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平アーチへのイメージ力学の適用とその力学的根拠について

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Academic year: 2022

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平アーチへのイメージ力学の適用とその力学的根拠について

(株)建設プロジェクトセンター 正員 筒井 光男 九州産業大学 フェロー 水田 洋司 福岡大学 正員 坂田 力

1.はじめに

筆者等はイメージ力学1)という概念を提案してきた。これは簡単に言えば、以下のようである。構造物の表 面に石を貼ると、構造物は石で出来ているように見える。その場合、貼り方によっては視覚的に不安定に見え る場合がある。イメージ力学は、この石で出来ているように見える、表面上に創造される構造物に簡単な力学 を適用して視覚的な安定を保つようにする考え方である。一般に、 煉瓦・石材などを積み重ねてつくる構造

(以下組積造と記す)の開口部の上は石が落ちてこないように梁やアーチが設けられる。本論文では、開口部 の上に設けられることが多い平アーチへのイメージ力学の適用とその力学的根拠について報告する。

2.平アーチの概要

Jacques Heiman2)は平アーチとして図-1をあげている。

力学性状は通常の石造アーチと同じく、輪石は圧縮のみを 受ける。アーチ作用によって生じる水平力に両側が抵抗す る必要がある。まぐさ(開口部の上に設けられる梁)と違 い、部材が小さく、扱いが容易である。下面が平坦である ため、組積造の窓の上に用いられることが多い。これらの 平アーチは、ヒンジが4個出来て崩壊するというメカニズ ムが形成されない点が、通常の円アーチとは異なる。今、

図-1(a) のアーチに対して、中央部に集中荷重を載荷し増 加させていくと、両端では輪石下端に、要石付近で上端に ヒンジが出来るが、それ以上荷重を増加させても4つめのヒ ンジは出来ないことが判る(図-2) 。平アーチはライズが低

く水平力が大きいために、支間や鉛直荷重が大きい場合に 図-1 平アーチ は適しない。一方、水平力が増加しても軸力線が輪石の外

に出て崩壊することは無い。これらの特性を利用し飛梁 (図-1(e)flying buttress)に用いられている。

3.平アーチの安定照査

平アーチでは、前述の理由で4個目のヒンジが出来て崩 壊することはない。また、ここで考える平アーチには鉛直

目地を付けないため、輪石が剪断でずれ落ちることも考え 図-2 集中を受ける平アーチ る必要がない。その結果、水平力による滑動が残る。これ

に対しては、以前、筆者等が提案した、仮想円を用いた方 法1)により照査できる。それは「半円アーチは水平力によ る滑動に対して安定であり、欠円の場合は、欠円になるこ とにより失われた質量を補えばよい」ということを図でチ ェックする方法である。平アーチに適用するときは、内弧 外弧が無いために、仮想円をどの位置にするかを決めない といけない。そこで、輪石端部では下端(図-3、a点)、要 石では上端(同、b点)を通るものとする。この位置に薄い アーチがあると考える。この仮想円が壁幅に収まれば、水 平力による滑りは無いことになる(図-3左)。仮想円が壁の 外側に出てしまう場合(図-3右)、および荷重が大きく、か

つ壁に対して余裕がない場合は次のいずれかの対策をとる。

1)輪石厚を大きくする。

2)開口部幅を狭くするか開口部を壁端部から離す。 図-3 平アーチと仮想円 3)上部に軽減アーチ3)を入れる(図-4)。

I‑040 土木学会西部支部研究発表会 (2016.3)

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図-4 平アーチと軽減アーチ

4)多層開口部あるいは軽減アーチがある場合、抵抗す る質量を再配分して照査する(図-5)。

なお、図-4のように同型の窓が並ぶときは、壁中央 へ向かう水平力は相殺するので問題はない。図-4の軽 減アーチは平アーチの荷重を軽減することにより水平 力及び圧縮応力度を減らしている。図-5は多層開口部 を有する構造物の例である。多層であるために水平力 を発生させる質量と摩擦抵抗を発生させる質量が混在

する。いま、壁の比重は全て同じとして質量の再配分 図-5 多層開口部仮想円照査図 を行ってみる。上下層ともに平アーチの仮想円が壁よ

り外に出て、滑動に対して不安定となっている様に見える。しかし、上層では軽減アーチの滑動照査で使用し ていないA1部分と平アーチで不足するA2部分を比較すると、A1の面積が広いので安定である(式(1))。下層

は、上層の照査で余った面積にA3を加えた面積がA4より広く、安定であることが視覚的に確認できる(式(2))。

上層 A1>A2 (1)

下層 A1-A2+A3>A4 (2)

4.おわりに

我が国の構造物で表面に石を貼ったものおよび仮想空間などの組積造には、視覚的な安定を満たしていない ものが見受けられる。開口部の上に梁やアーチが配置されないこともある。建物の外装・内装、スタジオ・舞 台セット、アニメーション・漫画背景などがある。一方、ヨーロッパ旧市街などを散策すると、石造あるいは 石貼りの建物の窓の上は平アーチがあり、視覚的な安定が保たれているものが多い。それらを見慣れた人には、

我が国の町並みは不安に満ちた空間に見えているのではないかと危惧される。提案の方法で平アーチを設置す れば、構造物の窓やショウウィンドゥの上、さらにはスタジオ・舞台セット・アニメーション・漫画背景にお ける開口部の上を視覚的に安定なものにできる。本論文の平アーチの照査方法も含めたイメージの力学が、こ れらの視覚的な安定に役立てば、望外の喜びである。

参考文献

1) 筒井、水田、坂田:イメージ力学の提案とその構造物への適用について、土木構造・材料論文集 第24号

、pp.145~152、2008.12。

2) Jacques Heiman: The Stone Skeleton Structural Engineering of Masonry Architecture, CAMBRIDGE UNIVERSITY PRESS,1995.

3) 筒井、水田、坂田:軽減アーチへのイメージ力学の適用について、平成22年度土木学会西部支部研究発表 会講演概要集、Ⅰ-3、2011.3。

I‑040 土木学会西部支部研究発表会 (2016.3)

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