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工業高校特有の学びに関する一考察 ―好奇心と職業体験学習の側面から―

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工業高校特有の学びに関する一考察 ―好奇心と職

業体験学習の側面から―

著者

新井 雄大

学位授与機関

Tohoku University

(2)

令和

2 年度修士論文

工業高校特有の学びに関する一考察

―好奇心と職業体験学習の側面から―

平成

31 年(2019 年)度 入学

東北大学大学院 教育学研究科

教育情報アセスメントコース 有本 昌弘研究室

博士前期二年 新井雄大

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目次

はじめに ... 1 研究の背景 ... 3 1.1 語句の定義とその周辺情報について ... 3 1.1.1 人間性とその下位因子について ... 3 1.1.2 好奇心についての定義づけとのその教育的背景 ... 5 1.1.3 キャリア教育、職業教育の定義とその動向について... 7 1.1.4 職業体験学習の定義とその主要な下位概念の概説 ... 8 1.1.5 専門高等学校、並びに工業高等学校の定義とその動向について ... 9 1.2 先行研究の分析 ... 11 1.2.1 好奇心についての先行研究の紹介とその課題について ... 11 1.2.2 職業体験学習に関する先行研究の紹介とその課題について ...12 1.3 本研究の目的 ...14 調査校の選定理由とその学校の取り組みについて ...16 2.1 調査校の特徴と選定理由について ...16 2.2 調査校の取り組みとその概要の紹介 ...17 第一研究について...18 3.1 目的 ...18 3.2 方法 ...19 3.3 結果及び考察 ...20 第二研究について...25 4.1 目的 ...25 4.2 方法 ...26 4.3 結果と考察 ...27 第三研究について...33 5.1 研究の目的 ...33 5.2 研究の方法 ...34 5.3 結果と考察 ...36

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結論 ...43 謝辞 ...46 参考文献 ...47

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1

はじめに

「グローバル化」という言葉が様々なメディアや文献で語られている中で、ローカ ルや地域協同の観点から専門高校、特に工業高校の存在が注目され始めている。令和 元年8 月に行われた「第四回自分づくり教育アワード」の中では「子供たちが大人に なる10 年後、20 年後は、どのような社会になっているのか。その時、どのような資 質・能力を身に着けた人材が必要とされるのか。」というテーマに基づき、学校、家庭、 地域が共に考える機会において、仙台市内の工業高校の事例が紹介され、注目を集め た。また全国的にみても、平成26 年度より、大学・研究機関・企業等との連携の強化 等により、社会の変化や産業の動向等に対応した、高度な知識・技能を身に着け、社 会の第一線で活躍できる専門的職業人を育成するために、「スーパープロフェッショナ ル・ハイスクール(SPH)」が設立され、同じく平成 26 年度より、新学習指導要領の 趣旨等を実現するために、各科目の目標や内容に照らして、指導方法及び評価方法等 の工夫改善と生徒の学習の実現状況について把握することを目的とした「研究課題」 のカリキュラムが設立、実施されるなど、普通科高校とは異なる工業高校独自の、生 徒の成長のためのプログラムが数多く実践されている。これらの実践の力もあり、工 業高校の卒業生はその専門性を発揮した様々な業界、業種で活躍している。筆者が実 施した工業高校長へのインタビューの中では、特にインターンシップや出前授業等、 高校と社会が早期より地域と関わりを持つことによって、地域の中で工業高校の卒業 生という存在が企業の採用担当に対しての安心感を与えているとの意見があり、地域 一体となったローカルでの人材育成という専門高校の目指すべき形が良好なサイクル を生み出していることが確認できる。 一方でこのような工業高校の人材育成についての批判も存在する。本田(2009) の中で取り上げられたアンケートの回答になかには「専門高校では就職しやすい従順 さを調教する傾向が濃厚であり『挨拶できれば就職できる』といった洗脳、専門科目 も調教の手段として検定をあおり、『ビジネス基礎』という徳目科目まである」との 批判が掲載されていた。また友枝(2009)の中では、専門高校生は「フリーター志 向」や「進路基準が不明」などの要素を含む「脱近代的職業感」が強く、「政治的有 効性感覚」は低く、「権威主義」の度合いが高いとの記述があり専門高校生の持つ、 自主的に進路を選び取る傾向が低く、親や進路担当の教員に流されるままに自分の進

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2 路を決定してしまう傾向が明らかにされた。 以上のような背景を踏まえて、本研究では専門高校、とくに工業高校の持つ特色の 実態について、在籍する生徒の持つ人間性、特に好奇心や、またカリキュラムについ ては工業高校で積極的に行われている職業体験学習(インターンシップや出前授業) や地域との関わりの主流である課題研究の面から明らかにすることを目的とする。本 研究の実践によって、筆者のような普通科高校の出身で大学への進学を目的としたよ うな高校生活を送ってきた人の多いであろう読者に対し、工業高校のもつ魅力、そし て課題の一端について紹介できたらと筆者は考えている。

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研究の背景

1.1 語句の定義とその周辺情報について

1.1.1 人間性とその下位因子について

まず本研究の軸の一つとなる好奇心を包括する人間性について本研究で用いる定義 について概説を行う。 大辞泉によると人間性とは「人間特有の本性。人間として生まれつきそなえている 性質。人間らしさ。」とあり、一人一人が生得的に所有している、人間の人間たる性質 の一つであることが挙げられる。人間性の研究については西洋では古代ギリシャ、ロ ーマの哲学研究、中世ヨーロッパの神学研究のテーマの一つとされ、長きにわたって 議論されてきた。現代では学問の細分化に伴い軽視されつつあったが、テクノロジー、 AI の発展に併せて人間の本来目指すべき姿である「善く生きる(well-being)」という 言葉が注目され始め、また辞書的な意味に当てはめると人間性は生得的に決定される ものであるというイメージが強いが、研究の中で程度の差こそあれ、学習によって変 容させることができる部分であることが示されている。その点で現在価値が見直され ている学問分野である。歴史ある学問分野である特性上、人間性には様々な解釈が存 在する。その中で今回は人間性の定義として、文部科学省(2015)でも引用として用 いられたCCR での定義を用いて研究を行った。 CCR の元となった Fadel et al.(2016)では、人間性に関する世界中の 32 の研究 や500 人を超える教師からのフィードバックに基づいてこれらが「マインドフルネス」 「好奇心」「勇気」「レジリエンス」「倫理」「リーダーシップ」の6 つの下位因子によ って構成されていることを明らかにした。これら6 因子について上の研究で用いられ ている定義に基づいて概説を行う。 マインドフルネスとは、「一刻一刻、展開していく体験に対して、今この瞬間に、判 断や評価をしないで、意図的に注意を向けることにより生じる気づき」と定義されて いる。古くは東洋の哲学思想に由来するものであり、宗教的な役割をベースとしてス トレスや不安の軽減などの臨床的な目的にも用いられている。実践としては瞑想、座 禅などが当てはまるが、マインドフルネスはこれらの言いかえではなく、日常生活の

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4 中での経験を通じても訓練可能なものであると示されている。 好奇心については上記の6 つの中で最も研究の歴史が深く、初期の研究はキケロや アリストテレスの時代にまでさかのぼる。どちらの研究においても共通なのは「学ぶ ことや知識に対する純粋な欲求」として捉えている点である。これらの解釈は現代の 好奇心研究の基礎にあるものであるが、現代の研究の中ではそれだけではなく不確か さを解消することを目的としたどちらかというとネガティブな動因から引き起こされ る好奇心もあることが確認されている。 勇気とは、「ある個人が恐怖に打ち勝ち、不確かさに直面しながらも行動を起こすこ とを選択する際に生じる主観的な体験」であると定義されている。勇気は時に極端な 方向に走り、無謀とされることもあるが、このような考え方は、組織の強みやチャン スを引き出す力を含んでいるとされている。また、危険を顧みず勇気を持つ力は児童 期や成人期と比較して青年期に多く見られることや女子よりも男子で多く見られるこ とが報告されている。 レジリエンスとは「人が障害を乗り越えるのを可能にする力」と定義されている。 言い換えると、逆境的な状況の中でいかにそれを肯定的に適応し立ち上がるかという ことであり、現在学校教育の中で不安要素を取り除くことと同様に注目されつつある 概念である。初期の研究では災害や戦災などのハイリスクにさらされた子供に対して のみ注目されていたものであったが、現在はレジリエンスの育成によってポジティブ な因子が促進されることに着目し、すべての子供に関連したものとして取り扱い始め ている。 倫理とは一般的に「人として守り行うべき道。善悪・正邪の判断において普遍的な 規準となるもの」という定義を持っている。しかしここではもっと教育に近づけた解 釈として「道徳」という意味として捉えるものとする。現在日本では道徳や倫理は教 科として扱われており、そこでは社会規範や倫理学の基礎知識を学んでいるが、道徳 の発達がうまく促される環境として、「集団に参加し、意思決定を共に行い、行為の結 果に対する責任を引き受ける機会が与えられた環境」があり、道徳を知識として捉え るのではなく人間性の領域で扱うことは妥当であるといえる。 リーダーシップにおいては、その持つ意味、そしてその教育プロセスには様々な解 釈の差があり、伝統的な見方としては組織に有益な行動をとらせるように孤高に働く、 卓越した、カリスマ性に満ちた、ほとんどスーパーヒーローのような存在が求められ

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5 てきた。しかしこのような考え方は先天的なものによるところが大きく教育の手が届 かない領域にある点、成功した指導者が必ずしも強力なカリスマ性を持っていたわけ ではなかった点から否定されつつあり、リーダーシップを個人の特性から集団の関係 による特性として理解する解釈が増えてきている。そのため現在広く受け入れられて いる定義として「一緒にポジティブな変化を成し遂げようと試みる人々の関係的で倫 理的なプロセス」というものがありこの考え方に基づいた関係的、集団主義的、非権 威主義的なアプローチに基づく教育が行われている。 以上のような定義づけがなされており、一部の因子においては教育環境における実 践についても報告されている。しかしながらこれらは全て海外での実践であることに 着目しなければならない。

1.1.2 好奇心についての定義づけとのその教育的背景

前項のようにCCR の定義に当てはめると人間性は大きく 6 つの下位因子に分かれ て解釈されるが、本論文ではその中でも「好奇心」に着目して論文の執筆を行う。そ こで本論文で用いる好奇心の定義についての概説と好奇心の教育的な面での背景につ いて概説を行う。大辞泉で好奇心について「珍しいことや未知のことなどに興味をも つ心」と定義されており、「わからないものを知りたい」「興味のある内容を深めた い」という人間の持つ最も基礎的な欲求の一つとして示されている。前項での概説で 用いられているように古くはキケロやアリストテレスの時代から研究され続けてきた 内容であり、現在でも積極的に研究され続けている概念である。 一方で好奇心に関する文献を調査している中で「知的好奇心」という言葉が頻繁に 表れる。知的好奇心は好奇心の中でも特に「広く抱いている興味や関心をより深める 方向に進んでいくような好奇心」について定義づけされたものである。現在の研究は この知的好奇心をいかに育んでいくか、基礎的な欲求である好奇心をより高次的な欲 求である知的好奇心にどのように発展させるかといったものが主とされている。 本研究では研究の主流である「知的好奇心」ではなく「好奇心」全体について取り 扱う。そのため本研究では好奇心を「どのように育んでいくのか?」「どのように伸 ばすか?」といった観点ではなく「どのような好奇心の種類・特性を持っているの か?」といった観点から扱うこととなる。「どのような」の部分については「先行研

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6 究の分析」の欄にて改めて紹介を行うこととする。 続いて、好奇心について現在の教育的背景から記述する。現在の国内での人間性教 育として代表的なものは道徳教育である。2020 年教育改革における大きな変化の一つ として文部科学省は小学校では平成 30 年度より、中学校では令和元年度より道徳教 育を「道徳科」として全面的に改訂を行った。今回の改定により「考える道徳」「議論 する道徳」をテーマに掲げ答えが一つではない道徳的な課題を一人一人の児童生徒が 自分自身の問題ととらえ、向き合うことに重点を置くよう学習指導要領の改正を行っ た。この他にも人権教育については各地の教育実践の取りまとめなどを行っているが 人間性に関する教育の実践はこれら上記の6 因子では「倫理」に当てはまる部分に留 まっており、その他の下位因子の育成については具体的な方策を打てていない。つま りそれ以外の下位因子についてはまだ介入、改善の余地があると考えられる。その他 5 因子の中でも特に好奇心に着目した理由として、文科省が平成 30 年に行った 「Society 5.01に向けた人材育成~社会が変わる、学びが変わる~」において「科学技 術が急速に進歩し、AI 等と共存していく社会の中で『人間の強み』を発揮し、AI 等を 使いこなしていくためには『文章や情報を正確に読み解き対話する力』や『科学的に 思考・吟味し活用する力』、『価値を見つけ生み出す感性と力、好奇心・探求力』が共 通して求められる」との見解を示し、好奇心・探求力が今後の教育において重要な要 素を担っていることが示された。また海外での好奇心の重要性が示された資料に OECD(2018)がある。この資料の中では 2030 年を迎えるにあたり、新しい価値や サービス、プロセスを構築するためには、個人が単独で考えて動くことではなく、既 存の知識を活用して新しい知識を作成するために他の人と協力することの大事さが挙 げられており、それを支える構成要素として順応性、創造性、好奇心、オープンマイ ンドが含まれることが示されている。以上のような点から好奇心に関する教育は国内 外で注目されており、かつ現代まで教育の場で具体的に議論されてこなかった分野で あるということが出来、そこから本研究の内容は議論するに値する分野であると説明 することが出来る。 1 Society 5.0:内閣府の第 5 期科学技術基本計画において、日本が目指すべき未来 社会の姿として提唱されたもの。

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1.1.3 キャリア教育、職業教育の定義とその動向について

続いて本論文の2 つめの軸となる職業体験学習について概説を行うわけだが、その 前の段階として職業体験学習を含めた包括的な概念として「キャリア教育」、「職業教 育」についてその定義と動向について概説を行う。 文部科学省は中央教育審議会(2011)の答申に基づき、キャリア教育とは「一人一人 の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通じて、 キャリア発達を促す教育」との定義づけを行っている。この定義によると、キャリア 教育は専門教育に限らず、普通教育や特別活動等の学校での活動全体にて発達が求め られる教育であることがわかる。 また上記答申において職業教育についても、「一定又は特定の職業に従事するために 必要な知識、技能、能力や態度を育てる教育」との定義が示されている。こちらはキ ャリア教育とは異なり特定の知識や技術に対してそれを伸ばすことを目的とした教育 であり、教育の場は専門教育が中心となる。 続いてキャリア教育、職業教育の動向について概説を行う。奥田(2019)の中では キャリア教育が「職業教育系」、「高大接続系」、「教科目系」、「進路指導系」、「その他」 の5 系統に分かれ、その効果が「能力」、「学習意欲」、「自己理解」、「キャリア意識」、 「職業感」、「進路選択」の6 つに分類することが出来ることが示された。それぞれの 効果について「能力」は、コミュニケーション能力をはじめとする社会で必要とされ る能力であり、独自に設定された尺度や、社会人基礎力のこと、「学習意欲」は、学問 に対する興味関心、授業に関するモチベーションや取り組む姿勢、「自己理解」は自信 や自己有能感、「キャリア意識」は、働くことに限らない、自分自身の人生全般に関す る意識、「職業感」は働くことに対する意識、「進路選択」は、高校卒業後の進路の選 択に関することと定義されている。それぞれの効果についての論文数では「能力」に 関する論文が一番多く、「進路選択」に関する論文が一番少ないという報告があった。 職業教育については教育振興基本計画(2008)において専門高校生等に対し施すよ うにとの指定があり、キャリア教育と異なり、対象が限定された教育方針であること が示されている。この考え方については現在も変わっておらず、専門的な職業につい て学ぶ必要性については専門高校生のみに必要であるというものが一般的となってい る。しかしながら、本田(2009)の中では普通科高校が職業教育を行わず、結果とし

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8 て職業的意義を待たない教育機関となっている点、そして普通科高校に進学する一方 で高等教育学校への進学をしない生徒が全国で毎年約12 万人いることに触れ、「職業 的意義」を持たない普通科高校のもつ課題として挙げている。

1.1.4 職業体験学習の定義とその主要な下位概念の概説

前項ではキャリア教育と職業体験学習の違いとそれぞれの動向について記述したが、 本項ではそのどちらにおいても重要視されている「職業体験学習」について記述を行 う。 職業体験学習については本研究では福岡(2004)にて用いられた「職業体験的学習」 の定義を用いる。福岡によると職業体験的学習とは、北米における Work-Based-Learning(WBL)の和訳として用いられ、生徒・学生が職場に出向いて行う学習や、 「企業経営者による出前授業」の総称として定義される。北米の WBL には、インタ ーンシップはもちろん、職場見学やコープ教育、徒弟訓練等様々な形態があり、同様 の内容であっても呼び名が異なる場合がある。 日米どちらにおいても重要視されている職業体験学習としてインターンシップが存 在する。インターンシップについては文部科学省(1997)のなかで学生、生徒が在学 中にも図からの専攻、将来のキャリアに関連した就業体験を行うこととの定義づけが 行われている。現在でもその定義が積極的に使用されてはいるものの、現在のインタ ーンシップ実践は必ずしも自分のキャリアに完全に一致した教育システムではなくな ってきているため、現在ではより広義的な「生徒・学生が在学中に職業体験を行うこ と」という定義が用いられることが多い。 つづいてインターンシップと並んで代表的な職業体験学習として用いられる「出前 授業」について概説を行う。出前授業については大きく企業経営者や現場のエンジニ ア脳が行う「企業中心」のものと、大学や専門学校の教員や、大学所属の学生が行う 「高等教育中心」のものが存在するが、本研究では主に前者の企業中心のものを対象 にする。若江(2011)によると企業による出前授業が盛んに行われるようになったの は総合的学習の時間が盛んに行われ始めた2000 年代半ば頃からである。CSR2という

2 CSR:「Corporate Social Responsibility」の略で、企業が市民や投資家、社会全

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9 言葉が出始め、企業が地域社会に貢献することが必要とされる中で、特に教育の観点 では上記のような背景もあり、両者にとって好都合なものとして取り扱われてきた。 現在では初等中等教育での総合的学習の時間に用いるものではなく、専門高校での校 内実習のサポートや中小企業省が主体となった「地域・企業共生型ビジネス導入・創 業促進事業(地域・社会課題の解決支援)の起業家教育事業」での起業家、経営者の 学校派遣事業といった新しい形での出前授業が行われている。

1.1.5 専門高等学校、並びに工業高等学校の定義とその動向について

つづいて本研究の主要な研究対象となる工業高等学校(以下工業高校)とそれらを 包括する専門高等学校(以下専門高校)について定義づけとその動向について概説を 行う。 まず専門高校について定義づけと概要を記述する。文部科学省(2020)によると専 門高校とは「国語や数学などの授業に加えて、専門教科の授業を行い、特定の分野の 専門知識・技術・資格を得ることが出来る学校」とあり、本研究で取り扱う工業高校 のほかに商業高校や農業高校等が存在する。専門学科という枠組みでは上記の高校に 加え、総合高校の中の体育科や音楽家などもそれに該当するが、本研究で取り扱うの は専門高校であるため本件については割愛する。全高校生のうち18.1%が専門高校に 進学しており、この数字は1960 年をピーク(41.5%)に緩やかに減少している。 続いて工業高校について定義づけと概要を記述する。北海道工業高等学校長会・北 海道高等学校工業クラブ連盟(2016)によると工業高校とは「『ものづくり』をキーワ ードに、生徒の感性を育み、創造性と協調性を併せ持った『実践的技能士を目指す生 徒』、『実践的技術者を目指す生徒』、『堅実な職業人を目指す生徒』の育成に努めてい る高校」と定義されている。具体的にはBenesse(2019)の中に「国語や数学などの 普通教科のほかに、工業系の専門科目を学ぶことができ、機械や電機、情報技術など、 工業系の知識や秘術を重点的に身に着けることができ」る学校とあり、上記の目標の 達成のための具体的な知識や技術を学ぶことができる。また基本となる機械や電気、 情報技術に加え、地域の産業と連携した日本建築科、セラミック科、繊維デザイン科 といった独特な学科も存在している。全国工業高等学校長協会(2015)によると 2013 年の工業高校に通う生徒は約26 万人であり、この数字はその年の全高校生の 7.9%に

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10 該当する。専門高校の生徒数減少の波に対応する形で 1960 年をピークに生徒比率は 減少している。 工業高校をはじめとする専門高校に関する動向の一つとして文部科学省(2015)が ある。ここではその背景として「企業における人材育成機能の縮小」、「地方創生への 対応」、「高等教育体系の多様化」などが挙げられている。「企業における人材育成機能 の縮小」については、日本型の雇用システムが変化し、正規雇用以外の形態で働く若 者が増加する中、企業が人材育成にかける費用を縮小している状況があり、学校教育 における職業教育の必要性があることが示されている。「地方創生への対応」では、多 くの生徒が地方の高校を卒業後、東京をはじめとした都市部での労働を希望し、地方 人材が流出している背景を踏まえ、高等教育に対して地域産業を担う専門職業人を育 成するための教育が各々の地方の高等教育機関で受けられるような仕組みを構築する ことを通じて、地域の活性化に資する人材が地元で育ち、地元に定着するようにする ことが求められていることが示された。「高等教育の多様化」では、高等専門学校や義 務教育学校といった様々な教育形態がある中で普通科高校から4 年制大学へと進学す ることを第一とした社会的風潮を批判し、義務教育段階から自分の将来を踏まえた具 体的な職業人生をイメージし、その達成のための受け皿になるような新しい教育形態 の形について検討された。 以上のような状況の中で、工業高校は伝統的な専門職業人育成に加え、新たに、自 分の経来を主体的に選択できるような人材を育成する力、新しい社会に適応しうるよ うな協調性、コミュニケーション能力、情報活用能力を育成する力、そして学んだ能 力を地方へと還元し、その地方の活性化を行う力などが求められ、新たな教育機関の 設立も含め、大きな過渡期にあることが確認できる。

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1.2 先行研究の分析

1.2.1 好奇心についての先行研究の紹介とその課題について

本研究では好奇心についての先行研究として国内の研究より西川・雨宮(2015)、海 外の研究よりKashdan et al.(2018)を採用した。以下の二つの論文は好奇心を知的 好奇心の側面だけではなく様々な角度から測定したものである。また研究のモデルも 「好奇心を高める」ことを目的としたものではなく、「住めての人が持つ好奇心がどの ようなタイプに分類されるのか?」に着目したものであり、本研究の方向性と合致し たものであるといえる。 先述したように好奇心には学ぶことに対する純粋な欲求というポジティブな動機に よるものと不確かさを嫌い、曖昧さを回避しようとするネガティブな動機によるもの の2 種類が存在する。西川・雨宮(2015)はこの二つをそれぞれ「拡散的好奇心」「特 殊的好奇心」と名付け、それらを測定するための尺度を作成した。この研究以前では 好奇心についての日本における尺度研究はほとんど行われておらず、特にここで触れ られているような好奇心のネガティブな動因に触れている研究は本研究がほぼ初とい える。しかしながらこの研究以降、日本の好奇心研究は積極的には行われておらず、 積極的に好奇心研究を行っている西洋に対して水をあけられている可能性が考えられ る。 そこで海外の好奇心研究の動向を知るためにKashdan et al.(2018)を先行研究と して採用した。Kashdan は好奇心の持つ 2 つの側面に着目しながら継続して研究を行 う中で、この2 つの側面では好奇心を包括的のカバーできていないことを明らかにし た。そのような背景の中で、本先行研究では好奇心を先ほどの学ぶことへのポジティ ブなものを「喜びに満ちた探求」、不確かさを嫌うネガティブなものを「剥奪感度」と それぞれ言い換え、その2 つに加えて、新しい、予期しない、不明瞭なイベントを探 索することから生じる疑問、混乱、不安、およびその他の苦痛の形を受け入れる意欲 としての「ストレス耐性」、会話を観察、会話、または聞くことで、他の人が何を考え、 何をしているかを知りたいという欲求としての「社会的好奇心」、物理的、社会的、お よび金銭的なリスクを冒して、多様で複雑で強烈な経験を獲得する意欲として「スリ ルの追求」の3 つを加えた 5 つの次元で好奇心を捉え、その 5 つの次元を測定するた めの尺度を作成した。

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そしてそれらを用いて人々を好奇心の切り口で「魅了タイプ-12 好奇心、特に喜びに満ちた探求を中心にあらゆる次元で高いタイプ」、「問題解決者タ イプ-剥奪感度が高く、他の次元が中程度に高いタイプ」、「共感タイプ-社会的好奇心が 高く、他の次元が中程度に高いタイプ」、「回避タイプ-すべての次元で低く、特にスト レス耐性は著しく低いタイプ」の4 種類に分かれることを明らかにした。よって先行 研究では「好奇心の高い人はどのような人か?」を明らかにすることに加え、「その人 の持つ好奇心はどのようなタイプなのか?」を明らかにすることに成功した非常に先 進的な好奇心研究であるといえる。しかしながら 2020 年現在本論文は学術論文や実 用的なブログなど様々な場面で紹介されてきてはいるが、いずれも尺度作成に留まっ ておりそれを用いた実用的な研究はなされていない。よって本尺度を用いて様々な角 度から研究を行うことは意義のあるものであるといえる。

1.2.2 職業体験学習に関する先行研究の紹介とその課題について

続いて職業体験学習に関する先行研究の紹介とその課題について概説する。職業研 究については福岡(2003)を先行研究とした。福岡の研究では工業高校に対するフィ ールドワーク、並びに質問紙調査を用いて①専門高校のインターンシップの特徴と② 小中学校での職業体験学習の経歴が専門高校でのインターンシップの教育効果に及ぼ す影響を明らかにしたうえで、③初等・中等教育から高等教育までの間に一貫した系 統的・発展的な職業体験学習についてキャリア発達支援の観点から考察を行った。調 査方法として工業高校の教員並びに教育委員会主任指導主事へのインタビュー調査、 生徒に対する質問紙調査並びにインターンシップの感想文分析を行い、調査期間は 2002 年 4 月から 2003 年 3 月までであった。質問紙調査については主にキャリア教育 の経験の有無、性別や学年といった生徒の属性、インターンシップの学習達成度並び に充実度、高等教育機関のインターンシップのイメージについて回答を求めた。質問 紙調査によってインターンシップの学習達成度について「問題解決能力・アイデンテ ィティ」、「社会的スキル」、「学習意欲向上」の3 つの主成分に分かれることが明らか となり、それぞれの主成分について「問題解決能力、アイデンティティ」については 性別と学内成績、「学習意欲向上」についてはインターンシップの職種の専門性が強い 規定要因として機能していることが明らかになった。一方で「社会的スキル」につい ては規定要因を明らかにすることができなかった。また過去の職業体験の経験が高校

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13 で行われるインターンシップの教育効果に影響を持たないこと、調査校の生徒の高等 教育機関でのインターンシップイメージに拡がりがないことが明らかになった。以上 の結果から高等学校のインターンシップはその前後の職業体験学習とは独立した存在 であることが確認できる。 以上の内容を踏まえたうえで、筆者の考える福岡(2003)の課題と検討の余地につ いて記述する。 まず本研究ではインターンシップの学習達成度について3 つの主成分から検討を行 っているが、その結果を見ると影響関係が認められているのが性別や学級内成績とい ったものに限られている。調査校が工業高校であることを考慮すると調査対象の性別 比率は大きく偏ったものであると考えられ、この結果が正確なものであると語るのは 難しいのではないかと考えられる。また「社会的スキル」においては影響関係が確認 できない状態である。それ以外においても先行研究で用いられていない角度から影響 関係を分析することで先行研究では明らかにされていない影響関係について分析し、 考察を行うことは意義のあるものであると考えられる。また、本研究では1 時点での インターンシップの教育効果のみを分析しており、複数時点でのデータ分析、並びに 通常授業での教育効果との比較を行っておらず、インターンシップとの関係性が不明 瞭であることが課題として挙げられている。また、先行研究は2003 年の研究であり、 昨今の教育改革に鑑みると学習の質に変化が起こっている可能性も考えられるため、 先行研究のデータを改めて取り直し、その差を考察する必要もあると考えられる。

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1.3 本研究の目的

本研究では以上のような背景を踏まえて、工業高校、職業体験学習、好奇心という 3 つのテーマに着目して、大きく「工業高校において特徴的な職場体験学習の学習達 成要因を明らかにすること」、「職業体験学習の効果を好奇心の側面から明らかにする こと」の2 つを研究目的とした。以上の目的を明らかにするために①5 次元好奇心尺 度の翻訳とその信頼性・妥当性の検証、②職業体験学習の学習達成度の効果の検証、 ③工業高校生の持つ好奇心の特性の把握、並びに好奇心タイプと職業体験学習の学習 達成度の関係性の検証、この3 つの研究を行うこととする。 第一研究の目的は、今注目されつつある好奇心研究に対し新たな視点を与えた研究 として、Kashdan et al.(2018)に着目し、ここで用いられている 5 次元好奇心尺度 の日本語版を作成し、その信頼性、妥当性を検証することである。そのため5 次元好 奇心尺度の日本語訳を行い、その妥当性を検討するために確認的因子分析を用いた適 合度の検定を行う。妥当性については因子分析を用いた因子的妥当性の検証に加え、 翻訳に際しての文化の違いに着目し、日本語訳した際に表記に問題が生じたもの、日 本の文化に当てはめた際に回答することが困難になりそうなものを除外し、適合度の 向上を図るという内容的妥当性の側面についても検討を行った。また削除した項目に ついて考察を行い、項目が文化的に異なる文脈においても成立するよう修正を行う。 本研究によって日本で現在用いられている既存の好奇心尺度とは異なる視点を用いた、 より詳細な分析を行うことのできる尺度を日本で用いることが出来、日本の既存の好 奇心研究とは異なる視点を持った研究を行うことが出来る点で、本研究は意義のある 研究であるといえるだろう。 第二研究の目的は、先行研究にて課題として挙げた、先行研究によって明らかにさ れたインターンシップの教育効果が真にインターンシップを要因としたものであるの か不明瞭である点、インターンシップ以外の職場体験学習について言及がなされてい ない点、先行研究の実施から月日がたっている点に着目し、課題を改善し再度調査し なおすことで研究の効果を再検討することである。先行研究ではインターンシップの みに着目していた点については質問内容をインターンシップに加え、課題研究や出前 授業といった外部との関わりを持つ職場体験学習全体を対象としたものとした。また 先行研究ではインターンシップでの学習達成のみを質問していたのに対し、本研究で

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15 は通常授業での学びについても同様の質問項目で調査を行い、その差を検討すること で職場体験学習そのものの効果の検討を行った。また、基礎項目を先行研究と同様に し、先行研究の調査項目についても改めて検討した。本研究によって先行研究の効果 を改めて検討することで現在の職業体験学習の効果を検証することは、過去の成果に 基づいて内容を改めるという意味で過渡期にあるキャリア教育の発展に寄与できると 考えている。 第三研究の目的は先行研究ではインターンシップにおける学習達成度の規定要因分 析をほとんど発見することができていなかったことから、学習達成度の差に影響があ るような規定要因を新たに発見し、その原因を考察することとする。本研究では第二 研究で用いた基本属性に加え、第一研究で作成した尺度を用いて調査対象をその人の 特性に合わせた4 つのタイプに分類し、そのタイプを新たに説明変数として学習達成 との規定要因を分析する。その際に調査対象の持つ好奇心の傾向について概観を述べ、 その結果についても考察を行う。先述したようにKashdan et al.(2018)の記述の中 では好奇心は問題解決志向の強いタイプや共感性の高いタイプなど単一ではない好奇 心が示されており、工業高校での学びがどのような好奇心のタイプとの結びつきが強 いのか、また職業体験学習に強い興味を示すのはどのタイプなのかを明らかにするこ とで、今までの成績に代表される知識ベース中心の評価とは異なる人間性ベースの視 点から、学校、そして生徒個人を見つめなおすことができる点で本研究の意義は見い だされると考えている。

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調査校の選定理由とその学校の取り組みについて

2.1 調査校の特徴と選定理由について

本研究では調査校として仙台市立T 高等学校を選択した。本項ではその特徴と調査 校として選択した理由について記述する。調査対象校の匿名性を保つために、T 高等 学校の特徴については概要の記述にとどめる。まず、T 高等学校は、全日制で 4 つ の 工業に関する小学科、並びに定時制で2 つの工業に関する小学科により構成される 高 校である。生徒数は三学年全体で約600 名 (男子 約 550 名 、女子約 50 名)で あ る。近年の卒業後の進路は、就職約70% 、進学約 30%である。仙台市は古くからの 商業都市で中心部は大規模な商業地域であるが、学校の存在する東部や郊外には仙台 港を中心とする大規模な工業団地がある。また仙台市内には、同規模の工業高校が 1 校、また高等専門学校が1 校ある。 仙台市は全国的にみても地域を挙げて職業人を育成しようとする働きが特に強い市 である。特に仙台市が独自に行っている仙台自分づくり教育の中では学校及び企業・ 地域の協議によって将来の仙台市の社会を担う子供たちに、「働くこと」に対する価値 観や学ぶ意欲を育む機運の醸成を目的として、仙台市内の企業がキャリア教育の場を 提供するような働きが行われている。また仙台市を含む宮城県のみやぎ工業会では、 地域の産業界と行政、学校が連携・協働し、高校生が企業との交流を通じて、実践的 な技術や知識、並びに社会人、職業人としての志を育むことを目的とした、「クラフト マン21」という事業が行われている。 本研究ではT 高等学校が以下のような理由により、調査対象としてふさわしいと判 断した。まず、T 高等学校では 3 年時の課題研究の中で全学科が地域と交流を持つプ ロジェクトに参加している点が挙げられる。インターンシップや出前授業が生徒の意 欲や必要となる小学科によって人数が左右されるような学校が多い中、ほとんどの生 徒が何らかの形で地域と交流を持つ点で、本研究の意義に合致すると考えられる。ま た、先述したようにT 工業高校のある仙台市東部はその周辺が大規模な工業地域内に 位置しており、生徒が熟練の技術に接しやすい環境に位置している。また地域内に職 人が多いことから授業外でも関わることが多い環境にあることが考えられる。以上の ように立地の面でも調査校にふさわしいと判断した。

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2.2 調査校の取り組みとその概要の紹介

調査校では主に3 年生の課題研究、並びに 2 年生のインターンシップ、出前授業を 通じて、地域に貢献できる資質・能力の育成に取り組んでいる。その中でも本項では 代表的な取り組みとして課題研究について概要を紹介する。 調査校では2017 年より「課題解決型学習による主体的・協働的な学びの実践」とい う研究主題で公開授業や授業研究を通じた総合的な授業実践を行っている。この課題 研究は調査校の地域との関わりにおいて大きな意味を持つものであることが考えられ る。以下にその代表的なものを紹介する。 ① 地域小学生へのプログラミング教室(機械科、電気科) ② 高齢者住宅へのテクノボランティア(電気科) ③ 測量による小学校グラウンドのトラック作成(土木科) ④ モルタルを用いた市内動物公園へのモニュメントの寄贈(土木科) この様に課題研究の時間をコンペティション作品の制作や資格取得のための勉強時 間に充てるだけではなく、地域との関わりの時間に充てることで「学校から社会への スムーズな移行」を視野に入れた、知識や技能に留まらない職業人の育成につなげて いる。本プロジェクトの教育効果については生徒へのアンケートを通じて「学んだ知 識・技能を実際の現場で用い、失敗を恐れずに挑戦する大切さを学んだ」「作業を行っ た高齢者の方から励ましの言葉をもらって地域の貢献する大切さを学んだ」といった ような、本活動でしか得られない経験をすることができたことが確認できた。またこ れらの活動に関する社会的な評価として2020 年には「第 13 回キャリア教育優良教育 委員会,学校及び PTA 団体等文部科学大臣表彰」を受賞、地域貢献活動の実績から文 部科学大臣表彰を受賞するなど非常に高いものとなっている。

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第一研究について

3.1 目的

5 次元好奇心尺度の日本語訳版を作成し、その因子構造を確認するとともに、質問 紙の持つ構成概念妥当性を確認するため、項目の内容的側面に着目し、翻訳の際に日 本の持つ文化において回答が難しいと考えられる項目や直訳の際に原文の持つ文脈を 説明しきれていない可能性のある項目について検討する。ここでの妥当性の判断基準 については翻訳文をそのまま用いた尺度と言語や文化、項目に対する説明性について の検討を行い、項目を削除した尺度のそれぞれに対して確認的因子分析を行い、それ ぞれの適合度を比較する。 本研究においては、原文において極端な表現が使われている項目や英語と日本語に おいてニュアンスが異なる単語を用いた項目については適合度を下げる可能性が考え られるため項目から除外したほうが良いことが考えられる。例えば、ある項目にあっ た「夜も眠れない程に」などの表現は項目に対する自分の当てはまりではない部分に 焦点が当たることで回答にぶれが生じる可能性がある。以上のような点を軸に捉えな がら項目の検討を行っていく。尚項目検討ののちに削除項目の再検討を行い、文化的 に異なる文脈においても成立するよう修正を行う。

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3.2 方法

調査期間:2019 年 7 月,9 月 調査参加者:仙台市にある工業高校の生徒 1、2 年男女合わせて 373 人を対象とし た。 調査票:個人属性(性別、学年、追跡調査用個人番号)と以下に説明する日本語版 5 次元好奇心尺度により構成されている。尚同日にレジリエンス、自己調整、部活動や 特別活動の参加についても調査を行っているが本研究には用いないため割愛する。 5 次元好奇心尺度:Kashdan et al.(2018)の作成した 5 次元好奇心尺度(原題: The Five-Dimensional Curiosity Scale)を日本語に訳して使用した。5 次元好奇心

尺度は、好奇心の持つ5 つの特徴を評定する 25 項目によって構成されている尺度で

ある。尚ここで述べられている5 つの特徴とは上に示した「喜びに満ちた探

求:Joyous exploration」「剥奪感度:Deprivation sensitivity」「ストレス耐性:Stress tolerance」「社会的好奇心:Social curiosity」「スリルシーキング:Thrill seeking」の 5 つである。 日本語訳の作成は以下の手順で行った。英語原版の翻訳許可については原文の今後 の展望の欄にて「本尺度を世界中の老若男女に使ってほしいために本尺度の著作権を 主張しない」と言った旨の言葉が記されており、そこから翻訳に際し改めて許可を取 る必要はないと判断し、翻訳を開始した。尚、著作者に対しては研究終了の折に日本 語版作成に対する報告書を送付する。翻訳についてはまず翻訳サイト(Google 翻 訳)を用いて直訳を行い、その後訳が不明瞭な部分、直訳ではあるが文脈と合わない 部分については筆者、海外への論文投稿や発表の経験のある教授、英語を専門に学ん でいた留学生の計3 名にて日本語の修正を行った。最後に改めて項目内容の確認を行

い、日本語の質問項目を完成させた。また原版では「1.does not describe me at all」 から「7.completely describes me」までの 7 件法での調査項目であったが、日本人が 回答する際に「どちらでもない」へと回答が集まってしまうことを避けるため、「1. よくあてはまる」から「4.まったくあてはまらない」までの 4 件法に改訂し作成し た。

手続き:先述した学校に直接伺い、授業時間の一部を利用して生徒にアンケートの 回答をお願いした。

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3.3 結果及び考察

項目分析:日本語版5 次元好奇心尺度の各項目について項目分析を行った。「よく あてはまる」を1、「ややあてはまる」を 2、「あまりあてはまらない」を 3、「全くあ てはまらない」を4 として得点化した。項目 11 から 15 にかけては逆転項目であっ たため、逆転処理を行い全体の分析を行ったところ、日本語版5 次元好奇心尺度の質 問項目の全体平均は2.43(標準偏差 0.94)であった。また分析に際して予めフロア 効果(平均値-標準偏差<1)の項目や天井効果(平均値+標準偏差>4)の項目の確認 を行ったがそのような項目は見られなかった。 探索的因子分析結果:これらの25 項目について探索的因子分析(最尤法、プロマ ックス回転)を行った。原文の5 次元好奇心尺度は、5 因子構造を前提にして作成さ れている。そのため、因子の解釈可能性を考慮し、因子数を5 因子に指定して分析 を行った結果、原文において報告されている5 因子構造とほぼ一致する解釈可能な因 子構造が示された。しかしながら項目10 のみ原文とは異なる因子を示したためその 扱いについては検討を行う。項目の選択に当たっては、いずれかの因子に0.35 以上 の因子負荷があり,それ以外の因子には0.30 以上の負荷がないという基準とした。 それに該当しない2 項目を削除した。 第 1 因子は、原文において学ぶことそのもの や新しい知識を得ることへのポジティブな欲求を評定するために設定された5 項目の うち「いつも私自身と世界についてどのように考えるかを課すような経験を探してい る」、「何かについて深く考えなければならないことがありそうな状況を探してい る」、の2 項目に高い因子負荷が示されており、原文と同様に「喜びに満ちた探求」 因子と命名した。第2 因子は、原文において不確かさを嫌うことに起因するネガティ ブな好奇心を評定するために設定された5 項目中「問題の解決策がわからないとイラ イラするので私はそれを解決するため一生懸命になる」、「私は解決しなければならな いと感じる問題に執拗に取り組んでいる」の2 項目に高い因子負荷が示されており、 原文のもつ「未解決な状況を嫌う」ニュアンスやその状況を改善するために行動を起 こすことが原文以上に強調された結果となったため、原文より変更し「曖昧さ回避行 動」因子と命名した。第3 因子は、原文において予期しない、不明瞭なイベントから 生じる疑問、混乱、不安、およびその他の苦痛の形を受け入れる意欲を評定するため に設定された5 項目のうち「不確実な状況から来るストレスに対処することができな

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21 い」の項目に高い因子負荷が示されており、原版と同様に「ストレス耐性」因子と命 名した。第4 因子は、原文において会話を観察、会話、または聞くことで、他の人が 何を考え、何をしているかを知りたいという欲求を評定するために設定された5 項目 中「他の人が会話をしているとき、それが何であるか、私は見つけるのが好きで す」、「他の人の周りにいるとき、私は彼らの話を聞き入るのが好きです」の2 項目に 高い因子負荷が示されており、原文のもつニュアンスが原文以上に強調された結果と なったため、原文より変更し「他者への好奇心」因子と命名した。第5 因子は、原文 において物理的、社会的、および金銭的なリスクを冒して、多様で複雑で強烈な経験 を獲得する意欲を評定するために設定された5 項目のうち「リスク(覚悟のうえで行 う冒険)をとることは私にとってわくわくする」の項目に高い因子負荷が示されてお り、原版と同様に「スリルの追求」因子と命名した。また尺度の信頼性を検討するた めにクロンバッハのα 係数を算出したところ「喜びに満ちた探求」因子が.83、「曖昧 さ回避行動」因子が.74、「ストレス耐性」因子が.77、「他者への好奇心」因子 が.82、「スリルの追求」因子が.77、尺度全体が.81 であり、十分に高い内的一貫性が 示されたため、本尺度は一定の信頼性のあるものであるといえる。(Table1)。 項目10 の検討:上に述べたように探索的因子分析の結果項目 10 のみが原文とは 異なる因子を持ってしまっていることが明らかになった。項目10「私が必要とする すべての情報を持っていないことにいらいらする」は原文では因子2(剥奪感度)に 対して因子を持っていたが、本研究では因子3(ストレス耐性)に対して因子を保持 している。この原因について検討を行っていく。筆者はこの項目について回答者が項 目の結果に注目して回答を行っている可能性があると捉えた。因子2 の他の項目につ いては未解決な状況を克服するために「行動する」ニュアンスが項目の中に示されて いる一方、項目10 は「いらいらする」で止まっており、結果だけに着目すると「未 解決な状況」よりも「いらいらする=ストレスを感じる」の方向に重きを置いた回答 が行われていたと考えられる。以上のような理由から因子3 を保持していると考えら れる。本項目については因子3 に含めて検討を行うことも考えたが因子 3 はストレス を感じるだけでなくそこに対する自分の行動について聞いている項目であり、内容の 一貫性が取れないと判断したため、項目10 は除外して今後の研究を行っていくこと とする。

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22 項目 M SD 第1 因子 第2 因子 第3 因子 第4 因子 第5 因子 第1 因子 : 「 喜び に 満ちた 探求 」 因子 (α =. 8 3 )       挑戦的 な 状況 を 成長 と 学び の機 会と 捉え て い る 1 .8 8 0 .7 6 0 .4 6 0 .2 1 0 .0 6 0 .0 1 0 .0 5       い つ も 私自 身と 世界 に つ い て ど のよう に 考え るかを 課す よう な 経験 を 探し て い る 2 .3 9 0 .9 0 0 .9 7 -0 .1 4 -0 .0 3 -0 .0 5 -0 .0 9       何かに つ い て 深く 考え な け れば な ら な い こと があ り そ う な 状況 を 探し て い る 2 .4 3 0 .9 3 0 .8 4 -0 .1 6 -0 .0 2 0 .0 5 0 .0 1       私に と っ て な じ みの な い テ ー マ に つ い て 学ぶ こと を 楽し む 2 .3 5 0 .9 2 0 .6 4 0 .1 1 -0 .0 3 -0 .0 7 0 .0 0       私は新 し い 情報 を 学ぶ のが 魅力 的だ と 思う   2 .0 2 0 .8 3 0 .4 4 0 .2 2 0 .1 0 0 .0 1 0 .1 3 第2 因子 : 「 曖昧 さ 回避 行動 」 因子 (α =. 7 4 )       私は答 え を 知ら な い ま ま 過ご す こと がで き な い ので 、       一つ の問 題に 何時 間も 費や す こと がで き る 2 .4 9 0 .9 6 -0 .0 3 0 .6 4 0 .0 1 0 .0 4 0 .0 4       問題の 解決 策が わか ら な い と イ ラ イ ラ す るので 私は そ れを 解決 す るた め       一生懸 命に な る 2 .2 1 0 .8 9 -0 .1 5 0 .7 9 -0 .1 6 0 .0 0 -0 .0 1       私は解 決し な け れば な ら な い と 感じ る問題に 執拗 に 取り 組ん で い る 2 .2 3 0 .8 2 0 .1 0 0 .7 4 0 .0 5 0 .0 0 -0 .1 3 第3 因子 : 「 ス ト レ ス 耐性 」 因子 ( 全て 逆転 処理 項目 ) (α =. 7 7 )       少し の疑 問点 のせ い で 新し い 経験 を 探す のを 止め て し ま う 2 .5 4 0 .9 0 0 .0 0 -0 .2 0 0 .5 6 0 .0 8 -0 .1 4       不確実 な 状況 から 来るス ト レ ス に 対処 す ること がで き な い 2 .5 2 1 .0 0 0 .0 2 0 .1 1 0 .8 1 0 .1 0 -0 .0 8       私の能 力に 自信 がな い と 新し い 場を 探す のは 難し い 2 .8 1 0 .9 2 0 .1 2 -0 .1 0 0 .6 6 -0 .0 2 0 .0 8       新し い 経験 が安 全か ど う かわ から な い と う ま く 行動 す ること が出 来な い 2 .7 7 0 .9 0 -0 .1 1 0 .0 6 0 .6 1 -0 .1 0 0 .2 3       私が驚 き を も つ 可能 性が あ ると き 集中 す ること は困 難だ 2 .6 3 0 .8 5 -0 .0 6 -0 .0 1 0 .4 0 -0 .0 2 -0 .1 0 第4 因子 : 「 他者 への 好奇 心」 因子 (α =. 8 2 )       私は他 人の 習慣 に つ い て 学ぶ のが 好き で す 2 .4 9 0 .9 1 0 .1 2 0 .0 3 -0 .0 9 0 .5 5 0 .0 7       私は人 々が な ぜ自 分た ちのやり 方で 行動 す るのかを 見つ け るのが好 き で す 2 .5 2 0 .8 8 0 .1 4 -0 .0 7 -0 .0 7 0 .6 9 0 .0 6       他の人 が会 話を し て い ると き 、そ れが 何で あ るか、私は 見つ け るのが好 き で す 2 .4 3 0 .8 9 -0 .1 4 0 .0 4 0 .1 0 0 .9 6 -0 .0 3       他の人 の周 り に い ると き 、私は 彼ら の話 を 聞き 入るのが 好き で す 2 .3 2 0 .8 9 -0 .0 2 0 .0 3 -0 .0 2 0 .6 4 0 .0 0 第5 因子 : 「 ス リ ルの 追求 」 因子 (α =. 7 7 )       何か新 し い こと を す ると い う 不安 は逆 に 私を 興奮 に かり た て る 2 .6 3 0 .9 1 0 .0 5 0 .0 0 0 .0 5 0 .2 0 0 .5 1       リ ス ク ( 覚悟 のう え で 行う 冒険 ) を と ること は私 に と っ て わく わく す る 2 .4 2 0 .9 3 -0 .0 6 -0 .0 2 0 .0 8 0 .0 0 0 .7 9       自由な 時間 があ ると き 、私は 少し 怖い こと を やり た い で す 2 .8 4 0 .9 5 0 .0 1 -0 .1 4 -0 .1 2 0 .0 1 0 .5 8       私は前 へ前 へと 冒険 を す ること は、前 も っ て 決め ら れるより はるかに 魅力 的で す 2 .2 4 0 .9 1 0 .0 5 0 .0 4 0 .0 6 -0 .0 7 0 .6 4       私はわ く わく し て 予測 で き な い 友人 が好 き で す 2 .2 2 0 .9 3 -0 .0 4 0 .0 4 0 .0 0 -0 .0 2 0 .5 8         5 次元 好奇 心尺 度( α =. 8 1 ) 因子間相関行列 第1 因子 第2 因子 第3 因子 第4 因子 第5 因子 第1 因子 1 .0 0 0 .5 2 -0 .1 5 0 .6 0 0 .5 9 第2 因子 0 .5 2 1 .0 0 -0 .2 8 0 .3 7 0 .4 0 第3 因子 -0 .1 5 -0 .2 8 1 .0 0 -0 .3 9 -0 .1 2 第4 因子 0 .6 0 0 .3 7 -0 .3 9 1 .0 0 0 .5 4 第5 因子 0 .5 9 0 .4 0 -0 .1 2 0 .5 4 1 .0 0 Table1:日本語版 5 次元好奇心尺度の各項目の平均値,標準偏差値ならびに因子分析表

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23 確認的因子分析結果:因子構造および項目の選定について確認するため、2 つの仮 説モデルによる確認的因子分析を実施した。仮説モデルは、原文と同じ25 項目を用 いた25 項目モデル、25 項目モデルから探索的因子分析の結果やそこからの解釈によ って項目を削除した22 項目モデルの 2 つである。それぞれのモデル適合度を算出し た結果、すべての指標において、探索的因子分析の結果とその解釈に基づく22 項目 モデルの適合度が高かった(Table2)。しかしながらどちらの値においても適合度の 値が低く、本尺度の因子的妥当性を示すには不十分であった。そのため本尺度から内 容的妥当性に焦点を当てながら項目を削除し、適合度の向上を図る。 内容的妥当性の検討:因子分析の結果に基づいて採用した22 項目について内容的 妥当性に基づいて改めて検討を行い、そぐわないと判断したものについては項目の削 除を行う。項目の削除の基準として以下の3 つを用いる。 ① 原文において極端な表現が使われている項目 ② 英語と日本語においてニュアンスが異なる単語を用いた項目 ③ 因子の持つ意味と異なるニュアンスを持つ項目 以上の基準に基づいて22 項目について検討を行った。検討については恣意的なもの にならないよう指導教員と議論を行いつつ進行した。検討の結果、項目2「いつも私 自身と世界についてどのように考えるかを課すような経験を探している」、項目23 「自由な時間があるとき、私は少し怖いことをやりたいです」の2 つの項目を削除し た。項目2 については「私自身と世界についてどのように考えるかを課す」という言 い回しが翻訳した時点で理解が難しく、意味がとりづらいため、回答のしづらい項目 となってしまっていると予想できる。また日常生活の中で「自分と世界」といった哲 学的なことを考え、かつそのような経験を探しているという項目は一般の人を対象と した項目の中では抽象度の高いものであると判断できる。項目23 については「怖い =scary」の持つニュアンスを和訳の際に表現することが出来ず、原文で持っていた 「スリル」のニュアンスが日本語に現れない項目となってしまった。本項目は項目ご との平均点が最も高く(2.84)、ネガティブな方向の回答が多いことからも、本項目 が原文の想定通りの機能を果たしていない可能性が高いと解釈することが出来る。以 上の2 項目を削除し、20 項目での適合度を算出した結果、すべての項目で改善がみ られ、20 項目版を採用することが妥当であると考えられる。尚、削除した項目につ いて改めてクロンバッハのα係数を算出したところ「喜びに満ちた探求」因が.77、

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24

CMIN

CFI

RMSEA

AIC

25項目

594.56

0.87

0.07

16878.74

22項目

411.86

0.89

0.06

14520.79

20項目

323.61

0.90

0.06

13271.57

「スリルの追求」因子が.74 と多少の減衰は見られたものの、十分な内的一貫性を持 った因子であるということが出来る。(Table2) Table2: 日本語版5 次元好奇心尺度の確認的因子分析結果 以上のような結果、及び考察から本研究では日本語版5 次元好奇心尺度は「喜びに 満ちた探求」、「曖昧さ回避行動」、「ストレス耐性」、「他者への好奇心」、「スリルの追 求」の5 つの主成分を持った 20 項目の質問紙として今後の研究に用いるものとす る。

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第二研究について

4.1 目的

職場体験学習の教育効果を確認するために、学習達成度についての質問紙調査を通 常授業と職場体験学習の2 つの場面で行った。質問項目については福岡(2003)にて 行われた学習達成度に関する質問項目を用いた。福岡(2003)の中では学習達成度に ついて「問題解決能力・アイデンティティ」、「社会的スキル」、「学習意欲向上」の3 つ の主成分に分類されていたため、それぞれの結果について授業や校内実習での達成と 職場体験学習に代表される外部人材との関わる授業や実習での達成との差を対応のあ るt 検定を用いて分析した。 また、2003 年の質問紙の測定可能性について検討を行うために、福岡(2003)にて 行われた質問紙調査と同様の調査を本研究でも行った。先述した学習達成度の3 つの 主成分について基本属性を説明変数として重回帰分析を行い、規定要因分析を行った。 また学科間については分散分析を用いて有意差の比較を行った。

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4.2 方法

調査期間:2020 年 11 月,12 月 調査参加者:仙台市にある工業高校の生徒 2、3 年男女合わせて 446 人を対象とした。 調査票:基本属性(追跡調査用個人番号、性別、学年、学科、希望進路、学級内成績、 欠席日数、インターンシップ参加の有無、中学時の職業体験学習)と以下に説明する 職場体験学習に関する学習達成度調査項目により構成されている。尚同日に先述した 5 次元好奇心尺度とキャリア発達に関する尺度についても調査を行っているが第二研 究には用いないため割愛する。回答についてはGoogle Form を用いたオンラインでの アンケート形式を用いた。オンラインでのアンケートが難しい生徒に対しては同様の 時間に紙面での回答を行った。 有効回答数:428(有効回答率:95.9%) 基本属性:福岡(2003)にて用いられたアンケートを参考に質問紙を作成した。内容 と回答欄については、「個人番号(昨年度データとの照合のため)」、「性別(男、女、 その他)」、「学科(土木、建築、機械、電気)」、「学年(2、3 年)」、「進路希望(進学、 就職、その他)」、「学級内成績(上:上位 1/3 以内、中:上位 1/3 よりも下位かつ上位 2/3 以内、下:上位 2/3 よりも下位」)」、「高校入学時点からの欠席日数総数(0〜5 日、6〜 10 日、11~15 日、16 日以上)」、「インターンシップ参加の有無」、「中学時代の職場体 験学習の参加の有無」となっている。 学習達成度調査:福岡(2003)にて用いられたインターンシップの学習達成度調査を 使用した。インターンシップの学習達成度調査は、学習達成度に関する3 つの主成分 を評定する13 項目によって構成されている尺度である。尚ここで述べられている 3 つ の特徴とは上に示した「問題解決能力・アイデンティティ」、「社会的スキル」、「学習 意欲向上」の3 つである。 以上について「通常授業や校内実習での学習達成」と「インターンシップや出前授 業などの外部との関わりの中での学習達成」の2 つのパターンについて同様の質問し、 回答を求めた。回答は、「かなりできた」、「ある程度できた」「それほどできなかった」 「全くできなかった」の中から該当するものを1 つ選択するように求めた。 手続き:先述した学校に直接伺い、授業時間の一部を利用して生徒にアンケートの回 答をお願いした。

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4.3 結果と考察

項目分析:質問紙調査での学習達成度調査の回答結果についてそれぞれ「かなりで きた」を「1」、「ある程度できた」を「2」、「それほどできなかった」を「3」、「全くで きなかった」を「4」として得点化した。学習達成度の質問項目の全体平均は通常授業、 校内実習での達成については1.80(標準偏差 0.67)、外部との関わりの中での達成は 1.60(標準偏差 0.80)であった。また分析に際して予めフロア効果(平均値-標準偏差 <1)の項目や天井効果(平均値+標準偏差>4)の項目の確認を行ったがそのような項 目は見られなかった。また基礎項目については学科については名義変数のまま用い、 「性別」は「男=1、女=2」に、「学年」は「2 年生=2、3 年生=3」に、「進路希望」 は「就職=1、進学=2」に、「学級内成績」は「上=1、中=2、下=3」に、「入学後の 欠席日数」は「0〜5 日=1 、6~10 日=2 、11~15 日=3、16 日以上=4」に、「イ ンターンシップの経験有無」は「有=1、無=2」に、「中学時の職業体験学習の経験有 無」は「有=1、無=2」にそれぞれ点数化した。基礎項目の記述統計については以下 に図表にて示す(Table3) Table3: 基礎項目の記述統計(単位:人) 男 女 その他 土木 建築 機械 電気 399 34 2 65 69 149 142 2年 3年 就職 進学 その他 224 201 279 142 2 上位 中位 下位 0~5日 6~10日 11~15日 16日~ 133 176 113 341 52 21 9 経験あり なし 経験あり なし 99 323 362 62 現在の成績 欠席日数 インターン参加 中学時代の 職業体験学習 性別 専攻 学年 希望する 将来の進路

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28 学習達成度の授業形態による差の検討:続いて質問紙調査によって得られた結果に 基づいて通常授業や実習での達成とインターンシップや出前授業といった外部との関 わりの中での達成に差が生じるかどうかの検証を行う。まず、学習達成度の各項目に ついて先行研究によって明らかにされた3 つの主成分に基づいて分類を行った。主成 分の構成概念については以下の図にて示す(Table4)。またそれぞれの主成分の平均値、 標準偏差、並びにα係数についても以下の図に示す(Table5)。社会的スキルについて はα係数が特に低く、項目(企業実態の理解)を削除したほうが高い数値を示したた め、今後の研究では項目を削除した3 項目にて分析を行う。項目改定後の平均値、標 準偏差、α係数についても以下に示す(Table5)。 Table4: 学習達成度の主成分とその項目 学習達成度のそれぞれの主成分に置ける通常授業等での達成と外部との関わりでの 達成の平均点の差が統計的に有意であるかどうかを検証するために、有意水準 5%で 両側検定のt 検定を行ったところ、問題解決能力・アイデンティティについては、 t (376) = 0.18,p=0.86( p >0 .05)であり、それぞれの間での平均点の差に有意差は見ら れなかった。社会的スキルについてはt (379) = 3.74, p=0.00(p <0 .05)となりそれぞれ の間で有意差がみられた。社会的スキルに関する結果から、社会的スキルの獲得につ いては通常授業等の達成の方が外部との関わりよりも有意に高い平均点を示している ことが明らかになった。学習意欲向上については、t (366) = 0.97,p=0.33( p >0 .05)で あり、それぞれの間での平均点の差に有意差は見られなかった。 課題発見・解決能力の習得 責任感、自尊心等の習得 自分自身の個性や適性の理解 自分の意志を伝えるうえでの、話術や文章力 同級生等から経験や体験を聞くことが出来た 時間を守る重要性の理解 チームワーク等の人間関係の重要性の理解 企業実態の理解 健康維持の重要性理解 専門科目学習の重要性理解 授業での学習を受け入れ先で利用 授業についてさらに学習する必要性の理解 最新の知識や技術に触れた 問題解決能力・アイデンティティ(5項目) 社会的スキル(4項目) 学習意欲向上(4項目)

参照

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