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言語条件づけにおよぼす実験前言語習慣の影響

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

言語条件づけにおよぼす実験前言語習慣の影響

著者 玉瀬 耕治

雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学

巻 22

号 1

ページ 163‑169

発行年 1973‑11‑15

その他のタイトル The effect of subject's verbal habits upon verbal conditioning

URL http://hdl.handle.net/10105/2766

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言語条件づけにおよぼす実験前言語習慣の影響

玉  瀬  耕  治 (心理学教室)

言語条件づけの実験では、 Taffel (1955)にならった文章構成形式の課題がしばしば用いら れてきたO この課題は、被験者にいくつかの代名詞と1つの動詞が書かれたカードを呈示して、

代名詞のうちのどれか1つを主語にし、動詞を用いて文章を作らせるものである。実験者は、あ らかじめ決めておいた代名詞、たとえばttわたし"を被験者が用いた場合に、言語的な強化''よ ろしい"を与える。強化によって、その代名詞の選択がいかに変化するかが調べられる。この課 題では、従来、強化される代名詞にだけ注意が払われ、同時に用いられる動詞の機能については、

ほとんど関心が払われなかった。

このことに注目したDixon(1965)は、印象価(Dixon& Dixon,1964)が異なる3種の動詞を用 い、これらの動詞によって代名詞の選択にちがいが生じるかどうかを検討した。動詞は、よい印 象を与える動詞(印象価が高い)、中性の動詞、および悪い印象を与える動詞(印象価が低い) の3種であった。その結果、強化を与える前のオペラント期間では、よい印象を与える動詞が呈 示されている時には規準代名詞teわたし"と.tわたしたち"の選択がもっとも多くなされ、悪い 印象を与える動詞の場合には、これらの代名詞の選択は少なかった。 Dixonは、この結果は過去 の言語習慣にもとづくものであるとみなし、動詞が代名詞を選択するさいの弁別刺激として作用

していると考えた。条件づけ期間では、よい印象の動詞と悪い印象の動詞が呈示されている場合 は条件づけが速く成立し、中性の動詞が呈示されている時には条件づけの成立がおそかった。こ の結果は、条件づけが強化の効果だけで成立するものではなく、動詞の影響を受けることを示唆

している Dixonは、強い印象を与える動詞の場合は、より強い刺激条件が作り出され、このこ とが被験者の強化への注意を高め、その結果、条件づけが促進されたものと解釈している。

その後、 Clance and Dixon (1965)は、規準代名詞がttかれ日 と ttかれら"の場合は、悪い 印象の動詞との結合がもっとも強く、よい印象の動詞との結合は弓射,ことを示している.また、

Dixon (1966)は、このような代名詞と動詞の結合は、実験者と被験者が親しい間柄でない時に も成立することを示している。しかし、これら2つの研究では、 Dixon (1965)の研究で示され たような動詞と強化の交互作用は得られていない。

玉瀬と池田(1972)は、 Dixon and Dixon (1964)と類似の手続きを用いて200語の3音節動 詞の印象価を測定し、この印象価表にもとづいて、よい印象の動詞、中性の動詞、および悪い印 象の動詞それぞれ30語を選び、それらの動詞と3つの代名詞との結合関係を調べている。この実 験では、 Dixonらが用いた通常のTaffel型の課題と異なり、 3種の動詞と1つの代名詞を呈示

して、代名詞と共にどの動詞が選択されるかが調べられた Dixonらの実験では動詞(弁別刺 激) ‑‑‑)代名詞(反応)の関係が調べられたのに対して、この実験では代名詞(弁別刺激) ‑>

動詞(反応)の関係が調べられたのであるo このように課題を変えたのは、 Taffel型課題の欠 良(Greenspoon, 1962)を修正するためであった。すなわち、単一の反応(たとえば、 "わたし=)

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言語条件づけにおよぼす実験前言語習慣の影響(玉瀬)

を学習させるのではなく、個々の試行における反応が異なる1つの反応クラス(たとえば、よい 印象の動詞)を学習させようとしたためである。

実験の結果、 "わたし''、 ttあなた''および"かれ"のうちのどの代名詞が呈示されている場合 でも、よい印象の動詞がもっとも選択されやすかった。とくに、 etあなた"とよい印象の動詞の 結合が強いことが示唆された。この結果はDixonらの結果とは異なるものである。しかし、こ の実験では、強化前の言語習慣だけしか調べられていない。そこで、本実験では、このような言 語習慣が強化の効果にどのように影響するかを検討した。

方     法

被験者 被験者は奈良教育大学の1回生、男女45名ずつで、合計90名であった。彼らは来室の 順に3つの実験条件のうちのいずれかに割りあてられた。

課題 課題はTaffel型の課題を変形したもので、玉瀬と池田(1972)が用いたものと類似の ものである。刺激語はカードに書かれており、カードは全部で120枚用いられたO それぞれのカ

‑ドには、代名詞が1つと動詞が3つ書いてある。代名詞には、第1人称、第2人称、および第 3人称をそれぞれ代表するものとして、 ttわたし"、 ttあなだ'、およびttかれ''が用いられた。 3 つの動詞は、玉瀬と池田(1972)が作製した3音節動詞の印象価表の中から選ばれたものである。

これらは、よい印象の動詞(G動詞、印象価は1.60‑0.40)、中性の動詞(N動詞、印象価は 0.38'‑0.62)、および悪い印象の動詞(B動詞、印象価は‑0.72' ‑2.06)の中からそれぞれ 選ばれている。

手続き 実験は個別に行なわれた。被験者は、来室の順に、 G動詞を強化される群(G群)、

N動詞を強化される群(N群)、およびB動詞を強化される群(B群)のうちのいずれかに割り あてられた。実験者と被験者の間は衝立で仕切られ、互いに見えないようにされた。刺激カード は衝立の中央の窓から呈示された。教示はおよそ次のとおりであった0

これからあなたにしていただくのは簡単なパーソナリティ・テストのようなものですが、個 人のことを問題にするものではありませんので気楽に答えてくださいO ここにたくさんのカー ドが用意してあります。そのカードの上の方には、代名詞"わたしは''、 "あなたは日、 "かれば' のうちの1つが書いてあり、その下には3つの動詞が書いてあります。上の代名詞と下の3つ の動詞のうちの1つを組み合わせて、声を出して言ってください。

1枚のカ‑ドを1試行とし、 30試行ずつの4つのブロックに分けられた.最初のブロックはオ ペラント・ブロックで強化は与えられなかったO第2ブロック以降では、被験者が規準動詞を含 む文を作るごとに、実験者はttよろしい=と言って強化したO姐準動詞はG群ではG動詞、 N群 ではN動詞、 B群ではB動詞であった。 120試行終了後、反応と強化の随伴性に関する被験者の 意識性の有無を調べるために、次のような質問が行なわれた(1)この実験で何をしようとして いると思いますか(2)実験中、私は時々'‑よろしい"と言ったのですが思い出せますか。 (3)ど ういう場合に私が"よろしい"と言ったと思いますか。 (4)あなたはどのようにして動詞を決め ましたか。 (5)動詞を決めるのに何か一定の決め方をしましたか。

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結     果

Tablelは、オペラント・ブロックにおける各群の平均規準反応数と、オペラント・ブロック から最終ブロックへの平均増加量、および増加量の有意性の検定結果を示したものである。

条件づけ前 オペラント・ブロックについて、 3(動詞の印象価)×2(性)×3(代名詞)の分 散分析を行なった結果、印象価の主効果が1%水準で有意となり CF‑59.15、 df‑2と84)、 3 種の動詞のうちではG動詞がもっとも多く選ばれていることが明らかとなった。印象価と代名詞 の交互作用が5%水準で有意であったので(F‑3.16、 df‑ 4と168)、印象価別に代名詞問の差 が調べられた。その結果、 G群のttわたし''とttあなた''の間で5%水準の有意差がみられ(t‑

2.16、 df‑252)、 ttあなだ'が呈示されている時にG動詞がもっとも選ばれやすいことがわかっ たO これらの結果は、玉瀬と池田(1972)の結果と一致している。性の要因に関しては、主効果 も交互作用も意有ではなかった。

Tablel

Mean critical responses in the operant blocks and mean gains from operant to last blocks

of30trials

Reinforced Stimulus verb pronoun

Good impression verb

Neutral impression verb

J4...I

impression verb

Operant

Male Female Pooled 5.40    0.60

You    6.37    0.53 He     5.63   ‑0.40 2.73    0.40 You    2.17   ‑1.07**

He     2.50   ‑0.87 2.37    1.33

You    2.20    1.13 He     2.47    0.73

1.93**    1.27*

1.47**    1. 00*

3.87**    1.74**

‑0.20       0.10 0.33      ‑0.37 0.33     ‑0.27

‑0.07      0.63 1.73*     1.43**

0.07       0.40

The gain value is significant at the 5% (*) and the 1% (**),

条件づけ 強化を与えたことによる規準反応の増加量について、上と同様に3×2×3の分散 分析を行なったところ、 Table2のような結果が得られた。この表で明らかなように、印象価の 主効果、性の主効果、印象価と性の交互作用、性と代名詞の交互作用、および印象価と性と代名 詞の交互作用がそれぞれ有意であった。印象価と性の交互作用は、 G動詞が強化された場合に、

女子の方が男子よりも成績がよく(t‑3.57、 df‑84)、その他の動詞では男女差がないことを示 している。性と代名詞の交互作用は、 ttわたし日が呈示された場合は男女差がなく、 ''あなだ'お よび'tかれ日では女子の方が成績がよいことを示している(それぞれi‑2.09、 4/‑252; t‑3.

40、 4f‑252)c そして、印象価と性と代名詞の交互作用は、女子の被験者に"かれ''が呈示され ている時、 G動詞を強化した場合にもっとも成績がよいことを示唆している。

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言語条件づけにおよぼす実験前言語習慣の影響(玉瀬)

Table 2

Analysis of variance of mean gains

ss df MS

Between ∫£

1. Impression value 2. Sex

l x l!

Error(B)

Within Ss

3. Pronoun

l x 3 2 × 3 1 × 2 × 3

Error(W)

923.32 106.34 41.61 80.48

694.89     84 673. 33    180

0.21

0

1

0

0

H

 

O 0

0

 

C

O

*

t

O

5

30     4

53. 17     6.43**

41.61    5.15*

40.24     4.89*

8.27

0.11  < 1

7.33     2.19 61      19.31    5.78**

63      11.16     3.34*

58   168     3.34

*^<.05, **」<.01.

意識性 意識性に関する結果は次のとおりであった。第1の項目に関して何らかの答を書いた 者が65名であった。これらの被験者の大部分は.tJ性格を調べようとしている"とか't記憶力をテ ストしようとしている=などという、反応と強化の随伴性とは無関係なことを答えている。随伴 性に気づいているかどうかは主として第3項目で調べられた。随伴性を指摘できた者はG群で7 名、 N群で1名、 B群で9名で、合計17名であった。この結果は、 G群とB群で随伴性を指摘し た者、すなわち意識性のあった者が多かったことを示唆している(X2‑7.54、 df‑2、 p<.05)。

ただし、この中には、たとえば't野蛮なことばの時に、よろしいと言っだ'とか、 t'よいことば が続いた時によろしいと言った''などの答も含まれている。随伴性を指摘した被験者全体の平均 増加量は4.82で、残りの73名の成績は1.34であったO両者の増加量はいずれも有意であったが

(それぞれ、 t‑2.82、 df‑16、 p<.02; t‑2.31、 df‑72、 p<.05)、両者の間には5%水準の 有意差がみられた 0‑2.38、 4/"‑88)。

Er^^^^^^^^^^^^K^is

本実験のおもな結果は、 (1)オペラント期間では、どの代名詞が呈示されている場合にも、 G 動詞がもっとも多く選ばれたが、とくに、 ftあなた"が呈示されている時に、 G動詞反応が多か ったこと、および、 (2)条件づけ期間では、女子の被験者にG動詞を強化した場合にもっとも成 績がよかったことである。

オペラント期間での代名詞と動詞の結合関係は、条件づけ以前に確立された言語習慣を反映す るものとみなされている。本実験では、どの代名詞が呈示された場合にも, G動詞がもっとも多

く選ばれ,とくに第2人称の代名詞が呈示された場合にその傾向が著しかった。この結果は、

Clance and Dixon (1965)の報告とは異なるが、玉瀬と池田(1972)の結果とはよく一致して いる。日本では自分よりも相手のことを良く言う習慣がある。このような言語習慣によって、

ttあなだ'が主語となる場合に、とくにG動詞反応が多くなったのではないかと解釈される。ま

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た、どの代名詞が呈示された場合にもG動詞が選択されやすかったのは、社会的望ましさなどの 要因によるものであるかもしれない。これらの点をさらに検討するためには、 ClanceandDixon

(1965)と同様の手続きを用いた実験を行なう必要があろう。

本実験のおもな関心は、条件づけ以前に確立された言語習慣が、条件づけにどのような影響を およぼすかであった。条件づけの成績は、どの代名詞が呈示されている時でも、 G動詞を強化し た場合にもっともよかった。この結果は、オペラント期間でG動詞反応が他の動詞よりも多かっ たことと関係するとみなされるかもしれない。しかし、オペラント期間では性差がないのに、増 加量は女子の被験者だけが有意であったので、この説明だけでは不十分である。また、女子の被 験者で、 ttかれ日が呈示されている時にG動詞反応の増加量が最大であったことは、実験前の代 名詞と動詞の結合以外の要因が作用していることを示唆している。

Dixon (1965)の実験では、 G動詞とB動詞が呈示されている時には、 tIわたし"の条件づけが 速く成立し、 N動詞が呈示されている時には成立しにくかった。この結果について、彼は、被験 者の強化刺激への注意または反応性が、 G動詞とB動詞によって作り出されたより強い刺激条件

によって促進されたからだと説明している0本実験においても、女子の被験者にとって、 ttかれ"

がもっとも強い刺激条件をつくり出したために、成績がよくなったのかもしれない。女子の被験 者だけで条件づけが成立したことは、女子の方が男子よりもG動詞への反応性が強いことを意味

しているかもしれない。

このように、本実験の結果は、 Dixon らの結果とは必ずしも一致していないが、過去の言語 習慣によって、強化される刺激語以外のことばが条件づけに影響することを示すものといえようO

i^^^Hli

実験前に形成された言語習慣が、言語条件づけに影響するという Dixon (1965)の主張が、

わが国でもあてはまるかどうかが検討されたO刺激力‑ドに、代名詞ttわたし"、 ttあなだ'、 "か れ日のうちの1つと印象価が異なる3つの動詞が書かれたTaffel型の変形課題が用いられた。

90名の大学生が、オペラント試行の後、よい印象の動詞、中性の動詞、および悪い印象の動詞の うちのいずれかを強化される条件で実験を受けた。

おもな結果は次のとおりであった。 (1)オペラント期間では、どの代名詞が呈示されている場 合にも、よい印象の動詞が他の動詞よりも多く選ばれ、とくに、 "あなだ'が呈示されている場 合にその傾向が強かった。 (2)条件づけ期間では、女子の被験者によい印象の動詞を強化した場 合に成績がよかった。これらの結果がDixon らの研究と比較して議論された。

く付記〉本研究をご指導くださいました本学助教授杉村健先生、ならびに資料の蒐集と整理に ご協力くださいました池田(旧姓松成)千恵子氏に厚く感謝します。

引 用 文 献

Clance, P. R., & Dixon, T. R. 1965 The effect of previously learned verbal habits upon two reponse classes in verbal conditioning. The Journal of Psychology, 60, 271‑276.

Dixon, T. R. 1965 The effect of pre‑experimentally acquired verbal habits upon verbal conditioning.

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亘語条件づけにおよぼす実験前言語習慣の影響(玉瀬)

The Journal of Psychology, 59, 335‑347.

Dixon, T. R. 1966 The effect of experimenter‑subject relationship upon verbal habits and verbal conditioning. The Journal of General Psychology, 75, 151‑156.

Dixon, T. R., & Dixon, J. F. 1964 The impression value of verbs. Journal of Verbal Learning and Verbal Behavior, 3, 161‑165.

Greenspoon, J. 1962 Verbal conditioiling and clinical psychology. In A. J. Bachrach (Ed.), Experimantal Foundations of Clinical Psychology. New York: Basic Books, 510‑553.

Taffel, C. 1955 Anxiety and the conditioning of verbal behavior. Journal of Abnormal and Social Psychology. 51, 496‑501.

玉瀬耕治・池田常雄1972 3音節動詞の印象価 奈良教育大学紀要 21巻、 1号、 243‑251.

(1973年4月3日受理)

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The effect of subject's verbal habits upon verbal conditioning

Koji Tamase

Department of Psychology, Nara University of Education, Nara, Japan

The purpose of this experiment was to examine whether or not previously learned

verbal habits, especially pronoun-verb connections, influence upon verbal conditioning.

120 Taffel-type cards were used. Each of them included a personal pronoun, "I", "You", or "He", on the upper side, and three verbs, good-, neutral-, and bad-impression verbs, on the lower side. Following 30 operant trials, 90 college students were divided into three groups and were given 90 conditioning trials. In the conditioning period the response to

either a good-, neutral-, or bad-impression verb was reinforced by "good".

The main results obtained were as follows. (1) In the operant period good-impression verbs were selected most frequently of the three classes of verbs. Particularly this trend was dominant when "You" appeared on the card. These results were inconsistent with

Dixon's finding(l965). (2) In the conditioning period verbal conditioning was established in case of female subjects receiving the reinforcement for good-impression verbs.

(Received April 3, 1973)

参照

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