4.4 実験
4.4.1 ケーシングのグレードと試験片寸法
前述したように本研究では伸び強度に注目したために、フィールドで一般的に用いられ るケーシングのグレードのうちH40・J55・K55・L80・P110・Q125・V150を用意し、引 張試験を行った。Applied Drilling Engineeringと鋼管ハンドブックより表4.4.1にAPI規 格によるグレード毎の引張試験データ、表4.4.2に化学成分値を示す。以降、実験結果との 比較にはこのデータを用いる。補足として、API規格では最小伸び(Minimum Elongation) については2 inch(=50.8 mm)の長さの試験片に対して断面積毎に細かく分けられているが、
ここでは試験片断面積が0.75 inch²(=483.9 mm²)以上の値を用いる。但し表4.4.1、表4.4.2 ともにV150はNON-APIグレードであるためデータを入手できなかった項目があり、降伏 強度を示す耐力についてはQ125に準じて0.65%耐力を用いている。
表4.4.1 API規格のケーシンググレード
表4.4.2 化学成分値 グレード
(名称)
化学成分値(%) 最大値
C Si Mn P S Ni Cr Mo Others
H40 - - - 0.030 0.030 - - - -
J55 - - - 0.030 0.030 - - - -
K55 - - - 0.030 0.030 - - - -
L80 0.43 0.45 1.9 0.030 0.030 0.25 - - Cu 0.35
P110 - - - 0.030 0.030 - - - -
Q125 0.35 - 1.0 0.20 0.010 0.99 1.20 0.75 -
試験片の形状は円孤状と管状試験片を用意した。本実験では試験片そのものはAPI 規格で はなくJIS規格の14B号試験片(円弧状)及び14C号試験片(管状)に基づいている(試 験片の形状・寸法規格の詳細はAppendix Bに付記)。用いた試験片の寸法を表4.4.3に示 す。また図4.4.1と図4.4.2に実験に用いた試験片の一部を示す。H40-BとV150ケーシン グ以外は加工してケーシング外径を外径/肉厚の値が約10になるようにしてある。これは 降伏圧潰(yield strength collapse)範囲に収まる値である。pは管状、cは円弧状試験片テス トを意味する。円弧状試験片では図4.4.3に示すように伸び計により数%までは歪みを測定 したが、それ以上の大きな伸びはビデオカメラによる画像処理と、コンピュータによる荷 重・変位測定の連動によるデータを、デジタル化して行った。管状試験に関しては試験片 が十分長いため歪みの変動がビデオで測定可能で、図4.4.3に示すように全てビデオカメラ とコンピュータによる荷重測定の連動で応力・歪み曲線データを処理した。ラムの変位速
度を1mm/minに保ち荷重・歪みデータを測定した。本実験は一軸引張試験であるが、実際
に周囲をセメントで覆って周圧をかけた状態での再現実験は非常に困難である。本研究で は他の 2 方向の応力を無視できるほど坑井軸方向の応力が大きいと仮定しているため、一 軸引張実験で解析を行うこととする。
(a)上:J55 下:L80 (b)心金挿入前後(J55) 図4.4.1 14C号試験片
(a)J55 (b)L80 図4.4.2 14B号試験片
表4.4.3 試験片寸法
4.4.2 実験方法
4.4.2.1 実験装置および測定ソフト
(1)電子管自動平衡油圧式島津万能材料試験機
● UH-1000kNA
● 300kN Universal Testing Machines、REH-30型、機番53983 (2)記録ソフトC-Logger、CONTEC
(3)伸び計
● LVDT Transducer Calibrator Model 139、Structural Behavior Engineering Laboratories, Inc
● Linear Variable Differential Transducers Type 100-MHR、Lucas
● Series 7 L.V.D.T. Signal Conditioning、Structural Behavior Engineering Laboratories, Inc
4.4.2.2 実験手順
(1)万能材料試験機の調整 (2)試験片装着
(3)引張試験とビデオ撮影開始
(4)伸び計データ(円弧状)、荷重データ、時刻、ヘッド変位データの取得 (5)データ解析
図4.4.3 試験機と試験片(伸び計装着済み14B号及び14C号試験片)