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J-STAGE Advance Published Date:June 20,2013 Short Report 受傷アスリートのリハビリテーション過程における ソーシャルサポート希求の変容 1 2 Change of Social Support Sought

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(1)

受傷アスリートのリハビリテーション過程における

ソーシャルサポート希求の変容

鈴木 敦

1)

・中込四郎

2)

Atsushi Suzuki

1

and Shiro Nakagomi

2

Abstract

The purpose of this study was (a) to examine how post-injury psychological states (competitive motivation, anxiety, impatience, isolation, disappointment, depression, and exhaustion) change in comparison with pre-injury states, and (b) to clarify the change of support provider and support content sought by injured athletes during the three phases of recovery prior to returning to competition. A population of 457 university athletes completed a questionnaire on their post-injury psychological state, the change of social support sought post-injury, and beneficial social support during rehabilitation. Results revealed that injured athletes experienced decreased competitive motivation and increased anxiety, impatience, isolation, disappointment, depression, and exhaustion. Results suggested that injured athletes sought support from teammate , student trainer , and coach before returning to competition and from teammate and student trainer during rehabilitation. Regarding support content, technical advice and listening consistently scored high, and comforting , material assistance , and practical assistance , factors which may influence the state of recovery, decreased as injury improved. Finally, technical advice and evaluation which may influence post-recovery competitive activity increased as full recovery drew closer.

Key words: injured athlete, social support seeking, support provider, support content, rehabilitation process

Change of Social Support Sought by Injured Athletes during Rehabilitation

1) 筑波大学大学院博士課程人間総合科学研究科体育科学専攻 〒305-8574 茨城県つくば市天王台1-1-1 2) 筑波大学体育系 〒305-8574 茨城県つくば市天王台1-1-1 連絡先:鈴木 敦 E-mail: [email protected]

1 Doctoral Program in Physical Education, Health and Sport Sciences, School of Comprehensive Human Sciences, University of Tsukuba

Tennoudai 1-1-1, Tsukuba, Ibaraki 305-8574

2 Faculty of Health and Sport Sciences, University of Tsukuba Tennoudai 1-1-1, Tsukuba, Ibaraki 305-8574

Corresponding author: Atsushi Suzuki J-STAGE Advance Published Date:June 20,2013

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1.序  論 1−1 怪我による心理的影響 怪我はアスリートにとって避けては通れない 問題である.今日,大衆メディアにおいてもプ ロスポーツ選手の怪我についての報道が頻繁に なされている.そして,怪我は一時的な競技停 止のみならず,競技能力の停滞や引退を招く原 因ともなる.現に,一流のスポーツ選手が怪我 を理由のひとつにして引退しているケースも 多々ある.そして,怪我は単に身体的に傷害を 与えるだけでなく,選手の心にも傷跡を残す危 険因子として捉えることが可能である(上向・ 竹之内,1997).さらに,彼らは,アスリート にとって怪我とは身体的喪失だけにとどまら ず,心理社会的(愛情・依存対象,スポーツ選 手としてのアイデンティティ)喪失へと発展す る危険性をはらんでいることを指摘している. このように,アスリートにとって怪我は,非常 に大きな問題となり得る. アスリートは怪我によってネガティブな感情 を表出する.これは,普段の競技生活では味わ うことの少ない特有の感情である.受傷後の心 身の反応について,Weiss and Troxel(1986) は,身体反応として筋疲労,不眠,食欲喪失 等,そして情緒反応としては,不信,恐れ,激 怒,抑うつ等を報告している.また,Pearson and Jones(1992)は,受傷アスリートが高い 欲求不満,不安,緊張,敵意,抑うつ,失望 感,そして疲れや情緒混乱等を示していたと述 べている.しかし,これらの情緒反応の程度に 言及した論文はなく,研究者や現場スタッフの 経験からの推測に因るところが大きい.このよ うな情緒反応に関わる側面について具体的に示 されることは,受傷アスリートの心理の理解, ひいては,現場スタッフやチームメートによる 受傷アスリートへの効果的なサポートや早期復 帰に向けた有効な心理介入法を同定していく一 助になると考えられる. 受傷アスリートにとって,受傷後のリハビリ テーションは,現場復帰を果たす上で重要とな る.その際に,当該のアスリートはチームから 離れた場所で,チームと異なったトレーニング メニューを行うことが多い.そのような状況 は,アスリートに孤立感を高じさせやすいと考 えられる.Baekland(1970)は,強制的な運動 停止に伴い,心理面でのいくつかの変化を認め ているが,その中の一つに対人関係の欲求の高 まりを認めている.さらに,中込(1981)は, 内科疾患により運動停止を迫られた大学生競技 者の事例から,心的機能の低下・情緒的抑制, 防衛的・警戒的な態度などの抑制的変化を認め ると同時に,やや攻撃的な態度,対人関係の欲 求の高まりといった相反する動きを明らかにし ている.彼らの主張に共通することは,運動停 止後の対人関係の欲求の高まりである.これ は,他者からの援助,つまりソーシャルサポー トを欲している状況であると言い換えられる. 1−2 受傷アスリートとソーシャルサポート ソーシャルサポートは,ストレスを軽減させ る効果がある(例えば,Cohen and Wills, 1985). 受傷後のネガティブな情緒反応も一種のストレ スから表出される反応であるため,ソーシャル サポートが情緒安定性やリハビリテーションア ドヒアランス(rehabilitation adherence:積極 的にリハビリテーションに取り組む姿勢),ひ いては受傷アスリートの早期復帰に有効に機能 し得る背景となっている. 先行研究では,リハビリテーションアドヒア ランスを促進する要因としてソーシャルサポー トを取り上げている(例えば,Duda et al., 1989).リハビリテーションアドヒアランスが 促進されれば,それだけ早期復帰の可能性は高 まる.つまり,受傷アスリートへのソーシャル サポートは,早期復帰に積極的な影響を与える のである.Duda et al.(1989)をはじめとした 研究ではソーシャルサポートの積極的な影響を 明らかにしているが,その方法論的問題を鈴 木・中込(2011)は指摘している.彼らは,ス ポーツ傷害とソーシャルサポートにおけるレ ビュー論文の中で,先行研究にはリハビリテー ション期間全体を通して有効に機能し得たソー シャルサポートを測定しているものが多く,早

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期復帰に対する影響を直接的に確かめたものが ないと主張している.また,彼らは,受傷から 復帰までの時間経過に伴いアスリートの心理的 側面が変容しているため,リハビリテーション 全体を通してのサポートの種類・内容の有効性 を明らかにしても現場で起こっている問題への 支援へと必ずしもつながらないことも指摘して いる.受傷アスリートの心理サポートは,リハ ビリテーション過程における情緒的変化をふま えながら調査する必要があると考えられる. 1−3  受傷後の情緒的変化とソーシャルサ ポート 受傷アスリートの競技活動の継続不能やチー ム内での地位・役割の喪失などの喪失体験から の情緒回復過程をKübler-Ross(1969)の臨死 5 段階モデルを援用した研究がいくつか認めら れる(例えば,Gordon, 1986;Lynch, 1988;中 込・上向,1994).この臨死 5 段階モデルは, 末期医療における患者の情緒変容過程(段階) として,否認,怒り,取り引き,抑うつ,受容 を想定している.ここでは,これらの情緒変容 を経ていく中で,徐々にストレスが軽減され, 最終的には怪我の現実を受容するという時系列 的な段階が想定されている. この段階モデルを検証した研究から,受傷ア スリートの心理は受傷後から復帰に至るまでに 段階的に変化していることが窺える.そして, これらの変化に伴うソーシャルサポートの希求 も通常の競技生活で得られるソーシャルサポー トと比較して特異的な内容となると推測され る.Udry(2001)もソーシャルサポートの種 類だけでなく,サポート供給量や時期もサポー トの効果を高める上で重要であると述べてい る.Hoar and Flint(2008)は,受傷から復帰

までのリハビリテーション過程を3 段階の仮設 状況(受傷段階,リハビリテーション−回復段 階,復帰段階)を設定して援助要請意図(help-seeking intention)を調査している.そして, サポート提供者として母親,父親,親友,チー ムメート,コーチ,学生セラピストをあげ,母 親からのサポートをリハビリテーション−回復 段階,復帰段階と比べて受傷段階に,コーチか らのサポートを復帰段階,リハビリテーション −回復段階,受傷段階の順に希求することを明 らかにしており,負傷後の時間経過に伴う援助 要請の変化を認めている.しかし彼らは,サ ポート内容の変容については言及しておらず, 現場でサポートを提供するためにはそれらの変 容も調査する必要がある.Johnston and Carroll (1998)は,リハビリテーションを初期,中期, 後期に分けて,それぞれの時期で受けたサポー トや理想的な(必要とする)サポート等につい て面接調査を行っている.彼らは,リハビリ テーション初期には情緒的サポート,後期には 情報的サポートを選択することを明らかにして いる.しかしながら,中期には特徴的なサポー トが認められなかった.その一つの要因とし て,彼らの設定したリハビリテーション中期の 設定基準が不明確であり,受傷アスリートの気 分を統制しきれていないと考えられる.また, 彼らはそれぞれの段階で理想的なサポート提供 者についても調査をしているが,その程度の変 容を明らかにしておらず,実際のサポート提供 のためには不十分な情報提供と言わざるを得な い.受傷アスリートが希求するサポート提供者 とサポート内容やそれらの程度を明らかにする ことは,受傷アスリートの早期復帰を意図した 有効な援助を同定する手掛かりとなると考えら れる.

な お, 本 研 究 で は,Hoar and Flint(2008) が用いた援助要請意図(help-seeking intention) ではなくソーシャルサポート希求という言葉を 用いた.両者は,サポートを求めるというとい う側面では同様の概念であるが,援助要請意図 はその後のコーピング行動の背景要因の理解を 目的としている.本研究では,サポート提供者 への情報提供を目的としたため,ソーシャルサ ポート希求という言葉を採用した. 2.目  的 本研究では受傷アスリートの心理状態を理解 し,リハビリテーション過程におけるソーシャ ルサポート希求の違いを明らかにするために,

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以下の検討課題を設定した.(1 )受傷後に代 表される心理状態(競技意欲,不安,焦り,孤 立感,失望感,抑うつ,疲労感)が受傷前と比 べてどの程度変化しているのかを調査するこ と.(2 )受傷から復帰までの期間を 3 段階 (受傷段階,リハビリテーション−回復段階, 復帰段階)に分け,それぞれの時期によるソー シャルサポート希求(サポート提供者とサポー ト内容)の違いを明らかにすること. 3.方  法 3−1 調査協力者 体育会運動部に所属する大学生アスリートに 調査を実施し,記入漏れや記入ミスのあったも のを除いた有効回答者457名(男性364名,女性 93名)のデータを分析資料とした.調査協力者 の主な競技種目は,野球,サッカー,柔道,剣 道などであった. 3−2 質問紙 フェイスシート 性別,年齢,学年,競技 歴,受傷歴への記載を求めた.特に,受傷歴 は,調査日より2 年以内に負った怪我で復帰ま でに2 週間以上かかった怪我と限定し,その時 期,診断名,復帰までの期間についての回答を 求めた. 受傷後の気分 フェイスシートの受傷歴を記 入したアスリートを対象に,受傷直後の気分に ついての回答を求めた.調査項目については, 先行研究(例えば,Weiss and Troxel, 1986; Quinn and Fallon, 1999)や受傷アスリートの自伝・ブ ログ等(例えば,望月,2008)の怪我にまつわ る記述(当時の気分や状況)を参考にして,受 傷アスリートに見られる特徴的な情緒反応とし て,競技意欲,不安,焦り,孤立感,失望感, 抑うつ,疲労感の7 項目を設定した.そしてそ れらの7 項目について,受傷していない状態の 平均的な意欲や気分を0 として,受傷直後の気 分を−5(ものすごく減少した),−4(すごく 減少した),−3(減少した),−2(少し減少し た),−1(わずかに減少した), 0 (変わらな い),1(わずかに増加した),2(少し増加し た),3(増加した),4(すごく増加した),5 (ものすごく増加した)の11件法で回答を求め た. 受傷後のソーシャルサポート希求 Hoar and Flint(2008)を参考に,受傷後から復帰に至る までのリハビリテーション過程を3 段階の仮設 状況(受傷段階,リハビリテーション−回復段 階,復帰段階)に分け,それぞれの段階でどの ような人物(母親,父親,親しい友人,チーム メート,学生トレーナー,コーチ)から,どの ような内容のサポートを受けたいのかについて 調査協力者457名に質問紙調査を行った.サ ポート内容については,Johnston and Carroll (1998)が用いた 8 項目を参考にし,項目内容 を受傷時に対応したものに整備するために,加 筆・修正を加えた注1).以下に8 項目を示す. 体験の共有(共感や送り手の経験をもとにした 情報提供),技術的助言(リハビリテーション メ ニ ュ ー や 復 帰 の 展 望 に つ い て の ア ド バ イ ス),評価(リハビリテーションにおける怪我 に対しての測定・評価),傾聴(話を聞くこ と),情緒的支援(努力を認めて賞賛するこ と),慰め(落ち込んでいる際の慰め),物質的 支援(物や金銭面での援助),実践的支援(怪 我のために日常生活でのできないことへの援 助)である.サポート提供者とサポート内容 は,それぞれ1 (受けたくない),2(あまり受 けたくない),3(どちらともいえない),4(少 し受けたい),5(受けたい)の 5 件法で回答を 求めた.

仮設状況は,Hoar and Flint(2008)を参考 にし,上述の受傷後の気分を各段階に反映させ

た教示文を設定した注2).仮設状況を設定する

ことは,実際の状況ではないため,必ずしも当 該状況での調査協力者の認知・行動面の変化を 高い確率で予測するとは限らないという欠点が ある.しかし,Hoar and Flint(2008)は,仮 設状況の設定について,リハビリテーションの 状況を標準化することができ,状況的な要求だ けでなく,情緒・行動反応を反映することがで きると述べている.さらに,彼らは,Sullivan et al. (2002)や Lazarus(1999)の指摘を受け

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て,回顧的に調査をすることは,調査協力者自 身の援助要請の意味合いが時間経過に伴って変 化することに問題があり,仮設状況を設定する ことの必要性を主張している.本研究の仮設状 況もHoar and Flint(2008)に倣って,全治 6 か月の膝の怪我を負ったと仮定して回答を求め た.福田ほか(2011)によるアメリカンフット ボール部員の10年間の傷害調査や辰巳(2009) の様々な競技種目の受傷アスリートを対象とし た研究において,傷害の好発部位に膝があげら れており,多くのアスリートにとって膝の負傷 はイメージしやすいと考えられる.また,この 調査をもとに受傷アスリートにサポートを提供 する際,受傷アスリートがどのようなサポート を受けたのかを明らかにするよりも,どのよう なサポートを希求するのかを明らかにする方が 現場スタッフにとってもサポート提供を行う上 で情報価が高いと考えられる.これらの理由か ら,本研究においては,Hoar and Flint(2008) の用いた受傷段階,リハビリテーション−回復

段階,復帰段階という3 段階の仮設状況を設定

し調査することとした(仮設状況の詳細な説明

を注3 に示す).

仮設状況の設定に際して,まずHoar and Flint

(2008)を参考にし,簡略化した素案を作成し た.その後,仮設状況の妥当性を高めるため に,競技スポーツにおいて過去2 年以内に怪我 を負ったことのある大学生や大学院生5 名に質 問紙への回答ならびに意見を求め,仮設状況の 表現や回答方法について精緻化を図った.そし て,質問紙の修正を行った後,異なる5 名の対 象者に再度質問紙を実施し,そこでの回答を参 考にし,最終的に質問紙を完成させた. 受傷時に役立ったソーシャルサポート 上記 の仮設状況に答えるにあたって調査協力者は, 自身の過去の受傷経験をもとに仮設状況を想起 すると推測される.そして,自身の受傷時にお いて役立ったと感じたサポートは,再度受傷し た際にも同様のサポートを希求すると考えられ る.したがって,サポート提供者とサポート内 容の関係を知る手掛かりとすることを目的とし て,受傷時に役立ったソーシャルサポートにつ いての調査を行った注4).前述した受傷歴に具 体的な記入のあった調査協力者に対して,受傷 から復帰までの間に役立ったと感じたソーシャ ルサポートについて自由記述形式で回答を求め た.回答にあたっては,サポート提供者,サ ポート内容,サポートの影響についての記述を 求め,サポート提供者については,最大3 名 (3 つの回答欄)までとして,それぞれについ て回答を求めた.その中で,記入に不備のな かった123名を分析対象とした. 手続き 質問紙への回答は,教室で行い,第 一研究者が立ち会って質問紙への回答を求め た.また,質問紙への質問がある場合は挙手を するように要請し,質問に対しては第一研究者 が即時に回答した. まず,第一研究者が本研究の概要ならびに回 答方法について説明を行った.その後,フェイ スシート,受傷後の気分,役立ったソーシャル サポート,受傷後のソーシャルサポート希求の 順に回答を求めた.受傷後のソーシャルサポー ト希求への回答においては,調査協力者に正確 に,注意深く回答してもらうために,時間をか けて仮設状況の教示文を読み,自身のおかれて いる状況へのイメージ想起を求めた.さらに, 仮設状況へのイメージ想起に際して,調査協力 者の過去の経験(自分自身の膝や膝以外の負傷 経験や,他者の受傷時のリハビリ過程を見聞き した経験)に基づいてイメージを膨らませて回 答を行っても良いという旨を伝えた.そして, 調査協力者には,まず受傷段階の仮設状況を読 み,十分に自分自身が怪我をしている状態をイ メージ想起できてから,次の段階に進む前に, 受傷段階においてサポートを希求する人物と内 容に回答するように要請した.その後,リハビ リテーション−回復段階と復帰段階においても 同様の手順を繰り返し回答することを求めた. 4.結  果 4−1 受傷後の気分 調査協力者457名のうち,過去 2 年以内の復 帰までに2 週間以上を要した受傷経験のあった アスリートは235名(全体の51.4%)であり,そ

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れらの者の競技停止期間の平均は2.76±2.58ヶ 月であった.これらのアスリート235名を対象 に,怪我を負っていない時の平均的な意欲や気 分と受傷後の意欲や気分の値に差が見られるの かについて1 サンプルの t 検定を実施した結 果,競技意欲(t(234)= -7.821, p<.01),不安 (t(234)=15.792, p<.01), 焦 り(t(234) =16.595, p<.01), 孤 立 感(t(234)=9.304, p<.01),失望感(t(234)=10.277, p<.01),抑う つ(t(234)=8.114, p<.01), 疲 労 感(t(234) =3.28, p<.01)のすべての項目において 1 %水 準で有意差が見られ,受傷後に競技意欲が低下 し,ネガティブな気分を高めることが明らかに なった(表1 ).その中でも,不安と焦りは他 の項目と比較して高い値を示した. 4−2  受傷後の時期によるサポート希求行 動の違い 受傷後の3 つの時期においてソーシャルサ ポートを希求するそれぞれの人物の得点の平均 に差があるかどうかを一元配置分散分析で検 討したところ,1 %水準で父(F(2, 912)=5.791, MSe=.384, p<.01),母(F(2, 912)=20.050, MSe=.388, p<.01),チームメート(F(2, 912)=8.818, MSe=.489, p<.01),トレーナー(F(2, 912)=4.549, MSe=.444, p<.01),コーチ(F(2, 912)=20.652,MSe=.477, p<.01)に有意差が見られた.また,多重比較 (Bonferroniの方法)の結果, 5 %水準で,父 は受傷段階のほうが復帰段階よりも,母は受傷 段階,リハビリテーション−回復段階,復帰段 階の順でサポートが強く希求された.さらに, チームメートは受傷段階と復帰段階のほうがリ ハビリテーション−回復段階よりも,学生ト レーナーは復帰段階のほうがリハビリテーショ ン−回復段階よりも,コーチは他の2 段階と比べ て復帰段階にサポートが強く希求された(表2 ). また,同様に各時期での希求する各種ソー シャルサポート得点の平均に差があるかどうか を一元配置分散分析で検討したところ,1 %水 準で技術的助言(F(2, 912)=10.164, MSe=.419, p<.01),評価(F(2, 912)=33.152, MSe=.421, p<.01), 慰め(F(2, 912)=10.791, MSe=.410, p<.01),物 質的支援(F(2, 912)=15.520, MSe=.483, p<.01), 実践的支援(F(2, 912)=50.543, MSe=.452, p<.01) に有意差が見られた.また,多重比較(Bonferroni の方法)の結果,5 %水準で,技術的助言は他 の2 段階と比べて復帰段階に,評価は受傷段 階,リハビリテーション−回復段階,復帰段階 の順に,慰めは受傷段階,リハビリテーション −回復段階のほうが復帰段階よりもサポートが 強く希求された.さらに,物質的支援と実践的支 援は受傷段階,リハビリテーション−回復段階, M SD M SD M SD 父 3.16 1.16 3.07 1.20 3.02 1.16 5.791 ** 1>3 母 3.34 1.18 3.19 1.22 3.08 1.18 20.050 ** 1>2>3 友人 3.33 1.19 3.35 1.20 3.26 1.15 2.473 チームメート 3.81 1.00 3.66 1.12 3.83 1.03 8.818 ** 1,3>2 学生トレーナー 3.72 1.01 3.69 1.07 3.82 1.05 4.549 ** 2<3 コーチ 3.50 1.10 3.48 1.12 3.75 1.13 20.652 ** 1, 2<3 較 比 重 多 階 段 帰 復 階 段 傷 受 1=受傷段階,2=リハビリテーション−回復段階,3=復帰段階. **p<.01 リハビリテーション −回復

意欲と気分

M

SD

競技意欲

-1.43

2.8

**

不安

2.57

2.49

**

焦り

2.56

2.36

**

孤立感

1.44

2.37

**

失望感

1.68

2.5

**

抑うつ

1.11

2.09

**

疲労感

0.51

2.36

** 注)受傷前の意欲や気分を0とし,受傷後のそれ ぞれの変化量を示した. **p<.01 表1 受傷後の意欲と気分の変容 表2 仮設状況におけるソーシャルサポート希求(人物)の変容

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復帰段階の順にサポートが希求された(表3 ). 4−3 役立ったソーシャルサポート サポート提供者,サポート内容,サポートの 影響の評定観点を設定し,本研究者2 名で自由 記述の回答内容のコード化を図った後,数量的 な分析を行った.評定観点の設定にあたって は,まず,第一研究者が調査協力者の回答を検 討し,暫定的な評定観点を設定した.その後, 本研究者2 名がそれに基づき,ランダムに抽出 した20名を独立して評定を行い,そこでの結果 を参考に評定者間の一致率を高めるために,評 定観点の加筆・修正を行った.この結果を受 け,最終的には本研究者2 名の合議により,評 定を行った. 以下に,サポート提供者,サポート内容,サ ポートの影響の評定観点を示す.サポート提供 者は,家族,チームメート(チームメートには 同様の時期に受傷を経験したアスリートを含 む),部活外の友人,コーチ・監督(監督や顧 問の先生,高校や中学で指導を受けた先生を含 む),医療関係者(医者やトレーナー),その他 の6 名に分類した. サポート内容については,前述した8 項目と その他の計9 項目を設定した.体験の共有は, 「(自身の怪我の)体験談を教えてくれる」や 「一緒にリハビリしてくれた」等の記述がみら れ「共にいてくれる」という空間の共有を含め た.技術的助言については,「病院を紹介して くれた」や「練習内容を教えてくれる」等の記 述がみられ,治療に関する情報提供を含めた. また,傾聴には「話を聞いてくれた」や「愚痴 を聞いてくれた」等の記述がみられ,「心配し てくれた」や「相談に乗ってくれた」などを含 めた.情緒的支援には,「励ましてくれた」や 「頑張れって言ってくれた」等の記述がみら れ,励ましや受傷アスリートに対する存在感の 認知を含めた.物質的支援は,「金銭面での援 助」や「マッサージをしてくれた」等の記述が みられた.本研究においてマッサージは,医療 関係者等からのサービスとして提供されるもの であると考えたため,物資的支援として位置づ け,集計を行った.実践的支援には,「テーピ ングをしてくれた」や「私生活を手伝ってくれ た」等の記述がみられ,テーピングなどの物や 金銭面に関わらない道具的な支援も含めた. サポートの影響は,リハビリテーションへの 専心(「リハビリを頑張ろうと思った」等),早 期復帰への願望の高まり(「早く治そうと思っ た」や「早く復帰したいと思った」等),感 謝・安心感・嬉しさ(「ありがたいと思った」 や「気持ちが楽になった」等),支えの実感 (「支えられていると実感した」や「孤立感がな くなった」等),自身の理解(自身の動きの範 囲や怪我の現状の理解を含む)(「治ってきてい ることを実感した」や「今は,選手を支えよう と思った」等),競技に対する動機づけの維 持・増進(「やる気が維持された」や「もう一 度上を目指そうと思った」等),その他の7 項 目を設定した. 表3 仮設状況におけるソーシャルサポート希求(サポート内容)の変容 M SD M SD M SD 体験の共有 3.67 1.65 3.70 1.05 3.75 1.08 1.820 技術的助言 3.96 1.14 3.91 1.06 4.10 0.99 10.164 ** 1,2<3 評価 3.39 1.07 3.48 1.10 3.73 1.07 33.152 ** 1<2<3 傾聴 3.87 1.03 3.84 1.00 3.85 1.01 0.447 情緒的支援 3.52 1.09 3.59 1.12 3.59 1.07 2.086 慰め 3.48 1.17 3.42 1.63 3.28 1.10 10.791 ** 1, 2>3 物質的支援 3.67 1.07 3.57 1.01 3.45 1.05 15.520 ** 1>2>3 実践的支援 3.78 1.03 3.60 1.00 3.34 1.10 50.543 ** 1>2>3 較 比 重 多 階 段 帰 復 階 段 傷 受 1=受傷段階,2=リハビリテーション−回復段階,3=復帰段階. **p<.01 リハビリテーション −回復

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が見られた. サポート提供者とサポート内容(表7 ),サ ポート内容とサポートの影響(表8 )について それぞれクロス集計を行った.クロス集計の際 には,回答者の記述数を一致させるため,最初 に想起したものを重要と判断し,1 つ目の欄に 記入された項目を代表サンプルとして用いた. これらの結果,主にコーチや医療関係者を技術 的助言,チームメートを傾聴,チームメートや 医療関係者を実践的支援のサポート提供者とみ なしていることがうかがえたが,評価や慰めは サポート源との関連性は見られなかった.ま た,傾聴,実践的支援,技術的助言はリハビリ テーションへの専心および早期復帰への願望 に,さらに実践的支援は感謝・安心感・嬉しさ にもつながることが明らかになった. 5.考  察 5−1 受傷後の気分 受傷前と受傷後の意欲や気分を比較した結 果,競技意欲は低下し,不安,焦り,孤立感, 失望感,抑うつ,疲労感は増大することが明ら かになった.児玉・岡(1997)は「受傷前より もパフォーマンスが低下したり,傷害が再発す るのではないかという不安や恐怖,早く競技に 復帰しなければライバルに遅れをとり,指導者 に見放されるかもしれないという焦燥感や切迫 感,どうせこの傷害は完治しないんだという諦 めや絶望感など,重度の傷害を負ったアスリー トは,様々な心理的苦痛を経験する」と述べて おり,本研究の結果もまた彼らの主張を支持す るものであった.そして,特に不安や焦りは他 の項目と比べ,大きな増加が認められた. 自由記述には,複数の提供者や一人の提供者 のサポート内容に複数の記述があるものもあっ た.それらはそれぞれ独立して評定を行った. 例えば,サポート内容の場合,「愚痴を聞いて くれたり,励ましてくれた」という回答は,傾 聴と情緒的支援という2 つの評定観点を一人の 受傷アスリートの回答とした.そのため,調査 協力者の数とそれぞれの回答数が一致しない項 目が見られるが,それぞれの受傷アスリートが 受けたソーシャルサポートの提供者,内容,影 響についてそれぞれの総数を求めた. 受傷アスリートが役立ったと感じたサポート 提供者(表4 ),サポート内容(表 5 ),サポー トの影響(表6 )の人数と比率を表 4 ~ 6 に示 した.サポート提供者においては,チームメー トや医療関係者が主なサポート源であった.サ ポート内容に関しては,技術的助言,傾聴,実 践的支援が多くのアスリートによって役立つと 感じられていた.サポートの影響は,リハビリ テーションへの専心や早期復帰の願望といった 怪我の治癒を促すような内容が多く,次いで感 謝・安心感・嬉しさや支えの実感に多くの回答 サポート提供者 人数 % 家族 29 13.7 チームメート 78 36.8 部活以外の友人 16 7.5 コーチ 32 15.1 医療関係者 54 25.5 その他 3 1.4 合計 212 100 表4 サポート提供者 表5 サポート内容 サポート内容 人数 % 体験の共有 13 6.3 技術的助言 43 21.0 評価 3 1.5 傾聴 45 21.9 情緒的支援 21 10.2 慰め 4 1.9 物質的支援 20 9.8 実践的支援 53 25.9 その他 3 1.5 合計 205 100 表6 サポートの影響 サポートの影響 人数 % リハビリテーションへの専心 46 25.7 早期復帰への願望 40 22.4 感謝・安心感・嬉しさ 33 18.4 支えの実感 29 16.2 自身の理解 14 7.8 動機づけの維持・増進 15 8.4 その他 2 1.1 合計 179 100

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仮設状況におけるソーシャルサポート希求の 変化について,人物においては,母親,父親, チームメート,学生トレーナー,コーチにおい て有意な変化が認められたが,親しい友人にお いては有意な変化は認められなかった.また, サポート内容については,技術的助言,評価, 慰め,物質的支援,実践的支援に有意な変化が 認められたが,体験の共有,傾聴,情緒的支援 においては,受傷直後から復帰までの間に変化 は認められなかった.

両親の得点は,Hoar and Flint(2008)の結 果と比較して,全ての段階において他の人物よ り低い傾向にあった.この結果から,本研究で は大学生アスリートを対象として調査を行って おり,彼らの多くは一人暮らしをしているた め,生活空間を異にすることが多い両親ではな く,自身の近くにいる人物,または競技に直接 関与する人物にサポートを希求する傾向が反映 されたものと考えられる.また,この時期は青 年期と呼ばれ,「親との間に今まであった情緒 的関係から距離をとり直接の影響を絶つことや 生活空間の拡大をもたらすことになる.そして 必然的に,彼らはそれまで形成してきた価値 観,生き方等の再検討を迫られることになる」 (中込,2004)といった心性が,このような結 果につながったとも考えられる.さらに,父や 母へのサポート希求は,受傷段階から復帰段階 にかけて減少した.自由記述においても,家族 からのサポートは,他のサポート内容に比べて 藤井(2000a)は,リハビリテーション期間 中に選手が「痛い」や「力が入らない」だけで なく「怖い」という訴えの多いことを指摘し, それは「本当に元の競技レベルまで復帰できる のだろうか?」という不安の表現であると説明 している.本結果はこのような復帰への不安が 含まれていたと思われる.また,復帰への不安 と同様に,競技場面での地位・役割の喪失に伴 い,「早く復帰したい」という思いが強まった 結果,焦燥感を強めたと推測できる.本研究で は,7つの情緒反応を独立して設定したが,こ れらは相互に影響しあうものと考えられ,これ らの反応の生起過程についてはさらに検討して いく必要がある.また,これらの気分は受傷直 後から復帰までのリハビリテーション過程にお い て 変 化 し て い る( 例 え ば,McDonald and Hardy, 1990)と考えられ,その変化に伴った ソーシャルサポートが提供される必要がある. 本研究の仮設状況は,上記の気分を反映させた ため(注2 参照),これらの気分やリハビリの 状況におけるソーシャルサポート希求の変容か らリハビリテーションアドヒアランスや早期復 帰に効果的なソーシャルサポートを知る手掛か りが得られると考えられる. 5−2  リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 過 程 に お け る ソーシャルサポート希求の変容 前章の自由記述の分析結果も踏まえ,以下に 考察する. 体験の共有 技術的助言 評価 傾聴 情緒的支援 慰め 物質的支援 実践的支援 その他 家族 0 1 0 3 0 0 1 4 1 チームメート 6 6 0 19 5 1 3 13 1 部活以外の友人 0 0 0 4 1 0 1 2 0 コーチ 0 8 0 1 0 2 2 4 0 医療関係者 2 9 1 7 2 0 3 10 0 リハビリへの専心 早期復帰への願望 感謝・安心感・嬉しさ 支えの実感 自身の理解 動機づけ 体験の共有 4 2 0 0 1 1 技術的助言 6 7 5 1 4 1 評価 0 0 1 0 0 0 傾聴 13 6 2 5 4 4 情緒的支援 4 3 0 1 0 0 慰め 2 0 0 1 0 0 物質的支援 3 2 4 0 0 1 実践的支援 7 11 11 3 1 0 その他 0 0 0 2 0 0 表7 サポート提供者とサポート内容 表8 サポートの内容とサポートの影響

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が見られ,特に復帰段階に高い値を示した.ト レーナーは,受傷前と比較して受傷後により必 要な資源と認知され(Jingzhen et al.,2010), 主に受傷アスリートの怪我の評価やリハビリ テーションメニューの作成などのサポートを提 供する.そのようなトレーナーのサポートは, 受傷アスリートの回復に向けた努力を促進する (Robbins and Rosenfeld,2001).特に,復帰前 は自身の身体(負傷からの回復状況)への理解 が必要であるため,役立ったサポートにおいて 自身への理解につながっていた技術的助言や傾 聴を学生トレーナーから希求していたのではな いかと推測できる.また,学生トレーナーはた だ 怪 我 を 評 価 し, リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン の メ ニューを作成するだけでなく,ある時は友人 に,またある時はコーチといった役割を期待さ れる支援的存在であることが一貫して得点の高 い要因であったと考えられる.藤井(2000b) は,トレーナーが時として何もしない者として 存在することが必要であると述べ,選手にマッ サージやテーピングなどの何かをする「行為 者」としての役割だけでなく,そこに居る者と しての「存在者」の役割の重要性を主張してい る.自由記述においても,受傷段階や復帰段階 において特に求められるであろう学生トレー ナーからのリハビリテーションメニューの提供 や治療等の支援を役立ったサポートと記述した アスリートが多かったが,「相談に乗ってくれ た」や「話を聞いてくれた」という身体だけで なく心理面への働きかけを評価する回答も多数 見受けられた.このようなトレーナーの心理面 への貢献は,スポーツ医学領域から著述された 専門書における心理的問題への関心(ギャレッ トほか,2010)や,受傷アスリートへのカウン セリング技法の紹介(Ray and Wiese-Bjornstal, 1999)からも窺うことができる.

コーチに対しては復帰前により高い希求度を 示した.これは復帰に向けた助言や自身に対す るチーム内での位置(レギュラーor非レギュ ラーなど)を確認する役割を果たしていたと考 えられる.Johnston and Carroll(1998)は,リ ハビリテーションの最終段階において,受傷ア 傾聴や実践的支援に多くの回答がみられ,特に 実践的支援は受傷から復帰にかけて減少する傾 向にあるため,このような結果になったと考え られる.また,手術費等の金銭面での援助を希 求している可能性もある.両親へのサポート希 求が物質的支援の変化とも重なることから,こ のような可能性も考慮する必要があると考えら れる.本研究では,大学生の受傷アスリートを 対象としたため,プロ選手や実業団選手などを 対象とした場合に同様の結果が得られるとは限 らない.今後は,異なる対象者への調査も望ま れるだろう. 親しい友人においては時期による有意な差は 見られず,相対的に低い値を示したが,チーム メートに関しては一貫して高い得点が示され, 特に受傷段階と復帰段階において高い値であっ た.これは,大学生アスリートの人間関係が競 技関係者で常に自身の近くにいるチームメート と重なる部分が多く,他の運動部の友人とのつ ながりが小さいからであると考えられる.さら に,チームメート,つまり同じ競技に取り組ん でいるアスリートの方が受傷アスリートの気持 ちを理解しやすいとも考えられる.また,チー ムメートとの接触が保たれることでチームの一 員としての存在価値が保証される一つの手掛か りとなるのかもしれない.自由記述において も,チームメートからの支援が役立ったと回答 したアスリートが36.8%と最も高く,傾聴や実 践的支援が主な内容であったこともこれらを裏 付ける結果となろう.また,チームメートへの サポート希求で有意差の見られた受傷段階と復 帰段階は,チームからの一時的な離脱と復帰を 体 験 し て い る と 考 え ら れ る. 竹 之 内・ 高 山 (1992)によると,部活動における対指導者や 部員への感情(対人関係の良好度)の悪化がス ポーツ離脱行動を予期し,対部員からの方が強 い影響を受けることを報告している.見方を変 えると,受傷アスリートはこれらの離脱を経験 しないように,また所属運動部への復帰を容易 にするために意識的・無意識的にチームメート へのサポートを希求しているとも考えられる. 学生トレーナーに関しては,一貫して高い値

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なされたとしても実感しにくいと思われる.し かし,受傷アスリートは,復帰が近づくにつれ て時間的展望を持ち始め,自らの可能な動きの 範囲や強度についての情報を得ようとしている と考えられる.評価についてのサポート源は, トレーナーやコーチの可能性が高いと思われる が,本研究ではサポート内容の項目である評価 においてサポート源との関連性が認められな かった.また,自由記述においても,評価に関 連した内容はほとんど見られなかった.役立っ たと感じたサポートに対して,自由記述では一 般的に最も心理的なダメージが大きいリハビリ テーション初期に関連したと思われる記述が多 く,希求度が受傷段階では低く,復帰前に高く なる評価についての回答が見られなかったと考 えられる. 慰め,物質的支援,実践的支援は時間経過に 伴い,減少していくことが明らかになった.慰 めに関しては,受傷直後に見られる気分の落ち 込みに対して行われると推測されるため,リハ ビリテーションが進展し,受傷後のネガティブ な情緒反応が軽減している復帰段階よりも受傷 段階やリハビリテーション−回復段階のほうが 高かったと考えられる.物質的・実践的支援に 関しては,怪我が治っていくにつれて希求され なくなっていった.これは,自身の行動範囲や 受傷部位の可動域の広がり等からこれらの側面 のサポート希求が減少していったのではないか と考えられる.実践的支援において,上記のよ うに時間経過に伴い減少することが明らかと なったが,自由記述では25.9%と最も役立った と感じていたサポートであった.そのように援 助されることは,感謝・安心・嬉しさにつなが り,リハビリテーションへの専心を促し,早期 復帰の願望を高めると推測される. 本研究においては,体験の共有,傾聴,情緒 的支援に有意差は見られず,受傷から復帰まで の希求度は変化しないことが明らかになった. しかし,傾聴は,全体的に得点が高く,21.9% の受傷アスリートに役立ったと感じられ,時期 に関わらず希求されていた.受傷アスリート は,復帰まで不安や焦燥感が残ると推測され, スリートはコーチや理学療法士から競技特有の アドバイスやフィードバックを必要としていた ことを明らかにしている.また,Bianco(2001) は,コーチの援助として現実的なパフォーマン ス目標の設定や競技における自信の回復などが 復帰段階において受傷アスリートに高く評価さ れたことを明らかにしている.さらに,Podlog and Eklund(2007)は,コーチに面接調査を行 い,孤立感を強める受傷アスリートに対して, チームとともにトレーニングすることが特定の スキルの維持・改善に効果的であることや現場 復帰の際の適応を容易にすると主張している. このようにコーチからのサポートは,チームへ の所属意識の高まりや孤立感の軽減を促し,そ れが復帰に向けた身体的・心理的回復に寄与し ている可能性がある. サポート内容の希求度に注目してみると,技 術的助言は復帰段階に有意に上昇し,常に高い 値を示していた.この変容はコーチへのサポー ト希求と重なるため,主なサポート提供者とし てコーチが考えられ,復帰に向けたアドバイス 等を求めていたと推察される.また,自由記述 においては,医療関係者からのサポートも役 立ったという回答が多く見られた.前述したよ うに,これは自身への理解を深めるためにサ ポートを希求していると考えられる.さらに, 技術的助言は,傾聴や実践的支援と同様にリハ ビリテーションへの専心や早期復帰への願望に 多くの影響を与えることも復帰段階に希求度が 高くなる一因と考えられる.また,技術的助言 は自身への理解の手掛かりとなることも示唆さ れた.自身への理解は,復帰が近くなり,動き の範囲や強度が分かってくると高くなると推測 される.しかし,この関連性について本研究で は,言及することができない.受傷アスリート へのソーシャルサポートが自己理解のきっかけ になることについては今後検討すべきであろ う. そして,評価は受傷から復帰にかけて徐々に 希求度が増加することが明らかとなった.受傷 直後の先の見えない状況では,時間的展望を持 つことが難しく,自身の怪我についての評価が

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の変容があるのかも検討するべきである.鈴 木・中込(2011)は,その心理・認知面の変容 を明らかにするために受容(怪我をしている現 状を受け入れる)という概念の有効性を示唆し ている.このような受傷アスリートの心理・認 知面の変容を理解することで,サポート希求の 背景や受傷アスリートの心性の理解につなが り,より効果的なサポート提供が可能になるだ ろう. 謝  辞 本研究の質問紙調査にご協力いただいた多くの方々 に心よりお礼申し上げます. 脚  注 注1 )例えば,技術的助言は,「スキルを向上させるた めに,自身の考え方や行動を指摘してくれる」 を「リハビリのメニューや今後復帰にあたって どうしていくべきか教えてくれる・アドバイス をくれる」等に変更した.

注2 )Hoar and Flint(2008)は, 3 段階の仮設状況を

用いてサポート提供者への援助要請意図を調査 している.本研究では,彼らの仮設状況を簡略 化して用いた.例えば,彼らの仮設状況は,Kim というルームメートが登場するが,そのような 特定の人物を出すことで調査協力者のソーシャ ルサポートについての回答を規定してしまう一 因になり得ると考えられたため,その部分を削 除した.また,彼らの仮設状況の教示文は文章 が長く,調査協力者の負担になり,正確に回答 が得られないと判断したため,3 段階の仮設状 況における気分や当事者の状況(手術の有無や リハビリ環境,および周囲の状況など)は大き く変更することなく(例えば,復帰段階におけ る,シーズンに間に合うかという不安感,コー チやトレーナーが復帰への準備ができていない と感じていること,心理面での準備が未だでき ていないこと,再受傷や受傷前の能力に戻って

いるのかという不安は,Hoar and Flintの教示文

でも用いられている),繰り返して用いられてい る文章を削除するなどして簡略化して用いるこ ととした.なお,受傷段階では,失望感,抑う つ,リハビリテーション−回復段階では,孤立 感,不安,競技意欲の低下,疲労感,復帰段階 では,焦り,不安といった気分を反映させた教 示文を作成した. 注3 )受傷段階:あなたは,試合(練習)中に怪我を 負ってしまいました.膝はかなり腫れ上がり, 痛みも普通ではありません.あなたの中で,「私 は重い怪我を負ってしまったのか?」という思 いと,反対に「少し休んだら試合に出られるの それらを解消するために,サポート内容として 傾聴を必要としていたのではないかと考えられ る.自由記述の結果からは,体験の共有,傾 聴,情緒的支援の主な提供者はチームメートで あり,彼らのサポートはリハビリテーションへ の専心性を向上させ,それが早期復帰へとつな がると考えられる. 6.結論と今後の課題 アスリートは受傷に伴って,競技意欲が低下 し,不安,焦り,孤立感,失望感,抑うつ,疲 労感を増大させ,特に不安や焦燥感を強めるこ とが明らかになった.受傷アスリートは,受傷 直後に家族からのサポートを必要とし,チーム メート,学生トレーナー,コーチは復帰前の援 助希求度が他の送り手よりも高いことが明らか になった.そして,チームメートや学生トレー ナーは,リハビリテーション過程を通して多く のアスリートからサポート希求がなされた.サ ポートの種類においては,技術的助言や傾聴は 一貫して高い値を示した.また,怪我の回復状 況に影響すると考えられる慰め,物質的支援, 実践的支援は怪我が回復するにつれて減少し, 技術的助言や評価といった復帰後の競技生活と 関連性の深い事柄は復帰が近づくにつれて上昇 する傾向があった. 本研究では,サポートを享受する時期に注目 し,仮設状況を設定して調査を行うことで受傷 後の調査協力者の状況を統制することができ, 前述したようなソーシャルサポート希求の変容 を明らかにすることができた.しかし,この仮 設状況は,実際に受傷したアスリートの心理反 応を忠実に反映しているとは限らず,調査協力 者の心理面や行動面における全ての特徴を反映 した状況とは言えなかった.今後は,本研究で 得られた知見を基礎資料として,受傷アスリー トへの面接調査を用いてより詳細なサポート希 求の変容や,サポートを求める背景について調 査する必要があると考えられる. さらに,受傷アスリートがサポートを享受し てからリハビリテーションへの専心,もしくは 早期復帰に至るまでにどのような心理・認知面

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