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過去の出来事と現在の感情との因果連鎖に関する幼児の理解 [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)過去の出来事と現在の感情との因果連鎖に関する幼児の理解 キーワード:因果連鎖. 出来事を共有する対象. 自他理解. 心の理論. 行動システム専攻 麻生 問題と目的 先行研究. 良太. 人公に感情を経験させる対象が,犬や物といったものであ った.しかしながら,感情のような心的状態を推論する場. 自分自身・他者の行為が結果的にどのような感情を引き. 合においては,感情を経験する対象と主人公との関係,つ. 起こすのかを推論することや,今現在の自分自身・他者の. まり環境的な要因が重要であると考えられる.例えば,兄. 感情が何によって起こったのかを考えることは,日常的な. 弟がいる就学前児は,兄弟がいない就学前児よりも,心的. 社会生活を円滑に送るうえで不可欠である.そして,我々. 状態の理解を調べる課題でよい成績をあげること(Perner,. は感情を因果的に理解する際に,さまざまな情報を用いて. 1994)や,親や兄弟と感情の状態について話すことが,感情. いる.. の理解と関連があるということが報告されている(Dunn et. 感情理解に関しては,多くの研究がなされてはいるが,. al. 1991).このことは,感情の理解の形成には,他者との. その研究の多くは, 「いま・ここで」主人公がどのような感. やりとりが大きく関わっているということを示唆している.. 情を抱いているのか,また,なぜそのような感情を抱いた. しかしながら,先行研究において,感情が起きる出来事を. のか,といった研究がほとんどである.しかしながら,我々. 共有する対象が何であるかに注目した研究は見られない.. が自分自身・他者の感情を理解するときには, 「いま・ここ. そこで,本研究では,感情が起きる出来事を共有する対象. で」の表情や状況だけで判断するわけではない.つまり,. が人であるか,物であるかで,過去の出来事と現在の感情. われわれはもっと時間的な視点を広げて感情を理解してい. との因果連鎖に関する理解に違いが見られるかを「①対人. ると考えられるのである.つまり我々は,しばしば,今現. 場面」 「②対物場面」という 2 つの条件を入れて検討する.. 在自分自身が経験している感情は,現在の状況から起きて. 第 2 に, Lagattuta & Wellman(2001)の実験で用いられ. いるのではなく,過去に起こった出来事を思い出したり,. た物語の登場人物は,すべて架空の人物であった.そして,. 考えたりすることによって起きているのだということを理. 被験児は,他者の感情をどれだけ理解しているかを調べら. 解しているのである.. れただけで,自分自身の感情をどれだけ理解しているかに. Lagattuta & Wellman(2001)は,過去にポジティブ or ネ. ついては調べられていない.しかしながら,他者の感情を. ガティブな感情経験をするという個人情報を与え,また,. 理解する前に,自分自身の感情を理解しするのだという議. 現在の状況がネガティブor ポジティブな状況であるような. 論がある.(Chandler & Greenspan, 1972 ; Harris, 1994).. 物語を追加した.そして,(1)現在の状況と,その時抱いて. しかし,Dunn & Hughes(1998)によると,自分自身・母親・. いる感情が矛盾している (2) 過去の出来事を思い出すよ. 兄弟・親しい友だちにたいする感情を説明するように求め,. うな『手がかり』を現在の状況で与える(3)主人公がネガテ. それがどれだけ正確で妥当な説明であるかを調べたところ,. ィブな感情を抱く.という3 つの条件が満たされている物語. 自分自身に関する各表情の説明が,他の 3 者よりも正確で. を被験児に提示した場合に,過去の出来事と現在の感情の. あったことを示したのである.このことは,感情理解にお. 過去の出来事のつながりの理解はもっとも促進されるとい. いて,自分自身の感情の方が,他者の感情よりも先に理解. う結果を得た.. することを示唆しているのかもしれない.. 本研究の目的. 以上のことを考えると,過去の出来事に基づいて現在の. このように,過去の出来事に基づいて現在の感情を理解. 感情を理解する際にも,自分自身がその感情が起きる出来. す る 研 究 は 行 わ れ て き た . し か し , Lagattuta &. 事に関わっているのと,他者がその感情が起きる出来事に. Wellman(2001)の先行研究とは異なる視点で「過去の出来事. 関わっているのとでは,理解に差が出てくるものと考えら. と現在の感情との因果連鎖に関する幼児の理解」を考える. れる.そこで本研究では,感情が起きる出来事に関わって. と,この理解には他の 2 つの要因が関わると考えられる.. いるのが,被験児自身であるか,それとも架空の人物であ. 第 1 に,Lagattuta & Wellman(2001)が用いた物語は,主. るかで,過去の出来事と現在の感情との因果連鎖に関する.

(2) 理解に違いが見られるかを「①被験児参加」 「②架空の人物. み木を壊す).積み木を壊した後,被験児に嬉/悲/怒/困の. 参加」という 2 つの条件を設ける事で検討する.. 表情が書かれている画用紙を同時に提示し, 「今,○○ちゃ. また,Lagattuta & Wellman(2001)は考察の中で,現在の. ん(被験児の名前)or この人形はどんな気持ちかな?このお. 状況と過去の出来事の連続性を認識することで,自分自身. 顔の中から選んでくれるかな?」と質問した.被験児が 4. や周りの反応を,今・ここで起きている客観的な状況だけ. つの表情のうちの 1 つを選んだら,実験者は残りの 3 枚を. で予測し,説明するのではなく,過去の活動や経験と関係. 片付け,その後, 「なんで○○ちゃん or この人形はこんな. づけて予測・説明するようになると述べている.そして,. 気持ちなのかな?」と質問した.. この連続の認識は,時間の経過や身体的変化が起こったと. (2)「心の理論」課題:a.標準誤信念課題:ウシとカエルの. しても「自分は自分である」ということを自覚する能力. パペットを使って以下の話をした. 「今,ウシ君が,部屋に. (Povinelli & Simon, 1998)とも関わっていると述べている.. やってきて,赤色のバケツの中から消防車を取り出して遊. Povinelli & Simon(1998)によると,このような,自己を. びました.その後,ウシ君は赤色のバケツの中に消防車を. 「今・ここ」で経験している存在だけでなく,時間という. しまって外に遊びに行きました.ウシ君がいなくなった後,. 因果連鎖の中で連続した存在として認識するためには, 「心. カエル君が部屋に来て,赤色のバケツの中から消防車を取. の理論」の誤信念課題を通過するために必要であると考え. り出して遊びました.その後,カエル君は青色のバケツの. られている,1つの出来事にたいして,多様な表象をする. 中に消防車をしまって外に遊びに行きました.カエル君が. 能力が必要だという.そこで本研究では,標準語信念課題. いなくなった後,ウシ君が再び部屋にやってきて,さっき. と,スマーティー課題を行い,過去の出来事と現在の感情. の消防車で遊ぼうと思いました. 」①誤信念質問: 「さて,. との因果連鎖に関する理解と, 「心の理論」との間に関連が. ウシ君はどちらのバケツの中を探すでしょうか?」(回答が. 見られるかも検討する.. ない場合, 「赤色」 「青色」の選択肢を与えた.)②記憶質問:. 本研究の仮説をまとめると以下の通りである.. 「最初,消防車はどちらのバケツの中に入っていたでしょ. ①対人場面の方が対物場面よりも,過去の出来事と現在の. うか?」③現実質問: 「今,消防車はどちらのバケツの中に. 感情との因果連鎖の理解を促進する.. 入っていますか?」 .. ②被験児が主人公になる方が架空の人物が主人公になるよ. b.スマーティー課題:ポッキーの中にあらかじめ鉛筆を入. りも,過去の出来事と現在の感情との因果連鎖の理解を促. れておき,そのポッキーの外箱を被験児示しながら, 「この. 進する.. 箱の中には何が入っていると思いますか?」と質問した.. ③過去の出来事と現在の感情との因果連鎖に関する理解と. ①スマーティー課題(他者信念質問): 「さっき 1 番仲のいい. 「心の理論」との間には関連がある.. お友達の名前は△△ちゃんって言ってくれたよね?△△ち ゃんは,まだこの中を見ていません.△△ちゃんは,この. 方法 被験児. 箱を見て,何が入っているっていうでしょうか?」(「わか らない」/反応なしの場合は, 「ポッキー」と「鉛筆」の選. 4 歳児 69 名(男児 36 名,女児 33 名,平均年齢:4 歳 7 ヶ. 択肢を与えた.)②スマーティー課題(自己信念質問): 「○. 月),5 歳児 64 名(男児 33 名,女児 31 名,平均年齢:5 歳 6. ○ちゃん(被験児の名前)は,最初この箱を見たとき,何が. ヶ月)が本実験に参加した.. 入っていると言いましたか?」③現実質問: 「本当は今,箱. 実験手続き. の中には何が入っていますか?」. 各年齢群の被験児を, 【対物-被験児条件】 【対物-他者条件】. (3)感情過去理解課題:a.感情過去理解質問:感情状況理解. 【対人-被験児条件】 【対人-他者条件】の 4 条件にランダム. 課題で積み木を壊した対象(人形or ボール)が再び登場する.. に振り分けた.. 被験児に嬉/悲/怒/困の表情が書かれている画用紙をすべ. (1)感情状況理解課題:. て同時に提示し, 「今,○○ちゃん(被験児の名前)は,この. a.表情確認質問(統制質問):これは,被験児が表情と感情. 黄色いボールを見てどんな気持ちかな?このお顔の中から. を合致させて理解できているかを確認するために行われた.. 選んでくれる?」と質問した(無回答, 「わからない」とい. 被験児に嬉/悲/怒/困の表情が書かれている画用紙を1 枚ず. う回答の場合は再質問).被験児が 4 つの表情のうちの 1 つ. つ提示し, 「このお顔はどんなお顔かな?」と質問した.提. を選んだら,実験者は残りの 3 枚を片付け,その後, 「なん. 示の順序は被験児ごとにカウンターバランスした.. で○○ちゃん(被験児の名前)はこんな気持ちなのかな?」. b.感情状況理解質問:各条件でも,積み木を壊す場面設定. と質問した(無回答, 「わからない」という回答の場合は再. とした(対人では人形が積み木を壊す・対物ではボールが積. 質問)..

(3) 通過:レベル 1:感情状況理解課題には通過したが,感情過. 結果. 去理解課題には不通過:レベル 2:感情状況理解課題と感情. 分析対象者数. 過去理解課題の両方を通過.. 120 名が分析の対象となった.. 感情理解課題の達成度と「心の理論」課題との関係. 感情状況理解課題の通過率 分析対象となった被験児の課題通過率をTable1 に示した.. 標準誤信念課題においては,他者信念質問,記憶質問,. 各正答率に対し,角変換を施し,年齢(2:4 歳児,5 歳児)×. 現実質問の 3 つ全てに正答した場合を「正答」とした.感. 対象条件(2:対人,対物)×参加者条件(2:被験児,他者)の 3. 情過去理解課題の通過率において主効果が見られた対象条. 2. 要因についてχ 分布を利用した分散分析(逆正弦変換法:. 件(対人条件,対物条件)と「心の理論」課題との関係を調. 森・吉田,1990)を行った.. べた.Table3 に,対人条件での各レベルにおける「心の理 2. その結果,年齢の主効果(χ = 4.98,df=1,p<.05),対. 論」課題の正答率を示した.. 意であった.対象条件×参加者条件の交互作用については,. Table3 対人条件における「 心の理論」 課題の各質問に対する正答者数 感情理解課題 誤信念課題 スマーティー課題 スマーティー課題 達成レベル (自己信念) (他者信念) レベル0 ( n=6) 1(16.67) 0(0) 0(0) レベル1 ( n=17) 6(35.29) 2(11.76) 2(11.76) レベル2 ( n=37) 21(56.76) 20(54.05) 20(54.05) ( )内は%. 単純主効果検定の結果,他者条件においては対象間で有意. 各レベルにおける「心の理論」課題の各正答率に対し,. なさが見られなかったのに対し,被験児条件では対人条件. Chance Level の検定を行ったところ,すべての正答率でレ. 2. 象条件の主効果(χ = 4.03,df=1,p<.05)及び参加者条件 の主効果(χ2= 26.63,df=1,p<.01)が有意であり,対象条 件×参加者条件の交互作用(χ2= 4.03,df=1,p<.05)が有. 2. が対物条件(χ = 8.06,df=1,p<.01)より有意に高かった. Table1. 年齢. 4歳 n=60 5歳 n=60. 感情状況理解質問の通過数 対人 対物 被験者 他者 被験者 他者 12(80.00) 14(93.33). 6(40.00). 14(93.33). 13(86.67). 9(60.00). 15(100). 15(100). ( )内は%. ベル 0 とレベル 1 は偶然の水準よりも低く,レベル 2 は偶 然の水準内であった(誤信念課題:56.76%,z=0.66,ns,ス マーティー課題(自己信念):54.05%,z=0.33,ns,スマー ティー課題(他者信念):54.05%,z=0.33,ns). 次に,Table5 に対物条件での各レベルにおける「心の理 論」課題の正答率を示した.. 対象条件(2:対人,対物)×参加者条件(2:被験児,他者)の 3. Table4 対物条件における「 心の理論」 課題の各質問に対する正答者数 感情理解課題 誤信念課題 スマーティー課題 スマーティー課題 達成レベル (自己信念) (他者信念) レベル0 (n=16) 7(43.75) 7(43.75) 6(37.50) レベル1 (n=23) 7(30.43) 5(21.74) 8(34.78) レベル2 (n=21) 16(76.19) 15(71.43) 15(71.43) ( )内は%. 要因についてχ2分布を利用した分散分析を行った.. 各レベルにおける「心の理論」課題の各正答率に対し,. 感情過去理解課題の通過率 分析対象となった被験児の課題通過率をTable2 に示した. 各正答率に対し,角変換を施し,年齢(2:4 歳児,5 歳児)×. 2. その結果,年齢の主効果(χ = 10.25,df=1,p<.01)及び 2. df=1, p<.01)が有意であり, 対象条件の主効果(χ = 10.16, 2. Chance Level の検定を行ったところ,すべての正答率でレ ベル 0 とレベル 1 は偶然の水準よりも低く,レベル 2 は偶. 年齢×対象条件の交互作用(χ =4.223,df=1,p<.05)が有. 然の水準よりも高かった(誤信念課題:76.19%,z=2.18,. 意であった.年齢×対象条件の交互作用については,単純. p<.05,スマーティー課題(自己信念):71.43%,z=1.75,p<.05,. 主効果検定の結果,5 歳児では対象間で有意な差が見られな. スマーティー課題(他者信念):71.43%,z=1.75,p<.05).. 2. かったのに対し,4 歳児では対人条件が対物条件(χ =13.74, df=1,p<.01)よりも有意に高かった.また,対人条件では 年齢間に有意な差が見られなかったのに対し,対物条件で 2. は 5 歳児が 4 歳児(χ =13.82,df=1,p<.01)よりも有意に 高かった.. 年齢. 考察 感情状況理解課題について 年齢,対象条件(対人―対物)および参加者条件(自分自身 ―他者)が,感情を状況から推測する際に影響するかを検討. Table2 感情過去理解質問の通過数 対人 対物 被験者 他者 被験者 他者 4歳 8(53.55) 9(60.00) 2(13.33) 2(13.33) n=60 5歳 9(60.00) 11(73.33) 7(46.67) 10(66.67) n=60. ( )内は%. 感情理解課題の達成度. したところ,4 歳児の感情状況理解課題の通過率と 5 歳児の 感情湯状況課題の通過率の間に差が見られたことは,4 歳児 は状況よりも表情で感情を理解するが,5 歳児は表情よりも 状況で感情を理解するようになるという笹屋(1997)の結果 と一致するものであった. 自分自身がストーリーに参加する条件では,積み木を壊. 課題通過の難易度のレベルを以下のように設定した.. される対象が人形(対人条件)のほうが,ボール(対物条件). レベル 0:感情状況理解課題と感情過去理解課題の両方を不. の場合よりも課題通過率が高かった.この原因は,積み木.

(4) を壊した対象が,故意に積み木を壊したのか,偶然壊れて. 験児に,自分自身・友達・お母さん・兄弟が嬉しかった話・. しまったのかということを被験児自身が感じ取ったのかも. 悲しかった話・怒った話をするように求め,その話がどれ. しれない.また,積み木を壊す対象が人形・ボールの両方. だけ正確かという基準で自他の感情理解を調べていた.本. で,他者条件のほうが被験児条件よりも通過率が高かった.. 研究では,被験児に, 「今,あなたは・この人形はどんな気. これは,被験児が「積み木が壊されること=ネガティブな. 持ちですか?」といったように,その場での被験児や人形. 出来事」ということを,一般的には理解していると考えら. の感情を求めていた.このように,今その場での自分自身. れる.この年齢の子どもは,自分自身が経験していない,. の感情を答えるためには,一度自分自身を客観視しなけれ. 仮想のストーリーをされた場合, 「何によって積み木が壊さ. ばいけないのかもしれない.そのために,同様に客観的な. れた」ということは問題ではなく, 「積み木が壊された」と. 判断を必要とする他者条件と差がなかった可能性がある.. いう状況から導き出されるであろう典型的な感情を判断し,. 過去の出来事と現在の感情の因果連鎖の理解と「心の理論」. 説明できるのだろう.. との関係. 年齢と対象条件(対人,対物)による過去の出来事と現在の 感情の因果連鎖の理解の違い.. 実験条件を条件間に差があった対象条件(対人,対物)に 分けて Chance Level の検定をしたところ,対象が物のとき. 年齢と対象条件が現在の感情と過去の出来事との因果連. はレベル 2 になって初めて, 「心の理論」課題に偶然の水準. 鎖の理解に影響するかを検討したところ,5 歳児では対象条. を越えて正答することが明らかになったが,人のときは,. 件に差はなく,4 歳児はやりとりの対象が人であるときが,. レベル 2 になっても「心の理論」課題の正答率が偶然の水. やりとりが物であるよりも有意に理解するということが明. 準を越えなかった.これは,対象が人である場合には「心. らかになった.これは,仮説 1 を支持するものである.. の理論」課題をクリアするのに必要である表象能力を有し. なぜ 4 歳児は,やりとりが人であれば現在の感情と過去 の出来事の因果連鎖を理解できるのであろうか.それは,. ていなくても,感情過去理解質問を通過できるということ を示唆している.. やりとりする相手の中に,意図性などの「心的なもの」を. この結果は,感情の因果連鎖の理解には,人と関わるこ. 認めることができるかどうかや,やりとりする相手に何ら. とが重要であるということを示しているのかもしれない.. かの特性を帰属することができるかということと大きく関. 人と関わり,意図性,感情,特性を含めたやりとりをする. わっているものと考えられる.我々は日常生活において,. ことで人を因果的に連続した存在だと認識する.このよう. 様々な人と接している.そして,接する中で,人というも. に,感情の因果連鎖は,最初は人とのやりとりの中で理解. のは連続性のあるつながりを持った存在であるということ. され,それから一般化されて, 「心の理論」をクリアするの. を無自覚的に理解している.. に必要な表象能力に基づいた理解をするようになるのかも. 5 歳児になると,感情の因果連鎖を対象に関係なく理解す. しれない.. るようになる.これは 4 歳児とは異なり,経験によって因. 今後は,人と関わる経験がどのように心的な表象能力と. 果連鎖を理解するのではなく, 「その出来事に関わっている. 関わっていくのかという研究も進めていくべきであろう.. のが人であれ物であれ,現在の感情に過去の出来事が影響 を与えることがある」という知識を獲得しているからであ. 引用文献. ると考えられる.したがって,ボールが現れたときであっ. Lagattuta, K.H., & Wellman, H.M. (2001). Thinking about. ても,その獲得した知識を使用することで,過去の出来事. thePast: Early Knowledge about Links between Prior. と現在の感情の因果連鎖を理解することができるのではな. Experience, Thinking, and Emotion. Child Development,. いだろうか.. 72, 82-102.. 年齢と参加者条件(自分自身,他者)による過去の出来事と. Dunn, J., & Hughes, C. (1998). Young children’s. 現在の感情の因果連鎖の理解の違い.. understanding of emotions within close relationships.. 年齢と参加者条件が現在の感情と過去の出来事との因果. Cognition and Emotion, 12, 171-190.. 連鎖の理解に影響するかを検討したところ,参加者条件間. Povinelli, D. J., & Simon, B. B. (1998). Young. には差はなく,5 歳のほうが 4 歳よりも因果連鎖を理解する. children’s understanding of briefly vesus extremely. ということが明らかになった.これは仮説 2 を支持しなか. delayed images of the self: Emergence of the. った.. autobiographical stance. Developmental Psychology, 34,. 仮説を支持しなかった理由としては,先行研究との課題 の違いが考えられる.Dunn ら(1998)の行った研究では,被. 188-194..

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参照

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