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実験ゼミ 2016 P3 1 4

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Academic year: 2018

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5 章.検出器の一般的な特徴   

      

近藤寛記

この章では、電子機器としての検出器の一般的な特徴について説明する。以降の章で具体 的な種類の検出器について扱うのでそのためのイントロダクションである。

原子核、素粒子物理学において歴史的に様々なタイプの検出器が発展してきたが、すべて は同じ基本原理に基づいている。それは、放射エネルギーの一部または全部を人間の近く に感知しやすい形に変えることである。2 章でみてきたように、荷電粒子は原子内電子と の直接の衝突により原子の励起やイオン化を引き起こし、これにより検出器の物質にエネ ルギーを移行させる。一方で、中性の粒子については、まずはじめに検出器内物質との反 応で荷電粒子を放出させてからその荷電粒子が検出器内物質をイオン化、励起させるとい う 2 段階の反応が起きなければならない。変換されたエネルギーがどのような形で現れる のかは、検出器の設計による。たとえば、次の章で扱いガス検出器は、イオン化された電 子を直接集めて電流信号を生成する。一方、シンチレーターは励起やイオン化により分子 が遷移して光を放出させる。同じように、写真乳剤において、イオン化により化学反応が 起きて可視化された軌道が形成される。現代の検出器は本質的に電気的である。つまり、 検出器から得られた情報は電子的に扱うことのできる電気インパルスに変換される。電子 化することで、情報はコンピューターで早く正確に扱うことができる。電気的な検出器が すべてではないが、電気的であるに越したことはない。」なのでこの章では電気的なタイ プの検出器について考える。

5.1 感度

まずは、検出器の感度について考えよう。感度とは、与えられた(検出したい)種類の放射、 範囲のエネルギーについて有用な信号を生み出す能力のことである。あらゆる種類の放射 、 すべての範囲のエネルギーを感知できる検出器はない。調べたい放射の種類、エネルギー の範囲に応じて検出器は設計される。

検出器の感度はいくつかの要因に依存する。 1) 検出器内のイオン化反応の断面積 2) 検出器質量

3) 元からある検出器ノイズ

4) 検出器の感知部分を囲む保護部分

断面積と検出器質量は放射が検出器内のすべてまたは一部のエネルギーをイオン化の形に 変える確率を決定する。これから、いかにイオン化が効率的に起きるかが検出器の性能だ とわかる。2 章で学んだように、荷電粒子はイオン化を引き起こしやすい。なので、入射 粒子が荷電粒子の時は、低密度、小体積の検出器でも、感知部分でイオン化が起きる。つ まり、荷電粒子は調べやすい。一方、中性粒子の場合は、検出器物質との反応でまず荷電

(2)

粒子が発生して、その荷電粒子がイオン化反応をしないといけない。これらの反応の断面 積は非常に小さい。なので中性粒子の検出をするには高密度、大体積の検出器が必要であ る。特に、ほかのものとほとんど相互作用しないニュートリノを検出しようとしたときに は必要な検出器質量はトンのオーダーとなる。

イオン化がたとえ起きたとしても、数が少なかったら信号は有用ではない。信号が有用で あるような最小限の量というものがある。この下限は、検出器や関連する電子機器のノイ ズにより決まる。ノイズは電圧や電流の揺らぎとして現れ、放射があるのかどうかを表す。 明らかに、イオン化の信号が有用であるためには、信号の大きさがノイズの平均の大きさ を上回っていなければならない。放射の種類やエネルギーの範囲に応じて、イオン化の全 体の量は検出器の感知部分の大きさにより決まる。

検出されるエネルギーの下限を決めるもう一つの要因は、検出器の感知部分の入口窓を覆 う物質である。この物質層を貫けるだけのエネルギーを持った放射だけが検出される。ゆ えに、この物質の厚さが検出されるエネルギーの下限を決定する。

5.2 検出器反応

ほとんどの検出器は、放射の存在を検出するだけでなく、放射のエネルギーについていく つかの情報を与えてくれる。検出器内で放射から生じたイオン化の量が、感知部分で失っ たエネルギーの量に比例していることからである。もしも検出器が十分に大きく、放射が すべて吸収されるほどであるならば、放射のエネルギーの分だけイオン化する。しかし、 検出器の設計によって信号が進むにつれてこの情報が保存されたり失われたりする。 一般的に、電気的な検出器の信号は電流パルスの形で出力される。イオン化の量はこの信 号に含まれる電荷の量、すなわちパルスの時間積分に反映される。しかし、パルスの形が 1つのイベントからもう1つのイベントにかけて変わらないとすれば、この積分は信号の 大きさ、あるいは「パルス高さ」に直接に比例する。放射エネルギーと出力信号のパルス 高さあるいは全電荷との関係は検出器のレスポンスといわれる。

理想的には、それが必ずしもそうではなくてもこの関係が線形だと思いたくなる。しかし これは、測定されたパルス高さをエネルギーに変換する時に問題を非常に単純にする。多 くの検出器で、ある範囲のエネルギーでレスポンスは線形または近似的に線形である。し かし一般的にはレスポンスは粒子の種類とエネルギーに依存し、ある種類の放射でレスポ ンスが線形であっても、ほかの放射でそうであるとは限らない。いい例は有機シンチレー ターである。あとで見るように、レスポンスは非常に低エネルギーの電子については線形 だが、陽子、重陽子といった重い粒子については線形ではない。これは、媒質中の異なる 粒子により引き起こされる異なる反応機構によるものである。

5.3エネルギー分解能。Fano 因子

放射エネルギーの測定のために設計された検出器にとって最も重要なのはエネルギー分解 能である。これは、2つの隣り合ったエネルギーを区別できるような幅である。一般的に は分解能は、検出器に単一のエネルギーをもったビームを当てて、スペクトルを見ること

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で測定される。もちろん理想的には、鋭いデルタ関数型のピークが見たいのである。実際 にはこうしたことは決してなく、有限の幅、ふつうはガウシアンのピーク構造が見える。 この幅は、生じるイオン化と励起の数の揺らぎによるものである。

分解能は普通 FWHM(full width at half maximum 半値幅)という用語で与えられる。 この間隔より近いエネルギーは通常分解不可能である。これは図 5.1 に描いてある。この 幅を

∆ E

と書くと、エネルギー E における相対分解能は

Resolution=∆ E/ E

となる。

等式(5.1)は普通パーセントであらわされる。たとえば、NaI 検出器は 1MeV のガン マ線に対して8パーセントから9パーセントの分解能を持っていて、一方ゲルマニウムは 0.1パーセントである。

一般的に、分解能は放射から検出器に移行したエネルギーの関数であり、(5.1)は高 エネルギーでより正確になる。これはイオン化や励起のポアッソンまたはポアッソン様統 計によるものである。実際、イオン化を生成するのに必要な平均のエネルギーは物質だけ による定数であり、これを w と書く。ゆえに、蓄えられたエネルギー E とすると、平均で

J =E /w

回のイオン化があると思える。ゆえにエネルギーが増加するにつれてイオン化

の回数も増加して、相対的な揺らぎは小さくなる。

この揺らぎを計算するために、2つの場合を考えることが必要である。放射エネルギーが すべては吸収されないような検出器、たとえば通過する粒子の

dE /dx

のロスだけを測 定するような薄い透過検出器では、信号となるような反応の数はポアッソン分布で与えら れる。分散は

σ

2

= J

で与えられる。J は発生したイベントの数である。ゆえに、分解能のエネルギー依存性は

R=2.35 J

J =2.35

w

E

で与えられる。ここで、2.35はガウシアンの標準偏差をその半値幅に関連付ける。ゆ えに、分解能はエネルギーの平方根に反比例する。

スペクトロスコピー実験に使われる検出器のようなすべてのエネルギーが吸収されるよう なものについては、素朴なポアッソン統計の推定は使えない。そして実際に、多くのこう した検出器の分解能の実際の値は、ポアッソン統計から計算した値よりも小さい。この違 いは放射から検出器に移される全エネルギーが一定の量(放射がもともと持っていた全エ ネルギー)であり、一方で前回の場.数とそれぞれのイオン化ごとのエネルギー損失はこの 全エネルギーによって拘束されている。統計的には、このことはイオン化現象は全体とし ては独立ではなく、ポアッソン統計が適用できないことを意味している。Fano はこの条 件のもとでの分散を初めて計算して

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σ

2

= FJ

を得た。J は生じたイオン化の平均回数で、F は Fano 因子として知られる数である。 Fの因子は検出器内のエネルギー移行を引き起こすすべての基本的な過程の関数である。 これには、イオン化を引き起こさないすべての反応も含む。たとえば、フォノン励起など である。ゆえに F は検出器媒質によらない定数である。理論的には F は正確に計算するの が非常に困難である。というのも、それは検出器内で起きるすべての反応についての詳細 な知識を必要としているからである。(5.4)式から、分解能は

R=2 .35 FJ

J =2.35

Fw

E

で与えられる。もしも F=1 ならば分散はポアッソン分布の者と一致して(5.5)は(5. 3)になる。これはシンチレーターにおいてはみられる。しかし、多くの半導体、ガス検 出器では F<1 である。この時、分解能は高い。

イオン化の揺らぎに加えて、多くの外的な要因が検出器の全体の分解能に影響する。それ はノイズやドリフトといった、電子運動のかかわる効果も含んでいる。これらのすべての 原因が独立で、ガウシアンで分布しているとすると、全分解能 E は(4.64)で与えら れる。つまり、

(∆ E)

2

=(∆ E

det

)

2

+(∆ E

elect

)

2

+

5.4 レスポンス関数

エネルギースペクトルの測定において重要なのは、検出された種類の放射における検出器 のレスポンス関数である。これは今考えている放射の単一エネルギービームをあてたとき に検出器から得られるパルス高さのスペクトルである。今までは、このレスポンススペク トルはガウシアンピークであると仮定してきた。このピークの幅を無視すると、デルタ関 数になる。つまり、放射の持つエネルギーを固定したら出力信号はただ一つの一定の大き さを持つ。ゆえに、レスポンスが線形ならば、検出器から測定されたパルス高さのスペク トルは放射のエネルギースペクトルに直接対応する。これは理想的な場合である。不幸な ことに、ガウシアンのピークをもったレスポンスは必ずしも実現できない。特に中性の放 射においてそうである。

与えられたエネルギーにおける検出器のレスポンス関数は検出器中で放射が受ける様々な 相互作用や、検出器の設計、幾何学的な形によって決まる。例えば、電子などの荷電粒子 の単一エネルギービームが、粒子を止めるのに十分な厚さを持った検出器と反応すること を考える。すべての電子が原子衝突によってエネルギーを失うと仮定すると、パルス高さ のスペクトルがガウシアンになることは明らかである。しかし、現実には、すべてのエネ ルギーを検出器に移行して静止するまでに散乱して検出器から出ていく電子もある。これ は低エネルギー尾をつくる。同様に、電子が制動放射により放出した光子が検出器の外に 出ていくことで、エネルギーが損失することもある。これにより、ピークよりも低いエネ ルギーにおいては反応の数が増える。つまり、上記の 2 つの過程があるせいで、放射から

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検出器へのエネルギーが小さいような場合が増えるのである。ゆえにレスポンス関数は、 ガウシアンに、上記の損失による低エネルギー尾を加えたものとなる。低エネルギー尾が 小さければ、要求される制度によってはレスポンス関数を完全なガウシアンだと近似でき ることもある。さらに、検出器の設計や幾何学的形を変えることでレスポンス関数は改良 できる。例えば、後方散乱や制動放射を最小化するために、原子番号の小さな原子を検出 器物質として選べる。同様に、反応源を取り囲むように検出器を配置すれば、後方散乱し た電子も拾うことができる。

放射の種類によってレスポンス関数がいかに変わるかを見るために、同じ検出器で、電子 の代わりにガンマ線を用いた時を考える。すでに述べたように、ガンマ線は電荷をもたな いので、検出されるためにはまず検出器物質との反応で荷電粒子を出さなければならない 。 この過程の主なメカニズムは光電効果、コンプトン散乱と対生成である。光電効果により、 ガンマ線のエネルギーは光電子に移り、その光電子が検出器によって検出される。光電子 のエネルギーはすべて同じであるために、パルス高さのスペクトルは鋭いピークとなる。 それはほしかったガウシアンのレスポンスである。しかし、コンプトン散乱をするガンマ 線もある。(2.113)のように、コンプトン電子はエネルギーが連続的に分布してい て、Fig 2.24のような分布がレスポンス関数にも現れる。もちろんこれは、光電効果 によるデルタ関数型の理想的なレスポンス関数の形を壊す。同じように、対生成を通じた 反応もレスポンス関数の形を変える。Fig 5.2に、異なる 2 つの検出器に 661keV のガ ンマ線を当てたときのレスポンス関数が示してある。(a)は検出器としてゲルマニウム検出 器を用いたときのもので、この放射のエネルギーにおいては光電効果による大きな鋭い ピークと、コンプトン散乱による小さい連続的なスペクトルがみられる。(b)は検出器とし て有機シンチレーターを用いたときのもので、原子番号の小さなものを用いたために、コ ンプトン散乱が支配的でレスポンス関数にはそれの寄与しか見られない。相対的強度は、 その検出器におけるその相互作用反応の相対的断面積によって決まっているので、レスポ ンス関数は検出器物質やエネルギー域によって変わる。

ガンマ線のスペクトルを測定しようとしているときには、検出器で観測されるパルス高さ 分布は弦間線のスペクトルと検出器のレスポンス関数の畳み込み積分になる。

PH ( E)= S ( E

'

) R(E , E

'

) d E

'

ここで、反応するガンマ線のエネルギーが

E

' のときのレスポンス関数が

R(E , E

'

)

あり、

S (E

'

)

はガンマ線のスペクトルである。測定されたパルス高さ分布 PH(E)からガ ンマ線スペクトル

S (E

'

)

を求めるには、レスポンス関数

R(E , E

'

)

を知らなくてはな

らない。これをみると、

R ( E , E

'

) =δ (E

'

E)

であると、すぐにスペクトルがわかるというメリットがあるとわかる。

参照

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