症 例
症 例:75歳,男性。 主 訴:下腿浮腫,呼吸苦 現病歴:8年前に黄疸と灰白色便を主訴に当 院消化器内科受診した。下部胆管の狭窄,膵管 のび慢性狭小化を認め,自己免疫性膵炎と診断 さ れ た。 内 視 鏡 的 逆 行 性 胆 管 ド レ ナ ー ジ (ERBD)のみで経過観察となった。また,後腹 膜線維症も指摘された。3か月後,胆管ドレナー ジ チ ュ ー ブ の 閉 塞 に 伴 う 閉 塞 性 胆 管 炎, K.Oxytoca E.facium α-streptococcusによる敗血 症と播種性血管内凝固症候群(DIC)を発症し た。チューブ交換と抗菌薬により軽快し,CRP は陰性化した。経過中に糖尿病と診断され, HbA1cは8 〜 9%台で経過した。また同年に冠 動脈バイパス手術が施行され,術後に心房細動 を発症し,抗凝固薬(ワルファリン)も開始され た。1年前に右足背に蜂窩織炎を発症し,同部 位からStaphylococcus speciesが検出された。抗 菌薬にて症状は軽快したが,その後もCRP陽 性が持続した。この時点では血清Cr 1.2 mg/dl で,尿蛋白,尿潜血ともに陰性であった。9か 月前より尿潜血(2+),尿蛋白(+)が出現し,赤 血球円柱も認めた。時折,肉眼的血尿を自覚す ることもあった。また,6か月前より血清Cr 1.74 mg/dlに上昇し,その2か月後には血清Cr 2.19 mg/dlまで増悪した。その後,下腿浮腫と呼吸 苦が出現し入院となり,腎生検を施行した。 現 症:身長163 ㎝,体重76 kg,体温36.4℃, 血圧130/80 mmHg,脈拍80回/分,SpO2 97% (room air)。 検査所見:尿蛋白(2+),蓄尿蛋白排泄量5.9g/ day,尿潜血(3+),変形RBC(+),赤血球円柱(+)。 WBC 5.7 × 103 / μ L,HGB 14.1 g/dL,PLT 14.3 × 104/ μ L,TP 6.8 g/dl,Alb 3.6 g/dl, AST 25 U/L,ALT 17 U/L,LDH 291 U/L, ALP 364 U/L,γ-GTP 90 U/L,Cr 3.01 mg/dl, HbA1c 7.1%,CRP 0.4 mg/dl,Na 134 mEq/L, K 5.8 mEq/L,Cl 102 mEq/L,補正Ca 9.2 mg/ dl,IgG 1479 mg/dl,IgG4 179 mg/dl,IgM 44 mg/dl,IgA 204 mg/dl,IgE 816 mg/dl,C3 107 mg/dl(正常65-135),C4 30 mg/dl(正常13-35), CH50 51 mg/dl( 正 常28-48), 抗 核 抗 体40倍, IgGクリオグロブリン陽性,免疫複合体3.6 μ g/ml( 正 常<3),MPO-ANCA陰 性,PR3-ANCA 陰性,抗GBM抗体陰性,HBc抗体(+)。腹部 超音波検査では腎サイズは正常,水腎症は認め ず。Gaシンチでは腎臓を含め有意な集積所見 を認めなかった。 腎生検所見:光顕上,糸球体は一部全節性硬 化に陥っていた。軽度のメサンギウム細胞の増 殖と基質の増加を背景に巣状分節性に管内増殖 性病変を認め,1個の糸球体には細胞性に管外肉眼的血尿が出現し急速に腎障害が進行した
糖尿病性腎症の一例
阿 部 哲 也
1青 山 東 五
1関 本 恵 子
1高 橋 遼
1島 田 芳 隆
1正 木 貴 教
1竹 内 和 博
1鎌 田 真理子
1小 川 みゆき
1村 野 順 也
1内 藤 正 吉
1佐 野 隆
1竹 内 康 雄
1 病理コメンテータ城 謙 輔
2山 口 裕
3増殖性病変を伴っていた。蛍光抗体法では糸球 体係蹄壁にC3の沈着が散見された。電顕では hump様に上皮下に高電子密度沈着物を認めた。 また,多核白血球の浸潤が認められた。組織診 断として糖尿病性腎症に合併した巣状分節性管 内増殖性糸球体腎炎と診断した。 本症例の腎病変の原因として,感染性腎炎を 考えたが,その他,腎炎の可能性についてご検 討頂きたく症例を提示致します。 図 3 【現症】 身長:161cm、体重:75kg 体温:36.4℃、血圧:130/80 mmHg、脈拍:80回/min 不整、 SpO2 98%(room air)
意識清明、眼瞼結膜:貧血(-)、眼球結膜:黄染(-)、眼瞼浮腫(-) 甲状腺:腫大(-)、頚部リンパ節:腫脹(-)、口腔:正常 心音:雑音(-)、呼吸音:清 腹部:平坦、軟、圧痛(-)、発赤(-) 肝・脾・腎:触知せず 下腿:浮腫(+) 皮膚所見:紫斑(-) 図 2 【既往歴】 66歳-虚血性心疾患 冠動脈バイパス術術後 73歳-出血性多発胃潰瘍 73歳-蜂窩織炎 【家族歴】特記事項なし 【生活歴】喫煙:20本(20歳~68歳)、飲酒:機会飲酒 【アレルギー歴】特記事項なし 図 1 【症 例】74 歳 男性 【主 訴】下腿浮腫、呼吸苦 【現病歴】 8年前に黄疸と灰白色便を自覚し閉塞性黄疸及び自己免疫性膵炎と診 断された。内視鏡的逆行性胆管ドレナージのみで軽快した。その3ヶ月後 に閉塞性胆管炎によりDICを発症するが抗菌薬によりCRPは陰性化した。 同時期に糖尿病と心房細動と診断され、その後HbA1c 8~9%台で経過し た。 1年前にStaphylococcus speciesによる右足蜂窩織炎を発症した。アモキ シシリンにて症状は軽快したが、CRP陽性が持続した。この時点で血清 Cr1.2 mg/dlで、尿蛋白、尿潜血ともに陰性であった。その3ヶ月後より尿潜 血(2+)、尿蛋白(+)が出現し、赤血球円柱も認めた。時折肉眼的血尿を認 めることがあった。半年前より血清Cr1.74 mg/dl、その2か月後には血清 Cr2.19 mg/dlに上昇した。その後下腿浮腫と呼吸苦が出現し、Cr3.01 mg/dlとさらに増悪を認め、入院した。
図 9 画像所見② 腹部エコー 右腎 10.2×5.0×4.8cm 左腎 9.8×4.4×4.1cm 図 8 画像所見① 胸部レントゲン 心電図 図 7 【内分泌】 TSH 3.82 μIU/ml F-T3 1.81 pg/ml F-T4 1.25 ng/ml 【感染症】 TPLA (-) RPR (-) 抗HBs抗原 (-) 抗HBs抗体 (-) 抗HBc抗体 (+) 抗HBe抗原 (-) 抗HBe抗体 (+) HBV-DNA <2.1Logコピー/mL 抗HCV抗体 (-) HCV-RNA (-) 腎生検時検査所見④ 【免疫】 CRP 0.4 mg/dL IgG 1497 mg/dL IgG4 179 mg/dL IgA 203 mg/dL IgM 39 mg/dL IgE 816 mg/dL C3 107 mg/mL C4 30 mg/mL CH50 51 U/mL 抗核抗体 40 倍 抗DNA抗体 <2.0 IU/mL 免疫複合体 3.6 μg/mL 腎生検時検査所見③ MPO-ANCA <1.0 U/mL PR3-ANCA <1.0 U/mL 抗GBM抗体 <2.0 IU/mL 抗CL・β2GPⅠ抗体<1.2 U/mL 抗CL-IgG 抗体 <8U/mL ループスアンチコアグラント1.04 クリオグロブリン定性 弱陽性 クリオグロブリン同定 IgG 血清免疫電気泳動 BJP陰性 尿免疫電気泳動 M蛋白陰性 図 6 CK 215 IU/L UN 34.6 mg/dL Cr 3.01 mg/dL UA 9.8 mg/dL Na 135 mEq/L K 5.8 mEq/L Cl 102 mEq/L 補正Ca 9.2 mg/dL P 3.6 mg/dL Glu 81 mg/dL HbA1c 7.1 % 腎生検時検査所見② 【生化学】 T.P 6.8 g/dL Alb 3.6 g/dL T-bil 1.2 mg/dL AST 25 IU/L ALT 17 IU/L ALP 364 IU/L γ-GTP 90 IU/L LDH 291 IU/L 図 5 腎生検時検査所見① 【尿一般】 比重 1.010 PH 7.0 蛋白 (2+) 定量 5.9g/day 潜血 (3+) 糖 (-) 【尿沈渣】 赤血球 >100/HPF 白血球 10-19/HPF 円柱 硝子円柱 上皮円柱 赤血球円柱 変形赤血球 (+) 【 尿生化学】 NAG 35.3 U/L 【動脈血ガス(room air)】 pH 7.424 PaCO2 35.8 Torr PaO2 77.7 Torr HCO3- 22.9 mmol/L BE -1.0 mmol/L 【血算】 WBC 5700 /μL RBC 4.48×106 /μL Hb 14.1 g/dL Ht 41.8 % Plt 14.3×104 /μL 【凝固系】 PT-INR 3.58 APTT 47.8 sec Fib 505 mg/dL 図 4
図 15
腎生検⑤
Masson染色(×200) Masson染色(×400) 図 14腎生検④
PAM染色(×200) PAM染色(×400) 図 13腎生検③
PAS染色(×200) PAS染色(×400) 管内増殖性変化 管外増殖性変化腎生検②
HE染色(×400) HE染色(×400) 好中球 図 12腎生検①
HE染色(×200) 図 11 画像所見③ ガリウムシンチグラフィー ・両側腎臓含め、異常集積は認めない。 図 10図 21 図 20 診断 糖尿病性腎症に合併した 巣状分節性管内増殖性糸球体腎炎 ・PAS染色にてメサンギウム増殖、基底膜の肥厚と基質の増加がみ られ糖尿病性変化を認めた。 ・電顕にて上皮下沈着物を認めた。 図 19
腎生検⑨
×3000 Bowman腔 好中球腎生検⑧
×6500 ×8000 GBM GBM Bowman腔 上皮下沈着物 Bowman腔 図 18腎生検⑦
C3 C4 C1q Fib 図 17腎生検⑥
IgA IgG IgM λ κ 図 16討 論
阿部 お願いします。北里大学病院,阿部と申 します。よろしくお願いいたします。「肉眼的 血尿が出現し急速に腎障害が進行した糖尿病性 腎症の一例」について発表させていただきます。 8年前に黄疸と灰白色便を自覚し,閉塞性黄 疸および自己免疫性膵炎と診断されました。内 視鏡的逆行性胆管ドレナージのみで軽快しまし た。 その3カ月後に,閉塞性胆管炎により,DIC を発症しましたが,抗菌薬によりCRPは陰性 化しました。同時期に糖尿病と心房細動を診断 され,その後,HbA1cは8 〜 9%台で経過しま した。 1年 前 に,staphylococcus speciesに よ る 右 足 の蜂窩織炎を発症しました。アモキシシリンに て,症状は軽快しましたが,CRP陽性が持続し ました。この時点で,血清クレアチニンは 1.2mg/dlで,尿蛋白,尿潜血ともに陰性でした。 その3カ月後より,尿潜血2(+),尿蛋白(+) が出現し,赤血球円柱も認めました。時折,肉 眼的血尿を認めることもありました。 半年前より,血清クレアチニンが1.74mg/dl, その2カ月後には2.19mg/dl。その後,下腿浮 腫と呼吸苦が出現し,クレアチニンも3.01mg/ dlとさらに増悪を認め入院となりました。 既往歴,家族歴,生活歴,アレルギー歴は示 すとおりです。 入院時現症です。身長は161cm,体重75kg, バイタルは体温36.4℃,血圧130/80,脈拍80 回の不整,サチュレーションは98%とルーム で保たれておりました。 下腿に浮腫を認め,皮膚に紫斑は認めており ませんでした。 こちらは腎生検時の検査所見です。尿所見で は,尿蛋白が5.9g,潜血は3(+),変形赤血球陽 性,赤血球円柱を認めました。血液ガスでは異 常所見は認めておりません。 採血所見に移ります。血算では異常所見は認 本例の診断について 本症例の診断について感染性腎炎を考えたが、 その他の腎炎の可能性についてご検討頂きたく 症例を提示致します。 図 24 国 (観察期間) 患者数(人) 平均年齢(歳) 糖尿病(%) 感染部位(%) 感染細菌(%) 転帰 ドイツ(1984-1993) 30 49 不明 皮膚(13)歯(23) Staphyrococcus(13) Streptococcus(40) 寛解(64)、保存期腎不全(28)、ESRD(4),死亡(4) フランス (1976-1993) 76 48 8 上気道(28)、皮膚(25) 肺(16)、歯(13) 心内膜(13) Staphyrococcus(17) Gram-negative(14) Streptococcus(14) 寛解(28) 保存期腎不全(54) ESRD(8)、死亡(11) イタリア (1979-1999) 50 54 10 上気道(44)、肺(16)尿路(12) Streptococcus(47)Gram-negative(22) Staphyrococcus(12) 寛解(43) 保存期腎不全(47) ESRD(10)、死亡(10) タイ (1998-2005) 36 47 不明 不明 Streptococcus(22) Non-Streptococcus(78) 寛解(71) 保存期腎不全(16) ESRD(13)、死亡(不明) アメリカ (1995-2005) 57 50 23 上気道(32)、肺(16) 心内膜(12)、皮膚(11) 尿路(4) Streptococcus(33) Staphyrococcus(14) 寛解(44) 保存期腎不全(31) ESRD(25)、死亡(11) 台湾 (2000-2008) 20 61 不明 皮膚(20)肺(15)、骨・関節(15)、心内膜(20) 尿路(15) Staphyrococcus(60) Streptococcus(15) 保存期腎不全(30)寛解(30) ESRD(20)、死亡(20) アメリカ (2000-2010) 109 73 49 尿路(13)、上気道(10)皮膚(28)、肺(16) 心内膜(6) Staphyrococcus(46) Streptococcus(16) 保存期腎不全(44)寛解(22) ESRD(33)、死亡(23) 中国 (2000-2009) 64 29 2 上気道(67)、皮膚(20) Streptococcus(67) Non-Streptococcus(33) 寛解(86) 保存期腎不全(8) ESRD(4)、死亡(0) 感染性腎炎の臨床的特徴 図 23 腎生検における感染性腎炎診断基準 少なくとも以下の3つを満たしたときに診断する (1)糸球体腎炎発症時もしくはそれ以前の感染の既往 がある。 (2)低補体血症がある。 (3)管内増殖性糸球体腎炎 (4)免疫抗体法でC3が発光を示す。 (5)電子顕微鏡にて上皮化にハンプが認められる。 (Kidney International (2013)83,792-803 ) 図 22
外増殖性変化も認めております。 PAM染色では,基底膜の二重化,spikeや点 刻像は認めませんでした。 Masson染色では,線維の増生造成は認めま したが,IgG4関連腎炎に特徴的な所見は認め ませんでした。 免疫染色の所見です。蛍光抗体法でIgA, IgG,IgM,λ,κでは発光は認められません でした。 基底膜に沿って,C3で沈着所見を認めてお ります。その他,C4,C1q,fibrinogenでは発 光は認めませんでした。 こちらは電子顕微鏡の所見です。上皮下に高 電子密度沈着物humpを認めております。 好中球浸潤に伴う糸球体基底膜の破綻を認め ており,ボーマン腔に移送する像が認められま した。 以上をまとめると,PAS染色にてmesangium の増殖,基底膜の肥厚,基質の増加が認められ, 糖尿病性変化を認めました。また,電顕にて, 上皮下の沈着物を認めました。今回,われわれ は病理の結果から糖尿病性腎症に合併した巣状 分節性糸球体腎炎と診断いたしました。 入院後経過は,尿潜血は3(+)と持続的に陽 性所見を認めておりました。また,CRPが持続 陽性であり,staphylococcus speciesによる蜂窩 織炎の既往も認めることから,day70 〜 140ま でstaphylococcusを標的として,アモキシシリ ン500mg/dayの内服を行いましたが,経過途中 で薬剤性の肝障害を認めたため中止。その経過 の中で,腹部超音波にて肝腫瘤を認めたため造 影CTを施行し,肝細胞癌と診断し,TSも施行 されております。腎機能障害は増悪を続け,血 液透析導入となりました。 腎生検における感染性腎炎の診断基準は, 『Kidney international』によると,少なくとも以 下の3つを満たしたときに診断するとされてお ります。今回,われわれの症例では,1,3,4, 5を満たしておりました。 感染性腎炎の臨床的特徴として,各国での統 めず,凝固系ではワルファリン4.5mg内服下で, INR3.58と延長を認めておりました。 生化学では,ビリルビン,アルカリフォスファ ターゼ,γ-GTPで,高値を認めました。また 尿素窒素34,クレアチニン3.01と高値を認め ております。また,カリウムが5.8と高値を認め, HbA1cは7.1%でした。 CRPは0.4と 軽 度 高 値,IgG4が179,IgEが 816と高値を認めました。また,免疫複合体が3.6 と高値を認めております。その他,ANCA,補 体は陰性。クリオグロブリンは定性で弱陽性。 同定でIgGを認めております。 感染症はHBc抗体,HBe抗体が陽性でした が,DNAは2.1未満でした。甲状腺機能に異常 はありませんでした。 続いて画像所見です。胸部レントゲンでは, CTRは50%,両肺野ともに異常陰影は認めて おりません。心電図はheart rate60台のafリズ ムでした。 腹部エコーです。両腎ともに腎サイズは正常。 水腎症は認めず,左の腎嚢胞を認めました。 免疫複合体陽性,蜂窩織炎などの感染症の既 往があること。CRPも完全に陰性化しないこと から,感染性腎炎の可能性も疑い,ガリウムシ ンチグラフィを施行しましたが,腎臓を含め全 身に有意な集積所見は認めませんでした。急速 に進行する腎機能障害の鑑別目的に腎生検を施 行しております。 こちらが腎生検の所見です。光学顕微鏡の所 見は,HE染色200倍の所見です。糸球体は20 個含まれており,5 〜 6個の糸球体が全節性硬 化に陥っておりました。 こちらはHEの400倍の所見です。軽度のme-sangium細胞の増殖と基質の増加を背景に巣状 分節性に管内増殖性病変を認め,1個の糸球体 には細胞性に管外増殖性病変を伴っておりまし た。 PAS染色です。mesangiumの増殖,基底膜の 肥厚と基質の増加,糖尿病性の変化を認めてお ります。また,管内増殖性変化を認め,一部管
リンの影響も特にありませんでしたか? 阿部 クリオグロブリンの影響に関してですけ れども,今回,病理の結果からはクリオグロブ リン血症だと,MPGN様の変化を来すような病 変は今回の病理所見では認めていなかったこと から,感染に引っ張られてクリオグロブリンが 陽性になって,今回の病変とは大きく関係して いないと考えています。 座長 ありがとうございました。 では,時間がなくなってきていますので,組 織のほうに移りたいと思います。では,城先生 からお願いいたします。 城 【スライド01】表題どおりに,肉眼血尿が 出現し,急速に腎障害が進行した糖尿病性腎症 の一例ということです。腎実質が2本採取され ておりまして,この部分が皮質で,一部髄質が 付いております。ご覧のように糸球体病変,そ れから,この黒く見えるのが尿細管の染色性が 非常に強く出ている。すなわち,何らかの尿細 管障害を疑わせるような所見です。 糸球体の硬化像はそれほど強くありません が,mesangium領域に結節性のnoduleが見られ ます。年齢が75歳ですけれども,小葉間動脈 内膜の線維性肥厚が目立ちます。各施設で Masson染色もいろいろな染まり方をしてくる のですが,本症例では近位尿細管でのMasson 染色の染まりが強く出過ぎます。この原因が何 かということです。尿細管の萎縮があって,周 囲の間質のfibrosisと浮腫が見られます。 【スライド02】これは髄質域ですけれども,や はりこれは近位尿細管のP3 portionが髄質の外 帯に入ってきた場所だと思います。近位尿細管 の濃く染まった状態が,髄質にも及んでおりま す。 【スライド03】強拡です。糸球体では,mesan-gium matrixが拡大しております。メサンギウ ム細胞増多はあまりはっきりしません。ろ過面 を持たない細かい小血管が,拡大したmesangi-um基質の中に認められます。 【スライド04】この部分の尿細管には,軽度の 計をまとめました。バックグラウンドに糖尿病 を持つ患者さまでは,感染性腎炎発症率が高い ことが分かりました。また,上気道や心内膜, 尿路と,感染部位はさまざまですが,皮膚の感 染症,staphylococcus属の感染の割合も多いこ とが分かりました。 本症例でも,蜂窩織炎の既往があること, staphylococcusの感染があることが一致してお りました。 本例の診断について,感染性腎炎の可能性を 考えましたが,その他の腎炎の可能性について 検討をしていただきたく,本症例を提示いたし ます。以上です。 座長 どうもありがとうございました。フロア の先生から,ご質問,ご意見等はございますで しょうか。城先生,お願いいたします。 城 この方はいろいろな疾患を合併しているの ですけれども,最初の時期に自己免疫膵炎,後 腹膜線維症,閉塞性胆管炎といったものは,別 個の疾患として合併しているのですか。何かそ ういう疾患群を説明するような病態はあったの ですか。 阿部 これは,消化器内科で診断がつけられて いて,過去のカルテをひもといてみたのですけ れども,当時IgG4などは測られていなくて, ミクリッツ病や,硬化性の病変を来す疾患とし ては診断がなされていなくて,全てが関連して いるかどうかは不明です。 城 8年前ですね。 阿部 はい。 城 糖尿病の発症はいつごろからですか。 阿部 糖尿病の発症は8年前です。 城 同じころですか。 阿部 同じころです。 座長 その他,ご意見ございますでしょうか。 補体が低下したこともありますか。 阿部 経過中に補体は2回測定しているのです けれども,いずれもC3,C4,C1,CH50,いず れも正常値でした。 座長 ありがとうございました。クリオグロブ
Tamm-horsfall蛋白を含み,hyaline castがかなり 顕著に見られます。 【スライド13】まとめますと,全節性硬化が18 分の5個,約3割の全節性硬化があります。背 景となる残存糸球体では,mesangium細胞増多 がわずかに見られます。拡大したmesangium基 質にろ過面を持たない小血管の増生を認め,糖 尿病性糸球体硬化症,びまん型の早期病変を疑 わせる変化だと思います。それに加えて管内性 細胞増多を認めます。 【スライド14】半月体,分節性硬化,癒着,虚 脱 は あ り ま せ ん。1つ の 糸 球 体 にglomerular cystic legionがあります。これは,尿細管の下 流からの尿のこみ上げ現象があった病変かもし れません。糸球体基底膜そのものには異常がな く,spike,bubbling,二重化はありません。糸 球体の腫大もありません。尿細管は40%の萎 縮で,その分の間質の線維性拡大ならびに浮腫 性拡大があって,炎症細胞浸潤は目立ちません。 リンパ球と形質細胞浸潤は10%程度です。 【スライド15】近位尿細管領域のisometric vacu-olizationがあり,Masson染色で強く染まる急性 尿細管壊死があります。遠位尿細管には硝子円 柱の形成があります。Tamm-horsfallは,免疫学 的に染めてみないと確定できませんが,Tamm-horsfallによる円柱腎症が合併していると思い ます。 【スライド16】間質の炎症細胞はリンパ球,形 質細胞が主体で,好中球浸潤はありませんでし た。 【スライド17】血管系では,小葉間動脈に,70 歳ですので年齢相応の内膜の線維性肥厚があり ます。それから,軽度の輸出輸入細動脈の硝子 様肥厚があります。 【スライド18】免疫染色ではC3が主体で,me-sangial granularパターン。C1qもfibrinogenも絡 んでいます。 【スライド19】内皮下に強い浮腫があります。 基底膜の所見からは,糖尿病性糸球体硬化症が 始まっていると思います。基底膜そのものは厚 尿細管壊死がありますが,それほど強いacute tubular necrosisの変化はないようです。 【スライド05】糸球体は,ご覧のようにmesan-gium基質の拡大と,軽度のmesangium細胞増多 がありますけれども,それに加えて,糸球体毛 細血管の中に炎症細胞浸潤が見られます。 【スライド06】言いかえれば,管内性細胞増多 が加わった病変です。 【スライド07】PAS陽性の好中球も含んでおり ます。 【スライド08】ここは,好中球を含む管内性細 胞増多が目立つsegmentです。それから,拡大 した基質の中にろ過面を持たない小血管が見ら れます。すなわち,糖尿病性糸球体硬化症のび まん型のごく早期の病変があるのではないかと 思います。電顕で最終的な診断が分かるわけで すけれども,これを見てもやはり糖尿病性糸球 体硬化症びまん型の早期病変があることが疑わ れます。それに管内性細胞増多が加わった所見 だと思います。 【スライド09】PAM染色で見ますと,糖尿病に しては,細動脈内膜の硝子様肥厚が目立ちませ ん。 【スライド10】この尿細管上皮は,brush border がありますので近位尿細管です。そこにiso-metric vacuolizationが強く見られます。カルシ ニューリン阻害薬の毒性として有名ですけれど も,この症例はそういう薬剤は使われていない 背景で,これだけ強いisometric vacuolizationが 見られます。そこらへんは,後で臨床の先生と ディスカッションしてみたいと思います。 【スライド11】これが,弱拡から言及していま した近位尿細管でのMasson染色が強く染まっ た変化です。この変化をどう捉えるかです。急 性尿細管壊死と見るのか。どうしてMasson染 色でこれだけ強く染まってくるのか。その一部 がisometric vacuolizationを起こしていますけれ ども,何らかのかたちで尿細管の機能障害に結 び付いている形態像ではないかと思います。 【 ス ラ イ ド12】Henleのloopで す け れ ど も,
らもありますので,linearに染まっていないか らといって,糖尿病性腎症を否定する根拠には なりません。 【スライド28】糸球体基底膜の厚さは約600nm で肥厚しております。mesangium基質の拡大を 伴っています。 【スライド29】糖尿病性糸球体硬化症,びまん 型にcompatibleだと思います。それにhump形 成を伴う管内性変化が出ておりますので,ブド ウ球菌による急性感染後腎炎の合併した症例と 診断します。 【スライド30】これが結論です。臨床診断とし ては,慢性腎炎症候群,糖尿病,クリオグロブ リン血症。このクリオグロブリンは,CIC(血 中に循環する免疫複合体)も高値で,クリオも 陽性だったですけれども,糸球体にはクリオを 示すようなdense depositはなく,C3 dominant であったので,むしろ急性感染後腎炎の変化で C3が出ているものだと思います。クリオグロ ブリン血症性免疫複合体性腎炎の変化ではな かったかと思います。 【スライド31】肥満があり,クリオ陽性とHCV 抗体陽性がある程度関連した変化なのかもしれ ません。また,蜂窩織炎がありました。sepsis になったということで,血清中からstaphylo-coccusが培養されておりますので,やはりここ を感染巣として,糖尿病性腎症に,急性感染後 腎炎が合併した可能性があります。糖尿病のた め易感染性の状態であったのだと思います。 ここは,山口先生にもお聞きしたいのですけ れども,本症例は相当抗生剤を投与している可 能性がありますので,量依存性の薬剤性尿細管 壊死があったのではないかと思います。isomet-ric vacuolizationも,外から与えた薬剤との関連 があるのではないかと思いますが,その実態が よく分かりませんので,後で臨床の先生にもお 聞きしたいと思います。 【スライド32】それから,IF,電顕所見は先ほ どお示ししたとおりです。 【スライド33】糸球体に関しては,電顕診断を いです。ここはもうちょっと厚いです。これで 400nmぐらいだと思いますが,ここになります と800nm程 度 の 肥 厚 が あ り ま す。mesangium matrixが拡大しています。一部,ろ過面を持た ない小血管が,毛細血管を取り込みつつありま す。 【スライド20】この症例は,光顕像でも示しま したように好中球,macrophagesが管腔の中に 強く浸潤しております。ここは,基底膜が破壊 されて,ちょうど好中球がボウマン腔の外に出 るところであります。ここに基底膜があって, ここが断裂しておりまして,ここから好中球が ボウマン腔に遊出するところです。ここに hump様の上皮下沈着物もあります。 【スライド21】急性活動性病変でhumpを伴う。 この症例ではstaphylococcus感染から来る急性 糸球体腎炎であり,基底膜を破壊して,好中球 の遊出を誘導している像だと思います。 【スライド22】上皮下沈着物があります。糸球 体毛細血管内にはmacrophagesの浸潤がありま す。 【スライド23】こちらがボウマン腔,こちらが 内皮です。典型的なhumpの形成があります。 従来,溶連菌により急性糸球体腎炎のhumpを 誘導しますが,この症例ではブドウ球菌の感染 から来るhumpであります。溶連菌に限らず, staphylococcusでもきれいなhumpを起こし得る 証拠になると思います。 【スライド24】免疫染色では,C3単独でmesan-giumあるいは糸球体末梢係蹄に顆粒状の陽性 でしたが,電顕的にはhumpも染まっている変 化だと思います。 【スライド25】従来の免疫globulinは陰性でし た。 【スライド26】C1q,fibrinogenの分節性陽性の 変化は,恐らく浸出性病変であると思います。 【スライド27】IgGの糸球体末梢係蹄のlinearな 陽性はなく,糖尿病性糸球体硬化症のtypicalな 所見ではありません。しかし,糖尿病性糸球体 硬化症でlinearなIgG沈着の陰性の症例はいく
【スライド04】mesangial matrixが拡大して,糸 球体は大きいです。尿細管の萎縮を見ているの ですが,どうも糖尿病だけの専売特許ではなく て,いろいろな病態に随伴して出てきてしまい ますが,広範囲な変化は糖尿病の病変に由来す るのかなと,今は考えております。 【スライド05】mesangial matrixは,いずれも増 えて,細動脈の硝子化が目立たないです。一部 の糸球体にhumpみたいな瘤状のものが見えて いたのです。 【スライド06】tubular injuryはあるので,これ は虚血,全身性の循環障害でもいいように思い ます。 【スライド07】この糸球体は,この拡大だと hump が見えなくて申し訳ないです。capillari-tis,tubulitisも場所によってはあります。 【スライド08】一部にこういうvacuolization。 brush borderが残っているのです。基底膜側に foamyな変化は,ネフローゼのときに,最初は 遠位側にlipidもたまり,遠位側のfoamy change で,長期に近位側にもlipidがたまってくるこ とがあります。ただ,比較的限局して見られて いるので,薬剤といったtoxicなものも関与し ているのかもしれないです。ここにもendocap-illaryなものがsegmentalに見られています。 【スライド09】vasa rectaのところに軽い炎症が 見られます。 【スライド10】これは髄質側のstraight portion かどうかは分からないのですが,萎縮を見てい ます。本来の基底膜,内側に新生TBMがあって, その間がlooseになっている変化です。 【スライド11】tubular injuryです。 【スライド12】humpのあるところに,endocap-illaryな反応が見られる。 【スライド13】スライド12と同様です。 【スライド14】Massonで少しcrescent様の病変 ができています。 【スライド15】crescentができかかって,endo-capillaryな変化がsegmentalに広がっている。 【 ス ラ イ ド16】 こ こ にhumpが2つ あ り ま す。 重視して,糖尿病性糸球体硬化症,びまん型に humpを伴う急性感染後腎炎の合併と診断しま した。 近年の腎機能の悪化は,これだけでは説明が つかないと思いますので,尿細管上皮に量依存 性の急性毒性の病態。それから,isometric vac-uolizationを背景に腎機能が悪化した可能性が あると思います。 抗生剤,あるいは抗菌薬の投与だと思います が,ここらへんはもう少し臨床の先生の情報を 得たいと思っております。以上です。 座長 ありがとうございました。山口先生,お 願いいたします。 山口 【スライド01】この症例は,不思議な humpで, そ のhumpの あ る と こ ろ に 好 中 球, macrophagesが 浸 潤 し て き て い る。human Pathologyを見ていたら,humpは,いつもだと ただあるだけなのですが,先ほど城先生がお見 せ し た よ う な 好 中 球 が ダ イ レ ク ト に 来 て, GBMにギャップを起こしている。なかなか電 顕で見ないです。 【スライド02】普通見る上皮の扁平化と内腔の 拡張はあるのです。vacuolizationは,CNIの特 許ではなくて,いろいろな病態で随伴していき ます。 糸球体は,巣状分節様病変が限局した,seg-mentalにendocapillaryな, そ の 場 所 にhumpが ある。その点が面白いように思います。 間質は線維化して,TBMもやや厚い印象で す。 【スライド03】nephronの萎縮もある。糖尿病で 癒着を起こしますと,そこから尿細管極に染み 込み病変ができてくる。ここに既存の基底膜が あって,そうすると,この間にこんなスペース がどんどんでき,これが染み込み病変で,今は 一応,paratubular basement membrane insudation という名前を付けています。これが近位尿細管 のstraight portionまで進展していく。最終的に は尿細管が萎縮して,糸球体がatubularになっ てしまう。
7年は普通にCRPは陰性の時期が続いていて, 蜂窩織炎後から,1回皮膚科で入院をされて軽 快したのですけれども,その後,持続的に陽性 だったという経過があります。 座長 分かりました。 先ほどの城先生のご質問で,結局,今回の腎 機能障害の原因として,尿細管のisometric vac-uolizationの問題があるということで,量依存 性の障害とおっしゃいましたが,抗生剤の量は どうですか。 阿部 抗生剤の量は,その当時入っているのを 確認して,1日500mgで,恐らくそのときの腎 機能doseで入っていたと思うので,適量が入っ ていたと思うのですけれども,抗生剤が入って いても,腎機能が徐々に増悪していって,その 経過で肝機能障害が出てきたところもあって, 抗生剤を一時的に中止させてもらったのです。 その経過の中で,また肝細胞癌が出てきたこと もあって,造影剤を使用しなければいけない経 過もありまして,それも若干腎臓に追い打ちを かけたような印象は少しあります。 座長 分かりました。 城 造影剤を使っているのですか。 阿部 そうなのです。肝細胞癌の診断のために 造影剤を使わざるを得ない状況になってしまっ て。 城 では,isometric vaculolizationは造影剤の可 能性が高いです。抗生剤は多剤併用ですか? また,何をどのぐらい使っていますか。 阿部 アモキシシリン単剤を40日ぐらいです。 城 アモキシシリン単剤ですか。 阿部 はい。単剤です。そのとき,特別何か培 養が出ていたということではなく,CRPが持続 陽性ということもあって,蜂窩織炎の既往から 感染後腎炎を疑って,そこを目掛けて抗生剤を 投与したのですけれども,効果が乏しくて,肝 障害が出たところで中止になりました。 城 肝障害の黄疸はどの程度でしたか。 阿部 黄疸は,ビリルビン自体は1.2とかなの ですけれども,AST,ALTの値が上がってきた humpは取り残されて数カ月で吸収されるとは いわれています。 【スライド17】IgGが,顆粒状でsegmentalに, 一部陽性と取ってもいいのかなと思っていま す。 【スライド18】C3はperipheral。一部mesangial が出ているように思います。 【スライド19】κ,λも,ちょこっとあるのか なという印象です。 【スライド20】典型的な糖尿病のmesangial ma-trix ,GBMの肥厚。こちら側のsegmentはend-capillaryの像で,humpが多発して,一部好中球 が出て,癒合性になっている。 【スライド21】拡大で見ますと,皆さんも見た ことがあるのかどうか分かりませんが,この humpに膜状のものが入っているのです。濃淡 ぐらいはある,だけど,この膜状構造が一緒に あるhumpは記載がないです。では,DMがあ るからできたのか。あるいは菌体成分の膜を, complexで膜を取り込んだのか。こういうhump は僕も初めて出合いました。膜内沈着にも同じ ように膜状のものが入っています。
ですから,circulating immune complexesであ るならば,ちょっと面白い変化だろうと思いま す。 【スライド22】糖尿病性糸球体硬化症がありま す。 【 ス ラ イ ド23】focal segmentalなendocapillary proliferationで,感染関連の急性腎炎と,糖尿 病性糸球体硬化症でいいと思います。 【スライド24】これは追加です。Hoas先生の post-nfectious glomerulonephritisでは糖尿病に随 伴してくるものが圧倒的に多いと思います。以 上です。 座長 どうもありがとうございました。臨床の 先生から何かご質問はありますでしょうか。 今回はCRPが陰性化してから腎生検までの タイムラグは,結構ありましたか。 阿部 CRPが1回陰性化したのは,たぶん8年 前の閉塞性黄疸の治療後なので,そこから6,
す。 臨床経過に少し補足でございます。この方の 腎障害の経過につきまして,抗生剤を投与した にもかかわらず,炎症反応は結局その後一度も 正常化することはなく,低レベルではございま したけれども,ずっと異常値が続いていた。感 染性腎炎の経過はその後あったと一応仮定をし ておりまして,尿所見上でも,確か血尿が最終 的には消えなかったと思います。 糸球体病変の悪化がどうなのだろうかと, ちょっと懸念されたところもございましたの で,今回出させていただきました。尿細管障害 については,あまり今回の腎障害の要因として は,実際のところ,われわれは考えていなかっ たというのが事実でございます。 座長 ありがとうございます。何か補足のご意 見などはございますでしょうか。はい。では, このへんでこの症例は終わらせていただきま す。 司会の不手際でお時間を延長して,申し訳ご ざいませんでした。では,3演題の座長を終わ らせていただきます。ありがとうございました。 ところで腹部の超音波を施行したところ,肝の S4,S8領域に腫瘤影があるということで,そ の後造影CTを撮って,消化器内科にコンサル トのうえ,テスト施行というようなかたちに なっていると思います。 城 では,肝障害としては大した障害ではない ですか。 阿部 そうです。 座長 はい。では,今回の症例は,糖尿病に合 併した感染後糸球体腎炎ということで,腎機能 障害に関しては,直接的には病理との相関がな いのかもしれないということで,よろしいで しょうか。金綱先生,お願いいたします。 金綱 KYKの金綱です。 私も以前,足の外傷に続発した管内増殖性腎 炎を経験したことがございます。この人の今回 のエピソードについては,糖尿病プラス管内増 殖性感染関連腎炎でよろしいかと思います。や はり,不思議なのが,尿細管間質の障害です。 拝見していますと,割合線維化が激しい割に炎 症の所見が弱いなと。それが大変印象的であり ました。 1つは,薬剤関連とか血流障害があると思い ますけれども,この方の場合,1つは糖尿病で ある。もう1つは後腹膜線維症を指摘されてお りますので,例えば尿流出障害のようなものが あったかどうかということも確認させていただ きたいと思いました。 阿部 入院時に超音波などを取らせていただい たのですけれど,明らかに水腎症などの所見は 認めていなくて,IgG4関連の疾患が今activeか は否定的と考えました。 金綱 特に糖尿病による,膀胱機能障害等もな いということですか。 阿部 ないと思います。 金綱 はい。どうもありがとうございます。 座長 ありがとうございました。そのほか,ご 意見はございませんでしょうか。竹内先生,お 願いいたします。 竹内 共同演者の北里大学の竹内でございま
城先生 _06 城先生 _05 城先生 _04 城先生 _03 城先生 _02 I-3 肉眼的血尿が出現し急速に腎障害が進行した 糖尿病性腎症の一例 北里大学医学部 腎臓内科 阿部哲也 先生、青山東五 先生、関本恵子 先生、高橋 遼 先生、島田芳隆 先生、 正木貴教 先生、竹内和博 先生、鎌田真理子 先生、小川みゆき 先生、村野順也 先生、 内藤正吉 先生、佐野 隆 先生、竹内康雄 先生 東北大学大学院・医科学専攻・病理病態学講座 城 謙輔 第64回 神奈川腎炎研究会2015年9月17日(土)15:30~19:45 横浜シンポジア 城先生 _01
城先生 _12 <光顕> 標本は2切片採取。 糸球体 5/18個 (28%)に全節性硬化。 残存糸球体において、メサンギウム細胞増多を2/13個(15%)認め、 拡大したメサンギウム基質に濾過面を持たない小血管の増生を認めます。 管内性細胞増多を3/13個(23%)認めます。半月体形成ならびに分節性硬化、 癒着、虚脱はありません。glomerular cystic lesion:1/13個(8%)認めます。 糸球体基底膜の肥厚はなく、PAM染色にて二重化ならびに spike・bubblingも見られません。糸球体の腫大はありません(200μm)。 尿細管・間質 尿細管の萎縮はびまん性に萎縮し、同域間質の線維性・浮腫性拡大を中等度に認め (40%)、リンパ球・形質細胞浸潤を10%認めます。 尿細管上皮は近位尿細管領域に isometric vacuolizationを認め、 領域的には急性尿細管壊死も見られます。さらに遠位尿細管には硝子円柱 の形成も見られます。HE染色にてTamm-Horsfall 蛋白の鬱滞が疑われます。 間質には軽度のリンパ球・形質細胞浸潤のみで好中球浸潤はありません。 血管系 小葉間動脈に中等度の内膜の線維性肥厚を認め、 輸入・輸出細動脈に軽度の内膜の硝子様肥厚を認めます。 城先生 _11 城先生 _10 城先生 _09 城先生 _08 城先生 _07
城先生 _18 城先生 _17 城先生 _16
城先生 _15 城先生 _14
IgG IgM IgA
C3 C1q Fib
山口先生 _03 山口先生 _02 山口先生 _01
I‐3:肉眼的血尿が出現し急速に腎障害が進
行した糖尿病性腎症の1例(北里大腎内)
症例:75歳、男。8年前自己免疫性膵炎。後腹 膜線維症、閉塞性胆管炎で敗血症、DIC,糖尿 病。1年前蜂窩織炎(Staphylococcus)で、CRP陽 性持続。徐々にCr上昇し、2.1 mg/dlで、尿潜血、 蛋白(+)。 臨床病理学的問題点: 1.糖尿病性腎症に合併した感染性腎炎で良 いか? 2.その他の可能性は? 考察 糸球体に関しては、電顕診断を重要視して、糖尿病性糸球体硬化症 びまん型に humpを伴う急性感染後腎炎の合併と診断しました。 しかし、近年の腎機能の悪化はそれだけでは説明がつきません。 尿細管の萎縮が目立ち(40%)、同域の間質の線維性・浮腫性拡大が 腎機能悪化に関連しています。さらに近位尿細管のiisometric vacuolization ならびに急性尿細管壊死を伴っており、腎機能悪化へ関与したと思われます。 以上、iisometric vacuolizationの原因はわかりません。 急性尿細管壊死は抗生剤ないしは抗菌薬の投与による原因と思われます。 城先生 _21 P13-8228 75歳 男性 臨床診断:慢性腎炎症候群、糖尿病、クリオグロブリン:陽性、肥満、HBc抗体:陽性、 腎機能低下、閉塞性胆管炎、蜂窩織炎の既往 病因分類:糖尿病性腎症 病型分類:糖尿病性糸球体硬化症 びまん型、急性感染後腎炎の合併、 量依存性薬剤性急性尿細管壊死の合併、 isometric vacuolizationの原因不明 IF診断: 免疫複合体性腎炎否定、C3のみメサンギウム領域に顆粒状陽性 電顕診断:糖尿病性糸球体硬化症 びまん型、humpを伴う急性感染後腎炎合併の疑い 皮質:髄質=5:5 糸球体数:18個、全節性硬化:5個、 メサンギウム細胞増殖:2個、管内性細胞増多:3個、 半月体形成:0個(細胞性半月体:0個、線維細胞性半月体:0個、線維性半月体:0個) 分節性硬化:0個、癒着:0個、虚脱: 0個、未熟糸球体:0個、glomerular cystic lesion:1個
尿細管の線維化(IFTA):40%、間質の炎症細胞浸潤:10% 小葉間動脈内膜の線維性肥厚:中等度、輸入・輸出細動脈内膜の硝子様肥厚:軽度 城先生 _20 <免疫染色> C3単独にメサンギウム領域に顆粒状に陽性です。免疫グロブリンは陰性です。 C1q・Fibが分節性のおそらく浸出性病変に陽性です。 IgGの糸球体末梢係蹄への線状陽性はなく、糖尿病性糸球体硬化症と 診断出来ません。 <電顕診断> 糸球体基底膜は肥厚し(約600nm)、メサンギウム基質の拡大を伴っています。 濾過面を持たない小血管の増生は見られませんが、 糖尿病性糸球体硬化症 びまん型にcompatible です。 さらに上皮下にhumpを形成し、毛細血管腔には好中球・マクロファージ浸潤を 認めます。領域的に内皮下の浮腫を伴っています。 以上の所見から、糖尿病性糸球体硬化症 びまん型にhumpを伴う急性感染後腎炎 の合併した症例と診断します。 城先生 _19
山口先生 _09 山口先生 _08 山口先生 _07 山口先生 _06 山口先生 _05 山口先生 _04
山口先生 _15 山口先生 _14 山口先生 _13 山口先生 _12 山口先生 _11 山口先生 _10
山口先生 _21 山口先生 _20 山口先生 _19 κ λ C3 山口先生 _18 IgG 山口先生 _17 山口先生 _16
山口先生 _24 64‐I‐3(北里大) 1. Endocapillary proliferative glomerulonephritis 2. Diabetic glomerulosclerosis, diffuse type, most‐likely 3. Patchy tubular injury and foamy degeneration, moderate cortex / medulla= 6/4, global sclerosis/glomeruli= 7/21 光顕では、糸球体には軽度のメサンギウム域拡大を認め、分節状に多核球浸潤及び内皮腫 大、増生が散在し、大きなhump様上皮下沈着を疎らに認めます。ボウマン囊の肥厚を伴う上 皮増生が1ヶが見られ、その周囲に多核球浸潤を伴っています。被膜直下に球状硬化が5ヶ見 られ、Polar vasculosisを軽度認めます。 尿細管系には近位上皮に扁平化及び拡張と泡沫変性が散在し、硝子滴変性が見られ、硝子 或いは血球円柱を認めます。更に二重化に萎縮した尿細管群を散見し、一部に上皮下染み込 み病変を認めます。 動脈系に輸入出細動脈硝子化が中等度見られ、中位動脈内膜肥厚を中等度認めます。 蛍光抗体法では、IgG(+), IgA(‐), IgM(‐), C1q(‐), C3(+), C4(‐), κ(‐), λ(+): starry skyです。 電顕では、観察糸球体には厚いGBMに膜状構造物が散在する大きなhump様上皮下及び膜 内沈着が散在し、好中球などが浸潤し、一部ではGBMの断裂と好中球のボウマン囊腔への逸 脱を認めます。血管腔は狭小化し、内皮下浮腫と内皮の腫大を認め、メサンギウム間入が見 られます。メサンギウム域には癒合性のメサンギウム基質増加が見られます。脚突起癒合が 所々で見られます。尿細管基底膜肥厚が見られます。 以上,感染関連急性腎炎を合併した糖尿病性糸球体硬化症と思われます。 山口先生 _23 山口先生 _22