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Alzheimer病における生物学的早期診断マーカーの確立

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Academic year: 2021

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(1)

Alzheimer病における生物学的早期診断マーカーの

確立

著者

荒井 啓行

(2)

AJzheimeJr病における生物学的

早斯診断マーカーの確立

(08680832)

平成8年度∼平成9年度

科学研究費補助金(基盤研究(C)(2))研究成果報告書

平成10年3月

研究代表者  荒 井 稗 行

(東北大学医学部老人科)

(3)

はしがき

アルツハイマー病(Akheimer-s disease : AD)は、臨床上種々の認知機能が進

行性に低下することに特徴づけられ また病理学的には多数の神経細胞の消失、老

人斑(Senile plaques : SPs) 、神経原線維変化(NeurofibrillaⅣ tangles : NFrs)

といった特徴的な病理所見の出現を特徴とする神経変性疾患である。 ADの臨床診断

は今日、 DSM-Ⅲ RおよびNINCDS-ADRDAの診断基準または、 DSM-Ⅳの診断基

準に基づいて行われているのが一般的と思われる。しかし、これらの診断基準は、

日常生活や社会生活上重大な支障を引き起こす程の認知機能の低下を条件としてい

るため、患者一人一人の社会生活のレベル、さらに診断に当たる医師の専門性、経

験にも左右されうるものであり、科学的客観性に乏しいことが指摘されている。ま

た、 ADの確定診断は、最終的な病理組織学的検索によりなされるわけであるが、臨

床診断と剖検診断の不一致も少なからず指摘されている。生物学的診断マーカーの

開発は、このような経緯の中からADの臨床診断に、より確かな客観性を与えるもの

として多くの研究者から求められてきたものであると同時に、 1)アルツハイマー

治療薬の客観的な効果判定システム、 2) ADの診断基準を満たす以前の、あるいは

発症前のADの検出という将来的に重要な役割が期待されている。さらに、同一の診

断マーカーを用いることにより、異なる施設間の比較研究も可能となる。従って、

生物学的診断マーカーの開発は多くのAD研究領域の中でも、最も重要な領域として

認識され、将来への発展が期待されている。

(4)

研究組織

研究代表者:荒 井 啓 行(東北大学医学部老人科)

研究経費

'平成8年度

1,500千円 平成9年度   1,000千円 計      2,500千円

研究発表(英文学会誌への掲載に限る)

l・ Terajima M, A錘月, Itabashi S, Higuchi M, Sasaki H. Elevated cerebrospinalfluid tau :

Implications for eary diagnosis ofAIzheimer.s disease. J. Am. Geriatr. Soc. 44:101211013,

1996.

2・ A担皇旦Nakagawa T, Kosaka Y, Higuchi M, Matsui T, Okamura N, Tashiro M, Sasaki H.

Elevated cerebrosplnalfluid tau protein level as a predictor of dementia in

memory-impaired individuals. AIzheimer's Research 3:2 I 1-213, 1997.

3・ AKH, Terajima M, Miura M, Higuchi S, Muramatsu T, Matsushita S, Machida N,

Nakagawa T, Lee V・M-Y, Trojanowski JQ, Sasaki H. Effect of genetic risk factors and

disease progression on the cerebrospinalfluid tau levels in AIzheimer's disesase. J. Am.

Geriatr. Soc. 45:1228-1231, 1997.

(5)

4・垂直旦Morikawa Y, Higuchi M, Matsui T, Clark CM, Miura M, Machida N, Lee V.M-Y,

Trojanowski JQ, Sasaki H・ Cerebrospinalfluid tau levels in neurodegenerative diseases

withdistinct tau-related pathology・ Biochem・ Biophys・ Res・ Commun. 236:2621264, 1997.

5・ 4EaLH・ Clark CM, Ewbank DC, Takase S, Higuchi S, Miura M, Seki H, Higuchi M,

Matsui T・ Lee V・M-Y, Trojanowki JQ, Sasaki H・ Cerebrospinalfluid tau proteinas a

potential diagnostic marker in AIzheimer's disease (Position Paper). Neurobiol. Aging, in

press, 1998.

研究目的

アルツハイマー病における有効な生物学的診断マーカーを開発する意義は、以下の

3点に要約できる。即ち、

1 )アルツハイマー病以外の痴呆性疾患との識別診断。

2)アルツハイマー病において、超早期の診断を可能にする。

3 )病気の進行のモニターと有効な薬物治療の選択およびその客観的な効果判定

を可能にする。

これまで、我々はアルツハイマー病における生物学的診断マーカーの開発に取り組

んできた。その結果、脳脊髄液tau蛋白やアミロイドβ蛋白および両者のコンビネー

ションは、上記1) 2)の目的を満足するものであることを示してきた。アルツハ

イマー病の治療戦略は、今後大きく変わろうとしている。コリンエステラーゼ阻害

(6)

剤や女性ホルモン製剤が臨床の場で試みられているが、本研究はアルツハイマー病

や他の痴呆性疾患に対する有効な薬物治療の選択と客観的な効果判定を可能にする

ような生物学的マーカーを開発することを目的としている。

方′ 法

脳脊髄液(CSF)の採取及びcsF-tauの測定 通常の腰椎穿刺法にてCSFを採取し1500rpm 10分遠心後、上清を-80℃に保存す

るo CSF採取にあたっては、あらかじめ患者またはその家族よりinformed consent

を得ておく。この研究計画は、すでに東北大学医学部倫理委員会により承認されて

いる。得られたCSF50J上1を用い、 Innogenetics社製CSF-tau assay kit (ELISA

法)によりCSF-tauを定量する。

平成8年度

東北大学老人科おより米国Graduate Hospital (フィラデルフィア市)に外来通

院または入院中のAD患者87名(平均年齢

73・8±8.8歳) 、パーキンソン病(PD)患者 13名(68.4±10.0歳) 、運動ニューロン病 \

(7)

CSF- lau proleill (pg/nlり o g (MND)患者12名(66.2±8.2歳) 、進行 性核上性マヒ(PSP)患者5名(66.8±5.0 歳) 、脳血管障害(CVD)患者21名,(67.8 ±10.6歳) 、 AIDS患者4名(39.0±4.7

歳) 、髄膜炎または脳炎(髄膜炎/脳炎)忠

者35名(33.9±14.8歳) 、てんかん患者6名 (48.8±23.1歳) 、上記以外の神経疾患患 `ち JCIb I /<lb AJ:A (ち

0%b uiZ?GB も0 0  0   0 0 0   0      8 1 ◆   ●      ● 図2 各疾患におけるCSF-lau胤olhers群において. 3例のCreutzfetd-Jacob病患者(・)および1例のil滞 Ll三水痢症患者(+)およびl例のビタミンBL2欠乏症患 者(#)においても, CSトtau値の上昇が認められた。 者(他群) 18名(57.7±16.0歳) 、および正常コントロール22名(48.2±20.1歳) を対象とした(計223名) 。 87名のAD患者の内訳は、 1)男性35名、女性52名; 2) 65歳未満発症のearly-onsetAD 28名(うち家族歴を有するもの5名) 、 65歳以 降発症の1ate-onsetAD 54名(うち家族歴を有するもの5名) 、発症年齢不詳5名; 3)本邦のAD患者67名、米国のAD患者20名(白人16名、黒人3名、 Native American l名)である。 CVD群はすべて慢性期(発症後6ケ月以上)の脳血管障害

患者を対象とし、髄膜炎/脳炎群ではタンパク・細胞数増加のもっとも著しい時期

のCSFを分析対象とした。他群の内訳は、筋疾患患者4名、 Creutzfeld-Jacob病疾患

3名、正常圧水頭症疾患3名、多発性硬化症患者3名、急性小脳炎患者1名、神経梅毒

患者1名、慢性炎症性脱髄性多発根神経炎患者1名、 Bell麻疹患者1名、横断性脊髄炎

患者1名およびビタミンB12欠乏症患者1名である。 22名の正常コントロール群におけるCSF-tau値は10.6±8.6Pg/ml (平均±標準偏

差)であった。 CSF-tau値は、加齢とともに緩徐に増加する傾向が見られた(

Y-0.215Ⅹ+3.43、 γ±0.541、 P-0.017) 。これら正常者におけるCSトtauは、髄液

(8)

総蛋白量の約2×10-6%を占めた。一方、図2に示すようにCSF-tau値はAD群で78.0 ±44.2 Pg/ml、 PD群で19.1±8.5 Pg/ml、 MND群で26.3±21.2 Pg/ml、 PSP群で 20.1±11.6 Pg/ml、 CVD群で24.4±31.4 Pg/ml、 AIDS群で49.6±37.6 Pg/ml、 髄膜炎/脳炎群で30.1±43.4 Pg/ml、てんかん群で14.2±10.6 Pg/ml、他群で35.7 ±52.5 Pg/mlであった(df=9,トvalue 12.19, P<0.0001) 。 AD以外の神経疾患患 者全体におけるCSF-tau値は、 27.8±38.7 Pg/mlでありAD群と比して有意な相違 がみられた(P<0.001) 。また、 AD以外の神経疾患の中で、 MND (1例) 、 CVD (2例) 、 AIDS (2例) 、髄膜炎/脳炎(4例) 、 Creutzfeldt-Jacob病(3例) 、正 常圧水頭症(1例)およびビタミンB12欠乏症(1例)においてCSF-tauの高値が見ら

れたが、これらの患者とADとの鑑別が臨床上問題となることも考えられる。血清

tau値は、測定限界以下であった。

平成9年度

1.平成8年度に引き続き、

AIzheimer病における脳脊髄液tau蛋白

の診断的意義について検討を行った。ま

ず、 17名の患者より平均2.1年の間隔を

おいて2回CSFを採取し疾病の進行に伴

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5 免ツ r 澱 ニツ ト l-17 ー3 4 2 9 ll 鳴 0       1       2 yea rS 図3 アルツハイマー病におけるCSF-tau値の綻崎的 変動を示す。症例12において,もっとも大きなCSF-tauの変化が認められたが,この1Ii:-例ではアミロイド IbL管症のため.繰り返す脳HA.JLJLが見られている。 うCSF-tau値の変動を調べた結果、個々の症例においてCSF-tau値はほぼ一定であ \

(9)

り、進行に伴う大きな変動は認められなかった。このことは、 CSF採取の時期の違

いによる為陰性は生じにくいことを示唆している。また、アポリポタンパクE遺伝

子のみならず、 α1-アンチキモトリブシニンやプレセニリンー1遺伝子の多型性も

CSトtau値に影響を与えていなかった。 (文献3) 2一,前頭葉型痴呆やレビー小体病においても、 CSF-tau値は高値を示すものが多 く、 AIzheimer病との間にオーバーラップが認められ、臨床症状の評価が診断には不

可欠であることを強く示唆するものである。一方、進行性核上性麻疹や皮質基底核

変性症においてはCSF-tau値は上昇しなかった。 (文献4) 3・ CPRO・5 (痴呆疑い)の患者15名を追跡した結果、 10名はADへと進行した。 その10名におけるCSF-tau値は、 CPR O・5のstageで既に高値を示しAIzheimer病の 範囲にあった。 CSF-tauは、 AIzheimer病の早期診断マーカーとして、有用であろう と考えられた。 (文献1,2)

4・上記により、米国AIzheimer診断マーカー検討委員会メンバーとして選出され

た。 (文献5)

参照

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