• 検索結果がありません。

高齢社会を支える介護人材リスクの研究

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2022

シェア "高齢社会を支える介護人材リスクの研究"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

博士学位論文要旨

高齢社会を支える介護人材リスクの研究

介護職員を中心とした介護従事者の現状と今後

2014年7月

滋賀大学大学院経済学研究科 経済経営リスク専攻

氏名 今井久人

指導教員 北村 裕明

指導教員 梅澤 直樹

指導教員 澤木 聖子

(2)

本論文の問題関心は、高齢化が進んでいるわが国において、さらに高齢期における身体 介護を主とした「介護の社会化」の推進を考えたとき、その担い手である介護従事者の不 足が、「介護の社会化」の持続可能性を脅かし、高齢期の生活リスクに対応すべき介護保 険が危機に直面していることである。

本論文は、介護の担い手である介護従事者の確保、定着という問題を介護事業者や介護 従事者等の介護現場をアンケートにより調査し、その現状を分析するとともに、厚生労働 省をはじめとする福祉人材確保策を合わせ見ながら、人材確保・定着のあり方を示すこと を目的としている。

これまでの福祉人材の確保・定着については給与等の処遇改善を中心に研究が行われて きたが、本研究では給与を含むがそれ以外の要素をアンケートの自由記述や施設を経営す る事業者のインタビューなど、現場の声を中心に分析している。

本研究は、次に示す9章で構成されている。

序 章 研究の背景と本論文の目的及び構成 第1章 介護従事者の確保の歴史的考察

第2章 介護従事者の定着における諸条件の一考察 第3章 ホームヘルパーの雇用環境と訪問介護事業者 第4章 介護従事者の労働環境にみる離職に関する調査

第5章 介護報酬の改定にみる介護従事者確保策に関する現状と課題 第6章 介護従事者処遇状況調査にみる福祉人材の確保への課題 第7章 介護施設経営の経営指標にみる処遇等の問題

終 章「介護の社会化」を支えるために

まず序章では、研究の背景とその目的など、本研究における問題意識や方法を明らかに し、論文の構成について述べる。第1章では、介護従事者の確保における歴史的変遷につ いて、ホームヘルパーを中心に制度の展開を踏まえて説明し、社会的評価が今日までなぜ 得られないのか、その理由を検討する。第2章では、訪問介護事業者、居宅介護支援事業 者、介護福祉施設及び介護老人福祉施設など介護事業者を対象としたアンケート調査を通 じ、それぞれの介護事業者の介護職員の確保・定着等の課題や工夫などを事業者ごとの比 較から現状を明らかにする。第3章では、第2章で分析した事業所の中でも離職割合が高 いと言われている訪問介護事業者に焦点を当て、特に自由記述の回答からそこにある諸課 題を明らかにしている。第4章では、さらに介護の担い手である介護職員(施設)のアン ケート調査結果を通じ、離職における意向から離職の促進要因や抑制要因を各項目の相関 から明らかにしている。第5章では、国の施策としてこれまで行われてきた数回の介護報 酬改定の変遷を整理し、介護給付費部会等の審議会資料を中心に介護報酬の改定が介護職 員の処遇改善へ与える波及効果などを確認している。第6章では、国の施策としての3年

1

(3)

間制度化された介護職員処遇改善交付金を中心に、その効果に着目した介護職員処遇改善 調査の結果と比較しながら、その政策の評価を行っている。第7章では、全国でも先進的 な経営を行っている大規模法人の経営者からのヒアリングをもとに、社会福祉法人の将来 の経営のあるべき姿や、一方で社会福祉法人の約半数を占める零細な法人の抱える問題を 示している。終章では、これまで見てきた介護職員の確保・定着に必要な条件等を提示し、

介護の「社会化」を将来も担い支える介護人材の確保・定着の機能不全というリスク回避 のための提言をもってまとめとしている。

介護職員の成り立ちなど、制度の歴史的展開からわかるように、当初は生活援助という 形ではじまり、介護職員には特に専門性も問われず素人でよかったために社会的評価は低 く、それに伴い給与等の処遇も低い時代が長く続いていた。介護職員を中心とする福祉従 事者の確保のためには、介護職員に対する国民全体による社会的評価をあげることが重要 である

介護現場の実態をアンケート結果からは、介護職員の確保・定着のためには、これとい う決定的な相関のある条件や要素は確認できなかった。しかし、「理念や使命感の共有と 徹底」があげられており、その理念や方向性の浸透を図る手段として、「職場の人間関係・

コミュニケーション」が重要であり、特に上司の理解と支援により「理念や使命感」が職 員に伝えられるというような、良好な人間関係の構築が働きやすい職場環境づくりに必要 であることが確認できた。

また職員アンケートではそれを裏付けるように、離職意向と収入との関係では、介護職 員の定着には収入以外で「他人の規制のせいで、自分の仕事ができない」、「仕事をする 上で上司からの支援が足りない」、「いまの仕事に自分の能力が活かされていない」など 収入以外に職場環境の悪さや上司の支援が得られないような状態になると離職が進むとい うことが確認できた。さらに、離職を抑制する要因としては、「上司はあなたのいうこと を真剣に聞いてくれる」や「上司はあなたが専門家として成長できるよう後押ししてくれ る」という項目があがっており、職場の上司の理解や支援を受け、仕事のやりがいや達成 感を味わえるような職場環境の整備が、より職員の働く動機として強く作用することが示 唆される結果となっている。

代表的な政策である介護報酬について、その変遷から介護職員の処遇改善のための原資 としての可能性を見てきたが、介護報酬の中で処遇改善の原資として議論されることはあ まりなかった。しかしその中でも、報酬上の加算という方法ではなく、報酬のベースとな る改正が必要であるという介護給付費部会委員の意見もあり、「介護の社会化」を具体的 に支える介護保険制度の中では、介護職員の安定的な処遇の改善をはかることが重要であ ることも確認できた。さらに介護従事者処遇交付金と介護報酬改定による処遇改善の効果 を時系列に見てきたが、給与面では一定の処遇の改善には寄与しているが、介護職員全体 の給与の底上げまでには至っていない現状が数字から確認できた。

さらに社会福祉法人の在り方から現状の課題を整理し、先進的に取り組んでいる大手法

2

(4)

3

人の経営実態から多くの示唆を得た。つまり規模の拡大とともに経営の透明化を進め、い わゆる同族経営の独善的な旧態然とした経営と決別し、規模の利益を意識した法人運営の 実践に、今後の介護事業の成長可能性がみえ、社会福祉法人のあるべき姿がみえている。

その上、介護職員にとって必要な研修や教育を通じ、その専門性を「見える化」し、その 専門性を社会に認めてもらうことで社会的評価を得ようと努力している。

本研究で確認してきたように、これまでも介護職員は収入をはじめとした処遇の低さを、

「理念・使命感指向」や仕事を通じての達成感を代替に甘受し、職務に従事してきている。

収入以外でも「上司の理解や支援」、「スタッフ同士の人間関係」、それを可能にする「コ ミュニケーション」や「職場環境」などで改善をはかることにより、離職の抑制、新規職 員の確保、定着が十分可能になることが確認できている。社会福祉法人のみならず介護保 険を契機に参入した民間営利事業所においても、同様に給与以外の要素で改善をはかる余 地があると言えるのではないか。

また、一方で介護従事者は自らの社会的評価の向上に向け、専門性の向上に努め日々研 鑽を重ねるとともに、経営者側もそのために教育・研修という支援を惜しんではならない。

それができない介護事業の経営者は、競争原理が導入された介護市場から淘汰される前に 自ら身を引くべきであろう。

これらのことを国民、国や地方自治体、介護事業者、介護職員がそれぞれの立場におい て熟慮し、現状を改善すべくそれぞれができることを進めて行かない限り、「介護の社会 化」を支える介護保険制度の維持、具体的には要介護者を支える介護職員の不足は否めな い。また国民の高齢期の生活リスクに対応する介護保険制度はその機能を十分に果たしえ ず、そのリスクは限りなく大きくなるであろう。

参照

関連したドキュメント

But in the case of dis- abilities especially of intellectual disabilities, parents must continue taking care of them, so they have no chance to change their relations. The aim

In this paper, we attempt to make it clear that teachers who are the members of the school and future leader have something to do with the walls, anxiety and discomfort, when

この研究課題をクリアするために、次に示す 2 つのことを明らかにする。第 1 は、計画

10 例えば、市川(1990 年) 、木村・宮腰(1994 年) 、佐々木(1994

Reichheld, Harvard Business

 

序章 研究の目的と方法 第1節 研究の目的 第2節 研究の方法 第3節

Effects of composed crude drugs in 6 groups of BOF, which lowered the high serum glucose levels, on serum insulin levels in STZ-diabetic mice.. Serum insulin levels were measured at