• 検索結果がありません。

(株)安部工業所

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2022

シェア "(株)安部工業所 "

Copied!
2
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

2003 年 5 月宮城県沖地震 ( 三陸南地震 ) で被災したコンクリート製高架水槽の被害分析

東北大学大学院 学生会員 ○佐藤広和 東北大学大学院 正会員 秋山充良 東北大学大学院 フェロー 鈴木基行

(株)安部工業所

正会員 小野恵三 気仙沼市 吉田純一

1.はじめに

2003

5

月に発生した宮城県沖を震源とする気象庁マグニチュード

Mj=7.0

の地震

(

三陸南地震

)

により,宮城県 気仙沼市大島にあるコンクリート製高架水槽の脚壁に多くの曲げ,せん断ひび割れが発生した.本高架水槽は,「水 道施設耐震工法指針・解説」1)に基づき,兵庫県南部地震クラスの地震力にも耐えるように耐震設計されている.

しかし,この種の高架水槽は,従来,地震による被災の報告が少なく,また,地震時挙動の解明には,内溶液との 連成を考慮した弾塑性解析が必要となることから,その崩壊過程や地震時挙動には未解明な部分が多い.

一方,筆者らは,側壁下端を固定した水道用プレストレストコンクリート製タンクを対象に,内溶液と側壁の連 成を考慮した弾塑性時刻歴応答解析を実施し,その耐震安全性レベルの検証と簡易な耐震設計法の提案を行ってい る2).そこで本研究では,同種の解析モデルを用いることで,被災したコンクリート製高架水槽の静的,動的非線 形解析を実施し,その被害分析を行うとともに,この種の構造の簡易な耐震性能照査法を検討した.

2. 被害状況

気仙沼市大島の高架水槽(全容量

375m

3

)の諸元を図-1

に示す.高架水槽は円筒構造であり,図-1の水底ドーム の側壁はPC構造,その他の側壁はRC構造である.なお,

基礎形式は杭基礎である.ひび割れは,図-1に示す脚壁 の上部と下部ハンチ間に集中して発生した.南北方向に 位置する脚壁には曲げひび割れが発生し,直行する東西 方向にはせん断ひび割れが発生していた.地震後に実測 した曲げひび割れ幅は0.15~0.30mm程度であり,せん断 ひび割れ幅は

0.10mm

0.30mm

程度である.脚壁の鉄筋量 では,鉄筋降伏までの外力が作用すると,0.41mm程度の ひび割れ幅が残留すると予想された3).そのため,コンク リート製高架水槽の被害調査では,鉄筋降伏までの地震 力は作用していないと推察された.

3. 内溶液~側壁の影響を考慮した非線形時刻歴応答解析による被害分析 3.1 高架水槽のモデル化

図-1の高架水槽の被害分析を行うとともに,その耐震性能照査法に関する解析的検討を行った.数値解析には 有限要素法を使用し,対称性を考慮して高架水槽の

1/2

をモデル化した.なお,脚壁下端は固定している.内溶液 の流体要素へのモデル化,およびその他の弾塑性解析モデルは基本的に参考文献2)と同様である.

3.2 地震波の推定

本高架水槽から直線距離

5km

の位置で観測された

KiK-net

地震波を対象サイトの工学的基盤面に入力し,等価

線形化法

(FDEL)

4)による地盤振動解析により地表面地震波を推定した.

3.3 線形動的解析

解析対象高架水槽の基本的な応答性状を把握するため,まず線形動的解析を行った.本高架水槽は参考文献2) 図-1 高架水槽の諸元

屋根ドーム

水深5750mm

ハンチ 内径9450mm

側壁高さ 16150mm

底版

側壁厚

脚壁厚 250mm

300mm

脚壁厚 300mm

連絡先:〒980-8579 仙台市青葉区荒巻字青葉06 TEL 022(217)7449 FAX 022(217)7448

Key Words:コンクリート製高架水槽,被害分析,FEM解析,三陸南地震

水底ドーム

中壁

脚壁 土木学会第59回年次学術講演会(平成16年9月)

‑551‑

1‑276

(2)

で解析対象とした水道用

PC

タンクと異なり,高次モードの影 響が無視できる

1

次モード卓越型の構造であることが確認さ れた.そのため,最上部に位置する水底ドーム側壁にはほと んど円周方向軸引張力が作用していない.

線形動的解析の検討により,この種の高架水槽は通常の

RC

橋脚と同様の応答性状を示し,内溶液の液密性は十分に確保 され,応答解析時には単にその地震時慣性力のみを考慮すれ ば良いことが判明した.

3.4 非線形動的解析による被害分析

線形動的解析の結果より,

1

次モードの卓越が確認されたこ とから,動水圧と躯体慣性力を漸増載荷する高架水槽のプッ シュオーバー解析を実施し,そのひび割れや鉄筋降伏などの 非線形化の進展過程を検証した.また,前記した地表面地震 波による非線形動的解析を行い,今回の三陸南地震で高架水 槽に生じた応答値を推定した.プッシュオーバー解析と動的 解析の結果を図-2に示す.

図-2 に示されるひび割れや鉄筋降伏の各応答値はプッシ ュオーバー解析で得られたものである.図-2に示されるよう

に,高架水槽では,コンクリート引張強度を超える応答が生じるものの,脚壁の円周方向および鉛直方向の鉄筋の 降伏までには至らず,概ね今回の被害状況と対応した結果を得た.

三陸南地震の地震動は,解析対象とした高架水槽のような短周期構造物の応答を大きく増幅させるのが特徴であ り,高架水槽の

1

次固有周期近辺の加速度応答スペクトルは設計地震力の

3

倍程度の値である.しかし,図-2に 示されるように,対象高架水槽には,地震後の使用が問題となる被害は生じておらず,また,プッシュオーバー解 析の結果からも,最大耐力点までにはまだ十分な余裕を有しており,その非常に高い耐震性能が確認された.これ らは,耐震設計時に用いられる様々な安全側の配慮や構造細目規定などによりもたらされるものである.

4. 高架水槽の簡易的耐震性能照査法

この種の高架水槽の耐震性能照査時には,動水圧の影響はほとんど無視でき,液密性の照査は必要とされない ことから,内溶液を慣性力作用としてのみモデル化し,

2

次元骨組モデルへの簡単化を図った.図-3に示される ように,高架水槽は,通常の単柱式

RC

橋脚と同様に

2

次元骨組モデルにより応答解析を行っても,下端脚壁部の 作用曲げモーメントを前述の条件で実施する

FEM

解析と同程度の精度で評価できる.

以上,本研究で実施した一連の検討により,レベル

2

地震動に対する高架水槽の耐震性能は中空

RC

断面とみな した下端脚壁の曲げに対する照査を

2

次元骨組モデルにより実施し,内溶液の影響は単に慣性力作用として考慮す ればよいことが判明した.内溶液と側壁の連成を考慮する通常の水道用

PC

タンクに比べ,非常に容易にその耐震 安全性評価が可能な構造であると結論付けられる.

5. まとめ

三陸南地震で被災したコンクリート製高架水槽を対象に

FEM

解析による非線形動的解析を実施し,概ね被災状 況を再現するとともに,その耐震性能の高さを解析的に確認した.また,この種の高架水槽では,動水圧と高次モ ードの影響が非常に小さく,通常の単柱式

RC

橋脚と同様の耐震性能照査が可能であることを示した.

謝辞:防災科学技術研究所のKiK-netデータを使用させて頂きました.ここに記して謝意を表します.

学会論文集,No.433/-27pp.49-581994

1)日本水道協会:水道施設耐震工法指針・解説,1997 2)西尾浩志,横山博司,秋山充良,小野雄司,江角真也,

参考文献

1973.4)杉戸真太,合田尚義,増田民夫:周波数依存性に考慮した等価ひずみによる地盤の地震応答解析による一考察,土木

鈴木基行:プレストレストコンクリート製タンク側壁のレベル2地震動に対する耐震性能照査,土木学会論文集,No.725/V-58,

pp.85-10020033ACICommittee 207EffectofRestraintVolumeChangeandReinforcementonCrackingofMassiveConcrete 図-2 時刻歴応答波形による被害分析

0 0.02

-0.02

応答変位(m)

地震波入力時間(sec) 2.5 5.0

0

鉛直方向鉄筋降伏

鉛直方向鉄筋降伏 0.018m 円周方向鉄筋降伏 0.024m

円周方向鉄筋降伏 ひび割れ 0.0026m ひび割れ

応答変(m)

0.01 0 -0.01

地震波入力時間(sec)

モーメント(kNm)

-35000 0

0 2.5 5.0

図-3 天端応答変位と下端曲げモーメント

2次元骨組モデル FEMモデル

35000

土木学会第59回年次学術講演会(平成16年9月)

‑552‑

1‑276

参照

関連したドキュメント

とした.テーパーの形状は図-2 および写真-1 に示すような形状となって おり,テーパーの広い面(以下,底部)の直径 D を 26mm,からテーパ ーの狭い面(以下,首部)の直径 d

実験にあたり, 図-2 に示すように応力発光体を塗布した シートを,ひずみの発生をより顕著に捉えやすいひび割れ 部を中心に,接着剤でコンクリートの橋桁表面に貼り付け

生涯にわたる人格形成の基礎を培う幼稚園教育においては、幼児期にふさわしい生活の中で、様々な体験

改良地盤に施工される杭基礎などの地中基礎構造 物は,水平抵抗の影響範囲を含め地盤改良後の静的

図-1 に施工位置の平面図, 図-2

図-1 に示すような形で、粒状体を矩形容器に詰め、その中心位置に 擁壁を模擬した部材を設置する。その静止釣合状態から、部材上端を

亀裂の再発防止のためスカラップ施工により亀裂 の起点 と考え られ る不 溶 着部の 除去を 行う 。図 - 5 に示す ように 不溶 着部 は 3 溶接線交 差部 に隠れ る よ うにして存在し

In this study, effects of various properties of the cross joint welding on deformation capacity and energy absorption of steel beam-column connections with weld defects