え ら れ る の は 、 北 欧 の 神 話 や 伝 説 に 従 っ た か ら で あ る 。 そ の 北 欧 伝 説 の 中 に は 地 下 に 住 ん で い る 小 人 が 多 く 出 て く る 。 そ こ で 、 マ テ オ ・ リ ッ チ が そ の 北 欧 神 話 ︱ 北 欧 と い う 地 理 的 な 位 置 の 設 定 ︱ を 古 代 か ら 知 ら れ た 話 ︱ 鶴 と 戦 っ て い る 設 定 ︱ と 結 び つ け て 、 小 人 の 国 を ス カ ン ジ ナ ビ ア 半 島 に 位 置 づ け た と 見 る こ と が で き る 。 こ の よ う な 不 可 思 議 な 国 々 は 幕 末 に な る と 、 世 界 図 に 一 切 見 ら れ な く な る 。 科 学 性 の 高 い 文 久 年 間 刊 の 両 半 球 図 は こ れ ら を 排 除 し て い る 。 グ リ ー ン ラ ン ド は ﹁ 臥 兒 狼 徳 ﹂ で 、 パ タ ゴ ニ ア は ﹁ パ タ コ ン ﹂ な ど の よ う に 、 実 際 の 地 域 名 が 書 か れ て い る 。 こ の よ う に 、 も と も と 伝 説 上 た っ た 空 間 は 世 界 図 か ら そ の 姿 を 消 し て し ま っ た 。 七 八 ウ 、 金 ・ 銀 の 島 も う 一 つ 、 近 世 後 期 の 世 界 図 か ら な く な っ た 伝 説 上 の も の は 金 ・ 銀 の 島 で あ る 。 こ の 二 つ の 島 ︱ あ る い は 銀 の 島 だ け ︱ は ﹃ 万 国 総 図 ﹄ を 原 拠 と し た 世 界 図 に し か 見 ら れ な い 。 言 い 換 え れ ば 、 近 世 中 期 の 諸 世 界 図 と 、 後 期 の 図 の 内 、 ﹃ 日 本 節 用 万 歳 蔵 ﹄ の 世 界 図 に だ け で あ る 。 以 上 の 諸 世 界 図 に は 、 日 本 の 東 北 の 海 上 に ﹁ 金 の し ま ﹂¬ 銀 の し ま ﹂ が 見 ら れ る 。 そ れ ら は マ テ オ ・ リ ッ チ の ﹃ 坤 輿 万 国 全 図 ﹄ か ら 受 け 継 が れ た も の で あ る 。 そ こ に は 、 一 方 で は ヨ ー ロ ッ パ に 流 布 し て い た ﹁ 黄 金 の 国 ジ パ ン グ ﹂ 伝 説 で 、 他 方 で は 金 産 地 が 世 界 の 果 て に あ る と い う 古 代 ギ リ シ ア 以 来 の 伝 承 の 名 残 が 読 み と れ る 。 古 代 ・ 中 世 の ヨ ー ロ ッ パ の 世 界 図 に は 必 ず と 言 っ て い い よ う に 、 世 界 の 果 て に 当 た る 地 域 に は 金 の 島 ・ 黄 金 半 島 ・ 金 の 山 な ど が 記 述 さ れ た 。 時 代 と と も に そ の ﹁ 世 界 の 果 て ﹂ は イ ン ド ・ 中 国 な ど に な っ て お り 、 近 世 初 期 に は マ テ オ ・ リ ッ チ の 世 界 図 の 作 成 に 当 た っ て 、 そ れ が 日 本 に 変 わ っ た 。 そ の た め か 、 ヨ ー ロ ッ パ で は そ の 伝 説 上 の 金 島 ・ 銀 島 の 探 検 は 十 七 世 紀 ∼ 十 九 世 紀 に か け て 行 わ れ た が 、 い ず れ も 失 敗 に 終 わ り 、 金 ・ 銀 の 島 の 存 在 が 否 定 さ れ た 。 そ れ 故 に 、 金 ・ 銀 の 島 が 世 界 図 か ら 消 さ れ た と 見 て 差 し 支 え な い 。 し か し 、 日 本 周 辺 に 金 ・ 銀 の 島 の 描 写 に は も う 一 つ の 解 釈 が あ り 得 る の で あ ろ う 。 そ れ は 、 金 の 島 が 陸 奥 国 の 金 華 山 と 結 び つ か れ た の で は な い か と 思 わ れ る 。 そ の 金 華 山 は

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古 く か ら 日 本 初 の 産 金 地 と さ れ て い た 。 ま た 、 陸 奥 国 は 、 古 代 日 本 に お い て は ﹁ 日 本 ﹂ 国 家 の 枠 外 の も の と さ れ て お り 、 中 世 に お い て は 境 界 と し て の 性 格 を も つ 地 域 で あ っ た 。 こ れ を 考 慮 に 入 れ れ ば 、 ﹁ 日 本 ﹂ と い う 小 世 界 の 果 て に は 金 産 地 が あ る と い う 認 識 は 成 り 立 つ 。 し か し 、 中 世 後 期 ・ 近 世 初 期 に は 陸 奥 国 に 想 定 さ れ た 境 界 が 外 の 浜 ・ 松 前 ま で に 前 進 し た こ と で 、 陸 奥 国 や そ れ に 属 す る 金 華 山 は ﹁ 日 本 ﹂ 国 に 含 ま れ る よ う に な っ た 。 近 世 中 期 に わ た っ て 、 金 の 島 が 世 界 図 に 姿 を 表 し た り 消 し た り し た の は 、 陸 奥 国 や 金 華 山 に 対 す る 一 般 庶 民 の 認 識 の ゆ ら ぎ を 前 提 と し て い る も の で あ ろ う 。 他 方 、 近 世 後 期 の 世 界 図 か ら 金 の 島 が 消 さ れ た の は 一 般 庶 民 の 認 識 で は 陸 奥 国 が 完 全 に ﹁ 日 本 ﹂ 国 の 枠 組 み に 入 っ た か ら の で は な い か と 考 え ら れ る 。 七 九 お わ り に 以 上 、 近 世 中 期 ・ 後 期 の 節 用 集 の 世 界 図 に 見 ら れ る 空 間 認 識 に つ い て 述 べ た 。 節 用 集 を 資 料 と し て 選 ん だ 理 由 は 、 そ れ が 一 般 庶 民 の 作 成 し た 資 料 で あ り 、 一 般 庶 民 に よ っ て よ く 読 ま れ た 資 料 だ か ら で あ る 。 し か し 、 従 来 は 、 思 想 史 研 究 に お い て は 節 用 集 が 研 究 対 象 と さ れ な か っ た 。 地 図 研 究 な ど に お い て も 節 用 集 に 挿 入 さ れ て い る 世 界 図 は あ ま り 注 目 さ れ な か っ た の で あ る 。 そ れ 故 に 、 本 稿 で は 節 用 集 の 付 録 の 一 つ で あ る 世 界 図 を 資 料 と し 、 そ の 世 界 観 と 空 間 認 識 を 検 討 す る こ と に し た 。 節 用 集 の 世 界 図 は 様 々 な 資 料 を 原 拠 に し て 作 成 さ れ た 。 原 拠 と な っ た も の に は 、 マ テ オ ・ リ ッ チ 系 の 世 界 図 と 蘭 学 系 の 世 界 図 ︵ 両 半 球 図 ︶ の 二 つ が あ る 。 し か し 、 幕 末 ま で に 節 用 集 の 世 界 図 は 両 半 球 図 で は な く 、 お な じ み の 卵 形 図 で あ っ た 。 そ れ は 両 半 球 図 の 意 義 が 理 解 さ れ て い な か っ た か ら だ と 考 え ら れ る 。 興 味 深 い こ と に 、 仏 教 系 の 世 界 図 は 幕 末 に 至 る ま で 庶 民 の 間 で 流 布 し て い た も の の 、 節 用 集 に は こ の よ う な 世 界 図 が 見 ら れ な い 。 仏 教 系 の 世 界 図 の 一 種 で あ る ﹁ 須 彌 山 図 ﹂ は 節 用 集 に あ る が 、 そ れ は 元 禄 三 年 ︵ 一 六 九 〇 ︶ 刊 の ﹃ 頭 書 大 益 節 用 集 綱 目 ﹄ と 元 禄 一 二 年 ︵ 一 六 九 九 ︶ 刊 ﹃ 頭 書 増 補 大 成 節 用 集 ﹄ だ け で あ る 。 な ぜ こ の よ う な 世 界 図 が 節 用 集 の 付 録 に な ら な か っ た の は 今 後 の 課 題 で あ る 。 節 用 集 の 世 界 図 に 見 ら れ る 空 間 認 識 は 次 第 に マ テ オ ・ リ ッ チ 系 の も の か ら 蘭 学 系 の も の に 変 化 し た 。 こ の よ う な 認 識 の 転 換 は 嘉 永 年 間 ︵ 一 八 四 八 ∼ 一 八 五 四 ︶ か ら 文 久 年 間 ︵ 一 八 六 一 ∼ 一 八 六 四 ︶ に か け て 起 こ っ た と 見 て よ か ろ う 。 具 体 的 に 近 世 中 期 ・ 後 期 の 世 界 図 に 見 ら れ る 認 識 の 変 容 は 次 の と お り に ま と め る こ と が で き る 。 中 期 に か け て は 、

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節 用 集 の 世 界 図 は 寛 文 十 一 年 ︵ 一 六 七 一 ︶ 刊 の ﹃ 万 国 総 図 ﹄ を ほ と ん ど 何 の 変 更 も な し に 原 拠 と し た も の で あ る 。 そ れ は 、 五 大 州 か ら な る 世 界 な ど の 新 し い 知 識 を 紹 介 す る こ と に よ っ て 、 中 世 的 な 世 界 観 か ら の 脱 出 と な っ た 。 一 世 紀 ほ ど の 間 に 、 節 用 集 の 世 界 図 に 表 現 さ れ る 空 間 認 識 は ﹃ 万 国 総 図 ﹄ 系 の も の で あ っ た 。 他 方 、 後 期 に な る と 、 節 用 集 の 世 界 図 の 原 拠 と な っ た も の は 多 種 多 様 に な り 、 そ の 空 間 認 識 も 様 々 な 形 で 現 れ る よ う に な っ た 。 後 期 の 世 界 図 を 見 る と 、 中 期 の そ れ と 比 べ れ ば 、 中 世 的 な 世 界 観 へ の 退 歩 ︵ 五 天 竺 の 再 登 場 な ど ︶ の よ う に 見 え る 。 し か し 、 五 大 州 に 表 現 さ れ る 新 し い ﹁ 世 界 ﹂ 空 間 に 中 期 よ り 多 く の 地 名 が 記 載 さ れ て い る こ と 、 幕 末 に な っ て 不 可 思 議 な 国 々 が 見 ら れ な く な る こ と 、 従 来 の 世 界 観 を な し た 国 々 に 対 す る 認 識 が 変 化 し て き た こ と な ど を 考 え れ ば 、 後 期 の 世 界 図 は 新 し い 知 識 を 付 加 し た 進 化 の 結 果 だ と わ か る 。 五 天 竺 の 再 登 場 な ど 、 中 世 的 な 世 界 観 の 名 残 は 単 な る 庶 民 へ 新 知 識 を わ か り や す く す る た め の 工 夫 で あ る 。 節 用 集 の 世 界 図 に 表 現 さ れ る 空 間 認 識 は 二 通 り だ っ た と 見 た ほ う が い い 。 一 つ は 、 マ テ オ ・ リ ッ チ 系 の 世 界 図 に 由 来 し て お り 、 同 心 円 的 な ﹁ 世 界 ﹂ 構 成 を な し て い る も の で あ る 。 ﹁ 世 界 ﹂ の 中 心 は ﹁ 日 本 ﹂ 国 に 位 置 づ け ら れ て お り 、 東 西 南 北 に 広 が っ て い く 。 そ し て 、 ︵ 中 心 で あ る ﹁ 日 本 ﹂ か ら 見 た ︶ ﹁ 世 界 ﹂ の 果 て に 当 た る と こ ろ に は 伝 説 上 の 国 で あ る ﹁ 小 人 国 ﹂ ﹁ 長 人 国 ﹂ ︵ 北 西 ︱ 南 東 の 軸 ︶ ﹁ 夜 国 ﹂ ﹁ メ ガ ラ ニ カ ﹂ ︵ 北 ︲ 南 の 軸 ︶ な ど が あ る 。 こ の よ う な 同 心 円 的 な 構 成 は 卵 形 の 世 界 図 に 表 現 さ れ て い る の で あ る 。 そ の 同 心 円 的 な 構 成 は 単 な る ﹁ 日 本 ﹂ ↓ 東 西 南 北 に 広 が る ﹁ 世 界 ﹂ と い う も の で は な い 。 ﹁ 世 界 ﹂ 構 成 の 中 心 は ﹁ 日 本 ﹂ 国 で あ る が 、 東 西 南 北 に 広 が る ﹁ 世 界 ﹂ は い く つ か の 円 か ら な る ︵ 図 一 を 参 照 ︶ 。 ま ず 、 第 一 円 は 三 国 世 界 観 を 構 成 し た 中 国 ・ 天 竺 ︵ イ ン ド ︶ と 朝 鮮 か ら な る 、 ﹁ 旧 世 界 ﹂ で あ る 。 第 二 円 は 中 国 伝 説 に 基 づ い た 異 人 の 世 界 で あ る 。 第 三 円 は 新 し い 知 識 の 導 入 に 伴 っ て 五 大 陸 ま で 広 が っ て き た ﹁ 新 世 界 ﹂ で あ り 、 第 四 円 は 五 大 陸 か ら な る ﹁ 世 界 ﹂ の 果 て に 住 む 異 人 の 世 界 で あ る 。 こ の よ う に 見 れ ば 、 卵 形 の 世 界 図 に 表 現 さ れ て い る ﹁ 世 界 ﹂ は ﹁ 日 本 ﹂ ↓ ﹁ 旧 世 界 ﹂ ↓ ﹁ 新 世 界 ﹂ の よ う に 広 が る 。 さ ら に 、﹁ 旧 世 界 ﹂ ︵ 厳 密 に 言 え ば ﹁ 旧 世 界 ﹂ と ﹁ 新 世 界 ﹂ の 間 で ︶ と ﹁ 新 世 界 ﹂ の 外 側 に は 必 ず と 言 っ て い い よ う に 異 人 世 界 が 位 置 づ け ら れ て い る 。 こ の よ う な 構 成 は 、 既 知 の ﹁ 世 界 ﹂ の 果 て に 不 可 思 議 な 異 人 世 界 が あ る と い う 認 識 か ら き て い る も の で あ る 。 実 際 は 、 中 世 ・ 近 世 の 日 本 図 に お い て 、﹁ 日 本 ﹂ 国 の 外 側 に 羅 刹 国 ︵ 後 に 女 国 ・ 女 護 島 と し て ︶

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市民社会セクターの可能性 110年ぶりの大改革の成果と課題 岡本仁宏法学部教授共編著 関西学院大学出版会

 「世界陸上は今までの競技 人生の中で最も印象に残る大 会になりました。でも、最大の目

A アルフォンソ lfonso A エーベル bel A アレクサンダー lexander さん.

M IRAMONTES C ミラモンテス ATHLEEN キャスリーン さん.