項目分析:本研究では第一研究にて用いた日本語版5次元好奇心尺度、並びに第二 研究にて用いた職業体験学習についての学習達成度調査のデータを基に分析を行う。
本研究にて新しく用いるデータとして5次元の好奇心の主成分の傾向に基づいた4つ の好奇心タイプがある。4つの好奇心タイプは先述したように、「魅了タイプ-好奇心、
特に喜びに満ちた探求を中心にあらゆる次元で高いタイプ」、「問題解決者タイプ-剥奪 感度が高く、他の次元が中程度に高いタイプ」、「共感タイプ-社会的好奇心が高く、他 の次元が中程度に高いタイプ」、「回避タイプ-すべての次元で低く、特にストレス耐性 は著しく低いタイプ」に分類される。この分類の基準については先行研究には記述さ れていなかったため、筆者が独自に設定した。5 次元の主因子得点を参考にそれぞれ
「高い」は平均以上、「中程度に高い」は上位2/3を下回らない、「低い」は平均以下、
「著しく低い」は下位 1/3 を下回るものと設定し分類を行った。尚、その基準を用い ても分類ができなかった群については最も近しい区分に組み込んだ。好奇心タイプご との5次元好奇心尺度の平均点並びに標準偏差を以下に示す(Table8)。また、基礎統 計として好奇心タイプと基本属性とのクロス集計表を以下に示す(Table9)。
Table8:好奇心タイプごとの尺度平均得点並びに標準偏差
魅了タイプ 問題解決者タイプ 共感タイプ 回避タイプ 全体平均
喜びに満ちた探求 6.44(1.57) 8.19(2.14) 6.85(2.21) 8.78(1.90) 7.50(2.14) 曖昧さ回避行動 5.59(1.78) 6.55(2.06) 5.38(1.59) 7.00(1.97) 6.13(1.99) ストレス耐性 14.03(2.88) 11.33(2.48) 15.82(2.26) 15.69(1.60) 13.78(3.03) 他社への好奇心 8.57(2.42) 13.35(2.70) 7.62(1.94) 11.94(1.95) 10.53(1.81) スリルの追求 6.84(1.89) 9.11(2.49) 10.12(1.38) 10.38(1.81) 8.64(2.51)
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Table9:好奇心の4つの分類と基本属性とのクロス集計表(単位:人)
魅了 タ イ プ (1 57 :3 6.9 %) 問題 解決 タ イ プ (1 26 :2 9.6 %) 共感 タ イ プ (5 5: 12 .9 %) 回避 タ イ プ (8 7: 20 .5 %) 合計 (4 25 ) 男 14 9( 37 .3 %) 10 7( 26 .8 %) 51 (1 2.7 %) 82 (2 0.6 %) 399 女 8( 23 .5 %) 17 (5 0%) 4( 11 .8 %) 5( 14 .7 %) 34 そ の他 0 2( 10 0%) 0 0 2 土木 28 (4 3.1 %) 14 (2 1.5 %) 9( 13 .8 %) 14 (2 1.5 %) 65 建築 29 (4 2.0 %) 22 (3 1.8 %) 7( 10 .1 %) 11 (1 5.9 %) 69 機械 39 (2 6.1 %) 58 (3 8.9 %) 20 (1 3.4 %) 32 (2 1.5 %) 149 電気 61 (4 3.0 %) 32 (2 2.5 %) 19 (1 3.4 %) 30 (2 1.1 %) 142 2年 86 (3 8.4 %) 57 (2 5.4 %) 27 (1 2.1 %) 54 (2 4.1 %) 224 3年 71 (3 5.3 %) 69 (3 4.3 %) 28 (1 3.9 %) 33 (1 6.4 %) 201 就職 10 3( 36 .9 %) 78 (2 8.0 %) 38 (1 3.6 %) 60 (2 1.5 %) 279 進学 54 (3 8.0 %) 46 (3 2.3 %) 16 (1 1.2 %) 26 (1 8.3 %) 142 そ の他 0 0 1( 50 %) 1( 50 %) 2 上位 49 (3 6.8 %) 41 (3 0.8 %) 16 (1 2.0 %) 27 (2 0.3 %) 133 中位 66 (3 7.5 %) 52 (2 9.5 %) 26 (1 4.8 %) 32 (1 8.2 %) 176 下位 41 (3 6.3 %) 32 (2 8.3 %) 12 (1 0.6 %) 28 (2 4.8 %) 113 0~5 日 12 0( 35 .2 %) 10 0( 29 .3 %) 50 (1 4.7 %) 71 (2 0.8 %) 341 6~1 0日 22 (4 2.3 %) 14 (2 3.1 %) 4( 7.7 %) 12 (2 3.1 %) 52 11 ~1 5日 10 (4 7.6 %) 8( 38 .1 %) 0 3( 14 .3 %) 21 16 日~ 4( 44 .4 %) 3( 33 .3 %) 1( 11 .1 %) 1( 11 .1 %) 9 経験 あ り 45 (4 5.5 %) 35 (3 5.4 %) 8( 8.1 %) 11 (1 1.1 %) 99 なし 11 2( 34 .7 %) 88 (2 7.2 %) 47 (1 4.6 %) 76 (2 3.5 %) 323 経験 あ り 13 4( 37 .0 %) 10 9( 30 .1 %) 42 (1 1.6 %) 77 (2 1.3 %) 362 なし 23 (3 7.1 %) 16 (2 5.8 %) 13 (2 1.0 %) 10 (1 6.1 %) 62 欠席日数 イ ンタ ー ン参加
中学時代の 職業体験学習 性別 専攻 学年 希望 す る 将来の進路 現在の成績
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5つの好奇心因子の規定要因分析:つづいて、5つの好奇心属性を被説明変数とし、
説明変数を「性別」「学年」「進路希望」「学級内成績」「入学後の欠席日数」「インター ンシップの経験有無」「中学時の職業体験的学習の経験有無」とする重回帰分析(ステ ップワイズ法)をおこなった。また、説明変数の有意性について、5%水準で検定を行 った。結果について以下の図に示す(Table10)。尚、影響関係が見られたものについ てはB値とベータ値、影響関係が見られなかったものについてはベータ値のみを記入 した。
Table10:5つの好奇心因子の規定要因分析
Table10の結果より、「喜びに満ちた探求」については、「学級内成績」が影響を与
えていることが示された。学級内成績については成績が低い方と比較して成績上位者 の方が因子を強く持っていることが示された。「曖昧さ回避行動」については、「学 年」、「学級内成績」、「中学時の職業体験の有無」が影響を与えていることが示され た。学年については2年生に対して3年生の方が因子を強く持っていることが明らか になった。学級内成績については成績が低い方と比較して成績上位者の方が因子を強 く持っていることが示された。中学時の職業体験の有無については職業体験の経験の ない方が因子を強く持っていることが示された。「ストレス耐性」については「イン
B ベータ 有意確率 B ベータ 有意確率 B ベータ 有意確率
定数 6.594 6.750 12.562
性別 0.069 0.159 0.008 0.870 -0.029 0.551
学年 -0.062 0.206 -0.399 -0.100 0.040 -0.021 0.703
進路希望 0.037 0.446 0.060 0.214 0.014 0.776
学級内成績 0.460 0.162 0.001 0.542 0.208 0.000 0.080 0.102
欠席日数 0.026 0.601 -0.005 0.922 0.044 0.367
インターン参加の有無 0.023 0.637 0.043 0.430 0.720 0.103 0.036
中学時の職業体験の有無 0.021 0.674 -0.399 -0.107 0.029 0.040 0.414
R2乗 0.026 0.063 0.011
調整済みR二乗 0.024 0.056 0.008
F値 11.041 9.217 4.418
有意確率 0.001 0.000 0.036
B ベータ 有意確率 B ベータ 有意確率
定数 10.424 5.360
性別 0.049 0.102 0.039 0.078 0.110
学年 -0.041 0.404 -0.551 -0.112 0.023
進路希望 -0.052 0.292 0.030 0.541
学級内成績 0.005 0.924 0.045 0.356
欠席日数 -0.024 0.619 -0.057 0.248
インターン参加の有無 0.033 0.496 -0.001 0.981
中学時の職業体験の有無 -0.019 0.706 -0.010 0.835
R2乗 0.010 0.013
調整済みR二乗 0.008 0.010
F値 4.295 5.243
有意確率 0.039 0.023
スリルの探求 他社への好奇心
ストレス耐性 曖昧さ回避行動
喜びに満ちた探求
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ターンシップ参加の有無」が影響を与えていることが示された。中学時の職業体験の 有無についてはインターンシップ経験のある方が因子を強く持っていることが示され た。「他者への好奇心」については、「性別」が影響を与えていることが示された。性 別については女性に対して男性の方が因子を強く持っていることが明らかになった。
「スリルの追求」については、「学年」が影響を与えていることが示された。学年に ついては2年生に対して3年生の方が因子を強く持っていることが明らかになった。
5つの好奇心尺度の専攻間比較:つづいて専攻間で好奇心尺度の主成分について差 が生じるのか検討を行うために、1要因の分散分析を行った。各専攻における主成分 ごとの平均点を以下に示す(Table11)。
Table11:各専攻における好奇心因子ごとの平均得点
分散分析の結果、「喜びに満ちた探求」因子については群間の得点差は5%水準で 有意であった(F (3, 416) = 6.28, p < 0.05)。TukeyのHSD法(10%水準)による 多重比較を行ったところ、建築科の生徒が土木科、機械科、電気科の生徒に対して有 意に高い水準を示していた。「曖昧さ回避行動」因子については群間の得点差は5%
水準で有意差は見られなかった(F (3, 418) = 0.331, p >0.05)。「ストレス耐性」因子 については群間の得点差は5%水準で有意であった(F (3, 416) = 2.95, p < 0.05)。
TukeyのHSD法(10%水準)による多重比較を行ったところ、機械科の生徒が電気
科の生徒に対して有意に高い水準を示していた。「他者への好奇心」因子については 等分散の過程ができなかったため、Welchの検定を行った。その結果、群間の得点差
は5%水準で有意であった。Games-Howell法(10%水準)による多重比較を行った
ところ、電気科の生徒が機械科の生徒に対して有意に高い水準を示していた。それ以 外の学科間については有意な差が見られなかった。「スリルの追求」因子については 群間の得点差は5%水準で有意であった(F (3, 417) = 3.42, p < 0.05)。Tukeyの HSD法(10%水準)による多重比較を行ったところ、電気科の生徒が機械科の生徒
土木科 建築科 機械科 電気科
喜びに満ちた探求 7.51 6.59 7.93 7.49
曖昧さ回避行動 6.20 6.16 6.23 6.01
ストレス耐性 13.74 13.42 13.39 14.37
他社への好奇心 10.08 10.57 11.15 10.10
スリルの追求 8.74 8.56 9.11 8.18
40 に対して有意に高い水準を示していた。
「喜びに満ちた探求」因子については学級内成績が影響を与えており、成績上位者 の方が高い因子得点を保持していることが示された。「喜びに満ちた探求」因子は一 般的に知的好奇心と呼ばれるものに近い定義を持つ因子であり、昨今の知的好奇心が 学習効果に影響を及ぼすという関係性が本研究でも支持されることとなった。
「曖昧さ回避行動」因子については学年と学級内成績、中学時の職業体験の有無が 影響を与えており、上級生、成績上位者、職業体験未経験者が本因子を高く持ってい ることが示された。この因子は不確定な情報を嫌い、進んでその状況を打破しようと するような好奇心を指しており、先行研究では主に学者が本因子を高く持っているこ とが示されていた。つまり学年が上昇するにつれて、生徒が曖昧なものを嫌うより
「職人らしい」人材へと成長しているということができる。またここでの学級内成績 は座学だけではなく実習等も含めた総合成績であるため、学級内成績もまた、上位者 ほどより高度な職業人材であるといえるのではないだろうか。また、中学時代の職業 体験を経験した群の値が低いことについては、職業体験を行うことである種の寛容性 のようなものが生まれ、曖昧さを許容できるようになった結果が表れたのではないか と考察した。
「ストレス耐性」因子についてはインターンシップ経験の有無が影響を与えてお り、経験者が本因子を高く持っていることが示された。これはインターンシップの経 験がストレス耐性の向上に寄与しているということができるが、一方で希望性のイン ターンシップであることを考慮するとストレス耐性が高い生徒がインターンシップに 手を挙げた可能性もあり、その点については更なる調査が必要に思われる。
「他者への好奇心」因子については男女差が影響を与えており、女子に比べ男子が 本因子を高く持っていることが示された。この結果については、成長段階として女子 と比較し男子の方が外へと感情の向きやすい時期であり、それが影響を与えていると 考えられる。
「スリルの追求」因子については学年が影響を与えており、学年が上がるほど本因 子を高く持っていることが示された。この結果については工業高校のカリキュラムが 影響を与えていると考えられる。工業高校では1,2年で危険な機材を扱うことに対す る安全対策を徹底して教育され、実践段階になってから、社会人に必要な失敗を恐れ ない心やチャレンジ精神などを培っていく。そのような方針の成果が結果に表れてい