既設橋梁に近接した杭基礎のケーソン工法による フーチング施工
浜田幸和 1 ・小泉勝男 2 ・多仁正芳 2
1
国土交通省四国地方整備局 四国技術事務所(〒761-0121
香川県木田郡牟礼町大字牟礼1545
)2
株式会社 白石 大阪支店 土木部 (〒541-0048 大阪市中央区瓦町4丁目5-9)
既設橋梁に隣接した新設橋梁の下部工の施工において,鋼管ソイルセメント杭とニューマチックケーソンで 施工するフーチングで構成された脚付きケーソンが計画された.
従来,複合基礎形式である脚付きケーソンは,側面抵抗を考慮する杭基礎として実績の多い工法であるが,
当工事は締切・開削工による施工方法では,既設橋梁に有害な影響を及ぼすことが判明したため,フーチング 部をニューマチックケーソン工法で施工する方法が採用された.
工事は,既設橋梁に有意な変位が生じることなく完了し,既設構造物に近接した杭基礎フーチングの施工に ニューマチックケーソン工法を適用することの優位性が検証された.
キーワード:近接施工,ニューマチックケーソン,鋼管ソイルセメント杭,脚付きケーソン 1. はじめに
一般国道56号中村宿毛道路の後川を横断する中 村大橋の4車線化に伴い,既設橋梁に近接して橋長 約 150m の新設橋梁を建設するものである(図-1).
既設橋梁基礎は摩擦杭形式であり,新設橋梁下部 工事の施工に伴う変位・変形等による安全性の低下 が懸念された.
検討の結果,鋼管ソイルセメント杭とニューマチ ックケーソン工法によるフーチング構築という複合 基礎である脚付きケーソンを採用した.以下にその 概要を報告する.
2. 地形・地質
四万十川支流である後川流域は本流の形成した自 然堤防のため内水排水が不良で,しばしば冠水被害 を受けてきた氾濫原性低地である.
当該箇所は,泥岩から成る基盤岩(Sh 層)で形成 された深い峡谷の上部に未固結堆積物が厚く堆積し ており,細分すれば礫質土(Dg 層)を主体とした洪 積層の上位に砂泥・泥土を主体とした沖積層(As・
図-1 施工位置図
Ac 層)が厚く堆積している.P1 橋脚部の支持層で ある Dg(Sh)層は GL-60m と深い.(図-2)
3. 下部工形式の選定
本橋梁は3径間で支間長は約 50m であり,線形と 桁下条件を加味した経済検討の結果,上部工構造形 式は3径間連続非合成鋼箱桁橋とした.
中村大橋
図-2 橋梁部地質縦断図
下部工については既設橋梁基礎形式が杭基礎であ ること,荷重規模・地盤条件等から支持杭による杭 基礎形式が経済的に有利であったが,施工性・近接 施工についての検討が必要であったため,ケーソン および鋼管矢板等についても比較を行った.
表-1 に示すように,支持地盤が泥岩であるため,
ケーソン基礎はニューマチックケーソンを想定した が,掘削長が大きく工費・工期とも不適であった.
また鋼管矢板も工費および近接施工に対する適性が 低かった.
一方,杭基礎工法においても,以下に示すような 施工上の問題が明確となった.
①フ−チング天端の土被りを,計画河床より 2.0m 以上確保する必要があるため,土留め内掘削長は 約 10m となる.
また水深は,約 2.0m と比較的小さいが,粘性土層 への根入れと土留壁の変位抑制のため,2重締切 りによる土留が必要となる.
②軟弱な粘性土層が厚く堆積しているため,開削時 に掘削底面安定のための対策が必要となり,2重 締切内側の土留壁を長くする必要があり,鋼矢板 種別は SP-Ⅳ型,打設長 L=24.0m となる.
表-1 基礎工法比較表
12200 2950 10900
2100 8000 2100
23002500480048004800700100071707230
4800144001700
9000
55000
500 8000 500
場 所打 ち杭 φ1200 L=55.0m
正 面図
中埋 コンクリート 正 面 図
12200 2950 10900
2重 締 切 S P4 型
正 面図
12200 2950 10900
0102030 40 50
20001800 9000 18002000 1200 3300 3300
15003000 30001500 1200
25001440070010003001860057000.118900 22500
12200 2950 10900
2000 1260016600 20001200
480048004800700100023001500500010@4800=480003800530003000144001700
5980016100
1550 10000 1550 13100 1500 10000 1500
21008000 2100 2100 8000 2100 2100 8000 2100
2500 8000 2500 3000
0102030 40 50 0102030 40 50 0102030 40 50
568003000
59800820068000
12737 800 鋼 管矢 板φ 800
正 面 図
鋼 管 ソ イ ル セ メ ン ト 杭 基 礎 φ 1200 柱 状 体 基 礎
構 造 概 要
矢 板 の 変 形 に よ る 杭 の 残 留 応 力 が 発 生 1 6 0 日 ( 5 . 3 ヶ 月 )
1 5 0 日 ( 5 . 0 ヶ 月 ) 3 0 0 日 ( 1 0 . 0 ヶ 月 ) 1 7 0 日 ( 5 . 7 ヶ 月 )
本 体 工 基 礎 工 仮 設 工 地 盤 改 良 工
地 盤改 良
直 接 工 事 費
25,000千 円 42,000千 円 54,500千 円 15,000千 円 136,500千 円 本 体 工
直 接 工 事 費
本 体 工 基 礎 工 仮 設 工 直 接 工 事 費
本 体 工 基 礎 工 仮 設 工 直 接 工 事 費 仮 設 工
基 礎 工 (ケ ー ソ ン ) 基 礎 工 (杭 基 礎 )
17,100千 円 69,500千 円 39,600千 円 15,700千 円 141,900千 円
17,100千 円 442,000千 円 15,700千 円 474,800千 円
17,100千 円 133,100千 円 13,800千 円 164,000千 円 近 接 施 工
工 期
工 事 費
◎ ○ × △
基 礎 杭 打 設 : 影 響 外 範 囲 基 礎 杭 打 設 : 影 響 外 範 囲 ケ ー ソ ン 沈 下 : 要 注 意 範 囲 鋼 管 矢 板 打 設 : 要 注 意 範 囲 ケ ー ソ ン 沈 下 : 要 注 意 範 囲 締 切 内 掘 削 : 要 注 意 範 囲
締 切 矢 板 引 抜 : 要 注 意 範 囲
Ⅱ
Ⅲ Ⅲ
Ⅲ
Ⅱ Ⅲ
Ⅱ
Ⅰ
Ⅱ
Ⅰ
Ⅱ
Ⅱ
45°+ φ/2 45° +φ /2
Ⅲ
評 価
脚 付 き ケ ー ソ ン 締 切 開 削 大 深 度 ニ ュ ー マ チ ッ ク ケ ー ソ ン 鋼 管 矢 板
③開削時の土留変位は鋼矢板の剛性向上や切梁の プレロード等で抑制可能であるが,2重締切内側 土留壁が長くなり,鋼矢板引抜時の矢板厚さおよ び粘性土の付着による変位は避けることができ ない.なお,現場計測結果からの推定式1)をもと に沈下量を算出した結果,矢板近傍の沈下量が 17mm となり,既設橋梁基礎に有意な変位を及ぼす ことが判明した.また既設橋の杭も土留壁の根入 れ長より,近接影響範囲Ⅲの区域となる.
④開削工に係わる仮設工および対策工が煩雑で,限 定された工期内での施工の確実性が低い.
以上の問題点を踏まえて,検討した結果,表-1左 欄に示すフーチング部分をニューマチックケーソン とした脚付ケーソンを選定した.
この工法は比較的浅いところに良質な地層がある が,その下に厚い軟弱層を挟み,その下に支持層が あるという地盤で採用されることが多く,構造物の 地震時水平力を上層地盤で受け,鉛直荷重を杭で深 い支持層で受けさせることに特徴3)がある.
またこの方法は,フーチング構築に際して締切・
開削工が不要であるため,近接影響範囲の関係上,
今回のような近接施工に対して有効性が高い.
工期短縮に対しては,高水敷で鋼殻を製作してク ロ−ラクレ−ンによって一括して吊込む,鋼殻吊込 み方式の有効性が高いとの結論を得た.
なお,杭基礎種別は,新設橋と既設橋間が約 5.0m と近接するため,杭本数を設計上(支持・摩擦)の 優位性から減らすことが可能で,フ−チング縁端と 杭離隔も 1.0D とできることにより,直角方向のフー チング寸法を小さくできるという点から,鋼管ソイ ルセメント杭を選定した.
4.脚付きケーソンの計画上の留意点
通常の杭基礎と脚付ケーソン基礎の違いは,杭頭 処理をケーソンの作業室(以下,中埋とする)内で 行うことである.主な問題点としては,
①フーチングと中埋の一体化方法
②中埋内の限られた空間における配筋作業
であり,以下の検討を行った.
図-3 作業室内配筋要領
(1) 杭頭処理方法
杭頭処理方法は,中埋内に杭頭が突出し,掘削 作業時へ影響があるA方式ではなく,杭の突出部 分が短いB方式を選定した.なお,杭のソイルセ メント強度はσck=0.75N/mm2である.
(2)フーチング上下端の鉄筋照査
フ−チングの部材照査は,柱前面を支点とする 片持状態で照査するため,鉄筋量が多くなり,中 埋内の鉄筋で対応することは制約された作業環境 である作業室(中埋)内での配筋作業が増加する.
このため,中埋内の配筋は杭がフーチングに剛結 していることに対して照査(鉛直支圧・押抜きせ ん断・水平支圧)し,片持状態での照査は天井ス ラブの鉄筋で対応するものとした.
また,中埋部はそのかぶりとして評価した.
(3)中埋と天井スラブの一体性照査
トンネル標準示方書(開削工法編)・同解説2)
に記載されている地中連続壁の本体利用の考え方 を参考とし,図-3②のように天井スラブと中埋間 にせん断摩擦筋と連結鉄筋を中埋の自重と杭の引 抜力に対して配筋(D32@250)することで,擬似的 な一体壁として照査した.なお,施工性を考慮し て鉄筋継手は機械式とし,中埋の設計基準強度も フーチングと同じ 24N/mm2とした.
(4)杭〜中埋〜天井スラブへの応力伝達の確保 図-3③のように中埋内を D16 を 25cm 間隔で鳥籠 状に配筋し,中間拘束筋は 2m 間隔で設置した.
C C
D D
A B
A B A−A B−B
C−C D−D 中間帯鉄筋
シャフト開口 機械継手
①杭頭処理
②仮想一体壁
③中埋配筋
天井スラブ
中埋
5.脚付きケーソンの施工
(1)施工概要
施工手順はまず築島工を行い,基礎杭である鋼 管ソイルセメント杭を施工後,予め施工箇所近傍 で製作した鋼殻を設置し,ピアケーソン方式のニ ューマチックケーソン工法によりフーチングを所 定 の 深 度 ま で 沈 設 し た . ケ ー ソ ン 沈 設 長 は 約 11.8m である.図-4にケーソン施工部の土質断面 図を,図-5に基礎杭(鋼管ソイルセメント合成杭)
の施工順序を示す.
図-4 ケーソン施工概要図
図-5 基礎杭(鋼管ソイルセメント杭)施工順序図
(2)基礎杭施工
支持層が深いため,鋼管ソイルセメント合成杭 は掘削長L=63.15m,鋼管長L=50.00m と長い.
当初設計は狭い場所で施工が有利な「同時沈設 工法」が採用されていたが,杭長が長いと1本あ たりの施工時間が長くなるため,造成したソイル セメントの硬化およびリブ付き鋼管の摩擦抵抗に よる鋼管の沈設不能というトラブルの発生が懸念 された.その対策として,できる限り施工中の鋼 管とソイルセメントの接触時間を少なくすること が重要であり,以下のような対策を施した.
①ソイルセメント造成後に鋼管を建込む「後沈設工 法」を採用した.
②鋼管継手箇所が2箇所であるため,鋼管建込みに
時間を要する.そのため,中杭と上杭を事前に陸上 で継手溶接しておき,杭施工時間を短縮した.
写真-1に施工状況を示す.
写真-1 基礎杭・鋼殻施工状況
鋼管ソイルセメント杭施工
鋼管陸上溶接
鋼殻ケーソン組立
掘削撹拌機
オーガ
二重管ロッド
クローラクレーン
リブ付鋼管
口元管
リブ付鋼管
支持層 支持層
正逆回転 掘削・撹拌翼
③ 一 般 部 掘 削 撹 拌 ④ 先 端 部 掘 削 撹 拌 ⑦ 建 込 み 終 了 ⑧ 口 元 管 引 抜 き
① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨
施工フロー
ソイルセメント
② 掘 削 撹 拌 機 据 付 け
① 先 行 掘 削 ⑨ 完 成
撹拌翼
(左回転)
掘削翼
(右回転)
(正逆回転)
掘削撹拌翼の一例
2
=6000 φ1200 L=50.6m
-4.850
-9.650 -7.350
250 0 2300
2×3000 9500 鋼管ソイルセメント杭
1750 1750
TP+3.000 杭基礎施工基面 TP+2.100
11,7 50
ケーソン据付地盤
ケーソン沈下完了地盤
0 10 20 30 40 50
2 6 9 10 14 18 26 8 10 10 11 14 14 14 11 11 12 12 12 14
土質 N値
(3)ケーソン施工
ケーソンの沈下掘削では,掘削長が短いため傾 斜や変位が生じた場合の修正が困難となる.そこ で,掘削の際にはケーソンの沈下の挙動に注意を 払い,傾斜や変位が少しでも見られた場合には修 正を加えた.
また上部の砂質シルト層がやや軟弱であること に加えて,ピアケーソンとしているため,過沈下 の状態になることが懸念されたため,鋼殻刃口部 に付刃口を設置して沈下抵抗力の不足を補った.
付刃口設置状況を写真-2に示す.
この付刃口は H 形鋼(H-100×100)を 5 本組み合 わせたものであり沈下の状態に合わせて 1 本ずつ 脱着可能である.
沈下完了時における鉛直精度は沈設深さ 11.8m に対し,約 1/400(傾斜),水平偏位が約 20mm で あり,立ち上がり橋脚部(沈設後施工)コンクリ ート構築で修正を行った.
(4)杭頭結合
沈下完了後,鉄筋組立を行う前に中埋コンクリ ートの一部(t=10cm)を均しコンクリートとして打 設を行い,過沈下防止と高気圧下(Pmax=0.1MPa)
での鉄筋組立の施工性向上に努めた.
ソイルセメントはエアピックを使用して人力に よる杭頭処理を行い,所定の内空長さを確保した.
また作業室内への鉄筋の搬入はマテリアルロック から行う必要があるが,搬入可能な最大長は 2.0m 程度と限られるため,長尺鉄筋は予め鋼殻製作の 際に搬入し,沈下掘削時支障にならないよう天井 の設置棚に仮置きした.
また杭頭鉄筋・天井スラブと作業室内の連結鉄 筋においては機械式継手(EG ジョイント)を採用 し,長尺鉄筋の減少に努めた.
基礎杭とケーソンの接合において中埋コンクリ ート充填は非常に重要となるためコンクリート配 合は流動化コンクリート(24-18-20BB:W/C=50%)
として施工を行った.
また,中埋コンクリート打設時には作業室内に 監視カメラを設置し,杭頭内および作業室内が閉 塞するまでコンクリートの流動性・充填状況を確 認しながら慎重に施工を行った.
写真-3に杭頭処理(ソイルセメントはつり)状 況を,写真-4に作業室内配筋状況を示す.
写真-2 付刃口設置状況
写真-3 杭頭処理状況
写真-4 作業室内配筋状況
図-6 既設 P1 橋脚変状計測結果
(5)既設橋梁の変状計測結果
施工中における既設橋脚の変状計測結果の一例 を図-6に示す.工事は 11 月より着手し,ニュー マチックケーソンの沈下掘削は 2 月中旬から 3 月 中旬の約1ヶ月間であった.グラフの P1−1 は,
新設橋に対し遠側,P1−2 は近側を示す.
全施工期間を通じて,鉛直変位は最大±3mm で有 意な傾向および変位は生じることがなかった.
6. おわりに
鋼殻吊込み式脚付きケーソン工法は,河川内等で フーチング位置が深い杭基礎を施工する場合に,締 切工法と比較して,近接構造物に対する影響が少な く,工期的に有効性がある.
また経済性についても今回の条件では鋼殻を使用
したにもかかわらず,2重締切による土留開削工法 と同等程度であった.
今回は,近接施工という限定された条件での脚付 きケーソンの施工であったが,深い支持層でかつ河 川等の表層に玉石等が存在し,締切工(土留工)が 困難な条件においても,経済性および施工性におい て有効な工法であるといえる.
最後に本工事の施工にあたりご助言を頂いた関係 各位に深く感謝の意を表する次第である.
参考文献
1)杉本隆男,玉野富雄:土留め工の力学理論とその実 証,技報堂出版,pp.246-247,2003.
2)トンネル標準示方書〔開削工法編〕同解説,土木 学会,pp.75-79,1997.
3)大型基礎の調査・設計から施工まで,地盤工学会,
pp.370-371,1997
既設橋P1橋脚 鉛直変位
-30 -20 -10 0 10 20 30
11/15 11/22 11/29 12/6 12/13 12/20 12/27 1/3 1/10 1/17 1/24 1/31 2/7 2/14 2/21 2/28 3/6 3/13 3/20 3/27 4/3 4/10 4/17 4/24 5/1 5/8 5/15 5/22 5/29 6/5 6/12 6/19
測定日
変位量(mm) P1-1
P1-2
A1掘削期間 P1掘削期間 2/11 3/8
2/22 3/16
A1埋戻期間 4/15 5/12 U.C.L
L.C.L